JP3444674B2 - ポリオレフィン樹脂組成物を用いた不織布 - Google Patents

ポリオレフィン樹脂組成物を用いた不織布

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JP3444674B2 JP30335394A JP30335394A JP3444674B2 JP 3444674 B2 JP3444674 B2 JP 3444674B2 JP 30335394 A JP30335394 A JP 30335394A JP 30335394 A JP30335394 A JP 30335394A JP 3444674 B2 JP3444674 B2 JP 3444674B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、疎水性のポリオレフィ
ンに親水性を付与し、その用途を拡大するためのポリオ
レフィン樹脂組成物を用いた不織布、なかでもスパンボ
ンド不織布およびメルトブロー不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポ
リオレフィンは、耐薬品性に優れた安価な疎水性の樹脂
であり、多くの用途に用いられている。
【0003】しかし、前記疎水性は用途によっては欠点
となる(ポリオレフィンを用いた不織布は既に多く市販
され、多く用いられているが、その欠点は疎水性である
ことがある)ために、この樹脂に親水性を付与する試み
が多数なされており、それなりの成果をあげている。
【0004】たとえば、ポリオレフィンに制電性を付与
するために界面活性剤を混合する方法は、既に公知であ
る。
【0005】前記界面活性剤は成形時に表面にブリード
アウトする方が制電性に有利であるため、低分子量の界
面活性剤が多く用いられている。このような界面活性剤
の具体例としては、多価アルコールの脂肪酸エステル、
有機リン酸エステル、有機第4級アンモニウム塩などが
あげられる。しかし、このような界面活性剤は耐洗濯性
などの耐久性に欠けるという欠点を有している。
【0006】一方、耐洗濯性を向上させる試みも既にな
されており、たとえば親水性のポリマーであるポリエチ
レングリコールなどをポリオレフィンに混合する方法が
提案されている。
【0007】この方法もそれなりの成果をあげている
が、界面活性剤を混合したときほど充分な親水性を付与
することはできていない。また、多量のポリエチレング
リコールを混合する必要があるが、多量のポリエチレン
グリコールを混合すると本来ポリオレフィンが持ってい
る特徴、たとえば耐薬品性などを損う惧れがある。
【0008】さらに、後加工で、繊維表面をスルホン化
したり、親水性樹脂をコーティングしたり、電子線照射
後に親水基含有モノマー(アクリル酸、ビニルスルホン
酸、それらの金属塩など)溶液中に浸漬することで親水
基含有モノマーをグラフト重合させたりする方法もある
が、これらの方法は工程が複雑であったり、コストが高
くなったり、ポリオレフィンの特徴、たとえば耐薬品性
を損う惧れがあるなどする。
【0009】したがって、充分に高度な親水性と耐洗濯
性などの耐久性とを兼ね備えたポリオレフィン樹脂組成
物はまだ工業的には開発されていないというのが実情で
ある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
オレフィンの耐薬品性に優れ、安価であるという特徴を
損うことなく、ポリオレフィンに耐久性を有する優れた
親水性を付与する工業的に有利な方法を見出し、安価
で、耐久性のある優れた親水性を有するポリオレフィン
樹脂組成物を用いた耐久性のある親水性に優れた不織布
を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らはポリオレフ
ィンに種々の添加物を混合し、耐久性のある優れた親水
性を付与する方法について鋭意研究を重ねた結果、本発
明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明は、 ポリオレフィン、熱
可塑性ポリエチレンオキサイドおよび界面活性剤を加熱
溶融混合してなるポリオレフィン樹脂組成物を成形して
なる不織布(請求項)、ポリオレフィン樹脂組成物
が、相溶化剤の存在下でポリオレフィン、熱可塑性ポリ
エチレンオキサイドおよび界面活性剤を加熱溶融混合し
てなる組成物である請求項記載の不織布(請求項
)、ポリオレフィン樹脂組成物が、ポリオレフィン1
