JP3432694B2 - 炭化水素転化用固体酸触媒の製造方法 - Google Patents

炭化水素転化用固体酸触媒の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、様々な酸触媒反応
に高い活性を有し、反応中の触媒の安定性に優れた固体
酸触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】化学工業においては、アルキル化反応、
アシル化反応、エステル化反応、異性化反応等の酸触媒
を必要とする炭化水素転化反応が多数知られている。従
来この種の反応には、硫酸、塩化アルミニウム、フッ化
水素、リン酸、p-トルエンスルホン酸等の酸触媒が使用
されている。しかしこれらの酸触媒は、金属を腐食させ
る性質があり、高価な耐食材料の使用或は耐食処理を施
す必要があった。また通常、反応後の反応物質との分離
が困難な上に廃酸処理が必要であり、アルカリ洗浄等の
繁雑な工程を経なければならず、環境面にも大きな問題
があった。さらに触媒を再利用することも非常に困難で
あった。
【0003】かかる状況に鑑み、周期律表第4族及び第
14族金属水酸化物及び/又は水和酸化物を硫酸含有溶
液と接触させた後、350〜800℃で焼成した硫酸根
含有金属酸化物が100%硫酸(H0(ハメットの酸度
関数)は−11.93)より高い酸強度を示すことを見
出し、硫酸根含有固体酸触媒の製造方法を提案した(特
公昭59−6181公報)。これらの固体酸触媒は、そ
の高い酸強度ゆえにアルキル化、アシル化、エステル
化、異性化等、各種炭化水素転化の酸触媒反応に対し高
い触媒性能を有し、しかも腐食性が低く、反応物質との
分離が容易で廃酸処理が不要、触媒の再利用も可能とい
った長所を有しており、様々な工業的反応において、従
来の酸触媒の代替が期待されている。
【0004】また、このような硫酸根含有固体酸触媒に
さらに第8〜10族金属を担持することにより、直鎖炭
化水素の異性化反応、炭化水素のアルキル化反応等にお
いて触媒安定性に優れ、分解反応が少ない触媒が提案さ
れている(特公平6−29199号公報、特公平5−2
9504号公報等)。さらに硫酸塩化されたジルコニア
触媒に鉄とマンガンの酸化物を含有させることにより、
直鎖炭化水素の異性化反応において触媒活性に優れた炭
化水素転化用触媒が提案されている(特開平2−115
042号公報(米国特許第4918041号))。
【0005】この他に、ケイタングステン酸等のヘテロ
ポリ酸を硫酸化された固体スーパーアシッド触媒に含有
させたアルキル化触媒が提案されている(特開平7−2
38040号公報)。この触媒を用いると、室温でアル
キル化反応を行うことができるため、冷却が不要であ
り、しかも炭素数8の炭化水素収率とアルキル化収率が
良好であるとされている。また、亜鉛、クロム、タング
ステン等を硫酸根含有固体酸触媒に含有させたアルキル
化用固体酸触媒が提案されている(特開平1−2458
53号公報)。この触媒は、アルキル化反応の活性が高
くしかも反応生成物にはオクタン価の高いトリメチルペ
ンタンを多く含むとされている。
【0006】しかしこれらの硫酸分含有固体酸触媒は、
触媒中に含まれる硫酸分のために、反応中での触媒の安
定性が必ずしも高くなく、特に極性溶媒中などにおいて
は硫酸分が溶出し、触媒性能が低下する恐れがあった。
【0007】この問題に対して、我々は、水酸化ジルコ
ニウムまたは非晶質の酸化ジルコニウムに、タングステ
ン又はモリブデン化合物(酸素酸、酸素酸の塩、塩化物
等)の1種以上を当該金属量として1〜40重量%添加
または担持し、500〜1000℃の温度で焼成するこ
とにより、高い酸強度を有する固体酸触媒を提案した
(特開平1−288339号公報)。この固体酸触媒
は、金属酸化物からなり、硫酸分を含まないために反応
中の触媒の安定性が高いのが特徴である。これらの触媒
の調製において、タングステン又はモリブデン化合物の
添加または担持には水溶液による含浸法が一般的であっ
た。
【0008】しかし上記触媒の含浸法は、ペレット状、
ハニカム状等に成形された担体に対するスプレー、浸漬
等の含浸と異なり、粉体に対する処理である。つまり、
タングステン又はモリブデン化合物を水溶液として大量
の水と共に水酸化ジルコニウム又は非晶質の酸化ジルコ
ニウム粉末に添加し、攪拌混合した後に蒸発乾固で水分
を蒸発させる方法である。その後、乾燥・焼成し触媒と
