JP3973176B2 - 酸触媒反応方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸-ジルコニア系の固体酸触媒を用いた酸触媒反応方法、特には、固体酸触媒を用いた炭化水素の異性化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化水素などの炭化水素変換反応、増炭反応、分解反応、重合反応、水素化反応、水和反応、脱水反応などを促進する触媒として、硫酸-ジルコニア系固体酸触媒が知られている。炭化水素変換反応の一種類である異性化反応は、特に高オクタン価ガソリンの製造方法として非常に有用な反応である。
【0003】
そのような反応に用いる触媒として、ジルコニアなどの周期律表第IV族金属水酸化物もしくは水和酸化物を硫酸分含有溶液と接触させた後、350〜800℃で焼成した硫酸根含有固体酸触媒(特公昭59−6181号公報)が知られている。この触媒は、100%硫酸(ハメットの酸度関数H0は−11.93)より強い酸強度を示す。また、硫酸分を含有させたジルコニアゲルを焼成して得られた触媒に白金を含有させた触媒が有効であることは既に公知である(米国特許3,032,599号公報)。上記の異性化を主な目的とする白金族金属と硫酸分を含有する金属酸化物触媒の製造方法として、硫酸分含有化合物による処理と白金族金属の担持との間の焼成を省いた製造法、硫酸分含有化合物による処理と白金族金属の担持の順序を変えた製造法、硫酸分含有化合物の種類を変えた製造法が特公平5−29503号公報、特公平5−29504号公報、特公平5−29505号公報および特公平5−29506号公報に開示されている。
【0004】
また、アルミニウムの水酸化物もしくは酸化物に硫酸分含有化合物を添加し、それを焼成して得られる固体酸触媒は、100%硫酸よりも強い酸強度を示すことが知られている(特開平5−96171号公報、荒田;Trends in Physical Chemistry 2巻、1項(1991年))。
【0005】
特開平9−38494号公報には硫酸根処理金属酸化物触媒成形体の製造法が開示されている。これは、金属水酸化物とベーマイトを用いて成形し、成形体を300℃以上500℃以下の温度で前焼成した後、硫酸根処理を行うことを特徴とするアルミナを結合剤とする触媒成形方法である。しかしながらその触媒活性はベーマイトを加えて成形したために、ベーマイトを加えない粉体触媒に比べて活性が低下している。このように、アルミナを加えた触媒は加えないものに比べて活性が低下するとされている。また、白金担持硫酸ジルコニア触媒粉末をベーマイト粉末と混合し、水を添加して練った後成形し、焼成した触媒は、さらに大幅に触媒活性が低下することも開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、触媒としての必要な特性を満足し、成形された固体酸触媒を製造する方法は、報告されていない。これらの硫酸分含有触媒を用いた炭化水素化合物の異性化反応の触媒前処理法としては、特公平6−29199号公報には、100〜400℃で水素還元を施す方法が、特開平9−290160号公報には、水素流通下、200〜500℃で1〜5時間水素還元を施す方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法によって行われる異性化反応などの触媒反応は、まだ十分に効率的なものとはいえなかった。本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、硫酸分を含有する固体酸触媒の触媒活性を高め、それにより炭化水素化合物の異性化などの酸触媒反応を効率よく行う方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、固体酸触媒の活性向上の検討を進めた結果、炭化水素化合物の異性化反応を行う前に、酸素を含む気流中で触媒を処理し、窒素雰囲気に置換した後、水素雰囲気下で炭化水素化合物の異性化反応を行ったところ、酸素を含む気流中での処理を行わなかった場合に比べて遙かに高い炭化水素異性化活性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明による酸触媒反応方法は、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分を含む担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を反応容器に充填し、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、大気に暴露することなく、酸触媒反応を行うものである。