JP3458529B2 - 高分子材料膜分光測定方法および分光測定ユニット - Google Patents

高分子材料膜分光測定方法および分光測定ユニット

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JP3458529B2 JP13136595A JP13136595A JP3458529B2 JP 3458529 B2 JP3458529 B2 JP 3458529B2 JP 13136595 A JP13136595 A JP 13136595A JP 13136595 A JP13136595 A JP 13136595A JP 3458529 B2 JP3458529 B2 JP 3458529B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高分子材料からなる多
層または単層の膜を、この膜を通過する光または電子線
により反応させる場合の反応を、分光法により測定する
高分子材料膜測定方法および高分子材料膜測定ユニット
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、高分子材料からなる膜を、こ
の膜を通過する紫外光等により光重合硬化や感光性基の
分解等の反応をさせるものが知られている。そして、こ
のような反応を分光測定する高分子材料膜分光測定装置
が知られている。
【0003】このような高分子材料膜分光測定装置は、
例えば、T.Nakano,S.Shimada,R.
Saitoh,I.Noda,Applied Spe
ctroscopy,47(9)(1993),P.1
337−1342等で知られている。この文献における
高分子材料膜測定方法の概要を説明する。
【0004】アルミニウム板上に試料薄膜を塗布し、試
料薄膜の垂直方向から紫外光を照射するとともに、側面
から測定用赤外光を照射し、試料薄膜を介してアルミニ
ウム板で反射した測定用赤外光のスペクトルを、リアル
タイムフーリエ変換赤外分光法(RTFTIR,Rea
l Time Fourler TransformI
nfrared Spectroscopy)でモニタ
する。試料薄膜としては、ラジカル重合型であるアクリ
ル系の紫外線硬化材料のモノマー、または、これとカチ
オン重合型であるエポキシ系化合物の紫外線硬化材料の
モノマーとの混合物に、それぞれ光重合開始材を添加し
たものが用いられている。
【0005】しかし、従来の技術では、異なる高分子材
料からなる多層膜が、通過する紫外線により反応する場
合に、複数の膜のそれぞれの反応を、同時に測定するこ
とができなかった。また、同じ高分子材料からなる単層
膜においては、単層膜の深さ方向に位置が異なる領域の
反応を、同時に測定することができなかった。
【0006】例えば、多層膜を同時に反応させる場合、
そのまま分光分析してしまうと、分光分析によるスペク
トルは、各層のスペクトル成分が重なり合い、非常に複
雑なものとなるから、解析が困難となる。しかし、各層
を全く別々に反応させて分光分析測定しては、上層の下
層に対する光の遮蔽効果など、互いの層に影響を与えな
がら反応する状況がわからない。
【0007】同様に、単層膜を反応させる場合でも、そ
のまま分光分析すると、分光分析によるスペクトルは、
層の浅い上層の領域から深い下層の領域までのいずれか
の領域を通過したスペクトルの重なりとなるから、層の
深さ方向の位置が異なる領域の反応を、別個に解析する
ことが困難となる。しかし、層を複数の層に分割して、
それぞれを全く別々に反応させて分光分析しては、やは
り、上層の下層に対する光の遮蔽効果など、互いの層に
影響を与えながら反応する状況がわからない。
【0008】このため、高分子材料からなる多層膜の反
応の評価、あるいは、単層膜の深さ方向の反応の評価
は、反応終了後に、これらの多層膜あるいは単層膜を分
析して評価していた。一例として、紫外光照射により光
硬化性の高分子材料からなる多層膜を硬化させる場合、
従来では、硬化させた多層膜のサンプルを、ミクロトー
ムなどの装置で切断して、多層膜を構成する各層のサン
プルを作成し、これらのサンプルをそれぞれ測定する方
法が主流であった。しかし、この方法では、サンプリン
グに時間と技術が必要である。
【0009】さらに、反応過程中の評価ができないなど
の問題点もある。すなわち、多層に積層コーティングし
たそれぞれの層を同時に反応させる場合、反応速度を測
定し、反応を定量する、いわゆる「その場測定」を行な
うことが困難である。
【0010】多層膜をより速く反応させたい場合や、十
分に反応させたい場合には、それぞれの層の反応過程中
