JP3452022B2 - 接合方法及びこれにより得られる接合製品 - Google Patents

接合方法及びこれにより得られる接合製品

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JP3452022B2 JP2000118251A JP2000118251A JP3452022B2 JP 3452022 B2 JP3452022 B2 JP 3452022B2 JP 2000118251 A JP2000118251 A JP 2000118251A JP 2000118251 A JP2000118251 A JP 2000118251A JP 3452022 B2 JP3452022 B2 JP 3452022B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の被接合部材
を突き合わせて摩擦攪拌接合する接合方法及びことによ
り得られる接合製品に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、固相接合法の一つとして摩擦攪拌
接合が行われている。この接合方法では、接合ツールの
攪拌ピンを被接合部材間の突き合わせ面付近に押し込む
ので、一対の被接合部材が離間しないように、突き合わ
せ面と反対側の端面で各被接合部材を拘束する必要があ
る。例えば、図5(A)および(C)に示すように、板状の
一対の被接合部材40a,40bを突き合わせ、その突
き合わせ面41a,41bの下側に支持台44を配置
し、被接合部材40a,40bの外端面を段部43を有
する治具42,42に当接して、被接合部材40a,4
0bを図示で左右方向にて拘束している。
【0003】図5(A),(B)に示すように、円柱形の本
体47とその底面から垂下する攪拌ピン48とを有する
接合ツール46を回転させつつ、上記突き合わせ面41
a,41b付近に攪拌ピン48を押し込むと共に、図5
(A)で突き合わせ面41a,41bの下端から上側に向
けて移動させる。すると、接合ツール46が通過した跡
には、攪拌ピン48により塑性流動された被接合部材4
0a,40bの金属が固まった接合部49が形成され
る。上記突き合わせ面41a,41bの全長に沿って接
合部49を形成することにより、被接合部材40a,4
0bを接合した接合製品が得られる。ところで、上記接
合方法により得られた接合製品では、図5(A),(C)に
おける左右方向の幅寸法は、被接合部材40a,40b
自体の幅寸法のバラツキに応じて、突き合わせ面41
a,41bの全長においてバラツキを生じる。
【0004】上記被接合部材40a,40bの幅寸法の
バラツキを吸収するには、突き合わせ面41a,41b
間に隙間を配置して摩擦攪拌接合することにより、上記
バラツキを吸収することが可能である。しかし、係る方
法にても、接合ツール46により摩擦攪拌される接合部
49の当初、中間、及び終端部分では、摩擦攪拌接合に
よる入熱量が一定ではなく収縮量が互いに異なる。この
ため、得られる接合製品の幅寸法がバラツクことにな
る。加えて、摩擦攪拌接合により得られた接合部49の
冷却方法によっては、図5(A),(C)で被接合部材40
a,40bが左右方向に熱膨張するため、得られる接合
製品の幅寸法がバラツクこともあった。
【0005】
【発明が解決すべき課題】本発明は、以上に説明した従
来の技術における問題点を解決し、摩擦攪拌接合して得
られる接合製品における寸法精度のバラツキを低減でき
る接合方法、及びこれにより得られる高精度の接合製品
を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、発明者らが鋭意研究した結果、摩擦攪拌接
合による被接合部材の熱変形を抑制することに着目して
成されたものである。即ち、本発明の接合方法(請求項
1)は、複数の被接合部材を突き合わせて摩擦攪拌接合
するに際し、各被接合部材に設けられ且つ突き合わせ面
に沿った凸条および凹溝の少なくとも一つを活用するこ
