JP3460593B2 - 車両用制御装置 - Google Patents
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Description
特に自動車用制御装置に関し、より詳しくは、制御プロ
グラムを階層化してオブジェクト指向設計手法を適用す
ることにより、センサ及びアクチュエータ類や駆動回路
やマイコン等のハードウェア部品を変更した場合でも、
プログラム開発工数を大幅に低減することができ、その
結果、ソフトウェアの再利用性を向上させるようにした
車両用制御装置に関する。
御装置の一例ソフトウェアの説明図である。従来、自動
車用制御装置のソフトウェアは、図9(A)に示す如
く、燃料噴射処理等その目的とする処理に着目し、処理
の流れに沿って一連のプログラムを記述していた。詳し
くは、エンジン制御の燃料噴射制御プログラムでは、
「現在のエンジン状態に最適な量で燃料を噴射する」と
いう一連の処理に着目し、例えば、以下のようなプログ
ラム構成となっている。
(ハードウェア)を制御するI/Oプログラムが含まれ
たユーザプログラムにおいて、ベースルーチンにてエン
ジン回転数等のパラメータを基に、現在の運転状態に適
した基本噴射量を求め(基本噴射量演算)、この基本噴
射量となるインジェクタ駆動回路への基本通電時間を算
出し、インジェクタ(燃料噴射弁)のハードウェア特性
で決まる無効噴射時間を算出し(無効噴射量演算)、こ
れを基本通電時間に加算してインジェクタ駆動回路への
最終的な通電時間を求める(通電時間演算)。そして、
所定のエンジン回転位置(クランク角位置)毎に実行さ
れる割り込みルーチンにより上記通電時間で噴射を実行
する。この処理を一連のプログラムで記述している。
グラムを作成する際には、マイコンやセンサやインジェ
クタ等のハードウェア特性を考慮しつつ、基本噴射量の
算出から無効噴射時間を加算し、さらに通電の実行に至
る処理を一連に切れ目なく記述するものであるため、一
部の変更を実行したくとも、その一部の変更だけでは済
まず、他の部分も見直し修正しなければならず、その結
果、他の機種のエンジンを制御するプログラムとの再利
用性が乏しいという問題点があった。
ムを変更する場合でも、このプログラムの切れ目が明確
でない構造であるため、無効噴射量演算や通電時間演算
のプログラムまでも見直し修正しなければならないとい
う問題点があった。また、CPUを変更した場合でもユ
ーザプログラムの全体を見直さなければならい、という
問題点があった。
とんど新たに一連のプログラムを記述する必要があると
共に、プログラム作成者自身が制御内容、演算方法は勿
論のこと、ハードウェアに依存した処理のプログラム内
容を理解する必要もあり、その結果、プログラム開発工
数は膨大なものとなっていた。以下に、ハードウェアと
して、例えば、インジェクタを変更する場合について詳
しく説明する。
り、インジェクタへの通電時間(具体的にはソレノイド
コイルへの通電時間)に対する動的噴射量の関係を示
す。図において、縦軸は動的噴射量(q)であり、横軸
は通電時間T(ms)である。ここで、動的噴射量とは
ある通電時間における噴射量であり、静的噴射量(Q)
とは規定圧力下でニードルバルブを最大リフト位置に保
持したときに単位時間当たり噴射される量である。さら
に、無効噴射時間(Tva,Tvb)とはインジェクタ
への通電開始から実際にニードルバルブが開弁するまで
の時間的な遅れである。
ーク、噴射口の面積、噴射場所の圧力と燃料圧との差分
等に依存するが、これらの諸量が一旦決定されると、ニ
ードルバルブの開弁している時間、即ち、ソレノイドコ
イルへの通電時間に依存することになる。従って、図1
0に示すように、ある通電時間の範囲において直線性を
持っている。その勾配は図示のように静的噴射量Qで示
される。
ら特性bを持つインジェクタbに変更した場合、図示の
ように無効噴射時間がTvaからTvbに変化する。こ
れは、上記の諸量の内で、各インジェクタのストローク