の状況を知ることが重要である。しかし、下層の反応
は、上層を通して反応過程の影響を受けるから、紫外光
が上層により一部吸収または遮蔽される場合、下層の反
応過程を、実験的に定量的に測定することができなかっ
た。この問題は、単層膜の下層の反応過程においても同
様に存在する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した事
情に鑑みてなされたもので、高分子材料からなる多層ま
たは単層の膜を光または電子線により反応させる場合
に、この反応を分光測定するものにおいて、各層の反応
を、所望の層について、別個に、実験的に簡便に測定で
き、かつ、反応過程中においても「その場測定」を行な
うことができる、高分子材料膜測定方法および高分子材
料膜測定ユニットを提供することを目的とするものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、高分子材料膜分光測定方法において、光または電子
線により反応が進む高分子材料の層を複数、個別に配置
し、前記層のそれぞれに前記光または電子線を等角度で
順に通過させ、かつ、測定光を複数の前記層のうちの少
なくとも1つの層に、個別に照射し、個別に分光測定を
行ない、前記層が順に積層された状態の高分子材料膜に
おける、前記測定光が照射される層に対応する層の反応
を、独立して測定することを特徴とするものである。
【0013】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の高分子材料膜分光測定方法において、前記高分子材料
は、前記光または電子線の通過により硬化する性質を有
する材料であることを特徴とするものである。
【0014】請求項3に記載の発明は、請求項1または
2に記載の高分子材料膜分光測定方法において、前記層
のうち、少なくとも2つの層は、異なる高分子材料から
なり、前記高分子材料膜は、2層以上組み合わされた高
分子材料多層膜であることを特徴とするものである。
【0015】請求項4に記載の発明は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の高分子材料膜分光測定方法に
おいて、前記光は、紫外光または熱線であることを特徴
とするものである。
【0016】請求項5に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の高分子材料膜分光測定方法に
おいて、前記光は、レーザ光であることを特徴とするも
のである。
【0017】請求項6に記載の発明は、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の高分子材料膜分光測定方法に
おいて、前記分光測定は、近赤外分光分析または赤外分
光分析または紫外可視分光分析であることを特徴とする
ものである。
【0018】請求項7に記載の発明は、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の高分子材料膜分光測定方法に
おいて、前記分光測定は、ラマン分光分析であることを
特徴とするものである。
【0019】請求項8に記載の発明は、高分子材料膜分
光測定ユニットにおいて、光または電子線により反応が
進む高分子材料の層を載置する複数の基板と、該複数の
基板を保持する保持手段と、前記光または電子線を発生
する発生手段と、少なくとも1つの測定光を発生する測
定光発生手段を有し、前記複数の基板は、前記光または
電子線に対して透明であり、前記発生手段は、前記光ま
たは電子線を順次前記複数の基板に対し等角度で通過さ
せるものであり、前記測定光発生手段は、前記測定光
を、複数の前記基板のうちの少なくとも1つの基板に個
別に照射し、個別に分光測定を行なわせるものであり、
前記層が積層された状態の単層または多層の膜におけ
る、前記測定光が照射される層に対応する層の反応を、
独立して測定することを特徴とするものである。
【0020】請求項9に記載の発明は、請求項8に記載
の高分子材料膜分光測定ユニットにおいて、前記保持手
段は、前記複数の基板のそれぞれを保持する複数の試料
台と、該複数の試料台を個別に角度調整可能に保持する
複数のホルダ支柱を有し、該ホルダ支柱は、相対的に平
行移動可能に設置されることを特徴とするものである。
【0021】請求項10に記載の発明においては、請求
項9に記載の高分子材料膜測定ユニットにおいて、ガイ
ド部材を有し、前記ホルダ支柱は該ガイド部材に沿って
平行移動するものであり、前記ガイド部材の一端部は、
汎用試料ホルダの取り付け穴に取り付けられる取付部で
あることを特徴とするものである。
【0022】