とにより、上記複数の被接合部材を拘束し、且つ上記複
数の被接合部材の突き合わせ面に隙間を設けると共に、
上記拘束状態において、突き合わせ面に沿って回転しつ
つ移動する接合ツールにより、複数の被接合部材を摩擦
攪拌接合する、ことを特徴とする。
【0007】これによれば、各被接合部材は、所定の位
置に強固に拘束されるので、接合ツールとの摩擦熱によ
り各被接合部材が膨張又は収縮変形しようとしても、係
る変形を阻止又は低減することができる。また、上記熱
変形による膨張又は収縮量の予測も容易となる。しか
も、各被接合部材自体における寸法のバラツキを吸収で
きると共に、前記熱変形の影響も低減することができる
ため、高精度の接合製品を確実に得ることが可能とな
る。従って、得られる接合製品の突き合わせ面に対して
直交する方向(幅)の寸法を高精度に仕上げることができ
る。尚、凸条や凹溝は、拘束される被接合部材の下側面
の他、突き合わせ面と反対側の外端面に設けることもで
きる。また、複数の被接合部材には、一対のほか、3つ
以上の平行な被接合部材を互いに突き合わせて上記のよ
うに拘束し、2つ以上の突き合わせ面に沿って、同時又
は個別に接合ツールを用いて摩擦攪拌接合する形態も含
まれる。更に、上記隙間は、接合製品が目標の寸法にな
るように考慮して設定される
【0008】また、前記摩擦攪拌接合において、得られ
た接合部の付近を水冷又は強制空冷する場合、前記被接
合部材の凸条および凹溝の少なくとも一方と嵌合する凹
溝および凸条の少なくとも一方を有する収縮抑制治具を
配置して嵌合した状態で拘束する、接合方法(請求項2)
も含まれる。これによれば、上記冷却により接合部が収
縮しようとしても、被接合部材の凸条や凹溝と嵌合する
収縮抑制治具によって、収縮変形が妨げられるため、高
精度の接合製品を一層確実に得ることが可能となる。
尚、収縮抑制治具は、その凹溝の幅寸法や凸条における
凸部の幅寸法を変更可能とする機構を有するものが望ま
しい。
【0009】また、前記摩擦攪拌接合において、得られ
た接合部の付近を放冷する場合、前記被接合部材の凸条
および凹溝の少なくとも一方と嵌合する凹溝および凸条
の少なくとも一方を有する膨張抑制治具を配置して嵌合
した状態で拘束する、接合方法(請求項3)も含まれる。
これによれば、上記接合時の入熱により被接合部材が膨
張しようとしても、被接合部材の凸条や凹溝と嵌合する
膨張抑制治具によって、膨張変形が妨げられるため、高
精度の接合製品を一層確実に得ることが可能となる。
尚、膨張抑制治具も、その凹溝の幅寸法や凸条における
凸部の幅寸法を変更可能とする機構を有するものが望ま
しい。
【0010】更に、前記突き合わせ面に対し直交する方
向に幅広で且つ薄肉の複数の被接合部材を摩擦攪拌接合
するに際し、上記複数の被接合部材における上記突き合
わせ面の付近に膨張を抑制する前記凸条および凹溝の少
なくとも一方を設けると共に、上記凸条および凹溝の少
なくとも何れかと嵌合する前記膨張抑制治具を配置して
拘束する、接合方法(請求項4)も含まれる。これによれ
ば、幅広で薄肉の各被接合部材が、摩擦熱による熱膨張
によって厚さ方向に座屈変形しようとしても、両者の突
き合わせ面付近で上記治具により拘束されているため、
平面方向と厚さ方向との双方において、寸法精度の高い
接合製品を得ることができる。即ち、厚さ5mm以下の
薄肉の被接合部材同士を摩擦攪拌接合する場合には、接
合製品の厚さ方向に突出する変形を生じ易いため、接合
時の冷却方法を放冷とすると共に、膨張抑制治具を用い
て拘束することにより、上記変形を確実に低減するもの
である。尚、各被接合部材には、その突き合わせ面と反
対側の外端面寄りにも凸条又は凹溝の何れか一方を併設
すると共に、これらと嵌合する上記治具を更に配置する
と、幅広で薄肉の高精度の接合製品を一層確実に得るこ
とができる。
【0011】また、前記被接合部材が、アルミニウム合
金の押出形材からなると共に、前記凸条および凹溝の少
なくとも一方が押出成形により予め上記形材に一体に設
けられている、接合方法(請求項5)も含まれる。これに