のバラツキ、噴射口のバラツキ、等の機械的な要因(即
ち、ハードウェア特性)によるものである。従って、イ
ンジェクタaからインジェクタbに変更した場合に、エ
ンジン制御装置に変更がなくとも(即ち、燃料噴射量の
演算プログラムに変更が無くとも)、インジェクタの変
更に伴う無効噴射時間の変化に対処するために、演算プ
ログラム全体を見直しその内容から必要個所(この場
合、無効噴射時間に関係する個所)を適宜変更するとい
った作業をせざるを得なかった。
として、例えば、特開平7−277105号公報に示す
ものがある。これは、図9(B)に示すように、CPU
(ハードウェア)に対する入出力処理を行うI/Oプロ
グラムと、制御演算するユーザプログラム(演算プログ
ラム)とを分離して独立に設けることにより、ハードウ
ェアの変更時には演算プログラムは変更せずに、I/O
プログラムのみを変更することで制御用ソフトウェアの
開発工数を低減するものである。
ない演算プログラム部分の開発工数は削減できるが、例
えば、駆動回路の一部を変更しただけでも(例えば、モ
ータ駆動回路のみ変更した場合)、I/Oプログラムに
はセンサ類、アクチュエータ類、駆動回路、等のプログ
ラムが一連に記述されているために、例え駆動回路の一
部の変更であってもI/Oプログラム全体を見直す必要
があり、やはり開発工数は膨大なものとなる問題点があ
った。
マイコンをはじめとしてアクチュエータを駆動するため
の駆動IC、入力回路の1つであるA/D変換器等、複
数のハードウェア(電子部品)が存在する。そして、各
ハードウェアのライフサイクルはその性能やコストによ
ってそれぞれ異なるため、結果的には新たな自動車用制
御装置を開発する度にそれを構成するハードウェアの一
部も変更されている。従って、上述した従来技術を用い
たとしても、自動車用制御装置が変更される度に大幅な
プログラム修正を要することになる。
装置のCPU(ハードウェア)変更のみ配慮したもので
あり、インジェクタ等のアクチュエータ類や水温センサ
等のセンサ類を変更した場合には、やはり演算プログラ
ムを変更せざるを得ないという問題点もある。本発明
は、自動車用の制御システム全体を考慮し、例えば、セ
ンサ類やアクチュエータ類や駆動回路の一部等、システ
ムを構成するハードウェアに変更が生じた場合でも、こ
れの変更に対するプログラムの変更個所を極力低減させ
ることによりプログラム開発工数を削減し、ソフトウェ
アの再利用性を向上させることを目的とする。
10等の発明によれば、 1)第2の階層にセンサ類等ハードウェアの特性や作動
をモデル化して記述したオブジェクト指向設計されたプ
ログラムを有することにより、センサ類、アクチュエー
タ類のみの変更があった場合でも第2の階層のプログラ
ム変更を著しく低減することができる。また、電気信号
と物理量とを変換するといった観点で共通化しているた
めオブジェクト指向設計手法におけるモデル化も容易と
なる。
アクチュエータ類に適用する上位階層、入力回路又は駆
動回路に適用する中位階層、及びマイコンに適用する下
位階層の3つに階層化したことにより、自動車用制御シ
ステム全体を構成する部品のライフサイクルにあったプ
ログラム構造を可能とし、第2の階層のプログラム変更
を著しく低減できる。
発工数を著しく低減できるので、ソフトウェアの再利用
性が顕著に改善される。
ンジン制御装置について、図面に沿って説明する。図1
はエンジン制御ユニットとその周辺のハードウェア構成
を示す要部ブロック図である。図1において、エンジン
制御ユニット(ECU)1は、入力回路部2と、マイク
ロコンピュータ(マイコン)3と、出力回路部4で構成
される。
水温センサ21、エンジン回転数を検出するクランク角
センサ22、等の各種センサからの検出信号を受けるた
めの、A/D変換器23、波形整形回路24、等で構成
される。また、マイコン3は入力回路部2からの検出信
号に基づきエンジンに対する最適制御量を演算し、その
演算結果に基づき出力回路部4を駆動するための駆動信
号を出力する。また、マイコン3は、この演算を行うプ
