JP3435796B2 - 密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板の製造方法 - Google Patents
密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板の製造方法Info
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Description
に用いられる密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板の製造
方法に関するものである。
られる密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板を製造する場
合には、化成時間を短縮して化成効率を高める目的で、
活物質材料として一酸化鉛の他に鉛丹(Pb3 O4 )を
用いている。具体的には、赤色一酸化鉛(t−PbO)
を主成分としてこれに小量の金属鉛あるいは黄色一酸化
鉛(Orthorhombic−PbO:以下O−PbOと称す)を
含んだ鉛粉と鉛丹とを原料粉末として用いている。この
原料粉末を水及び希硫酸で混練して活物質ペーストを作
り、この活物質ペーストを格子体等の集電体に充填す
る。そして従来は、一般的に温度が50℃以下(主に3
5℃)の状態で熟成乾燥を行っている。従来の方法で製
造した未化成の正極板の活物質層は、熟成が完了した状
態で三塩基性硫酸鉛(Lead Tri Basic Sulfate)を主成
分とし他に酸化鉛等を含んだ多孔体を形成している。
が二酸化鉛を生成させている。しかしながら鉛丹のよう
に化成性の高い高位の鉛酸化物を添加しても、混練中に
硫酸と反応して生成した二酸化鉛は、同時に熟成中に結
晶成長する三塩基性硫酸鉛に被覆されてしまい期待され
る効果が十分に得られないことが判った。また電槽化成
の際に電槽に注液される希硫酸は、化成槽を用いて化成
する場合に用いる希硫酸と比べて比重が高いものが用い
られる。比重の高い希硫酸に従来の製造方法で製造した
未化成の正極板を漬けて化成を行った場合、熟成により
生成した三塩基性硫酸鉛から生成される二酸化鉛の結晶
は小さい。そのため初期容量は同様であっても、従来の
方法で製造した正極板を用いた蓄電池では、充放電を繰
り返すと活物質の脱落が発生しやすくなり、サイクル寿
命特性が悪くなる問題があった。また熟成中に生成する
三塩基性硫酸鉛の結晶成長に伴う体積膨張は大きい。そ
のため未化成状態で膨張した状態の正極板を含む極板群
を電槽に挿入することになり、極板群の挿入がしずらく
なる問題が発生するのと同時に、極板群に加わる初期の
群加圧が大きくなり過ぎて、活物質中への電解液の浸透
が妨害されてガス抜けがスムーズに行われない問題があ
った。
蓄電池の化成効率を高めて、しかも蓄電池の寿命を大幅
に延ばすことができる密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極
板の製造方法を提供することにある。
密閉形鉛蓄電池に用いるペースト式正極板の製造方法を
改良の対象とする。本発明では、まず一酸化鉛と金属鉛
とを含む混合粉末と水及び希硫酸とを遊離硫酸が実質的
に存在しなくなる状態まで混練して混練物を作る。なお
遊離硫酸が実質的に存在しないようにするためには、少
なくとも10分以上混練を行って混練物のpHを十分に
上昇させるのが好ましい。次に比重の高い希硫酸と反応
して硫酸鉛と二酸化鉛を生成する高位の鉛酸化物を前記
混練物と混練して活物質ペーストを作る。そして活物質
ペーストを集電体に充填した後、活物質ペーストを温度
65℃ないし120 ℃,湿度80%以上の雰囲気で熟成乾燥し
て未化成の蓄電池用ペースト式正極板を製造する。材料
として用いる一酸化鉛としては、赤色一酸化鉛(t−P
bO)が好ましいが、これに限定されるものではない。
また高位の鉛酸化物としては、従来と同様に鉛丹を用い
てもよいが、α−PbOx(1.34<x<1.57)を用いる
こともできる。特に、鉛丹とα−PbOx(1.34<x<
1.57)を混合したものを用いると、α−PbOxがα−
PbO2 となって、サイクル寿命特性が更に改善され
る。また活物質ペースト中に4価の錫酸化物を100 ppm
以上添加するのが好ましい。