して使用する。これに金属成分を担持する場合は、前記
乾燥後の固体酸に金属成分を混練混合するか、成形後の
固体酸に金属成分を含浸した後乾燥・焼成することにな
る。
【0009】前記のような、タングステン又はモリブデ
ン化合物を、大量の水と共に含浸・担持させる方法は、
多量の水分を蒸発させる操作が必要であり、多くのエネ
ルギーを必要とする。また、水分を蒸発させる場合、水
溶性の成分が酸化ジルコニウム等の表面に濃縮される現
象を防ぐため、温度分布、水分蒸発速度等の制御や攪拌
作業が必要であり、操作が煩雑である。このため、工業
的に適した製造方法とは言い難い。この問題を解決する
ため、非晶質の酸化ジルコニウム粉末と酸化タングステ
ン又は酸化モリブデン粉末を粉体のまま混合し、触媒を
調製する方法も試みたが(特開平1−288339号公
報;比較例)触媒活性は極めて低かった。
【0010】比較的少ない水分量でタングステン又はモ
リブデン化合物を担持する方法として、混練法を挙げる
こともできる。しかし、タングステン化合物は水への溶
解度が低く、混練法では分散が不十分となる。このた
め、触媒性能が出難い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる知見に
基づきなされたもので、本発明の目的は、製造方法が簡
便であり、アルキル化、異性化、水素化等の様々な炭化
水素転化の酸触媒反応に高い活性を示し、硫酸分の溶出
がなくかつ反応中の安定性に優れている固体酸触媒を提
供することにある。すなわち本発明は、製造方法が煩雑
な含浸法に代えて、工業的に適した製造方法である乾式
混合又は混練法で調製でき、しかも硫酸分を用いない金
属酸化物系の固体酸触媒の製造方法を提供することを課
題とする。これが達成できれば、操作の煩雑な大量の水
を用いる含浸工程が不要となり、製造コスト上のメリッ
トが大きい。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意研究を
進めた結果、タングステンまたはモリブデン原料として
ヘテロポリ酸及び/又はその塩を用い、特に水を加える
ことなく粉体のまま第4族、第13族及び第14族金属
化合物と混合・焼成すると、従来の大量の水を用いる含
浸法によるタングステンまたはモリブデンの担持から得
られた固体酸触媒と同等もしくはそれ以上の活性を有す
る固体酸触媒が簡便に調製できることを見い出した。さ
らに検討を進めた結果、タングステンのヘテロポリ酸を
用いて混練する方法でも触媒活性に優れる固体酸触媒を
製造可能なことを見い出した。そして、この触媒に第7
族、第8族、第9族及び第10族金属から選ばれる1種
以上の金属を含有させると、活性を大幅に向上できるこ
とを見出し本発明を完成させた。
【0013】すなわち本発明は、周期律表第4族、第1
3族および第14族から選ばれる1種以上の金属水酸化
物及び/又は水和酸化物に、タングステンあるいはモリ
ブデンが含まれているヘテロポリ酸及び/又はその塩
を、固相状態を保って担持又は混合した後、400〜1
000℃の温度範囲で焼成することを特徴とする炭化水
素転化用固体酸触媒の製造方法である。本発明によれ
ば、乾式混合又は混練による触媒調製が可能であり、し
かも、従来の大量の水を用いる含浸法によるタングステ
ンまたはモリブデンの担持で得られた固体酸触媒と、同
等もしくはそれ以上の活性を有する固体酸触媒が製造可
能である。
【0014】前述のように、タングステン或はモリブデ
ンの酸化物と、周期律表第4族、第13族および第14
族から選ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和
酸化物とを粉砕混合しても、所期の性能が出ない。これ
に対し、本発明の乾式混合は、単にスプーン、攪拌羽根
等で混ぜ合わせる方法でも十分な触媒性能が得られる。
また、混練についても、混合される程度で十分である。
このように、本発明の方法は、多少混合が不十分であっ
ても、触媒性能に影響が出難い点に大きな特徴がある。
これは、ケイタングステン酸等のヘテロポリ酸を用いた
ことによる効果と思われる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の固体酸触媒は、アルキル
化、異性化、水素化、アシル化、脱水素、重合等広範囲
の炭化水素転反応用触媒として利用できる。また、水分