ログラム及び参照データを格納したROM31と、演算
結果を一時的に格納するRAM32とを有する。
ドルスピード・コントロールバルブ(ISC)弁42等
のアクチュエータ類を駆動するためのインジェクタ駆動
回路43、ISC弁駆動回路44等から構成される。本
実施形態の特徴であるエンジン制御プログラムは、「オ
ブジェクト指向設計」と称する手法を用いてプログラミ
ングされ、ROM31に格納されている。ここで、オブ
ジェクト指向設計について以下に説明する。
ソフトウェアがその目的とする処理(例えば、燃料噴射
という処理)に着目したものに対し、そのモノを基本単
位にモデル化し、そのモノの振る舞い(作動)で処理を
記述するものである。この基本単位をオブジェクトと称
し、プログラムはこのオブジェクトを最小構成単位とし
て記述する。プログラム全体としてはオブジェクト間を
要求や応答といったやり取り(「メッセージ」と称す
る)により結合することで、一連の処理が実行される。
オブジェクトは、データ(属性とも呼ばれる)とデータ
を処理する手続き(「メソッド」と称する)とを一体化
した形で記述され、オブジェクトは他のオブジェクトか
らの要求(メッセージ)を受信することによりメソッド
が実行される。なお、オブジェクトへの仕事の依頼はメ
ソッドを介してのみ行うことができ、オブジェクト内の
データへの直接のアクセスは禁止される。
概念の説明図である。具体的には図3及び図4において
説明するが、本発明では、エンジン制御プログラムがア
プリケーションレイヤとプラットフォームレイヤの2階
層で構成され、かつプラットフォームレイヤは、センサ
類やアクチュエータ類(図1の21,22,41,4
2)をモデル化しそのモノの特性や振る舞い(作動)を
記述した各種のオブジェクトで構成される「センサ・ア
クチュエータレイヤ」(図3の210に対応)と、入力
回路部や出力回路部(図1の2,4)の特性や作動をモ
デル化して記述した各種のオブジェクトで構成される
「デバイスドライバレイヤ」(図3の220に対応)
と、マイコンの特性や作動をモデル化して記述したオブ
ジェクトで構成される「バーチャルMPUレイヤ」(図
3の230に対応)で構成される。
合には、本発明ではバーチャルMPUレイヤのプログラ
ムのみを変更すれば済み、他のセンサ・アクチュエータ
レイヤやデバイスドライバレイヤのプログラムを変更す
る必要はなく、他のプログラムへ影響を及ぼさないよう
になっている。即ち、マイコンの振る舞いの特徴をバー
チャルMPUレイヤに持たせるので、マイコンを変更し
た場合でもバーチャルMPUレイヤのみを変更し、駆動
回路の振る舞いを記述したデバイスドライバレイヤや、
センサ及びアクチュエータ類の振る舞いを記述したセン
サ・アクチュエータレイヤのプログラムを修正する必要
はない。
出力バッファ、IBは入力バッファ、NESはエンジン
回転数センサ、INJはインジェクタ、SWはスイッ
チ、WTSは水温センサ、である。また、OSは「オペ
レーティング・システム」であり、各プログラムの実行
周期を決める「スケジューリング」等を行う基本プログ
ラムであるが、本発明の思想とは直接関係するものでは
ない。
の構造を具体的に記載した説明図である。また、図4は
インジェクタを例としてオブジェクトにより示した振る
舞いの説明図である。図3に示すように、エンジン制御
プログラムは、第1の階層としてのアプリケーション・
レイヤ(APレイヤ)100と第2の階層としてのプラ
ットフォーム・レイヤ(PFレイヤ)200とで構成さ
れている。
しない純粋な制御の世界(制御量の算出ロジック等)を
表現する制御量算出ロジックとしてのプログラムが記述
されている。そして、このAPレイヤには、現在の運転
状態に最適な燃料噴射量qを演算するENGオブジェク
ト(ENG)101、変速機に制御要求を出すECTオ
ブジェクト(ECT)102等が、制御単位毎に分類化
された状態で組み込まれている。
類、アクチュエータ類等のシステムハードウェア部品、
ECU、マイコンのハードウェアの世界を表現するプロ
