JP3458485B2 - 継目無鋼管の製造方法およびその方法を実施するための製造設備列 - Google Patents

継目無鋼管の製造方法およびその方法を実施するための製造設備列

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JP3458485B2
JP3458485B2 JP25508894A JP25508894A JP3458485B2 JP 3458485 B2 JP3458485 B2 JP 3458485B2 JP 25508894 A JP25508894 A JP 25508894A JP 25508894 A JP25508894 A JP 25508894A JP 3458485 B2 JP3458485 B2 JP 3458485B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、継目無鋼管の製造方法
および製造設備列に関し、より詳しくは、加工熱処理の
効果的な実施により、強度、靭性および耐食性に優れた
継目無鋼管をスリム化したミルラインを用いてオンライ
ンで安価に製造する方法と、その方法を実施するための
製造設備列に関する。
【0002】
【従来の技術】巨大設備を必要とする鉄鋼製品の製造で
は、省プロセス、省エネルギー化の観点から、オンライ
ンでの加工熱処理の適用によるプロセスの簡素化が検討
されており、特に鋼板や厚板の製造分野では、オフライ
ンでの焼入れ、焼戻しによる製造はかなり減少し、オン
ライン処理材がほとんどを占めるまでになっている。
【0003】これに対して、継目無鋼管の製造分野にお
いては、高信頼性、高品質化の要求が強いことから、い
まだに大部分の製品が、オフラインでの焼入れ、焼戻し
処理によって製造されているのが実状で、製管ラインと
は別に焼入れ炉と焼戻し炉を設置してオフラインで操業
する必要があり、省エネルギー化等の障害となってい
る。
【0004】このため、近年に至って継目無鋼管の製造
分野においても、熱間加工後の素材が保有する熱を利用
して直ちに焼入れを行う、いわゆる直接焼入れプロセス
を導入する動きがあり、それにより焼入れ炉が不要とな
って、工業的に大きなコストダウンが得られつつある。
【0005】例えば、特開昭56−166324号公報、同58−
120720号公報、同58−224116号公報、同59−020423号公
報、同60−033312号公報、同60−075523号公報、同62−
151523号公報等に見られるように、継目無鋼管の製造過
程において熱間加工後直ちに強制冷却し、直接焼入れす
るプロセスが提案実用化されているが、これ等の直接焼
入れプロセスを経て製造された製品の結晶粒径は、オフ
ラインで焼入れ、焼戻し処理して製造された製品と比較
すると、一般的に粗大であり、靭性や耐食性が劣るとい
う欠点があった。
【0006】そこで、結晶粒を微細化する目的で、オン
ラインで冷却と再加熱を組み合わせて、オーステナイト
からの変態とオーステナイトへの逆変態の合計2回以上
の変態を行わせることによって細粒化を図る方法が提案
されており、例えば、特開昭56−003626号公報には、粗
圧延と仕上げ圧延の中間に冷却と再加熱のプロセスを組
み込む方法、特開昭58−091123号公報、同58−104120号
公報、同63−011621号公報および特開平04−358023号公
報には、最終仕上げ圧延後に冷却と再加熱を組み合わせ
る方法、特開昭58−117832号公報には、圧延途中および
圧延後に2回冷却、再加熱する方法、が提案されてい
る。
【0007】上記の方法は、いずれもオンラインで変態
が開始もしくは完了する温度域までの強制冷却と、再び
逆変態が完了する温度域までの再加熱が必要で、エネル
ギー消費が著しいこと、および複雑かつ建設費の高い設
備を必要とするので、オフラインの焼入れ設備と比較す
ると、それほど大きな設備コストや運転コストの差には
ならず、メリットが少ないため、安価な設備で生産性高
く性能の優れた継目無鋼管を製造するという点からは満
足できる方法でなかった。
【0008】また、特開昭62−139815号公報、同63−22
3125号公報、同64−055335号公報には、結晶粒を微細化
する観点から、未再結晶域で加工を行い、さらに再結晶
させるプロセスによって微細な結晶粒を得た後、直接焼
入れ、焼戻しする方法が提案されているが、これ等の方
法はいずれも鋼板を製造対象とし、未再結晶温度域、す
なわち比較的低温での大圧下加工が必要な方法であっ
て、板圧延とは異なり複雑な塑性変形を伴う鋼管の圧延
には適用が困難である。その理由を具体的に説明する
と、例えば、連続延伸圧延機であるマンドレルミルによ
る圧延工程を未再結晶域温度である1000℃以下で実
施した場合には、通常、ミルの圧延能力を超えて圧延不
能となり、仮に圧延できたとしても表面疵等の欠陥が多
発し、さらにはマンドレルバーの引き抜きが著しく困難
になるからである。
【0009】さらに、特開昭61−238917号公報には、継
目無鋼管の製造プロセスにおいて、製管後の再結晶を利
用して結晶粒の微細化を図る方法が提案されているが、
熱間加工条件が特定されていないので実際のミルライン
によってはかえって粗粒化が促進されるおそれがある。
【0010】なお、前述したように、各製造機器装置を
直結する場合には省エネルギー、省スペース化を図るこ
とが可能であり、例えば特開昭63−157705号公報には、
分塊圧延もしくは鍛造プロセスを経ずして連続鋳造にて
直接丸ビレットを製造してこの丸ビレットを穿孔、延伸
圧延をする継目無鋼管の製造方法が提案されており、ま
た「鉄と鋼、第71年(1985)第8号、965 〜971 頁」
には、連続延伸圧延機であるマンドレルミルと仕上げ圧
延機であるエキストラクティングサイザーとを直結した
設備列が開示されている。
【0011】しかし、特開昭63−157705号公報に提案さ
れた方法は、加熱炉装入前の丸ビレットの温度条件およ
び傾斜ロール穿孔圧延機であるピアサーでの穿孔圧延条
件を何等特定しておらず、また「鉄と鋼」に開示された
設備列は、マンドレルミルで圧延された管からの内面規
制工具であるマンドレルバーの抜き取りをサイザーに負
わせ、且つ焼入れ温度を単に確保する目的で直結したに
過ぎず、オンライン処理によって微細結晶粒組織を有す
る継目無鋼管を高効率に製造する目的を持って、各製造
装置を有機的に配置して行う方法およびこの方法を実施
する既存の製造設備列は存在せず、且つまたほとんど検