が存在しても触媒成分の溶出が起こり難いため、水和反
応、脱水反応等にも適用可能であり、このような反応の
触媒としても利用できる。以上のように、固体酸触媒と
して活性が高いばかりでなく、触媒として安定であるた
め、炭化水素転化反応原料に不純物が多少存在していて
も、触媒性能が低下し難い等の特徴を有する。
【0016】本発明に関わる固体酸触媒の製造方法の概
略を以下に示す。まず、本発明の一態様である第1の製
造方法であるが、乾式混合による場合は、周期律表第4
族、第13族及び第14族金属から選ばれる1種以上の
金属水酸化物及び/又は水和酸化物と、ヘテロポリ酸及
び/又はその塩とを、特に水を加えることなく乾式混合
し、その後焼成する。また混練による場合は、少量の水
と 共に混練混合し、必要に応じて成形した後、乾燥・
焼成する。
【0017】上記第4族元素としてはチタン、ジルコニ
ウム、ハフニウム、第13族元素としてはアルミニウ
ム、第14族元素としてはケイ素、錫、鉛等が挙げられ
るが、特に、錫、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、
アルミニウムから選ばれる1種以上が好適に用いられ
る。これらの金属水酸化物及び/又は水和酸化物は、単
独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】第4族、第13族及び第14族の元素から
選ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物
は、一般には上記金属の塩や有機金属化合物、例えばこ
れらの金属のオキシ塩化物、硫酸塩、塩化物、オキシ硫
酸塩、アルコラート等を中和もしくは加水分解すること
により得ることができる。これらの金属水酸化物及び/
又は水和酸化物は、2種以上の金属原料を用いて複合金
属水酸化物及び/又は複合金属水和酸化物として用いて
も良い。
【0019】これらの中でも、水酸化ジルコニウム、水
酸化ジルコニウムと水酸化アルミニウムの混合物、水酸
化ジルコニウムと含水アルミナの一種である擬ベーマイ
トとの混合物、から選ばれる一種以上が触媒の安定性、
触媒活性の点で好ましい。特に、擬ベーマイトは正方晶
ジルコニアを安定化させる効果があり、高活性な触媒を
製造できる点で好ましい。
【0020】これらの金属水酸化物及び/又は水和酸化
物に混合するヘテロポリ酸及び/又はその塩としては、
構成元素の中にタングステンあるいはモリブデンが含ま
れているものが使用できる。しかし、アルカリ金属塩は
アルカリ金属が触媒毒として作用するため、多量に添加
すると触媒活性が出難いことがある。このため、固体酸
触媒中のアルカリ金属の濃度は5%以下、好ましくは3
%以下、より好ましくは1%以下とするのが望ましい。
また、タングステン及びモリブデン以外のヘテロ原子と
しては、ケイ素、リン、ゲルマニウム、マンガン、ニッ
ケル、コバルト、クロム、アルミニウム等が使用できる
が、これらの中でも、ケイ素、リン、ゲルマニウムが好
ましく、特にケイ素が好ましい。このようなヘテロポリ
酸としては、ケイタングステン酸、リンタングステン
酸、ケイモリブデン酸、リンモリブデン酸やこれらの中
和塩や部分中和塩などを挙げることができるが、上述し
たように、特にケイタングステン酸、ケイモリブデン酸
及びそれらの塩が好ましい。これらのヘテロポリ酸は、
1種以上を混合して用いることができる。
【0021】本発明の乾式混合は、特に水を加えること
なく混合するが、固相状態を保てば、結晶水などの多少
の水分が含有されても何ら支障はない。乾式混合の方法
は、単にスプーン、攪拌羽根等で混ぜ合わせる方法、ミ
ル等で粉砕混合する方法等を用いることができ、特に制
限はない。また、本発明の方法は、多少混合が不十分で
あっても触媒性能に影響が出難い。混合時の温度や混合
時間は、原料である周期律表第4族、第13族および第
14族から選ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は
水和酸化物、及びヘテロポリ酸及び/又はその塩の性質
に大きく影響しない範囲であればよく、特に制限はな
い。
【0022】同様に混練も、原料粉と少量の水をニーダ
ーに投入し、攪拌羽根で混合するような通常知られてい
る方法を用いることができ、特に制限はない。つまり、
周期律表第4族、第13族及び第14族金属から選ばれ
