JP3467403B2 - 水膨潤性組成物及び止水材 - Google Patents

水膨潤性組成物及び止水材

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JP3467403B2
JP3467403B2 JP09907898A JP9907898A JP3467403B2 JP 3467403 B2 JP3467403 B2 JP 3467403B2 JP 09907898 A JP09907898 A JP 09907898A JP 9907898 A JP9907898 A JP 9907898A JP 3467403 B2 JP3467403 B2 JP 3467403B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水膨潤性組成物及び
水膨潤性止水材に関し、さらに詳しくは、高止水性、経
時安定性、自己シール性を備え、作業効率の良い、漏水
防止のために用いられる水膨潤性を有する止水材とそれ
に好適に用いられる水膨潤性組成物に関するものであ
る。特に本発明は、施工中などの水との接触による事前
膨潤や流水による不透水層の流失がなく、止水効果が高
い水膨潤性止水材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、土木・建築構造物におけるコンク
リート打継部、コンクリートと他の部材の施工上のジョ
イント部、またはコンクリート二次製品の継手部等の被
止水箇所、特に地下構造物の漏水防止・止水には、アス
ファルト系、ゴム系、樹脂系の有機系材料を用いた止水
材が用いられ被止水箇所の漏水防止に用いられている。
さらに、その他の止水材として無機系材料を用いた止水
材があり、セメント系のように硬化するものと、スメク
タイト系のものが用いられている。スメクタイト系のも
のとしては、吸水により膨潤する性質を有するベントナ
イト材を用いた止水材が知られている。ベントナイト系
材料を用いた止水材としては、例えば、ベントナイトを
粉末もしくは粒状物の状態でそのまま施工して用いる
か、またはベントナイトの粉末もしくは粒状物をダンボ
ールや不織布や織布等に充填もしくは挟持させ、又はベ
ントナイトを接着剤や樹脂で固めた止水パネル、止水シ
ートもしくは止水ロープとして用いている。しかし、こ
れらの従来の止水材ではベントナイトの欠落、偏在がお
こり、あるいは粘着性、可塑性を有しないため、複雑な
形状の下地に追従することが難しく施工性の向上と、長
期間にわたって止水効果を保持することの両方を達成す
ることができなかった。従来の有機系止水材、すなわち
アスファルト系、ゴム系、樹脂系の止水材は、その置か
れている環境により劣化し、また土中のバクテリアによ
り分解される等、経時的に止水性能が低下し、長期にわ
たって初期の止水効果を保持することは材質的に問題が
あった。また、無機系止水材であってもセメント系止水
材のように施工後に養生を必要とする止水材において
は、施工後に完全に乾燥するまでに一定の時間が必要な
ので、施工時および施工後の天候の影響が問題となり、
作業上様々な制約がある。さらに、アスファルト系、ゴ
ム系、樹脂系、セメント系の止水材は、いずれも自己シ
ール性を有さない。
【0003】一方、粉末または粒状のベントナイトから
なるスメクタイト系の止水材は、養生を必要とせず、止
水性、長期安定性に優れ、吸水により膨潤して止水材周
囲の間隙を閉塞する自己シール性を有するが、施工性が
悪いという問題があった。従来のベントナイト系止水材
は、被止水下地面が粗面である場合、あるいは段差があ
るような複雑な形状である場合において、下地と密着さ
せることができないため、下地表面を事前に平滑に処理
する必要があった。また、施工時に止水材が下地に追従
し難く、止水材中のベントナイト粒子間に空隙が存在す
るために、ベントナイトが吸水して膨潤するまでの間、
止水材と下地の間あるいはベントナイト粒子間には隙間
(空隙)が存在し、膨潤した止水材がその空隙を閉塞す
るまでの間は止水効果が得られなかった。そこでこれら
の長期安定性、施工性、止水効果の問題を解決するため
に、ベントナイトとゲル化基油を混練して油粘土状にし
た止水材が提案されている(特開昭55−42291
号、特開平8−231956号)。これらの油粘土状ベ
ントナイト止水材は、可塑性を有するため被下地面に密
着させることができて、止水材と下地の間および止水材