特に、前記担体がジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明による炭化水素類の酸触媒反応方法は、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分を含む担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、不活性雰囲気に置換し、炭化水素類と接触させるものである。特に、前記担体がジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明による炭化水素の異性化方法は、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分を含む担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、不活性雰囲気に置換し、水素雰囲気下で炭化水素と接触させるものである。特に、前記触媒がジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成された担体と、この担体に担持された硫酸分と第8族、第9族、または、第10族金属成分とを含む触媒であることが好ましい。さらに、前記触媒がアルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物を混練し、成形し、得られた成形物を正方晶構造のジルコニアが得られる温度で焼成し、第8族、第9族、または、第10族金属成分を担持し、その後300〜700℃で焼成することにより製造されたものであることが好ましい。
【0012】
【発明の作用・効果】
本発明は、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分を含む担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、酸触媒反応を行うものであり、反応前に固体酸触媒を前処理することより、触媒の活性を向上させることができる。特に、炭化水素化合物の異性化反応を効率よく行うことができる。
【0013】
本発明による活性向上の作用は明らかでないが、非酸化雰囲気中で同様の温度の処理を行っても活性の向上が少なかったことから、触媒に吸着している成分を脱離させるだけでは触媒の活性は十分に向上せず、加えて触媒上の微量不純物を酸化して除去することで活性が向上するものと考えられる。また、特に水素気流中などの還元雰囲気の高温下でこの処理を行うと、触媒中の硫酸分が還元されることにより触媒活性はむしろ低下する。
【0014】
【発明の実施の形態】
[固体酸触媒]
本発明に用いる固体酸触媒としては、従来、硫酸-ジルコニア系として知られている固体酸触媒(ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分を含む担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒)を用いることができる。なお、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分には、本発明の効果が得られる範囲において、他の金属成分を含んでいてもよい。他の金属としては、チタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ケイ素、錫、ガリウムなどを用いることができる。複合酸化物および/または含水複合酸化物でもよいし、単独の酸化物および/または含水酸化物の部分が混合されていてもよい。触媒重量中、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分は、20〜99重量%、特には50〜97重量%であることが好ましい。
【0015】
固体酸触媒中の硫酸分含有量は、硫黄量として0.2〜10重量%、特には1〜10重量%であることが好ましい。第8族、第9族、第10族から選ばれる金属成分としては、特に白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケルなどが好適に用いられ、固体酸触媒中に占める第8族、第9族、第10族金属の合計量が、0.05〜10重量%となるように添加することが好ましい。
【0016】