よれば、被接合部材に凸条や凹溝を溶着や切削で設ける
ことなく、上記押出形材に予め一体に付設された凸条や
凹溝に前記治具を嵌合することで、一対の被接合部材
(押出形材)を容易且つ強固に拘束できる。従って、少な
い工数で確実に高精度の接合製品を得ることが可能とな
る。尚、上記押出形材の凸条や凹溝には、当該形材の長
手方向に連続して設けた凹・凸部分や、開口部よりも内
部が幅広の蟻溝形状の底広凹溝も含まれる。また、本発
明の被接合部材には、断面がアングル又はチャンネル形
等の形鋼も含まれると共に、係るアングルの一辺やチャ
ンネルの両外辺を凸条とし、或いはチャンネルの凹部を
凹溝として活用することも可能である。
【0012】更に、本発明には、以上の何れかの接合方
法により、摩擦攪拌接合されると共に、前記突き合わせ
面に対し直交する方向の寸法が高精度である、接合製品
(請 求項6)も含まれる。これによれば、1つ又は複数の
接合部を含み且つこの接合部と直交する方向の寸法精度
に優れているため、鉄道車両や自動車の車体、或いは、
サイズが大きくて寸法精度が要求される建築・構築部材
等に好適に活用することが可能である。尚、上記接合製
品には、互いに直交する複数の接合部を併有している形
態も含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下において本発明の実施に好適
な形態を図面と共に説明する。図1(A),(B),(D)
は、本発明の一形態の接合方法を示す。図示のように、
一対の被接合部材1a,1bは、アルミニウム合金(JI
S;A6063等)の押出形材からなり、板状の本体2
a,2bと、その下側面の両端付近に互いに平行な一対
の凸条4,4とを一体に有する。被接合部材1a,1b
は、突き合わせ面3a,3bを隙間sを介して近接し、
各凸条4を収縮/膨張抑制治具6,8の凹溝5,7内に
嵌合している。これにより、被接合部材1a,1bは、
図1(A),(D)で左右の幅方向への移動を阻止されるよ
うに拘束されている。尚、上記治具6,8には、上記同
様の押出形材を用いても良く、且つ治具6,8,8は図
示しない定盤等の同一平面上に配置されている。また、
治具6,8は、追って得られる接合部9を水冷や強制空
冷する場合には、収縮抑制治具となり、且つ放冷(自然
冷却)する場合には、膨張抑制治具となる。
【0014】図1(A),(B)に示すように、被接合部材
1a,1bには、その突き合わせ面3a,3b(隙間s)
に沿って、回転する接合ツール10が押し込まれつつ移
動する。この接合ツール10は、工具鋼(例えばSDK
61等)からなり、図1(C)に示すように、円柱形の本
体12と、その底面13から同軸心に垂下する攪拌ピン
14とを含んでいる。図1(B)に示すように、接合ツー
ル10は、矢印で示す移動方向と反対側に数°傾斜した
姿勢で回転しつつ、攪拌ピン14を隙間s付近に押し込
まれて移動する。この際、接合ツール10の回転数は5
00〜15000rpm、移動(接合)速度は0.05〜
2メートル/分、その軸心方向に沿って加えられる押し
込み力は1〜30kNである。
【0015】図2(A)に示すように、被接合部材1a,
1bは、それぞれの凸条4を治具6,8の凹溝5,7内
に嵌合した状態で拘束されている。例えば、接合時に強
制空冷する場合は、被接合部材1a,1bは収縮するの
で、図2(A)で凹溝5,5の外側面5a,5aと凹溝
7,7の外側面7a,7aには、若干の間隙があっても
良い。但し、接合時に放冷する場合は、被接合部材1
a,1bは膨張するので、外側面5aと外側面7aに間
隙を生じないように嵌合して拘束する。
【0016】以上の拘束状態にて、図1(A),(B)に示
すように、被接合部材1a,1bの突き合わせ面3a,
3b(隙間s)に沿って、一端から回転する接合ツール1
0の攪拌ピン14を押し込みつつ、図中の矢印方向に接
合ツール10を移動させる。これにより、突き合わせ面
3a,3b付近のアルミニウムは、高速回転する攪拌ピ
ン14により加熱・可塑化されて塑性流動する。この
際、塑性流動するアルミニウムは、接合ツール10の本