中のベントナイト粒子間に施工時にほとんど空隙が存在
しないため、施工直後から止水効果が期待でき、ベント
ナイトの膨潤性に基づく自己シール性を有する優れた止
水効果が得られるものである。
【0004】しかしながら、この油粘土状ベントナイト
系止水材は特定のゲル化基油を使うため製造が面倒でコ
ストが高くなるという難点がある。また止水効果は高い
が、施工中などにおいて吸水膨潤して施工し難くなるこ
とがあり、また施工後に流水と接触する場合には、膨潤
した止水材の不透水層が徐々に流失して止水効果が低下
することがあり、まだ満足できるものではない。特公平
5−65743号には、水膨潤性の高分子物質、例えば
ベントナイトを、タール状生成物、瀝青、ワセリンから
選ばれる加熱により粘性が失われる粘性の疎水性物質
と、水又は多価アルコールから選ばれる少量の親水性物
質とよく混合して調製したシーリング剤が記載されてい
る。このシーリング剤は、広い範囲の種々の材料に固着
し、水中で膨潤する能力を有しており、可塑性を有して
いる。しかし、袋詰めなど、ケーシングまたは容器に充
填して使用されるための軟らかい混合物である。このた
め、このシーリング剤を容器やケーシングに入れずにそ
のままの状態で用いても保形性が不十分で、加熱時、特
に高温時には流動化してしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造が比較
的容易で低廉なコストで製造でき、高い止水性、長期安
定性、自己シール性に優れ、かつ保形性、耐熱性を有し
ながら粘着性を有し、圧縮反発弾性が比較的小さく、施
工時の下地追従性に優れ施工性にも優れる止水材とそれ
に用いる組成物を提供することを目的とする。また、本
発明は、施工中の吸水膨潤や施工中もしくは施工後に流
水にさらされても止水材の不透水層が流失しない止水材
とそれに用いる組成物を提供することを別の目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
に鑑み種々研究した結果、水膨潤性を有する粘土、アス
ファルト、および所定の感温性改善剤や補強性充填剤を
混合してなる組成物が、止水材として、高止水性、長期
安定性、自己シール性を有し、かつ該止水材は可塑性物
となって所望の形(シート状、ロープ状、管状等)に可
逆的に成形できて容易に形状を維持することができ、施
工性にも優れ、施工中の吸水膨潤や施工中もしくは施工
後に流水によっても止水材の不透水層が流失されないこ
とを見い出した。本発明はこれらの知見に基づき完成さ
れるに至ったものである。
【0007】すなわち本発明は、(1)水膨潤性を有す
る粘土、アスファルト、並びに感温性改善剤および補強
性充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有
することを特徴とする水膨潤性組成物、(2)(a)水
膨潤性を有する粘土5〜90重量%、(b)アスファル
ト5〜90重量%、並びに(c)感温性改善剤および補
強性充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1つ0.
1〜50重量%を含有してなる(1)項記載の水膨潤性
組成物、(3)(a)水膨潤性を有する粘土30〜70
重量%、(b)アスファルト20〜65重量%、並びに
(c)感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
選ばれる少なくとも1つ0.5〜40重量%を含有して
なる(1)項記載の水膨潤性組成物、(4)水膨潤性を
有する粘土がスメクタイト系粘土あるいは膨潤性雲母で
ある(1)、(2)又は(3)項記載の水膨潤性組成
物、(5)水膨潤性を有する粘土がベントナイトである
(1)、(2)又は(3)項記載の水膨潤性組成物、
(6)感温性改善剤がゴムであり、補強性充填剤がゼオ
ライトである(1)、(2)、(3)、(4)又は
(5)項記載の水膨潤性組成物、(7)水膨潤性を有す
る粘土、アスファルト、並びに感温性改善剤および補強
性充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有
することを特徴とする水膨潤性止水材、(8)(a)水
膨潤性を有する粘土5〜90重量%、(b)アスファル
ト5〜90重量%、並びに(c)感温性改善剤および補
強性充填剤からなる群から選ばれる少なくとも1つ0.
