JP3441281B2 - 金属粉末射出成形体並びにそれを用いた気密ガラス端子及び気密ガラスキャップ - Google Patents

金属粉末射出成形体並びにそれを用いた気密ガラス端子及び気密ガラスキャップ

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JP3441281B2
JP3441281B2 JP02634496A JP2634496A JP3441281B2 JP 3441281 B2 JP3441281 B2 JP 3441281B2 JP 02634496 A JP02634496 A JP 02634496A JP 2634496 A JP2634496 A JP 2634496A JP 3441281 B2 JP3441281 B2 JP 3441281B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属粉末射出成形法によ
り所望形状に形成された成形体に設けられた透孔がガラ
スにより気密に封止された気密ガラス端子や気密ガラス
キャップ等の金属粉末射出成形体に関する。
【0002】
【背景技術】気密ガラス端子は金属製のアイレットにガ
ラスを用いてリード線を気密に封止している。このリー
ド線をガラスを用いて気密に封止する構造のものとし
て、マッチド型とコンプレッション型の2種類のものが
知られている。マッチド型のものは、アイレット、ガラ
ス、リード線に熱膨張係数の近いものを用いて熱膨張を
マッチングさせて気密特性を向上させようとするもの
で、アイレット、リード線には鉄−ニッケル−コバルト
合金製あるいはある種の鉄−ニッケル合金(42アロ
イ)製のものを用い、ガラスに硬質ガラスを用いている
ものである。このマッチド型のものでは、アイレットと
ガラスとの密着性を向上させるために、アイレットとリ
ード線に酸化皮膜を形成するようにしている。ところ
で、昨今、溶解金属を切削加工、プレス加工等して所要
の形状に形成する他に、金属粉末を射出成形して所要の
形状に成形する金属粉末射出成形法が普及しつつある。
この金属粉末射出成形法によれば、溶解金属を切削加
工、プレス加工等により所要の形状に形成するのに比し
て、少ない工数でより複雑な形状の成形体を容易に成形
できるなどのメリットがある。発明者は、気密ガラス端
子や気密ガラスキャップ等におけるアイレットを上記金
属粉末射出成形法によって成形して有効に使用しえない
か検討した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】金属粉末射出成形法
は、金属粉末をバインダーと共に混練してコンパウンド
を作成し、これを射出成形していわゆるグリーンパーツ
たる未焼成の成形体を得、バインダー出しを行って後、
焼結して金属粉末射出成形体とする。上記のように、金
属粉末射出成形法によるときは、バインダー出しを行っ
て焼結するものであることから、この金属粉末射出成形
体は溶融金属に比べて素材の緻密度が低く、溶融金属を
100とすれば95%前後、場合によって92%程度の
低い密度となる。発明者はこのような金属粉末射出成形
法によってアイレットを成形し、通常の方法によってマ
ッチド型の気密端子を作成してみた。ところが、得られ
た金属粉末射出成形体であるアイレットの金属密度は上
記のように低く、表面に微細な空孔がある。したがって
通常のごとく素材金属の酸化皮膜を形成しようとして
も、酸化皮膜の品質が良好でなく、ガラスとの密着性に
劣り、良好な気密特性が得られないことが判明した。
【0004】そこで、本発明は上記問題点を解決すべく
なされたものであり、その目的とするところは、ガラス
封着の気密特性を向上させた金属粉末射出成形体並びに
それを用いた気密ガラス端子及び気密ガラスキャップを
提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するため次の構成を備える。すなわち、金属粉末射出成
形法により所望形状に形成された成形体に設けられた透
孔がガラスにより気密に封止される金属粉末射出成形体