る1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物と、ヘ
テロポリ酸及び/又はその塩とを単に混合するための混
練であってもよいし、これらにバインダー、セラミック
繊維、界面活性剤等を加え、成形物を得るための混練で
あってもよい。このとき加える液体として、水が通常使
用されるが、エタノール、イソプロパノール等のアルコ
ール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン等のケトンでもよい。混練後成形する場合は、
押出機等公知の装置を用いてペレット状、ハニカム状等
に成形することができる。
【0023】ヘテロポリ酸及び/又はその塩の混合・担
持方法として、他に、前記混合物がペレット状等の成形
物であれば、ヘテロポリ酸を水、エタノール、イソプロ
パノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン等のケトンに溶解し、スプ
レー法等でさらに含浸し乾燥する方法も採用可能であ
る。また、ヘテロポリ酸及び/又はその塩を混合する前
の周期律表第4族、第13族及び第14族金属から選ば
れる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物をペ
レット状等に成形してあれば、上記と同様にしてヘテロ
ポリ酸及び/又はその塩をスプレー法等で含浸し、乾燥
・焼成する方法も採用できる。特に、工場の製造工程
が、通常の含浸法や混練法で既に完成している場合は、
このような製造方法が好適に使用できる。
【0024】ヘテロポリ酸及び/又はその塩の混合量
は、最終的に得られる固体酸触媒100重量部に対し、
タングステン量またはモリブデン量もしくはタングステ
ン量とモリブデン量の合計として1〜40重量部、好ま
しくは3〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部
になるように混合する。1重量部を切っても40重量部
を超えても触媒活性が低下するため、上記範囲に収まる
ように製造条件を決定するのが好ましい。
【0025】このようにして第4族、第13族及び第1
4族から選ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は水
和酸化物にヘテロポリ酸及び/又はその塩を混合した
後、さらに焼成による活性化処理を行う。活性化処理は
空気または窒素などのガス雰囲気中において、400〜
1000℃、好ましくは450〜900℃、より好まし
くは500〜800℃の温度で、1〜10時間焼成す
る。焼成温度が400℃を切っても1000℃を超えて
も触媒活性は低下する。ただし、モリブデン成分を添加
した場合、焼成温度が950℃を超えると酸化モリブデ
ンの揮散が顕著になり、酸強度が低下し、触媒活性が低
下する。このため、モリブデンを用いた場合の焼成温度
の上限は、900℃とするのが好ましい。
【0026】また、本発明による固体酸触媒の製造方法
の他の態様として、(a)第4族、第13族及び第14
族から選ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和
酸化物に、ヘテロポリ酸及び/又はその塩を担持又は混
合した後、第7族、第8族、第9族及び第10族から選
ばれる1種以上の金属及び/又は金属化合物を担持又は
混合して、焼成する方法、または(b)第4族、第13
族及び第14族から選ばれる1種以上の金属水酸化物及
び/又は水和酸化物に、ヘテロポリ酸及び/又はその塩
を担持又は混合した後焼成し、さらに第7族、第8族、
第9族及び第10族から選ばれる1種以上の金属及び/
又は金属化合物を担持又は混合して、焼成する方法、ま
たは(c)第4族、第13族及び第14族から選ばれる
1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物に、ヘテ
ロポリ酸及び/又はその塩と、第7族、第8族、第9族
及び第10族から選ばれる1種以上の金属及び/又は金
属化合物とを担持又は混合して、焼成する方法、または
(d)周期律表第7族、第8族、第9族及び第10族か
ら選ばれる1種以上の金属及び/又は金属化合物を含有
させた周期律表第4族、第13族および第14族から選
ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物