グラムが記述される。そして、本出願人らは、エンジン
制御システム全体を考慮し、エンジン制御装置の特質に
マッチした、即ち、システムを構成するハードウェアの
あらゆる変更に対してAPレイヤに存在するプログラム
を変更することなく使用できるように、PFレイヤ20
0を以下に述べる観点に着目して上位、中位、下位の3
つのレイヤに階層化されている。
ュエータレイヤに対応するセンサ・アクチュエータレイ
ヤ(SAレイヤ)210、中位レイヤをデバイス・ドラ
イバレイヤ(DDレイヤ)220、下位レイヤをバーチ
ャルMPUレイヤ(VMレイヤ)230、と定義する。
SAレイヤ210は、エンジン制御に必要な各種センサ
類及びアクチュエータ類の入出力機能をAPレイヤ10
0の各オブジェクトに提供するものである。ここには、
図1に示す水温センサ21、インジェクタ41、クラン
ク角センサ、等のエンジンECU1の外部に存在する部
品(パワートレイン部品)に対して、部品単位毎にその
部品の持つ特性や振る舞いをモデル化したオブジェクト
(Objで示す)が複数存在する。
振る舞い(メソッド)は「噴射する」であり、図4
(A),(B)を比べれば明らかなように、インジェク
タaをインジェクタbに変更してもその振る舞い(噴射
する)は同じである。即ち、インジェクタを変更すると
は、各々の無効噴射時間、最小通電時間、最大通電時間
等のインジェクタ特性を変更することである。
性を考慮してモデル化すると共に、現実のモノに対応さ
せたプログラム単位にしたことにより、インジェクタ
(ハードウェア部品)を変更しても、インジェクタのオ
ブジェクト(後述の「インジェクタObj」)のみ変更
すればよく、それ以外のプログラムを変更する必要はな
い。即ち、インジェクタ(ハードウェア部品)自体の特
性はこのインジェクタObjの中に「情報隠蔽」(以
下、単に「隠蔽」という。1つのオブジェクトの状態と
振る舞いが他のオブジェクトから見えず隠されている状
態)されたことになり、このオブジェクト以外でインジ
ェクタ特性を意識する必要はない。
Aレイヤ210には、水温センサオブジェクト(水温セ
ンサObj)211、インジェクタオブジェクト(イン
ジェクタObj)212、クランク角センサオブジェク
ト(クランク角センサObj)213を示す。また、D
Dレイヤ220には、図1に示すエンジンECU1内に
ある入力回路部2、出力回路部4の振る舞いをモデル化
したオブジェクトが存在する。本例では、インジェクタ
駆動回路43をモデル化したインジェクタ・ドライバオ
ブジェクト(INJ駆動Obj)221と、ISC弁駆
動回路44に対するISCドライバ・オブジェクト(I
SC駆動Obj)222とを示す。INJ駆動Obj2
21により、インジェクタ駆動回路43の電子回路特性
やインジェクタ41とマイコン3とのI/Oマッピング
(インジェクタとマイコンとの接続)等の情報が隠蔽さ
れる。
のI/Oデバイスに対応し、マイコンの構造(アーキテ
クチャ)や特性が隠蔽される。ここでは、インジェクタ
41を駆動するためのパルス信号を出力するパルス発生
器をモデル化したパルス発生器オブジェクト(パルス発
生Obj)231を図示する。なお、パルス発生Obj
231以外に、ポート、パルス入力器等のオブジェクト
が存在する。
のエンジン制御システム全体を考慮し、システムを構成
するハードウェア部品をモデル化する場合、PFレイヤ
200を上位、中位、下位の3つのレイヤに階層化した
ことにより、インジェクタ、インジェクタ駆動回路等の
ライフサイクルの異なるハードウェア部品を「局所化」
することができ、エンジン制御システムの変更に対して
アプリケーション・プログラムは勿論のこと、ハードウ
ェアの特性を隠蔽するプラットフォーム・プログラムの
変更も最小限にすることができる。
る処理(手続き)を、図5〜図8に示すような噴射制御
処理を例として以下に説明する。図5は一般的な噴射制
御に関するタイムチャートを示す。尚、実際のエンジン
制御においては、噴射開始時期の設定等で複雑な演算及
び処理を行っているが、本発明の特徴とは関連性の薄い