であって、前記成形体は鉄系合金から成り、前記成形体
にはニッケルめっき皮膜、コバルトめっき皮膜、ニッケ
ル−コバルトめっき皮膜、鉄−ニッケル−コバルトめっ
き皮膜のいずれかのめっき皮膜が形成されると共に、加
熱処理が施されて前記成形体の素材金属の鉄が拡散した
めっき皮膜の酸化皮膜が形成されていることを特徴とし
ている。前記鉄系合金には、鉄−ニッケル−コバルト合
金または鉄−ニッケル合金を好適に用いることができ
る。前記めっき皮膜は2〜10μmの厚さに形成するの
が好適である。また、前記加熱処理は、弱還元性湿潤雰
囲気中で施した後、湿潤酸素雰囲気中で施す、2段階の
処理が好適であり、上記弱還元性湿潤雰囲気中での加熱
処理は800 ℃〜1000℃で30〜180分行い、前記湿潤
酸素雰囲気中での加熱処理は500 〜800 ℃、約20分行
うと好適である。
【0006】
【作用】金属粉末射出成形法による難点である、微細な
空孔が生じる点は、素材金属12a表面にめっき皮膜1
2bを形成することによって解消でき、さらにこのめっ
き皮膜12bは加熱処理により素材金属12a中の鉄が
拡散されてガラス16と馴染みのよい良質な酸化皮膜1
2cを形成するための母材となるのである。このよう
に、素材金属12aの表面の難点が解消され、さらにガ
ラスとの馴染みのよい酸化皮膜12bが形成されること
で、金属粉末射出成形法によって形成された金属粉末射
出成形体に気密特性に優れたガラス封着が行える。
【0007】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基
づいて詳細に説明する。図1は金属粉末射出成形体の一
例としての気密ガラス端子10を示す。12はアイレッ
トであり、鉄−ニッケル−コバルト合金(コバール)あ
るいは42アロイ(鉄−ニッケル合金)製であって、金
属粉末射出成形法によって成形された鉄系合金から成る
成形体である。なお、金属粉末には鉄系合金そのものの
粉末を使用しても良いし、また鉄の粉末と他の金属(ニ
ッケル、コバルト)の粉末とを混合したものを使用して
も良い。14はリード線であり、アイレット12と同
様、鉄−ニッケル−コバルト合金(コバール)あるいは
42アロイが好適に用いられ、あらかじめ表面に酸化皮
膜が形成してある。16はガラスで、アイレット12に
設けた透孔18内に充填され、リード線14を気密に封
止する。アイレット12、ガラス16、リード線14は
熱膨張係数がほぼ同じ材料が用いられるものであり、マ
ッチド型のものに形成される。
【0008】アイレット12上には半導体素子(図示せ
ず)が搭載され、該半導体素子とリード線14とが図示
しないワイヤによって電気的に接続され、半導体素子を
覆って後述するキャップがアイレット12に固定され、
半導体素子を気密に封止して気密ガラス端子に完成され
る。なお、図示しないがアイレット12にはアースリー
ド線が接続されることがある。また気密ガラス端子には
その他種々の種類のものがあり、アイレット12上に立
設したヒートシンクにレーザー素子を搭載したものなど
も含まれる。
【0009】図2はアイレット12の断面説明図であ
る。アイレット12は素材金属12a上にニッケルめっ
き皮膜、コバルトめっき皮膜、ニッケル−コバルトめっ
き皮膜、鉄−ニッケル−コバルトめっき皮膜のいずれか
からなるめっき皮膜12bが形成されて後、加熱処理さ
れることにより、めっき皮膜12b表面上に酸化皮膜1
2cが形成されてなる。素材金属12aは、鉄−ニッケ
ル−コバルト合金の粉末(あるいは合金を組成する単体
金属である鉄、ニッケル、コバルト粉末)、あるいは鉄
−ニッケル合金(42アロイ)の粉末(あるいは合金を
組成する単体金属である鉄、ニッケル粉末)を用いて常
法による金属粉末射出成形法によってアイレットの所望
形状に成形される。
【0010】めっき皮膜12bの膜厚は特に限定されな
いが、少なくとも粉末射出成形法によって成形されるア
イレットの素材金属12a表面の微細な空孔を埋めるに
十分な厚さであればよく、2〜10μm程度が好適であ
る。加熱処理は、まず弱還元性湿潤雰囲気中(ウエット