1〜50重量%を含有してなる(7)項記載の水膨潤性
止水材、(9)(a)水膨潤性を有する粘土30〜70
重量%、(b)アスファルト20〜65重量%、並びに
(c)感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
選ばれる少なくとも1つ0.5〜40重量%を含有して
なる(7)項記載の水膨潤性止水材、(10)水膨潤性
を有する粘土がスメクタイト系粘土あるいは膨潤性雲母
である(7)、(8)又は(9)項記載の水膨潤性止水
材、(11)水膨潤性を有する粘土がベントナイトであ
る(7)、(8)又は(9)項記載の水膨潤性止水材、
(12)感温性改善剤がゴムであり、補強性充填剤がゼ
オライトである(7)、(8)、(9)、(10)又は
(11)項記載の水膨潤性止水材、及び(13)アスフ
ァルト、水膨潤性を有する粘土および吸油性を有する粘
土もしくは有機物を含有し、必要により軟化剤を含有す
ることを特徴とする可塑性止水材を提供するものであ
る。
【0008】
【発明の実施の形態】次に本発明を詳細に説明する。本
発明の止水材には、天然又は合成の、水膨潤性を有する
粘土から選ばれた少なくとも1種の粘土が用いられる。
このような粘土としては、未変性のものでも変性したも
のでもよいが、ベントナイト、ヘクトライト等のスメク
タイト系粘土、および膨潤性雲母から選ばれた少なくと
も1種が好ましい。この内、ベントナイトは、天然に産
する無機系の粘土であるため安全性に優れ、かつ土中の
微生物に分解されることがなく長期的に安定で、高い止
水効果を保持でき、また低価格であるので、特に好まし
い粘土である。本発明の止水材においては、前記粘土か
ら選ばれた1種の粘土を単独で、又は2種以上の粘土を
用いる。本発明の止水材には、前記水膨潤性を有する粘
土を好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜
80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%を用い
る。本発明の組成物及び止水材は前記粘土とアスファル
ト並びに感温性改善剤および補強性充填剤からなる群か
ら選ばれた少なくとも1つを所定量混合してなる。
【0009】本発明に用いられるアスファルトとしては
アスファルタイト、ロックアスファルト等の天然アスフ
ァルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファル
ト等の石油アスファルトのいずれでもよく、また、アス
ファルトコンパウンドやゴム化アスファルト等の改質ア
スファルトも用いることができる。本発明においては、
前記アスファルトを2種以上併用してもよい。また、改
質アスファルトは市販の改質アスファルトでもよいが、
天然アスファルトや石油アスファルトを感温性改善剤や
補強性充填剤で改質したものも用いることができる。こ
の改質されるアスファルトとしては特に制限はなく、改
質の際に所望の物性が得られるように感温性改善剤や補
強性充填剤の添加量を調整すればよい。このアスファル
トは、本発明の止水材が吸水して膨潤した際に、止水材
の膨潤した不透水層が流失することを防止するために必
要である。また、このアスファルトの配合量を変えるこ
とにより、本発明の止水材が吸水して膨潤する際の膨潤
速度と膨潤倍率を任意に調節することが可能である。本
発明の止水材においては、前記アスファルトを止水材中
に5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、さら
に好ましくは20〜65重量%配合してなる。アスファ
ルトの量が少なすぎると本発明の止水材に所望の可塑
性、付着性を与え、膨潤を調節するという効果が不十分
であり、多すぎると組成物の性質がアスファルトに支配
されてしまい、保形性が悪くなり、また膨潤できなくな
るため、自己シール性を発揮しないものである。
【0010】本発明においては、感温性改善剤や補強性
充填剤を用いてアスファルトを改質する。ここで、感温
性とは、温度の高低によって物質の硬さ、粘度などが変
化する性質であり、感温性改善剤とは、本発明の組成物
またはそれから調製される止水材の硬さなどが温度の変
化によって影響を受け難くするための添加剤を意味す
る。一方、補強性充填剤において補強とは、物質の物理
的性質(保形性など)を向上させることであり、補強性
充填剤とは、通常常温において本発明の組成物の保形性
を向上させるため、さらには、在庫・輸送時および施工
時において組成物が流動化し、変形することを防止する
ための添加剤を意味する。本発明に用いられる感温性改
善剤としては、ゴム(天然ゴム、スチレンブタジエンゴ
ム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、クロロ
プレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム等)、アス