討されていないのが実情である。
【0012】一方、傾斜ロール穿孔圧延法による熱間で
の継目無鋼管の代表的な製造プロセスは、丸ビレット
を、例えば、マンネスマンピアサーに代表される傾斜ロ
ール穿孔圧延機で穿孔圧延して中空素管となし、この中
空素管をプラグミル、マンドレルミル等の延伸圧延機お
よびサイザー、ストレッチレデューサー等の仕上げ圧延
機によって延伸、定径圧延するプロセスであり、従来プ
ロセスにおける素材の鋳込から最終製品の完成までの
程を見ると、(a)穿孔圧延用素材であるビレットの製
造工程、(b)熱間での穿孔圧延と延伸、定径圧延工
程、(c)調質処理、すなわち熱処理工程の3程に大
別でき、通常、上記(a)〜(c)の各程はそれぞれ
分離独立した工程となっている。このうち、上記(b)
と(c)の程については、前述したように、連続させ
て製造オンライン中で実施する動きがあり、直接焼入れ
プロセスはその代表的なものである。
【0013】しかし、単純な直接焼入れタイプの加工熱
処理と従来の調質処理(焼入れ、焼戻し処理)を比較す
ると、前述したように結晶粒が粗大になる問題があり、
直接焼入れによる省力化、コストダウン等の効果が十分
に発揮できない。また、直接焼入れプロセスにて製造し
た継目無鋼管の機械的性質は、その軸長方向や製造ロッ
ト間の温度バラツキに起因する強度バラツキが大きく、
均質な継目無鋼管を大量に製造するのは困難であった。
【0014】さらに、各工程が独立していると、工程間
での処理スピードの違いから、素材をストックしておく
場所の確保が必要で、例えば、穿孔圧延用素材であるビ
レットを保管するビレットヤードや、熱処理前の継目無
鋼管を一時保管しておく場所等が必要で、従来の製造設
備列(工場レイアウト)では、かなり広いスペースを確
保しなければならない問題があった。またさらに、各々
の各工程間では素材を搬送する必要があり、クレーン、
トラック等の補助搬送設備および手段が多く必要になる
という問題があった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の実状に鑑みなされたもので、安価な設備によって性能
の優れた継目無鋼管を生産性高く製造できる方法とその
製造設備列、より詳しくは、各機器装置を直結配置して
全体の設備をできるだけコンパクトにすると共に、その
最適操業条件を適正に設定することで、従来方法によっ
て製造された製品と同等以上の性能を有する継目無鋼管
を安価に製造することのできる方法と、その方法を実施
するための製造設備列を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するため、鋭意実験研究を重ねた結果、次に示す
(A)〜(H)の知見を得、これに基づく製造プロセス
の実現によって究極の連続プロセスによる継目無鋼管の
製造が可能であるばかりか、最適の加工熱処理を施すこ
とにより著しい性能向上が得られることを見いだした。
【0017】(A)ビレットの製造は、丸形状の鋳型を
有する連続鋳造機用いることにより、凝固ままで丸ビレ
ットが得られ、これによって角連鋳材を素材とする場合
に必要な分塊、圧延あるいは鍛造工程を省略することが
できる。
【0018】(B)鋳造ままの丸ビレットは、直ちに加
熱炉に装入して所定の温度に加熱した後、傾斜ロール穿
孔圧延機で穿孔圧延することにより、その保有熱を十分
に活用できて加熱炉での加熱エネルギーを大幅に節約で
きるのに加え、角連鋳材を素材としてこれを分塊、圧延
あるいは鍛造工程を経て丸ビレットとする場合に必要で
あった鋳造ブルームや分塊、圧延あるいは鍛造後の丸ビ
レットの保管場所が不要となり、省スペース化が図れ
る。
【0019】(C)鋳造ままの丸ビレットは、分塊、圧
延あるいは鍛造して得た丸ビレットに比べて熱間加工性
に劣り、上記傾斜ロール穿孔圧延機での穿孔圧延時に欠
陥が発生しやすいが、この欠陥発生は穿孔圧延時の歪速
度を適正に設定することによって防止できる。
【0020】(D)傾斜ロール穿孔圧延機で穿孔圧延
後、延伸圧延機であって複数ロールスタンドからなる連
続延伸圧延機であるマンドレルミルと、仕上げ圧延機で
あって複数ロールスタンドからなるサイザーまたはスト
レッチレデューサーで延伸、定径圧延するが、両圧延機
の配置を連続延伸圧延機であるマンドレルミルでの延伸
圧延管長さ未満の距離を隔てて同一ライン上に直列に近
接一体型配置とすることによって、素材の温度低下が抑
制できると共に、加工歪みの蓄積を大きくすることが可
能となり、その後に施す再結晶処理で得られる結晶粒
が、両者の圧延機間の離間距離が大きいときに比べて著
しく細粒となり、靭性、耐食性等の性能向上が図れる。
【0021】(E)仕上げ圧延機であるサイザーまたは
ストレッチレデューサーでの圧延後に再結晶させる必要
があるが、これは仕上げ圧延機とその後段に設けた直接
焼入れ装置の間における素材の冷却速度を空冷以下に調
整するか、あるいは保加熱炉を設けて素材の温度を適宜
調整して再結晶を促進させることによって微細粒からな
る組織を容易に得ることができる。
【0022】(F)また、上記保加熱炉を設けて素材温
度を調整する場合には、管軸長方向や製造ロット間の焼
入れ温度のバラツキを小さくすることができるだけでな
く、その温度をコントロールすることによって炭化物等
の析出物の析出コントロールができて同一材質でその強
度を任意に変化させたり、再結晶粒の粗大化を抑制する
ことができる。
【0023】(G)上記の処理によって結晶粒径、析出
物量を適正に調整した素材を直ちにAr3変態点以上の温
度から直接焼入れし、次いで同じライン上に設けた焼戻
し炉によって焼戻しを実施することで、靭性、耐食性等
の性能向上が図れる。
【0024】(H)溶鋼の凝固から製管、熱処理までを
すべてオンラインでつなぎ、さらに新しい加工熱処理条
件を規定することによって、従来と同等以上の性能を有
し、しかも性能バラツキの少ない製品が、低コストで製
造できる。
【0025】上記の知見に基づく本発明の要旨は、次の
(1)〜(7)にある。
【0026】(1)継目無鋼管の製造方法であって、丸
形状の鋳型を用いて丸ビレットを直接連続鋳造する
と、この丸ビレットをその温度がAr1変態点超の温度で
ある間に加熱炉に装入して所定温度に均熱加熱する
と、この均熱加熱した丸ビレットを傾斜ロール穿孔圧延
機によって50/秒以下の歪速度で穿孔圧延して中空素
管となす程と、この中空素管を連続延伸圧延機と仕上
げ圧延機とが直結配置された両者の圧延機によって0.
