JP3454613B2 - アルカリ蓄電池用ニッケル活物質及びその製造方法 - Google Patents
アルカリ蓄電池用ニッケル活物質及びその製造方法Info
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Description
水酸化ニッケル活物質に関し、更に詳しくは水酸化ニッ
ケル粒子表面を金属化合物で被覆したアルカリ蓄電池用
水酸化ニッケル活物質及びその製造方法に関する。
は、ニッケル粉末を焼結した焼結式基板に活物質を充填
するいわゆる焼結式と、ニッケル繊維焼結多孔体や発泡
ニッケル多孔体などの高多孔度のニッケル多孔体にペー
スト状の活物質を充填するいわゆるペースト式とがあ
る。しかし、焼結式は、活物質の充填作業が煩雑であ
り、また基板の高多孔度化に限界があるため、電極の高
エネルギー密度化を図り難いという欠点がある。このた
め、近年では、電池の高エネルギー密度化、低価格化の
要請に応えるべく、高多孔度ニッケル体を用いたペース
ト式のニッケル正極が主流になりつつある。
密度充填が可能であるものの、集電体として機能する多
孔体の細孔径が大きいために、多孔体と活物質との電気
的接触が不充分となり、集電効率が悪いという欠点があ
る。このため、高密度に充填した活物質の発電能力を十
分に引出し得ないという問題がある。
欠点を改善することを目的とし、水酸化ニッケルと水
酸化カドミウム又は水酸化コバルトを含む固溶体活物質
粉末の表面に水酸化コバルトの被覆層を形成する技術
(特開昭62−222566号公報)や、水酸化ニッ
ケルの表面部に水酸化ニッケルと水酸化コバルトの固溶
体を形成する技術(特開平3−62457号公報)、更
には前記特開昭62−222566号公報に記載の技術
を一層改良した技術として、水酸化ニッケル表面に形
成されたコバルト化合物を含む被覆層の上に親水性有機
物膜を施す技術(特開平5−151962号公報)など
が提案されている。これらの技術を適用した場合、活物
質粒子相互間における導電性が向上するため、ニッケル
正極の性能を向上させることができる。
では、次のような問題点が解決できていない。即ち、水
酸化ニッケル粒子表面に水酸化コバルトを配した場合、
この水酸化コバルトが活物質粒子相互間の導電性を向上
させるが、粒子表面の水酸化コバルトは、過放電時に水
酸化ニッケルの内部に拡散浸透し、粒子表面の水酸化コ
バルト量が減少するという現象が生じる。このため、活
物質粒子の導電性が低下し、その利用率が低下し、特に
過放電時において十分な電池容量が取り出せなくなると
いう問題がある。しかし、前記拡散浸透を見込んで予め
多量の水酸化コバルトを粒子表面又は活物質全体に配す
る方法では、水酸化ニッケル量(活物質本体の量)の相
対的減少を招くため、エネルギー密度を十分に高めるこ
とができなくなる。
性有機物膜を施すことによりコバルト種が電解液中へ散
逸するのを物理的に防止しようとする技術であるので、
この技術でも母粒子内部に拡散浸透する現象を抑制でき
ない。
解決するためになされたものであり、活物質粒子相互間
の導電性を少ない量のコバルト化合物でもって効果的に
向上させ、かつ過放電時においても母粒子表面のコバル
ト化合物が水酸化ニッケル母粒子内部へ拡散浸透するこ
とのないアルカリ蓄電池用ニッケル活物質、及びそのよ
うなニッケル活物質の製造方法を提供することを目的と
する。
に、本発明は次のように構成される。本発明の第1の態
様は、水酸化ニッケル又は主成分が水酸化ニッケルであ
る母粒子と、前記母粒子の表面の一部又は全部を被覆す
る被覆層とで構成される活物質粒子からなるアルカリ蓄
電池用ニッケル活物質であって、前記被覆層は、コバル
ト化合物と、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アルミ
ニウム化合物、インジウム化合物、カドミウム化合物、
ニッケル化合物から選択される1種以上の選択成分とを
含む多成分系の析出物からなり、かつ、前記コバルト化
合物は、当該被覆層の形成された活物質粒子をアルカリ