部分は説明を簡略化するために省略する。
気TDC(上死点)より90°CA(クランク角)前の
タイミング(BTDC90°CA)を検出すると、噴射
開始タイミングと最適な噴射量を演算し、これを基に噴
射開始時刻Zsと噴射終了時刻Zeをタイマーにセット
する。これにより、この時刻になるとマイコン3(パル
ス発生器)から図5の波形(X)のような駆動信号が出
力されインジェクタ駆動回路43がオンする。インジェ
クタ駆動回路43が作動することでインジェクタ41の
ソレノイドコイルに電流が流れ、インジェクタ41内の
ニードルバルブが開弁し燃料が噴射される。
通電時間Tiに対して、図5の区間(Y)で示す部分で
あり、この図から明らかなように、最適な量で噴射する
ためには、インジェクタ41の駆動遅れ時間Tv(即
ち、インジェクタのソレノイドコイルへの通電開始から
実際にニードルバルブが開弁するまでの時間的な遅れ、
インジェクタ毎のハードウェア特性によるバラツキあ
り)や、駆動回路の作動開始遅れ時間Tsd(即ち、マ
イコンからの駆動信号を受けてから駆動回路がオンする
までの時間的な遅れ、回路素子によるバラツキあり、な
お、Tedは駆動信号がオフしてから駆動回路がオフす
るまでの遅れ時間)を考慮して噴射開始時刻Zs等を設
定する必要がある。そして、上述したように、この遅れ
時間TvやTsdはインジェクタ41やインジェクタ駆
動回路43のハードウェア特性に依存して変化する。
ドウェア特性を隠蔽し、ハードウェアの変更に対してご
く僅かなプログラム変更で対応できるようハードウェア
毎(オブジェクト毎)にモデル化している。図6はイン
ジェクタオブジェクト等の各モデルを示す図であり、U
ML(Unified Modeling Language, オブジェクト指向分
析及び設計のためのモデリング言語として従来から使わ
れていた数種類の記述法を統合したもの)によって記述
したクラス図である。そしてこのようなクラス図によっ
て、各オブジェクトにおける静的な情報を表現すること
ができる。
INJ駆動Obj、パルス発生Obj(図3の各オブジ
ェクト,212,221,231に対応)で示す如く、
各オブジェクト毎にブロック化され、各ブロックの上段
には各オブジェクトの名称(212,221,23
1)、中段にはデータ(属性)(212a,221a,
231a)、下段にはメソッド(212b,221b,
231b)が記載されている。そして、各ブロック間の
関連はブロック間を結ぶ直線L1,L2によって示され
ている。
タは212aに示すように、「静的噴射量」、「最小通
電時間」、「最大通電時間」及び「無効噴射時間」であ
る。また、メソッドは212bに示すように、「噴射要
求」及び「噴射中止要求」である。図7は図6にてモデ
ル化したプログラムが実行される処理の流れを示すメッ
セージ・シーケンスチャート(MSC)であり、各オブ
ジェクトにて実際に実行される処理(メソッド)が示さ
れ、矢印は他のオブジェクトへのメッセージ発行を示
す。また、図8(A),(B)は噴射アプリケーション
からの「噴射要求」のメッセージ発行のフローチャート
である。
すENGオブジェクト101の中にある噴射アプリケー
ションから、インジェクタObj212に対して噴射要
求のメッセージ(1)として発行される。図7の説明前
に、この処理を図8(A),(B)に示すフローチャー
トで説明する。図8において、(A)はベースルーチン
を示し、このルーチンは8ms毎に実行される。ベース
ルーチンではエンジン状態を検出する各種センサからの
情報(検出値)を読み込み(S1)、燃料の動的噴射量
qを算出する(S2)。噴射特性はバッテリ電圧に応じ
て変化するため現在のバッテリ電圧を基に通電開始時間
Tsも算出する(S3)。そして、これらのステップが
終了すると、燃料以外の他の制御、例えば点火時期の制
御、に移行してベースルーチンを再度開始する(S
4)。
し、30°CA毎に実行される。図5に示すように、割
り込みルーチンでは現在の割り込みタイミングが吸気T