01/秒以上の平均歪速度で、10%以上の加工度を付
与して仕上げ温度800〜1000℃で延伸、定径圧延
を終了する程と、この延伸、定径圧延の終了した鋼管
を空冷未満の冷却速度でAr3変態点以上の温度に冷却後
この温度から直接焼入れする程と、次いでこの直接焼
入れした鋼管を焼戻しする程とを、順次連続してオン
ラインで行う方法。
【0027】(2)継目無鋼管の製造方法であって、丸
形状の鋳型を用いて丸ビレットを直接連続鋳造する
と、この丸ビレットをその温度がAr1変態点超の温度で
ある間に加熱炉に装入して所定温度に均熱加熱する
と、この均熱加熱した丸ビレットを傾斜ロール穿孔圧延
機によって50/秒以下の歪速度で穿孔圧延して中空素
管となす程と、この中空素管を連続延伸圧延機と仕上
げ圧延機とが直結配置された両者の圧延機によって0.
01/秒以上の平均歪速度で、10%以上の加工度を付
与して仕上げ温度800〜1000℃で延伸、定径圧延
を終了する程と、この延伸、定径圧延の終了した鋼管
をその仕上がり温度に30秒〜30分保持した後、直ち
にあるいは空冷以下の冷却速度でAr3変態点以上の温度
に冷却してから直接焼入れする程と、次いでこの直接
焼入れした鋼管を焼戻しする程とを、順次連続してオ
ンラインで行う方法。
【0028】(3)継目無鋼管の製造方法であって、丸
形状の鋳型を用いて丸ビレットを直接連続鋳造する
と、この丸ビレットをその温度がAr1変態点超の温度で
ある間に加熱炉に装入して所定温度に均熱加熱する
と、この均熱加熱した丸ビレットを傾斜ロール穿孔圧延
機によって50/秒以下の歪速度で穿孔圧延して中空素
管となす程と、この中空素管を連続延伸圧延機と仕上
げ圧延機とが直結配置された両者の圧延機によって0.
01/秒以上の平均歪速度で、10%以上の加工度を付
与して仕上げ温度800〜1000℃で延伸、定径圧延
を終了する程と、この延伸、定径圧延の終了した鋼管
を850〜980℃に10秒〜30分均熱保持または再
加熱保持した後、直ちにあるいは空冷以下の冷却速度で
Ar3変態点以上の温度に冷却してから直接焼入れする
程と、次いでこの直接焼入れした鋼管を焼戻しする
とを、順次連続してオンラインで行う方法。
【0029】(4)上記(1)の方法を実施するための
継目無鋼管の製造設備列であって、丸ビレットを直接製
造する連続鋳造機、鋳造された丸ビレットを均熱加熱す
るビレット加熱炉、均熱加熱された丸ビレットを中空素
管に穿孔圧延する傾斜ロール穿孔圧延機、中空素管を延
伸圧延する連続延伸圧延機、延伸圧延された中空素管を
定径圧延する仕上げ圧延機、定径圧延された管をインラ
イン中で焼入れ処理する直接焼入れ装置および焼入れ処
理された管をインライン中で焼戻し処理する焼戻し炉を
具備し、これらを少なくとも下記〜の条件を満足さ
せて順次連続配置した設備列。
【0030】連続鋳造機は、鋳造丸ビレット中の溶湯
の凝固完了後、その温度がAr1変態点を下回らない温度
を有する間に、丸ビレットをビレット加熱炉へ装入可能
な離間距離を有する搬送路を介するか、もしくはその温
度がAr1変態点を下回らない温度に保持する保熱手段ま
たは加熱手段を有する搬送路を介してビレット加熱炉の
前段位置に設けられていること。
【0031】連続延伸圧延機と仕上げ圧延機とは、連
続延伸圧延機で延伸圧延された管の長さ未満の距離を隔
てて同一ライン上に直列に設けられていること。
【0032】直接焼入れ装置は、延伸、定径圧延され
た管を空冷未満の冷却速度で徐冷する手段を有する搬送
路を介して仕上げ圧延機の後段位置に設けられているこ
と。
【0033】(5)上記(2)または(3)の方法を実
施するための継目無鋼管の製造設備列であって、上記
(4)における条件を、「直接焼入れ装置は、延伸、
定径圧延された管の温度をその温度に保持する保熱炉、
もしくは所定の温度に均熱保持または昇温加熱保持する
加熱炉を有する搬送路を介して仕上げ圧延機の後段位置
に設けられていること。」とした設備列。
【0034】(6)傾斜ロール穿孔圧延機を、均熱加熱
された丸ビレットを所定の長さに切断するビレット切断
手段を有する搬送路を介してビレット加熱炉の後段位置
に設けた上記(4)または(5)に記載の設備列。
【0035】(7)ビレット加熱炉と傾斜ロール穿孔圧
延機との間に介設された搬送路を、この搬送路中に設け
られたビレット切断手段の後段に、ビレット加熱手段を
有するものとした上記(4)〜(6)のいずれかの設備
列。
【0036】
【作用】
〔丸ビレットの製造〕:丸ビレットは、種々の内径の丸
形状の鋳型を有する連続鋳造機を用い、製管段取りに応
じた外径、長さの丸ビレットを製造し、通常の分塊、圧
延あるいは鍛造工程を経ずしてAr1変態点超の温度であ
る間に後段のビレット加熱炉へ装入する。これは、ビレ
ット加熱炉での均熱加熱に際し、その装入前のビレット
温度の低い方が組織変態による結晶粒の微細化が図れる
が、後述の傾斜ロール穿孔圧延機(以下、単にピアサー
という)に供するビレットとしてはその中心部の凝固が
完了しておればよく、ビレット加熱炉への装入前の温度
が高ければ高いほど、加熱エネルギーの節約が図れるの
で、本発明では省エネルギーを重視し、オーステナイト
/フェライト変態終了温度であるAr1変態点超の温度で
ビレット加熱炉へ装入することにした。
