JP3458664B2 - Dwtt特性に優れるuoe鋼管用素材およびその製造方法 - Google Patents

Dwtt特性に優れるuoe鋼管用素材およびその製造方法

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JP3458664B2 JP19092797A JP19092797A JP3458664B2 JP 3458664 B2 JP3458664 B2 JP 3458664B2 JP 19092797 A JP19092797 A JP 19092797A JP 19092797 A JP19092797 A JP 19092797A JP 3458664 B2 JP3458664 B2 JP 3458664B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原油や天然ガスを
輸送するパイプラインに使われる鋼管用素材に関し、優
れた脆性破壊特性、特に管厚が15mm以上であっても優れ
たDWTT(Dropweight tear test) 特性を有するUO
E鋼管用素材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原油や天然ガスなどのパイプライン輸送
において、最近、輸送効率を上げるため高圧の操業が指
向されており、これに伴い強度が高くかつ板厚の厚いU
OE鋼管が要求されている。そこで、パイプラインの脆
性破壊に対する安全性を一層高めることが必要となり、
脆性破壊の発生特性を向上させることはもちろん、発生
した脆性破壊を停止する能力を向上させることも必要と
なってきた。前者の特性は、シャルピー衝撃試験の破面
遷移温度やCTOD試験により評価され、後者の特性
は、DWTT試験における破面遷移温度で評価される。
【0003】ところで、上記脆性破壊特性を改善するた
めに、これまでにも多くの試みが行われてきた。例え
ば、特開平1−242718号公報には、(α+γ)2
相域圧延を実施することにより鋼板に(100 )集合組織
を発達せしめ、板厚方向方向(Z方向)のへき開強度を
低下させてDWTT試験片の破面上にセパレーションを
生じさせることにより亀裂先端の3軸応力を緩和させ
て、圧延方向(L方向)、圧延直角方向(T方向)の靱
性を向上させる技術が提案されている。また、特開平2
−217418号公報には、圧延用スラブの2回加熱に
より混粒とし、圧延終了から加速冷却開始までの空冷時
に粗大かつひずみの少ないポリゴナルフェライトを析出
させることにより、DWTT特性を改善する技術が提案
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術における、(α+γ)2相域で圧延する方法は、
フェライト相の冷間加工による加工硬化を伴うため、特
にシャルピー試験における衝撃吸収エネルギ−を低下さ
せるという問題があった。また、スラブを2回加熱する
方法はコスト的に不利となり、かつ初析フェライトの存
在は高強度化の点で不利となるという問題があった。そ
こで本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を有利
に解決し、優れた脆性破壊特性を有するUOE鋼管用素
材とその製造方法を提供することにある。本発明の他の
目的は、シャルピー試験における衝撃吸収エネルギ−の
低下を招くことなく、良好なDWTT特性(脆性亀裂伝
播停止特性)を付与した、脆性破壊特性に優れるUOE
鋼管用素材を提供することにある。本発明のさらに他の
目的は、上記の優れた脆性破壊特性を、2回加熱などの
コストアップを伴うことなく達成するためのUOE鋼管
用素材の製造法を提供することにある。
【0005】
【問題を解決するための手段】発明者らは、従来とは異
なった発想のもとに、上記課題を解決すべく、鋭意研究
検討を続けた。その結果、鋼の成分組成をC:0.03mass
%以下の極低域とし、Mn、Nbを適量添加したうえ、圧延
条件を適正に制御することによって、オーステナイトか
ら変態するミクロ組織を極低炭素鋼のベイナイト組織の
1種であるグラニュラベイニティックフェライト単相に
制御し、さらにオーステナイト未再結晶域での強圧下に
より発達させた集合組織がこの変態後の組織に受け継が
れ、(α+γ)2相域圧延を行わなくとも集合組織形成
と同様の効果が得られ、これによって優れたDWTT特
性が得られ、シャルピーの衝撃吸収エネルギーも低下し
にくいことを見出し、本発明に想到した。
【0006】すなわち、本発明の要旨構成は下記のとお
りである。 1)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、Mn:
0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、Nb:0.00
2 〜0.2 mass%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物
からなり、グラニュラベイニティックフェライトの体積
率が90%以上である金属組織を有することを特徴とする
DWTT特性に優れるUOE鋼管用素材。
【0007】2)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつB:0.005 ma
ss%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からな
り、グラニュラベイニティックフェライトの体積率が90
%以上である金属組織を有することを特徴とするDWT
T特性に優れるUOE鋼管用素材。
【0008】3)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつTi:0.2mass
%以下、 Ca:0.01mass%以下、REM :0.01mass%以
下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残
部がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニ
ティックフェライトの体積率が90%以上である金属組織
を有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE
鋼管用素材。
【0009】4)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつCr:0.5 mass
%以下、 Mo:0.5 mass%以下、W:0.5 mass%以
下、 Ni:2.0 mass%以下、Cu:2.0 mass%以下、
V:0.2 mass%以下のうちから選ばれる1種または2
種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からな
り、グラニュラベイニティックフェライトの体積率が90
%以上である金属組織を有することを特徴とするDWT
T特性に優れるUOE鋼管用素材。
【0010】5)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつB:0.005 ma
ss%以下を含有し、さらにTi:0.2mass %以下、 C
a:0.01mass%以下、REM :0.01mass%以下のうちから
選ばれる1種または2種以上をのうちから選ばれる1種
または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物
からなり、グラニュラベイニティックフェライトの体積
率が90%以上である金属組織を有することを特徴とする
DWTT特性に優れるUOE鋼管用素材。
【0011】6)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつB:0.005 ma
ss%以下を含有し、さらにCr:0.5 mass%以下、 M
o:0.5 mass%以下、W:0.5 mass%以下、 Ni:2.0
mass%以下、Cu:2.0 mass%以下、 V:0.2 mass
%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有
し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラ
ベイニティックフェライトの体積率が90%以上である金
属組織を有することを特徴とするDWTT特性に優れる
UOE鋼管用素材。
【0012】7)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつTi:0.2mass
%以下、 Ca:0.01mass%以下、REM :0.01mass%以
下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、さ
らにCr:0.5 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下、
W:0.5 mass%以下、 Ni:2.0 mass%以下、Cu:2.
0 mass%以下、 V:0.2 mass%以下のうちから選ば
れる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避不純物からなり、グラニュラベイニティックフェライ
トの体積率が90%以上である金属組織を有することを特
徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼管用素材。
【0013】8)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含み、かつB:0.005 ma
ss%以下を含有し、さらにTi:0.2mass %以下、 C
a:0.01mass%以下、REM :0.01mass%以下のうちから
選ばれる1種または2種以上を含有し、さらにまたCr:
0.5 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下、W:0.5 ma
ss%以下、 Ni:2.0 mass%以下、Cu:2.0 mass%以
下、 V:0.2 mass%以下のうちから選ばれる1種ま
たは2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物か
らなり、グラニュラベイニティックフェライトの体積率
が90%以上である金属組織を有することを特徴とするD
WTT特性に優れるUOE鋼管用素材。
【0014】9)C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass
%未満、Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass
%、Nb:0.002 〜0.2 mass%を含有する鋼スラブを、A
C3点以上の温度域に加熱後、(ベイナイト変態開始温度
+200 ℃)〜ベイナイト変態開始温度の温度域において
累積圧下率50%以上の圧延を行い、ベイナイト変態開始
温度以上の温度で熱間圧延を終了することを特徴とする
上記1)〜8)のいずれか1つに記載のUOE鋼管用素
材の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、化学成分の限定理由につい
て説明する。 C:0.03mass%未満 Cは、変態後のミクロ組織をグラニュラベイニティック
フェライト単相組織にコントロ−ルするためその上限を
0.03mass%未満に制限する必要がある。なお、Cの好ま
しい範囲は0.02mass%以下である。
【0016】Si:0.6mass %未満 Siは、0.6mass %以上の添加で島状マルテンサイトが生
成しやすくなり、グラニュラベイニティックフェライト
の靱性を低下させるので、その添加量は0.6 mass%未
満、好ましくは0.3 mass%以下とする。
【0017】Mn:0.8 〜3.0mass % Mnは、拡散変態を抑え、せん断的な変態を起こさせ、グ
ラニュラベイニティックフェライト単相組織にするのに
有効な元素である。また、固溶強化元素としての役割を
果たし、鋼の強度を上昇させるために必要な元素であ
る。その添加量が0.8 mass%未満では、ベイナイト変態
開始より高温でフェライト相が生成し、グラニュラベイ
ニティックフェライト単相の組織に制御することが難し
くなる。一方、3.0 mass%を超えて添加すると、せん断
変態が低温側に移行し、靱性の劣るベイニティックフェ
ライト相が生成しやすくなる。従って、Mnの添加量は0.
