JP3444233B2 - 超音波溶接不良検出方法および装置 - Google Patents

超音波溶接不良検出方法および装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波溶接の不良
を検出する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波溶接の不良を検出する手段とし
て、特開平6−344159号公報に開示された技術が
知られている。この技術は溶接中のホーン電流を監視
し、その電流値が所定の範囲を越えることによって溶接
不良を検出するものである。また、上記以外に超音波溶
接の不良を検出する手段として、被溶接物の加圧力、溶
接時間を計測し、予め設定した上限および下限と比較
し、溶接の良否を判定する技術が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記で示した検出手段
は、溶接強度の監視としては有効である。しかし、超音
波溶接の場合、超音波を被溶接物に与えて溶接を行うた
め、ホーンの先端部の劣化、溶接治具の状態、被溶接物
の表面粗度などの変動により、溶接条件が一定でも溶接
割れが発生する場合がある。図2(b)に溶接割れが発
生した具体的な被溶接物の一例を示し、溶接割れが発生
した部分を矢印Aに示す。この溶接割れは、上記で示し
た検出手段では検出することが困難であり、現状では溶
接後、全ての被溶接物を作業者が目で見て溶接割れの発
生の有無をチェックしている。
【0004】
【発明の目的】本発明は、上記の事情に鑑みてなされた
もので、その目的は、溶接割れの発生の有無を検出する
ことのできる超音波溶接不良検出方法および装置の提供
にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】〔請求項1、2の手段〕
正常の溶接では、ホーンから与えられた振動によって、
被溶接物が均一に振動するため、ホーン電流の波形は徐
々に立ち上がったあとフラットになる。これに対し、溶
接割れが起きると、被溶接物の一部が固定されてしまう
ため、他の一部のみに振動エネルギーが集中し、他の一
部の溶接が一気に進み、ホーン電流の波形が急激に立ち
上がる。そして、他の一部が溶着した後、しばらくホー
ンが他の一部の上をスリップする状態になるため、ホー
ンは駆動力を必要とせず、結果的にホーン電流が大きく
降下する。
【0006】このように、溶接割れが起きる場合、一
旦、ホーン電流の波形が急激に立ち上がり、その後、ホ
ーン電流が大きく降下する特性を有する。このため、最
大値計測領域においてホーン電流の波形の立ち上がりに
よるホーン電流の最大値を計測し、最小値計測領域にお
いてホーン電流の降下によるホーン電流の最小値を計測
し、最大値と最小値との差が予め設定された判定値より
大きい場合に、溶接割れの発生を判断できる。
【0007】〔請求項3の手段〕被溶接物が一定の溶け
込み量となるように溶接を行う場合、溶接時間がばらつ
く。このため、時間幅で最大値と最小値を計測すると、
誤作動する可能性が大きくなってしまう。そこで、ロー
レット部の食い込み代が所定値に達するまでの前後で最
大値計測領域と最小値計測領域とに区切ることで、溶接
時間にばらつきが発生しても、最大値と最小値を正確に
計測することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照
して説明する。図1を基に超音波溶接装置1を説明す
る。超音波溶接装置1は、圧電素子等を用いた超音波振
動子2、この超音波振動子2に超音波駆動電流(ホーン
電流)を与えるコントローラ3、超音波振動子2によっ
て超音波振動するホーン4、およびこのホーン先端のロ
ーレット部5との間で被溶接物6を挟み付けるアンビル
7から構成され、ホーン4の根元部は保持部8によって
超音波振動可能に保持されている。また、この実施形態
における超音波溶接装置1は、被溶接物6が一定の溶け
込み量となるように溶接を行うものであり、溶け込み量
を計測するための変位センサ9を備える。なお、変位セ
ンサ9は、ホーン4の変位量Lを計測することで被溶接
物6の溶け込み量を計測するものである。
【0009】この超音波溶接装置1による溶接は、以下
のようにして行われる。重ね合わせた被溶接物6をホー
ン4とアンビル7との間に設置し、ホーン4を被溶接物
6に押し付け、被溶接物6の接合部を加圧する。そし
て、コントローラ3から超音波振動子2に超音波振動駆
動のためのホーン電流を供給すると、超音波振動子2お
よびホーン4が超音波振動し、これが被溶接物6に伝達
される。その結果、被溶接物6の接触面に微小振動塑性
滑りが発生し、その滑り作用によって接触面に摩擦熱が