【0037】従って、連続鋳造機は、鋳造丸ビレット中
心の凝固完了後、その温度がAr1変態点以下の温度にな
らない間にビレット加熱炉へ装入可能な離間距離を有す
るか、もしくはその温度をAr1変態点超の温度に保持可
能な保熱手段または短時間に再加熱して維持できる、例
えばトンネル型誘導加熱炉等の適宜な加熱手段を有する
搬送路を介してビレット加熱炉の前段位置に設ける。
【0038】なお、ビレット加熱炉への連続鋳造丸ビレ
ットの装入前温度は、Ar1変態点超の温度であればよ
く、その上限を特に定める必要はない。しかし、材料の
靭性、耐食性等の性能面からはフェライト変態を開始す
るAr3変態点以下の温度とするのがよく、ビレットの加
熱炉挿入前温度はAr1変態点超〜Ar3変態点以下とする
のが好ましい。
【0039】また、連続鋳造機は、鋳造丸ビレットの鋳
造組織等の改質を図る目的で、これに軽圧下加工を加え
るロールスタンドを有するものであってもよい。
【0040】〔ビレットの加熱〕:ビレットの均熱加熱
に際しての加熱温度は、後段のピアサーで熱間穿孔圧延
ができる温度であればよく、その最適温度は材質によっ
て異なり、穿孔圧延対象材質の高温延性と高温強度を考
慮して適宜決めるが、通常、1100〜1300℃の間
に加熱する。
【0041】なお、ビレット加熱炉としては、回転炉床
型のいわゆるロータリー炉を用いるのがよい。また、加
熱炉へのビレット装入充填率を高めて高能率のビレット
加熱を図るには、後述のピアサーでの穿孔圧延対象のビ
レット長さの複数倍長の長尺状態で装入するのがよく、
この場合にはビレット加熱炉とピアサーとの間に介設さ
れる搬送路中にガス切断機、ホットソー等の適宜な切断
機を設け、所定の長さに切断しつつピアサーに供給れば
よい。また、切断に際して材料の温度が低下する場合に
は、切断手段の後段に、連続鋳造機の後段搬送路中に設
けたと同様の、例えばトンネル型誘導加熱炉等の適宜な
補助加熱手段を設けて昇温加熱するようにしてもよい。
【0042】〔穿孔圧延〕:鋳造ままで粗粒組織の丸ビ
レットを穿孔圧延対象するから、ピアサー(傾斜ロー
ル穿孔圧延機)で過酷な加工を加えると疵が発生する
が、種々の実験研究の結果、穿孔時の歪速度が50/秒
以下であると疵発生なく穿孔できることがわかった。よ
って、穿孔圧延時の歪速度を50/秒以下とした。
【0043】なお、熱間加工性の劣る材質を穿孔圧延す
るには、できるだけ高温で加工するのがよく、ピアサー
の直前段位置に前述と同様のトンネル型の誘導加熱装置
等の適宜な補助加熱手段を設けて、昇温加熱してから穿
孔圧延するのが好ましい。
【0044】また、歪速度は50/秒以下であればよ
く、特にその下限を定める必要はないが、0.1/秒未
満になるとプラグ、ガイドシュー等の工具寿命が著しく
低下するので、0.1/秒以上とするのが望ましい。
【0045】さらに、ピアサーとしては傾斜ロール穿孔
圧延機であればどのようなタイプのものでもよいが、薄
肉または/および高拡管率の穿孔が可能な交叉型の傾斜
ロール穿孔圧延機を用いるのが、丸ビレットの外径サイ
ズを統合集約するうえから好ましい。
【0046】〔延伸、定径圧延〕:延伸圧延機であって
複数ロールスタンドからなる連続延伸圧延機であるマン
ドレルミルと、仕上げ圧延機であってマンドレルミルと
同様に複数ロールスタンドからなるサイザーまたはスト
レッチレデューサーとによる加工は、前段のピアサーに
よる加工に比べると、ピアサーでの素材の温度低下があ
るので比較的低温域での加工となるが、加工熱処理を考
える場合には有効な加工を付与する重要な工程である。
このため、連続延伸圧延機であるマンドレルミルと仕上
げ圧延機であるサイザーまたはストレッチレデューサー
とは離間独立配置せずに一体直結型の配置、具体的には
連続延伸圧延機であるマンドレルミルで延伸圧延された
管の長さ未満の距離を隔てて同一ライン上に直列に配置
することが必要であり、これによって連続延伸圧延機で
あるマンドレルミルで付与された加工歪みが回復する前
に、直ちに仕上げ圧延機であるサイザーまたはストレッ
チレデューサーで更なる加工を加えることができ、その
後の再結晶粒の微細化が実現できる。
【0047】すなわち、同じパススケジュールで製管す
る場合でも、連続延伸圧延機と仕上げ圧延機とを前記の
離間距離より大きな距離を隔てて分離独立配置した場合
と、そうでない場合とでは再結晶後の粒径に差があり、
上記の本発明規定の離間距離内で直列に近接配置とした
方が微細粒が得られることがわかった。よって、その離
間距離を上記のように定めた。
【0048】この際、下記(a)式で定義される平均歪
速度(Vε)が、0.01/秒未満では各々のパス間で
再結晶して歪の蓄積が行われず、後の程での再結晶に
よる微細化効果が得られず、また歪量が加工度(断面減
少率)換算で10%未満では再結晶がスムーズに進行せ
ず、微細化効果が得られない。さらに、仕上げ圧延機で
の仕上がり素材温度も重要で、その温度が800〜10
00℃である場合に、その後の再結晶による微細化効果
が著しく大きいことがわかった。よって、その平均歪速
度、加工度および仕上げ圧延機での仕上がり温度を、そ
れぞれ0.01/秒以上、10%以上および800〜1
000℃と定めた。
【0049】なお、平均歪速度および加工度は、0.0