DCより90°CA前のタイミング(BTDC90°C
A)か否か判断し(S11)、このタイミングならば
(YES)、インジェクタObj212に対してこの噴
射要求のメッセージ(1)を発行する(S12)。
12が噴射アプリケーションからの噴射要求メッセージ
(1)を受信すると、メッセージと共に送られる動的噴
射量qに基づき、インジェクタ41の特性のみを考慮し
て動的噴射量qを達成するための通電時間Tiを、下記
式を基に求める。 Ti=(q/Q)×60+Tv 即ち、無効噴射時間Tvを加算することで、ニードルバ
ルブが開弁するまでの遅れ時間を考慮したものとなる。
尚、ここでの通電時間Tiは図5の駆動回路出力のオン
時間で示され、Qは静的噴射量である(図10参照)。
間Tminと最大噴射量時間Tmaxの範囲内となるよ
うにガードし(Tmin≦Ti≦Tmax)、INJ駆
動Obj221に対して通電要求のメッセージ(2)を
発行する。尚、最小噴射量時間Tminと最大噴射量時
間Tmaxもニードルバルブのリスト量の相違等、イン
ジェクタ41の機械的な特性(ハードウェア特性)で変
化する値である。
のメッセージを受信すると、図8(A)で求めた通電開
始時間Tsから通電開始時刻Zsを求める(時間を時刻
に変換する。図5に示すように、Zs=Zne+Tsで
ある)と共に、インジェクタ駆動回路43の遅れ時間T
sdを考慮して通電開始時刻Zsを補正した最終的な通
電開始時刻Zpを求め(図5に示すように、Zp=Zs
−Tsdである)、パルス発生要求のメッセージ(3)
を発行する。
生要求のメッセージ(3)を受信すると、時刻Zpのタ
イミングでマイコン3からハイレベルの信号(Vp)を
出力するようにコンペアレジスタ(図示せず)にデータ
をセットする。これにより、時刻Zpでマイコン出力は
ハイレベルとなり、インジェクタからの噴射が開始さ
れ、その後、パルス発生Obj231は通電開始通知の
メッセージ(4)をインジェクタ駆動Obj221に発
行する。
始通知のメッセージ(4)を受信すると、通電開始時刻
Zpに通電時間Tiを加算して通電終了時刻Zeを求め
ると共に、インジェクタ駆動回路43の遅れ時間Tsd
を考慮して通電開始時刻Zeを補正した最終的な通電開
始時刻Zpを求め(図5参照)、パルス発生要求のメッ
セージ(5)をパルス発生Obj231に発行する。
生要求のメッセージ(5)を受信すると、時刻Zpのタ
イミングでマイコン3からローレベルの信号(Vp)を
出力するようにコンペアレジスタにデータをセットす
る。これにより、時刻Zeでマイコン出力はローレベル
となり、インジェクタからの噴射が終了する。なお、図
6に示す各オブジェクト(Obj)のメソッド中の「噴
射中止要求」、「通電中止要求」及び「パルス中止要
求」については、例えば、噴射要求のメッセージ発行後
に、「燃料カット」を目的として噴射中止要求のメッセ
ージを発行する場合があるが、このメソッドの説明をす
ると記載を複雑にするので詳細説明を省略する。
ンで実行される処理(図8)はハードウェアに依存しな
い純粋な制御演算のみが実行され、インジェクタ41や
駆動回路43が変更されても、噴射量qを求めるといっ
た演算処理や噴射要求のメッセージを発行するといった
処理に変わりはなく、噴射アプリケーションのプログラ
ムの再利用が可能である。即ち、エンジン制御システム
全体を構成するハードウェア部品(インジェクタ等のエ
ンジンECU1外部にある部品も含めて)にいかなる変
更があっても噴射アプリケーション等のAPレイヤ10
0に依存するプログラムを変更することはない。
更された場合でも、インジェクタObjに対するメッセ
ージやインジェクタObjからのメッセージ、上述で言
うなら、噴射アプリケーションが噴射要求を発行する、
或いは、INJ駆動Obj221が通電要求を受信する
という行為自体が変更されることはない。更には、噴射
アプリケーションが噴射量qを求め、インジェクタOb
j212に情報を与えるという行為も普遍的である。従
って、このような場合でもインジェクタObj212の
