JP3443875B2 - 燃料電池 - Google Patents

燃料電池

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リン酸塩型、溶融炭酸
塩型、固体電解質型等の燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】一般にリン酸塩型、溶融炭酸塩
型、固体電解質型等の燃料電池では、アノード極及びカ
ソード極をそれぞれ表裏面に設けた電解質からなる単セ
ルとインタコネクタとを積み重ねた構造のものがある。
このタイプの燃料電池は、高出力化を図るために電解質
をできる限り薄膜化する必要がある。逆に、大容量化の
ためには単セルを大面積化する必要があり、単セルを大
面積化すればする程単セルにかかる応力も大きくなるの
で、単セルの厚みを厚くして機械的強度をあげなければ
ならない。従って、燃料電池を高出力化すると共に大容
量化することは困難であった。
【0003】この対策として、インタコネクタ相互間に
複数の単セルを並べて配設する構造が提案されている。
この場合、燃料電池に供給される燃料ガスや酸化ガスの
流路が問題となる。すなわち、燃料ガスや酸化ガスの流
路が長くなると、ガス供給口から排出口に至るまでの過
程でガスの消費が進み、排出口に近いほどガスの濃度が
低くなるからである。面状に並べて配設された複数の単
セル間においてガスの濃度分布が斑になると、発電斑が
起きて単セル内部に温度斑が発生し、熱応力によって単
セルに割れやひび等が発生する心配がある。また、燃料
電池に発生する電流の密度にも斑ができ、アノード極や
カソード極を劣化させる原因にもなる。
【0004】そこで、本発明の課題は、インタコネクタ
相互間に複数の単セルを面状に並べて配設する構造を有
し、かつガスの濃度分布斑が小さい燃料電池を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用】以上の課題を解決
するため、本発明に係る燃料電池は、(a) 電解質と
この電解質の表裏面にそれぞれ設けられたアノード極及
びカソード極からなる矩形状単セルと、インタコネクタ
とを積み重ねた積層構造体を有し、(b)前記インタコ
ネクタの間に前記矩形状単セルを縦横それぞれ二列にな
るように離隔して面状に並設し、(c)前記インタコネ
クタにガス流通用孔を田の字状に配設し、前記矩形状単
セルのそれぞれの周囲にガスマニホルドを設け、(d)
前記ガスマニホルドにガスを供給する、端部が分岐した
枝状構造のガス流通路を有しているガス集配部を、前記
積層構造体の端部に設けた、ことを特徴とする。インタ
コネクタに配設されたガス流通用孔の略半分がガス供給
路として用いられ、残りのガス流通用孔がガス排出路と
して用いられる。
【0006】また、前記ガス流通路は先端に向かって2
の乗数の単位、つまり2分割の単位で順に分割されてい
るものが好ましい。この構造であればガスの流れがより
均等になる。以上の構成において、ガス(燃料ガスある
いは酸化ガス)は供給路として用いられるガス流通用孔
からアノード極あるいはカソード極に供給される。供給
されたガスは電解質を介して電極反応を起こす。反応後
のガスは排出路として用いられるガス流通用孔を通って
排出される。ガス流通用孔を一部に含んでいる各ガスマ
ニホルドには、端部が分岐した枝状構造をしているガス
流通路を有しているガス集配部から均一にガスが供給さ
れる。そして、各ガスマニホルドはインタコネクタの間
に並設された矩形状単セルのそれぞれの周囲に位置して
いるため、ガスは矩形状単セルに対して均等に供給さ
れ、かつ排出される。従って、ガスの濃度分布が斑にな
るという事態が生じない。
【0007】
【実施例】以下、本発明に係る燃料電池の一実施例を添
付図面を参照して説明する。図1は固体電解質型燃料電
池本体の構成を示すものである。固体電解質1は矩形状
をしており、その材料としてはY23を8mol%添加さ
れて安定したZrO2等が用いられている。カソード極
2は固体電解質1の上面に形成され、アノード極3は固
体電解質1の下面に形成されている。カソード極2は
(La,Sr)MnO3等のペロブスカイト型酸化物導
電材料からなり、アノード極3はNi・ZrO2サーメ
ット等からなる。固体電解質1とカソード極2とアノー
ド極3は、グリーンシート状にされたそれぞれの原料を