【作用】請求項1に記載の発明によれば、光または電子
線により反応が進む高分子材料の層を複数、個別に配置
し、これらの層のそれぞれに光または電子線を等角度で
順に通過させ、かつ、測定光を複数の層のうちの少なく
とも1つの層に、個別に照射し、個別に分光測定を行な
うから、層が順に積層された状態の高分子材料膜におけ
る、測定光が照射される層に対応する層の反応を、独立
して測定することができる。さらに、分光測定装置とし
て、高速測定可能なものを用いることにより、硬化反応
の反応過程の時間変化を追跡すること、すなわち、「そ
の場測定」することが可能になる。
【0023】請求項2に記載の発明によれば、高分子材
料が、前記光または電子線の通過により硬化する性質を
有する材料であるから、硬化反応を測定することができ
る。
【0024】請求項3に記載の発明によれば、複数層の
うち、少なくとも2つの層が、異なる高分子材料からな
るから、異なる高分子材料からなる層が2層以上組み合
わされた高分子材料多層膜を測定することができる。
【0025】請求項4に記載の発明によれば、紫外光ま
たは熱線により反応する高分子材料膜を測定することが
できる。
【0026】請求項5に記載の発明によれば、単色性が
よく、かつ、エネルギを集中させることができるレーザ
光により反応する高分子材料膜を測定することができ、
高精度かつ効率よく測定することができる。
【0027】請求項6に記載の発明によれば、分光測定
が、近赤外分光分析または赤外分光分析または紫外可視
分光分析であるから、近赤外光または赤外光または紫外
可視光のスペクトルを測定することができる。
【0028】請求項7に記載の発明によれば、分光測定
が、ラマン分光分析であるから、ラマン分光スペクトル
を測定することができる。
【0029】請求項8に記載の発明によれば、光または
電子線により反応が進む高分子材料の層を載置する複数
の基板と、複数の基板を保持する保持手段と、光または
電子線を発生する発生手段と、少なくとも1つの測定光
を発生する測定光発生手段を有し、複数の基板が、光ま
たは電子線に対して透明であり、光または電子線の発生
手段が、光または電子線を順次複数の基板に対し等角度
で通過させるものであり、測定光発生手段が、測定光
を、複数の基板のうちの少なくとも1つの基板に個別に
照射し、個別に分光測定を行なわせるものであるから、
層が順に積層された状態の高分子材料膜における、測定
光が照射される層に対応する層の反応を、独立して測定
することができる。さらに、分光測定装置として、高速
測定可能なものを用いることにより、硬化反応の反応過
程の時間変化を追跡すること、すなわち、「その場測
定」することが可能になる。
【0030】請求項9に記載の発明によれば、保持手段
が、複数の基板のそれぞれを保持する複数の試料台と、
該複数の試料台を個別に角度調整可能に保持する複数の
ホルダ支柱を有し、該ホルダ支柱が、相対的に平行移動
可能に設置されるから、基板に載置される高分子材料の
層と、光または電子線および測定光との配置関係を調整
することができ、その際、複数の層の傾斜角度と相対位
置を独立して調整することができる。
【0031】請求項10に記載の発明によれば、請求項
9に記載の高分子材料膜測定ユニットにおいて、ガイド
部材を有し、ホルダ支柱が該ガイド部材に沿って平行移
動するものであり、ガイド部材の一端部が、汎用試料ホ
ルダの取り付け穴に取り付けられる取付部であるから、
複数の層の相対位置を簡単に調整することができ、か
つ、汎用試料ホルダに簡単に取り付けることができ、汎
用試料ホルダを載置台として利用することが可能とな
る。
【0032】
【実施例】図1は、本発明の高分子材料膜測定方法およ
び測定ユニットの一実施例を説明する測定装置の全体構
成図である。図中、1は第1の試料、2は第1の基板、
3は第1のサンプルホルダ、3aは開口部、4は第1の
ホルダ支柱、5は第1の角度調整ネジ、6は第2の試
料、7は第2の基板、8は第2のサンプルホルダ、8a
は開口部、9は第2のホルダ支柱、10は第2の角度調
整ネジ、11は紫外光光源、12は紫外光、13は第1
の赤外光光源、14は第1の赤外光、15は第1の検出
器、16は第2の赤外光光源、17は第2の赤外光、1
8は第2の検出器、19は測定ユニットである。
【0033】一例として、高分子材料からなる2層の多
層膜を、この多層膜を通過する紫外光により硬化反応を
させ、この反応を赤外光分光測定法により測定する場合
に対し、測定を行なう測定装置について説明する。
【0034】まず、2層の多層膜のうち、下層の膜を構
成する高分子材料の膜を、第1の試料1として、多層膜
状態における膜厚と同じ膜厚で、第1の基板2上に載置