2 ガス中)、800 〜1000℃、30〜180分の加熱処
理を行い、素材金属12a中の鉄をめっき皮膜12b中
に拡散させる。このように素材金属12a中の鉄をめっ
き皮膜12b中に拡散させるのは、ガラス16と馴染み
のよい酸化皮膜を12cを形成するためである。上記加
熱処理は、めっき皮膜12bの膜厚が大きい程、温度を
高く、かつ長時間行うようにするとよい。
【0011】次いで湿潤酸素雰囲気中で500 〜800 ℃、
約20分の加熱処理を行い、めっき皮膜12b表面に鉄
を含む金属の酸化皮膜12c(例えばFe3O4 、Fe2Co
O4 、Fe 2NiO4 等)を形成することができる。ガラス1
6には素材金属12aと熱膨張係数の近いホウケイ酸系
ガラス等の公知の硬質ガラスを用いることができる。鉄
を含む金属の酸化皮膜12cとガラス16との馴染みは
よく、酸化皮膜12cとの間の気密性よくリード線14
をガラス16により封止することができる。また、金属
粉末射出成形法による難点である、微細な空孔が生じる
点は、素材金属12a表面にめっき皮膜12bを形成す
ることによって解消でき、さらにこのめっき皮膜12b
は加熱処理により素材金属12a中の鉄が拡散されてガ
ラス16と馴染みのよい良質な酸化皮膜12cを形成す
るための母材となるのである。このように、素材金属1
2aの表面の難点が解消され、さらにガラスとの馴染み
のよい酸化皮膜12bが形成されることで、金属粉末射
出成形法によって形成されたアイレットを用いて気密特
性に優れる気密端子を提供できる。
【0012】また図3と図4は箱型の光素子用ヘッダー
20である。このヘッダー20も上述した気密ガラス端
子10と同様に、アイレット12を、鉄−ニッケル−コ
バルト合金(コバール)あるいは42アロイ(鉄−ニッ
ケル合金)製の金属粉末を用いて射出成形法によって成
形し、この成形体としての素材金属上にニッケルめっき
皮膜、コバルトめっき皮膜、ニッケル−コバルトめっき
皮膜、鉄−ニッケル−コバルトめっき皮膜のいずれかか
らなるめっき皮膜を形成した後、加熱処理されることに
より、めっき皮膜表面上に酸化皮膜が形成されたもので
ある。このように形状がより複雑な箱型のアイレット1
2も金属粉末射出成形法によって容易に一体成形するこ
とができる。そして図5に示すように、成形体の透孔1
8に、鉄−ニッケル−コバルト合金(コバール)あるい
は42アロイを用いてあらかじめ表面に酸化皮膜が形成
してあるリード線14をを挿入し、ガラス16で透孔1
8内を充填してリード線14を気密に封止する。やはり
アイレット12、ガラス16、リード線14は熱膨張係
数がほぼ同じ材料が用いられ,マッチド型のものに形成
される。なお、半導体素子(図示せず)はアイレット1
2内に搭載される。
【0013】また、図6や図8はアイレット12に搭載
された半導体素子を覆うキャップ22の一例であるが、
このキャップ22も同様にして上述した金属粉末射出成
形法によって製造しても良い。このキャップ22は特に
半導体素子としてCds、フォトダイオード、フォトト
ランジスタ、CCD等の光素子がアイレット12に搭載
された場合に使用されるものであり、上部には透孔18
が設けられ、当該透孔18内に光透過用のガラス16が
封着されている。キャップ22の形状も種々あり、金属
粉末射出成形法によって製造することで、製造コストや
工数の削減が可能となる。また、透孔18にガラス16
を封着する場合には、上述したアイレット12と同様に
気密特性を高めるために、まず金属粉末射出成形法によ
って成形された成形体としての素材金属12a上にニッ
ケルめっき皮膜、コバルトめっき皮膜、ニッケル−コバ
ルトめっき皮膜、鉄−ニッケル−コバルトめっき皮膜の
いずれかからなるめっき皮膜12bを形成し、次に加熱
処理してめっき皮膜表面上に酸化皮膜12cを形成し、
その後にガラス16を封着する。なお、このキャップ2
2に封着するガラス16の形状は仕様に応じて図6のよ
うなレンズ状に形成したり、図8のような板状に形成さ
れる場合もある。
【0014】
【発明の効果】本発明に係る金属粉末射出成形体によれ
ば、金属粉末射出成形法によって形成される素材金属の
