JP3465285B2 - ナフタレン多価カルボン酸イミドの製造方法 - Google Patents

ナフタレン多価カルボン酸イミドの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はナフタレン多価カルボン
酸類のイミド化合物(以下「ナフタレン多価カルボン酸
イミド」という)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ナフタレン多価カルボン酸イミド、例え
ば、ナフタレンテトラカルボン酸イミドは、各種の有機
顔料や、例えば、特開昭63−225650に記載され
ているように紫外線遮断剤として有用な化合物である。
該化合物の製造方法としては、ナフタレンテトラカルボ
ン酸またはその一無水物、二無水物と第一級アミノ化合
物とをアルカリ水溶液中で反応させる方法や、酢酸中で
スラリー状で反応させる方法(特開平2−22358
2)等が提案されている。
【0003】しかしながら、従来の方法で製造したナフ
タレン多価カルボン酸イミドは未反応物、副生物、熱分
解物等を含むため、色調が悪く、高分子に紫外線遮断剤
として使用する場合に、成形品の色調に問題が生じるこ
とがあった。そのために精製を行っても、充分な色調の
改善は達成できなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決するために鋭意検討した結果、ナフタレン多価カル
ボン酸類とアミノ化合物の反応は脱水反応であり、反応
の平衡論的には反応系に水が存在すると、一見、反応が
進行しにくいと推定されるにもかかわらず、酢酸溶媒を
用いた反応系に特定量の水を存在させた場合は、反応速
度がむしろ上昇し、かつ、驚くべきことに、生成イミド
化合物の色調等も改善されうることを見い出し、本発明
に到達した。
【0005】すなわち、本発明の要旨は、ナフタレン多
価カルボン酸類と第一級アミノ化合物を脂肪族モノカル
ボン酸中で反応させることによりナフタレン多価カルボ
ン酸イミドを製造する方法において、反応系中に水を5
〜80重量%存在させることを特徴とするナフタレン多
価カルボン酸イミドの製造方法に存する。以下、本発明
につき詳細に説明する。
【0006】本発明に用いるナフタレン多価カルボン酸
類とは、ナフタレン多価カルボン酸、およびその無水物
である。ナフタレン多価カルボン酸としては、ナフタレ
ンジカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸等が例示
される。ナフタレンジカルボン酸類としては、2,3−
ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボ
ン酸及びそれらの無水物、あるいはそれらの核置換体等
である。
【0007】ナフタレンテトラカルボン酸としては、
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,5
−ジメチル−2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボ
ン酸、1,4,5,8−テトラクロル−2,3,6,7
−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4−ジブチル−
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,
4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,6−ジ
メチル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン
酸、2,6−ジヒドロキシ−1,4,5,8−ナフタレ
ンテトラカルボン酸、2−ヒドロキシエチル−1,4,
5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,6−ジクロ
ル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、
1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,8
−ジヒドロキシ−1,2,5,6−ナフタレンテトラカ
ルボン酸、3,7,8−トリクロル−1,2,5,6−
ナフタレンテトラカルボン酸、4,6−ジエチル−1,
3,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,7−ジ