本発明に用いる触媒のジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分の結晶構造は、正方晶構造であることが好ましい。一部に単斜晶構造が存在してもよい。この構造はX線回折により確認できる。具体的には、CuKα線による、2θ=28.2゜と2θ=30.2゜のX線回折ピーク面積比(以下S28.2/S30.2比と略記する。S28.2は2θ=28.2゜における単斜晶ジルコニアのピークの面積、S30.2は2θ=30.2゜における正方晶ジルコニアのピークの面積)が1.0以下、好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.05以下である。単斜晶構造がほとんど存在していない方が、高い触媒活性が得られる。
【0017】
炭化水素化合物の異性化反応においては、ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成された担体と、この担体に担持された硫酸分と第8族、第9族、または、第10族金属成分を含む触媒が好ましく用いられる。この触媒は、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物を混練し、成形し、得られた成形物を正方晶構造のジルコニアが得られる温度で焼成し、第8族、第9族、または、第10族金属成分を担持し、その後300〜700℃で焼成することにより製造されたものであることが好ましい。
【0018】
本発明の対象となる触媒の製造において、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物は、いろいろな製法により得られたものを用いることができる。アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物の代わりにアルミニウムの酸化物であるα−アルミナやγ−アルミナを用いると、触媒の圧壊強度が低下し、また、成形後の焼成において単斜晶ジルコニアが混入しやすくなり、触媒活性が低下する。
【0019】
アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物は、触媒中のアルミナとジルコニアの合計重量におけるアルミナの重量が、5〜90重量%、好ましくは5〜50重量%、特に10〜50重量%とすることがより好ましい。この範囲未満では、触媒の圧壊強度が低下し、また、ジルコニアが安定しにくい。この範囲を超えると相対的に触媒活性が低下する。
【0020】
アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物は、通常粉体、好ましくは平均粒径0.5〜50μm、特には0.5〜20μmの形状を用いることが、触媒の活性および圧壊強度向上のために好ましい。アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物として、擬ベーマイトなどのベーマイト構造を有するアルミニウム水和酸化物を用いることが、触媒活性を向上できるので好ましい。
【0021】
ジルコニウムの水酸化物および/または水和酸化物はどのように製造しても構わないが、一般にはこれらの塩や有機金属化合物、例えばオキシ塩化物、アルコラート、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、オキシ硫酸塩などを中和もしくは加水分解することにより得ることができる。ジルコニウムの水酸化物もしくは水和酸化物は、X線、電子線の回折により明確な結晶構造を持たない無定形とすることで、触媒の圧壊強度が向上し、またジルコニアが安定しやすい。また、通常粉体、好ましくは平均粒径0.2〜50μm、特には0.2〜20μm、さらには、0.2〜5μmの形状を用いることが、触媒の活性および圧壊強度向上のために好ましい。
【0022】
硫酸分含有化合物としては、硫酸、硫酸アンモニウム、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、塩化チオニルなどがあげられるが、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウムが製造装置の腐食性も低く好ましい。硫酸分含有化合物はそのままでも、または水溶液のような溶液として用いても構わない。
【0023】
触媒製造時に配合する硫酸分含有化合物の重量は、焼成前のアルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物の全重量の3〜40重量%、特には、10〜30重量%とすることが、触媒活性を向上できるので好ましい。特に、硫酸アンモニウムなどを固体状の硫酸分含有化合物として用いることが好ましい。
【0024】