00部、熱可塑性ポリエチレンオキサイド1〜30部、
界面活性剤1〜5部および相溶化剤0.1〜2部を加熱
溶融混合してなる組成物である請求項記載の不織布
(請求項)、ポリオレフィンのMIが10〜150で
あり、不織布がスパンボンド不織布である請求項記載
の不織布(請求項)、ポリオレフィンのMIが200
〜1500であり、不織布がメルトブロー不織布である
請求項記載の不織布(請求項)、熱可塑性ポリエチ
レンオキサイドが熱可塑性ポリエチレンオキサイド架橋
物である請求項記載の不織布(請求項)、および界
面活性剤がアルキルスルホン酸アルカリ金属塩および
(または)アリールスルホン酸アルカリ金属塩である請
求項記載の不織布(請求項)に関する。
【0013】
【実施例】本発明に用いるポリオレフィンとしては、一
般にポリオレフィンとよばれているものであるかぎりと
くに限定はなく、たとえば炭素数2〜4のオレフィン
(たとえばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン
など)の単独重合体や共重合体、前記オレフィンとこれ
と共重合性を有する単量体との共重合体であって、オレ
フィンに由来するユニットの割合が90%(重量%、以
下同様)以上、さらには95%以上のもの、さらには前
記重合体の混合物などがあげられる。
【0014】前記のごときポリオレフィンのうち価格お
よび汎用性の点から好ましい具体例としては、たとえば
ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタ
クチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロ
ピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、前記ポリオ
レフィンを形成するオレフィンの2種以上の共重合体お
よびこれら重合体の混合物があげられる。
【0015】前記ポリオレフィンには、用途により、ま
た成形法により好ましい溶融粘度(メルトインデックス
(MI))がある。たとえばスパンデックス不織布を製
造するばあい、不織布を構成する繊維が連続したフィラ
メントであるから、前記ポリオレフィンから製造される
本発明のポリオレフィン樹脂組成物にはフィラメントを
紡糸することができる可紡性が必要である。したがっ
て、ポリオレフィンのMIが10〜150、さらには2
0〜100であることが好ましい。MIが10未満のば
あいには曳糸性が不足し、MIが150を超えるばあい
には糸切れが多くなる傾向が生じる。また、メルトブロ
ー不織布を製造するばあい、若干の糸切れは許容される
が、繊維の細化が熱風による随伴気流だけによるため、
MIは大きい方が好ましい。このばあいのポリオレフィ
ンのMIとしては200〜1500、さらには300〜
500であることが好ましい。MIが200未満のばあ
いには紡糸時に一部を熱分解させ、200以上になるよ
うにしてから紡出するのが、メルトブロー法により繊維
を細化しやすいなどの点から好ましい。しかし、MIが
1500を超えると大きくなり過ぎるために糸切れが多
くなり過ぎ、均一なウエッブ形成ができにくくなる。
【0016】ポリオレフィンのMIを大きくするには、
たとえばパーオキサイドを添加し、熱減成することによ
って行なうことができる。
【0017】前記パーオキサイドとしては、たとえば
1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)
ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチル
パーオキシ)ヘキサンなどを用いることができる。
【0018】前記MIは、荷重が2.16kg、温度が
230℃、ノズル径が2mmの口金から10分間に流出
するポリマーの重量(g)で表わされる値であり、JI
SK 7210に準拠して測定しうる。
【0019】前記ポリオレフィンには、一般に用いられ
る安定剤や添加剤が配合されていてもよい。安定剤とし
ては、たとえば酸化防止剤、塩酸捕捉剤、紫外線防止剤
などが、また、添加剤としては、たとえば酸化チタン、
カーボンブラック、各種顔料、抗菌剤、防カビ剤などが
あげられる。
【0020】本発明に用いる熱可塑性ポリエチレンオキ
サイドの重量平均分子量は、10000以上、さらには
100000以上、とくには200000以上であるこ
とが耐久性の点から好ましく、1000000以下、さ
らには600000以下が加工性の点から好ましい。