する。また、上層の膜を構成する高分子材料の膜を、第
2の試料6として、同様に多層膜状態における膜厚と同
じ膜厚で、第2の基板7上に載置する。
【0035】第1および第2の基板2,7としては、光
学結晶板を用いる。この場合、試料1,6は、この光学
結晶板上に塗布する。または、このような光学結晶板を
2枚有し、試料1,6をこの2枚の光学結晶板の間に挟
み込むようにした基板を用いてもよい。
【0036】第1の基板2は、第1のサンプルホルダ3
により保持される。この第1のサンプルホルダ3は、第
1のホルダ支柱4に取り付けられるが、第1の角度調整
ネジ5により、第1のホルダ支柱4に対する第1のサン
プルホルダ3の傾斜角度が調整可能になっている。第2
の基板7についても同様に、第2のサンプルホルダ8に
より保持され、第2のサンプルホルダ8は、第2のホル
ダ支柱9に取り付けられ、第2の角度調整ネジ10によ
り、第2のホルダ支柱9に対する第2のサンプルホルダ
8の傾斜角度が調整可能になっている。したがって、第
1および第2の試料1,6の傾斜角度を個別に調整する
ことができ、両者の傾斜角度を等しく所定の角度にする
ことができる。
【0037】第1のホルダ支柱4および第2のホルダ支
柱9は、相対的に平行移動可能に設置されている。図示
の例では、両者は、図示を省略した基台上に、垂直に設
置され、かつ、両者が水平方向に移動可能に設置されて
いるが、両者が垂直方向に移動可能に設置されてもよ
い。したがって、第1および第2の試料1,6を、両者
の傾斜角度を変えずに、水平方向の相対位置を調整する
ことができる。
【0038】紫外光光源11は、第1および第2の試料
1,6の反応を進ませるための光源である。ここから照
射された紫外光12は、第2の基板7に載置された第2
の試料6を、垂直に通過した後、第1の基板2に載置さ
れた第1の試料1を、同様に垂直に通過する。上述した
ように第1および第2の基板2,7として、例えば、光
学結晶板を用いているが、この光学結晶板は、紫外光1
2に対して透明なものを用いることが望ましい。なお、
第1および第2のサンプルホルダ3,8には、紫外光1
2および後述する第2の赤外光17,第1の赤外光14
の通過を可能にするための開口部3a,8aを有する。
【0039】紫外光12は、第1および第2の試料1,
6に等角度で入射すればよく、必ずしも垂直に通過させ
る必要はない。角度調整は、上述した第1および第2の
角度調整ネジ5,10で行ない、第1および第2の試料
1,6の紫外光通過位置は、第1および第2のホルダ支
柱4,9の相対位置を調整することによって行なう。
【0040】第1の赤外光光源13は、第1の試料1の
分光測定用の測定光光源である。ここから照射された第
1の赤外光14は、第1の基板2に載置された第1の試
料1を図示水平方向に通過した後、第1の検出器15に
入射する。同様に、第2の赤外光光源16は、第2の試
料6の分光測定用の測定光光源であり、第2の赤外光1
7は、第2の試料6を図示水平方向に通過した後、第2
の検出器18に入射する。第1および第2の検出器1
5,18の出力信号は、通過光の分光測定装置、例え
ば、上述した従来技術で用いている超高速のリアルタイ
ムフーリエ変換赤外光分光法(RTFTIR)による分
光分析装置に入力される。
【0041】第1および第2の基板2,7の一例として
用いている光学結晶板は、第1および第2の赤外光1
4,17に対しても透明であることが望ましい。しか
し、測定光である赤外光に対して多少不透明でも、第1
および第2の検出器15,18等において出力低下を補
正するなどの処理が可能である。
【0042】第1および第2の赤外光14,17は、第
1および第2の試料1,6に等角度で入射すればよく、
必ずしも図示水平方向から入射させる必要はない。な
お、第1のサンプルホルダ3が、第2の赤外光17の光
路を妨害しないように、また、逆に、第2のサンプルホ
ルダ8が、第1の赤外光14の光路を妨害しないよう
に、第1および第2のホルダ支柱4,9の相対位置を調
整する。
【0043】図1において、第1および第2の検出器1
5,18を除いた部分により、測定ユニット19が構成
されている。しかし、測定ユニット19として、他の構
成をとることもできる。例えば、第1の角度調整ネジ5
および第2の角度調整ネジ10は、必ずしも必要ではな
く、ホルダ支柱に対するサンプルホルダの傾斜角度は固
定されていてもよく、また、一方のホルダ支柱に対する
サンプルホルダの傾斜角度のみが調整可能にされていて
もよい。
【0044】第1または第2の試料1,2が、例えば反
応前の状態などにおいて流動性を有する膜である場合に
は、第1および第2の基板が水平になるようにし、紫外