プログラムのみ変更するだけでよく、INJ駆動Obj
221等のプログラムを変更することはない。
ヤ210、中位をDDレイヤ220、下位をVMレイヤ
230の3つに階層化することで、エンジン制御システ
ムの中で変更されるハードウェア部品単位に適用したプ
ログラム構造を実現でき、ライフサイクルや対象エンジ
ンの制御仕様の違いにより比較的頻繁に変更される入力
回路や駆動回路に対してハードウェアに依存するPFレ
イヤのプログラム変更個所を限りなく小さなものとする
ことができる。
タのように電気信号を物理量に変換するモノ、DDレイ
ヤ220にはマイコンからのデジタル信号を電気信号に
変換するモノ、そしてVMレイヤにはデジタル信号を発
生するモノに、といったように各レイヤの情報の質を揃
えたことにより、標準的なインタフェースを提供するこ
とできる。即ち、オブジェクト指向設計を適用した場
合、オブジェクト間を結ぶメッセージを噴射制御、点火
制御に限らず標準化し易くなり、テンプレート等を適用
したプログラミングが容易にできる。
ア構成を示す要部ブロック図である。
明図である。
構造を具体的に記載した説明図である。
る舞いの説明図である。
る。
クラス図である。
処理の流れを示すメッセージ・シーケンスチャート(M
SC)である。
「噴射要求」のメッセージ発行のフローチャートであ
る。
例ソフトウェアの説明図である。
Claims (11)
- 【請求項1】 ハードウェアとして車両の運転状態を検
出するセンサ類と、前記車両の各部を動作させるアクチ
ュエータ類と、前記センサ類からの検出信号を受ける入
力回路部と、制御プログラムを搭載し該入力回路部から
の信号を受け車両の状態に基づき最適な制御量を演算し
前記アクチュエータ類を駆動する制御信号を発生するマ
イクロコンピュータと、前記制御信号を受け前記アクチ
ュエータ類を駆動するための駆動信号を出力する駆動回
路部とを備えた車両用制御装置において、 前記制御プログラムは、前記ハードウェアに依存しない
制御量算出ロジックを記述した第1の階層と、前記ハー
ドウェアに依存する制御量算出ロジックを記述した第2
の階層とを有し、 かつ、前記第2の階層には、前記ハードウェアの内の、
少なくとも前記センサ類、アクチュエータ類等の個々の
物理的な構成を、個々の論理的な構成に変換しモデル化
してそのモノの特性や振る舞いを記述した上位の階層を
含むことを特徴とする車両用制御装置。 - 【請求項2】 ハードウェアとして車両の運転状態を検
出するセンサ類と、前記車両の各部を動作させるアクチ
ュエータ類と、前記センサ類からの検出信号を受ける入
力回路部と、制御プログラムを搭載し該入力回路部から
の信号を受け車両の状態に基づき最適な制御量を演算し
前記アクチュエータ類を駆動する制御信号を発生するマ
イクロコンピュータと、前記制御信号を受け前記アクチ
ュエータ類を駆動するための駆動信号を出力する駆動回
路部とを備えた車両用制御装置において、 前記制御プログラムは、前記ハードウェアに依存しない
制御量算出ロジックを記述した第1の階層と、前記ハー
ドウェアに依存する制御量算出ロジックを記述した第2
の階層とを有し、 前記第2の階層は、さらに前記センサ類、前記アクチュ
エータ類等の特性や作動をモデル化して記述した上位の
階層と、前記入力回路部、前記駆動回路等の特性や作動
をモデル化して記述した中位の階層と、前記マイクロコ
ンピュータの特性や作動をモデル化して記述した下位の
階層とに階層化されることを特徴とする車両用制御装
置。 - 【請求項3】 ハードウェアとして車両の運転状態を検
出するセンサ類と、前記車両の各部を動作させるアクチ
ュエータ類と、前記センサ類からの検出信号を受ける入
力回路部と、制御プログラムを搭載し該入力回路部から
の信号を受け車両の状態に基づき最適な制御量を演算し
前記アクチュエータ類を駆動する制御信号を発生するマ
イクロコンピュータと、前記制御信号を受け前記アクチ
ュエータ類を駆動するための駆動信号を出力する駆動回
路部とを備えた車両用制御装置において、 前記制御プログラムは、前記ハードウェアに依存しない