と酸素の共存下で加熱処理することによって、2価を超
えるコバルト化合物としてあり、前記アルカリ蓄電池用
ニッケル活物質のレーザー回折方式による平均粒子径が
3〜20μmに規定されたアルカリ蓄電池用ニッケル活
物質であることを特徴とする。
かかるアルカリ蓄電池用ニッケル活物質において、前記
多成分系の析出物からなる被覆層中のコバルト化合物量
が、母粒子に対し1重量%〜15重量%であることを特
徴とする。
2の態様にかかるアルカリ蓄電池用ニッケル活物質にお
いて、前記多成分系の析出物からなる被覆層中の選択成
分の割合が、コバルト化合物に対し0.5重量%〜25
重量%であることを特徴とする。
かかるアルカリ蓄電池用ニッケル活物質において、前記
多成分系の析出物からなる被覆層中の選択成分の量が、
母粒子に対し3.0重量%以下であることを特徴とす
る。
ネシウム化合物、アルミニウム化合物、インジウム化合
物、カドミウム化合物、ニッケル化合物から選択される
1種以上の母粒子に対する選択成分と、少なくともコバ
ルト化合物とを溶解した多成分系溶液を調製する溶液調
製工程と、水酸化ニッケル又は主成分が水酸化ニッケル
である母粒子を前記多成分系溶液に分散し、この分散液
にアルカリ溶液を注加して分散液pHを所定値に調整す
ることにより、前記選択成分とコバルト化合物とを含む
多成分系析出物を析出させ、前記母粒子を多成分系析出
物で被覆する母粒子被覆工程と、前記母粒子被覆工程で
被覆した被覆粒子にアルカリ金属溶液を含浸させ、酸素
存在下で加熱処理するアルカリ熱処理工程と、を備える
アルカリ蓄電池用ニッケル活物質の製造方法であること
を特徴とする。
かかるアルカリ蓄電池用ニッケル活物質の製造方法にお
いて、前記多成分系溶液のコバルト化合物と選択成分と
の重量比率を100:0.5〜25とすることを特徴と
する。
6の態様にかかるアルカリ蓄電池用ニッケル活物質の製
造方法において、前記母粒子被覆工程でコバルト化合物
被覆量が、母粒子重量に対して1重量%〜15重量%と
なるまで被覆することを特徴とする。
または第7の態様にかかるアルカリ蓄電池用ニッケル活
物質の製造方法において、前記アルカリ金属溶液のアル
カリ金属濃度を15重量%〜40重量%とすることを特
徴とする。
第7、または第8の態様にかかるアルカリ蓄電池用ニッ
ケル活物質の製造方法において、前記加熱処理を50℃
〜150℃の温度で行うことを特徴とする。
おく。 (1) 本発明アルカリ蓄電池用ニッケル活物質では、多成
分系析出物からなる被覆層のコバルト化合物を2価を越
える高次コバルト化合物としてある。この高次コバルト
化合物は、母粒子表面にあってニッケル活物質(以下、
Ni活物質とする)の導電性を顕著に高めるように作用
する。したがって、導電性改善のために大量のコバルト
化合物をNi活物質に添加する必要がない。
性に優れたNi活物質粒子の平均粒径を3〜20μmに
規定してある。この範囲の粒度であると、多孔体への充
填が好適になし得、Ni活物質が多孔体に充填されたと
き粒子相互が適度に接触し合う状態が形成できる。した
がって、導電性に優れるNi活物質粒子同志で電極全体
に良好な導電ネットワークが形成される。その結果、ニ
ッケル多孔体と直接接触し得ない位置にあるニッケル活
物質粒子への導電が確保されるので、電極活物質の利用
率が顕著に向上する。
出物からなる被覆層にコバルト化合物と共に亜鉛化合
物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、インジ
ウム化合物、カドミウム化合物、ニッケル化合物から選
択される1種以上の選択成分が含まれている。その理由
は後記(実験1)するが、コバルト化合物と共に含まれ
るこれらの選択成分は、過放電時におけるコバルト化合
物の母粒子内部への拡散・浸透を抑制するように作用
し、粒子の導電性を維持する。したがって、過放電時に
放電容量が極端に低下するという現象が抑制できる。
本発明では、導電性改善のために大量のコバルト化合物
を添加する必要がないので、高密度に充填可能というペ
ースト式の利点がそのまま電極の高エネルギー密度化に