ファルトまたは軟化剤(油)と相溶性がある熱可塑性樹
脂(ポリブテン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹
脂、ロジン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹
脂、脂肪族系、芳香族系、脂環族系の石油樹脂等)、吸
油性高分子(ポリノルボルネン架橋物、アルキルスチレ
ン、アルキル(メタ)アクリレートなどの共重合物の架
橋物、長鎖アルキルアクリレート系高分子等)、脂肪酸
及びその塩(好ましくは炭素数8〜40の高級脂肪酸及
びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニ
ウム塩、アミン類などの塩)など、補強性充填剤として
は無機充填剤(ゼオライト、活性白土、有機粘土鉱物、
フライアッシュ、シリカ、珪藻土等)、繊維質(紙粉、
木粉、パルプ、綿、合成繊維等)、活性炭などが挙げら
れる。これらは1種または2種以上を用いることができ
る。感温性改善剤や補強性充填剤を添加することで本発
明の組成物及び止水材の感温性(耐熱性、耐寒性)と保
形性、さらには可塑性、弾性、衝撃抵抗性、耐久性、耐
薬品性等が改善され、さらに本発明の組成物及び止水材
にこれらの所望の性質を与えることができる。感温性改
善剤や補強性充填剤としては熱可塑性樹脂、ゴム、無機
充填剤が好ましく、ポリブテン樹脂、スチレンブタジエ
ンゴム、ゼオライトがさらに好ましい。
【0011】本発明において感温性改善剤と補強性充填
剤とは、主な作用に基づいて便宜上区別したものであっ
て、これら2つはどちらもアスファルトの感温性と流動
性を改質する作用を有するということができる。これら
の感温性改善剤や補強性充填剤に共通する作用とは、ア
スファルトの流動を抑制、防止し、また、温度の影響を
受け難くすることであるが、これは、吸油性あるいはゲ
ル化性に基づくと言うことができる。具体的には、ゴ
ム、熱可塑性樹脂、脂肪酸及びその塩はアスファルト及
び軟化剤(油)をゲル化させ流動を防止し、一方、吸油
性高分子、無機充填剤、繊維質、活性炭はアスファルト
及び油を吸着し流動を防止するということができる。本
発明においては、吸油性高分子、無機充填剤の粘土、繊
維質、活性炭について、その共通の性質である吸油性に
着目して、吸油性を有する粘土もしくは有機物というこ
とがある。本発明でいう吸油性を有するとは、油ととも
に混合されたときに、油を保持し、油がその混合物の外
へ移行することを防ぐ性質を有する物質をいい、最低で
も自己の重量の20重量%以上の油を保持でき吸油性を
有する物質が好ましい。このような吸油性の物質(吸油
剤)は、本発明の組成物や止水材の流出、タレ防止に役
立ち、また、アスファルトや軟化剤(油)のにじみや、
分離、移行の防止にも役立つ。本発明に用いられる感温
性改善剤及び/又は補強性充填剤の添加量は通常本止水
材中0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量
%であり、さらに好ましくは4〜35重量%である。感
温性改善剤や補強性充填剤の量が少なすぎると本発明の
組成物及び止水材に所望の感温性、可塑性、粘着性、保
形性を与えられず、施工性の低下を生じ、多すぎると止
水材の膨潤性が低下し、自己シール性を発揮しなくなっ
てしまう。
【0012】また、本発明の組成物及び止水材は上記必
須成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要
に応じて従来止水材に用いられている種々の添加成分を
任意成分として配合することが出来る。この添加剤とし
ては、例えば軟化剤(例えば鉱油、合成油、脂肪性油等
の油)、安定剤(例えばアニオン系界面活性剤、ノニオ
ン系界面活性剤等)、消泡剤、凍結防止剤、酸化防止
剤、着色剤などを挙げることが出来る。油を含有したア
スファルトを用いる場合には軟化剤を用いる必要はない
が、本発明においては、軟化剤(例えば、マシン油など
の鉱油、合成油、シリコーン油など)を用いることが好
ましい。軟化剤を加える場合は止水材中、好ましくは
0.1〜50重量%、より好ましくは1〜20重量%で
ある。本発明の組成物及び止水材を製造するに当たり、
各成分を添加、混合するについての順序、方法について
は特に制限はない。
【0013】本発明の組成物及び止水材は、水膨潤性を
有する粘土、アスファルト並びに感温性改善剤や補強性
充填剤を充分混合することにより均一な混合物として得
られる。この際加熱を行えば容易に混合することが出来
る。通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃
で加熱しながら均一になるまで充分に撹拌混合を行う
が、この際、高温で長時間加熱を行うと、品質低下が生
じるため注意が必要である。このものはいわゆる粘土状
の可塑性、粘着性、伸び性を有し、施工時に所望の形状