体12の底面13に上側から押さえ付けられる。この結
果、接合ツール10の通過した跡には、図1(A)及び図
2(B)に示すように、塑性流動したアルミニウムが固化
した緻密な組織の接合部9が形成される。
【0017】上記接合部9は、接合ツール10の通過し
た直後に冷却される。図3(A)に示すように、従来法で
拘束された被接合部材Pa,Pbは、接合時において接
合ツールTとの摩擦熱により膨張し、係る膨張hは突き
合わせ面で最大となり、これから遠ざかるに従い小さく
なる。このため、図3(B)に示すように、接合が進むに
連れて、接合ツールTの前方における被接合部材Pa,
Pbは、突き合わせ面から遠ざかるように変形するた
め、突き合わせ面前方の隙間sは大きくなる。ところ
で、接合ツールTが通過した直後の接合部9を冷却する
と、突き合わせ面における隙間sは、当初よりも小さく
なる。これは、接合時の膨張は被接合部材Pa,Pbを
拘束する治具により抑制されているが、冷却されること
より、内部に含まれていた歪みが収縮変形となって現れ
るためである。
【0018】更に、接合時の冷却状態により、突き合わ
せ面前方の隙間sの挙動も相違する。即ち、接合時に水
冷又は強制空冷した場合、接合部9が収縮して突き合わ
せ面の隙間sは小さくなるため、図3(C)の平面視で示
すように、接合部9を挟んだ被接合部材Pa,Pbは、
図中の破線で示す当初の幅寸法よりも小さくなる。一
方、接合時に放冷した場合、接合部9はあまり収縮せ
ず、被接合部材Pa,Pbの熱膨張により突き合わせ面
の隙間sは、接合直後の高温状態では大きくなる。この
ため、図3(D)に示すように、被接合部材Pa,Pbの
幅は、常温までの間に収縮しても、図中の破線で示す当
初の幅寸法よりも広がったままとなる。
【0019】本発明の接合方法では、以上の冷却中にお
いても、前記治具6,8,8は、被接合部材1a,1b
を拘束している。このため、上記何れの冷却方法を用い
ても、収縮/膨張抑制治具6,8により、被接合部材1
a,1bは拘束されているので、接合時での突き合わせ
面3a,3b間の隙間sは一定となる。この結果、本発
明の接合方法により摩擦攪拌接合を行った場合、何れの
冷却方法を併用しても、図3(E)のグラフに示すよう
に、接合ツール10による摩擦攪拌によって生じる入熱
量と被接合部材の収縮量とは、正比例する関係にあるこ
とが確認されている。従って、本発明の接合方法によれ
ば、前記熱変形を阻止するか著しく低減することができ
る。その結果、接合ツール10が被接合部材1a,1b
の突き合わせ面3a,3bの全長を通過することより、
前記図2(B)に示すように、接合部9を中央に有し且つ
幅寸法Wの精度が高い接合製品16が得られる。
【0020】
【実施例】ここで本発明の具体的な実施例について、比
較例と共に説明する。アルミニウム合金(JIS;A606
3)の押出形材からなり、前記図1(D)に示した断面形
状を有する被接合部材1a,1bを複数用意した。係る
部材1a,1bの長さは700mm、厚さは10mm、
幅寸法は300.0mm±0.25mmの公差で、各凸
条4の断面寸法は幅10mm×高さ5mmである。ま
た、上記と同じ押出形材からなり、前記図5(C)に示し
た断面形状を有する被接合部材40a,40bを複数用
意した。係る部材40a,40bは、上記部材1a,1
bと同様の寸法を有するが、凸条4,4がない点でのみ
相違する。
【0021】被接合部材1a,1bを2組ずつ用意し、
前記図2(A)に示したように、被接合部材1a,1bの
突き合わせ面3a,3bの反対側の両外端面同士間の距
離が600.36mmになるように配置して拘束した。
即ち、単位速度当たりの入熱量は1300W/mm/分
で、前記図3(E)のグラフによれば被接合部材1a,1
bの収縮量は0.36mmであるため、接合製品16に
おける目標幅寸法Wの600mmに対して、上記収縮量
を加えた600.36mmにして拘束した。また、前記
図2(A)に示したように、収縮抑制治具6,8,8を用
い、これらの突き合わせ面3a,3bに近い内側面5