繋げることができる。したがって、このようなNi活物
質を用いてアルカリ蓄電池を構成した場合、活物質利用
率、単位活物質重量当たりの電気容量及び過放電特性に
優れた蓄電池とできる。
くは前記多成分系析出物からなる被覆層中のコバルト化
合物の母粒子に対する重量割合を1重量%以上、15重
量%以下とするのがよい。なぜなら、本願発明にかかる
多成分系析出物からなる被覆層はコバルト化合物を主要
成分(必須成分)とし、これにコバルト化合物よりも少
量の選択成分を含む多成分系の析出物で構成されてお
り、相対的に配合量の多いコバルト化合物量の多少は、
被覆粒子の水酸化ニッケル密度に大きく影響を与える。
したがって、コバルト化合物量を適正に規制することに
よって、被覆粒子の水酸化ニッケル密度が無用に低下し
ないようにする必要がある。コバルト化合物の量を上記
範囲とした場合、コバルト化合物による利用率向上効果
が、水酸化ニッケル量の減少に起因するエネルギー密度
の低下というマイナス要因を上回る。したがって、被覆
粒子の実質的エネルギー密度が向上し、より多くのエネ
ルギーを引出し得ることになる。
の成分である前記選択成分の量は、コバルト化合物に対
し0.5重量%〜25重量%とするのがよい。この範囲
であると、コバルト化合物の配合量を圧迫することな
く、かつコバルト化合物の母粒子内部への拡散浸透を十
分に抑制できるからである。
3.0重量%以下であるのがよい。選択成分が母粒子に
対して3.0重量%を超えた場合、水酸化ニッケル含有
量の低下に伴うマイナス効果が顕在化し、却って電気容
量を低下させるからである。
用ニッケル活物質の製造方法の各構成要素の作用につい
て説明する。本発明製造方法では、多成分系溶液に母粒
子を分散し、この分散液のpHを調製する方法により、
母粒子に被覆層を形成する方法を採用したが、この方法
であると、コバルト化合物と、亜鉛化合物、マグネシウ
ム化合物、アルミニウム化合物、インジウム化合物、カ
ドミウム化合物、ニッケル化合物から選択される1種以
上の選択成分とからなる多成分系の析出物が、母粒子を
核として母粒子を取り囲むようにして析出するので、容
易かつ確実に母粒子表面に多成分系析出物からなる被覆
層を形成させることができる。
溶液の組成、濃度を適当に調製し、また母粒子を分散さ
せた分散液のpH、温度、攪拌強度を適当に調整するこ
とにより、容易に被覆層組成、被覆層厚み、被覆状態を
変化させることができる。したがって、簡便かつ歩留り
よく所望の多成分系析出物からなる被覆層の形成された
活物質を得ることができる。
た被覆粒子に対しアルカリ熱処理を施す工程を備えてい
る。このアルカリ熱処理工程により、多成分系析出物か
らなる被覆層中に含有されたコバルト化合物は2価を超
える高次コバルトの化合物に変化し、また多成分系析出
物からなる被覆層のミクロ構造が電極反応に好都合なポ
ーラスな構造に変化する。その結果、被覆層の導電性が
一層高まり、また電解液と母粒子の接触性が改善される
ので、電気化学的特性を一層向上させることができる。
溶液としては、コバルト化合物:選択成分の比率が10
0:0.5〜25(重量比)とするのが好ましい。この
範囲であると、コバルト化合物と選択成分が好適に混ざ
りあった多成分系析出物からなる被覆層を形成でき、こ
れら金属化合物が共働的に作用する結果、Ni活物質の
実質的なエネルギー密度が高まる。また、前記被覆工程
では、コバルト化合物の量が母粒子に対し1〜15重量
%となるようにコバルト化合物含有層を施すのが好まし
い。この範囲のコバルト化合物量であると、水酸化ニッ
ケル量を無用に減少させることなく、被覆層成分を有効
に作用させることができるので、Ni活物質粒子のエネ
ルギー密度が高まる。
金属濃度を15重量%〜40重量%とするのが好まし
い。この濃度であると適度な粘性をもつ溶液となり、処
理液が被覆粒子中に好適に浸透すると共に、アルカリ強
度の面からも好都合である。よって、加熱処理により多
成分系析出物からなる被覆層中のコバルト化合物をムラ
なく2価を超えるコバルトの化合物に変化させることが