積み重ねて圧着した後、共焼結(同時に焼成すること)
することにより、カソード極2とアノード極3をそれぞ
れ上下面に設けた固体電解質1、すなわち、矩形状単セ
ル4とされる。単セル4は縦横それぞれ二列になるよう
に離隔して面状に配置される。
【0008】各単セル4の上面にはそれぞれ集電体5
が、カソード極2に接触した状態で配置される。集電体
5は(La,Sr)MnO3等からなる多孔質体からな
る。各単セル4の下面にはそれぞれ集電体6が、アノー
ド極3に接触した状態で配置される。集電体6はNiメ
ッシュ等からなる。ガスケット10は田の字形状をして
おり、左右方向の中央柱部に酸化ガス供給用孔10aを
16個設け、外枠部の手前側及び奥側に酸化ガス排出用
孔10bをそれぞれ8個設けている。ガスケット10は
四つの穴部10cにそれぞれ集電体5を挿入した状態で
単セル4の上面に配置される。
【0009】同様に、ガスケット11は田の字形状をし
ており、左右方向の中央柱部に酸化ガス供給用孔11a
を16個設け、前後方向の中央柱部に燃料ガス供給用孔
11bを16個設け、外枠部の手前側及び奥側に酸化ガ
ス排出用孔11cをそれぞれ8個設け、さらに外枠部の
右側及び左側に燃料ガス排出用孔11dをそれぞれ8個
設けている。ガスケット11は4つの穴部11eにそれ
ぞれ集電体5(あるいは6)を挿入した状態で単セル4
の上面(あるいは下面)に配置される。
【0010】ガスケット12(図2及び図3参照)は田
の字形状をしており、前後方向の中央柱部に燃料ガス供
給用孔12aを16個設け、外枠部の左側及び右側に燃
料ガス排出用孔12bをそれぞれ8個設けている。ガス
ケット12は四つの穴部12cにそれぞれ集電体6を挿
入した状態で単セル4の下面に配置される。ガスケット
10と11、ガスケット11と11あるいはガスケット
11と12は縁部において接合し、酸化ガスや燃料ガス
を外気から遮断する。これらのガスケット10〜12は
セラミックファイバーとガラスの複合材等からなる。
【0011】インタコネクタ20は中央部の左右方向に
酸化ガス供給用孔20aを16個設け、手前側及び奥側
の縁部に酸化ガス排出用孔20bをそれぞれ8個設けて
いる。インタコネクタ20の下面には複数の溝20c
(図2及び図3参照)が所定の間隔で設けられており、
この溝20cによって酸化ガス30がカソード極2にゆ
きわたる。このインタコネクタ20は燃料電池の上部に
配置される。
【0012】インタコネクタ21は中央部の左右方向に
酸化ガス供給用孔21aを16個設け、中央部の前後方
向に燃料ガス供給用孔21bを16個設け、手前側及び
奥側の縁部に酸化ガス排出用孔21cをそれぞれ8個設
け、さらに右側及び左側の縁部に燃料ガス排出用孔21
dをそれぞれ8個設けている。インタコネクタ21の上
面及び下面にはそれぞれ複数の溝21e,21f(図2
及び図3参照)が所定の間隔で設けられており、溝21
eによって燃料ガス31がアノード極3にゆきわたり、
溝21fによって空気30がカソード極2にゆきわた
る。
【0013】インタコネクタ22(図2及び図3参照)
は中央部の前後方向に燃料ガス供給用孔22aを16個
設け、右側及び左側の縁部に燃料ガス排出用孔22bを
それぞれ8個設けている。インタコネクタ22の上面に
は複数の溝22cが所定の間隔で設けられており、この
溝22cによって燃料ガス31がアノード極3にゆきわ
たる。このインタコネクタ22は燃料電池の下部に配置
される。インタコネクタ20〜22の材料としては、ニ
ッケルクロム合金等の耐熱性合金が用いられる。
【0014】以上の単セル4、集電体5,6、ガスケッ
ト10〜12及びインタコネクタ20〜22を積み重ね
て固体電解質型燃料電池とする。酸化ガス供給用マニホ
ルドは孔20a,10a,11a,21a及び単セル4
相互間の間隙が連通することにより形成され、酸化ガス
排出用マニホルドは孔20b,10b,11c,21c
が連通することにより形成され、燃料ガス供給用マニホ
ルドは孔22a,12a,11b,21b及び単セル4
相互間の間隙が連通することにより形成され、燃料ガス
排出用マニホルドは孔22b,12b,11d,21d
が連通することにより形成される。
【0015】次に、燃料電池本体の動作について図2及
び図3を参照して説明する。燃料ガス31は、インタコ
ネクタ22の燃料ガス用供給孔22aから燃料ガス供給