【0021】また、前記熱可塑性ポリエチレンオキサイ
ドの流動開始温度としては、50℃以上、さらには60
℃以上であるのが成形物の特性を保持する上で好まし
く、200℃以下、さらには160℃以下であるのが成
形加工性の上から好ましい。
【0022】前記のごとき熱可塑性ポリエチレンオキサ
イドの具体例としては、たとえば明成化学工業(株)製
の「アルコックスE−30」、「アルコックスR−10
00」(いずれも商品名)(いずれもエチレンオキサイ
ドを開環重合してなる鎖状ポリエチレンオキサイドで、
それぞれ分子量300000〜500000および25
0000〜300000のもの)などがあげられる。
【0023】前記熱可塑性ポリエチレンオキサイドは部
分的に、たとえばジイソシアネート化合物、トリイソシ
アネート化合物などで架橋されていてもよい。架橋する
ことにより親水性を損うことなく、耐久性をさらに向上
させることができる。ただし、架橋度が高くなり過ぎる
と成形時の流動性が低下するので、分子量と併せて、架
橋度を調整するのが好ましい。
【0024】前記部分的な架橋とは、架橋後の熱可塑性
ポリエチレンオキサイドがポリオレフィンおよび界面活
性剤と加熱溶融混合することにより、またはポリオレフ
ィン、界面活性剤および相溶化剤と加熱溶融混合するこ
とによりえられる樹脂組成物が、親水性と耐洗濯性など
の耐久性とを持つというような本発明に必須の特性を保
持しながら、紡糸時の流動性を保持し、曳糸性を保持す
るというように成形加工性において悪影響をおよぼさな
い特性を有する架橋をいい、架橋度としては重量平均分
子量で100000〜200000当り架橋に関与する
結合が1個(2個あって架橋する)程度あるのが好まし
い。
【0025】部分架橋熱可塑性ポリエチレンオキサイド
の具体例としては、住友精化(株)製の「アクアコー
ク」(商品名)(ポリエチレンオキサイドの末端OH基
をウレタン架橋してなる架橋ポリエチレンオキサイド)
などがあげられる。
【0026】本発明においては、ポリオレフィンの親水
性を向上させるために、前記熱可塑性ポリエチレンオキ
サイドとともに界面活性剤が使用される。界面活性剤を
使用することにより、熱可塑性ポリエチレンオキサイド
の混合のみによる親水性の向上よりも親水性をより一層
向上させることができる。
【0027】前記界面活性剤としては、アニオン界面活
性剤(高級脂肪酸金属塩、有機スルホン酸金属塩な
ど)、ノニオン界面活性剤(多価アルコールの部分脂肪
酸エステル、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物な
ど)、両性界面活性剤(ベタイン型、アミノ酸塩型な
ど)などがあげられるが、これらのうちではアニオン界
面活性剤が成形加工に伴う熱劣化や揮発による有効成分
の減少が少ないなどの点から好ましく、なかでも有機ス
ルホン酸金属塩が好ましい。
【0028】前記有機スルホン酸金属塩には、たとえば
アルキルスルホン酸アルカリ金属塩、アリールスルホン
酸アルカリ金属塩などがあり、これらは単独で用いても
よく、2種以上併用してもよい。
【0029】有機スルホン酸金属塩としては、たとえば
一般式(1): R1 −SO3 Na (1) または一般式(2):
【0030】
【化1】
【0031】(式中、R1 は炭素数8〜22のアルキル
基または炭素数13〜24のアリール基、R2 およびR
3 は両者の炭素数の合計が8〜18であるようなアルキ
ル基を表わす)で表わされるようなものがあり、本発明
においてはとくに一般式(2)で表わされる化合物が好
適に使用される。
【0032】前記界面活性剤の具体例としては、たとえ
ば日鉱石油化学(株)製の「アトレーAS−100
0」、「アトレーAS−4000」、「T−105」
(いずれも商品名)(いずれも一般式(2)で表わされ
るアルキルスルホン酸ナトリウム塩)などがあげられ
る。
【0033】本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、前
記ポリオレフィン、熱可塑性ポリエチレンオキサイドお
よび界面活性剤を加熱溶融混合することにより調製され
る。
【0034】調製されたポリオレフィン樹脂組成物は、
安価で、耐久性のある優れた親水性を有する。
【0035】熱可塑性ポリエチレンオキサイド100部
に対する熱可塑性ポリエチレンオキサイドの配合量は1
〜30部、さらには3〜10部であるのが好ましく、界
面活性剤の配合量は1〜5部、さらには2〜4部である