できる。
〜150℃に設定するのが好ましい。この温度である
と、酸素とアルカリの共存下で被覆粒子中のコバルト化
合物を確実に2価以上の高次コバルト化合物に変化させ
ることができ、かつ多成分系析出物からなる被覆層構造
を好適な状態に変化させることができる。
ともに、実験に基づいて本発明の内容を明らかにする。
の硫酸ニッケル水溶液に、25重量%の水酸化ナトリウ
ム水溶液を徐々に注加し、アンモニア水でこの溶液のp
Hを所定pH値に調整して、水酸化ニッケルを析出させ
る方法により水酸化ニッケル母粒子を作製した。この方
法では、硫酸ニッケル濃度、水酸化ナトリウム注加量、
溶液pH、溶液温度及び攪拌条件を調整することによ
り、溶液から析出する水酸化ニッケルの粒子径を変化さ
せることができる。そこで、反応温度を約50℃とし、
pHを10〜pH14の範囲内で変化させ、攪拌強度を
適当に調整して、粒子径の異なる7通りの水酸化ニッケ
ル粒子を作製した。なお、析出した水酸化ニッケルは、
充分に水洗した後、乾燥した。このようにして作製した
7通りの粒子について、レーザ回折方式(マイクロトラ
ック粒度分析計;Leads & Northrup 社製 )で平均粒子
径を測定したところ、それぞれ、約0.7μm、2.7
μm、5.6μm、8.6μm、17.3μm、19.
1μm、22.3μmであった。なお、以下では実験2
を除き、粒径8.6μmの母粒子を使用した。
ケル母粒子に約4倍(重量比)の水を加え混合分散し、
この分散液(スラリー状態)のpHを水酸化ナトリウム
液で所定値に調整・維持しながら多成分系溶液(被覆層
組成液)を滴下した。これにより母粒子を核として多成
分系の金属水酸化物(選択成分及びコバルト化合物)の
析出物が析出し、母粒子が析出物で被覆される。この被
覆粒子を水洗・乾燥して被覆粒子を得た。
重量%濃度の硫酸コバルト水溶液に、硫酸ニッケル、硫
酸亜鉛、硫酸カドミウム、硫酸マグネシウム、硫酸アル
ミニウム、硫酸インジウムから1つ選択した硫酸塩(選
択成分)を加えた各種溶液を用い、前記分散液に対する
多成分系溶液の滴下量を増減することにより、母粒子に
対する被覆層量を変化させた。また、前記多成分系溶液
の選択成分濃度を変化させることによって、被覆層中の
コバルト化合物:選択成分の比率を変化させた。なお、
上記では硫酸塩を用いたが、硝酸塩等の他の金属塩を用
いることもできる。
カリ金属の溶液に漬け、被覆粒子が湿る程度にアルカリ
金属溶液を含浸させた後、空気雰囲気中(酸素存在下)
で加熱乾燥した。被覆粒子をこのように処理する方法を
アルカリ熱処理といい、この方法で処理した被覆粒子
を、アルカリ熱処理済被覆粒子とする。また、上記一連
の手順を経て作製されたものをNi活物質と称する。
7 、B1 〜B7 、C1 〜C8 、D1〜D7 、E1 〜
E4 、F1 〜F5 、G1 〜G5 を作製した。これらNi
活物質の被覆層組成及び調製条件を、表1〜7に一括し
て示す。なお、表1のA0 は、アルカリ熱処理が施され
ていないものであるが、便宜上これもNi活物質とす
る。
電気化学的特性を下記方法により評価した。以下、順次
説明する。
とニッケル板(対極)と25重量%の水酸化カリウム水
溶液(電解液)とで開放系の簡易セル(理論容量360
mAh)を作製し、この簡易セルを用いて各Ni電極の
活物質利用率を測定した。また、上記で作製した各種N
i電極(正極)と、公知の水素吸蔵合金電極(負極)、
セパレータ及び7〜8.5Nの水酸化カリウム水溶液を
主成分とする電解液を用いて、公知の方法により公称容
量1200mAhの巻回型ニッケル水素蓄電池を作製
し、この蓄電池を用い単位活物質重量当たりの電気容量
と過放電特性を測定した。それぞれの具体的測定条件は
次の通りである。
6mAの電流で24時間連続充電した後、ニッケル板に
対し放電終止電圧が−0.8Vになるまで120mAの
電流で放電するという条件で放電容量を測定し、数1に
従い活物質利用率を算出した。また、単位活物質重量当
たりの電気容量は、前記蓄電池を用い、120mAで1
6時間連続充電した後、電池電圧が1.0Vになるまで
