JP3433160B2 - 圧電/電歪デバイス - Google Patents

圧電/電歪デバイス

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JP3433160B2 JP2000200038A JP2000200038A JP3433160B2 JP 3433160 B2 JP3433160 B2 JP 3433160B2 JP 2000200038 A JP2000200038 A JP 2000200038A JP 2000200038 A JP2000200038 A JP 2000200038A JP 3433160 B2 JP3433160 B2 JP 3433160B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、圧電/電歪素子
の変位に基づいて作動する可動部を備えた圧電/電歪デ
バイス、もしくは可動部の変位を圧電/電歪素子により
検出できる圧電/電歪デバイスに関し、詳しくは強度、
耐衝撃性、耐湿性に優れ、効率よく、可動部を特定軸の
方向にほぼ平行に大きく作動させることができる圧電/
電歪デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】 近年、光学や磁気記録、精密加工等の
分野において、サブミクロンオーダーで光路長や位置を
調整可能な変位素子が必要とされており、圧電/電歪材
料(たとえば強誘電体等)に電圧を印加したときに惹起
される逆圧電効果や電歪効果による変位を利用した変位
素子の開発が進められている。たとえば図27に示すよ
うに、圧電/電歪材料からなる板状体に孔部28を設け
ることにより、固定部25と可動部24とこれらを接続
する梁部26とを一体的に形成し、さらに梁部26に電
極層22を設けた圧電アクチュエータ21が開示されて
いる(特開平10−136665号公報)。
【0003】 アクチュエータ21においては、電極層
22に電圧を印加すると、逆圧電効果や電歪効果により
梁部26が固定部25と可動部24とを結ぶ方向に伸縮
するため、可動部24を板状体の面内において弧状変位
または回転変位させることが可能である。一方、特開昭
63−64640号公報には、バイモルフを用いたアク
チュエータに関して、そのバイモルフの電極を分割して
設け、分割された電極を選択して駆動することにより詳
細な位置決めを高速に行う技術が開示され、たとえば、
2枚のバイモルフを対向させて使用する構造がその明細
書第4図に示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記
アクチュエータ21においては、圧電/電歪材料の伸縮
方向(すなわち、板状体の面内方向)の変位をそのまま
可動部に伝達していたため、可動部24の作動量が小さ
いという問題があった。また、アクチュエータ21は、
すべての部分を脆弱で比較的重い材料である圧電/電歪
材料によって構成していたため、機械的強度が低く、ハ
ンドリング性、耐衝撃性、耐湿性に劣ることに加え、ア
クチュエータ21自体が重く、動作上、有害な振動(た
とえば、高速作動時の残留振動やノイズ振動)の影響を
受けやすいという問題点があった。
【0005】 このアクチュエータ21においては、上
記問題点を解決するため、孔部28に柔軟性を有する充
填材を充填することが提案されているが、充填材を使用
した場合には逆圧電効果や電歪効果による変位の効率が
低下してしまうことは明らかである。
【0006】 一方、特開昭63−64640号公報の
第4図が示すものは、中継部材とバイモルフ並びにヘッ
ドとバイモルフとの接合形態において、共に歪みを発生
するいわゆる圧電/電歪作動部位がそれぞれの接合部位
を跨ぐ構造、すなわち、中継部材とヘッドにわたってバ
イモルフが連続的に構成されている。その結果、バイモ
ルフを作動させた際、中継部材とバイモルフとの接合部
を支点とした変位動作と、ヘッドとバイモルフとの接合
点を支点とした変位動作が互いに干渉しあい、変位の発
現を阻害し、ヘッド自体を外空間に対して効果的に変位
させるような作用は得られない構造であった。加えて、
特開昭63−64640号公報が開示するアクチュエー
タは、変位発生部材と、いわゆるフレーム部材(中継部
材等)とを別々に準備して、接着合体させた構造である
ことから、バイモルフの作動に従って、フレームとバイ
モルフとの接合状態が経時的に変化しやすい構造であ
り、変位のドリフト、はがれ等を引き起こしやすい構造
でもあった。さらにバイモルフと中継部材との接合部位
ならびにヘッドとバイモルフとの接合部位、すなわち変
位部材の支持部に接着剤が介在する構造は、支持部自体
の剛性が低く、高速動作に必要な高共振周波数化が困難
な構造でもあった。
【0007】 勿論、本発明者等は、このような問題を
解決できる圧電/電歪デバイスについて、特願平11−
375581号明細書などにおいて提案しているが、可
動部の変位量を一段と増大させ、かつ、可動部の変位軌
跡を固定部に対してほぼ平行とすることができる圧電/
電歪デバイスが、特に磁気記録の分野、光学分野での精
密位置決めデバイスとして望まれている。
【0008】 本発明は、このような現状に鑑みてなさ
れたものであって、その目的とするところは、共振周波
数を低下させることなく、可動部の変位量を一段と増大
させることができ、また、可動部の変位軌跡を固定部に
対してほぼ平行とすることができる変位素子、および可
動部の振動を精度よく検出することができるセンサ素子
を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明によ
れば、第一に、圧電/電歪素子の変位により駆動する駆
動部と、当該駆動部の駆動に基づいて作動する可動部
と、前記駆動部および可動部を支持するための固定部
と、前記可動部は当該駆動部を介して前記固定部と結合
され、かつ、当該駆動部の内壁と可動部の内壁と固定部
の内壁とにより形成される孔部とからなる圧電/電歪デ
バイスであって、前記駆動部は、相対向する一対の薄板
部と、当該薄板部のうち少なくとも一つの薄板部の少な
くとも外表面の一部に配置された一対またはそれ以上の
電極と圧電/電歪層からなる圧電/電歪作動部位を含む
圧電/電歪素子とからなり、当該固定部と当該可動部と
を結ぶ方向における前記圧電/電歪作動部位の一方の端
部が、前記固定部または可動部上に存在し、かつ、前記
圧電/電歪作動部位の他方の端部が、前記薄板部上に配
置されているとともに、前記圧電/電歪素子の少なくと
も圧電/電歪層の一方の端部は、前記固定部または可動
部上に存在し、他方の端部は薄板部上に配置されてお
り、前記薄板部を構成する材料のヤング率Y1と前記圧
電/電歪層を構成する材料のヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する関係を有することを特徴とする圧電/電歪デ
バイスが提供される。この際、上記のヤング率の関係を
満たす範囲内において、上記可動部、薄板部、固定部は
セラミックスもしくは金属を用いて構成されていてもよ
く、また、各部をセラミックス材料同士で構成すること
もできるし、あるいは金属材料同士で構成することもで
きるし、さらには、セラミックスと金属の材料とから製
造されたものを組み合わせた、ハイブリッドとして構成
することもできる。
【0010】 また、前記可動部、薄板部および固定部
がセラミックグリーンシート積層体を同時焼成すること
により一体的に形成したものであることを特徴とする圧
電/電歪デバイス、前記圧電/電歪素子が膜状の圧電/
電歪素子を直接薄板部と可動部または固定部上に形成
し、これを焼成して一体的に形成したものであることを
特徴とする圧電/電歪デバイス、および、前記膜状の圧
電/電歪素子の圧電/電歪層がガラスフリットを含まな
いものであることを特徴とする圧電/電歪デバイスが提
供されることとなる。
【0011】 さらに、変位した状態での前記可動部に
おける当該固定部と対向する側の一辺と、変位前の前記
可動部における前記同一辺とのなす角度θに対して下
式、 0°≦θ≦0.1° を満足するように可動部が変位するものである圧電/電
歪デバイス、前記圧電/電歪作動部位の内前記薄板部上
に配置された部分の長さLが、前記薄板部の長さeと前
記薄板部の厚さdとの関係において下式、 30≦(L/e)×100≦100−d/2.5 を満足することを特徴とする圧電/電歪デバイス、非変
位状態の当該可動部における当該固定部と対向する側の
一辺の中点から前記固定部におろした垂線上に中心を持
ち、かつ前記非変位状態における可動部の上記中点と当
該駆動部の作動によって変位した可動部における上記中
点とを通る仮想円において、前記仮想円の半径rと当該
薄板部の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦100 を満足するように可動部が変位するものであり、かつ、
前記圧電/電歪素子の変位により駆動させたとき、前記
薄板部に変位の変曲点が存在することを特徴とする圧電
/電歪デバイスが提供される。
【0012】 さらに、本発明においては、前記薄板部
上に配置された前記圧電作動部位の長さLが、前記薄板
部の長さeと前記薄板部の厚さdとの関係において下
式、 40≦(L/e)×100≦100−d/1.5 を満足することを特徴とする圧電/電歪デバイス、非変
位状態の当該可動部における当該固定部と対向する側の
一辺の中点から前記固定部におろした垂線上に中心を持
ち、かつ前記非変位状態における可動部の上記中点と当
該駆動部の作動によって変位した可動部における上記中
点とを通る仮想円において、前記仮想円の半径rと当該
薄板部の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦20 を満足するように可動部が変位するものであり、かつ、
薄板部の変位の変曲点が、当該圧電/電歪作動部位が存
在している固定部もしくは可動部と薄板部との接合部か
ら前記薄板部長さの1/2以上離れた位置に存在するこ
とを特徴とする圧電/電歪デバイス、および、当該孔部
の厚みaと前記薄板部の長さeとがe/aで表される割
合において、0.1〜2とされ、かつ前記孔部厚みaと
当該薄板部の幅bとがa/bで表される割合において
0.05〜2であることを特徴とする圧電/電歪デバイ
スが提供される。
【0013】 また、本発明の圧電/電歪デバイスは、
上述のごとく、可動部、薄板部、および固定部が、一体
的に形成されたセラミックスからなるものが好ましく、
可動部、薄板部、および固定部が、完全安定化ジルコニ
アを主成分とする材料あるいは部分安定化ジルコニアを
主成分とする材料からなるものがさらに好ましく、少な
くとも可動部、薄板部、および固定部は、セラミックグ
リーン積層体を焼成したものが特に好ましい。なぜなら
ば、可動部、薄板部ならびに固定部との接合部位におい
て、焼成一体化による境界のない構造とすることがで
き、それら箇所の経時的な長期信頼性が高くできること
によるほか、デバイスとしての変位の経時変化としても
ドリフト等の現象をきわめて小さく押さえ、高い変位を
再現性よく発現できるからである。一方、前述したよう
な金属材料で少なくとも薄板部を構成した場合には、ハ
ンドリング性、耐衝撃性に優れたデバイスの提供ができ
る。
【0014】 なお、本願に従う構造のデバイスを製造
するにあたっては、すべてを焼成一体化したもののほ
か、薄板部の相対向する方向において分割した積層体、
すなわち一つの薄板部と将来直方体状の固定部ならびに
可動部となる部材からなるセラミック積層体を準備し、
そのセラミック積層体の薄板部と固定部または可動部の
所定の位置に圧電/電歪素子をスクリーン印刷により形
成し、焼成して前記セラミック積層体と一体化してなる
焼成構造物を少なくとも二つ準備して、その焼成構造物
を、薄板部同士が互いに離れるように、すなわち前述の
将来固定部および可動部となる部位同士をガラスや有機
樹脂等の接着剤等を用いて合わせるように接合すること
によっても得ることができる。しかしながら、可動部、
薄板部、および固定部を同時焼成により一体化し、つい
で、その焼成体の上にて圧電/電歪素子膜を形成し、そ
の後このものを焼成一体化し、製造したものの方が、第
三者が介在する接合部といういわゆる構造体として不連
続な部分を有しないため、駆動部の作動によってデバイ
スに応力が印加されても安定性、信頼性の点で優れるも
のとなり、望ましい。
【0015】 また、本発明の圧電/電歪デバイスにお
いては、圧電/電歪素子を構成する圧電/電歪層が、ジ
ルコン酸鉛、チタン酸鉛、およびマグネシウムニオブ酸
鉛の混合物を主成分とする材料からなるものが好まし
く、チタン酸ナトリウムビスマスを主成分とする材料か
らなるものも好ましい。なお、使用する原材料の詳細に
ついては、後述する。
【0016】 なお、本明細書において、用語「ほぼ平
行に作動する」とは、図26において、デバイスを駆動
させていない状態での可動部と両薄板部との接合部位に
おける孔部側の左右の両端部をそれぞれA点、B点と
し、所定電圧で駆動させた状態での当該両端部の位置を
C点、D点としたとき、上記D点を通り、線分ABと平
行な線分と、線分CDとが形成する角度θが下式 0°≦θ≦0.1° を満足する範囲で変位することをいう。この値の測定
は、上記各点での変位量をレーザードップラー振動計
(グラフテック(株)製)を使用して測定し、その変位
量から算出して求める。
【0017】 本発明において、膜状とは、後述の通
り、厚膜もしくは薄膜形成手法により形成されてなるも
のをいい、通常、圧電板で構成される板状の圧電/電歪
素子を有機樹脂系の接着剤で貼り付けてなるものとは区
別されるものである。また、本明細書にいう「圧電/電
歪デバイス(以下、単に「デバイス」という。)」と
は、圧電/電歪材料により電気エネルギーと機械的エネ
ルギーとを相互に変換する素子を包括する概念である。
従って、各種アクチュエータや振動子等の能動素子、特
に逆圧電効果や電歪効果による変位を利用した変位素子
として好適に用いられるものであるが、加速度センサ素