に、ヘテロポリ酸及び/又はその塩を担持又は混合し、
焼成する方法、等でも製造することができる。
【0027】上記(a)と(b)では、前述した第1の
製造方法と同様の操作、同様の組成で第4族、第13族
及び第14族から選ばれる1種以上の金属水酸化物及び
/又は水和酸化物とヘテロポリ酸及び/又はその塩とを
混合する。さらに(a)では、得られた混合物に第7
族、第8族、第9族及び第10族から選ばれる1種以上
の金属及び/又は金属化合物を担持又は混合した後に焼
成する。
【0028】この場合の第7族、第8族、第9族及び第
10族から選ばれる元素としては、白金、イリジウム、
ロジウム、ルテニウム、オスミウム、パラジウムの白金
族元素と、鉄及びマンガンが好適に用いられる。これら
の中でも、特に白金、パラジウム、ロジウム及びルテニ
ウムが好ましい。これらの第7族、第8族、第9族及び
第10族から選ばれる1種以上の金属は、金属そのもの
よりも化合物の形態になっているものを用いる方が好ま
しい。これらの金属化合物は、無水物としても水和物と
しても用いることができる。さらに、これらの金属化合
物は1種でも、2種以上を混合したものでも良い。
【0029】これらの金属をヘテロポリ酸を担持又は混
合した第4族、第13族及び第14族から選ばれる1種
以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物に含有させる
方法としては、上記金属及び/又は金属化合物が水溶性
の場合は、通常の含浸法、混練法などを用いることもで
きる。しかし、金属及び/又は金属化合物が固体或は粉
体であれば、乾式混合することが簡便で好ましい。特
に、金属及び/又は金属化合物は粉体状の方が、乾式混
合が容易であり、好適に使用できる。
【0030】しかし、前記ヘテロポリ酸を担持又は混合
した第4族、第13族及び第14族から選ばれる1種以
上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物がペレット状の
成形物である場合は、これに第7族、第8族、第9族及
び第10族から選ばれる1種以上の金属を含浸法で担持
することが好ましい。このよう製造する方法は、第7
族、第8族、第9族及び第10族から選ばれる金属の担
持量が少なくて済む利点がある。
【0031】また、触媒活性を維持しながらタングステ
ンの添加量を減少させる場合は、特開平2−71840
等で公知であるように硫酸分を硫黄として0.5〜5質
量%程度含有させてもよい。しかし、硫酸分の添加は同
時に分解活性の向上を伴うため、なるべく少量であるこ
とが望ましい。
【0032】この第7族、第8族、第9族及び第10族
から選ばれる1種以上の金属及び/又は金属化合物は、
最終的に得られる固体酸触媒100重量部に対し、第7
族、第8族、第9族及び第10族の金属として0.01
〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、より
好ましくは0.1〜10重量部となるように含有させ
る。0.01重量部を切ると、異性化反応、アルキル化
反応、水素化反応等に対する促進効果が弱まるため好ま
しくない。また、30重量部を超えると酸強度が低下す
ることがあるため、やはり好ましくない。前記のよう
に、ペレット状等の成形物に含浸法で担持する場合は、
0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜5重
量部、より好ましくは0.01〜2重量部となるように
含有させる。その後、焼成による活性化処理を行うが、
処理条件は第1の製造方法と同様である。
【0033】上記(b)の方法では、前述した第1の製
造方法で得られた固体酸触媒に、上記(a)の方法と同
様にして、第7族、第8族、第9族及び第10族から選
ばれる1種以上の金属及び/又は金属化合物を含有さ
せ、さらに2回目の焼成処理を行うものである。2回目
の焼成条件は、空気または窒素などのガス雰囲気中にお
いて、400〜850℃、好ましくは450〜800
℃、より好ましくは500〜800℃の温度で、1〜1
0時間焼成する。焼成温度は、400℃を切っても85
0℃を超えても触媒活性が低下する傾向がある。各成分
の組成、焼成条件等は第1の製造方法及び(a)の製造
方法と同様である。
【0034】また、(c)の製造方法は、周期律表第4
族、第13族及び第14族金属から選ばれる1種以上の