ヒドロキシ−1,3,6,8−ナフタレンテトラカルボ
ン酸、3,4,5,6−テトラメチル−1,2,7,8
−ナフタレンテトラカルボン酸、7−ヒドロキシ−1,
2,3,6−ナフタレンテトラカルボン酸等が挙げられ
る。
【0008】ナフタレンテトラカルボン酸一無水物とし
ては、1,8−ジクロル−2,3,6,7−ナフタレン
テトラカルボン酸の2,3位の無水物、1,4,5,8
−テトラヒドロキシ−2,3,6,7−ナフタレンテト
ラカルボン酸の2,3位の無水物、1,4,5,8−ナ
フタレンテトラカルボン酸の1,8位の無水物、2,7
−ジヒドロキシメチル−1,4,5,8−ナフタレンテ
トラカルボン酸の1,8位の無水物、2,6−ジブチル
−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸の1,
8位の無水物、1,3,5,7−ナフタレンテトラカル
ボン酸の1,3位の無水物、1,3,6,8−ナフタレ
ンテトラカルボン酸の1,3位の無水物、4,5−ジメ
チル−1,3,6,8−ナフタレンテトラカルボン酸の
1,3位の無水物、8−ヒドロキシ−1,2,3,6−
ナフタレンテトラカルボン酸の1,2位の無水物等のナ
フタレンテトラカルボン酸一無水物が挙げられる。
【0009】ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とし
ては、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸の
2,3位と6,7位の二無水物、1,8−ジヒドロキシ
−2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸の2,
3位と6,7位の二無水物、1,5,8−トリメチル−
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸の2,3
位と6,7位の二無水物、1,4,5,8−ナフタレン
テトラカルボン酸の1,8位と4,5位の二無水物、
2,7−ジヒドロキシ−1,4,5,8−ナフタレンテ
トラカルボン酸の1,8位と4,5位の二無水物、3−
クロル−1,2,7,8−ナフタレンテトラカルボン酸
の1,2位と7,8位の二無水物、2−ブチル−1,
3,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸の1,3位と
5,7位の二無水物等のナフタレンテトラカルボン酸二
無水物等が挙げられる。
【0010】なお、本発明に用いられるナフタレン多価
カルボン酸類は、上述の例示化合物でも示されているよ
うに、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロ
キシル基、ニトロ基等による核置換体も含まれる。一
方、本発明に用いるアミノ化合物とは、第一級のアミノ
基を有する化合物であれば特に限定はない。例えば、イ
ソブチルアミンや1−アミノ−2−ヒドロキシプロパ
ン、m−イソブチルアニリン等の置換されていてもよい
脂肪族アミンまたは芳香族アミン、グリシン、アラニ
ン、p−アミノ安息香酸等の置換されていてもよいアミ
ノ酸、p−アミノ安息香酸エチルエステル、アミノドデ
カン酸メチルエステル等のアミノ酸誘導体等である。こ
れらのうち、好ましくは、グリシン、p−アミノ安息香
酸、ε−アミノカプロン酸、アミノドデカン酸等のアミ
ノ酸およびそれらのメチルエステルあるいはエチルエス
テルが例示される。
【0011】次に、本発明における反応条件について説
明する。反応原料であるアミノ化合物は、ナフタレン多
価カルボン酸類に対し通常0.5〜20倍当量使用す
る。好ましくは、得ようとするイミド化合物がモノイミ
ド体であれば0.8〜2倍当量であり、得ようとするイ
ミド化合物がジイミド体であれば2〜5倍当量である。
アミノ化合物の量が該範囲にある場合は、所望のイミド
化合物が収率良く、速やかに得られる。
【0012】本発明で、溶媒として用いる脂肪族モノカ
ルボン酸とは、通常、炭素数2〜6の低級脂肪族カルボ
ン酸であって、酢酸、プロピオン酸、トリメチル酢酸、
イソ酢酸等が例示されるが、好ましくは酢酸である。脂
肪族カルボン酸の使用量はナフタレン多価カルボン酸類
の重量に対して通常5〜100重量倍、好ましくは7〜
20重量倍である。脂肪族モノカルボン酸の量が該範囲
にある場合には、反応系の分散性、生産性等がより良好
である。
【0013】本発明では、上記の反応原料と脂肪族モノ