子や衝撃センサ素子等の受動素子としても使用可能であ
る。
【0018】 圧電/電歪素子とは、一対またはそれ以
上の電極と圧電/電歪層から構成され、伝達される信号
に基づき、駆動し、その動きを薄板部に伝える機能を果
たす素子をいう。同素子において、圧電/電歪作動部位
とは、可動部が与えられた信号に従い所定の運動をする
ように、圧電/電歪素子を実質的に動かす部位のことを
いい、一対またはそれ以上の電極と圧電/電歪層とが相
互に重なり合う部分から構成されている。なお、多層の
圧電/電歪作動部位を有するとは、薄板部の主面に対し
て垂直な方向、つまり薄板部厚み方向に、複数の圧電/
電歪作動部位が、積層形態で配設されていることを示
す。そして各々の圧電/電歪作動部位を構成する各電極
は、作動部位間で共有されている形態、もしくは共通化
されている形態をとっていてもよく、独立した形態をと
っていてもよい。それぞれの作動部位を構成する各電極
には、所定の信号が伝達され、各作動部位を構成する圧
電/電歪層に電界が作用する。
【0019】 さらに、「圧電」というときは「圧電お
よび/または電歪」を意味するものとする。また、「長
さ」とは可動部と固定部を結ぶ方向、すなわち、図中Z
軸方向の距離、「幅」とは孔部貫通方向、すなわち、図
中Y軸方向の距離、「厚み」とは圧電/電歪素子と薄板
部との積層方向、すなわち図中X軸方向の距離をいうも
のとする。なお、図面中においては、同一または類似の
機能を有するものは、原則として、同一の符号により標
識するものとする。
【0020】 また、変曲点とは、圧電/電歪素子の作
動によって生じた薄板部の曲がりにおいて、その曲がり
の方向が変化する点をいい、図2において、左の圧電/
電歪素子に着目してこれを説明すると、変曲点と表示し
た箇所より下方では、曲がりの頂点は孔部方向に向き、
変曲点と表示した箇所より上方では、曲がりの頂点は外
側方向に向いて、曲がりを形成しており、この境界点を
いう。通常、変曲点は、薄板部上に形成された一対また
はそれ以上の電極と圧電/電歪層とが相互に重なり合う
部分からなる圧電作動部位の先端部近傍に存在する。
【0021】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の圧電/電歪デバ
イスについて図面を参照しながら説明する。ただし、本
発明は図示の実施例に限定されるものではない。
【0022】 図1に模式的に示すように、本発明に係
るデバイスは、X軸側にほぼ平行に、しかも従来のこの
種のデバイスとしては、きわめて大きく可動部を駆動す
る機構を有するものである。このように大きく特定方
向、図1の場合においては、X軸方向に可動部4が作動
するのは、当該一対の電極と圧電/電歪層とからなる圧
電/電歪作動部位2’を含む圧電/電歪素子2の、固定
部5と可動部4とを結ぶ方向における圧電/電歪作動部
位2’の一方の端部が、前記固定部5または可動部4上
に存在し、かつ、前記圧電/電歪作動部位2’の他方の
端部が、薄板部6、7上に配置されているとともに、前
記圧電/電歪素子2の少なくとも圧電/電歪層の一方の
端部は、前記固定部5または可動部4上に存在し、他方
の端部は薄板部6、7上に配置されており、かつ、前記
薄板部6、7を構成する材料のヤング率Y1と前記圧電
/電歪層2aを構成する材料のヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する関係を有しているからである。
【0023】 これを具体的に説明すれば、図2に示し
たように、当該一対の電極2b、2cと圧電/電歪層2
aとを含む圧電/電歪素子2の一方の端部と、圧電/電
歪作動部位2’の一方の端部は、前記固定部5上に存在
し、圧電/電歪作動部位2’の他方の端部側が、前記薄
板部6、7上の少なくとも一部に延びて形成されてお
り、また、同他方の端部側の圧電/電歪作動部位2’と
圧電/電歪層2aの端部が、薄板部6、7の全長を超え
ない範囲内に留まるように形成されており、かつ、前記
薄板部6、7を構成する材料のヤング率Y1と前記圧電
/電歪層2aを構成する材料のヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する関係を有しているからである。なお、図2の
例においては、当該一対の電極2b、2cと圧電/電歪
層2aとを含む圧電/電歪素子2の一方の端部と、同圧
電/電歪作動部位2’の一方の端部は、前記固定部5上
に、それぞれ存在する態様となっているが、上述のよう
に、それぞれが可動部4上に存在していてもよいことは
いうまでもない。
【0024】 すなわち、前述の構造において、薄板部
のヤング率を圧電/電歪層のヤング率よりも大きなもの
とすることにより、圧電/電歪素子の変位を効果的に駆
動部の屈曲変位に変換できるため、その屈曲変位によっ
て駆動される可動部の変位を大きくすることができるこ
とに加え、可動部をほぼ平行に変位させることが容易と
なるのである。逆に薄板部のヤング率が小さい場合、可
動部の変位が小さくなるばかりではなく、Y軸へのあお
り成分や、Z軸方向への変位成分を増し回転モードの変
位を生じやすくしてしまい、X軸方向への一軸的な変位
を支配的とすることを困難にするのである。その一方
で、薄板部のヤング率が圧電/電歪層のヤング率の20
倍を越えるようになると、再び薄板部が屈曲しにくくな
り、可動部の変位を小さくするという現象が生じるた
め、上記式に従う範囲で材料構成を選択することが必要
である。
【0025】 ところで、上記の圧電/電歪デバイスに
おいては、変位した状態での前記可動部における当該固
定部と対向する側の一辺と、変位前の前記可動部におけ
る前記同一辺とのなす角度θが下式、 0°≦θ≦0.1° を満足する範囲内で可動部が変位するように構成するこ
とが好ましい。このように可動部を変位させるには、上
記のような各部の構成を採用すると共に、薄板部のヤン
グ率と圧電/電歪層のヤング率とを上記の通りの範囲内
で適宜選択することにより達成され、より大きな変位が
得られることとなる。
【0026】 次に、前記圧電/電歪作動部位2’の内
薄板部6、7上に配置された部分の長さLと、前記薄板
部6、7の長さeと前記薄板部6、7の厚さdとの関係
について、図3を参照しながら説明することとする。同
図は、当該圧電/電歪素子2の前記薄板部6、7上に配
置された圧電作動部位の長さ「L」と薄板部の長さ
「e」と、前記薄板部6、7の厚さ「d」との関係を説
明するための図である。当該圧電/電歪素子2のうち、
前記圧電/電歪作動部位2’の内薄板部6、7上に配置
された部分の長さLと、薄板部6、7の長さeと、前記
薄板部6、7の厚さdとが下式、 30≦(L/e)×100≦100−d/2.5 を満足するように、当該圧電/電歪素子2の圧電/電歪
作動部位2’の薄板部6、7上の部分の長さLと、特定
の厚さdと特定の長さeとを有する薄板部6、7とを配
置することにより、当該圧電/電歪素子2の動きを確実
に薄板部6に伝えることができるとともに、効率的に薄
板部6、7を屈曲させ、結果として、可動部4をほぼ平
行に大きく変位させることが可能となるのである。な
お、図3に示した態様においては、圧電/電歪素子2に
おける圧電/電歪作動部位2’の一方の端部が、固定部
5上に形成されているが、勿論、本発明のデバイスにお
いては、使用の態様によっては、圧電/電歪素子2にお
ける圧電/電歪作動部位2’の一方の端部が、可動部4
上に形成されていてもよい。
【0027】 本発明の別の好ましい態様の一つであ
る、前記薄板部6上に変位の変曲点が存在することを特
徴とする圧電/電歪デバイスについて、図1を参照しな
がら説明することとする。この態様においては、上述の
式 30≦(L/e)×100≦100−d/2.5 を満足するようにデバイスを構成し、かつ、非変位状態
の当該可動部4における当該固定部5と対向する側の一
辺の中点から前記固定部5におろした垂線上に中心を持
ち、かつ前記非変位状態における可動部4の上記中点と
当該駆動部3の作動によって変位した可動部4における
上記中点とを通る仮想円において、前記仮想円の半径r
と当該薄板部6の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦100 を満足するように可動部4を変位させるものであり、か
つ、前記圧電/電歪素子2の変位によりこのデバイスを
駆動させたとき、可動部4を変位させるように屈曲変位
する前記薄板部6において、その屈曲形態の変位に、変
位の変曲点がその薄板部上に存在するように構成するこ
とにより、ほぼ平行でかつ大きな変位が得られることと
なる。具体的には、(L/e)×100の値に応じて、
Y1/Y2の値を上述の範囲内で選定することとなる。
【0028】 図1においては、記号Aは、デバイスを
駆動させていない状態における可動部4のX軸方向にお
ける中点を、記号A’はデバイスを駆動させた状態にお
ける可動部4のX軸方向における中点を示す。デバイス
を駆動させていない状態における可動部4のX軸方向に
おける中点Aの座標と、所定電圧で駆動した場合の可動
部4のX軸方向における中点A’の座標を求め、可動部
4の変位軌跡を上記AとA’との2点を通る円に近似さ
せて、その中心をデバイスを駆動させていない状態の、
前記可動部4の点Aから固定部へ引いた垂線上にあると
仮定のもとに、上記の仮想円の半径rを求める。かくし
て求めた仮想円の半径rと、デバイスを駆動させていな
い状態における薄板部6の長さeとの比、e/rが下
式、 0≦e/r≦100 を満足させる運動を可動部4がするとき、可動部4の先
端の表面は、固定部5の下端の表面とほぼ平行、かつ、
変位中においても、可動部4と固定部5との間の距離を
実質的に変えることのない状態で変位することとなる。
こうすることで、より大きな変位が得られる。そのとき
の変曲点は、通常は、薄板部6上に配置された圧電/電
歪作動部位2’の末端近傍の薄板部6に存在することと
なる。
【0029】 さらに別の好ましい態様であるデバイス
について、図3を参照しながら説明する。この態様にお
いては、前記圧電/電歪作動部位2’の内薄板部6、7
上に配置された部分の長さLが、前記薄板部6、7の長
さeと前記薄板部6、7の厚さdとの関係が下式、 40≦(L/e)×100≦100−d/1.5 を満足するように構成されている。すなわち、この態様
においては、(前記圧電/電歪作動部位2’の内薄板部
6、7上に配置された部分の長さL/前記薄板部6、7
の長さe)×100が、40以上、換言すれば、前記圧
電/電歪作動部位2’の内薄板部6、7上に配置された
部分の長さLを、前記薄板部6、7の長さeの少なくと
も40%の長さを有するように構成すると共に、前記薄
板部6、7の厚さdとの関係では、≦100−d/1.
5を満たすように前記薄板部6、7の厚さdを選定する
ことにより、ほぼ平行な変位をするものであることを示
す。
【0030】 また、図2は、さらに別の態様のデバイ
スを説明するための図である。この態様においては、上
述の式、 40≦(L/e)×100≦100−d/1.5 を満足するようにデバイスを構成し、かつ、後述するよ
うに、変位の変曲点が、当該圧電/電歪作動部位2’が
存在している固定部5もしくは可動部4と薄板部6、7
との接合部から前記薄板部6、7の長さの1/2以上離
れた薄板部6、7の位置に位置するように構成するとと
もに、デバイス非変位状態の当該可動部4における当該
固定部5と対向する側の一辺の中点から前記固定部5に
おろした垂線上に中心を持ち、かつ前記非変位状態にお
ける可動部4の上記中点と当該駆動部3の作動によって
変位した可動部における上記中点とを通る仮想円におい
て、前記仮想円の半径rと当該薄板部6、7の長さeと
の関係が下式、 0≦e/r≦20 を満足するように可動部4を変位させるものである。
【0031】 上記の様に、仮想円の半径rと当該薄板
部6、7の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦20 を満足するように運動するためには、図2(a)中の符
号「e」で示される薄板部6、7の長さと、図2(b)
中の「Li」で示される薄板部6、7と固定部5との接
合点から変曲点までの距離との間に、Li/e≧0.5
を満足させる関係が存在するように、(L/e)×10
0の値に応じて、Y1/Y2の値を上述の範囲内で適宜
選定すればよい。この構成により、駆動力を高くしつ
つ、変位に対して有利な構造、すなわち、X軸に対して
動きやすい構造とすることで、より大きな変位が得られ
ることとなる。
【0032】1.デバイスの実施態様 次に、本発明に係るデバイスの代表的な例について、図
4〜図6を参照しながら説明する。図4について説明す
る。図4に示した実施態様においては、先ず、第一電極
2cを、固定部5の末端に近い位置から可動部4に向か
って薄板部6、7の全長を超えない範囲内に同薄板部
6、7を覆うように形成する。ついで、その上に、圧電
/電歪層2aを固定部5の中程の位置から可動部4に向
かって薄板部6、7の全長を超えない範囲で、かつ、上
記第一電極2cを完全に覆うように形成する。ついでそ
の上に、第二電極2bを、一方の端部が、固定部5上に
形成された圧電/電歪層2aの端部に近い位置から、薄
板部6、7上に位置する他端部が第一電極2cと同位置
となるよう形成する。さらに、固定部5上に存在する第
一電極2cおよび第二電極2bの上に、それぞれ端子電
極10を形成する。
【0033】 本発明においては、可動部4、固定部
5、薄板部6及び7の全体をセラミックスもしくは金属
を用いて構成されたもののほか、セラミックスと金属の
材料で製造されたものを組み合わせたハイブリッド構造
としてもよい。また、各部を有機樹脂、ガラス等の接着
剤で接着してなる構造、セラミックグリーン積層体を焼
成により一体化してなるセラミック一体構造、ロウ付
け、半田付け、共晶接合もしくは溶接等で一体化した金
属一体構造等の構成を採用することができ、好ましくは
セラミックグリーン積層体を焼成により一体化したセラ
ミック積層体で可動部4、固定部5、薄板部6及び7を
構成することが望ましい。そして、圧電/電歪素子2