さらに硫酸分含有化合物は、固体の状態でも、液状でも、溶液の濃度に関しても特に限定はなく、この後行う混練に必用な溶液量などを考えて調製することができる。硫酸分含有化合物の添加量は、最終的に得られる固体酸触媒中に占める硫黄量が0.2〜10重量%、特には1〜10重量%となるようにことが好ましい。混合法については特には限定されない。
【0025】
触媒製造での混練には、一般に触媒調製に用いられている混練機であればどのようなものを用いても構わないが、通常は原料を投入し、水を加えて攪拌羽根で混合するような方法が好適に用いられるが、原料および添加物の投入順序など特に限定はない。混練の際には通常水を加えるが、スラリー状の粉体を用いる場合などは、水を加えなくてもよい。水以外に加える液体としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶媒でもよい。混練時の温度や混練時間は、原料であるアルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物の性質に大きく影響しない範囲であれば良く特に制限はない。また、同様に本発明の触媒性状が維持される範囲内であれば、硝酸などの酸やアンモニアなどの塩基、有機化合物、バインダー、セラミックス繊維、界面活性剤、ゼオライトなどを加えて混練しても構わない。しかし、本発明の触媒は混練時に特にこのような添加物を加えなくても十分な強度と高い触媒活性を有する。
【0026】
触媒調製での混練後の成形は、一般に触媒調製に用いられている成形方法を用いることができる。特に、ペレット状、ハニカム状等の任意の形状に効率よく成形できるので、スクリュー式押出機などを用いた押出成形が好ましく用いられる。成形物のサイズは特に制限はないが、通常、その断面の長さが0.2mm以上、好ましくは0.5〜20mmの大きさに成形される。例えば円柱状のペレットであれば、通常直径0.5〜10mm、長さ0.5〜15mm程度のものを容易に得ることができる。焼成後の圧壊強度は混練による影響が大きいため、上記混練時の水分、混練時間、電力量などをあらかじめ決定しておくことが望ましい。
【0027】
硫酸分含有化合物の混合・混練と成形の間に濾過や乾燥などといった工程を含まないため、操作が簡便であり、工業上大きなメリットがある。また、成形された触媒が得られるため、従来の粉体触媒では難しかった固定床の反応にも適用することができる。
【0028】
成形後の焼成は空気または窒素などのガス雰囲気中において、正方晶構造の酸化ジルコニウムが得られる温度で焼成する。擬ベーマイト型アルミナを用いた場合、好ましい焼成温度は450〜800℃、特に500〜800℃、さらには600〜800℃であり、また、好ましい焼成時間は0.1〜20時間である。焼成温度が高すぎると、酸化ジルコニウム結晶構造中の単斜晶の割合が増え、2θ=28.2゜と30.2゜のピーク面積比が1を越えてしまう場合があり、触媒活性も低下するため好ましくない。また、焼成温度が低すぎると酸化ジルコニウムが結晶化せず、触媒活性も低下するため好ましくない。
【0029】
本発明に用いる触媒が含有する第8族、第9族、第10族から選ばれる金属成分としては、特に白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケルなどが好適に用いられる。これらは金属そのものよりも化合物の形態になっているものを用いる方が好ましい。これらの金属化合物は、無水物としても、水和物としても用いることができる。さらにこれらの金属化合物は1種でも、2種以上を混合したものでもよい。これら金属化合物の添加量は、最終的に得られる固体酸触媒中に占める第8族、第9族、第10族元素の合計量が、0.05〜10重量%となるように添加することが好ましい。
【0030】
担持する方法には特に制限はないが、スプレー、浸漬などによる含浸法や、イオン交換法等が好適に用いられる。上記担持物は空気または窒素などのガス雰囲気中において、300℃より高く700℃より低い温度で0.1〜20時間焼成することが触媒の活性を高めるために好ましい。
【0031】
本発明による触媒中に占めるジルコニアとアルミナの合計量は、触媒活性、成形物の強度の点などから70重量%以上、より好ましくは80重量%以上になるようにすることが好ましい。触媒の成形強度は直径1.5mmの円柱ペレットの側面圧壊強度として3kg以上であることが実用上好ましい。
【0032】
[酸化雰囲気中での処理]