240mAで放電するという条件で放電容量を測定し、
数2に従い算出した。
記条件で測定した。 1) 1200mAで充電し、電池電圧が極大となったの
ち10mV(−ΔV)だけ減少した時点で充電を止め、
1時間休止する。 2) 1時間休止後に1200mAで、放電終止電圧が
1.0Vになるまで放電させる。 3) 前記放電後、さらに60mAで16時間強制放電
(過放電)させる。 4) 前記1)〜3)の工程を5サイクル繰り返す。そし
て、初回サイクルにおける放電容量と、6サイクル目に
おける放電容量を測定し、その比を過放電特性値とし
た。
を定めこのNi活物質の利用率等を100とした場合に
おける指数で比較した。
条件を同一とし、コバルト化合物(必須成分)を除く選
択成分の種類を変化させたNi活物質A0 〜A7 (表1
参照)を用いて、選択成分の違いが単位活物質容量及び
過放電電極特性に及ぼす影響、及びアルカリ加熱処理の
効果を調べた。その結果を図1に示す。
で被覆層が構成され、且つアルカリ熱処理が行われてい
ないNi活物質A0 における場合を基準(100%)と
して示してある。また、表1では、便宜上、被覆層組成
を元素記号で示してあるが、元素記号はその元素の金属
化合物を意味し、その量は母粒子に対する重量%で示し
てある(他の表についても同様)。
アルカリ熱処理がなされていないA 0 (指数値100)
に対し、アルカリ加熱処理を施したこと以外はA0 と同
一条件で作製したA1 は、単位活物質容量指数が5%向
上し、過放電指数が10%向上していた。また、コバル
ト化合物に加え、亜鉛化合物等の選択成分を添加し且つ
アルカリ加熱処理を施したA2 〜A7 では、何れも過放
電指数値が顕著に向上していた(それぞれ134、13
5、131、131、123、121)。
過放電特性を向上させる手段として、アルカリ熱処理が
有効であることが判る。また、被覆層をコバルト化合物
と共に亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム
化合物、インジウム化合物、カドミウム化合物、ニッケ
ル化合物からなる群から選択される成分を配合して被覆
層を多成分系の析出物からなる層とすると、過放電特性
を大きく向上させることができることが判る。
当たりの電気容量が向上するのは、アルカリ熱処理によ
り被覆層中のコバルト化合物が高次コバルト化合物に変
化し、被覆層の導電性が高まる等のためと考えられる。
また、選択成分の配合により過放電特性が向上するの
は、選択成分がコバルトの母粒子内部への拡散を抑制す
るように作用するためと考えられる。なお、Zn、M
g、Al、In、Cdから選択される金属化合物と、コ
バルト化合物との析出物からなる被覆層では、前記選択
成分によりコバルトの移動しにくい結晶組織(多成分構
造)が形成されるため、過放電時におけるコバルトの拡
散・浸透が抑制されるのではないかと考えられ、これに
対し、Ni化合物とコバルト化合物との析出物からなる
被覆層では、被覆層に配合したNi化合物が母粒子と被
覆層とのニッケル濃度差を縮小させるため、コバルトの
母粒子内部への拡散・浸透が抑制されるのではないかと
考えられる。
径以外の処理条件を同一とし、平均粒径のみを変化させ
たNi活物質B1 〜B7 (表2参照)を用い、被覆粒子
の平均粒径の違いが活物質利用率に及ぼす影響を調べ
た。その結果を図2に示す。図2から、平均粒径が3μ
m以上、20μm以下のNi活物質とした場合、この範
囲外の粒径のNi活物質に比べ、顕著に高い活物質利用
率が得られた。このことから、Ni活物質の平均粒径を
3μm〜20μmの範囲に調製することにより、よりエ
ネルギー密度の高い電極が得られることが判る。
ルト化合物:亜鉛化合物=10:0.5(母粒子に対す
る重量%で表示)一定とすると共に他の条件を同一と
し、母粒子に対するコバルト化合物量のみを変化させて
作製したNi活物質C1 〜C8 (表3参照)を用いて、
母粒子に対するコバルト化合物量の違いが単位活物質当
たりの電気容量に及ぼす影響を調べた。その結果を図3