は、後述のとおり別体として圧電/電歪素子2を準備し
て、可動部4、固定部5、薄板部6及び7の所定の位置
に有機樹脂、ガラス等の接着剤や、ロウ付け、半田付
け、共晶接合等で貼り付けられるほか、膜形成法を用い
ることにより、前記貼り付けではなく直接前記可動部
4、固定部5、薄板部6及び7の所定位置に形成される
こととなる。
【0034】 かくして、固定部5と可動部4とを結ぶ
方向における、一対またはそれ以上の電極2b、2cと
圧電/電歪層2aからなる圧電/電歪作動部位2’の一
方の端部は、前記固定部5上に存在し、前記圧電/電歪
作動部位2’の他方の端部側は、前記薄板部6、7上の
少なくとも一部に延びて形成されており、かつ、同他方
の端部側の圧電/電歪作動部位2’および圧電/電歪層
2aの端部は、薄板部6、7の全長を超えない範囲内に
留まるように配置された構成を有するデバイスが製造さ
れる。このように配置することにより、圧電/電歪層が
第二電極2bより長く構成されるため、第二電極2bと
第一電極2cとの短絡を有効に防止でき、端子と外部リ
ードとの接続を高歩留まりで製作できる。なお、この態
様においては、薄板部6、7を構成する材料としてヤン
グ率Y1が200GPaである酸化イットリウム部分安
定化ジルコニア材料を使用し、圧電/電歪層2aとして
は、ヤング率Y2が60GPaであるジルコン酸鉛−チ
タン酸鉛−マグネシウムニオブ酸鉛固溶体を使用し、両
者のヤング率の比が下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する数値である3.33となるようにした。以上
の構成により、可動部4を固定部5に対して、ほぼ平行
に変位させることができる。さらに、変位した状態での
前記可動部における当該固定部と対向する側の一辺と、
変位前の前記可動部における前記同一辺とのなす角度θ
を測定したところ、下式、 0°≦θ≦0.1° を満足する、0.05°であった。
【0035】 また、図5に示した実施態様において
は、圧電/電歪素子は、第一電極2cが圧電/電歪層2
a、第二電極2bよりも長く、すなわちより可動部4に
近いところまで形成されている例である。この構成によ
り、この態様は図4に示された実施態様とは異なり、圧
電/電歪層2aが、薄板部6、7と直接接する部分が存
在しなくなり、圧電/電歪層2aは、第一電極2cを介
して、薄板部6、7と接合されることとなるために、密
着性という観点から好ましいものである。一対の電極2
b、2cと圧電/電歪層2aで構成される圧電作動部位
2’の端部は、薄板部6、7の長さに対して、固定部5
と薄板部6、7との接合部から75%程度の位置となる
ように形成されている。勿論、薄板部6、7の材料のヤ
ング率Y1は、圧電/電歪層2aの材料のヤング率Y2
と、それぞれ、下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足するように選択されている。なお、この例におい
ては、可動部4ならびに固定部5には、外部の電気回路
等につなげるための端子11が形成されている。従っ
て、可動部4には、各種センサ、磁気ヘッド、磁気ヘッ
ドを搭載したスライダ等をリード線なしに直接実装可能
である。固定部5の端子11は、可動部4の各端子11
に対して、薄板部6、7の圧電/電歪素子2の配置面と
は反対の面に形成された配線12と可動部4ならびに固
定部5の内部配線によって互いに一対一で導通してい
る。
【0036】 たとえば、図5に示したデバイスにおい
て、圧電/電歪作動部位2’の内薄板部6、7上に配置
された部分の長さL(図示せず)が、薄板部6、7の長
さeと薄板部6、7の厚さdとの関係において下式、 30≦(L/e)×100≦100−d/2.5 を満足するように形成することにより、当該圧電/電歪
素子2の動きを確実に薄板部6、7に伝えることができ
るとともに、効率的に薄板部6、7を屈曲させ、結果と
して、可動部5をほぼ平行に大きく変位させることがで
きる圧電/電歪デバイスが提供されることとなる。
【0037】 なお、上記の態様において、前記圧電/
電歪素子2の変位により駆動させたとき、前記薄板部6
上に変位の変曲点が存在するように構成するとともに、
非変位状態の当該可動部4における当該固定部5と対向
する側の一辺の中点から前記固定部5におろした垂線上
に中心を持ち、かつ前記非変位状態における可動部4の
上記中点と当該駆動部3の作動によって変位した可動部
4における上記中点とを通る仮想円において、前記仮想
円の半径rと当該薄板部6の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦100 を満足するように可動部4が変位するように構成するこ
とにより可動部4をより効果的にほぼ平行に大きく変位
させることが可能な圧電/電歪デバイスを得ることがで
きる。そしてこの変位形態を確実なものとするために
は、(L/e)×100の値に応じて、Y1/Y2の値
を上述の範囲内で適宜選定すればよい。
【0038】 この構成により、駆動力を高くしつつ、
変位に対して有利な構造、すなわち、X軸に対して動き
やすい構造とすることで、より大きな変位が得られるこ
ととなる。このような関係となるように構成されたデバ
イスには、薄板部において、特定の長さで、かつ、前記
ヤング率の比率Y1/Y2で決まる相対的に剛性の低い
部分が存在することとなる。そして圧電/電歪素子の変
位で可動部を変位させる場合において、この長さと材料
特性で決まる剛性の低い部分が、薄板部の変形を特異な
ものとし、可動部をほぼ平行に、かつ、より大きく変位
させるものとなる。さらに、前記圧電作動部位2’の内
前記薄板部6、7上に配置された部分の長さLと、前記
薄板部6、7の長さeと前記薄板部6、7の厚さdとを
下式、 40≦(L/e)×100≦100−d/1.5 を満足するように選定すること、特に、非変位状態の当
該可動部4における当該固定部5と対向する側の一辺の
中点から前記固定部5におろした垂線上に中心を持ち、
かつ前記非変位状態における可動部4の上記中点と当該
駆動部3の作動によって変位した可動部4における上記
中点とを通る仮想円において、前記仮想円の半径rと当
該薄板部6、7の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦20 を満足するように可動部4が変位するものであり、か
つ、変位の変曲点が、当該圧電/電歪作動部位2’が存
在している固定部5もしくは可動部4と薄板部6、7と
の接合部から前記薄板部6、7の長さの1/2以上離れ
た薄板部6、7上の位置に存在するように、(L/e)
×100の値に応じて、Y1/Y2の値を上述の範囲内
で適宜選定することにより、可動部4をほぼ平行に、か
つ、より大きく変位させることができる。
【0039】 図6に示す実施態様においては、可動部
4ならびに固定部5の長さを小さくし、薄板部6、7の
幅をデバイスの厚みと同等にした例である。本実施態様
によれば、ほぼ正方形である固定部5ならびに可動部4
の底面、上面を基体、その他部品との接合面とし、その
接合面同士をほぼ平行に変位させられるようにしたもの
である。このような実施形態をとれば、接合面積が大き
くとれるほか、たとえばハードディスク用部品としてス
ライダの搭載されたサスペンションを可動部4側へ接合
し、固定部5側にキャリッジアームを取り付けることに
よりヘッド位置の精密位置合わせ機構に好ましく利用で
きる。
【0040】 つまり、固定部5と可動部4とをあたか
も剪断様に移動させることができるため、圧電体バルク
のd15シアーモードを用いて変位動作させる場合と比
較して、より大きな変位が利用できる構造である。な
お、このような図6に従うデバイスを実施する上で、孔
部8の厚みaと薄板部6、7の長さeとがe/aで表さ
れる割合において0.1〜2とし、かつ孔部8の厚みa
と薄板部6、7の幅bとがa/bで表される割合におい
て0.05〜2とすることが好ましい。e/aの規定値
は、前述した接合面同士の変位の平行度合いを高める上
で重要であり、一方a/bの規定値は駆動部3の駆動力
ならびに特定軸、たとえば、この場合X軸方向への変位
成分を高める上で重要な規定値となる。
【0041】 図7は、圧電/電歪作動部位2’の構成
を説明する図であり、従って、この図においては、一対
の薄板部6、7のうち少なくとも圧電/電歪素子2が形
成された薄板部6側のみを表示している。図7(a)、
(b)、および(c)は、本発明に係る圧電/電歪作動
部位2’を構成する第二電極2b、第一電極2c、およ
び電圧/電歪層2aの相互の関係を示す模式図である。
図7(a)は、第二電極2bが固定部5側から可動部4
に向かう方向に対して薄板部6の全長を超えて配置さ
れ、かつ、圧電/電歪層2aと第一電極2cとを覆うよ
うに形成されているが、圧電/電歪層2aと第一電極2
cとは、それぞれ可動部4との間に所望の距離を保持し
て配置されており、かくして、圧電/電歪素子2の圧電
/電歪層2aの他方の端部が、前記薄板部6の全長を覆
うことがないように配置されている態様を模式的に示す
図である。すなわち、この態様においても、一対の電極
2bと2cと、圧電/電歪層2aとで構成される圧電/
電歪作動部位2’の他方の端部は、薄板部6上の所望の
位置となるように配置されている。
【0042】 図7(b)は、第一電極2cは固定部5
側から薄板部6の全長を覆い可動部4の一部にまで延び
て配置されているが、その上に圧電/電歪層2aと、第
二電極2bとが、可動部4との間に所望の距離を保持し
つつ、同一の長さで配置された態様であって、この態様
においても、圧電/電歪素子2の圧電/電歪層2aの他
方の端部が、前記薄板部6上に存在し、薄板部6の全長
を覆うことがないように配置されている態様を模式的に
示す図である。図7(c)は、第一電極2cと第二電極
2bが圧電/電歪層2aを挟んで同一の長さで配置され
た態様であって、この態様においても、圧電/電歪素子
2の圧電/電歪層2aの他方の端部が、前記前記薄板部
6上に存在し、薄板部6の全長を覆うことがないように
配置されており、勿論、一対の電極2b、2cと圧電/
電歪層2aとで構成される圧電/電歪作動部位2’の他
方の端部は、可動部4との間に所望の距離を保持して配
置されている。なお、本発明においては、一対の電極2
b、2cと圧電/電歪層2aとで構成される圧電/電歪
作動部位2’の他方の端部は、薄板部6上の所望の位置
に配置されるように、可動部4との間に所望の距離を保
持して配置されており、かつ圧電/電歪層2aの他方の
端部も薄板部6上に配置されていればよく、勿論、第二
電極2bと圧電/電歪層2aと第一電極2cとの相互の
位置関係は、上記の要件を満たす限り、様々な形態をと
りうることは勿論である。
【0043】 上記の記載から明らかなように、圧電/
電歪素子が駆動部3の所望とする一部分を充分な柔軟性
を発揮することができるように構成することが、好まし
い。「ほぼ平行に」可動部4を駆動させるに充分な柔軟
性を確保するためには、少なくとも前記薄板部6上に配
置された圧電/電歪素子の配置関係を上記構成とし、さ
らに薄板部6を構成する材料のヤング率Y1と前記圧電
/電歪層2aを構成する材料のヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する様に選定することが必要である。そのために
は、上記の三つの部材の厚さのバランスに充分な配慮が
必要であり、薄板部6、7は、2μm〜100μm、電
極2b、2cは、0.1μm〜50μm、圧電/電歪層
2aは、3μm〜300μmとすることが好ましい。
【0044】 一部は重複するが、図8は、本発明に係
るデバイスの各部の相互関係を説明するための概要説明
図である。デバイス1は、圧電/電歪素子2の変位によ
り駆動する駆動部3、駆動部3の駆動に基づいて変位す
る可動部4、および駆動部3および可動部4を支持する
固定部5の各部分から構成されている。当該駆動部3は
相対向する一対の薄板部6、7と、当該薄板部6、7の
外表面に形成された膜状の圧電/電歪素子2とからな
り、前記固定部5と前記可動部4とが当該駆動部5を介
して結合されており、また、薄板部6、7上の一部と固
定部上には、圧電/電歪作動部位2’が存在しており、
かつ、当該駆動部3の内壁と可動部4の内壁と固定部5
の内壁により孔部8が形成されている。このように本発
明に従う圧電/電歪作動部位2’が固定部5にかかるよ
うにした構造では、駆動部3の変位形態が、図28に示
されたごとく、薄板部が外空間に向かうような屈曲変位
形態をとるので、変位メカニズム的に可動部4を大きく
変位させることができる特徴がある。ここでこの変位形
態を確実なものとするために、前記圧電/電歪作動部位
2’が固定部5もしくは可動部4にかかる距離を薄板部
厚みdの1/2以上とすることが好ましい。
【0045】 そして、孔部8の厚み、すなわち図中の
X軸方向の距離aと、当該薄板部の幅、すなわち図中Y
軸方向の距離bとの比a/bが0.5〜20となるよう
に構成されている。好ましくは比a/bは1〜10とさ
れ、さらに好ましくは2〜8とされる。a/bの規定値
は、本願に従う圧電/電歪デバイスの変位を大きくし、
図中X−Z平面内での変位を支配的に得られることの発
見に基づく規定である。一方、薄板部6、7の長さ、す
なわち図中Z軸方向の距離eと前述の孔部8の厚みaと
の比e/aにおいては、好ましくは0.5〜10とさ
れ、さらに好ましくは0.7〜5とすることが望まし
い。このe/aの規定値は、本願に従う圧電/電歪デバ
イスが高い変位を高い共振周波数で、つまり高い応答速
度で発生できるという発見に基づくものである。従っ
て、発生変位量、変位モード、応答性の総合的観点か
ら、a/bを0.5〜20とし、かつe/aを0.5〜
10の範囲、さらに望ましくは、a/bを1〜10と
し、かつe/aを0.7〜5の範囲とすれば、Y軸方向
へのあおり変位あるいは振動が抑制された、かつ、高速
応答性に優れた、相対的に低駆動電圧で大きな変位を示
すデバイスが実現され、非常に好ましい。また、図6に
従うデバイスにおいては、孔部8の厚みaと薄板部6、
7の長さeとが、e/aで表される割合において、0.