8 〜3.0 mass%、好ましくは 1.2〜2.0 mass%の範囲と
する。
【0018】Al:0.01〜0.1 mass% Alは、脱酸材として0.01mass%以上必要であるが、0.10
mass%を超えて添加すると、溶接性を損なうほか、鋼の
清浄度を著しく低下させ、鋼の靱性を低下させるので、
その添加量は0.01〜0.10mass%とする。
【0019】Nb:0.002 〜0.2 mass% Nbも、ミクロ組織をグラニュラベイニティックフェライ
ト単相組織に制御するために必要な元素である。しか
し、添加量が0.002 mass%未満ではその効果がなく高温
で拡散変態が起こる結果、フェライト相が生成し、グラ
ニュラベイニティックフェライト単相組織とならない。
一方、0.2 mass%を超えて添加すると低温変態組織であ
るベイニティックフェライト相が現れ、かえって靱性が
劣化する。従って、Nbの添加量は0.002 〜0.2 mass%、
好ましくは 0.015〜0.1 mass%の範囲とする。
【0020】B:0.0050mass%以下 Bは、Nbと同様に、オーステナイト粒界に偏析して粒界
からの拡散変態を抑えて、ミクロ組織をグラニュラベイ
ニティックフェライト単相組織とするのに有用な元素で
ある。しかし、0.0050mass%を超えて添加するとBNが
析出し、鋼の靱性を劣化させるため添加量は0.0050mass
%以下とする。
【0021】Ti:0.2 mass%以下 Tiは、凝固過程においてTi(C、N)を形成し、熱間圧
延の加熱時のオーステナイト粒成長をピンニング効果に
よって抑え、オ−ステナイトの粗大化による靱性の劣化
を抑制する効果を有する。しかし、0.2 mass%を超えて
添加すると余剰のTiが逆に靱性の劣化を招くので、0.2
mass%以下の範囲で添加する。
【0022】REM:0.01mass%以下 REMは、オキシサルファイドを形成して熱間圧延にお
ける加熱時のオーステナイト粒の粒成長を抑制し、靱性
の向上に効果があるが、0.01mass%を超えて添加すると
鋼の清浄度を損ない靱性に悪影響を及ぼすので、その添
加量は0.01mass%以下とする。
【0023】Ca:0.01mass%以下 Caは、オキシサルファイドを形成して熱間圧延における
加熱時のオーステナイト粒の粒成長を抑制し、靱性の向
上に効果があるが、0.01mass%を超えて添加すると鋼の
清浄度を損ない靱性に悪影響を及ぼすので、その添加量
は0.01mass%以下とする。
【0024】Cr:0.5 mass%以下 Crは、強度を上昇させるほか、耐炭酸ガス腐食性を向上
させるのに有用な元素である。しかし、0.5 mass%を超
えて添加しても、その効果が飽和するので添加量は0.5
mass%以下とする。
【0025】Mo:0.5 mass%以下 Moは、強度を上昇させるのに有用な元素であるが、0.5
mass%を超えて添加しても、その効果が飽和するうえ、
溶接性を劣化させるので添加量は0.5 mass%以下とす
る。
【0026】W:0.5 mass%以下 Wは、強度とくに高温強度を上昇させるのに有用な元素
であるが、高価であるうえ0.5 mass%を超えて添加する
と、靱性を劣化させるので添加量は0.5 mass%以下とす
る。
【0027】Ni:2.0 mass%以下 Niは、強度を上昇させるのに有用な元素であるが、高価
であるうえ過剰に添加してもその効果が飽和するうえ、
溶接熱影響部の硬化性を上昇させて溶接割れ感受性を高
めてしまうので、添加量は2.0 mass%以下とする。
【0028】Cu:2.0 mass%以下 Cuは、析出強化作用による強度上昇をはかるうえで有用