本発明では、通常、空気などの酸素の存在した雰囲気で300〜500℃の熱処理を行う。雰囲気の酸素の含有量は0.1〜50容量%、特には1〜30容量%が好ましく、窒素と酸素の混合物、窒素と空気の混合物、空気などが好適に用いられる。特に、処理温度350〜480℃、処理時間0.1〜100時間が好ましい。処理圧力は、減圧、常圧、加圧下で処理が可能であるが、常圧での処理が簡便であり、好ましい。この酸化雰囲気中での処理により、触媒は乾燥され、また、微量の吸着物質が酸化され除去されることにより活性化されると考えられるので、用いる空気は水分などの不純物が低減された空気を用いることが好ましい。具体的には、20℃における相対湿度を5%以下に除湿した雰囲気が好ましく用いられる。処理温度が高すぎると触媒の性状が変化し、また処理温度が低すぎると触媒が十分に乾燥されず、何れの場合も活性が低下する。触媒製造時の焼成などの熱処理の後、1日以上、特には、10日以上の期間、大気中におかれていた触媒に対してこの処理は有効である。また、非酸化雰囲気である酸素を含まない気流中で処理を行っても触媒の活性は低下する。
【0033】
酸化雰囲気中での処理の後、触媒は水分などの吸着をさける必要がある。このため、この処理は、反応を行う反応装置や反応器に触媒を導入した後に行い、大気を実質的に導入することなく、目的の酸触媒反応を開始することが好ましい。目的の酸触媒反応が水素雰囲気などの還元雰囲気で行われる場合には、反応開始前に、窒素ガスまたはアルゴンガスなどの希ガスのような不活性雰囲気に置換してからその反応を開始することが好ましい。なお、1日程度の期間、大気に暴露しても活性は大きく低下はしないので、小規模な反応装置などでは、反応容器外でこの酸化雰囲気中の処理を行ない、触媒を実質的に大気に暴露しない状態のまま、反応容器に触媒を導入してもよい。
【0034】
また、反応装置や反応器中で反応に使用され、活性が低下した触媒に適用することもできる。特に、触媒上にコークと呼ばれるような炭素質が析出している場合には、酸素濃度を0.1〜20容量%、特には0.2〜5容量%として、急激に炭素質の酸化が行われないようにすることが好ましい。
【0035】
[酸触媒反応]
本発明が適用される酸触媒反応としては、異性化反応、増炭反応、不均化反応、ニトロ化反応などがあり、増炭反応としては、アルキル化、重合、アシル化、エステル化、エーテル化、脱水反応などがあげられる。還元雰囲気などの非酸化雰囲気の反応に好ましく用いられる。好ましくは、炭化水素類が酸触媒反応の対象となり、炭化水素、および、その炭化水素に置換基を付与したような炭化水素誘導体が含まれる。特には、水素雰囲気下で炭化水素化合物を固体酸触媒と接触させる異性化反応に好ましく用いられる。
【0036】
[炭化水素化合物の異性化方法]
通常、酸化雰囲気中での処理後、反応温度付近まで降温した後、大気を導入することなく、反応器内を窒素、希ガスなどの不活性雰囲気に切り替え、さらに水素雰囲気とし、反応を行う。本発明による触媒の活性化は、水素雰囲気下で高い反応活性を触媒にもたらす。
【0037】
触媒は反応前に水素による還元処理を行ってもよい。この場合の処理温度は300℃よりも低い温度が好ましく、特には250℃よりも低い温度が好ましい。処理温度が高すぎると触媒中の硫酸分が還元され、触媒活性が低下する。しかしこれらの還元処理は必須ではなく、反応を水素雰囲気下で行えば、特に還元処理を行う必要はない。
【0038】
本発明の異性化で使用される好ましい炭化水素類としては、沸点範囲−20℃〜150℃程度の石油留分中にある炭化水素類、特には炭素数4〜6の炭化水素類を主成分とするものである。特に、直鎖パラフィンは分岐パラフィンに異性化され、オレフィンや芳香族化合物は水素化されて鎖状あるいは環状のパラフィンになり、さらに分岐パラフィンに異性化される反応に好ましく用いられる。
【0039】
本発明で使用される炭化水素化合物の異性化の反応条件としては、好ましい反応温度の範囲が100〜300℃、特には120〜240℃であり、好ましい反応圧力の範囲が1〜50kgf/cm2、好ましいLHSVの範囲が0.2〜10/hr、好ましい水素/原料比の範囲が0.2〜10mol/molである。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により詳細に説明する。
【0041】
[X線回折による結晶種比の算出方法]
X線回折チャートからジルコニアの正方晶と単斜晶のピーク分離を行い、2θ=28.2゜における単斜晶ジルコニアのピークの面積と、2θ=30.2゜における正方晶ジルコニアのピーク面積の比(S28.2/S30.2比)を算出した。なお、S28.2/S30.2比が0.02以下では、単斜晶ピークが不明瞭となり検出不能であった。X線回折チャートは以下の条件で測定した。
Figure 0003973176