カルボン酸溶媒に加えて反応系中に特定量の水を存在さ
せることを特徴とする。反応系中に存在させる水の量
は、反応系の成分の全重量に対して5〜80重量%であ
り、好ましくは7〜60重量%である。反応系中に存在
する水の量が5重量%未満の場合、イミド化の反応速度
が低下し、得られるイミド化合物の色調が悪化する。ま
た、反応系中に存在する水の量が80重量%より多い場
合はナフタレン多価カルボン酸類の反応系への分散状態
が悪くなり反応速度が著しく低下するので好ましくな
い。
【0014】水を反応系中に存在させる方法としては、
例えば、水と脂肪族モノカルボン酸の混合液を先に調製
しておき、ナフタレン多価カルボン酸類に加えても良い
し、原料の酢酸スラリーに後から加えても良い。また、
含水したナフタレン多価カルボン酸類や含水したアミノ
化合物を原料として用いてもよい。また、反応途中に水
を加えてもよいが、この場合、反応開始時から系中に水
が存在している場合と比べ、イミド化反応速度を高める
効果や得られるイミド化合物の色調を良くする効果が小
さい。従って、反応開始の際にすでに水を5〜80重量
%の範囲に添加しておき、反応中もこの範囲に水の量が
保持させることが好ましい。また、この範囲において、
反応の途中で、逐次、水を系内に追加していく方法も可
能である。
【0015】本発明の方法では、通常含水脂肪族モノカ
ルボン酸中で加熱撹拌することにより反応が実施され
る。ナフタレン多価カルボン酸類及び生成物のナフタレ
ン多価カルボン酸イミドとも実質的に含水脂肪族モノカ
ルボン酸に不溶であるため、終始、懸濁液、すなわち、
スラリー状で反応が進行する。反応温度は、通常50〜
120℃、好ましくは80〜115℃である。また、系
中の水分量を保持するために反応系内を密封系、あるい
は、溶媒を還流させるようにしておくことが好ましい。
【0016】かかる反応によって得られた懸濁反応液
は、溶媒を濾別除去後、過剰のアミノ化合物を除くため
に、適当な溶媒、たとえば、水、アセトン、アルコー
ル、酢酸等で懸洗し、さらに濾過乾燥等によって溶媒を
除去することにより、目的とするナフタレン多価カルボ
ン酸イミドが得られる。
【0017】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例
に限定されるものではない。なお、特記しない限り実施
例中「部」および「%」は「重量部」および「重量%」
を意味するものとし、本実施例で使用した測定法および
用語の意味を以下に示す。
【0018】・イミド化合物の純度 反応液について、液体クロマトグラフィーを用いて分析
を行った。UV検出器(波長350mm)にてクロマト
ピークを検出し、総検出ピーク面積に対するジイミド化
合物のピーク面積の比を百分率表示して純度とした。
【0019】・イミド化合物の色調 色調は、イミド化合物5.0gをSMカラーコンピュー
ター(スガ試験機(株)製)を用いて測定し、L値、a
値で表した。L値、a値はLab系による物質カラース
ケール(uniform color scales)
(UCS)によるものである。L値は明度指数であり、
0〜100の範囲で表現し、100に近いほど明るい。
また、a値は知覚色度指数を示し、−100〜100の
範囲で表現し、100に近いほど赤色外観を示し、−1
00に近いほど緑色外観を示す。
【0020】例えば、本発明の製造方法により製造した
N,N′−ビス(4−エチルカルボキシフェニル)−
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド
の色調は、通常、L値が89以上、a値が−3〜4の範
囲にあり、好ましくは、L値が90以上、a値−2〜3
の範囲にある。該ジイミド化合物の色調が上記の範囲に
ある場合は、目視で明るく劣化色がなく、美観に優れる
し、他の物質に混合して使用する場合には広範囲の調色
が可能となるため非常に好ましい。 ・水分量 三菱化成製 ディジタル微量水分測定装置CA−05型
により測定し、重量%で表した。
【0021】実施例1 1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸(以下、
「1,4,5,8−NTCA」と略す)91.2部とパ
ラアミノ安息香酸エチル118.9部とを反応容器に入
れ、これに酢酸900部と水90部とを加えた後、撹拌
しながら加熱還流下、反応時間を4時間としてイミド化
反応を行った。なお、反応開始時の系中の水分量は7.