光光源11,第1および第2の赤外光光源13,16,
第1および第2の検出器15,18の方を図示の状態か
ら傾けて、図示された測定装置と同様の相対的配置関係
になるようにすればよい。
【0045】次に、上述した測定装置を用いて、高分子
材料からなる2層の多層膜を通過する紫外光により硬化
反応をさせ、この反応を赤外光分光測定法により測定す
る場合に対し、測定を行なうことができる原理について
説明する。
【0046】第1および第2の試料1,6の硬化反応を
追跡するための第1および第2の赤外光14,17に対
し、硬化反応を進ませる紫外光12を、垂直または垂直
以下の角度で交差させる配置とすることにより、各試料
に対し、赤外光、紫外光の両方が通過する。そして、紫
外光が、第2の試料6を通過した後に、第1の試料1に
到達する。
【0047】第2の試料6は、2層の多層膜のうち、上
層と同材料、同膜厚で、第1の試料1は、下層と同材
料、同膜厚になるようにしている。したがって、上述し
た測定装置は、2層の多層膜を紫外光が通過する場合と
同様の状況を実現している。
【0048】一方、分光分析のための第1および第2の
赤外光14,17は、第1および第2の試料1,6を同
時に通過せず、別個に通過するため、2層の多層膜を紫
外光が通過する場合の、上層および下層、それぞれの層
の反応過程を個々に追跡することが可能となり、多層膜
の反応過程を赤外分光測定法により測定することができ
る。
【0049】次に、上述した測定装置および測定方法の
変形例について説明する。まず、下層のみを測定する場
合は、第2の赤外光光源16および第2の検出器18が
不要である。これに伴い、第2の基板7は、赤外光に透
明である必要がなく、紫外光12に透明でさえあればよ
い。
【0050】3層以上の多層の硬化過程を同時に、か
つ、硬化過程中において測定することもできる。この場
合には、測定ユニット19において、赤外光光源および
検出器の数、基板およびサンプルホルダの数を増やし、
各層に対応する試料を基板に載置すればよい。この際、
全ての層についての測定が可能なだけでなく、測定が必
要な一部の1または複数の層についてだけ測定すること
も可能である。最下層の層など、必要な層のみの測定を
するときは、測定する層に対応する試料が載置された基
板以外の基板は、赤外光に透明である必要がなく、紫外
光12に透明でさえあればよい。
【0051】第1および第2の検出器15,18に接続
される赤外光の分光測定装置として、ラピッドスキャン
型などの時間分解型の高速測定可能な分光測定装置を用
いることにより、硬化反応の反応過程の時間変化を追跡
すること、すなわち、「その場測定」することが可能に
なっている。しかし、反応過程中の測定が必要でない場
合には、分析装置として、高速測定可能なものを用いる
必要はない。
【0052】また、単層膜の場合には、第1の試料1お
よび第2の試料6として、同じ高分子材料を、測定した
い領域の深さに応じた適宜の厚さの層にして用いること
により、単層膜の深さ方向に位置が異なる領域の硬化反
応過程を、同時に、かつ、反応過程中において測定する
ことができる。
【0053】次に、測定ユニットの第2の実施例につい
て説明する。この実施例は、赤外線透過測定装置等にお
いて、従来より使用されている汎用試料ホルダにセット
できるようにしたものである。
【0054】図2は、汎用試料ホルダの概要を示す図で
あり、図2(A)は正面図、図2(B)は右側面図、図
3は、本発明の測定ユニットの第2の実施例の部分構成
図である。図中、21は汎用試料ホルダ、21aは取り
付け穴、22は基台、23はガイド部材、4aは挿通穴
である。図3においては、光源および検出器の図示を省
略し、また、図1と同様な部分には、同じ符号を用いて
説明を省略する。
【0055】まず、図2(A)および図2(B)を参照
して、汎用試料ホルダの概要を説明する。汎用試料ホル
ダ21は基台22に対し所定角度回転することができる
円形テーブルであり、その表面に取り付け穴21aが1
箇所以上、例えば2箇所設けられている。この取り付け
穴21aは、ワークを位置決めするためのセットプレー
ト,ワークを固定するためのクレンメル等を、例えば、
嵌め込みまたはネジ止めによりこの汎用試料ホルダ21
に取り付けるためのものである。
【0056】図3において、この実施例の測定ユニット
は、図1に示された第1の実施例の第1および第2のホ
ルダ支柱4,9を、図2に示された汎用試料ホルダ21
の取り付け穴21aにセットできるようにしている。ガ
イド部材23が、新たに2本設けられ、第2のホルダ支
柱9に固定されるとともに、第1のホルダ支柱4に設け
られた2個の挿通穴4aを貫通して、その図示左端部に