に示す。図3から、母粒子に対するコバルト化合物の重
量割合を1重量%以上、15重量%以下とした場合、こ
の範囲外の場合に比べ単位活物質当たりの電気容量が顕
著に高かった。このことから、母粒子に対するコバルト
化合物の重量割合を1〜15重量%とすることにより、
よりエネルギー密度の高いNi活物質とすることができ
ることが判る。
化合物と亜鉛化合物の2成分系析出物からなるものと
し、母粒子に対するコバルト化合物量を10重量%(一
定)とし、亜鉛化合物の量のみを変化させ、その他の条
件を同一として作製したNi活物質D1 〜D7 (表4参
照)を用いて、亜鉛の配合量の違いが単位活物質重量当
たりの電気容量および過放電特性に及ぼす影響を調べ
た。なお、その他の条件は表4の通りである。実験4の
結果を図4に示す。
合物の量がコバルト化合物に対し0.5%未満(母粒子
に対し0.05%未満)であると、過放電特性が顕著に
悪くなった。これは、被覆層中の亜鉛化合物量が過少で
あるため、亜鉛化合物による前記多成分効果が充分に発
揮されなくなり、その結果、コバルト化合物が母粒子へ
拡散浸透するようになったためと考えられる。その一
方、被覆層中の亜鉛化合物の量がコバルト化合物に対し
25%を超えた場合、過放電特性の低下は認められない
ものの、単位活物質重量当たりの電気容量が顕著に低下
した。この理由は、被覆層のコバルト化合物密度の低下
に由来するマイナス要因が、亜鉛化合物量の増加による
プラス要因を越えたために、活物質粒子の実質的エネル
ギー密度が低下したためと考えられる。
に代えマグネシウム化合物、アルミニウム化合物、イン
ジウム化合物、カドミウム化合物、ニッケル化合物を用
いた多成分系析出物からなる被覆層についても同様に確
認された。以上から、コバルト化合物と選択成分との多
成分系析出物からなる被覆層(コバルト化合物:選択成
分=10:X)は、Xが0.05(0.5重量%)〜
2.5(25重量%)であるのが好ましい。
バルト化合物量を15重量%(一定)に増やし、亜鉛化
合物の量を変化させ、その他の条件を同一として作製し
たNi活物質E 1 〜E4 (表5参照)を用いて、亜鉛の
配合量の違いが単位活物質重量当たりの電気容量に及ぼ
す影響を調べた。なお、その他の条件は表5の通りであ
り、実験4とは母粒子に対するコバルト化合物の量及び
亜鉛化合物の量が異なるのみである。実験5の結果を図
5に示す。
重量%を越えると、利用率が次第に低下する傾向を示し
たが、母粒子に対し3重量%以下であれば、100〜9
8%の高い利用率が確保できることが判った。この結果
から、母粒子に対する選択成分の被覆量を3.0重量%
以下にするのが好ましい。
物)の割合が3.0重量%を越えると、次第に単位活物
質重量当たりの電気容量の低下が大きくなるのは、選択
成分の配合による多成分効果より、水酸化ニッケル含有
量の低下に伴うマイナス効果が上回るようになるためと
考えられる。
ルト化合物:亜鉛化合物=10:0.5(一定)とする
と共に、その他の条件を同一とし、アルカリ熱処理にお
けるアルカリ金属液濃度を変化させて作製したNi活物
質F1 〜F5 (表6参照)を用いて、アルカリ熱処理に
おけるアルカリ金属液の濃度が活物質利用率に及ぼす影
響を調べた。なお、アルカリ金属としては、水酸化ナト
リウム用い、その他の条件は表6に示す通りである。実
験6の結果を図6に示す。
の濃度が15重量%未満、及び40重量%を超えた場
合、利用率が大幅に低下した。このことから、アルカリ
溶液の濃度は、15〜40重量%の範囲であるのが好ま
しい。この結果は次のように考察できる。
場合、粒子表面の水酸化コバルトが、2価を超えるコバ
ルトの化合物(高次コバルト化合物)に変化し、被覆層
の導電性が高まる。したがって、このような導電性に優
れたNi活物質が高多孔体に充填されたとき、良好な導
電性ネットワークが形成されるので、極板中の活物質利
用率が向上する。ところが、アルカリ金属液の濃度が1
5重量%未満であると、アルカリ溶液に対する水酸化コ
バルトの溶解度が低下するために、水酸化コバルトの高