6重量%であり、また反応中の系の温度は108℃であ
った。反応終了後、反応混合液を冷却した後濾過し、更
に水500部で2回懸洗後、100℃で真空乾燥して、
N,N′−ビス(4−エチルカルボキシフェニル)−
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド
を得た。表−1に該ジイミド化合物の収率(対NTC
A)、純度、色調を示す。
【0022】実施例2 水の添加量を450部、反応時間を2時間とした以外は
実施例1と同様に操作し、ジイミド化合物を得た。反応
開始時の系中の水分量は28.9%であった。反応中の
系の温度は103℃であった。表−1に該ジイミド化合
物の収率(対NTCA)、純度、色調を示す。
【0023】実施例3 1,4,5,8−NTCA 91.2部を、含水率4
1.5%の1,4,5,8−NTCA 156.0部に
代え、反応時間を5時間とした以外は実施例1と同様に
操作し、ジイミド化合物を得た。反応開始時の系中の水
分量は5.3%であった。反応中の系の温度は112℃
であった。表−1に該ジイミド化合物の収率(対NTC
A)、純度、色調を示す。
【0024】実施例4 反応中の系の温度を90℃にコントロールし、反応時間
を5時間とした以外は実施例2と同様に操作し、ジイミ
ド化合物を得た。反応開始時の系中の水分量は29.0
%であった。表−1に該ジイミド化合物の収率(対NT
CA)、純度、色調を示す。
【0025】実施例5 酢酸の添加量を500部、水の添加量を900部に代
え、反応中の系の温度を100℃にコントロールし、反
応時間を2時間とした以外は実施例1と同様に操作し、
ジイミド化合物を得た。反応開始時の系中の水分量は5
7.0%であった。表−1に該ジイミド化合物の収率
(対NTCA)、純度、色調を示す。
【0026】比較例1 水の添加を行わず、反応時間を7時間とした以外は実施
例1と同様に操作し、該ジイミド化合物を得た。反応開
始時の系中の水分量は0.3%であった。反応中の系の
温度は115℃であった。表−1に該イミド化合物の収
率(対NTCA)、純度、色調を示す。また、反応終了
後、室温に戻してから系中の水分量を求めたところ1.
8%であった。
【0027】実施例6 1,4,5,8−NTCAの代わりに、1,4,5,8
−ナフタレンテトラカルボン酸の1,8位の一無水物を
85.9部使用した以外は実施例1と同様に操作し、ジ
イミド化合物を得た。反応開始時の系中の水分量は7.
5%であった。反応中の系の温度は109℃であった。
表−1に該ジイミド化合物の収率(対NTCA一無水
物)、純度、色調を示す。
【0028】実施例7 1,4,5,8−NTCAの代わりに、1,4,5,8
−ナフタレンテトラカルボン酸の1,8位、4,5位の
二無水物を80.5部使用した以外は実施例1と同様に
操作し、ジイミド化合物を得た。反応開始時の系中の水
分量は7.4%であった。反応中の系の温度は109℃
であった。表−1に該ジイミド化合物の収率(対NTC
A二無水物)、純度、色調を示す。
【0029】実施例8 パラアミノ安息香酸エチル118.9部を、アミノドデ
カン酸155.0部に代えた以外は実施例1と同様に操
作し、ジイミド化合物、N,N′−ビス(カルボキシウ
ンデシル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボ
ン酸ジイミドを得た。反応開始時の系中の水分量は7.
4%であった。反応中の系の温度は108℃であった。
表−1に該ジイミド化合物の収率(対NTCA)、純
度、色調を示す。
【0030】比較例2 水の添加を行わず、反応時間を7時間とした以外は実施
例8と同様に操作し、該イミド化合物を得た。反応開始
時の系中の水分量は0.3%であった。反応中の系の温
度は115℃であった。表−1に該イミド化合物の収率
(対NTCA)、純度、色調を示す。また、反応終了
後、室温に戻してから系中の水分量を求めたところ2.
1%であった。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】本発明により、色調、純度等品質の優れ
たナフタレン多価カルボン酸類のイミド化合物を、温和
な反応条件下、短い反応時間で収率よく得ることができ
る。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−223582(JP,A) パイン,有機化学,廣川書店,第5 版,第286頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 471/06 C07D 487/04 137

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナフタレン多価カルボン酸類と第一級ア
    ミノ化合物を脂肪族モノカルボン酸中で反応させること
    によりナフタレン多価カルボン酸イミドを製造する方法
    において、反応開始時から反応系中に水を5〜80重量
    %存在させることを特徴とするナフタレン多価カルボン
    酸イミドの製造方法。
  2. 【請求項2】 反応前に反応系に水を添加しておくこと
    を特徴とする請求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 ナフタレン多価カルボン酸類がナフタレ
    ンテトラカルボン酸類であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 第一級アミノ化合物が、芳香族アミンで
    あることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記
    載の製造方法。
  5. 【請求項5】 脂肪族モノカルボン酸が酢酸であること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造
    方法。
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