1/秒以上および10%以上であればよく、その上限を
特に定める必要はないが、平均歪速度については10/
秒を超えると連続延伸圧延機であるマンドレルミルの内
面規制工具であるマンドレルバー等の工具寿命が著しく
低下するので、10/秒以下とするのが望ましく、ま
た、加工度については95%を超えると疵の発生が著し
くなるので、95%以下とするのが望ましい。
【0050】 Vε=(Mε+Sε)/Mt・・・・・・・・・・・・・・(a) ただし、Mε:連続延伸圧延機での加工歪 Sε:仕上げ圧延機での加工歪 Mt:中空素管先端が連続延伸圧延機に噛み込んでから
仕上げ圧延機を出るまでの所要時間(秒) さらに、連続延伸圧延機であるマンドレルミルとして
は、内面規制工具であるマンドレルバーの後端を拘束す
ると共に、延伸圧延終了後にマンドレルバーをミル入側
に孔型ロール列中を通して引き戻して循環使用できるマ
ンドレルバー拘束手段(バーリテーナー)を有するタイ
プであればどのようなものでもよいが、前記マンドレル
バー拘束手段が中空素管の延伸圧延中に管の圧延移動速
度とは独立した速度でマンドレルバーの移動速度を制御
可能な機能を備えるマンドレルミルを用いるのが望まし
い。また、仕上げ圧延機であるサイザーまたはストレッ
チレデューサーとしては、内面規制工具を有しないもの
であればどのようなタイプのものでもよいが、連続延伸
圧延機で圧延された管内のマンドレルバーから管を引き
出し分離する機能を備える、いわゆるエクストラクティ
ング型のサイザーまたはストレッチレデューサーを用い
るのが望ましい。
【0051】〔再結晶処理〕:本発明では連続延伸圧延
機(以下、単にマンドレルミルという)と仕上げ圧延機
(以下、単にサイザーという)とによる延伸、定径圧延
後、サイザーと直接焼入れ装置との間で再結晶処理を行
うのが大きな特徴の一つであり、この再結晶処理によっ
て、マンドレルミルとサイザーとによる加工と徐冷、保
熱あるいは加熱のいずれかとの組み合わせで再結晶が効
果的に誘起され、結晶粒の微細化が可能となる。
【0052】〔徐冷の場合〕:これは、仕上げ圧延終了
後の素材をAr3変態点以上の所定の焼入れ温度までに徐
冷する場合であり、焼入れ開始までに再結晶を完了させ
て微細組織とするため、冷却速度は遅ければ遅いほどよ
いが、空冷未満の冷却速度であれば十分である。しか
し、冷却速度が空冷以上になると粗大粒や混粒組織とな
り靭性が低下する。よって、除冷する場合の冷却速度を
空冷未満と定めた。なお、好ましくは0.5℃/秒以下
である。
【0053】また、この冷却速度は、例えば、サイザー
の出口から焼入れ装置の入り口までの間の搬送路をガラ
スウール等の断熱性を有する適宜材料を内張りしたカバ
ー、輻射熱を反射する鏡面を有するミラー等の適宜材料
を内張りしたカバーで覆う等することによって得ること
ができるが、その他適宜手段を採用してもよく、その具
体的な方法は問わない。
【0054】〔保温の場合〕:これは、仕上げ圧延終了
後の素材の温度を、その仕上げ温度に保温する場合であ
り、その保温保持時間が30秒未満では再結晶が開始せ
ず、30分を超えて保持しても効果は変わらず、エネル
ギーコストが嵩み、さらに生産能率が低下する。よっ
て、その保温時間を30秒〜30分と定めた。
【0055】〔均熱または昇温加熱の場合〕:これは、
仕上げ圧延終了後の素材を、次の所定温度域で所定時間
均熱または昇温加熱保持する場合であり、温度が850
℃未満、保持時間が10秒未満では再結晶が進行せず、
逆に温度が980℃超、保持時間が30分超では結晶粒
が成長して組織が粗粒化する。よって、その温度を85
0〜980℃、保持時間を10秒〜30分と定めた。な
お、ここでの均熱には素材の仕上がり温度よりも低い上
記範囲内の温度に炉温設定した加熱炉中に素材を装入し
て均熱する操作も含まれる。
【0056】上記の保熱、均熱または昇温加熱操作は、
それぞれ当業者間に周知の適宜構造の専用の保熱炉また
は加熱炉を設けるか、あるいは保加熱兼用炉を設けて行
うことができ、この場合、焼入れ温度の確保が容易とな
り、さらにパイプの軸長方向および製造ロット間の均熱
性を容易に保証することができ、製品の性能バラツキを
大幅に小さくすることができる。また、保熱温度あるい
は均熱または昇温加熱温度を高めに設定し、延伸、定径
圧延加工中に析出した炭化物等を再固溶させて焼戻し軟
化抵抗を向上させたり、逆に低めに設定し、析出物を積
極的に析出させて粒界ピンニング作用によって結晶粒の
粗大化を防止することもできる。
【0057】〔焼入れ〕:焼入れは、強度と十分な靭性
を得るため、Ar3変態点以上の温度から行うことが必要
である。また、肉厚の厚い鋼管であっても十分な冷却速
度での急速冷却が必要であり、この場合には内外面同時
冷却が可能な適宜構造の冷却手段を用いて冷却するのが
望ましい。
【0058】〔焼戻し〕:焼戻しは、直接焼入れ装置の
後段のライン上に設けた焼戻し炉によって行うが、最終
製品の性能を決定する重要なプロセスであって、得よう
とする性能に応じて適宜な焼戻し温度を定め、その温度
で十分に均熱してから実施することが必要で、その温度
バラツキは大きくても±10℃とし、好ましくは±5℃
とすることが肝要である。これによって、耐力(Y