1〜2とし、かつ孔部8の厚みaと薄板部6、7の幅b
とが、a/bで表される割合において0.05〜2とす
ることが好ましい。e/aの規定値は、変位を著しく低
下させることなく、前述した接合面の変位の平行度合い
を高め、かつ高共振周波数化をはかる上で重要であり、
一方a/bの規定値は駆動部3の駆動力を高め、かつ可
動部4の特定軸への変位成分たとえばこの場合X軸方向
への変位成分を高める上で重要な意味を有するものであ
る。なお、本発明に従う圧電/電歪デバイスにおいて
は、孔部8にはゲル材料、たとえばシリコーンゲルを充
填してもよい。
【0046】 図8に示す可動部4の長さfは、短いこ
とが好ましい。短くすることで軽量化と共振周波数の増
大が図られるからである。しかしながら、可動部4のX
軸方向の剛性を確保し、その変位を確実なものとするた
めには、上記薄板部の厚さdとの比f/dを3以上、好
ましくは、10以上とすることが好ましい。なお、各部
の実寸法は、可動部4への部品の取り付けのための接合
面積、固定部5を他の部材に取り付けるための接合面
積、電極用端子などの取り付けのための接合面積、デバ
イス全体の強度、耐久性、必要な変位ならびに共振周波
数、そして駆動電圧等をも考慮して定められることとな
る。通常aは、100μm〜2000μmが好ましく、
さらに好ましくは200μm〜1000μmである。通
常bは、50μm〜2000μmが好ましく、さらに好
ましくは100μm〜500μmである。通常dは、Y
軸方向への変位成分であるあおり変位が効果的に抑制で
きるように、薄板部6、7の幅bとの関係においてb>
dとされ、かつ2μm〜100μmが好ましく、さらに
好ましくは4μm〜60μmである。
【0047】 通常eは、200μm〜3000μmが
好ましく、さらに好ましくは300μm〜2000μm
である。そして通常fは、50μm〜2000μmが好
ましく、さらに好ましくは100μm〜1000μmで
ある。なお、このように構成することにより、主軸であ
るX軸方向の変位に対してY軸方向の変位が通常10%
を超えないが、前記好適な寸法比率と実寸法の範囲で適
宜調整を行うことで低電圧駆動が可能で、Y軸への変位
成分を5%以下に調整できるというきわめて優れた効果
を示す。すなわち、主軸であるX軸1軸への実質的に支
配的な変位が得られるのである。そして、前記特徴に加
え高速応答性に優れ、相対的に低電圧で大きな変位を示
すものが得られるのである。さらに、図6に従うように
デバイスを構成すれば、変位は相対的に小さくなるもの
のY軸への変位成分を3%以下にまで調整できるように
なる。
【0048】 なお、デバイス1においては、デバイス
の形状が従来例として図27に示したような板状体では
なく、可動部4と固定部5が三次元的な立体形状たとえ
ば直方体を呈しており、可動部4と固定部5の側面が連
続するように薄板部6、7が跨設されているため、デバ
イスのY軸方向の剛性を選択的に高くすることが可能で
ある。すなわち、デバイス1では、駆動部3の駆動方向
を含む平面内、すなわち、XZ面内における可動部4の
作動のみを選択的に発生させることができ、可動部4の
YZ面内の作動、いわゆるあおり方向の作動を抑制する
ことが可能である。
【0049】 当該駆動部3の内壁と、当該可動部4の
内壁と、当該固定部5の内壁とにより形成される孔部8
の形状は、駆動部の働きを妨げない限り、任意の形状を
とりうる。すなわち、孔部8の断面図は、長方形状でな
くともよく、円形状、楕円、台形、平行四辺形等の形状
を呈していてもよい。
【0050】 次に、本発明に係る圧電/電歪デバイス
における別の実施態様について述べることとする。図9
は、一対の薄板部6と7の双方に圧電/電歪素子2を形
成したデバイスであって、二個の圧電/電歪素子2の第
一電極2cを共通化し、孔部8が開口している一方の面
の固定部5側から引き出し、第二電極2bについては、
各圧電/電歪素子2形成面の固定部5側に直接引き出す
態様とされている。なお、図4〜6、8、9に示したよ
うに当該薄板部6、7のうち少なくとも1の薄板部6、
7の外表面の少なくとも一部に形成された圧電/電歪素
子2は、当該薄板部6、7の幅と同一の幅を有するもの
を使用しているが、勿論薄板部6、7の幅よりも狭いも
のとしてもかまわない。しかしながら、圧電/電歪素子
2の幅を当該薄板部6、7の幅と同一の幅とすることに
より、駆動部3の駆動力が増し、高変位に有利に作用す
るので同一の幅とすることが好ましい。
【0051】 図10および図11は、前述の図9とは
異なり、可動部4上に一対の電極と圧電/電歪層とから
なる圧電/電歪作動部位2’の一方の端部が配置されて
おり、圧電/電歪作動部位2’の他方の端部側は、前記
薄板部6、7上の少なくとも一部に延びて形成されてお
り、また、同他方の端部側の圧電/電歪作動部位2’と
圧電/電歪層との端部は、薄板部6、7の全長を超えな
い範囲内に留まるように形成されている例である。つま
り、図9では圧電/電歪作動部位2’として薄板部6、
7と固定部5にわたる形態にて形成されているのに対し
て、図10、図11では、反対に薄板部6、7と可動部
4にわたる形態で圧電/電歪作動部位2’が形成されて
いる。図10、図11においても図9と同様に圧電/電
歪素子2の幅を薄板部6、7の幅と同じとされているの
で、図9と同じ効果が得られるほか、基本的には可動部
4自体も図9と同じように変位させることが可能であ
る。
【0052】 次に、図12および図13に示した駆動
信号印加端子10の配置について説明する。両例とも、
一対の電極と圧電/電歪層2aとからなる圧電/電歪作
動部位2’の一方の端部は、ともに固定部5上に存在
し、前記圧電/電歪作動部位2’の他方の端部側は、前
記薄板部6、7上の少なくとも一部に延びて形成されて
おり、また、同他方の端部側の圧電/電歪作動部位2’
と圧電/電歪層との端部は、薄板部6、7上に存在し、
その全長を超えない範囲内に留まるように形成されてい
る例である。図12は、基本的には、図4と同様に、駆
動信号印加端子10を固定部5の側面、すなわち、圧電
/電歪素子2の形成面と同じ面に配置した例である。こ
の構造に従えば、デバイスの固定を端子が配置された面
とは独立させて行うことができ、結果としてデバイスの
固定と、回路と端子間の接合に高い信頼性を得ることが
できる。
【0053】 なお、この態様においては、フレキシブ
ルプリント回路(FPCとも称される)、フレキシブル
フラットケーブル(FFCとも称される)、ワイヤボン
ディング等により端子と回路との接合はなされる。ま
た、図13は、駆動信号印加端子10を、圧電/電歪素
子2を配置する面と直交する面に配置したものである。
駆動信号印加端子10が形成された面を固定面として利
用すれば、駆動信号印加端子10と回路(図示せず)と
の接続とデバイス自体の固定を同時にすることができ、
装置自体のコンパクト化に有利であるという利点があ
る。勿論、駆動信号印加端子10が形成されていない反
対側の面9でデバイスを固定することも可能である。こ
の実施態様では、固定部5にあらかじめスルーホールを
設け、そのスルーホールに導電材料を充填後、各電極と
スルーホールとが接合するように圧電/電歪素子2のパ
ターンを形成し、その後加工によりスルーホール充填面
を露出させ、その面を駆動信号印加端子10として利用
するものである。導電材料として、導線を埋め込んでも
よい。なお、この例においては、孔部8近傍に設けられ
たスルーホールを共通端子として使用している。
【0054】 本発明のデバイスは上述のような効果の
ほか、必ずしも全体を圧電/電歪材料で構成する必要が
ないため、圧電/電歪素子2以外の部材については各部
材の要求特性に応じて適宜構成材料を選択できるという
利点がある。すなわち、圧電/電歪素子2以外の部材
を、軽量な材料で構成することにより、動作上、有害な
振動の影響を受け難くすることが可能であり、同様にし
て機械的強度、ハンドリング性、耐衝撃性、耐湿性を向
上させることも容易である。また、充填材を使用する必
要がないため、逆圧電効果や電歪効果による変位の効率
が低下することもない。
【0055】2.デバイスの構成要素 ついで、一部において、上述の事項と重複するが、本発
明のデバイスを構成する各要素について図8に示すデバ
イス1の例により個別具体的に説明する。
【0056】(1)可動部および固定部 可動部4は、駆動部3の駆動量に基づいて作動する部分
であり、デバイス1の使用目的に応じて種々の部材が取
り付けられる。たとえば、デバイス1を変位素子として
使用する場合であれば、光シャッターの遮蔽版、ハード
ディスク用の位置決めやリンギング抑制機構であれば磁
気ヘッド、磁気ヘッドを搭載したスライダ、スライダを
搭載したサスペンション等の位置決めを必要とする部材
が取り付けられる。
【0057】 固定部5は、駆動部3および可動部4を
支持する部分であり、固定部5を何らかの基体、たとえ
ば前記ハードディスクの位置決めに利用の際にはVCM
(ボイスコイルモータ)に付けられたキャリッジアー
ム、または前記キャリッジアームにつけられた固定プレ
ートならびにサスペンション等に支持固定することによ
りデバイス1全体が固定される。また、圧電/電歪素子
2を制御するための電極リードその他の部材が配置され
る場合もある。可動部4および固定部5を構成する材質
としては、剛性を有する限りにおいて特に限定されない
が、後述するセラミックグリーンシート積層法を適用で
きるセラミックスを好適に用いることができる。具体的
には、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアをはじ
めとするジルコニア、アルミナ、マグネシア、窒化珪
素、窒化アルミニウム、酸化チタンを主成分とする材料
等が挙げられるほか、それら混合物を主成分とした材料
があげられるが、機械的強度や靭性が高い点において、
ジルコニア、特に安定化ジルコニアを主成分とする材料
と部分安定化ジルコニアを主成分とする材料が好まし
い。主成分とは、全体の50(重)質量%以上の割合に
おいて含有されていることを意味する。また、セラミッ
クスに代え、金属やエンジニアリングプラスチックで構
成することも可能であり、剛性を有する限りその種類を
問わず使用できるが、例えば、金属としてはステンレス
鋼などの鋼材や、ニッケル等の非鉄系材料があげられ
る。
【0058】(2)駆動部 駆動部3は、圧電/電歪素子2の変位により駆動する部
分であり、相対向する薄板部6、7と、薄板部6、7の
表面に形成された膜状の圧電/電歪素子2とから構成さ
れている。
【0059】薄板部 薄板部6、7は可撓性を有する薄板状の部材であって、
表面に配設した圧電/電歪素子2の伸縮変位を撓み変位
として増幅し、可動部4に伝達する機能を有する。従っ
て、薄板部6、7の形状や材質は、薄板部を構成する材
料のヤング率Y1と前記圧電/電歪層を構成する材料の
ヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する関係を有し、かつ、当然のことながら、可撓
性を有し、撓み変形によって破損しない程度の機械的強
度を有するものであれば足り、可動部の応答性、操作性
を考慮して、上記ヤング率の関係を充足できる範囲内
で、上述した可動部、固定部と同様にセラミックス、金
属など、適宜選択することができる。
【0060】 例えば、金属材料で構成する場合には、
前述のとおり、可撓性を有し、屈曲変形が可能な金属材
料であればよいが、好ましくは、鉄系材料としては、各
種ステンレス鋼、各種バネ鋼鋼材で構成することが望ま
しく、非鉄系材料としては、ベリリウム銅、リン青銅、
ニッケル、ニッケル鉄合金で構成することが望ましい。
【0061】 通常、薄板部6、7の厚みは2μm〜1
00μm程度とすることが好ましく、薄板部6、7と圧
電/電歪素子2を合わせた厚みは7μm〜500μmと
することが好ましい。なお、本発明に従うデバイスの構
成において、目的とする効果をより高めるためには、上
述された薄板部の材料のヤング率と圧電/電歪層のヤン
グ率との関係を考慮しつつ、電極2b、2cの厚みは
0.1〜50μm、圧電/電歪層2aの厚みは3〜30
0μmとすることが好ましい。また、薄板部6、7の幅
としては50μm 〜2000μmが好適である。薄板
部6、7を構成する材質としては、可動部4や固定部5
と同様のセラミックスを好適に用いることができ、ジル
コニア、中でも安定化ジルコニアを主成分とする材料と
部分安定化ジルコニアを主成分とする材料は、薄肉とし
ても機械的強度が大きいこと、靭性が高いこと、圧電/
電歪層や電極材との反応性が小さいことから最も好適に
採用される。なお、前記安定化ならびに部分安定化ジル
コニアにおいては、次の通り安定化されたものが好まし
い。すなわちジルコニアを安定化せしめる化合物として
は、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリ
ウム、酸化カルシウム、および酸化マグネシウムがあ
り、少なくともそのうちの一つの化合物を添加、含有せ
しめることにより、ジルコニアは部分的にあるいは完全
に安定化されることとなるが、その安定化は一種類の化
合物の添加のみならず、それら化合物を組み合わせて添
加することによっても、目的とするジルコニアの安定化
は可能である。
【0062】 なお、それぞれの化合物の添加量として
は、酸化イットリウムや酸化イッテルビウムの場合にあ
っては、1〜30モル%、好ましくは1.5〜10モル
%、酸化セリウムの場合にあっては、6〜50モル%、
好ましくは8〜20モル%、酸化カルシウムや酸化マグ
ネシウムの場合にあっては、5〜40モル%、好ましく
は5〜20モル%とすることが望ましいが、その中でも
特に酸化イットリウムを安定化剤として用いることが好
ましく、その場合においては1.5〜10モル%、さら
に好ましくは2〜4モル%とすることが望ましい。ま
た、焼結助剤等の添加物としてアルミナ、シリカ、マグ
ネシア、遷移金属酸化物等を0.05〜20重量%の範
囲で添加することも可能であるが、圧電/電歪素子の形
成手段が、膜形成法による焼成一体化を採用する際は、
アルミナ、マグネシア、遷移金属酸化物等を添加物とし
て添加することも好ましい。
【0063】 なお、前記機械的強度と安定した結晶相
が得られるよう、ジルコニアの平均結晶粒子径を0.0
5〜3μm、好ましくは0.05〜1μm以下とするこ
とが望ましい。また、前述のように薄板部6、7につい
ては、可動部4ならびに固定部5と同様のセラミックス
を用いることができるが、好ましくは、実質的に同一の
材料を用いて構成することが、接合部の信頼性、デバイ
スの強度、製造の煩雑さの低減がはかられ好ましい。
【0064】圧電/電歪素子 圧電/電歪素子2は、少なくとも圧電/電歪層と、圧電
/電歪層に電圧を印加させるための一対またはそれ以上
の電極とからなるものであり、ユニモルフ型、バイモル
フ型等の従来公知の圧電/電歪素子2を使用することが
できるが、ユニモルフ型の方が、発生する変位量の安定
性に優れ、軽量化に有利であるため、本願記載のデバイ
スに対しては、ユニモルフ型の圧電/電歪素子2で構成
することが好ましい。たとえば、図14に示されるよう
に、第一電極2c、圧電/電歪層2a、および第二電極
2bが層状に積層された積層型圧電/電歪素子2等を好
適に用いることができる。この図14に記載の圧電/電
歪素子は、通常圧電/電歪層に強誘電体等の圧電材料を
用いた場合、前記電極間(たとえば第二電極2bと第一
電極2cとの間)に電圧を印加し圧電/電歪層2aに電
界が作用させられると、その電界に基づいて圧電/電歪
層2aに電界誘起歪みが誘起されその横効果である圧電
/電歪層2aの主面に平行な方向へ縮むモードの歪みを
主として発生する機能を有する。従って、この構造の圧
電/電歪素子2を本発明デバイスに適用すれば、前記主
面方向に縮む歪みを薄板部6、7を屈曲させる屈曲変位
に変換し、駆動部3を薄板部6、7と可動部4もしくは
薄板部6、7と固定部5との接合部位を支点として外空
間(孔部とは反対方向)に向かう方向に屈曲変位させ、
その結果可動部を所定の方向に変位させることができ
る。
【0065】 また、前記圧電/電歪層2aを上下一対
の電極ではさみ込んだ構造に加え、さらにその第二電極
上に、圧電/電歪層2aを形成し、さらにまたその圧電
/電歪層2a上に第三電極を形成した、二層の圧電/電
歪作動部位2’を有する構造の圧電/電歪素子2とする
ことも好ましい。さらに電極2b、2c、圧電/電歪層
2aの繰り返し、すなわち、圧電/電歪作動部位2’を
三層、四層、五層あるいはそれ以上とした構造も好まし
い。このように圧電/電歪作動部位2’を多層構造とす
ることにより、駆動部3の駆動力が増し、大変位化が図
られると共に、デバイス自体の剛性が増加し、高共振周
波数化が図られ、高速応答性が実現できる。また、デバ
イス自体の剛性を高めた構造、たとえば、薄板部の厚み
を厚くした構造などにおいても、高変位化と高共振周波
数化が容易に図られる。
【0066】 たとえば、図24は圧電/電歪素子2に