な元素である。しかし、2.0 mass%を超えて添加する
と、靱性を急激に劣化させるので、その添加量は2.0 ma
ss%以下とする。
【0029】V:0.2 mass%以下 Vは、析出強化作用による強度上昇をはかるうえで有用
な元素である。しかし、0.2 mass%を超えて添加しても
その効果が飽和するので、添加量は0.2 mass%以下とす
る。
【0030】金属組織 前述したように、本発明の金属組織はグラニュラベイニ
ティックフェライト主体の組織に調整することが必要で
ある。すなわち、グラニュラベイニティックフェライト
にすることにより、DWTT特性向上の効果が得られ
る。その効果はこのグラニュラベイニティックフェライ
トの体積率が90%以上で得られる。なお、グラニュラベ
イニティックフェライトとは、「鋼のベイナイト写真
集」(日本鉄鋼協会編、1992)に示されているよう
に、ベイニティックフェライトより転位が回復し、ラス
状の下部組織が少ないベイナイトのことをいう。
【0031】次に製造方法について説明する。鋼の溶製
方法については特に限定する必要はなく、転炉、電気炉
等いずれも利用できる。また、圧延用スラブの鋳造方法
も同じく限定されず、造塊、連続鋳造といった鋳造方法
のいずれも利用できる。本発明において、熱間圧延時の
加熱温度をAc3点以上に限定したのは、オーステナイト
域に完全に変態させるためである。なお、加熱温度の上
限は特に規定しないが、1200℃未満であることがシャル
ピ−靱性確保のうえから望ましい。
【0032】上記加熱に次いで、(ベイナイト変態開始
温度+200 ℃)〜ベイナイト変態開始温度の温度域にお
いて累積圧下率50%以上の圧延を行い、ベイナイト変態
開始温度以上の温度で熱間圧延を終了する。その理由を
次に説明する。まず、(ベイナイト変態開始温度(Bs)
+200 ℃)以下で、累積圧下量が50mass%以上となるま
で圧延を加えることにより、オーステナイト粒が再結晶
せず集合組織を形成する。
【0033】そして、C、Mn、Nbの添加量をコントロー
ルすることにより、変態後の組織をグラニュラベイニテ
ィックフェライトとすることで、この集合組織がグラニ
ュラベイニティックフェライトに受け継がれ、Lおよび
T方向の靱性が向上し、DWTT試験におけるせん断破
面率が向上する。ただし、この熱間圧延の温度がベイナ
イト変態開始温度(Bs)を下回り、グラニュラベイニテ
ィックフェライトが一部変態した状態で圧延をすると、
グラニュラベイニティックフェライトが加工を受け結晶
粒中のひずみ量が増加し、靱性劣化が著しくなり、脆性
亀裂伝播停止特性も低下するので、圧延終了温度はベイ
ナイト変態開始温度以上とする。また、圧延を行う温度
範囲の上限をベイナイト変態開始温度+200 ℃とした理
由は、この温度よりも高い温度で導入した圧延歪みは次
の圧下が加わる前に回復してしまい、集合組織形成とい
う意味では効果が得られないことが判明したためであ
る。ただし、ベイナイト変態開始温度+200 ℃より高温
での圧下を付加的に行うことは、本発明の効果を損なう
ことはないので、最終板厚および形状制御のための圧延
を施してもかまわない。
【0034】なお、熱間圧延後室温までの間の冷却方法
は、空冷あるいは水冷のいずれを採用しても本発明の効
果を損なうものではなく、公知の冷却方法を適宜選択し
て採用できる。また、熱間圧延した鋼板を再加熱してCu
あるいはVを析出強化させるための焼戻し処理等を行っ
ても本発明の効果は損なわれないので、公知の製造方法