b,7bと被接合部材1a,1bの凸条4,4の突き合
わせ面3a,3bに近い凹溝5,7内の内側面4a,4
aとの間隙が0mmとなるように拘束した。この状態
で、SKD61からなる前記接合ツール10を用いて摩
擦攪拌接合し且つ強制空冷して2つの接合製品16を得
た。これらを実施例1,2とした。尚、突き合わせ面3
a,3b間の隙間sは、被接合部材1a,1bの全長に
渉って0mm又はこれ以上となるように設定した。
【0022】一方、被接合部材40a,40bも2組ず
つ用意し、図5(C)に示したように、被接合部材40
a,40bの突き合わせ面41a,41bの反対側の両
外端面間の距離が600.36mmになるよう支持台4
4と治具42,42を用いて拘束した。上記距離も実施
例1,2と同様に収縮量が0.36mmであるため、こ
れを600mmに加えた。この状態で、前記接合ツール
10を用いて摩擦攪拌接合し且つ強制空冷して2つの接
合部材を得た。これらを比較例例1,2とした。
【0023】尚、接合ツール10の本体12の直径は2
2mm、攪拌ピン14の直径は11mmで長さは10m
mであった。また、接合ツール10の回転数は900r
pm、移動(接合)速度は50cm/分、押し込み力は
2.5Nとした。更に、接合ツール10が通過した直後
の接合部9に対し、ファンによる強制空冷を行った。実
施例1,2における被接合部材1a,1bの合計幅寸法
wと得られた接合製品16の幅寸法W、及び比較例1,
2における被接合部材40a,40bの合計幅寸法wと
得られた接合製品の幅寸法Wを、それぞれ表1中に示し
た。因みに、接合製品16の幅寸法Wの公差は、600
mm±0.25mmである。
【0024】
【表1】
【0025】表1の結果によれば、実施例1,2とも幅
寸法Wは前記公差の範囲内にあり、且つ両者間の差によ
るバラツキも比較的小さかった。一方、比較例1の幅寸
法Wは前記公差の範囲を外れると共に、比較例1,2間
におけるバラツキも比較的大きくなった。以上の実施例
1,2の結果から、前記図1,2にて示した本発明の接
合方法の効果が裏付けられると共に、幅寸法Wの精度が
高い接合製品16が確実に得られることも容易に理解さ
れよう。
【0026】次に、各寸法が前記と同じ5個の被接合部
材1a,1bを別に3組用意し、図1(D),図2(A)に
示したように、収縮抑制治具6,8,8を用いて拘束し
た状態で、4箇所の平行な突き合わせ面3a,3bに沿
って、前記と同じ接合ツール10を同じ条件で用いて接
合し、5個で1つの接合製品を3組得ることにした。係
る接合に先立ち、各接合部9を含む全部の被接合部材1
a,1bにおける幅方向の収縮量を予め予測した。尚、
得ようとする接合製品の幅寸法の公差は1500mm±
0.25mmで、且つ被接合部材1a,1bの幅寸法の
公差は300mm±0.25mmであるため、上記部材
1a,1b自体の幅寸法のバラツキを吸収しないと、接
合製品の幅寸法公差の範囲に入らない。また、収縮量が
最適化されない場合も同様となる。そして、接合ツール
10の攪拌ピン14の押し込み深さが10mm、回転数
が900rpm、移動(接合)速度が50cm/分の場合
における1つの接合部9の収縮量は、単位速度当たりの
入熱量が1300W/mm/分であるため、前記図3
(A)のグラフによれば0.36mmとなる。これを考慮
して、前記隙間sを計算すると、数式1のように0.3
6mmと算出された。
【0027】
【数1】(1500−(300×5)+(0.36×4))÷
4=0.36(mm)
【0028】上記に基づいて隙間sを設定した5個の被
接合部材1a,1bを互いに平行に拘束した状態で、前
記同様の条件で接合ツール10を用いて接合した。得ら
れた3組の接合製品の幅寸法は、1499.82mm〜
1500.17mmの範囲内であり、全て前記寸法公差
の範囲に入っていた。この結果から、予め収縮量を予測
して、本発明の接合方法による摩擦攪拌接合を行うこと
により、サイズの大きな接合製品であっも、高い寸法精
度を得られることが確認された。
【0029】図4(A),(B)は、前記図1,2の接合方