生じることになり、この摩擦熱を利用した冷間圧接・溶
接が行われる。そして、変位センサ9によって計測され
るホーン4の変位量Lが所定値に達すると、溶け込み量
が所定値に達したとコントローラ3が判断し、溶接を終
了する。
【0010】この実施形態において超音波溶接装置1に
よって溶接される被溶接物6の具体例は、図2(a)に
示すように、銅プレート10、アルミフィン11、およ
び炭素鋼からなるBボルト12の三層同時超音波溶接で
あり、この被溶接物6はオルタネータのレクチファイヤ
に用いられるものである。そして、この被溶接物6は、
ホーン4の先端部の劣化、溶接治具の状態、被溶接物6
の表面粗度などの変動により、溶接条件が一定でも、図
2(b)の矢印Aで示すように、Bボルト12に溶接割
れが発生する場合がある。
【0011】超音波溶接装置1には、溶接中の被溶接物
6に溶接割れが発生したか否かを判定し、溶接割れによ
る溶接不良が発生したと判断した場合に警告音を発生す
る超音波溶接不良検出装置が設けられている。この装置
は、超音波振動子2に印加されるホーン電流値iを計測
する電流センサ13と、この電流センサ13によって計
測されたホーン電流値iに基づいて溶接割れを検出する
モニタリング装置14(モニタリング手段に相当する)
とから構成される。
【0012】このモニタリング装置14は、図3に示す
ように、溶接を開始してからの所定期間内における最大
値計測領域でのホーン電流の最大値Max iと、最大値計
測領域が経過してからの所定期間内における最小値計測
領域でのホーン電流の最小値Min iとの差が、予め設定
された判定値Δi(例えば、600mA)より大きい場
合(Max i−Min i>Δi)に、溶接不良を判断するも
のである。
【0013】この実施形態における最大値計測領域は、
溶接を開始してから、被溶接物6を押し付けるホーン4
のローレット部5の食い込み代が所定値ΔL(例えば、
250μm)に達するまでの期間であり、また、最小値
計測領域は、最大値計測領域が経過してから、溶接が終
了するまでの期間である。そして、ローレット部5の食
い込み代は、変位センサ9によってホーン4の変位量L
から計測される。
【0014】モニタリング装置14は、ホーン電流値i
を計測するホーン電流計測回路15、ホーン変位量Lを
計測するホーン変位量計測回路16、判定値Δiおよび
所定値ΔLを記憶する設定回路17、演算回路18、比
較回路19、警報回路20から構成される。演算回路1
8、比較回路19および警報回路20は、上記の計測お
よび判定を行うもので、その作動を図4のフローチャー
トに基づき説明する。
【0015】溶接が開始されると(スタート)、ホーン
電流計測回路15の読み込んだホーン電流値iからホー
ン電流の最大値Max iを測定する(ステップS1 )。次
に、ホーン変位量計測回路16の読み込んだホーン変位
量Lが所定値ΔLに達したか否かの判断を行う(ステッ
プS2 )。この判断結果がNOの場合は最大値計測領域で
あると判断してステップS1 へ戻る。
【0016】ステップS2 の判断結果がYES の場合は、
最大値計測領域が終了し、最小値計測領域に入ったと判
断して、ホーン電流計測回路15の読み込んだホーン電
流値iからホーン電流の最小値Min iを測定する(ステ
ップS3 )。次に、溶け込み量が所定値に達し、溶接が
終了したか否かの判断を行う(ステップS4 )。この判
断結果がNOの場合は最小値計測領域であると判断してス
テップS3 へ戻る。
【0017】ステップS4 の判断結果がYES の場合は、
最小値計測領域も終了したと判断し、ステップS1 で計
測した最大値Max iとステップS3 で計測した最小値Mi
n iとの差が、判定値Δiよりも大きいか否かの判断を
行う(ステップS5 )。この判断結果がNOの場合は溶接
割れが発生していないと判断して終了する(エンド)。
しかし、ステップS5 の判断結果がYES の場合は溶接割
れが発生したと判断し、警報回路20を作動させて、不
良品の発生を作業者に知らせる、あるいは不良品を自動
的に選別させる(ステップS6 )。
【0018】上記溶接割れの有無にかかるホーン電流の
変化を図5を参照して説明する。正常の溶接では、ホー
ン4から与えられた振動によって、被溶接物6が均一に
振動するため、図5の実線Bに示すように、ホーン電流
の波形は徐々に立ち上がったあとフラットになる。
【0019】これに対し、溶接割れが起きると、被溶接
物6の一部が固定されてしまうため、他の一部のみに振
動エネルギーが集中し、他の一部の溶接が一気に進み、
図5の破線Cに示すように、ホーン電流の波形が急激に
立ち上がる。そして、他の一部が溶着した後、しばらく
ホーン4が他の一部の上をスリップする状態になるた