硫酸とを遊離硫酸が実質的に存在しなくなる状態まで混
練して得た混練物に、鉛丹やα−PbOx(1.34<x<
1.57)等の高位の鉛酸化物を混合しても、高位の鉛酸化
物は希硫酸と実質的に接触することがない。したがって
熟成が終了した段階において、高位の鉛酸化物は活物質
中にそのまま残っている。集電体に充填した活物質ペー
ストを温度65℃ないし120 ℃,湿度80%以上の高温多湿
雰囲気で熟成乾燥すると、希硫酸で混練された一酸化鉛
と金属鉛の大部分は、発熱を伴って四塩基性硫酸鉛(Le
ad Tetra Basic Sulfate)となり、未化成の活物質層は
四塩基性硫酸鉛を主成分とし他に鉛丹やα−PbOx
(1.34<x<1.57)等の高位の鉛酸化物を含む酸化鉛を
含んだ多孔体を形成する。
いて極板群を作り、電槽化成を行うと、従来の方法で製
造した正極板と比べて正極板の体積膨張は大きくなる。
これは電槽化成では高い比重の希硫酸を用いるために、
未化成の活物質層中の四塩基性硫酸鉛も容易に結晶の大
きな二酸化鉛を生成するからである。また電槽化成のた
めに電槽に注液された高比重の硫酸と接触した未化成の
活物質層中の鉛丹やα−PbOx(1.34<x<1.57)等
の高位の鉛酸化物は、結晶歪が大きく化成性の良好な硫
酸鉛と同時に電気電導性が良好でしかも結晶核として良
好な二酸化鉛を生じるからである。したがって本発明の
方法により製造した正極板を用いると、化成中に極板群
が積層方向に膨張するため、この膨張により必要な群加
圧を得ることができる。そのため本発明の方法により製
造した正極板を用いると、化成前の極板群の積層方向の
寸法を小さくすることができ、従来極板群を電槽に挿入
する際に必要とされた大きな圧縮力を軽減またはなくす
ことが可能になった。また初期加圧を低くすることがで
きるため、化成時時において電解液が浸透し易くなり、
ガス抜けがスムーズになる利点がある。
成の活物質層中には、化成時まで鉛丹等の高位の鉛酸化
物がそのまま存在しているので、電槽化成時において電
解液の浸透性が良好になって電気化学的酸化が容易に起
こりやすくなる。
下に述べる正極板は、特に注記しない場合には、集電体
として鉛−錫−カルシウム合金からなる連続鋳造格子体
を用いる。正極板の寸法は86×56×2.4mmであ
り、負極板の寸法は85×56×1.6mmであった。
なお各蓄電池において負極板はそれぞれ同一のものを使
用した。
化鉛(t−PbO)の粉体と水及び希硫酸とを混練して
作った活物質ペーストを格子体に充填した後、35℃−
90%の雰囲気中で6時間熟成を行って乾燥し、未化成
の正極板を得た。この未化成の正極板と負極板とを電解
液保持体を構成するガラス繊維不織布を介して積層して
極板群を作成し、この極板群を用いて電槽化成により比
較例の密閉形鉛蓄電池Aを作った。電槽化成の条件は、
一般的な条件と同じである。
化鉛(t−PbO)と金属鉛の混合鉛粉30%と、α−
PbOxを20%含む鉛丹とα−PbOxの混合物70
%とを一緒に水と希硫酸とで混練して活物質ペーストを
作った。そしてこの活物質ペーストを格子体に充填した
後、35℃−90%の雰囲気中で6時間熟成を行って乾
燥し、未化成の正極板を得た。この未化成の正極板と負
極板とを電解液保持体を構成するガラス繊維不織布を介
して積層して極板群を作成し、この極板群を用いて電槽
化成により比較例の密閉形鉛蓄電池Bを作った。
化鉛(t−PbO)と金属鉛の混合鉛粉30%と、α−
PbOxを20%含む鉛丹とα−PbOxの混合物70
%とを一緒に水と希硫酸とで混練して活物質ペーストを
作った。そしてこの活物質ペーストを格子体に充填した
後、35℃−98%の雰囲気中で48時間熟成を行い乾
燥し、未化成の正極板を得た。この未化成の正極板と負
極板とを電解液保持体を構成するガラス繊維不織布を介
して積層して極板群を作成し、この極板群を用いて電槽
化成により比較例の密閉形鉛蓄電池Cを作った。
化鉛(t−PbO)と金属鉛の混合鉛粉30%と、α−
PbOxを20%含む鉛丹とα−PbOxの混合物70
%とを用意した。そしてまず混合鉛粉だけを水と希硫酸
とで混練して、希硫酸を添加した10分後に、その中に
混合物を投入し、更に混練して活物質ペーストを作っ
た。この活物質ペーストを格子体に充填した後、35℃
−98%の雰囲気中で48時間熟成を行って乾燥し、未