のが好ましい。熱可塑性ポリエチレンオキサイドの量が
1部未満では親水性が不足する傾向にあり、30部を超
えて使用しても使用量に対する親水性の向上する割合は
大きくなくなり、ポリオレフィンの特徴が損われる損失
の方が大きくなる傾向にある。また、コストアップと見
合わなくなる傾向にある。また、界面活性剤の量が1部
未満では親水性が不足する傾向にあり、5部を超えて使
用しても使用量に比して親水性の向上する割合が少なく
なり、また、コストアップと見合わなくなる傾向にあ
る。
【0036】本発明のポリオレフィン樹脂組成物を調製
する際の加熱溶融混合にはとくに限定はなく、たとえば
一般的に用いられる加熱ジャケット付混練り機を用いる
方法で製造しうる。混練り効果をよくするためには1軸
混練り機より2軸混練り機の方が好ましく、また、混練
り効果の向上するスクリューを用いる方が好ましい。
【0037】混練り時の温度としては、通常170〜2
50℃、さらには180〜210℃が採用される。
【0038】なお、使用するポリオレフィンのMIを調
整したいばあいには、樹脂組成物を調製する段階で所定
量の酸化分解剤(パーオキサイドなど)を添加すればよ
い。
【0039】前記本発明の組成物を調製する際、とくに
前記熱可塑性ポリエチレンオキサイドとポリオレフィン
とを混合する際に相溶化剤の存在下で混合すると、熱可
塑性ポリエチレンオキサイドが均一に細かく分散するた
め、繊維化するばあいには可紡性が向上し、糸切れなど
が減少する。また、成膜するばあいには均一性が向上
し、フィッシュアイの発生が著しく減少する。
【0040】前記相溶化剤としては、混合する両者と相
溶性のあるもの、たとえば無水マレイン酸グラフトポリ
オレフィン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、
エチレン−メタクリル酸共重合体などがあげられる。こ
れらのうちでは無水マレイン酸グラフトポリオレフィン
が、相溶化能が大きく、取扱い易いなどの点から好まし
い。
【0041】前記無水マレイン酸グラフトポリオレフィ
ンとは、ポリオレフィン100部に対して無水マレイン
酸5〜20部をグラフト共重合させたものであり、固有
粘度で0.2〜0.6程度のものである。
【0042】熱可塑性ポリエチレンオキサイドのポリオ
レフィン中での分散状況は混合したチップをミクロトー
ムでスライスした切片のTEM観察によりしらべること
ができる。よく分散すると平均0.5μm以下、さらに
よく混合すると0.2μm以下の径で分散する。
【0043】前記相溶化剤を使用するばあいの使用量と
しては、ポリオレフィン100部、熱可塑性ポリエチレ
ンオキサイド1〜30部、界面活性剤1〜5部および相
溶化剤(たとえば無水マレイン酸グラフトポリオレフィ
ン)0.1〜2部の割合になるように使用するのが好ま
しい。
【0044】相溶化剤の量がポリオレフィン100部に
対して0.1部未満では熱可塑性ポリエチレンオキサイ
ドの分散性向上効果が充分えられない傾向が生じ、2部
を超えて混合しても分散性の向上はコストアップに見合
うほど大きくなりにくい。
【0045】本発明のポリオレフィン樹脂組成物を調製
する際には、ポリオレフィンに前記熱可塑性ポリエチレ
ンオキサイド、界面活性剤、相溶化剤を配合し、必要に
応じてMI調整のための酸化分解剤(パーオキサイドな
ど)、各種安定剤、その他の添加剤を加えてヘンミェル
ミキサーなどを用いて混合し、単軸押出機、二軸押出
機、ブラベンダーなどで加熱溶融混練してペレット化す
るなどすればよい。
【0046】このようにして製造された本発明の組成物
は、耐久性のある優れた親水性を有し、シート、フィル
ム、射出成形物、フィラメント、不織布などの成形にお
いても良好な加工性を有する。
【0047】前記親水性は、フィルム上の水滴の接触角
を測定することにより評価することができる。具体的に
は本発明の組成物から調製したフィルム上に2μlの純
水を滴下し、その液滴の写真をとる。フィルム上の液滴
が上面から見てほぼ真円であることを確認したうえで、
その径と水滴の体積から接触角を計算する。また、バイ
レック法に準じて不織布の下端を浸漬し、2分後の高さ
(mm)を測定することにより、また、1滴の水滴の浸
透時間を測定することによっても評価することができ
る。
【0048】また、前記親水性の耐久性は、フィルム、
不織布などを常温(20〜30℃)の水中でかるく洗浄
したのち、70℃の熱風乾燥機で乾燥後、再度親水性を