め、ホーン4は駆動力を必要とせず、結果的にホーン電
流が大きく降下する。
【0020】このように、溶接割れが発生した場合、一
旦、ホーン電流の波形が急激に立ち上がり、その後、ホ
ーン電流が大きく降下する特性を有する。このため、最
大値計測領域においてホーン電流の波形の立ち上がりに
よるホーン電流の最大値Max iを計測し、最小値計測領
域においてホーン電流の降下によるホーン電流の最小値
Min iを計測し、最大値Max iと最小値Min iとの差が
予め設定された判定値Δiより大きい場合に、溶接割れ
の発生を判断できる。
【0021】上記実施形態で示したように、最大値計測
領域における最大値Max iと、最小値計測領域における
最小値Min iとの差を求め、その差を判定値Δiと比較
することで溶接割れの発生を判断することができるた
め、従来、全ての被溶接物6を作業者が目で見て溶接割
れの発生の有無をチェックしていた作業を無くすことが
できる。つまり、目視による作業者が不要になるため、
結果的に被溶接物6の溶接に要するコストを下げること
ができる。
【0022】〔変形例〕上記の実施形態では、被溶接物
6が一定の溶け込み量となるように溶接を行う例を採用
したため、最大値計測領域と最小値計測領域を変位セン
サ9で計測される溶け込み量を基に区別した例を示した
が、例えば溶接を時間制御するような場合では、最大値
計測領域と最小値計測領域を時間幅で区別しても良い。
上記実施形態で示した被溶接物6や数値は、説明するた
めの一例であって、他の被溶接物6や数値を用いても良
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】超音波溶接不良検出装置の概略図である。
【図2】被溶接物の斜視図である。
【図3】ホーン変位量とホーン電流値との関係を示すグ
ラフである。
【図4】モニタリング装置の作動を示すフローチャート
である。
【図5】溶接割れの有無におけるホーン電流値の変化を
示すグラフである。
【符号の説明】
1 超音波溶接装置 2 超音波振動子 4 ホーン 5 ローレット部 6 被溶接物 7 アンビル 13 電流センサ 14 モニタリング装置(モニタリング手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−344159(JP,A) 特開 平9−234575(JP,A) 特開2000−202644(JP,A) 特開 平8−252679(JP,A) 特開 平6−341966(JP,A) 特開 平3−60881(JP,A) 特開 平6−99289(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/10 B23K 31/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】超音波振動子の発生する超音波振動をホー
    ンに伝え、このホーンとアンビルとの間に挟まれる被溶
    接物を接合する超音波溶接装置に用いられ、 前記超音波振動子を駆動するためのホーン電流を監視
    し、 溶接を開始してからの所定期間内における最大値計測領
    域でのホーン電流の最大値と、前記最大値計測領域が経
    過してからの所定期間内における最小値計測領域でのホ
    ーン電流の最小値との差が、予め設定された判定値より
    大きい場合に、溶接不良を判断する超音波溶接不良検出
    方法。
  2. 【請求項2】(a)超音波振動子の発生する超音波振動
    をホーンに伝え、このホーンとアンビルとの間に挟まれ
    る被溶接物を接合する超音波溶接装置と、 (b)前記超音波振動子を駆動するためのホーン電流を
    監視しする電流センサと、 (c)溶接を開始してからの所定期間内における最大値
    計測領域でのホーン電流の最大値と、前記最大値計測領
    域が経過してからの所定期間内における最小値計測領域
    でのホーン電流の最小値との差が、予め設定された判定
    値より大きい場合に、溶接不良を判断するモニタリング
    手段と、を備えた超音波溶接不良検出装置。
  3. 【請求項3】前記最大値計測領域は、溶接を開始してか
    ら、前記被溶接物を押し付ける前記ホーンのローレット
    部の食い込み代が所定値に達するまでの期間であり、 前記最小値計測領域は、前記最大値計測領域が経過して
    から、溶接が終了するまでの期間であることを特徴とす
    る請求項1記載の超音波溶接不良検出方法または請求項
    2記載の超音波溶接不良検出装置。
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