おける圧電/電歪作動部位2’を二層としたものであ
る。各圧電/電歪素子2は、図14に記した素子構造に
おいて、第一電極2c、圧電/電歪層2a、第二電極2
b、圧電/電歪層2a、第一電極2cが順次積層され、
一対の電極2b、2cと圧電/電歪層2aとからなる圧
電/電歪作動部位が素子の構成膜を積層形成する方向に
二層とされている。また、同一素子内における同一の符
号で示された電極については、同電位の電圧が印加さ
れ、各電極に通電する端子は、すべて固定部5の素子形
成面に形成されている。なお、図24では、第一電極2
cが、一層目の圧電/電歪作動部位と二層目の圧電/電
歪作動部位で共通化されている態様となっているが、勿
論、これらは独立した電極構造としてもかまわない。当
然、圧電/電歪作動部位の一方の端部は固定部5上に存
在しており、その他方の端部は薄板部6、7上に配置さ
れているとともに、同他方の圧電/電歪層2aの端部
も、薄板部6、7上に存在し、薄板部の全長を超えない
範囲内に留まるようにされている。また図25は、圧電
/電歪素子2における圧電/電歪作動部位を三層とした
ものである。詳細には、第一電極2c、圧電/電歪層2
a、第二電極2b、圧電/電歪層2a、第一電極2c、
圧電/電歪層2a、第二電極2bが順次積層され、一対
の電極と圧電/電歪層とからなる圧電/電歪作動部位が
素子の構成膜を積層形成する方向に三層とされている。
【0067】 前図24と同様に同一素子内における同
一の符号で示された電極については、同電位の電圧が印
加され、各電極に通電する端子は、すべて固定部5の素
子形成面に形成されている。図24と同様に、本実施態
様においても、第一電極2c、第二電極2bは、一層
目、二層目、三層目の圧電/電歪作動部位に対して、そ
れぞれ共有かつ共通化されているが、それぞれすべて独
立して配設されてもかまわない。この場合、それぞれの
電極に対しては薄板部6、7に近い方から順に第一、第
二、第三、第四電極と呼ばれることとなる。図24、図
25のように、多層の圧電/電歪作動部位に対する電極
の引きまわし方については、共通化できる電極は共通化
した方が端子の数を少なくすることができ、駆動や製造
上において、有利な構造である。一方、すべての電極を
独立させた場合には、それぞれの圧電/電歪作動部位を
異なる信号で作動させることができ、より精密な変位制
御が可能であるという利点がある。勿論圧電/電歪作動
部位の一方の端部は固定部5上に存在しており、その他
方の端部は薄板部6、7上に配置されているとともに、
同他方の圧電/電歪層2aの端部も、薄板部6、7上に
存在し、薄板部の全長を超えない範囲内に留まるように
されている。層数を多くすれば駆動力の増大は図られる
が、それに伴い消費電力も増えるため実際に実施する場
合には、用途、仕様に応じて適宜層数等を決めればよ
い。また本発明に従うデバイスでは、図示された実施態
様例からわかる通り、多層にしてデバイスの駆動力を上
げても、基本的に薄板部6、7の幅方向の距離は不変な
ため、たとえば、非常に狭い間隙において、使用される
ハードディスク用磁気ヘッドの位置決め、リンギング抑
制等の制御デバイスに適用する上で非常に好ましいデバ
イスとなるのである。
【0068】 図29は、対向する一対の薄板部のう
ち、片側の薄板部に対してのみ圧電/電歪素子を形成し
た例である。この構造に従うデバイスは、対向する一対
の薄板部において、圧電/電歪素子が形成されていない
薄板部の剛性を小さくできる。両側に素子が形成されて
いるデバイスとこの片側のみに素子が形成されたデバイ
スとを、一つの圧電/電歪素子を駆動して得られる変位
の大きさで比較すると、対向する側の薄板部の剛性が低
い効果で、このデバイスの場合には、より大きな変位が
得られる。
【0069】 図30に示したデバイスは、共通化され
た第二の電極2bの一方の端を可動部の端と同じ位置と
し、共通化された第一の電極2cの一方の端およびその
第一電極2cに駆動信号を印加するための端子10の一
方の端を、固定部の端と同じ位置とした例である。後述
する機械加工等により、可動部および固定部とともに第
一、第二の電極2b、2cならびに端子10のパターン
が形成できるので、製造しやすいという特徴が有るほ
か、第一の電極2cに対する端子10の位置と本デバイ
スとの位置関係を常に一定とすることが可能であり、固
定部の端面を基準とした本デバイスの固定にあたって、
端子と外部機器との位置あわせが容易となる。
【0070】 また、図15に示すような、櫛型構造の
第一電極2cおよび第二電極2bとからなり、第一電極
2cと第二電極2bとが、互いの櫛の歯部間に一定幅の
間隙部13をもって相互に対向する構造を有する圧電/
電歪素子2を用いることもできる。本構造に従う圧電/
電歪素子は、低消費電力化に有利な構造であり、図15
では、第一電極2c、第二電極2bを薄板部6、7、圧
電/電歪層2aの上面に配置しているが、薄板部6、7
と圧電/電歪層2aとの間に電極を形成してもよいし、
また、圧電/電歪層2aの上面ならびに薄板部6、7と
圧電/電歪層2aとの間の両面に電極を形成することも
好ましい。すなわち、本構造の圧電/電歪素子では、少
なくとも圧電/電歪層2aの少なくとも一主面に電極が
形成されていることとなる。さらに、図16に示す圧電
/電歪素子2も櫛型構造の第一電極2cおよび第二電極
2bとからなり、第一電極2cと第二電極2bとが、互
いの櫛の歯部間に一定幅の間隙部13をもって相互に対
向する構造を有するものである。圧電/電歪素子2は第
一電極2cと第二電極2bとの間隙部13に圧電/電歪
層2aを埋設するように構成しているが、このように圧
電/電歪素子2も本発明のデバイスに好適に用いること
ができる。
【0071】 上記の図15と図16に示した圧電/電
歪素子2のように櫛形電極を有する圧電/電歪素子2を
用いる場合には、櫛の歯のピッチDを小さくすること
で、圧電/電歪素子2の変位を大きくすることが可能で
ある。この図15ならびに図16に記載の圧電/電歪素
子2は、櫛歯様の電極間に電圧を印加すると、その電極
電極間(たとえば第一電極2cと第二電極2bとの間)
に電圧を印加し、圧電/電歪層2aに電界が作用させら
れると、その電界に基づいて圧電/電歪層2aに電界誘
起歪みが誘起され、その縦効果である電界方向、すなわ
ち薄板部6、7の主面に平行な方向へ伸びるモードの歪
みを主として発生する機能を有する。従って、この構造
の圧電/電歪素子を本発明デバイスに適用すれば、前記
主面方向に伸びる歪みを薄板部6、7を屈曲させる屈曲
変位に変換し、駆動部3を薄板部6、7と可動部4もし
くは薄板部6、7と固定部5との接合部位を支点として
外空間(孔部の方向)に向かう方向に屈曲変位させ、そ
の結果可動部4を所定の方向に変位させることができ
る。なお、通常櫛歯様の電極構造を有した素子は、その
櫛歯のピッチ方向を薄板部6、7の固定部5と可動部4
を結ぶ方向とするように配置される。このように配置す
ることにより、前記電界誘起歪みの縦効果に基づく伸張
歪みを有効に屈曲変位として利用することができる。
【0072】 なお、圧電/電歪素子2は、上述の図面
で示したように、デバイス1の外面側に形成する方が駆
動部3をより大きく駆動させることができる点において
好ましいが、使用態様などに応じて、デバイス1の内面
側(すなわち孔部内)に形成してもよく、デバイス1の
内面側、外面側の双方に形成してもよい。なお、デバイ
ス1の内面側に形成する際は、後述する少なくとも薄板
部6、7、固定部5および可動部4とからなる基体部分
の製造時に同時に形成され、圧電作動部位2’を固定部
5または可動部4にかかるように形成する方法があげら
れる。圧電/電歪層としては、圧電材料が好適に用いら
れるが、電歪材料や強誘電体材料、あるいは反強誘電体
材料を用いることも可能である。ただし、磁気ヘッド等
に用いる場合には、可動部の変位量と駆動電圧または出
力電圧とのリニアリティが重要とされるため、歪み履歴
の小さい材料を用いることが好ましく、抗電界が10k
V/mm以下の材料を用いることが好ましい。
【0073】 具体的な圧電/電歪材料としては、ジル
コン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッ
ケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸
鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、
コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナト
リウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタ
ル酸ストロンチウムビスマス等を単独であるいは混合物
として含有する材料が挙げられる。特に、高い電気機械
結合係数と圧電定数を有し、圧電/電歪層の焼結時にお
ける薄板部(セラミックス)との反応性が小さく、安定
した組成のものが得られる点おいて、ジルコン酸鉛、チ
タン酸鉛、およびマグネシウムニオブ酸鉛を主成分とす
る材料、もしくはチタン酸ナトリウムビスマスを主成分
とする材料が好適に用いられる。
【0074】 さらに、上記圧電/電歪材料に、ランタ
ン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タング
ステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガ
ン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチ
モン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマ
ス、スズ等の酸化物等を単独でもしくは混合した材料を
用いてもよい。たとえば、主成分であるジルコン酸鉛と
チタン酸鉛およびマグネシウムニオブ酸鉛にランタンや
ストロンチウムを含有させることにより、抗電界や圧電
特性等の調整が可能である。勿論、材料の選定にあたっ
ては、圧電/電歪層を構成する材料のヤング率Y2が、
薄板部6を構成する材料のヤング率Y1との関係におい
て下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足するように留意することが求められることは当然
である。なお、シリカ等のガラス化し易い材料やガラス
の添加は避けることが望ましい。なぜならば、ガラスや
シリカ等の材料は、圧電/電歪層の熱処理時に、圧電/
電歪材料と反応し易く、その組成を変動させ、圧電特性
を劣化させるからである。
【0075】 一方、圧電/電歪素子の電極は、室温で
固体であり、導電性に優れた金属で構成されていること
が好ましく、たとえば、アルミニウム、チタン、クロ
ム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリ
ブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、ス
ズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、
鉛等の金属単体、これらの混合体、もしくはこれらの合
金が用いられ、さらに、これらに圧電/電歪層あるいは
薄板部と同じ材料を分散させたサーメット材料を用いて
もよい。
【0076】 圧電/電歪素子における電極の材料選定
は、圧電/電歪素子2の形成方法に依存して決定され
る。たとえば、薄板部上に第一電極2cを形成した後、
第一電極2c上に圧電/電歪層2aを焼成により形成す
る場合には、第一電極2cには圧電/電歪層2aの焼成
温度においても変化しない白金等の高融点金属を使用す
る必要があるが、圧電/電歪層2aを形成した後に圧電
/電歪層2a上に形成される第二電極2bは、低温で電
極形成を行うことができるので、アルミニウム、金、銀
等の低融点金属を使用することができる。
【0077】 また電極厚みは、少なからず圧電/電歪
素子の変位を低下させる要因ともなるので、特に圧電/
電歪層焼成後に形成される図14に記載の第二電極2b
ないしは、図15に記載される櫛形の電極2b、2c等
については、焼成後に緻密でより薄い膜が得られる有機
金属ペースト、たとえば金レジネートペースト、白金レ
ジネートペースト、銀レジネートペースト等の材料を用
いることが好ましい。
【0078】 圧電/電歪素子2からの電極リードの態
様は種々考えられるが、相対向する薄板部6、7の双方
に圧電/電歪素子2を形成した本発明に係るデバイス1
においては、2個の圧電/電歪素子2の第一電極2cを
共通化し、孔部8が開口している一方の面の固定部5側
に引き出し、第二電極2bについては各圧電/電歪素子
2形成面の固定部5側に直接引き出す態様(図9)が挙
げられる。また、第一電極2c、第二電極2bともに孔
部8が開口している一方の面の固定部5側に引き出す態
様(図13)も挙げられる。このような態様は、孔部8
が開口している他方の面の固定部5側の部分(図中9)
に電極が形成されておらず、当該部分を利用してデバイ
スを固定することができるため、デバイスを信頼性よく
固定できる。また、孔部8が開口している一方の面側で
固定すれば電極的な接合と固定を同時に行うことができ
コンパクト化できる点等において好ましい。
【0079】 また、図17(a)に示すように第二電
極2b、第一電極2cをともに各圧電/電歪素子2形成
面の固定部5側に並列するように引き出す態様や、図1
7(b)に示すように第二電極2b、第一電極2cをそ
れぞれ各圧電/電歪素子2形成面の可動部4側と固定部
5側に分離して引き出す態様としてもよい。
【0080】3.デバイスの製造方法 ここで、本発明のデバイスの製造方法について説明す
る。本発明のデバイスは各部材の構成材料をセラミック
スとし、デバイスの構成要素として、圧電/電歪素子を
除く基体部、すなわち薄板部、固定部ならびに可動部
を、セラミックグリーンシート積層法を用いて製造する
ことが好ましく、同時焼成による積層一体化により製造
することがさらに好ましい。一方、圧電/電歪素子と、
各端子部とは、これらの部材を膜状に形成する薄膜、厚
膜等の膜形成手法を用いて製造することが好ましい。デ
バイスの前記基体部各部材を一体的に成形することが可
能なセラミックグリーンシート積層法によれば、各部材
の接合部の経時的な状態変化がほとんど生じないため、
接合部位の信頼性が高く、かつ剛性確保に容易な方法で
ある。本願に従うデバイスでは、駆動部を構成する薄板
部と固定部ならびに可動部との接合部は、変位発現の支
点となるため、接合信頼性はデバイスの特性を左右する
非常に重要なポイントである。また本方法は生産性や成
形性にすぐれるため、所定形状のデバイスを短時間に、
再現性よく得ることも可能である。なお、本願明細書中
において薄板と薄板部とを用いているが、原則として前
者は製造方法におけるグリーンシートに関連した部材に
対して用い、一方後者は積層体において圧電/電歪素子
とともに駆動部を構成する部位を指す。
【0081】(1)積層体の製造 先ず、薄板部を構成する材料のヤング率Y1と前記圧電
/電歪層を構成する材料のヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足するように、選定したジルコニア等のセラミック
粉末にバインダ、溶剤、分散剤、可塑剤等を添加混合し
てスラリーを作製し、これを脱泡処理後、リバースロー
ルコーター法、ドクターブレード法等の方法により所定
の厚みを有するセラミックグリーンシートを作製する。
次に、金型を用いた打ち抜き(パンチング)、レーザー
加工等の方法により、セラミックグリーンシートを種々
の形状に加工、たとえば、図18に示すような形状に加
工する。なお、積層体の製造は、基本的には、平成11
年12月28日出願に係る特願平11−375581号
の明細書に開示の方法によればよい。参考のために、こ
こに、同出願の内容を引用する。
【0082】 図18(a)においては、セラミックグ
リーンシート101は、主として焼成後に薄板となるセ
ラミックグリーンシートを模式的に示したものであり、
また、長方形状の孔部103を少なくとも一個形成した
セラミックグリーンシート102は、可動部および固定
部となる部材用のセラミックグリーンシート一枚を模式
的に示したものである。セラミックグリーンシート10
2において、孔部103を並列するように一列以上形成
することにより複数個のデバイスを一度に得ること、あ
るいは複数の可動部を有するデバイスを少なくとも一個
得ることが可能となる。あらかじめ用意された、薄板と
なる少なくとも二枚のセラミックグリーンシートと、少
なくとも一個の孔部が形成された少なくとも一枚のセラ
ミックグリーンシートとを使用して、たとえば、当該薄
板となる少なくとも二枚のセラミックグリーンシートの
間に、当該少なくとも一個の孔部が形成された少なくと
も一枚のセラミックグリーンシートとを積層して、一対
の薄板となるセラミックグリーンシートと少なくとも一
個の孔部が形成された一連のセラミックグリーンシート