S)、引張強さ(TS)のバラツキを目標強度の±5kg
f/mm2 の範囲内に抑えることができる。
【0059】
【実施例】以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳
細に説明する。
【0060】図1は、本発明の方法を実施するため設備
列の一例を示す模式図で、図中、1は丸形状の鋳型を有
する連続鋳造機で、所定内径を有する鋳型に適宜変更す
ることにより、製管段取りに応じた外径の丸ビレットを
連続的に鋳造し、その中心部の凝固がほぼ完了するか、
もしくは完全に完了してから所定長さに切断する。ま
た、必要に応じてその切断手段の前段または後段に設け
られたロールスタンドによって軽圧下加工を付与するこ
とで鋳造組織の改質を図る。
【0061】所定長さに切断された丸ビレットは、その
温度がAr1変態点超の温度である間に、横送り形式の搬
送路2を用いてビレット加熱炉3に装入される。このた
め、搬送路2の長さは、鋳造後の丸ビレット温度がAr1
変態点以下にならない間にビレット加熱3に装入できる
距離を有している。なお、工場敷地の関係上、前記の距
離を超える搬送路とせざるを得ない場合には、その搬送
路中にその温度をAr1変態点超に維持できるように、例
えばトンネル型の誘導加熱装置等の適宜な補助加熱手
段、あるいはガラスウール等の断熱材料を内張りしたカ
バーまたは輻射熱を反射する鏡面を有するミラー等の反
射板を内張りしたカバーで覆う等の適宜な保熱手段を設
けることで、その温度をAr1変態点超の温度に維持する
ようにしてもよい。
【0062】ビレット加熱炉3で所定の温度に十分均熱
加熱された丸ビレットは、搬送路4を通ってピアサー5
に送給され、50/秒以下の歪速度で穿孔圧延されて疵
等の欠陥のない中空素管に成形される。この時、ビレッ
ト加熱炉3に装入する丸ビレットの長さは、その炉内へ
の装入充填率を高めて加熱効率を向上させるため、ピア
サー5での穿孔圧延に供する長さの複数倍の長さで装入
するのが望ましく、この場合、ビレット加熱炉3とピア
サー5の間に介設される搬送路4中に、ガス切断機、ホ
ットソー等の適宜なビレット切断機4aを設てけ所定の
定尺長さに切断してからピアサー5へ送給するのがよ
い。また、この切断に際して温度低下が懸念される場合
には、前記のビレット切断機4aの後段に、例えばトン
ネル型の誘導加熱装置等からなる短時間で昇温加熱し得
る補助加熱装置4bを設けて加熱昇温することができ
る。
【0063】ピアサー5で穿孔圧延形成された中空素管
は、横送り形式の搬送路6を介して搬送され、その終端
部に設けられたマンドレルミル7の入側テーブルに送給
され、ここでその管内に後端がバーリテーナーで拘束保
持されるマンドレルバーを挿入してから、マンドレルミ
ル7で延伸圧延された管の長さ未満の離間距離を隔てて
同一ライン上に直列に近接一体型に直結配置したマンド
レルミル7とサイザー8によって歪速度0.01/秒以
上で、且つ加工度10%以上を付与して延伸、定径圧延
されて仕上げ温度800〜1000℃で仕上げられ、そ
の出側に設けられた搬送装置9によって次に述べる種々
の再結晶処理を施された後、サイザー8に近接配置され
た焼入れ装置11へ搬送される。なお、前記搬送路6
は、横送り形式のものに変えてローラコンベアー等の縦
送り形式のものであってもよい。
【0064】搬送装置9は、例えばローラコンベアー等
からなり、ガラスウール等の断熱材料を内張りした断熱
カバーまたは輻射熱を反射する鏡面を有するミラー等の
反射板を内張りしたカバーで覆われており、仕上げ圧延
された材料を空冷未満の冷却速度でAr3変態点以上の温
度に徐冷しつつ再結晶処理して後段の焼入れ装置11へ
送給する。そして、焼入れ装置11へ送給された材料
は、ここでAr3変態点以上の温度から直接焼入れ処理さ
れる。また、搬送路9は、上記徐冷搬送路に変えてその
搬送路中に、保熱炉または加熱炉あるいは保加熱兼用炉
10を有するものであってもよく、この場合には、仕上
げ圧延された材料を、その仕上げ温度に30秒〜30分
間保持して再結晶処理するか、もしくは850〜980
℃に10秒〜30分間均熱保持または昇温加熱保持して
再結晶処理するかした後、後段の焼入れ装置11へ送給
する。そして、焼入れ装置11へ送給された材料は、前
記徐冷の場合と同様に、ここでAr3変態点以上の温度か
ら直接焼入れ処理される。なお、図1において、搬送炉
9は、徐冷搬送路である場合、もしくは保熱炉または加
熱炉あるいは保加熱兼用炉を有する場合について示した
が、徐冷搬送路、保熱炉介設搬送路および加熱炉介設搬
送路の3つを並列配置するか、もしくは徐冷搬送路と保
加熱兼用炉を介設した搬送路の2つを並列配置してもよ
い。
【0065】焼入れ装置11によって直接焼入れ処理さ
れた材料は、この焼入れ装置11の後段に近接配置され
た焼戻し炉12によって所定の適宜温度に均熱加熱され
た後、焼戻し処理され、次いで、矯正機13によって曲
がり矯正されて製品とされる。
【0066】[実験例1]表1に示す化学組成の鋼A、
Bを90φの鋳型に鋳込み凝固後直ちに鋳型から外し、
1250℃の加熱炉に1時間保持し、実験用ピアサーに
て歪速度を種々変化させて穿孔試験を実施した結果を表
2に示した。なお、ビレット加熱炉に装入した温度は、