法の変形形態の接合方法を示す。図4(A)に示すよう
に、被接合部材1c,1dは、突き合わせ面3c,3d
の反対側にのみ凸条4を有し、隙間sを介した突き合わ
せ面3c,3d付近は上面が平坦な治具6aに支持され
ている。被接合部材1c,1dは、各々の凸条4を前記
と同じ治具8の凹溝7内に嵌合することにより、拘束さ
れる。突き合わせ面3c,3d(隙間s)に沿って、前記
接合ツール10を前記同様に回転しつつその攪拌ピン1
4を押し込む。これにより、図4(B)に示すように、接
合部9を有し且つ図示で左右の幅寸法(W)の精度が高い
接合製品18を得ることができる。
【0030】図4(C)は、前記図1,2で示した接合方
法の応用形態の接合方法を示す。図4(C)に示すよう
に、被接合部材1e,1fは、前記同様の押出形材から
なり、下側面の両端寄りに一対の凹溝4bを有し、収縮
/膨張抑制治具6b,8aには上記凹溝4b内に嵌合す
る凸条5c,7cが設けられている。この形態では、凹
溝4bと凸条5c,7cの位置が前記図1,2の接合方
法と逆になるが、突き合わせ面3e,3f(隙間s)に沿
って、前記接合ツール10を押し込みつつ移動すること
により、前記同様の高い精度の接合製品を得ることが可
能である。
【0031】図4(D)は、本発明の異なる接合方法を示
す。被接合部材20a,20bは、前記同様のアルミニ
ウム合金の押出形材からなり、図4(D)に示すように、
長方形と異形の中空部21,22を内設し、突き合わせ
面23a,23bの付近を厚肉にした断面形状を有す
る。また、図4(D)に示すように、突き合わせ面23
a,23bの下側には扁平な底広凹溝24を、反対側の
外端面には外向きの底広凹溝25を、それぞれ図示で前
後方向の全長に沿って一体に設けている。一方、図4
(D)に示すように、隙間s及び突き合わせ面23a,2
3bの下側には、隣接する一対の底広凹溝24内で隙間
s寄りの凹み内に嵌合する一対の逆L形片(凸条)27を
対称に立設した収縮/膨張抑制治具26が配置される。
更に、被接合部材20a,20bの外端面の底広凹溝2
5側には、その下側の凹み内に嵌合する逆L形片(凸条)
29を立設した収縮/膨張抑制治具28,28が対称に
配置される。上記被接合部材20a,20bと治具2
6,28によっても、前記接合ツール10により、前記
同様の高い精度の接合製品が得られる。
【0032】図4(E)は、更に異なる形態の接合方法を
示す。被接合部材30a,30bは前記同様の押出形材
からなり、図4(E)に示すように、上下面に左右方向に
沿った凸条31及び凹溝32を連続して有し、突き合わ
せ面33a,33bの付近が厚肉の断面形状を有する。
また、隙間s及び突き合わせ面33a,33bの下側に
は、隣接する凹溝32,32内に嵌合する凸条35,35
を有する収縮/膨張抑制治具36が配置され、被接合部
材30a,30bの外端部34の下側には、最外寄りの
凹溝32内に嵌合する凸条37を有する収縮/膨張抑制
治具38が配置されている。図4(E)に示すような被接
合部材30a,30bと治具36,38とによっても、
前記接合ツール10を用いることにより、前記同様の高
い寸法精度を有する接合製品を得ることが可能である。
尚、被接合部材30a,30bの凸条31と嵌合する凹
溝を有する収縮/膨張抑制治具を用いても良い。
【0033】本発明は、以上において説明した各形態に
限定されるものではない。例えば、前記被接合部材に設
ける凸条は、別体の長尺なバー材を溶着して形成しても
良く、被接合部材に設ける凹溝は、切削加工等により形
成しても良い。また、一つの被接合部材に凸条と凹溝の
双方を併設しても良い。この場合、これらの凸条及び凹
溝と嵌合する凹溝及び凸条を有する収縮/膨張抑制治具
を用いて拘束される。更に、被接合部材の突き合わせ面
は、前記のような垂直な平坦面に限らず、隣接する一対
の被接合部材が互いに嵌合する雄・雌形部分を有する形
態や、互いに平行なテーパ面とすることも可能である。
また、被接合部材の突き合わせ面は、平面視で前記各形
態のような直線形に限らず、途中で屈曲する形態や、カ