を適宜選択して採用できる。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明鋼については、管厚15、25、30mmの耐サワーUO
E鋼管用の素材を製造し、さらにこれらの素材を用いて
UOE鋼管を製造した。また、比較鋼については、管厚
15mmのUOE鋼管用の素材のみを製造した。まず、表1
に示す鋼について、表2に示す加熱温度・圧延条件に従
って熱間圧延した。ここで、発明材については、圧延終
了温度(最終パスの温度)の目標を管厚15mmの板では鋼
のベイナイト変態開始温度(以下単に、Bs と略記す
る。)より60℃高い温度、管厚25mmの板ではBs より40
℃高い温度、管厚30mmの板ではBs より20℃高い温度を
目標とした。また、比較例として、表1のNo.1鋼につい
ては圧延終了温度をBs より20℃低くした圧延と、(B
s +200 ℃)〜Bs の温度域での圧延の累積圧下量を45
%とした圧延を行った。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】これらの鋼板を用いて外径30inchのUOE
鋼管を造管した。この鋼管の、図1に示す採取位置の管
厚1/2t部より、引張試験片(C方向)、2mmV ノッチシ
ャルピー試験片(C方向)、図2に示す形状のDWTT
試験片(C方向)を採取し、それぞれの機械的性質を調
査した。なお、造管を行わなかったものの機械的性質に
ついては、素材板からそのまま試験片を採取して調査し
た。得られた結果を表3に示す。ここに、85%SATT
は、DWTT試験でのせん断破面率85%以上となる遷移
温度を、またCVE-40 は、シャルピー衝撃試験の−40
℃における吸収エネルギーを表す。
【0039】
【表3】
【0040】表3からわかるように、本発明によって製
造された素材を用いた鋼管は、いずれも85%SATTは
−40℃以下と優れたDWTT特性を示し、また、CVE
-40で示される延性亀裂伝播停止特性も優れていること
がわかる。これに対し、下記の各比較例は、いずれも85
%SATTとCVE-40 のうちの少なくとも一方の特性
が低下した。すなわち、圧延の最終パス温度が鋼のベイ
ナイト変態開始点を下回った実験No. 1bは、一部変態
したグラニュラベイニティックフェライトが加工硬化
し、85%SATT、CVE-40 の双方が劣化しているこ
とがわかる。また、(Bs +200 ℃)〜Bs の温度域で
の圧延の累積圧下量が45%と圧延が足りないNo. 1c
は、組織の細粒化が十分でなく、85%SATTが劣化し
た。鋼の化学組成中C含有量が0.03mass%であるNo.
3、Mn含有量が上限の3.0 mass%を超えたNo. 8、Nb含
有量が上限の0.2 mass%を超えたNo. 11は、硬く靱性
の低いベイニティックフェライト組織の分率がそれぞ
れ、74mass%、67mass%、48mass%となった結果、85%
SATTが劣化した。Si含有量が上限である0.6 mass%
を超えたNo. 5は、ベイニティックフェライトの分率が
増加したほか、グラニュラベイニティックフェライトの
粒内に硬い島状マルテンサイトが増加し、85%SATT
が劣化した。逆に、Mn含有量が下限の0.8 mass%を下回
ったNo. 6、Nb含有量が下限の0.002 mass%を下回った
No. 10は、グラニュラベイニティックフェライトの変
態開始に先立って、フェライトが変態し、かつこれらの
フェライトが変態途中あるいは変態終了後も圧延された
ため加工硬化によって非常に延性が低下し、85%SAT
T、CVE-40 が劣化した。また、Al含有量が上限の0.