【0042】
[平均粒径の測定方法]
日機装(株)MICROTRAC粒度分析計を用い、湿式測定法で測定した。これは、流れる粉体群にレーザー光を照射し、その前方散乱光により粒度分析を行うものである。
【0043】
[触媒の調製方法]
(触媒A、B) 市販の水酸化ジルコニウムを乾燥させ、平均粒径1.2μmの乾燥水和ジルコニアを得た。この乾燥水和ジルコニア粉1.50kgに平均粒径10μmの水和アルミナ(擬ベーマイト粉)500gを加え、さらに硫酸アンモニウム383gを加え、攪拌羽根のついた混練機で水を加えながら45分混練を行った。得られた混練物を直径1.6mmの円形の穴の開いた押出機より押し出し、110℃で乾燥して乾燥ペレットを得た。続いてこの乾燥ペレットを650℃で2時間焼成し、硫酸分を担持したジルコニア/アルミナ成形体の触媒である触媒Aを得た。この触媒A50gに、触媒中の白金量が0.5%になるように塩化白金酸の水溶液125mlを添加した。これを乾燥後、550℃で2時間焼成して白金および硫酸分を担持したジルコニア/アルミナ成形体の触媒である触媒Bを得た。
【0044】
(触媒C) 触媒Aと同様の方法で調製した乾燥ペレット50gに、触媒中の白金量が0.5%になるように、塩化白金酸の水溶液125mlを添加したところ、ペレットが粉化した。これを乾燥後、625℃で2時間焼成して白金および硫酸分を担持したジルコニア/アルミナ成形体の触媒である触媒Cを得た。
【0045】
(触媒D) 触媒Aと同様の方法で調製した乾燥水和ジルコニア粉50gに、触媒中の白金量が0.5%になるように、塩化白金酸の水溶液125mlを添加した。これを110℃で乾燥後、0.5mol/l硫酸水溶液125mlを添加し、乾燥後625℃で2時間焼成して白金および硫酸分を担持したジルコニア粉体の触媒である触媒Dを得た。
【0046】
(触媒E) 触媒Aと同様の方法で調製した乾燥水和ジルコニア粉50gに硫酸アンモニウム10gを加え、乳鉢で粉砕混合した。これを110℃で乾燥後、乾燥物50gに対し、触媒中の白金量が0.5%になるように、塩化白金酸の水溶液125mlを添加した。これを乾燥後625℃で2時間焼成して白金および硫酸分を担持したジルコニア粉体の触媒である触媒Eを得た。
【0047】
(触媒F) 触媒Aと同様の方法で調製した乾燥水和ジルコニア粉100gに硫酸アンモニウム20gを加え、乳鉢で粉砕混合した。これを110℃で乾燥後、650℃で2時間焼成して硫酸ジルコニア(硫酸分を担持したジルコニア粉体)を得た。この硫酸ジルコニア50gに対し、触媒中の白金量が0.5%になるように、塩化白金酸の水溶液125mlを添加した。これを乾燥後550℃で2時間焼成して白金および硫酸分を担持したジルコニア粉体の触媒である触媒Fを得た。
【0048】
[アシル化反応]
攪拌効率を上げるため、触媒Aを乳鉢で粉砕し、32メッシュ以下に篩い分けた触媒20gをオートクレーブ内に入れ、空気雰囲気に変えて400℃、1時間の前処理を行った。その後、大気を導入することなく、オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、クロロベンゼン225g、p-クロロベンゾイルクロリド35gを加え、135℃で攪拌しながら反応を行った。3時間反応後の反応液をガスクロマトグラフにより分析した。アシル化体であるジクロロベンゾフェノンの収率は29%であった。比較のために、前処理の雰囲気を窒素とし、他は同様にアシル化反応を行ったところ、ジクロロベンゾフェノンの収率は26%であった。
【0049】
[異性化反応1]
粉体触媒である触媒C〜Fは圧縮成形後16〜24メッシュの粒状に整粒し、また成形触媒である触媒Bはそのまま16〜24メッシュの粒に整粒した。各触媒を焼成後2日経過した後、白金含有触媒(触媒A〜E)4ccを、長さ50cm、内径1cmの固定床流通式反応器中に充填し、前処理の後、n−ヘキサンの異性化反応を行った。
【0050】
前処理は、温度:400℃、圧力:常圧、雰囲気:空気で1時間行った。その後、大気を導入することなく、反応器内を窒素雰囲気とし、さらに水素雰囲気としてから、異性化反応を開始した。
【0051】
n−ヘキサンの異性化反応は、反応温度:200℃、反応圧力(ゲージ圧):10kgf/cm2、LHSV=1.5/hr、水素/油比(H2/Oil):5(mol/mol)で行った。通油開始20時間後の反応管出口組成をガスクロマトグラフィーにより分析した結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003973176
【0053】
[異性化反応2]