測定することにより評価することができる。
【0049】本発明の組成物は、たとえば不織布(たと
えばスパンボンド不織布、メルトブロー不織布など)、
シート、フィルム、射出成形物、フィラメントなどの製
造に好適に使用される。
【0050】本発明の不織布は、たとえば一般に用いら
れるメルトブロー法、スパンボンド法により製造しう
る。また、ステープル繊維を製造したのちこれを用いた
ニードルパンチング法、エアレイ法、スパンレース法な
どによっても製造することができる。
【0051】メルトブロー法のばあい、エクスツルーダ
ーで溶融し、ギヤポンプで計量しながら、ノズルから紡
出し、熱風で繊維を細化し、ネット上に繊維を捕集する
ことにより不織布が製造される。捕集された繊維は自己
接着する。MIが小さいばあい、ノズルから紡出するま
でにポリマーを滞留させ、熱分解を起こさせ、分子量を
低下させ、MIを大きくさせることにより、繊維の細化
を容易にし、可紡性を向上させてもよい。
【0052】本発明のポリオレフィン樹脂組成物のよう
に予めMIを調整しておくと、紡出時に安定して紡出さ
せることができるため、メルトブロー法においても、繊
維径のバラツキの小さい、連続フィラメントがえられや
すくなる。
【0053】スパンボンド法でもメルトブロー法と同じ
ような紡出装置が用いられるが、繊維を細化するため
に、通常の繊維をうる方法と同様に、ローラーによる延
伸や空気流を用いたエアサッカーによる延伸が行なわ
れ、ついで静電気などの作用により開繊され、ネット上
に捕集される。しかし、メルトブロー法と異なり、自己
接着しないので、ニードルパンチング法、サーマルボン
ディング法、ケミカルボンディング法、スパンレース法
などの方法により繊維が交絡または接着せしめられる。
【0054】本発明の不織布の製法は前記の製法を組み
合わせて用いることもできる。
【0055】このようにして耐久性のある親水性を有す
る不織布が製造される。とくに、相溶化剤を用いて熱可
塑性ポリエチレンオキサイドを均一に細かく分散させた
組成物を用いて不織布を製造すると、可紡性が向上し、
糸切れなどが減少するため好ましい。
【0056】本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説
明する。
【0057】参考例1 ポリプロピレン(三井東圧化学(株)製の「三井ノーブ
レン」(商品名))に、熱可塑性ポリエチレンオキサイ
ドとして重量平均分子量(Mw)が370000の熱可
塑性ポリエチレンオキサイド架橋物(住友精化(株)製
の「アクアコーク」(商品名))を、有機スルホン酸ア
ルカリ金属塩として一般式(2)で表わされるアルキル
スルホン酸ナトリウム塩であって、R2およびR3の炭素
数の合計が11のアルキルスルホン酸ナトリウム塩(日
鉱石油化学(株)製の「アトレーAS−1000」(商
品名))を、相溶化剤として無水マレイン酸グラフトポ
リオレフィン(三洋化成工業(株)製の「ユーメックス
1001」(商品名)、固有粘度0.31、ポリオレフ
ィン100部に対し無水マレイン酸を8部グラフトさせ
たもの)を、重量比100:5:2:1の割合で190
℃で2軸混練り機で混練りし、MIが300の樹脂組成
物のペレットを製造した。そののち、該樹脂組成物を1
90℃で溶融し、Tダイから押出し、厚さ70μmの未
延伸フィルムを製造した。
【0058】えられたフィルムの接触角は80.0度で
あり、良好な親水性を示した。このフィルムの親水性の
耐久性を、前述のように処理して接触角を評価したとこ
ろ、82.5度で、良好な親水性がほぼ維持されてい
た。フィルム中での熱可塑性ポリエチレンオキサイド架
橋物の分散粒子径は0.1〜0.9μmで、1000m
2 あたりのフィッシュアイの数は3個であった。
【0059】参考例2〜5および比較参考例1〜3 実施例1と同様にしてポリプロピレン100部に対する
熱可塑性ポリエチレンオキサイドとアルキルスルホン酸
アルカリ金属塩と相溶化剤の重量比を表1に示すとおり
に変更し、製造したフィルムの接触角、フィッシュアイ
の数を測定した。なお、参考例5で使用した「アクアコ
ーク」は重量平均分子量210000のものであった。
結果を参考例1の結果とあわせて表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】実施例 参考 例1と同様にしてMIを表2に記載のように調整し
た樹脂組成物を調製し、エクスツルーダーで溶融し、ギ
ヤポンプで計量し、220℃でノズルから紡出し、23