からなるセラミックグリーン積層体を調製すればよい。
【0083】 勿論、セラミックグリーン積層体の調製
方法、換言すれば、前記薄板となるセラミックグリーン
シートと、当該少なくとも一個の孔部が形成されたセラ
ミックグリーンシートとの積層順序には、特に限定がな
く、通常は、積層体が後工程に影響を与えない限り、任
意の順序で積層可能である。
【0084】 たとえば、前記セラミックグリーン積層
体を用意する工程には、一対の薄板となるセラミックグ
リーンシートを相対向して積層する工程、一対の薄板と
なるセラミックグリーンシートを相対向して最外層にそ
れぞれ積層する工程、薄板となるセラミックグリーンシ
ートに、当該少なくとも一個の孔部が形成されたセラミ
ックグリーンシートを少なくとも一枚積層したものを用
意する工程、薄板となるセラミックグリーンシートに、
当該少なくとも一個の孔部が形成されたセラミックグリ
ーンシートを所望とする枚数積層したものを用意する工
程、当該少なくとも一個の孔部が形成された少なくとも
一枚のセラミックグリーンシートに、一対の薄板となる
セラミックグリーンシートを相対向させて最外層に積層
したものを用意する工程、薄板となるセラミックグリー
ンシートに、少なくとも一個の孔部が形成された少なく
とも一枚のセラミックグリーンシートを積層した積層体
Aを二つ準備し、少なくとも一個の孔部が形成されたセ
ラミックグリーンシート一枚、もしくは複数枚を積層し
た積層体Bを準備し、前記二つの積層体Aをそれぞれの
薄板が互いに最外層をなすように積層する際に、前記少
なくとも一個の孔部が形成されたセラミックグリーンシ
ート一枚もしくは積層体Bを介在させて行う工程などが
含まれる。
【0085】 なお、本願に従うデバイスをこれらセラ
ミックグリーンシート積層法で製造する際には、ときと
して厚肉シートを積層して孔部を形成する際に、セラミ
ックグリーンシートの収縮や、セラミックグリーンシー
トの厚さが厚い場合の加工に伴う寸法精度差等に起因す
る、加工精度の低下、積層時におけるシート変形による
位置ずれなどにより、駆動部を司る一対の薄板部の長さ
の間で寸法差が生じやすい。この一対の薄板部の寸法差
は、そのまま左右方向(X軸方向)の変位差となってあ
らわれるほか、可動部の変位形態において、回転方向の
成分を含み易くなり、特定軸方向へ支配的に変位させる
ことが難しくなる。
【0086】 このような問題に対しては、当該少なく
とも一個の孔部が形成されたセラミックグリーンシート
を少なくとも複数枚積層するに際して、プラスチック製
フィルム上に搭載された少なくとも一個の孔部が形成さ
れたセラミックグリーンシートを、当該少なくとも一個
の孔部が形成されたセラミックグリーン積層体の最外層
となる面に当該プラスチック製フィルムが新たな最外層
をなすように積層し、正確に孔部の位置決めをした後、
当該プラスチック製フィルムを取り除くことを含む工
程、あるいは、プラスチック製フィルム上に搭載された
少なくとも一個の孔部が形成されたセラミックグリーン
シートを、当該薄板となるセラミックグリーンシートに
当該プラスチック製フィルムが外層をなすように積層
し、正確に孔部の位置決めをした後、当該プラスチック
製フィルムを取り除くことを含む工程を採用することに
より、セラミックグリーンシートの取り扱い時における
変形を実質的に回避できるばかりでなく、最外層となる
双方の面を同一形状とすることが可能となるので、正確
に孔部の位置決めができることから積層精度が向上し、
また加工精度の向上による寸法安定化もはかられ、デバ
イスとしての特性、たとえば変位特性が向上することに
なる。
【0087】 また、前記プラスチック製フィルムを用
いる製造方法のうち、前者の方法は最終の積層体を得る
までに要する積層効率が高く、製造工数を減らすのに効
果のある方法でもある。一方後者の方法は、積層界面の
接合性を確実にするために後述の接合補助層を設ける際
有利な方法でもある。つまり、積層工数に関しては、前
者がプラスチック製フィルム上に形成されたセラミック
グリーンシートとその他孔部を有するセラミックグリー
ンシートとの積層を一度にでき、また積層後プラスチッ
クフィルムを剥離除去した相対する面と薄板となるセラ
ミックグリーンシートとのおのおのの積層も一度で可能
なので、たとえばトータルの積層回数としては、最低二
回で可能となり、効率のよい方法である。しかしながら
後者では、相対向する薄板部に対して、それぞれ別工程
で薄板となるセラミックグリーンシートとプラスチック
製フィルム上に搭載された孔部を有するセラミックグリ
ーンシートとの積層を実施する必要があり、その後に孔
部を形成したセラミックグリーンシートとの積層を行う
こととなる。従って、たとえばトータルの積層回数とし
ては最低三回となり、前者より積層回数は多い。
【0088】 また一方セラミックグリーンシートの積
層性を向上させるための接着補助層に関しては、通常、
孔部等の加工を施す前のセラミックグリーンシートのほ
ぼ全面に形成され、その後金型を用いたパンチング等に
より、所定の孔部が形成され、それらを所定枚数積層す
ることになるが、前者の方法に適用した場合、フィルム
を剥離除去したのちに薄板との積層面に接合補助層を形
成する必要がある。この際、金型加工等により形状を正
確に出したにもかかわらず、接合補助層の形成によっ
て、形状精度が低下する可能性が大きい。また薄板とな
るグリーンシートに対して接合補助層を設ける手段もと
れるが、通常接合補助層の厚みばらつきは薄板となるセ
ラミックグリーンシートの厚みばらつきよりも大きいた
めトータル厚みばらつきが増えるばかりでなく、接合補
助層の厚み分薄板厚みが増えてしまうため、デバイスと
しての特性低下が生じてしまう。これに対して後者への
適用にあたっては、プラスチック製フィルムに搭載され
た状態で、このセラミックグリーンシートに接合補助層
を形成することができ、接合補助層を形成した後、孔部
を加工すればよいので、孔部の精度は金型の精度で確保
され、かつ薄板となるセラミックグリーンシートには何
らの手を加えることはないので、高い積層信頼性と寸法
精度を両立させることが可能である。プラスチックフィ
ルムを剥離除去した面については、その面に積層される
別の孔部が形成されたセラミックグリーンシート上に形
成された接合補助層によって積層信頼性が確保される。
【0089】 このように薄板部の形状を安定して得る
目的に対しては、両者共通しているものの、その製造過
程においてそれぞれ特徴があるので、積層体の構造等に
応じて適宜選択して手法を選択すればよい。
【0090】 なお、プラスチック製フィルム上に搭載
された少なくとも一個の孔部が形成されたセラミックグ
リーンシートとは、プラスチック製フィルム上でセラミ
ックグリーンシートを金型打ち抜き加工やレーザー加工
し調製した、少なくとも一個の孔部が形成されたセラミ
ックグリーンシートのみならず、あらかじめ所望の形に
成形した少なくとも一個の孔部が形成されたセラミック
グリーンシートにプラスチック製フィルムを貼り付けて
調製したものをも含むものである。また、当該プラスチ
ック製フィルムが剥離性、強度等の点からポリエチレン
テレフタレート製フィルムであることが好ましい。さら
に、このプラスチック製フィルムのセラミックグリーン
シート搭載面が、グリーンシートの剥離性を向上させる
目的で、シリコーンなどを成分とする離型剤を塗布した
フィルムであることが好ましい。また、プラスチック製
フィルム上のセラミックグリーンシート厚みは、薄い方
が好ましく、望ましくは、薄板用セラミックグリーンシ
ートと同等の厚みとすることがさらに好ましい。セラミ
ックグリーンシートの厚みを薄くすることによって、セ
ラミックグリーンシート自体の加工精度が上がるためで
ある。なお、各グリーンシート、特に薄板となるセラミ
ックグリーンシートの取り扱いを容易にし、シートの延
びたるみを防止し、薄板部の形状安定性をはかるため、
前述のプラスチック製フィルムを付けた形で取り扱うこ
とが好ましい。
【0091】 以下にセラミックグリーン積層体を用意
する場合の具体的な例について若干説明することとす
る。以下の例はあくまでも例示として示したもので、セ
ラミックグリーン積層体を用意する場合は勿論これらに
限定されるものではないことはいうまでもない。 (積層例1)図19に示した薄板用セラミックグリーン
シート(以下「GS」という。)1、孔部形成GS1、
孔部形成GS2、孔部形成GS3、孔部形成GS4、薄
板用GS2を順次重ね合わせた後、圧着によりセラミッ
クグリーン積層一体化物を得る。 (積層例2) ステップ1:薄板用GS1と孔部形成GS1を重ね合わ
せた後、圧着によりセラミックグリーン積層一体化物を
得る。 ステップ2:孔部形成GS4と薄板用セラミックグリー
ンシート2を重ね合わせた後、圧着によりセラミックグ
リーン積層一体化物を得る。 ステップ3:ステップ1で得られたセラミックグリーン
積層一体化物、孔部形成GS2、孔部形成GS3、ステ
ップ2で得られたセラミックグリーン積層一体化物を順
次重ね合わせて、圧着により、セラミックグリーン積層
一体化物を得る。
【0092】(積層例3) ステップ1:孔部形成GS1、孔部形成GS2、孔部形
成GS3、孔部形成GS4を順次重ね合わせて、圧着に
よりセラミックグリーン積層一体化物を得る。 ステップ2:薄板用GS1、ステップ1で得られたセラ
ミックグリーン積層一体化物、薄板用GS2を順次重ね
合わせ、圧着によりセラミックグリーン積層一体化物を
得る。 (積層例4) ステップ1:孔部形成GS2と孔部形成GS3を重ね合
わせて圧着により、セラミックグリーン積層一体化物を
得る。 ステップ2:薄板用GS1、孔部形成GS1、ステップ
1で得られたセラミックグリーン積層一体化物、孔部形
成GS4、薄板用GS2を順次重ね合わせ、圧着により
セラミックグリーン積層一体化物を得る。
【0093】 上記積層例1〜4で得られたセラミック
グリーン積層一体化物を、焼成して一体焼成物を得る。
ただし、上記の例は、本発明の製造法のすべてを示した
ものではなく、積層一体化のための、圧着回数や順序は
特に限定されない。構造に応じて、たとえば、孔部形
状、孔部形成セラミックグリーンシートの枚数、薄板用
セラミックグリーンシートの枚数等により、所望の構造
を得るように適宜決められるものである。勿論、孔部形
状は、すべて同一である必要はなく、所望の機能に応じ
て決定される。また、枚数、各セラミックグリーンシー
トの厚みも特に限定されない。上記、圧着は熱を加える
ことで、さらに、積層性を向上させることができるの
で、加熱下での圧着も有利に採用できる。また、セラミ
ック粉末(好ましくは、セラミックグリーンシートに使
用されたセラミックスと同一または類似した組成が信頼
性確保の点で望ましい。)、バインダを主体としたペー
スト、スラリー等をセラミックグリーンシート上に塗
布、印刷し、接合補助層とすることで、セラミックグリ
ーンシート界面の積層性を向上させることができるの
で、接合補助層を用いることも望ましい。
【0094】 また、当該セラミックグリーン積層体の
最外層の少なくとも片側の層外表面における当該少なく
とも薄板部を除いた部位に突起部を設けてもよい。本願
に従うデバイスは、相対向する薄板部の外表面に、通
常、スクリーン印刷などの公知手段により圧電/電歪素
子が形成されることになるが、たとえば、スクリーン印
刷法によって圧電/電歪素子を形成するにあたっても、
形成された突起によって、反対の面に形成された素子面
は直接印刷用ステージや焼成用セッター等の台にふれる
ことがないので、素子に対するダメージを防止すること
ができる。さらに突起部の高さを適宜選択することによ
り、素子厚みをコントロールすることも可能である。こ
の突起部については、グリーン積層体の焼成体、すなわ
ちセラミック積層体に対しても形成は可能であるが、グ
リーン積層体に対して形成し、焼成一体化する方が、構
造物としての安定性、寸法安定性の点で好ましい。
【0095】 以下に、本発明に従うデバイスの製造方
法の一例について、図20(a)〜図20(d)、およ
び図21を参照しながら概説することとする。なお、図
20(a)は、焼成前のセラミックグリーン積層体10
8の構成を模式的に示す斜視図であり、図20(b)と
図20(c)は、圧電/電歪素子を形成した積層焼成体
132の構成を示す斜視図であり、図20(d)は、孔
部が形成されたセラミックグリーンシートの構造を模式
的に示す斜視図である。
【0096】 図20(a)に示したように、焼成後薄
板となるセラミックグリーンシート101、複数枚から
構成されていてもよい、少なくとも一個の孔部が形成さ
れたセラミックグリーンシート102、焼成後薄板とな
るセラミックグリーンシート101の順に基準孔104
を利用して位置決めを行いながら積層し、前記した熱圧
着等の方法を用いて一体化することによりセラミックグ
リーン積層体108を得ることができる。セラミックグ
リーン積層体108の厚さが厚過ぎる場合には、図21
に示されるようにあらかじめ上下に二分割した厚さを有
するセラミックグリーン積層体105を形成した後、孔
部が向かい合うように接合して最終的なセラミックグリ
ーン積層体108を得てもよい。
【0097】 なお、セラミックグリーン積層体108
については、セラミックグリーンシート102の孔部1
03となる部分と外部空間との連通孔106をあらかじ
め、金型などを使って、パンチングにより、セラミック
グリーンシート102に形成しておくか、あるいは複数
枚積層した後に連通孔106を穿設することが必要であ
る。ただし、各孔部103が外部空間と連通している限
りにおいて連通孔106の形状は特に限定されず、図2
0(a)のように複数の孔部103を貫通する形状のほ
か、図20(d)のように各孔部103毎に個別に外部
空間と連通せしめる形状としてもよい。そして、これら
の方法によって一体化されたセラミックグリーン積層体
108は、後述の通り1200〜1600℃程度の温度
で焼成されるが、その焼成によって得られたセラミック
積層体109が、意図しない反りを有したものとなる場
合がある。その場合には、前記焼成温度と近い温度で、
重しを載せて再焼成(以下、反り修正と称す。)して平
坦化することが好ましい。この反り修正にあたっては、
平坦なアルミナ等の多孔質なセラミック板を重しとして
使用することが好ましい。また、反り修正においては、
焼成に引き続いた形で実施するほか、焼成時に前記重し
をあらかじめ載せて、焼成と同時に平坦化する方法も好
ましい。
【0098】(2)圧電/電歪素子の形成 圧電/電歪素子は、本発明のデバイスの製造の際に、セ
ラミック積層体109の薄板表面にスクリーン印刷法、
ディッピング法、塗布法、電気泳動法等の厚膜法または
イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着、イオン
プレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、メッキ
等の薄膜法により所望とする数の圧電/電歪素子107
を形成することができる(図20(b)参照)。ただ
し、同図は圧電/電歪素子107を模式的に示したもの
で、本願のデバイスにおける圧電/電歪素子107の配
置を正確に示したものではない。加えて、図20
(b)、図20(c)においては、セラミック積層体1
09の薄板131が実線で示されているが、これは部位
をわかりやすく説明するためのもので、当然、一体焼成
化されたものであることから、このような境界は存在し
ないものであることは、いうまでもないことである。な
お、当該圧電/電歪素子107の圧電作動部位の少なく
とも一方の端部が固定部または可動部上に存在し、その
他方の端部は、薄板部6、7上に配置されているととも
に、同他方の端部側の圧電/電歪層の端部も、薄板部
6、7の全長を超えない範囲内に薄板部上に留まるよう
に、前記方法にて形成することが必要である。勿論、そ
の際には、圧電/電歪層を構成する材料のヤング率Y2
が薄板部を構成する材料のヤング率Y1との関係におい
て、下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する用に材料を選定する必要がある。
【0099】 こうして圧電/電歪素子を膜形成法によ
って形成することにより、エポキシ樹脂、アクリル樹脂
等の有機系接着剤を用いることなく圧電/電歪素子と薄
板部とを一体的に接合、配設することができ、信頼性、
再現性を確保し、集積化を容易とすることができ、好ま
しい。特に、本発明の製造方法においては、前述の厚膜
法により少なくとも圧電/電歪素子107の圧電/電歪
層2aを形成し、有機系接着剤を使用することなく、熱
処理によりセラミック積層体と圧電/電歪素子とを一体
化することが好ましい。さらに好ましくは、少なくとも
圧電/電歪層にガラスフリットを添加せずに、熱処理一
体化することにより、ガラスを含まない圧電/電歪層を
構成することができるので、変位特性を向上させる上で
も望ましい。これらの厚膜手法によれば、平均粒径0.
01〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの圧電セラ
ミックスの粒子や粉末を主成分とするペーストやスラリ
ー、またはサスペンションやエマルション、ゾル等を用
いて圧電/電歪層を形成することができ、良好な圧電作
動特性が得られるからである。特に電気泳動法は、膜を
高い密度で、かつ、高い形状精度で形成できるという利
点がある。また一方、スクリーン印刷法は、膜形成とパ
ターン形成とを同時にできる他、同一セラミック積層体
上に複数個の圧電/電歪素子の形成が容易にできるた
め、本願に従うデバイスの製造方法として特に好ましく
採用される。
【0100】 具体的には、セラミックグリーン積層体
108を所定条件、好ましくは、1200℃〜1600
℃の温度で焼成した後、順次、薄板131の表面の所定
位置に、第一電極を印刷、焼成し、ついで圧電/電歪層
を印刷、焼成し、さらに第二電極を印刷、焼成して圧電
/電歪素子を形成することができる。さらに、電極を駆
動回路に接続するための電極リードを印刷、焼成すれば
よい。ここで、第一電極として白金(Pt)、圧電/電
歪層としてジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を、第二電
極として金(Au)を、さらに電極リードとして銀(A
g)のように、各部材の焼成温度が逐次低くなるように
材料を選択すると、ある焼成段階において、それより以
前に焼成された材料の再焼結が起こらず、電極材等の剥
離や凝集といった不具合の発生を回避することが可能と
なる。
【0101】 なお、材料を選択することにより、圧電
/電歪素子107の前駆体(未焼成成形体)の各部材と
電極リードを逐次印刷して、一回で一体焼成することも
可能であり、一方、圧電/電歪層を形成した後に低温で
各電極等を設けることもできる。また、圧電/電歪素子
の各部材と電極リードはスパッタ法や蒸着法等の薄膜法
によって形成してもかまわず、この場合には、必ずしも
熱処理を必要としない。なお、セラミックグリーン積層
体108の少なくとも最終的に薄板部となる位置に、あ
らかじめ圧電/電歪素子107の前駆体を形成してお
き、セラミックグリーン積層体108と圧電/電歪素子
とを同時焼成することも好ましい。
【0102】 同時焼成にあたっては、圧電/電歪素子
107の前駆体の全構成膜と行うことでもよく、また、
第一電極とセラミックグリーン積層体108のみを同時
焼成する方法、第二電極を除くほかの構成膜とセラミッ
クグリーン積層体108とを同時焼成する方法等があげ
られる。圧電/電歪素子107の前駆体とセラミックグ
リーン積層体108とを同時焼成する方法としては、ス
ラリー原料を用いたテープ成形法等によって圧電/電歪
層を成形し、この焼成前の圧電/電歪層を薄板となるセ
ラミックグリーンシート101の所定部位に熱圧着等で
積層し、その後にさらに孔部103が形成されたセラミ
ックグリーンシート102を積層圧着し、同時に焼成し
て可動部、駆動部、薄板部と圧電/電歪層とを同時に作
製する方法があげられる。ただし、この方法において
は、既述の膜形成法を用いて、薄板および/または圧電
/電歪層にあらかじめ電極を形成しておく必要がある。
また、前記方法のほか、セラミックグリーン積層体10
8の少なくとも最終的(焼成後)に薄板部となる位置に
スクリーン印刷により圧電/電歪素子の各構成層である
電極、圧電/電歪層を形成し、同時に焼成することもで
きる。一方、このような焼成を用いた基体、すなわち薄
板部、固定部、可動部と圧電/電歪素子との一体化のほ
か、別体として圧電/電歪素子を準備し、前記基体の所
定位置に有機樹脂、ガラス等の接着剤や、ロウ付け、半
田付け、共晶接合等で貼り付けることによって形成する
こともできる。この場合、別体として圧電/電歪素子を
作製するには、前述したテープ成形法のほか、成形型を
用いた加圧成型法や鋳込成型法、射出成形法等で圧電/
電歪層の前駆体を形成したのち、これらを焼成し、さら
に所定の電極を形成して作製すればよい。なお、この場
合圧電/電歪層の前駆体に電極を予め形成し、圧電/電
歪層と電極とを同時に焼成しても良い。しかしながら、
あらかじめ焼成されたセラミック積層体109に対し
て、膜形成法によって、好ましくはスクリーン印刷によ
って、有機樹脂、ガラス等の接着剤を使用することなく
圧電/電歪素子を形成するほうが、素子のパターン精度
が高く、均一な膜厚が得られ、構造物としての歪みを小
さくできることに加え、圧電/電歪デバイスの各構成要
素間に第三者が介在せず、モノリシックな構造とするこ
とができるので、長期的な信頼性の面からも好ましく採
用される。
【0103】 圧電/電歪素子を構成する各膜の焼成温
度は、これを構成する材料によって適宜定められるが、
一般には、500℃〜1500℃であり、圧電/電歪層
に対して、好ましくは、1000℃〜1400℃であ
る。この場合、圧電/電歪層の組成を制御するために、
圧電/電歪層の材料の蒸発源の存在下に焼結することが
好ましい。なお、圧電/電歪層とセラミックグリーン積
層体108を同時焼成する場合には、両者の焼成条件を
あわせることが必要である。
【0104】 なお、対向する一対の薄板部の双方に圧
電/電歪素子が形成されたデバイスを製造する場合に
は、セラミック積層体109の両面に圧電/電歪層前駆
体、電極膜前駆体等を有利には印刷することとなるが、
このような場合には、印刷ステージに凹部を設けた印
刷ステージで印刷を行う、あるいは、セラミック積層
体の少なくとも一方の印刷面における印刷箇所の周囲に
枠状の凸部を形成し、凸部形成面の印刷を行った後、他
方の面の印刷をする、等の方法により印刷を行い、圧電
/電歪層前駆体、電極前駆体等が印刷ステージに付着も
しくは接触しないような措置を採ることが好ましい。ま
た特に、前述の圧電/電歪層の焼成においてセラミック
積層体の両面に圧電/電歪素子が形成される構造の場
合、両面の圧電/電歪素子の圧電特性に差が生じないよ
うに、両面での焼成雰囲気が同じとなるようにすること
が好ましい。たとえば、通常、セッター等の板の上に圧
電/電歪素子(膜)前駆体が形成されたセラミック積層
体を設置して焼成されることとなるが、この場合圧電/
電歪層とセッターとの空間を同じとなるように段積みす
るセッター間隔をスペーサー等で調整することにより行
えばよい。以上は本発明に好ましく採用される膜形成手
法における具体例であるが、あらかじめ焼成された別体
の圧電/電歪素子をセラミック積層体109の所定位置
に有機樹脂等の接着剤ではりつける方法によっても本デ
バイスの製造は可能である。
【0105】(3)積層体の切断 既述の圧電/電歪素子を形成した積層焼成体132は、
圧電/電歪素子や電極リードのコーティング、シールド
等の処理を施した後、長方形状の孔部133が積層体の
側面側で開口するように、セラミックグリーンシートの
積層方向に切断することにより、複数個のデバイスを同
時に得ることができる(図20(c))。切断の方法と
してはダイシング加工、ワイヤーソー加工等(機械加
工)のほか、YAGレーザー、エキシマレーザ等による
レーザー加工、電子ビーム加工を適用することも可能で
ある。所望とする単位毎に切断する場合に、切断後この
切断体を300〜800℃で加熱処理することが好まし
い。なぜならば、加工により焼成体内部にマイクロクラ
ック等の欠陥が生じやすいが、熱処理によりその欠陥を
取り除くことができ、信頼性が向上するからである。さ
らに前記熱処理後に、80℃程度の温度で少なくとも1
0時間程度放置しエージング処理を施すことも好まし
い。この処理によって、製造過程の中で受けた種々の応
力等を緩和し、特性向上に寄与するからである。
【0106】 本発明のデバイスを製造する際には、所
望の形状の孔部、たとえば、長方形の形状の孔部133
が積層体の側面側で開口するように切断している。この
ような切断は、複数のデバイスを分離するのみならず、
デバイスの薄板部と孔部(図8のデバイス1であれば薄
板部6、7と孔部8)を一時に形成できるという利点が
あり、2以上の直方体が薄板によって結合するという複
雑で製造し難い構造体を簡便に得られる点において好ま
しい。
【0107】 また、セラミックグリーンシート102
における孔部103の形成数や形成位置、あるいは圧電
/電歪素子107を形成した積層焼成体132の切断位
置を適宜変更することにより、駆動部が複数存在するデ
バイスや駆動部の長さが異なるデバイスもきわめて容易
に形成することが可能である。さらに、セラミック積層
体109と圧電/電歪素子107とを同時に切断すれ
ば、容易に薄板部幅と圧電/電歪素子幅が同一なデバイ
スを作成でき、好ましい。これらの切断は、焼成前のグ
リーン状態でも実施できるが、寸法精度を上げ、各セラ
ミック粉末の脱粒等を防止するために、焼成体に対して
実施することが好ましい。
【0108】 なお、本発明のデバイスは、上述したセ
ラミックグリーンシートを用いた作製方法のほかに、成
形型を用いた加圧成形法や鋳込成形法、射出成形法やフ
ォトリソグラフィ等を用いて作製することもできる。ま
た、上述の例では、可動部4、固定部5、薄板部6及び
7をセラミックスにて構成した例を示したが、その他、
各部を金属材料同士で構成することもできる。更には、
セラミックスと金属の材料とから製造されたものを組み
合わせたハイブリッド構造として構成することもでき
る。この場合、金属材料間の接合、セラミックスと金属
材料間の接合においては、有機樹脂、ガラス等での接
着、ロウ付け、半田付け、共晶接合、溶接等を用いるこ
とができる。また、可動部4、固定部5、薄板部6及び
7をすべて金属とする場合には、例えば図20(c)に
おけるセラミック積層体109に相当する部位を鋳造に
より形成するほか、薄状の金属を積層し、クラッデイン
グ法により形成すればよい。
【0109】 このように、別体として準備された各構
成部材を接合して作製する方法も可能であるが、生産性
や信頼性にすぐれるセラミックグリーンシートを用いた
作製方法を採用して、可動部4、固定部5、薄板部6、
7を形成し、膜形成手法により圧電/電歪素子を形成す
ることが好ましい。
【0110】4.デバイスの適用例 最後に、本発明のデバイスの適用例の一つとして、本発
明のデバイスを光シャッター用の変位素子に適用した例
について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の
図22と図23は、本発明のデバイスを光シャッター用
の変位素子に適用した例を模式的に示したもので、正確
に本願に従う構造を示すものでないことは容易に理解さ
れよう。ところで、本明細書にいう「光シャッター」
は、二枚の遮蔽板を相対的に移動させることにより、光
の透過と遮蔽を制御する機能素子を意味し、光のON/
OFF制御や光量制御を行うことができるため、光スイ
ッチや光絞りとして機能させることが可能である。
【0111】 本発明のデバイスを光シャッターに搭載
する場合には、二枚の遮蔽板のうち少なくとも一方の遮
蔽板を本発明のデバイスの可動部に取り付けることとな
る。たとえば、図22(a)、(b)に示す光シャッタ
ー110は、本発明のデバイスと遮蔽板を備えた二つの
ユニット111A、111Bからなるものであり、二枚
の遮蔽板113A、113Bをおのおのデバイスの可動
部114A、114Bに取り付け、互いの平板面が平行
になり、かつ、光Lの入射方向に対し平板面の一部が重
なり合うように配置している。
【0112】 光シャッター110は、図示の状態では
光Lを遮蔽しているが、デバイスの駆動部に形成された
圧電/電歪素子112A、112Bに同位相の電圧を印
加することにより、遮蔽板113Aは図左側へ、遮蔽板
113Bは図右側へ移動するため、遮蔽板113A、1
13Bの重なり具合が変化して、光のON/OFF制御
や光量制御を行うことができる。
【0113】 また、図23(a)に示す光シャッター
120は、本発明のデバイスと遮蔽板を備えた二つのユ
ニット121A、121Bからなるものであり、二枚の
遮蔽板123A、123Bをおのおのデバイスの可動部
124A、124Bに取り付け、互いの平板面が平行に
なり、かつ、光Lの入射方向に対し平板面の全部が重な
り合うように配置している。そして遮蔽板123A、1
23Bには対向する位置におのおのスリット125A、
125Bが形成されている。
【0114】 光シャッター120は、図23(a)、
(b)の状態ではスリット125A、125Bを通して
光Lを透過するが、デバイスの駆動部に形成された圧電
/電歪素子122A、122Bに同位相の電圧を印加す
ることにより、遮蔽板123Aは図左側へ、遮蔽板12
3Bは図右側へ移動するため、スリット125A、12
5Bの重なり具合が変化して、光のON/OFF制御や
光量制御を行うことができる。図23(c)では一部の
光が透過する状態を示してあるが、スリット123A、
123Bの形状や形成位置を変えることにより、光Lを
完全遮蔽することも可能である。
【0115】 これとは逆に、図23(a)、(b)の
状態ではスリット125A、125Bが重ならず光Lを
遮蔽するように構成し、遮蔽板123A、123Bの移
動によりスリット125A、125Bが重なり合って光
Lを透過させるような構造としてもよい。なお、図2
2、および図23の例では二枚の遮蔽板をおのおのデバ
イスに取り付けた例を示したが、本発明の光シャッター
は少なくとも一方の遮蔽板をデバイスに取り付け、当該
一方の遮蔽板を移動させるのみでも光の透過および遮蔽
を制御することが可能である。ただし、双方の遮蔽板を
デバイスに取り付けた方が遮蔽板の相対的な移動量を大
きくできる点において好ましい。また、図22、および
図23の例では光シャッターを二つのユニットで構成し
ているが、三つ以上のユニットで構成してもよい。この
場合、複数の遮蔽板の移動方向を種々に設定することに
より、重なり部分の開口の程度を変えた光絞り等として
も用いることもできる。本発明の光シャッターは、本発
明のデバイスの可動部に遮蔽板を取り付けているため、
遮蔽板のあおり方向の作動が抑制される。すなわち、遮
蔽板が常に光の入射方向に正対して移動するため、より
精密な光のON/OFF制御、光量制御が可能となる点
において好適に用いることができる。以下、実施例と比
較例により本発明のデバイスについて説明するが、勿論
この実施例と比較例により本発明はなんらの制限を受け
るものではない。
【0116】
【実施例】圧電/電歪作動部位の層数を以下に記載する
ように構成して、図25に示される構造を有するデバイ
スをそれぞれ作製した。基体である固定部、薄板部、可
動部はジルコニアを主成分とする材料からなり、焼成に
より一体化された構造とした。圧電/電歪素子の圧電/
電歪層には、チタン酸鉛−ジルコン酸鉛−マグネシウム
ニオブ酸鉛を主成分とする材料を、電極には白金を主成
分とする材料を、端子には銀を主成分とする材料を使用
し、前記焼成一体化してなる基体に対し、それぞれスク
リーン印刷法により形成し、焼成により基体と一体化し
た。焼成後の圧電/電歪層の厚みは12μm、電極の厚
みは3μmである。変位の測定は、レーザードップラー
振動計(グラフテック(株)社製)によりおこなった。
【0117】 図8に示される基体各部寸法をa:1
300μm、b:255μm、c:1400μm、d:
50μm、e:1200μm、f:300μmとして、
デバイスを構成した。圧電/電歪作動部位の層数は4層
とした。薄板部上の圧電/電歪作動部位の長さは、薄板
部の75%とした。その際デバイスの変位は印加電圧6
0Vで1μmであった。共振周波数は50kHzであっ
た。
【0118】 図8に示される基体各部寸法をa:6
00μm、b:300μm、c:620μm、d:10
μm、e:1000μm、f:300μmとして、デバ
イスを構成した。圧電/電歪作動部位の層数は1層とし
た。薄板部上の圧電/電歪作動部位の長さは、薄板部の
75%とした。その際デバイスの変位は印加電圧60V
で1.5μmであった。共振周波数は10kHzであっ
た。
【0119】
【比較例】図25に示される構造をベースとし、圧電/