に容易に成形して用いることができるため、コンクリー
ト打継部等の被止水下地面の複雑な形状に追従し、下地
と密着させることが可能であり、形状の維持も容易であ
ることから極めて作業性に優れた止水材である。本発明
においては、水膨潤性を有する粘土とアスファルトを感
温性改善剤や補強性充填剤と組み合わせて用いることを
1つの特徴としている。これにより本発明の組成物及び
止水材は施工直後に下地に密着することによる水密性
と、吸水して膨潤することによる自己シール性の二重の
止水効果がある。さらに本発明の止水材は、感温性改善
剤や補強性充填剤を用いることによってアスファルトの
流動を抑制し、アスファルトや油分のにじみ、移行を防
止することができ、吸水膨潤した後で、膨潤した止水材
の不透水層が外部に流失することがないため、長期にわ
たって止水性能の低下を防止する効果がある。これらの
効果により、本発明の止水材は、施工中などにおいて水
との接触が予想される条件、あるいは継手目地等の目開
きが大きい箇所や、水圧が高く通水量の多いような過酷
な条件下においても長期的に安定した止水効果を発揮す
ることができる。
【0014】本発明の止水材をコンクリート打継部、コ
ンクリートと他の部材との接合部、コンクリート二次製
品の継手部などの構造物の被止水箇所や補修箇所等に使
用する場合、止水材は水の侵入を阻止するとともに水を
吸収して膨潤するが、止水材中のアスファルトおよび感
温性改善剤や補強性充填剤の存在により、施工途中の止
水材が雨水や地下水により、膨潤して自己シール性を失
うことを防ぎ、また、膨潤した止水材の不透水層が外部
に流失する事がない。よって、打継部、ジョイント部、
継手部、補修箇所等の被止水箇所に連続して設置された
本発明の止水材は、不透水層を形成し、また吸水膨潤す
ることにより、長期間にわたり、完全に水の侵入を遮断
することができる。さらに、本発明の止水材は、被止水
下地面が粗面である場合、あるいは段差があるような複
雑な形状である場合においても、下地面を平滑に処理す
る必要がなく、また、レイタンス層が存在する場合や、
あるいは微細なクラックが存在するような場合において
も、止水材の持つ膨潤効果と、目詰め効果により、完全
な止水が可能である。
【0015】
【実施例】次に本発明を下記の実施例に基づきさらに詳
細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら
限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた各
種材料の種類を次表に示す。
【0016】
【表1】
【0017】実施例1成 分 重量部 ベントナイト 40 アスファルト(イ) 30 ゼオライト 20 マシン油 10 以上の各成分を配合し、170℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料1とした。この
試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追
従した。 実施例2成 分 重量部 ベントナイト 45 アスファルト(ハ) 34 ゼオライト 15 マシン油 6 以上の各成分を配合し、200℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料2とした。この
試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追
従した。 実施例3成 分 重量部 ベントナイト 30 アスファルト(イ) 30 珪藻土 30 マシン油 10 以上の各成分を配合し、170℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料3とした。この
試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追
従した。
【0018】実施例4成 分 重量部 ベントナイト 45 アスファルト(イ) 30 紙粉 15 マシン油 10 以上の各成分を配合し、30分間充分混合し、組成物を
得、これを試料4とした。この試料は粘着性を有し、コ
ンクリート表面の凹凸によく追従した。 実施例5成 分 重量部 ベントナイト 30 アスファルト(イ) 29 ゼオライト 35 シリコーン油 6 以上の各成分を配合し、170℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料5とした。この
試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追
従した。 実施例6成 分 重量部 ベントナイト 66 アスファルト(イ) 20 活性炭 5.2 マシン油 8.8 以上の各成分を配合し、170℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料6とした。この