それぞれ、鋼Aでは690℃、鋼Bでは760℃であ
り、鋼AではAr1変態点とAr3変態点の間の温度、鋼B
ではAr3変態点以上の温度であった。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】表2に示す結果から明らかなように、凝固
ままで、かつAr1変態点以下の温度に冷却しない連続鋳
造ままの丸ビレットを加熱し、ピアサーで穿孔圧延した
時、その歪速度が50/秒以下であるものは良好な中空
素管が得られている。これに対して歪速度が50/秒超
のものは疵が発生している。
【0070】[実験例2]表1に示す鋼A、Bを90φ
の鋳型に鋳込み凝固後直ちに鋳型から外し、1250℃
の加熱炉に1時間保持し、その後プレス加工を行い、製
管工程を表3および表4に示す条件でシミュレーション
した場合における材料の強度、旧オーステナイト結晶粒
径、靭性(vTrs)、耐食性(Sc値)を表5に示し
た。
【0071】なお、材料の強度は、鋼種によって焼戻し
温度を変化させてほぼ一定の値になるように揃えた。ま
た、耐食性指標のSc値は、NACE(米国腐食協会)
−TM01−77−92,METHOD−Bに規定の方
法によって求めた。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】表5に示す結果から明らかなように、鋼種
別に性能を比較すると、従来の製造方法をシュミレーシ
ョンしたQT材である試番25、26を基準にした場
合、本発明例(試番1〜18)では、いずれも結晶粒径
が小さく、靭性、耐食性ともに従来QT材と同等以上の
性能が得られている。これに対し、本発明の範囲外の比
較例(試番19〜24番)では、加工と再結晶による結
晶粒微細化効果が小さく、靭性、耐食性が劣っている。
【0076】
【発明の効果】本発明によれば、従来品と同等以上の性
能を有し、且つ安定したバラツキの少ない製品が、ビレ
ット鋳造、製管、熱処理のすべてをオンラインで無駄な
くコンパクトな設備によって低コストで製造でき、その
工業的な効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の設備列の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 連続鋳造機 2 搬送路 3 ビレット加熱炉 4 搬送路 4a ビレット切断機 4b 補助加熱装置 5 ピアサー 6 搬送路 7 マンドレルミル 8 サイザー 9 搬送装置 10 保熱炉または加熱炉もしくは保加熱兼用炉 11 焼入れ装置 12 焼戻し炉 13 矯正機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−228603(JP,A) 特開 昭58−135708(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 19/04 B21B 17/00 B21B 1/00 B21B 45/00 C21D 8/10 C21D 9/08

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】継目無鋼管の製造方法であって、丸形状の
    鋳型を用いて丸ビレットを連続鋳造して直接に製造する
    程と、この丸ビレットをその温度がAr1変態点超の温
    度である間に加熱炉に装入して所定温度に均熱加熱する
    程と、この均熱加熱した丸ビレットを傾斜ロール穿孔
    圧延機によって50/秒以下の歪速度で穿孔圧延して中
    空素管となす程と、この中空素管を連続延伸圧延機と
    仕上げ圧延機とが直結配置された両者の圧延機によって
    0.01/秒以上の平均歪速度で、10%以上の加工度
    を付与して仕上げ温度800〜1000℃で延伸、定径
    圧延を終了する程と、この延伸、定径圧延の終了した
    鋼管を空冷未満の冷却速度でAr3変態点以上の温度に冷
    却後この温度から直接焼入れする程と、次いでこの直
    接焼入れした鋼管を焼戻しする程とを、順次連続して
    オンラインで行うことを特徴とする継目無鋼管の製造方
    法。
  2. 【請求項2】継目無鋼管の製造方法であって、丸形状の
    鋳型を用いて丸ビレットを連続鋳造して直接に製造する
    程と、この丸ビレットをその温度がAr1変態点超の温
    度である間に加熱炉に装入して所定温度に均熱加熱する
    程と、この均熱加熱した丸ビレットを傾斜ロール穿孔
    圧延機によって50/秒以下の歪速度で穿孔圧延して中
    空素管となす程と、この中空素管を連続延伸圧延機と
    仕上げ圧延機とが直結配置された両者の圧延機によって
    0.01/秒以上の平均歪速度で、10%以上の加工度
    を付与して仕上げ温度800〜1000℃で延伸、定径
    圧延を終了する程と、この延伸、定径圧延の終了した
    鋼管をその仕上がり温度に30秒〜30分保持した後、
    直ちにあるいは空冷以下の冷却速度でAr3変態点以上の
    温度に冷却してから直接焼入れする程と、次いでこの
    直接焼入れした鋼管を焼戻しする程とを、順次連続し
    てオンラインで行うことを特徴とする継目無鋼管の製造