触媒Bを用い、上述の異性化反応1と同様のn−ヘキサンの異性化反応を、反応温度:180℃、反応圧力(ゲージ圧):10kgf/cm2、LHSV=1.5/hr、水素/油比(H2/Oil):5(mol/mol)の反応条件で、前処理条件を変えて行った。前処理条件の温度、雰囲気、圧力を変えた反応での、通油開始20時間後の反応管出口組成をガスクロマトグラフィーにより分析した結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
Figure 0003973176
【0055】
なお、圧力は、kgf/cm2(ゲージ圧)で示している。触媒の活性を示す転化率、選択率は、n−ヘキサン転化率および2,2’−ジメチルブタン/鎖状C6を用いて以下により算出し、評価した。
【0056】
n−ヘキサン転化率=[1−(生成油中に占めるn−ヘキサンの重量%/原料油中に占めるn−ヘキサンの重量%)]×100(%)
2,2’−ジメチルブタン/鎖状C6=(生成油中に占める2,2’−ジメチルブタンの重量%/生成油中に占める炭素数6の鎖状炭化水素全体の重量%)×100(%)
【0057】
[異性化反応3]
反応により活性が低下した触媒の活性化処理を行った。触媒Bを用い、上述の異性化反応2の反応において水素の代わりに窒素を用いて100時間反応を行うことで触媒を劣化させた。この触媒を異なった雰囲気で前処理し、活性の変化を測った。雰囲気としては、水素雰囲気、窒素雰囲気、また、2容量%酸素を含む窒素を用い、400℃で2時間行った。活性の評価は、上述の異性化反応2と同じ反応を行い、通油開始20時間後の反応管出口組成をガスクロマトグラフィーにより分析することで行った。その結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
Figure 0003973176

Claims (4)

  1. ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成された担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物を混練し、成形し、得られた成形物を正方晶構造のジルコニアが得られる温度で焼成することにより製造し、反応容器に充填し、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、大気に暴露することなく、酸触媒反応を行うことを特徴とする酸触媒反応方法。
  2. ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成された担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物を混練し、成形し、得られた成形物を正方晶構造のジルコニアが得られる温度で焼成することにより製造し、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理し、不活性雰囲気に置換した後、炭化水素類と接触させることを特徴とする炭化水素類の酸触媒反応方法。
  3. ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成された担体と、この担体に担持された硫酸分とを含む固体酸触媒を、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物を混練し、成形し、得られた成形物を正方晶構造のジルコニアが得られる温度で焼成することにより製造し、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、不活性雰囲気に置換し、水素雰囲気下で炭化水素と接触させることを特徴とする炭化水素の異性化方法。
  4. ジルコニアおよび/または含水ジルコニアからなる部分と、アルミナおよび/または含水アルミナからなる部分で構成された担体と、この担体に担持された硫酸分と第8族、第9族、または、第10族金属成分とを含む固体酸触媒を、ジルコニウム水酸化物および/または水和酸化物、アルミニウム水酸化物および/または水和酸化物、並びに、硫酸分含有化合物を混練し、成形し、得られた成形物を正方晶構造のジルコニアが得られる温度で焼成し、第8族、第9族、または、第10族金属成分を担持し、その後300〜700℃で焼成することにより製造し、酸化雰囲気中300〜500℃の温度で処理した後、不活性雰囲気に置換し、水素雰囲気下で炭化水素と接触させることを特徴とする炭化水素の異性化方法
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