試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追
従した。
【0019】実施例7成 分 重量部 ベントナイト 55 アスファルト(イ) 24 スチレンブタジエンゴム 1 合成油 20 以上の各成分の内、まずアスファルトとスチレンブタジ
エンゴムを配合し、190℃に加熱しながら混合して改
質アスファルト1を得た。この改質アスファルト1に、
次いでベントナイトと合成油を加え、190℃に加熱し
ながら30分間充分混合し、組成物を得、これを試料7
とした。この試料は粘着性を有し、コンクリート表面の
凹凸によく追従した。 実施例8成 分 重量部 ベントナイト 50 アスファルト(イ) 10 ゴム化アスファルト 17 ゼオライト 5 合成油 18 以上の各成分を配合し、190℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料8とした。この
試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追
従した。 実施例9成 分 重量部 ベントナイト 50 アスファルト(イ) 24 ゼオライト 5 スチレンブタジエンゴム 1 マシン油 20 以上の各成分の内、まずアスファルト、ゼオライトおよ
びスチレンブタジエンゴムを配合し、190℃に加熱し
ながら混合して改質アスファルト2を得た。この改質ア
スファルト2に、次いでベントナイトとマシン油を加
え、190℃に加熱しながら30分間充分混合し、組成
物を得、これを試料9とした。この試料は粘着性を有
し、コンクリート表面の凹凸によく追従した。
【0020】実施例10成 分 重量部 ベントナイト 55 アスファルト(イ) 30 ブチルゴム 5 マシン油 10 以上の各成分を配合し、190℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料10とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従した。 実施例11成 分 重量部 ベントナイト 60 アスファルト(イ) 20 ポリブテン樹脂 10 マシン油 10 以上の各成分を配合し、200℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料11とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従した。
【0021】実施例12成 分 重量部 ベントナイト 65 アスファルト(イ) 20 脂肪酸アマイド 5 マシン油 10 以上の各成分を配合し、150℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料12とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従した。 実施例13成 分 重量部 ベントナイト 35 アスファルト(ハ) 54 吸油性高分子 1 マシン油 10 以上の各成分を配合し、120℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料13とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従した。
【0022】比較例1成 分 重量部 ベントナイト 50 アスファルト(ハ) 40 マシン油 10 以上の各成分を配合し、170℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料14とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従したが、保形性が悪く、形状の保持が出来なかっ
た。 比較例2成 分 重量部 ベントナイト 45 アスファルト(イ) 49.5 マシン油 5.5 以上の各成分を配合し、190℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料15とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従したが、保形性が悪く、形状の保持が出来なかっ
た。 比較例3成 分 重量部 アスファルト(イ) 66 ゼオライト 7 スチレンブタジエンゴム 1 マシン油 26 以上の各成分を配合し、190℃に加熱しながら30分
間充分混合し、組成物を得、これを試料16とした。こ
の試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく
追従したが、自己シール性を有しなかった。
【0023】比較例4 マシン油75重量部に、パラフィンろう25重量部を加
え、90℃に加熱しながら激しく撹拌してゲル状の基油
1を得た。この基油1を33重量部と、ベントナイト6
7重量部とを混合し、組成物を得、これを試料17とし
た。この試料は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸
によく追従したが、膨潤後流失した。 比較例5 マシン油100重量部に、ステアリン酸カルシウム50
重量部を加え、激しく撹拌してゲル状の基油2を得た。
この基油2を30重量部とベントナイト70重量部とを
混合し、組成物を得、これを試料18とした。この試料
は粘着性を有し、コンクリート表面の凹凸によく追従し
たが、膨潤後流失した。
【0024】得られた試料1〜18について、膨潤性、
針入度、保形性および耐熱性を下記の方法により測定し
た。各試料1〜18(実施例1〜13、比較例1〜5)
は圧縮反発弾性が小さく、指で押しても復元せずにその
まま変形していた。結果を表2に示す。 (膨潤性)円筒形のアクリル樹脂製セル(内径φ26m
m、高さ50mm)の下部10mmに試料を充填する。
セル上部を水で満たし、蒸発しないように蓋をして、2
5℃恒温室に静置し、一定時間毎に試料の高さを読みと
る。最初の設定値を100%とし、膨潤性をパーセンテ
ージで表示する。(試料の高さが20mmになっていれ
ば200%と表示。) (針入度)JIS K−2530石油アスファルト針入
度試験方法による。 (保形性および耐熱性)試料を径18mm、高さ20m
mの円柱状に成形し、アルミ製のプレート上に設置し、
25℃恒温室に5日間静置し、円柱の広がりを測定す
る。形状に変化がなかったものは◎、円柱が径25mm
未満に広がった場合は○、径25mm以上に広がったも
のは流動性があり、形状保持が出来ないと判断し、×と
表示する。25℃において◎、○であったものについ
て、恒温室を50℃に変えて同様に試験を行い、形状に
変化がなかったものは◎、径25mm未満に広がったも
のは○、径25mm以上に広がったものは耐熱性がない
と判断し、×と表示する。
【0025】
【表2】
【0026】表2に示した結果から明らかなように、本
発明の止水材は、配合により膨潤量が制御可能であり、
しかも、保形性が良く、止水材の流動化は見られなかっ
た。すなわち、本発明の止水材は、針入度の大きい、つ
まり軟らかい試料でも成形された形状を保持し、扱いや
すく、施工性の良い性質であった。一方比較例のもので
は試料14、15のように比較的かためのものでも時間
の経過とともに形状が崩れだし、施工性が悪いばかりで
なく、止水性能にも悪影響があり、止水材として使用す
るには問題がある。しかし、条件によっては、止水材の
流動化が見られない場合があるが、膨潤量が少ない場合
かアスファルトを用いていないものに限られる。
【0027】また、得られた試料1〜18について、図
1に平面図を図2にA−A線断面図を示す透明アクリル
製の止水試験装置を用いて、下記に示す方法により止水
性と耐流失性を確認した。 (試験方法)試料1を下部アクリル板2(長さ280m
m、幅120mm、厚さ20mm)に設けた試料充填溝
3(長さ20mm、幅60mm、深さ10mm)に設置
した。この時、試料の高さは試料充填溝の深さと同じに
し、表面に段差ができないように均した。下部アクリル
板2と、同じサイズの上部アクリル板4(但し、厚さ1
0mm、溝無し)とでシリコンゴムパッキン5を挟み、
水みち8(長さ250mm、幅60mm)としてクリア
ランスLを2mm確保するように、上部アクリル板を設
置した。上部アクリル板に穿孔した注水口6より一定の
流量(500cc/分)となるように調節して通水を開
始し、放置した。図中、7は排水口である。試料の膨潤
状況と流失状況を目視により確認し、止水までの時間と
止水時の水圧を記録した。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】表3に示した結果から明らかなように、本
発明の止水材は、膨潤により間隙を充填し、止水を行う
いわゆる自己シール性を有し、さらに流水による膨潤し
た不透水層の流失を防ぐ優れた止水材である。すなわ
ち、本発明の試料は、施工中などにおいて地下水や雨水
と接触し、吸水膨潤して取り付け後に脱落したり、膨潤
した止水材の不透水層が流水によって流失する事が無
く、長期的に安定した止水効果が得られる優れたもので
ある。一方、比較例のものでは流水により膨潤した不透
水層が流失し、止水効果が低下してしまい、止水材とし
て使用するには問題がある。しかし、条件によっては、
流失しないものもあるが、保形性が悪いかあるいは膨潤
しないものに限られる。
【0030】
【発明の効果】本発明の止水材は、どのような形にも成
形でき、適度な硬さと粘着性を有するためどのような形
状の被止水箇所にも適用でき、現場で用いる際の作業
性、施工性に優れる。また膨潤量の制御が可能であるた
め、施工場所および条件等により、適した使用方法を選
ぶことができる。この場合に本発明の止水材は手で押し
て任意の形に変形できて、しかも、保形性が良く、その
ケーシング、容器等の使用を必要としない。また施工中
などにおいて地下水や雨水と接触し、吸水膨潤して取り
付け後に脱落したり、膨潤した止水材の不透水層が流水