化成の正極板を得た。この未化成の正極板と負極板とを
電解液保持体を構成するガラス繊維不織布を介して積層
して極板群を作成し、この極板群を用いて電槽化成によ
り本発明の実施例の密閉形鉛蓄電池Dを作った。
化鉛(t−PbO)と金属鉛の混合鉛粉30%と、α−
PbOxを20%含む鉛丹とα−PbOxの混合物70
%とを用意した。そしてまず混合鉛粉だけを水と希硫酸
とで混練して、希硫酸を添加した10分後に、その中に
混合物を投入し、更に混練して活物質ペーストを作っ
た。この活物質ペーストを格子体に充填した後、80℃
−98%の雰囲気中で6時間熟成を行って乾燥し、未化
成の正極板を得た。この未化成の正極板と負極板とを電
解液保持体を構成するガラス繊維不織布を介して積層し
て極板群を作成し、この極板群を用いて電槽化成により
本発明の実施例の密閉形鉛蓄電池Eを作った。
−2.4%Sn合金を使用して作り、それ以外は蓄電池
Eと同様にして本発明の実施例の密閉形鉛蓄電池Fを作
った。
−2.4%Sn合金を使用したエキスパンド格子を用い
た。それ以外は、電池Eと同様にして本発明の実施例の
蓄電池Gを作った。
−2.4%Sn合金を使用したエキスパンド格子を用い
た。そして活物質ペーストに二酸化スズを0.1wt%添
加した。それ以外は、電池Eと同様にして本発明の実施
例の密閉形鉛蓄電池Hを作った。
期容量試験,サイクル寿命試験,トリクル試験を行っ
た。試験条件は、初期容量試験は1A放電(終止電圧
1.75V)で行い、サイクル寿命試験は1A放電(終
止電圧1.75V)←→2.45V定電圧3時間(制限
電流1.4A)とした。また、トリクル電流試験は2.
275Vで過充電を行い1週間目の電流値で評価を行っ
た。
正極板を用いた蓄電池E〜Hでは初期容量が5%〜10
%増加した。図2に示すようにサイクル特性も従来の方
法で製造した正極板を用いた蓄電池に比べて長くなる傾
向にある。また、図3に示すようにトリクル電流値も減
少した。総合して見ると、本発明の方法で製造した正極
板を用いた蓄電池は、初期容量及びサイクル特性に優れ
且つトリクルユースに優れている。
鉛とを含む混合粉末と水及び希硫酸とを遊離硫酸が実質
的に存在しなくなる状態まで混練して得た混練物に、鉛
丹やα−PbOx(1.34<x<1.57)等の高位の鉛酸化
物を混合した活物質ペーストを用い、集電体に充填した
活物質ペーストを温度65℃ないし120 ℃,湿度80%以上
の高温多湿雰囲気で熟成乾燥すると、電槽化成される密
閉形鉛蓄電池の化成効率を高めて、しかも蓄電池の寿命
を大幅に延ばすことができる利点がある。
電池と従来の方法により製造した正極板を用いた蓄電池
の初期容量比較図である。
電池と従来の方法により製造した正極板を用いた蓄電池
のサイクル寿命特性図である。
電池と従来の方法により製造した正極板を用いた蓄電池
のトリクル電流比較図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 電槽化成用の密閉形鉛蓄電池に用いるペ
ースト式正極板の製造方法であって、 一酸化鉛と金属鉛とを含む混合粉末と水及び希硫酸とを
遊離硫酸が実質的に存在しなくなる状態まで混練して混
練物を作り、 比重の高い希硫酸と反応して硫酸鉛と二酸化鉛を生成す
る高位の鉛酸化物を前記混練物と混練して活物質ペース
トを作り、 前記活物質ペーストを集電体に充填し、 前記集電体に充填した前記活物質ペーストを温度65℃な
いし120 ℃,湿度80%以上の雰囲気で熟成乾燥して未化
成の蓄電池用ペースト式正極板を製造することを特徴と
する密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板の製造方法。 - 【請求項2】 前記一酸化鉛が主として赤色一酸化鉛か
らなり、前記高位の鉛酸化物が鉛丹及びα−PbOx
(1.34<x<1.57)の少くとも一方からなる請求項1に
記載の密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板の製造方法。 - 【請求項3】 前記活物質ペースト中に4価の錫酸化物
を100 ppm 以上添加したことを特徴とする請求項1に記
載の密閉形鉛蓄電池用ペースト式正極板の製造方法。
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