    方法。
  3. 【請求項3】継目無鋼管の製造方法であって、丸形状の
    鋳型を用いて丸ビレットを連続鋳造して直接に製造する
    程と、この丸ビレットをその温度がAr1変態点超の温
    度である間に加熱炉に装入して所定温度に均熱加熱する
    程と、この均熱加熱した丸ビレットを傾斜ロール穿孔
    圧延機によって50/秒以下の歪速度で穿孔圧延して中
    空素管となす程と、この中空素管を連続延伸圧延機と
    仕上げ圧延機とが直結配置された両者の圧延機によって
    0.01/秒以上の平均歪速度で、10%以上の加工度
    を付与して仕上げ温度800〜1000℃で延伸、定径
    圧延を終了する程と、この延伸、定径圧延の終了した
    鋼管を850〜980℃に10秒〜30分均熱保持また
    は再加熱保持した後、直ちにあるいは空冷以下の冷却速
    度でAr3変態点以上の温度に冷却してから直接焼入れす
    程と、次いでこの直接焼入れした鋼管を焼戻しする
    程とを、順次連続してオンラインで行うことを特徴と
    する継目無鋼管の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の方法を実施するための継
    目無鋼管の製造設備列であって、丸ビレットを直接製造
    する連続鋳造機、鋳造された丸ビレットを均熱加熱する
    ビレット加熱炉、均熱加熱された丸ビレットを中空素管
    に穿孔圧延する傾斜ロール穿孔圧延機、中空素管を延伸
    圧延する連続延伸圧延機、延伸圧延された中空素管を定
    径圧延する仕上げ圧延機、定径圧延された管をインライ
    ン中で焼入れ処理する直接焼入れ装置および焼入れ処理
    された管をインライン中で焼戻し処理する焼戻し炉を具
    備し、これらを少なくとも下記〜の条件を満足させ
    て順次連続配置してなることを特徴とする継目無鋼管の
    製造設備列。連続鋳造機は、鋳造丸ビレット中の溶湯
    の凝固完了後、その温度がAr1変態点を下回らない温度
    を有する間に、丸ビレットをビレット加熱炉へ装入可能
    な離間距離を有する搬送路を介するか、もしくはその温
    度がAr1変態点を下回らない温度に保持する保熱手段ま
    たは加熱手段を有する搬送路を介してビレット加熱炉の
    前段位置に設けられていること。連続延伸圧延機と仕
    上げ圧延機とは、連続延伸圧延機で延伸圧延された管の
    長さ未満の距離を隔てて同一ライン上に直列に設けられ
    ていること。直接焼入れ装置は、延伸、定径圧延され
    た管を空冷未満の冷却速度で徐冷する手段を有する搬送
    路を介して仕上げ圧延機の後段位置に設けられているこ
    と。
  5. 【請求項5】請求項2または請求項3に記載の方法を実
    施するための継目無鋼管の製造設備列であって、丸ビレ
    ットを直接製造する連続鋳造機、鋳造された丸ビレット
    を均熱加熱するビレット加熱炉、均熱加熱された丸ビレ
    ットを中空素管に穿孔圧延する傾斜ロール穿孔圧延機、
    中空素管を延伸圧延する連続延伸圧延機、延伸圧延され
    た中空素管を定径圧延する仕上げ圧延機、定径圧延され
    た管をインライン中で焼入れ処理する直接焼入れ装置お
    よび焼入れ処理された管をインライン中で焼戻し処理す
    る焼戻し炉を具備し、これらを少なくとも下記〜の
    条件を満足させて順次連続配置してなることを特徴とす
    る継目無鋼管の製造設備列。連続鋳造機は、鋳造丸ビ
    レット中の溶湯の凝固完了後、その温度がAr1変態点を
    下回らない温度を有する間に、丸ビレットをビレット加
    熱炉へ装入可能な離間距離を有する搬送路を介するか、
    もしくはその温度がAr1変態点を下回らない温度に保持
    する保熱手段または加熱手段を有する搬送路を介してビ
    レット加熱炉の前段位置に設けられていること。連続
    延伸圧延機と仕上げ圧延機とは、連続延伸圧延機で延伸
    圧延された管の長さ未満の距離を隔てて同一ライン上に
    直列に設けられていること。直接焼入れ装置は、延
    伸、定径圧延された管の温度をその温度に保持する保熱
    炉もしくは所定の温度に均熱保持または昇温加熱保持す
    る加熱炉を有する搬送路を介して仕上げ圧延機の後段位
    置に設けられていること。
  6. 【請求項6】傾斜ロール穿孔圧延機は、均熱加熱された
    丸ビレットを所定の長さに切断するビレット切断手段を
    有する搬送路を介してビレット加熱炉の後段位置に設け
    られていることを特徴とする請求項4または請求項5に
    記載の継目無鋼管の製造設備列。
  7. 【請求項7】ビレット加熱炉と傾斜ロール穿孔圧延機と
    の間に介設された搬送路は、この搬送路中に設けられた
    ビレット切断手段の後段に、ビレット加熱手段を有する
    ものであることを特徴とする請求項4〜請求項6のいず
    れかに記載の継目無鋼管の製造設備列。
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