電歪作動部が薄板部のみに存在するように形成し、その
長さは薄板部の長さの75%とした。圧電/電歪作動部
位の層数は1層とした。その他基体の形成方法、材料、
また圧電/電歪素子の形成方法、材料、厚みは実施例で
説明したものと同様である。図8に示される基本各部寸
法をa:600μm、b:300μm、c:620μ
m、d:10μm、e:1000μm、f:300μm
として、デバイスを構成した。その際デバイスの変位は
印加電圧60Vで0.2μmであった。また共振周波数
は8kHzであった。
【0120】 以上の結果から、本願に従う構造では大
きな変位が得られていることがわかる。また実施例、
を比較すると圧電/電歪作動部の層数を4層とするこ
とにより、大きな変位を示しつつ、高い共振周波数を示
す構造となることがわかる。
【0121】
【発明の効果】 本発明に従うデバイスは、薄板の幅方
向すなわちY軸の方向には高い剛性を有するという特徴
があるため、本デバイスへのセンサ、磁気ヘッド等の機
能部品の取り付け、さらに本デバイス自身を他の構造体
へ取り付ける際、強固な接合ができる構造である。加え
て、この剛性のため、比較的質量の大きな部品の取り付
けも可能であるという特徴を併せ持つものである。さら
に、前記薄板の幅方向に比べ厚み方向は相対的に剛性が
小さいことから、この剛性の方向性に基づいて、デバイ
スを動作させた場合の変位成分として、Y軸方向への成
分つまりあおり成分が効果的に抑制されるという効果が
発揮されるものである。
【0122】 さらに、本発明に従うデバイスにおいて
は、圧電/電歪作動部位の一方の端部を、前記固定部ま
たは可動部上に、同圧電/電歪作動部位の他方の端部
を、前記薄板部上に配置したものであることから、圧電
/電歪素子の変位は、固定部と薄板部の接合点とする
か、もしくは、可動部と薄板部の接合点として発現され
るものとなる。そしてこの変位メカニズムは、可動部と
薄板部との接合点を大きく外空間に向かう方向に向けて
変位させるように、薄板部が屈曲変位する形態であるこ
とから、可動部をより大きく変位させることが可能とな
る。
【0123】 加えて、本発明にかかるデバイスは、可
動部の変位軌跡を固定部に対してほぼ平行としたもので
あることから、可動部の頂部にセンサ等の部品を取り付
けた際にも、上下動の非常に少ない動きを実現できる特
徴がある。このほぼ平行に変位させる変位メカニズム
は、圧電/電歪作動部および圧電/電歪層の前述した配
置と薄板部材料と圧電/電歪材料とのヤング率との関係
から導かれ、好ましくは圧電/電歪素子の作動による薄
板部の変位形態に、変位の変曲点を有したものとするこ
とによって達成され得るものである。このようにほぼ平
行に動作する構造は、前述した条件にて限定された薄板
部における剛性の低い部分を有効に変位させるものであ
ることから、変位効率が非常に高く、結果として可動部
をより一段と大きく変位させるという効果を発現するも
のである。また可動部、薄板部、固定部からなる基体部
が同時焼成による一体化物であり、かつ圧電/電歪素子
も接着剤を使用することなく熱処理よって薄板部に一体
化したものであることから、各部いずれも接着合体した
ものではなく、接合部の信頼性に優れるとともに、接合
部位の高い剛性により、構造体として高共振周波数化が
容易に図られるという特徴を有したものである。すなわ
ち、特定一軸方向へ相対的に低電圧で大変位が得られる
とともに、応答性に優れ、長期の使用に対しても特性変
動の少ないデバイス構造である。
【0124】 従って、各種トランスデューサ、各種ア
クチュエータ、周波数領域機能部品(フィルタ)、トラ
ンス、通信用や動力用の振動子や共振子、発信子、ディ
スクリミネータ等の能動素子のほか、超音波センサや加
速度センサ、角速度センサや衝撃センサ、質量センサ等
の各種センサ用のセンサ素子として利用することがで
き、特に光学機器、精密機器等の各種精密部品等の変位
や位置決め調整、角度調整の機構に用いられる各種アク
チュエータに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の圧電/電歪デバイスにおける作動状
態を説明するための概略説明図である。
【図2】 本発明の圧電/電歪デバイスにおける作動状
態における変曲点を説明するための概略説明図で、
(a)は変位前の状態を示す図で、記号「e」は、薄板
部の長さを、(b)は変位させた状態を示す図で、記号
「Li」は変曲点の位置を示す。
【図3】 本発明の圧電/電歪デバイスの構成におい
て、薄板部上に配置された当該圧電/電歪素子の部分の
長さ「L」と、薄板部の長さ「e」と、前記薄板の厚さ
「d」との関係を説明するための概略説明図である。
【図4】 本発明の圧電/電歪デバイスの一の実施態様
を示す概略斜視図である。
【図5】 本発明の圧電/電歪デバイスの別の実施態様
を示す概略斜視図である。
【図6】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の実
施態様を示す概略斜視図である。
【図7】 本発明の圧電/電歪デバイスにおいて使用さ
れる圧電/電歪素子の配置状態を説明するための概略説
明図である。
【図8】 本発明の圧電/電歪デバイスの各部位相互の
関係を説明するための概略斜視図である。
【図9】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の実
施態様を示す概略斜視図である。
【図10】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図11】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図12】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図13】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図14】 本発明の圧電/電歪デバイスを構成する圧
電/電歪素子の一の実施態様を示す概略斜視図である。
【図15】 本発明の圧電/電歪デバイスを構成する圧
電/電歪素子の一の実施態様を示す概略斜視図である。
【図16】 本発明の圧電/電歪デバイスを構成する圧
電/電歪素子の別の実施態様を示す概略斜視図である。
【図17】 本発明の圧電/電歪デバイスの電極リード
の配置方法の一の実施態様を示す概略説明図(a)、
(b)である。
【図18】 本発明の圧電/電歪デバイスの製造に使用
するセラミックグリーンシートの例を示す概略説明図
(a)、(b)である。
【図19】 本発明の圧電/電歪デバイスの製造の際
に、セラミックグリーンシートの積層体に使用する各セ
ラミックグリーンシートの例を模式的に示した斜視図で
ある。
【図20】 本発明の圧電/電歪デバイスの製造方法の
一の実施態様を示す工程図(a)、(b)、(c)、お
よび(d)である。
【図21】 本発明の圧電/電歪デバイスの製造方法の
別の実施態様を示す側面図である。
【図22】 本発明の光シャッターの一の実施態様を示
す概略説明図であって、(a)は斜視図、(b)は上面
図である。
【図23】 本発明の光シャッターの別の実施態様を示
す概略説明図であって、(a)は斜視図、(b)は上面
図、(c)は遮蔽板の拡大図である。
【図24】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図25】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図26】 本発明の圧電/電歪デバイスにおける変位
の定義を説明するための概略説明図である。
【図27】 従前の圧電アクチュエータの一の実施態様
を示す概略斜視図である。
【図28】 本発明の圧電/電歪デバイスの変位の状態
を模式的に示す断面図であって、(a)は変位前の状態
を模式的に示す断面図、(b)は変位後の状態を模式的
に示す断面図である。
【図29】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【図30】 本発明の圧電/電歪デバイスのさらに別の
実施態様を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…圧電/電歪デバイス、2…圧電/電歪素子、2’…
圧電/電歪作動部位、2a…圧電/電歪層、2b…第二
電極、2c…第一電極、3…駆動部、4…可動部、5…
固定部、6…薄板部、7…薄板部、8…孔部、10…端
子、11…端子、12…配線、101…焼成後薄板とな
るセラミックグリーンシート、102…孔部が形成され
たセラミックグリーン積層体、103…孔部、104…
基準孔、105…セラミックグリーン積層体、106…
連通孔、107…圧電/電歪素子、108…セラミック
グリーン積層体、109…セラミック積層体、110…
光シャッター、111A、111B…ユニット、112
A、112B…圧電/電歪素子、113A、113B…
遮蔽板、114A、114B…可動部、120…光シャ
ッター、121A、121B…ユニット、122A、1
22B…圧電/電歪素子、123A、123B…遮蔽
板、124A、124B…可動部、125A、125B
…スリット、130…連通口、131…薄板、132…
圧電/電歪素子を形成した積層焼成体、133…孔部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願2000−15123(P2000−15123) (32)優先日 平成12年1月24日(2000.1.24) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 木村 浩二 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号 日本碍子株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−211698(JP,A) 特開 平5−286131(JP,A) 特開 平5−286132(JP,A) 特開 平11−344341(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 41/09 H01L 41/08 H01L 41/187

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電/電歪素子の変位により駆動する駆
    動部と、当該駆動部の駆動に基づいて作動する可動部
    と、前記駆動部および可動部を支持するための固定部
    と、前記可動部は当該駆動部を介して前記固定部と結合
    され、かつ、当該駆動部の内壁と可動部の内壁と固定部
    の内壁とにより形成される孔部とからなる圧電/電歪デ
    バイスであって、 前記駆動部は、相対向する一対の薄板部と、当該薄板部
    のうち少なくとも一つの薄板部の少なくとも外表面の一
    部に配置された一対またはそれ以上の電極と圧電/電歪
    層からなる圧電/電歪作動部位を含む圧電/電歪素子と
    からなり、 当該固定部と当該可動部とを結ぶ方向における前記圧電
    /電歪作動部位の一方の端部が、前記固定部または可動
    部上に存在し、かつ、前記圧電/電歪作動部位の他方の
    端部が、前記薄板部上に配置されているとともに、 前記圧電/電歪素子の少なくとも圧電/電歪層の一方の
    端部は、前記固定部または可動部上に存在し、他方の端
    部は薄板部上に配置されており、 前記薄板部を構成する材料のヤング率Y1と前記圧電/
    電歪層を構成する材料のヤング率Y2とが下式、 1<Y1/Y2≦20 を満足する関係を有することを特徴とする圧電/電歪デ
    バイス。
  2. 【請求項2】 前記可動部、薄板部および固定部がセラ
    ミックグリーンシート積層体を同時焼成することにより
    一体的に形成したものであることを特徴とする請求項1
    に記載の圧電/電歪デバイス。
  3. 【請求項3】 前記圧電/電歪素子が膜状の圧電/電歪
    素子を直接薄板部と可動部または固定部上に形成し、こ
    れを焼成して一体的に形成したものであることを特徴と
    する請求項1または2に記載の圧電/電歪デバイス。
  4. 【請求項4】 前記膜状の圧電/電歪素子の圧電/電歪
    層がガラスフリットを含まないものであることを特徴と
    する請求項3に記載の圧電/電歪デバイス。
  5. 【請求項5】 変位した状態での前記可動部における当
    該固定部と対向する側の一辺と、変位前の前記可動部に
    おける前記同一辺とのなす角度θに対して下式、 0°≦θ≦0.1° を満足するように可動部が変位するものである請求項1
    〜4のいずれか1項に記載の圧電/電歪デバイス。
  6. 【請求項6】 前記圧電/電歪作動部位の内前記薄板部
    上に配置された部分の長さLが、前記薄板部の長さeと
    前記薄板部の厚さdとの関係において下式、 30≦(L/e)×100≦100−d/2.5 を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1
    項に記載の圧電/電歪デバイス。
  7. 【請求項7】 非変位状態の当該可動部における当該固
    定部と対向する側の一辺の中点から前記固定部におろし
    た垂線上に中心を持ち、かつ前記非変位状態における可
    動部の上記中点と当該駆動部の作動によって変位した可
    動部における上記中点とを通る仮想円において、前記仮
    想円の半径rと当該薄板部の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦100 を満足するように可動部が変位するものであり、かつ、
    前記圧電/電歪素子の変位により駆動させたとき、前記
    薄板部に変位の変曲点が存在することを特徴とする請求
    項6に記載の圧電/電歪デバイス。
  8. 【請求項8】 前記薄板部上に配置された前記圧電作動
    部位の長さLが、前記薄板部の長さeと前記薄板部の厚
    さdとの関係において下式、 40≦(L/e)×100≦100−d/1.5 を満足することを特徴とする請求項6または7に記載の
    圧電/電歪デバイス。
  9. 【請求項9】 非変位状態の当該可動部における当該固
    定部と対向する側の一辺の中点から前記固定部におろし
    た垂線上に中心を持ち、かつ前記非変位状態における可
    動部の上記中点と当該駆動部の作動によって変位した可
    動部における上記中点とを通る仮想円において、前記仮
    想円の半径rと当該薄板部の長さeとの関係が下式、 0≦e/r≦20 を満足するように可動部が変位するものであり、かつ、
    薄板部の変位の変曲点が、当該圧電/電歪作動部位が存
    在している固定部もしくは可動部と薄板部との接合部か
    ら前記薄板部長さの1/2以上離れた位置に存在するこ
    とを特徴とする請求項8に記載の圧電/電歪デバイス。
  10. 【請求項10】 当該孔部の厚みaと前記薄板部の長さ
    eとがe/aで表される割合において、0.1〜2とさ
    れ、かつ前記孔部厚みaと当該薄板部の幅bとがa/b
    で表される割合において0.05〜2であることを特徴
    とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電/電歪
    デバイス。
  11. 【請求項11】 相対向する一対の薄板部の外表面に設
    けられた圧電/電歪素子のうち、少なくとも一つの圧電
    /電歪素子が多層の圧電/電歪作動部位を有するもので
    あることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に
    記載の圧電/電歪デバイス。
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