ーブする形態も含まれ得る。
【0034】更に、前記収縮/膨張抑制治具は、その凸
条や凹溝の幅寸法を可変式としても良い。このため、例
えば万力におけるボルトとこれにネジ結合してスライド
するナットを含むスライダ等を有する機構を、上記治具
に内することもできる。また、本発明の接合方法は、
異なる厚さの突き合わせ面を有する一対(複数)の被接合
部材を接合する場合にも適用することが可能である。
尚、本発明の接合方法により接合される被接合部材に
は、前記押出形材や型鋼に限らず、ステンレス鋼やアル
ミニウム以外の非鉄金属及びその合金からなる板状部材
や折り曲げ加工材も含まれる。
【0035】
【発明の効果】以上において説明した本発明の接合方法
によれば、被接合部材を所定の位置に強固に拘束するの
で、接合ツールとの摩擦熱により各被接合部材が膨張又
は収縮変形しようとしても、係る変形を阻止又は低減す
ることができる。また、上記熱変形による膨張又は収縮
量の予測することも容易となる。しかも、被接合部材自
体における寸法のバラツキを吸収できると共に、前記熱
変形の影響も低減することができるため、高精度の接合
製品を確実に得ることが可能となる。従って、得られる
接合製品の突き合わせ面に直交する方向の寸法を高精度
に仕上げることができる。また、請求項2,3の接合方
法によれば、冷却方法により接合部が収縮又は膨張しよ
うとしても、被接合部材の凸条や凹溝と嵌合する収縮/
膨張抑制治具により熱変形が妨げられるため、高精度の
接合製品を一層確実に得ることができる。
【0036】また、請求項の接合方法によれば、幅広
で薄肉の被接合部材が摩擦熱により厚さ方向に座屈変形
しようとしても、その突き合わせ面付近で膨張抑制治具
により拘束されるため、平面方向と厚さ方向との双方に
おいて、寸法精度の高い接合製品を得ることができる。
更に、請求項の接合方法によれば、被接合部材に凸条
や凹溝を溶着や切削で設けることなく、押出形材に予め
一体に付設された凸条や凹溝に前記治具を嵌合すること
で、一対の被接合部材(押出形材)を容易且つ強固に拘束
できる。このため、少ない工数で確実に高精度の接合製
品を得ることが可能となる。加えて、本発明の接合方法
により得られた接合製品(請求項6)は、所望数の接合部
を含み且つこの接合部と直交する方向の寸法精度に優れ
ているため、鉄道車両や自動車の車体、或いは、サイズ
が大きく且つ寸法精度が厳しく要求される建築・構築部
材等に好適に活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の一形態の接合方法を示す平面
図、(B)は(A)を矢印B方向から観た側面図、(C)は上
記接合方法に用いる接合ツールの斜視図、(D)は(A)中
のD−D線に沿った断面図。
【図2】(A)及び(B)は図1の接合方法における接合前
後の状態を示す断面図。
【図3】(A)及び(B)は接合当初と接合途中の挙動を示
す概略図、(C)は接合時に水冷された接合製品を示す概
略図、(D)は接合時に放冷された接合製品を示す概略
図、(E)は摩擦攪拌接合における入熱量と収縮量との関
係を示すグラフ。
【図4】(A)及び(B)は図1の接合方法の変形態による
接合前後の状態を示す断面図、(C)乃至(E)は異なる形
態の接合方法を示す接合前の状態を示す断面図。
【図5】(A)は従来の接合方法を示す平面図、(B)は
(A)を矢印B方向から観た側面図、(C)は(A)中のC−
C線に沿った断面図。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d,1e,1f,20a,20b,30a,30b…被
接合部材 3a,3b,3c,3d,3e,3f,23a,23b,33a,33b…突
き合わせ面 4,31……………………………………………………凸
条 4b,32…………………………………………………凹
溝 5,7………………………………………………………治
具の凹溝 5c,7c,35,37……………………………………治
具の凸条 6,6b,8,8a,26,28,36,38………………収