金属水酸化物及び/又は水和酸化物の粉体、ヘテロポリ
酸及び/又はその塩の粉体、及び、第7族、第8族、第
9族及び第10族から選ばれる金属及び/又は金属化合
物の粉体を乾式混合又は混練により混合し、焼成するも
のである。各成分の組成、焼成条件等は第1の製造方法
及び(a)の製造方法と同様である。
【0035】さらに、(d)の製造方法は、第4族、第
13族及び第14族から選ばれる1種以上の金属水酸化
物及び/又は水和酸化物に、あらかじめ第7族、第8
族、第9族及び第10族から選ばれる1種以上の金属及
び/又は金属化合物を担持又は混合した後、上記と同様
にヘテロポリ酸及び/又はその塩を混合し、400〜1
000℃の温度範囲で焼成して固体酸触媒を製造するも
のである。各成分の組成、焼成条件等は第1の製造方法
及び(a)の製造方法と同様である。
【0036】第4族、第13族及び第14族から選ばれ
る1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物に、第
7族、第8族、第9族及び第10族から選ばれる1種以
上の金属及び/又は金属化合物を担持又は混合する方法
は、通常の含浸法、混練法などを用いることができる。
しかし、金属及び/又は金属化合物の粉体と、第4族、
第13族及び第14族から選ばれる1種以上の金属水酸
化物及び/又は水和酸化物とを乾式混合する方法が簡便
である。また、第4族、第13族及び第14族から選ば
れる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸化物をペ
レット状等に成形したものに、第7族、第8族、第9族
及び第10族から選ばれる1種以上の金属及び/又は金
属化合物をスプレー法等により含浸してもよい。上記担
持物或は混合物は、100〜500℃、好ましくは15
0〜400℃で1〜10時間乾燥する。
【0037】乾燥後、粉末状のものは、ヘテロポリ酸及
び/又はその塩を、特に水を加えることなく乾式混合
し、活性化のための焼成処理をして固体酸触媒を調製す
る。混合時に固相状態を保てるのであれば、結晶水など
の多少の水分が含有されても何ら支障はない。同様に混
練法を用いる場合も、通常知られている方法を用いるこ
とができ、特に制限はない。混練後成形する場合は、押
出機等公知の装置を用いて実施することができる。
【0038】乾燥後の形状がペレット状等の成形物であ
れば、ヘテロポリ酸を水、エタノール、イソプロパノー
ル等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メ
チルイソブチルケトン等のケトンに溶解し含浸する方法
でも製造可能である。特に、工場の製造工程が、通常の
含浸法や混練法で既に完成している場合は、このような
製造方法が好適に使用できる。
【0039】得られた固体酸触媒は、必要であれば、ゼ
オライトや粘土化合物、活性炭、シリカ、アルミナ、シ
リカアルミナ等といった多孔質物質と混合して用いるこ
ともできる。また、粉体での使用だけでなく、ペレット
状、ハニカム状等に成形して使用することもできる。
【0040】
【実施例】
(実施例1)市販のオキシ塩化ジルコニウム50gを蒸
留水1lに溶解し、この溶液を室温で撹拌しながら、2
8%アンモニア水を最終的にpHが8になるまで加えて
沈殿を生成させた。生成した水和ジルコニアを濾別し、
蒸留水で洗浄した後乾燥して乾燥水和ジルコニアを得
た。この乾燥水和ジルコニアに、ケイタングステン酸2
6水和物を、調製後の触媒中のタングステン量が13w
t%になるように加え、粉砕器で混合粉砕した。得られ
た混合物を空気気流中700℃で3時間焼成し、タング
ステン酸シリカジルコニア触媒(WO3/SiO2/Zr
2)を得た。得られた触媒中のタングステン量は1
2.2wt%、ケイ素量は0.15wt%であった。同
様にして焼成温度を600℃、650℃、750℃、8
00℃と変えてタングステン酸シリカジルコニア触媒を
得た。
【0041】次にタングステン酸シリカジルコニア触媒
2g,クロロベンゼン22.5g、p-クロロベンゾイル
クロリド3.5gを50mlの冷却管及び撹拌子付きの
フラスコに入れ、オイルバスにて135℃に加熱、反応
させた。3時間反応後の反応液をガスクロマトグラフに
より分析した。焼成温度とアシル化体であるジクロロベ
ンゾフェノンの収率の関係を図1に示す。
【0042】(実施例2)実施例1と同様の方法で調製