によって流失する事がないので被止水箇所の状況や施工
環境に止水効果が左右されることがない。さらに止水効
果を担うものが膨潤性粘土であるため、耐久性に優れ半
永久的な止水性が期待でき、被止水箇所に亀裂等の間隙
が生じた際も吸水して膨潤した止水材が間隙に充填して
完全に漏水を防止する自己シール性を有する。たとえ経
時的に施工後に亀裂が生じても、吸水すると止水材が可
逆的に膨潤して亀裂を閉塞し、確実に止水作用を奏する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】止水試験装置の平面図である。
【図2】図1に示した装置のA−A線断面図である。
【符号の説明】
1 試料 2 下部アクリル板 3 試料充填溝 4 上部アクリル板 5 シリコンゴムパッキン 6 注水口 7 排水口 8 水みち
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−14715(JP,A) 特開 平3−212463(JP,A) 特開 平8−231956(JP,A) 特開 昭50−110418(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 95/00 C08K 3/34 C09K 3/10

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水膨潤性を有する粘土、アスファルト、
    並びに感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
    選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする水
    膨潤性組成物。
  2. 【請求項2】 (a)水膨潤性を有する粘土5〜90重
    量%、(b)アスファルト5〜90重量%、並びに
    (c)感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
    選ばれる少なくとも1つ0.1〜50重量%を含有して
    なる請求項1記載の水膨潤性組成物。
  3. 【請求項3】 (a)水膨潤性を有する粘土30〜70
    重量%、(b)アスファルト20〜65重量%、並びに
    (c)感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
    選ばれる少なくとも1つ0.5〜40重量%を含有して
    なる請求項1記載の水膨潤性組成物。
  4. 【請求項4】 水膨潤性を有する粘土がスメクタイト系
    粘土あるいは膨潤性雲母である請求項1、2又は3記載
    の水膨潤性組成物。
  5. 【請求項5】 水膨潤性を有する粘土がベントナイトで
    ある請求項1、2又は3記載の水膨潤性組成物。
  6. 【請求項6】 感温性改善剤がゴムであり、補強性充填
    剤がゼオライトである請求項1、2、3、4又は5記載
    の水膨潤性組成物。
  7. 【請求項7】 水膨潤性を有する粘土、アスファルト、
    並びに感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
    選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする水
    膨潤性止水材。
  8. 【請求項8】 (a)水膨潤性を有する粘土5〜90重
    量%、(b)アスファルト5〜90重量%、並びに
    (c)感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
    選ばれる少なくとも1つ0.1〜50重量%を含有して
    なる請求項7記載の水膨潤性止水材。
  9. 【請求項9】 (a)水膨潤性を有する粘土30〜70
    重量%、(b)アスファルト20〜65重量%、並びに
    (c)感温性改善剤および補強性充填剤からなる群から
    選ばれる少なくとも1つ0.5〜40重量%を含有して
    なる請求項7記載の水膨潤性止水材。
  10. 【請求項10】 水膨潤性を有する粘土がスメクタイト
    系粘土あるいは膨潤性雲母である請求項7、8又は9記
    載の水膨潤性止水材。
  11. 【請求項11】 水膨潤性を有する粘土がベントナイト
    である請求項7、8又は9記載の水膨潤性止水材。
  12. 【請求項12】 感温性改善剤がゴムであり、補強性充
    填剤がゼオライトである請求項7、8、9、10又は1
    1記載の水膨潤性止水材。
  13. 【請求項13】 アスファルト、水膨潤性を有する粘土
    および吸油性を有する粘土もしくは有機物を含有し、必
    要により軟化剤を含有することを特徴とする可塑性止水
    材。
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