縮/膨張抑制治具 9……………………………………………………………接
合部 10…………………………………………………………接
合ツール 16,18…………………………………………………接
合製品 24,25…………………………………………………底
広凹溝(凹溝) 27,29…………………………………………………逆
L形片(凸条) s……………………………………………………………隙
間 W……………………………………………………………幅
寸法(寸法)
フロントページの続き (72)発明者 樋野 治道 静岡県庵原郡蒲原町蒲原一丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術セン ター内 (72)発明者 瀬尾 伸城 静岡県庵原郡蒲原町蒲原一丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術セン ター内 (72)発明者 柘植 光雄 静岡県庵原郡蒲原町蒲原一丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術セン ター内 (56)参考文献 特開 平10−216964(JP,A) 特開 平11−10364(JP,A) 特開2001−162383(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/12

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の被接合部材を突き合わせて摩擦攪拌
    接合するに際し、 各被接合部材に設けられ且つ突き合わせ面に沿った凸条
    および凹溝の少なくとも一方を活用することにより、上
    記複数の被接合部材を拘束し、且つ上記複数の被接合部
    材の突き合わせ面に隙間を設けると共に、 上記拘束状態において、突き合わせ面に沿って回転しつ
    つ移動する接合ツールにより、複数の被接合部材を摩擦
    攪拌接合する、ことを特徴とする接合方法。
  2. 【請求項2】前記摩擦攪拌接合において、得られた接合
    部の付近を水冷又は強制空冷する場合、前記被接合部材
    の凸条および凹溝の少なくとも一方と嵌合する凹溝およ
    び凸条の少なくとも一方を有する収縮抑制治具を配置し
    て嵌合した状態で拘束する、ことを特徴とする請求項1
    に記載の接合方法。
  3. 【請求項3】前記摩擦攪拌接合において、得られた接合
    部の付近を放冷する場合、前記被接合部材の凸条および
    凹溝の少なくとも一方と嵌合する凹溝および凸条の少な
    くとも一方を有する膨張抑制治具を配置して嵌合した状
    態で拘束する、 ことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
  4. 【請求項4】前記突き合わせ面に対し直交する方向に幅
    広で且つ薄肉の複数の被接合部材を摩擦攪拌接合するに
    際し、 上記複数の被接合部材における上記突き合わせ面の付近
    に膨張を抑制する前記凸条および凹溝の少なくとも一方
    を設けると共に、係る凸条および凹溝の少なくとも何れ
    かと嵌合する前記膨張抑制治具を配置して嵌合した状態
    で拘束する 、 ことを特徴とする請求項に記載の接合方法。
  5. 【請求項5】前記被接合部材が、アルミニウム合金の押
    出形材からなると共に、前記凸条および凹溝の少なくと
    も一方が押出成形により予め上記形材に一体に設けられ
    ている、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記
    載の接合方法。
  6. 【請求項6】請求項1乃至5の何れかの接合方法によ
    り、摩擦攪拌接合されると共に、前記突き合わせ面に対
    し直交する方向の寸法が高精度である、 ことを特徴とする接合製品
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