段差をつけて取付部を設け、これを取り付け穴21aに
嵌め込んでいる。
【0057】ガイド部材23は、第2のホルダ支柱9に
対しても、貫通して取り付けてもよく、この場合は、第
2のホルダ支柱9も左右に移動可能になるだけでなく、
ガイド部材23を取り付け穴21aにネジ止めにより取
り付けることができる。変形例として、挿通穴4aに代
えて、第1のホルダ支柱4に水平方向に延びた溝を設
け、この溝にガイド部材23を通してもよい。
【0058】第1および第2のホルダ支柱4,9をガイ
ド部材23に沿って相対的に平行移動させることによ
り、第1および第2のサンプルホルダ3,8を、両者の
傾斜角度を等しくしたまま、簡単に相対位置を調整する
ことができる。したがって、図1において、第1および
第2の試料1,6と、紫外線光源11,第1および第2
の赤外線光源13,16との配置関係を調整することが
できる。
【0059】加えて、汎用試料ホルダ21に簡単に取り
付けることができ、従来の汎用試料ホルダ21を載置台
として利用することが可能となる。なお、ガイド部材2
3は、1本だけでも第1および第2のホルダ支柱4,9
をガイド部材23に沿って相対的に平行移動させること
が可能である。
【0060】測定ユニット19のホルダ機構は、図1お
よび図3に示されたものに限られない。例えば、図示は
省略するが、図1に示された第1および第2のサンプル
ホルダ3,8を直接に、あるいは、図3に示されたガイ
ド部材23を、X,Y,Z,θ,η,φの各ステージを
有するステージ系の載置台に取り付けてもよい。このス
テージ系を調整することにより、図1に示された、第1
および第2の試料1,6と紫外線光源11,第1および
第2の赤外線光源13,16との配置関係を調整しても
よい。
【0061】上述した実施例においては、高分子材料と
して、紫外光の通過により硬化する性質を有する材料を
用いたが、硬化以外の反応をするものであってもよい。
その際、一例として、紫外光を用いたが、高分子材料に
よっては、赤外光,遠赤外光等の熱線であってもよい。
これらの光は、単色性がよく、かつ、エネルギを小領域
に集中させることができるレーザ光でもよい。高分子材
料によっては、電子線でもよい。そして、これら高分子
材料の種類および通過させるエネルギ線の種類に応じ
て、分光測定には、近赤外分光,赤外分光,紫外可視分
光分析等を行なうことができ、この分光分析の種類に応
じて、測定光の種類を変更する。あるいは、ラマン効果
によって生じる散乱光を検出するラマン分光を用いるこ
ともできる。
【0062】なお、図1に示された第1および第2の基
板、例えば、光学結晶板は、通過させる光として紫外光
を用い、測定光として赤外光を用いた場合と同様に、使
用するエネルギ線に対して透明で、測定光に対してもな
るべく透明なものを用いることが望ましい。
【0063】図1ないし図3を参照して説明した実施例
は、第1の検出器15が第1の試料1を通過した第1の
赤外光14を検出しているように、試料を通過した測定
光の分光測定をする配置のものである。しかし、検出器
が試料から反射または散乱した測定光を分光測定する配
置にしてもよい。例えば、図1において、第1および第
2の検出器15,18を図示上部に配置するなど、測定
ユニットおよび検出器の位置関係を変更してもよい。特
に、散乱光であるラマン分光を測定する場合には、この
ような配置が望ましい。
【0064】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によると、高分子材料からなる多層または単層の膜を、
この膜を通過する光または電子線により反応させる場合
に、この反応を分光測定するものにおいて、光または電
子線が、上層により一部吸収または遮蔽される場合で
も、各層の反応、特に下層の反応を、それぞれ別個に、
実験的に簡便に測定でき、かつ、反応過程中においても
「その場測定」を行なうことができるという効果があ
る。
【0065】したがって、多層膜のサンプルを切り出す
のに要する時間を省略することができるという効果があ
る。また、多層膜または単層膜の上層の光の遮蔽効果を
検討することが可能となり、遮蔽効果が少ない高分子材
料を見いだすことができ、多層膜として一層適した材料
を開発することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高分子材料膜測定方法および測定ユニ
ットの一実施例を説明する測定装置の全体構成図であ
る。
【図2】汎用試料ホルダの概要を示す図であり、図2
(A)は正面図、図2(B)は右側面図である。
【図3】本発明の測定ユニットの第2の実施例の部分構
成図である。
【符号の説明】