次化反応が円滑に進行せず、被覆粒子の導電性を十分に
高めることができない。他方、アルカリ金属液の濃度が
40重量%を超えると、溶液粘度が著しく高まるため
に、アルカリが被覆層に浸透し難くなる結果、高次化反
応が不均一になるため、上記と同様被覆粒子の導電性を
十分に高めることができないと考えられる。
酸化カリウム、水酸化リチウムなどの他のアルカリ種を
用いた場合でも、上記と同様な結果が得られることが確
認されている。
濃度を25重量%一定とし、アルカリ熱処理時の加熱温
度を変化させたこと以外は上記実験6と同様な条件で作
製したNi活物質G1 〜G5 (表7参照)を用いて、ア
ルカリ熱処理における加熱処理温度の違いが活物質利用
率に及ぼす影響を調べた。その結果を図7に示す。
℃から150℃の範囲で最も高い利用率を示した。ま
た、加熱温度が50℃未満、及び150℃を超えると、
利用率の低下が大きくなった。このことから、アルカリ
熱処理における加熱温度は、50℃〜150℃の範囲で
行うのが好ましく、より好ましくは80℃から150℃
の範囲が好ましい。
な結果が得られたのは、この範囲の温度であると、コバ
ルトの高次化が円滑に進むこと、及び加熱処理に際し被
覆層のミクロ構造が熱作用により乱され、適度な孔隙が
形成されるためではないかと考えられる。適度な孔隙で
あれば、被覆粒子の導電性を悪化させず、電解液と母粒
子との接触を確保するように機能するので、電気化学的
反応が円滑に進行するようになるからである。
カリ溶液に対する水酸化コバルトの溶解度が低下し、ま
た被覆層に対する熱的作用が減少する。他方、加熱温度
が150℃を超えると、熱的作用が母粒子である水酸化
ニッケル自体に悪影響を及ぼし活物質本体である母粒子
が不活性な酸化ニッケルに変化する。このことから、5
0℃〜150℃の範囲外では、活物質利用率が低下した
ものと考えられる。
が、2種類以上の選択成分を組み合わせて用いても同等
以上の効果が確認された。
ッケル活物質では、多成分系析出物からなる被覆層中の
コバルト化合物がアルカリ熱処理によって2価を超える
コバルト化合物に変化しているので、この2価を超える
コバルト化合物が優れた量的効率性をもって活物質の導
電性を高めるように作用する。また、多成分系析出物か
らなる被覆層中のアルミニウム化合物、マグネシウム化
合物、インジウム化合物、亜鉛化合物からなる群より選
択される1つ以上の金属化合物が、過放電時におけるコ
バルト化合物の母粒子内部への拡散浸透を抑制し過放電
特性を高めるように作用する。更にこのようなNi活物
質の粒度を3〜20μmに規定してあるので、ニッケル
多孔体に充填されたとき、粒子相互間で好適な導電ネッ
トワークが形成される。
欠点である集電効率が改善され、電極活物質の利用率が
大幅に向上すると共に、単位活物質重量当たりの電気容
量(エネルギー密度)が高まる。そしてこの効果は、特
に過放電時において顕著に発揮される。
易な方法で確実かつ安定して上記のような優れたニッケ
ル活物質を製造できる。したがって、単位活物質重量当
たりの電気容量が高く、かつ過放電特性に優れたアルカ
リ蓄電池用ニッケル活物質を容易かつ安価に供給できる
という効果が得られる。
各種Ni活物質の単位活物質重量当たりの電気容量と過
放電特性を示す図である。
ある。
活物質重量当たりの電気容量との関係を示す図である。
物質重量当たりの電気容量及び過放電特性との関係を示
す図である。
量当たりの電気容量の関係を示す図である。
用率の関係を示す図である。
関係を示す図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 水酸化ニッケル又は主成分が水酸化ニッ
ケルである母粒子と、前記母粒子の表面の一部又は全部
を被覆する被覆層とで構成される活物質粒子からなるア
ルカリ蓄電池用ニッケル活物質であって、 前記被覆層は、コバルト化合物と、亜鉛化合物、マグネ
シウム化合物、アルミニウム化合物、インジウム化合
物、カドミウム化合物、ニッケル化合物から選択される
1種以上の選択成分とを含む多成分系の析出物からな