0℃の熱風で繊維を細化し、サクション付のネット上に
繊維を捕集し、120℃のエンボスローラで圧着し、目
付け100g/m2のメルトブロー不織布を製造した。
なお、実施例では相溶化剤を含まない組成物を使用し
た。
【0062】不織布製造時の操業性を、紡糸時の曳糸性
と紡糸開始後24時間の平均糸切れの本数(本/時間)
で評価した。結果を表2に示す。
【0063】また、えられた不織布の繊維の径をSEM
で測定したところ、いずれも30〜100μmであっ
た。
【0064】さらに、えられた不織布の親水性および耐
久性として水滴の浸透時間、バイレック吸上高さ、煮沸
洗浄後の水滴の浸透時間およびバイレック吸上高さを測
定した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】実施例12 参考 例1と同様にしてMIを表2に記載のように調整し
た樹脂組成物を調製し、エクスツルーダーで溶融し、ギ
ヤポンプで計量し、220℃でノズルから紡出し、23
0℃の熱風で繊維を細化し、サクション付のネット上に
繊維を捕集し、120℃のエンボスローラで圧着し、目
付け100g/m2のメルトブロー不織布を製造した。
なお、実施例12では相溶化剤を含まない組成物を使用
した。
【0067】不織布を製造時の操業性を紡糸時の曳糸性
と紡糸開始後24時間の平均糸切れの本数(本/時間)
で評価した。結果を表3に示す。
【0068】また、えられた不織布の繊維の径をSEM
で測定したところ、いずれも10〜30μmであった。
【0069】さらに、えられた不織布の親水性および耐
久性として水滴の浸透時間バイレック吸上高さ、煮沸洗
浄後の水滴の浸透時間およびバイレック吸上高さを測定
した。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【発明の効果】本発明に用いるポリオレフィン樹脂組成
物はポリオレフィンの特徴を損うことなく、ポリオレフ
ィンに優れた耐久性を有する親水性を与えた安価なポリ
オレフィン樹脂組成物である。本発明の不織布はこのポ
リオレフィン樹脂組成物を用いた耐久性を有する親水性
に優れた不織布である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 重徳 大阪府高石市高砂1丁目6番地 三井東 圧化学株式会社内 (72)発明者 隅岡 俊浩 大阪府高石市高砂1丁目6番地 三井東 圧化学株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−212020(JP,A) 特公 昭47−19861(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D04H 3/00 C08L 23/00 - 23/36 C08L 71/00 - 71/14 C08K 3/00 - 13/08

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィン、熱可塑性ポリエチレン
    オキサイドおよび界面活性剤を加熱溶融混合してなるポ
    リオレフィン樹脂組成物を成形してなる不織布。
  2. 【請求項2】 ポリオレフィン樹脂組成物が、相溶化剤
    の存在下でポリオレフィン、熱可塑性ポリエチレンオキ
    サイドおよび界面活性剤を加熱溶融混合してなる組成物
    である請求項記載の不織布。
  3. 【請求項3】 ポリオレフィン樹脂組成物が、ポリオレ
    フィン100重量部、熱可塑性ポリエチレンオキサイド
    1〜30重量部、界面活性剤1〜5重量部および相溶化
    剤0.1〜2重量部を加熱溶融混合してなる組成物であ
    る請求項記載の不織布。
  4. 【請求項4】 ポリオレフィンのMIが10〜150で
    あり、不織布がスパンボンド不織布である請求項記載
    の不織布。
  5. 【請求項5】 ポリオレフィンのMIが200〜150
    0であり、不織布がメルトブロー不織布である請求項
    記載の不織布。
  6. 【請求項6】 熱可塑性ポリエチレンオキサイドが熱可
    塑性ポリエチレンオキサイド架橋物である請求項記載
    の不織布。
  7. 【請求項7】 界面活性剤がアルキルスルホン酸アルカ
    リ金属塩および(または)アリールスルホン酸アルカリ
    金属塩である請求項記載の不織布。
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