用マニホルドを通って各単セル4のアノード極3に導か
れる。同様に、酸化ガス30はインタコネクタ20の酸
化ガス用供給孔20aから酸化ガス供給用マニホルドを
通って各単セル4のカソード極2に導かれる。燃料電池
の内部は高温(約1000℃)に保持されており、カソ
ード極2に供給された酸化ガス30とアノード極3に供
給された燃料ガス31とが固体電解質1を介して電極反
応を起こし、単セル4の厚み方向に電流が流れる。反応
後の燃料ガス31は燃料ガス排出用マニホルドを通って
インタコネクタ22の燃料ガス用排出孔22bから排出
される。同様に反応後の酸化ガス30は酸化ガス排出用
マニホルドを通ってインタコネクタ20の酸化ガス用排
出孔20bから排出される。酸化ガス供給用マニホルド
と燃料ガス供給用マニホルドはインタコネクタの間に面
状に並設された単セル4のそれぞれの周囲に位置してい
るため、酸化ガス30と燃料ガス31は、これらの単セ
ル4に対して均等に供給される。
【0016】次に、図4に示すように、燃料電池本体の
上下にそれぞれガス集配板40,41を配設する。ガス
集配板41は図5に示すように、上面に燃料ガス供給溝
44および燃料ガス排出溝45が設けられている。燃料
ガス供給溝44及び燃料ガス排出溝45は、それぞれ一
方の端部に燃料ガス供給口44b及び燃料ガスは、口4
5bを設けている。他方の端部は分岐して枝状構造をし
ており、それぞれの終端部44a及び45aはインタコ
ネクタ22の燃料ガス供給用孔22a及び燃料ガス排出
用孔22bに連通する位置に設けられている。
【0017】同様に、ガス集配板40は下面に酸化ガス
供給溝42及び酸化ガス排出溝43が設けられている。
酸化ガス供給溝42及び酸化ガス排出溝43は、それぞ
れ一方の端部に酸化ガス供給口42b及び酸化ガス排出
口43bを設けている。他方の端部は分岐して枝状構造
をしており、それぞれの終端部42a,43aはインタ
コネクタ20の酸化ガス供給用孔20a及び酸化ガス排
出孔20bに連通する位置に設けられている。ガス集配
板40,41の材料としては、ニッケルクロム合金等の
耐熱性合金が用いられる。
【0018】以上の構成からなる燃料電池において、酸
化ガス供給口42bに流入した酸化ガス30は端部が分
岐した枝状構造をしている酸化ガス供給溝42を通っ
て、インタコネクタ20に設けられている酸化ガス用供
給孔20aのそれぞれに均一に供給される。同様に、燃
料ガス供給口44bに流入した燃料ガス31は端部が分
岐した枝状構造をしている燃料ガス供給溝44を通っ
て、インタコネクタ22に設けられている燃料ガス用供
給孔22aのそれぞれに均一に供給される。そして、酸
化ガス排出用マニホルドと燃料ガス排出用マニホルドは
インタコネクタの間に面状に並設された単セル4のそれ
ぞれの周囲に位置しているため、反応後の酸化ガス30
と燃料ガス31はこれらの単セル4に対して均等に排出
される。この結果、酸化ガス30及び燃料ガス31が単
セル4に対して均等に供給され、かつ排出されるので、
ガス濃度分布斑が小さい固体電解質型燃料電池が得られ
る。また、ガス集配板40,41は、供給された酸化ガ
スや燃料ガスを燃料電池本体内に導入する前に予め加熱
する機能を有すると共に、燃料電池本体を冷却して過熱
から燃料電池を保護する機能を有する。
【0019】こうして得られた固体電解質型燃料電池を
1000℃にて稼動させた際の発電特性評価結果を図6
に示す(実線51)。ここに、単セル4は一辺が12c
mの正方形をしており、燃料ガスとして過湿水素ガスを
用い、酸化ガスとして空気を用いた。インタコネクタ2
0〜22の材料としては高温耐酸化性に優れているイン
コネル600(ニッケル74%、クロム15%、鉄8
%)を使用した。比較のため、図6にはインタコネクタ
の間に単セルを一つしか配設しない構造の固体電解質型
燃料電池の評価結果(一点鎖線52)と、ガス集配板を
備えない固体電解質型燃料電池の評価結果(点線53)
とを合わせて記載している。
【0020】図6に示すように、開回路状態(端子電流
が0[A])での端子電圧は、三者ともに略理論値通り
1.04[V]であった。一方、本実施例の燃料電池は
端子電流が増加しても端子電圧の低下量は小さい。とこ
ろが、比較例の燃料電池は端子電流が増加するにつれて
端子電圧が急速に低下している。特に、本実施例の燃料
電池の発電量は、インタコネクタの間に単セルを一つし