1 mass%を超えたNo.9は鋼の清浄度が著しく低下した
結果、85%SATTが劣化した。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
シャルピー試験における衝撃吸収エネルギ−の低下を招
くことなく、DWTT試験での試験片破面遷移温度で評
価される脆性亀裂伝播停止性に優れたUOE鋼管用素材
を製造することが可能となる。しかも、本発明によれ
ば、上記効果を2回加熱などのコストアップを伴うこと
なく達成できるので、産業上大きな利益が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】UOE鋼管における各試験片採取位置を説明す
る図である。
【図2】DWTT試験片の形状を説明する図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川端 文丸 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、グラ
    ニュラベイニティックフェライトの体積率が90%以上で
    ある金属組織を有することを特徴とするDWTT特性に
    優れるUOE鋼管用素材。
  2. 【請求項2】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ B:0.005 mass%以下 を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、グラ
    ニュラベイニティックフェライトの体積率が90%以上で
    ある金属組織を有することを特徴とするDWTT特性に
    優れるUOE鋼管用素材。
  3. 【請求項3】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ Ti:0.2mass %以下、 Ca:0.01mass%以下、 REM :0.01mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニテ
    ィックフェライトの体積率が90%以上である金属組織を
    有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼
    管用素材。
  4. 【請求項4】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ Cr:0.5 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下、 W:0.5 mass%以下、 Ni:2.0 mass%以下、 Cu:2.0 mass%以下、 V:0.2 mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニテ
    ィックフェライトの体積率が90%以上である金属組織を
    有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼
    管用素材。
  5. 【請求項5】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ B:0.005 mass%以下 を含有し、さらに Ti:0.2mass %以下、 Ca:0.01mass%以下、 REM :0.01mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニテ
    ィックフェライトの体積率が90%以上である金属組織を
    有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼
    管用素材。
  6. 【請求項6】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ B:0.005 mass%以下 を含有し、さらに Cr:0.5 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下、 W:0.5 mass%以下、 Ni:2.0 mass%以下、 Cu:2.0 mass%以下、 V:0.2 mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニテ
    ィックフェライトの体積率が90%以上である金属組織を
    有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼
    管用素材。
  7. 【請求項7】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ Ti:0.2mass %以下、 Ca:0.01mass%以下、 REM :0.01mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、さら
    に Cr:0.5 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下、 W:0.5 mass%以下、 Ni:2.0 mass%以下、 Cu:2.0 mass%以下、 V:0.2 mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニテ
    ィックフェライトの体積率が90%以上である金属組織を
    有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼
    管用素材。
  8. 【請求項8】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含み、かつ B:0.005 mass%以下 を含有し、さらに Ti:0.2mass %以下、 Ca:0.01mass%以下、 REM :0.01mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、さら
    にまた Cr:0.5 mass%以下、 Mo:0.5 mass%以下、 W:0.5 mass%以下、 Ni:2.0 mass%以下、 Cu:2.0 mass%以下、 V:0.2 mass%以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
    がFeおよび不可避不純物からなり、グラニュラベイニテ
    ィックフェライトの体積率が90%以上である金属組織を
    有することを特徴とするDWTT特性に優れるUOE鋼
    管用素材。
  9. 【請求項9】C:0.03mass%未満、 Si:0.6mass %未満、 Mn:0.8 〜3.0 mass%、 Al:0.01〜0.10mass%、 Nb:0.002 〜0.2 mass% を含有する鋼スラブを、AC3点以上の温度域に加熱後、
    (ベイナイト変態開始温度+200 ℃)〜ベイナイト変態
    開始温度の温度域において累積圧下率50%以上の圧延を
    行い、ベイナイト変態開始温度以上の温度で熱間圧延を
    終了することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項
    に記載のUOE鋼管用素材の製造方法。
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