難点がめっき皮膜により解消され、さらにこのめっき皮
膜により素材金属中の鉄を含む金属のガラスとの馴染み
のよい酸化皮膜を形成できるので、金属粉末射出成形体
の透孔の気密特性に優れたガラス封止が可能となる。よ
って、金属粉末射出成形法を活かして例えば気密ガラス
端子や気密ガラスキャップ等のガラス封着を必要とする
複雑な形状の金属粉末射出成形体を容易に提供すること
ができるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】気密ガラス端子の概略を示す断面図である。
【図2】アイレットの断面図である。
【図3】アイレットの他の実施形態を示す斜視図であ
る。
【図4】アイレットの他の実施形態を示す斜視図であ
る。
【図5】ガラス付着部分の要部拡大図である。
【図6】気密ガラスキャップの概略を示す斜視図であ
る。
【図7】図6の断面図である。
【図8】気密ガラスキャップの他の実施形態を示す斜視
図である。
【図9】図8の断面図である。
【符号の説明】
10 気密ガラス端子 12 アイレット 12a 素材金属 12b めっき皮膜 12c 酸化皮膜 14 リード線 16 ガラス 18 透孔
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−223072(JP,A) 特開 平1−184940(JP,A) 特開 平6−84555(JP,A) 特開 平5−290948(JP,A) 特開 平6−263477(JP,A) 特開 平4−307960(JP,A) 実開 平7−29754(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01R 9/16 101

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属粉末射出成形法により所望形状に形
    成された成形体に設けられた透孔がガラスにより気密に
    封止される金属粉末射出成形体であって、 前記成形体は鉄系合金から成り、 前記成形体にはニッケルめっき皮膜、コバルトめっき皮
    膜、ニッケル−コバルトめっき皮膜、鉄−ニッケル−コ
    バルトめっき皮膜のいずれかのめっき皮膜が形成される
    と共に、加熱処理が施されて前記成形体の素材金属の鉄
    が拡散しためっき皮膜の酸化皮膜が形成されていること
    を特徴とする金属粉末射出成形体。
  2. 【請求項2】 前記鉄系合金は鉄−ニッケル−コバルト
    合金または鉄−ニッケル合金であることを特徴とする請
    求項1記載の金属粉末射出成形体。
  3. 【請求項3】 前記めっき皮膜が2〜10μmの厚さで
    あることを特徴とする請求項1または2記載の金属粉末
    射出成形体。
  4. 【請求項4】 前記酸化皮膜が、弱還元性湿潤雰囲気を
    経た後、湿潤酸素雰囲気により形成されたものであるこ
    とを特徴とする請求項1、2または3記載の金属粉末射
    出成形体。
  5. 【請求項5】 前記加熱処理が弱還元性湿潤雰囲気中で
    800 ℃〜1000℃、30〜180分施された後、湿潤酸素
    雰囲気中で500 〜800 ℃、約20分施されたことを特徴
    とする請求項1、2、3または4記載の金属粉末射出成
    形体。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、4または5記載の金
    属粉末射出成形体の前記成形体はアイレットに成形さ
    れ、前記透孔には、鉄系合金から成り、表面に予め酸化
    皮膜が形成されたリード線が挿入されて前記ガラスによ
    り封着されて成ることを特徴とする気密ガラス端子。
  7. 【請求項7】 請求項1、2、3、4または5記載の金
    属粉末射出成形体の前記成形体はキャップに成形され、
    前記透孔には光透過用のガラスが封着されて成ることを
    特徴とする気密ガラスキャップ。
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