したタングステン酸シリカジルコニア(700℃3時間
焼成品)に塩化白金酸の水溶液を、触媒中の白金量が
0.5%になるように含浸担持した。これを乾燥後、5
40℃で3時間焼成して白金含有タングステン酸シリカ
ジルコニア触媒(触媒A)を得た。
【0043】(実施例3)実施例1と同様の方法で調製
した乾燥水和ジルコニア粉300gに水和アルミナ(擬
ベーマイト)粉300gを加え、さらにケイタングステ
ン酸26水和物を調製後の触媒中のタングステン量が1
9%になるように加え、攪拌羽根のついた混練機で水を
加えながら2時間混練を行った。得られた混練物を直径
1.6mmの円形の穴の開いた押出機より押し出し、乾
燥後825℃で1時間焼成してタングステン酸シリカジ
ルコニアアルミナ触媒を得た。この触媒に塩化白金酸の
水溶液を、触媒中の白金量が0.5%になるようにスプ
レー担持した。これを乾燥後、540℃で1時間焼成し
て白金含有タングステン酸シリカジルコニアアルミナ触
媒(触媒B)の円柱状ペレットを得た。得られた触媒中
のタングステン量は19.1wt%、ケイ素量は0.3
wt%であった。
【0044】(比較例1)市販のオキシ塩化ジルコニウ
ム50gを蒸留水1lに溶解しこの溶液を室温で撹拌し
ながら、28%アンモニア水を最終的にpHが8になる
まで加えて沈殿を生成させた。生成した水和ジルコニア
を濾別し、蒸留水で洗浄した後乾燥して乾燥水和ジルコ
ニアを得た。この乾燥水和ジルコニアに、パラタングス
テン酸アンモニウムを、調製後の触媒中のタングステン
量が13wt%になるように加え、粉砕器で混合粉砕し
た。得られた混合物を空気気流中750℃で3時間焼成
し、タングステン酸ジルコニア触媒(WO3/ZrO2
を得た。得られた触媒中のタングステン量は12.6w
t%であった。同様にして焼成温度を650℃、700
℃、800℃、850℃と変えてタングステン酸ジルコ
ニア触媒を得た。
【0045】次にタングステン酸ジルコニア触媒2g,
クロロベンゼン22.5g、p-クロロベンゾイルクロリ
ド3.5gを50mlの冷却管及び撹拌子付きのフラス
コに入れ、オイルバスにて135℃に加熱、反応させ
た。3時間反応後の反応液をガスクロマトグラフにより
分析した。焼成温度とアシル化体であるジクロロベンゾ
フェノンの収率の関係を図1に示す。
【0046】(比較例2)市販のオキシ塩化ジルコニウ
ム50gを蒸留水1lに溶解しこの溶液を室温で撹拌し
ながら、28%アンモニア水を最終的にpHが8になる
まで加えて沈殿を生成させた。生成した水和ジルコニア
を濾別し、蒸留水で洗浄した後乾燥して乾燥水和ジルコ
ニアを得た。この乾燥水和ジルコニアにタングステン酸
を、調製後の触媒中のタングステン量が13wt%にな
るように加え、粉砕器で混合粉砕した。得られた混合物
を空気気流中750℃で3時間焼成し、タングステン酸
ジルコニア触媒(WO3/ZrO2)を得た。得られた触
媒中のタングステン量は13.4wt%であった。
【0047】次にタングステン酸ジルコニア触媒2g,
クロロベンゼン22.5g、p-クロロベンゾイルクロリ
ド3.5gを50mlの冷却管及び撹拌子付きのフラス
コに入れ、オイルバスにて135℃に加熱、反応させ
た。3時間反応後の反応液をガスクロマトグラフにより
分析した結果、アシル化体であるジクロロベンゾフェノ
ンの収率は1.2%であった。
【0048】(比較例3) 触媒の調製例 市販のオキシ塩化ジルコニウム1kgを蒸留水20lに
溶解し、この溶液を室温で撹拌しながら28wt%アン
モニア水をpHが8になるまで加えて沈澱を生成させ
た。生成した水和ジルコニアを濾別し、蒸留水で洗浄し
た後乾燥して、乾燥水和ジルコニアを得た。この乾燥水
和ジルコニア粉200gに、0.5mol/l硫酸水溶
液を3l加えて接触させた後過剰硫酸を濾過により除去
し、乾燥後、650℃で3時間焼成し、硫酸ジルコニア
触媒を得た。この触媒100gに塩化白金酸の水溶液
を、触媒中の白金量が0.5%になるように担持した。
これを乾燥後、500℃で3時間焼成して白金含有硫酸
ジルコニア触媒(触媒C)を得た。
【0049】(実験例1)実施例1のタングステン酸シ
リカジルコニア触媒10gに蒸留水100mlを加え、
20℃で10分間攪拌した。攪拌後吸引濾過し、さらに
30mlの蒸留水で洗浄した。その後、乾燥し、空気中
450℃で3時間焼成した。処理後のタングステン酸シ
リカジルコニア触媒に含まれるタングステン量は12.