制御量算出ロジックを記述した第1の階層と、前記ハー
ドウェアに依存する制御量算出ロジックを記述した第2
の階層とを有し、 かつ前記第2の階層は、前記第1の階層に存在するアプ
リケーションソフトに対して制御情報を提供する前記セ
ンサ類、前記アクチュエータ類等の特性や作動をモデル
化して記述したプログラムが存在する上位の階層と、前
記制御情報を前記マイクロコンピュータへのデジタル情
報に変換する中位の階層と、デジタル情報を出力する下
位の階層とに階層化されていることを特徴とする車両用
制御装置。 - 【請求項4】 前記各階層に存在するプログラムはオブ
ジェクト指向設計されたプログラムである請求項1〜3
のいずれかに記載の車両用制御装置。 - 【請求項5】 制御プログラムを搭載し車両の各状態を
制御するマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピ
ュータに検出データを入力しかつ制御データを出力する
周辺回路群と、前記周辺回路群に検出信号を入力しかつ
前記制御データにより動作し前記車両の各部を制御する
外部部品群とを備えた車両用制御装置において、 前記制御プログラムは、 前記外部部品群の個々が持つ特性及び作動をモデル化し
記述したオブジェクト指向設計されたプログラムを有す
るセンサ・アクチュエータレイヤと、 前記周辺回路群の個々が持つ特性及び作動をモデル化し
記述したオブジェクト指向設計されたプログラムを有す
るデバイスドライバレイヤと、 前記マイクロコンピュータの特性及び作動をモデル化し
記述したオブジェクト指向設計されたプログラムを有す
るバーチャルMPUレイヤと、 を具備することを特徴とする車両用制御装置。 - 【請求項6】 前記外部部品群には、各種センサ類及び
各種アクチュエータ類を含む請求項5に記載の車両用制
御装置。 - 【請求項7】 前記周辺回路群には、少なくとも、A/
D変換回路、波形整形回路、インジェクタ駆動回路を含
む請求項5に記載の車両用制御装置。 - 【請求項8】 前記制御プログラムには、ハードウェア
に依存しないアプリケーションレイヤをさらに含み、前
記アプリケーションレイヤは、前記センサ・アクチュエ
ータレイヤから各種制御情報を受けるようになっている
請求項5に記載の車両用制御装置。 - 【請求項9】 ハードウェアとして車両の運転状態を検
出するセンサ類と、前記車両の各部を動作させるアクチ
ュエータ類と、前記センサ類からの検出信号を受ける入
力回路部と、制御プログラムを搭載し該入力回路部から
の信号を受け車両の状態に基づき最適な制御量を演算し
前記アクチュエータ類を駆動する制御信号を発生するマ
イクロコンピュータと、前記制御信号を受け前記アクチ
ュエータ類を駆動するための駆動信号を出力する駆動回
路部とを備えた車両用制御装置において、 前記制御プログラムは、前記ハードウェアに依存しない
制御量算出ロジックを記述した第1の階層と、前記ハー
ドウェアに依存する制御量算出ロジックを記述した第2
の階層とを有し、 かつ、前記第2の階層には、前記ハードウェアの内の、
前記センサ類、前記アクチュエータ類等のハードウェア
に対応するプログラムが各ハードウェア毎に複数備えら
れており、前記プログラムはハードウェアのオブジェク
トの状態と振る舞いが他のハードウェアのオブジェクト
から見えずに隠された状態となるようハードウェア的な
特性を隠蔽したオブジェクト指向設計されたプログラム
となっていることを特徴とする車両用制御装置。 - 【請求項10】 前記ハードウェア的な特性とは、少な
くともインジェクタの無効噴射時間、最小通電時間及び
最大通電時間のいずれかを含むことを特徴とする請求項
9に記載の車両用制御装置。 - 【請求項11】 前記第2の階層を、上位、中位、下位
の3層に階層化したことによりライフサイクルの異なる
ハードウェア部品を局所化したことを特徴とする請求項
2又は3に記載の車両用制御装置。
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