り、 かつ、前記コバルト化合物は、当該被覆層の形成された
活物質粒子をアルカリと酸素の共存下で加熱処理するこ
とによって、2価を超えるコバルト化合物としてあり、 前記アルカリ蓄電池用ニッケル活物質のレーザー回折方
式による平均粒子径が3〜20μmに規定されたアルカ
リ蓄電池用ニッケル活物質。 - 【請求項2】 前記多成分系の析出物からなる被覆層中
のコバルト化合物量が、母粒子に対し1重量%〜15重
量%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ蓄
電池用ニッケル活物質。 - 【請求項3】 前記多成分系の析出物からなる被覆層中
の選択成分の割合が、コバルト化合物に対し0.5重量
%〜25重量%であることを特徴とする請求項1乃至2
記載のアルカリ蓄電池用ニッケル活物質。 - 【請求項4】 前記多成分系の析出物からなる被覆層中
の選択成分の量が、母粒子に対し3.0重量%以下であ
ることを特徴とする請求項3記載のアルカリ蓄電池用ニ
ッケル活物質。 - 【請求項5】 亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アル
ミニウム化合物、インジウム化合物、カドミウム化合
物、ニッケル化合物から選択される1種以上の選択成分
と、少なくともコバルト化合物とを溶解した多成分系溶
液を調製する溶液調製工程と、 水酸化ニッケル又は主成分が水酸化ニッケルである母粒
子を前記多成分系溶液に分散し、この分散液にアルカリ
溶液を注加して分散液pHを所定値に調整することによ
り、前記選択成分とコバルト化合物とを含む多成分系析
出物を析出させ、前記母粒子を多成分系析出物で被覆す
る母粒子被覆工程と、 前記母粒子被覆工程で被覆した被覆粒子にアルカリ金属
溶液を含浸させ、酸素存在下で加熱処理するアルカリ熱
処理工程と、 を備えるアルカリ蓄電池用ニッケル活物質の製造方法。 - 【請求項6】 前記多成分系溶液のコバルト化合物と選
択成分との重量比率を100:0.5〜25とすること
を特徴とする請求項5記載のアルカリ蓄電池用ニッケル
活物質の製造方法。 - 【請求項7】 前記母粒子被覆工程において、コバルト
化合物量が、母粒子重量に対して1重量%〜15重量%
となるまで被覆することを特徴とする請求項5乃至6記
載のアルカリ蓄電池用ニッケル活物質の製造方法。 - 【請求項8】 前記アルカリ金属溶液のアルカリ金属濃
度を15重量%〜40重量%とすることを特徴とする請
求項5乃至7記載のアルカリ蓄電池用ニッケル活物質の
製造方法。 - 【請求項9】 前記加熱処理を50℃〜150℃の温度
で行うことを特徴とする請求項5乃至請求項8記載のア
ルカリ蓄電池用ニッケル活物質の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP20109495A JP3454613B2 (ja) | 1995-08-07 | 1995-08-07 | アルカリ蓄電池用ニッケル活物質及びその製造方法 |
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0950808A JPH0950808A (ja) | 1997-02-18 |
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JP20109495A Expired - Lifetime JP3454613B2 (ja) | 1995-08-07 | 1995-08-07 | アルカリ蓄電池用ニッケル活物質及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3454613B2 (ja) |
-
1995
- 1995-08-07 JP JP20109495A patent/JP3454613B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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