か配設しない構造の固体電解質型燃料電池の発電量の略
4倍であることが認められる。また、ガス集配板40,
41を備えない場合は、酸化ガス供給用マニホルドや燃
料ガス供給用マニホルドに酸化ガスや燃料ガスを均一に
供給することが不十分であるため、ガス濃度分布斑の抑
制が不十分であることが認められる。
【0021】なお、本発明に係る燃料電池は前記実施例
に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変
形することができる。前記実施例では固体電解質型燃料
電池について説明したが、リン酸塩型や溶融炭酸塩型の
燃料電池であってもよい。また、ガス集配板のガス流通
路は、必ずしもガス集配板の表面に設けた溝である必要
はない。例えば、ガス集配板を水平方向に2分割し、そ
れぞれの分割面に溝を形成した後、分割面を接合するこ
とにより、ガス集配板内部に管状のガス流通路を設けて
もよい。
【0022】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、各ガスマニホルドには端部が分岐した枝状構造
をしているガス流通路を有しているガス集配部から均一
にガスが供給され、各ガスマニホルドはインタコネクタ
の間に並設された矩形状単セルのそれぞれの周囲に位置
しているので、ガスは各単セルに対して均等に供給かつ
排出され、ガス濃度分布斑を抑えることができる。この
結果、単セル内部に温度斑が発生しにくく、熱応力によ
る単セルの割れやひび等も発生しない、大出力かつ大容
量の燃料電池が得られる。また、燃料電池に発生する電
流の密度も一様となり、アノード極やカソード極を劣化
させる心配もない。
【0023】また、ガス集配部を、燃料電池本体の端部
に設けることにより、供給ガスの予熱効果及び燃料電池
本体の冷却効果が得られ、燃料電池を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の一実施例を示すもの
で、燃料電池本体の組立て斜視図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】図1のIII−III断面図。
【図4】図1に示した燃料電池本体とガス集配板の組立
て斜視図。
【図5】図4に示したガス集配板の平面図。
【図6】図4に示した燃料電池の発電特性を示すグラ
フ。
【符号の説明】
1…固体電解質 2…カソード極 3…アノード極 4…単セル 21…インタコネクタ 21a…酸化ガス供給用孔(ガス流通用孔) 21b…燃料ガス供給用孔(ガス流通用孔) 21c…酸化ガス排出用孔(ガス流通用孔) 21d…燃料ガス排出用孔(ガス流通用孔) 40,41…ガス集配板 42…酸化ガス供給溝 43…酸化ガス排出溝 44…燃料ガス供給溝 45…燃料ガス排出溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−84579(JP,A) 特開 昭63−53862(JP,A) 特開 平3−15161(JP,A) 特開 平4−267071(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 8/24 H01M 8/02 H01M 8/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解質とこの電解質の表裏面にそれぞれ
    設けられたアノード極及びカソード極からなる矩形状単
    セルと、インタコネクタとを積み重ねた積層構造体を有
    し、 前記インタコネクタの間に、前記矩形状単セルを縦横そ
    れぞれ二列になるように離隔して面状に並設し、 前記インタコネクタにガス流通用孔を田の字状に配設
    し、前記矩形状単セルのそれぞれの周囲にガスマニホル
    ドを設け、 前記ガスマニホルドにガスを供給する、端部が分岐した
    枝状構造のガス流通路を有しているガス集配部を、前記
    積層構造体の端部に設けた、 ことを特徴とする燃料電池。
  2. 【請求項2】 ガス流通路が先端に向かって2分割され
    ていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
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