1…第1の試料、2…第1の基板、3…第1のサンプル
ホルダ、4…第1のホルダ支柱、6…第2の試料、7…
第2の基板、8…第2のサンプルホルダ、9…第2のホ
ルダ支柱、12…紫外光、14…第1の赤外光、17…
第2の赤外光、21…汎用試料ホルダ、23…ガイド部
材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 21/00 - 21/01 G01N 21/17 - 21/61 G01J 3/00 - 3/52 G01N 11/00 PATOLIS JOIS

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光または電子線により反応が進む高分子
    材料の層を複数、個別に配置し、前記層のそれぞれに前
    記光または電子線を等角度で順に通過させ、かつ、測定
    光を複数の前記層のうちの少なくとも1つの層に、個別
    に照射し、個別に分光測定を行ない、前記層が順に積層
    された状態の高分子材料膜における、前記測定光が照射
    される層に対応する層の反応を、独立して測定すること
    を特徴とする高分子材料膜分光測定方法。
  2. 【請求項2】 前記高分子材料は、前記光または電子線
    の通過により硬化する性質を有する材料であることを特
    徴とする請求項1に記載の高分子材料膜分光測定方法。
  3. 【請求項3】 前記層のうち、少なくとも2つの層は、
    異なる高分子材料からなり、前記高分子材料膜は、2層
    以上組み合わされた高分子材料多層膜であることを特徴
    とする請求項1または2に記載の高分子材料膜分光測定
    方法。
  4. 【請求項4】 前記光は、紫外光または熱線であること
    を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の
    高分子材料膜分光測定方法。
  5. 【請求項5】 前記光は、レーザ光であることを特徴と
    する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高分子材
    料膜分光測定方法。
  6. 【請求項6】 前記分光測定は、近赤外分光分析または
    赤外分光分析または紫外可視分光分析であることを特徴
    とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高分子
    材料膜分光測定方法。
  7. 【請求項7】 前記分光測定は、ラマン分光分析である
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記
    載の高分子材料膜分光測定方法。
  8. 【請求項8】 光または電子線により反応が進む高分子
    材料の層を載置する複数の基板と、該複数の基板を保持
    する保持手段と、前記光または電子線を発生する発生手
    段と、少なくとも1つの測定光を発生する測定光発生手
    段を有し、前記複数の基板は、前記光または電子線に対
    して透明であり、前記発生手段は、前記光または電子線
    を順次前記複数の基板に対し等角度で通過させるもので
    あり、前記測定光発生手段は、前記測定光を、複数の前
    記基板のうちの少なくとも1つの基板に個別に照射し、
    個別に分光測定を行なわせるものであり、前記層が積層
    された状態の単層または多層の膜における、前記測定光
    が照射される層に対応する層の反応を、独立して測定す
    ることを特徴とする高分子材料膜分光測定ユニット。
  9. 【請求項9】 前記保持手段は、前記複数の基板のそれ
    ぞれを保持する複数の試料台と、該複数の試料台を個別
    に角度調整可能に保持する複数のホルダ支柱を有し、該
    ホルダ支柱は、相対的に平行移動可能に設置されること
    を特徴とする請求項8に記載の高分子材料膜分光測定ユ
    ニット。
  10. 【請求項10】 ガイド部材を有し、前記ホルダ支柱は
    該ガイド部材に沿って平行移動するものであり、前記ガ
    イド部材の一端部は、汎用試料ホルダの取り付け穴に取
    り付けられる取付部であることを特徴とする請求項9に
    記載の高分子材料膜測定ユニット。
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電気情報通信学会大会講演論文集,1995年 3月10日,Vol.1995,No.Sogo Pt 3,p470

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