0wt%であり、水処理によるタングステンの溶出は殆
ど見られなかった。
【0050】(実験例2)特公昭59−6181号公報
の製造方法に準じて製造した硫酸ジルコニア触媒(硫酸
含有量3.3wt%)10gに蒸留水100mlを加
え、20℃で10分間攪拌した。攪拌後吸引濾過し、さ
らに30mlの蒸留水で洗浄した。その後、乾燥し、空
気中450℃で3時間焼成した。処理後の硫酸ジルコニ
ア触媒に含まれる硫酸量は2.2wt%であり、水処理
による硫酸の溶出が起こることが分る。このため、硫酸
分含有固体酸触媒の活性を維持するには、硫酸分溶出を
抑制するか或は反応原料に硫酸分を添加し、触媒中の硫
酸分濃度が維持されるようにするのが望ましい。
【0051】異性化反応例 16〜24meshの粒に成形した白金含有触媒4cc
を、長さ50cm、内径1cmの固定床流通式反応器中
でパラフィン混合溶液(n-ヘキサン70重量%、n-ヘプ
タン15重量%、シクロヘキサン15重量%)の異性化
反応を行った。反応条件は次の通りである。 水素還元(触媒前処理)条件:300℃、1時間 反応温度:220℃ 反応圧力:5.6×105Pa(ゲージ圧で約4.8k
gf/cm2) LHSV=5.0hr-12/Oil=5(mol/mol) 通油開始1.5時間後の反応間出口組成をガスクロマト
グラフィーにより分析した結果を以下に示す。
【0052】 触媒A(実施例):n-ヘキサン転化率45% 分解率(C1〜C5留分の収率)1.2% 触媒B(実施例):n-ヘキサン転化率30% 分解率(C1〜C5留分の収率)0.3% 触媒C(比較例):n-ヘキサン転化率44% 分解率(C1〜C5留分の収率)9.8% この結果から、白金含有タングステン酸シリカジルコニ
ア(アルミナ)触媒は、白金含有硫酸ジルコニア触媒と
比べて、分解活性が大幅に低下していることが判明し
た。
【0053】
【発明の効果】本発明は、様々な酸触媒反応に対し高い
触媒機能を示し、反応中の触媒の安定性に優れており、
腐食性が少なく、反応物質との分離が容易で廃酸処理が
不要、また触媒の再利用も可能といった多くの効果を奏
するものである。また、工業的に適用が容易な乾式混合
又は混練による製造が可能であり、工業上の利用価値が
高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1におけるアシル化体収率
と触媒焼成温度との関係図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B01J 23/825 C07B 61/00 300 23/835 C07C 45/46 23/89 49/813 // C07B 61/00 300 B01J 23/64 103M C07C 45/46 23/82 M 49/813 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 21/00 - 38/74 C07B 61/00 C07C 45/46 C07C 49/813

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】周期律表第4族、第13族および第14族
    から選ばれる1種以上の金属水酸化物及び/又は水和酸
    化物に、タングステンあるいはモリブデンが含まれてい
    ヘテロポリ酸及び/又はその塩を、固相状態を保って
    担持又は混合した後、400〜1000℃の温度範囲で
    焼成することを特徴とする炭化水素転化用固体酸触媒の
    製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の金属水酸化物及び/又は水
    和酸化物が、水酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム
    と水酸化アルミニウムの混合物、水酸化ジルコニウムと
    擬ベーマイトとの混合物から選ばれる一種以上である
    求項1記載の炭化水素転化用固体酸触媒の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1記載の担持又は混合した後、第7
    族、第8族、第9族及び第10族から選ばれる1種以上
    の金属及び/又は金属化合物を担持又は混合し、焼成す
    ることを特徴とする請求項1記載の炭化水素転化用固体
    酸触媒の製造方法。
  4. 【請求項4】前記焼成の温度範囲が500〜800℃
    あることを特徴とする請求項1記載の炭化水素転化用固
    体酸触媒の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1記載の担持又は混合した後400
    〜1000℃の温度範囲で焼成し、さらに第7族、第8
    族、第9族及び第10族から選ばれる1種以上の金属及
    び/又は金属化合物を担持又は混合し、400〜850
    ℃の温度範囲で焼成することを特徴とする請求項1記載
    の炭化水素転化用固体酸触媒の製造方法。
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