JP3429754B1 - 金型の製造方法 - Google Patents

金型の製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】 熱間工具鋼からなる金型内部に冷却用空間を
自在に形成することが可能な金型の製造方法を提供す
る。 【解決手段】 シリンダブロック鋳造用ボアーピン1
は、熱間工具鋼からなる先端ブロック10及び本体ブロ
ック20に、両ブロック10,20を組み合わせたとき
に所望形状の冷却用空間1aが本体ブロック20内に形
成されるように先端側開口凹部12a、本体側開口凹部
21aをそれぞれ形成した後、両ブロック10,20を
組み合わせると共に、溶接により接合して一体化するこ
とにより製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイカスト鋳造や
鍛造等に用いられる内部に冷却用空間を有する金型の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、鋳造や鍛造等の熱間加工に用
いられる金型においては、金型内部に冷却用空間を設け
た種々のタイプの金型が広く実用に供されている。すな
わち、金型の寿命は摩耗、かじり、或いは熱亀裂等の発
生に支配されるのであるが、これらの損傷に最も大きな
影響を与える要因が金型表面の温度上昇である。鋳造用
の金型や鍛造用の金型では、高温の金属溶湯或いは高温
に加熱された鋼等に金型の表面部が接することにより表
面温度が上昇し易いため、金型内部に設けた冷却用空間
内に冷却液を流動させて金型表面温度の上昇を防止し、
金型の長寿命化が図られている。
【0003】例えば、自動車用エンジンのシリンダブロ
ックの鋳造に用いられる従来技術におけるボアーピン1
01は、図19に示すように、熱間工具鋼により略円柱
状の外観を呈するように一体的に形成され、約650℃
のアルミニウム溶湯に直接接する先端部111と、外周
にシリンダボアーの内周面をなすスリーブが装着される
本体部121と、金型装置の可動ベースへの取付け部と
しての基端部131とを有している。また、ボアーピン
101の内部には軸線に沿って冷却路121aが形成さ
れている。そして、鋳造実施時には、冷却路121aに
冷却液配管が挿入配設され、図19において図示される
ように、冷却液配管を介して冷却液を冷却路内で流動さ
せることによりボアーピン101を内側から冷却しつつ
外部に排出する構造となっている。
【0004】また、従来技術における鍛造用穿孔パンチ
104は、図20に示すように、熱間工具鋼により略円
柱状の外観を呈するように一体的に形成され、先端部1
81と、本体部191と、金型装置の可動ベースへの取
付け部としての基端部195とを備えている。また、パ
ンチ104の内部には軸線に沿って冷却路191aが形
成されている。そして、穿孔実施時には、冷却路191
aに冷却液配管が挿入配設され、図20にて図示される
ように、冷却液配管を介して冷却液を冷却路191a内
で流動させることによりパンチ104を内側から冷却し
つつ外部に排出する構造となっている。また、先端部1
81には、耐熱性をさらに向上させるために、コバルト
合金による肉盛りが施される場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、内部に冷却
用空間を設けた金型において、金型内部からの冷却効率
は冷却用空間の設計に大きく依存している。すなわち、
冷却効率の高い冷却用空間を設計するためには、主とし
て、以下の二つを考慮する必要がある。一つは、冷却用
空間を、金型における温度上昇が著しい部位にできる限
り近接させて形成することである。他の一つは、金型内
部において、より大量の冷却液の流動を可能とすべく、
冷却用空間の容積を大型化することである。しかしなが
ら、上述した従来技術における鋳造用ボアーピンや鍛造
用パンチにおいては、冷却性能をより一層向上させるよ
うに冷却用空間を設計することが困難であるという問題
があった。
【0006】例えば、従来技術におけるボアーピン10
1においては、冷却路121aは基端部131の基端側
端面からドリル加工等により形成されるため、冷却路1
21aは軸線に沿った直線状であり且つ内径が全長に亘
って同一の空間とならざるを得ない。しかも、基端部1
31の外形寸法は本体部121よりも小さく、さらに、
基端部131に設けられたネジ孔131aによっても冷
却路121aの内径が制約されるため、結果として、図
19に図示されるような、径の細い冷却路121aしか
形成することができず、十分な冷却効果を発揮すること
が困難であった。同様に、従来技術におけるパンチ10
4においても、冷却路191aの内径は、本体部191
よりも小径の基端部195の外形寸法により制約される
ため、結果として、図20に図示されるような、細い冷
却路191aしか形成することができず、十分な冷却効
果を発揮することは困難であった。
【0007】すなわち、冷却室は、一体構造をなす鋳造
用ボアーピンや鍛造用パンチの基端部側からドリル等に
より形成するため、冷却室の内径は、基端部の外径寸法
や基端部に設けられたネジ孔等によって必然的に制約さ
れる。さらに、基端部側からのドリル加工によって形成
可能な冷却室は、軸線に沿った略直線状のものに限られ
るため、温度上昇が著しい部位に近接する位置に自在に
冷却室を形成することは極めて困難である。
【0008】本発明は、かかる課題に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、熱間工具鋼からなる金型の内部
に冷却用空間を自在に形成することが可能な金型の製造
方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、請求項1に記載の金型の製造方法は、内部に冷却用
空間を有する金型の製造方法であって、前記金型を構成
するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少
なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせ
たときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を
形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると
共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化
し、少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロッ
ク表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分
割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又
は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うこと
を特徴とする。従って、金型を熱間工具鋼からなる複数
の分割ブロックにより構成し、それらの少なくとも一つ
に開口形状を形成した後に、それら複数の分割ブロック
を組み合わせると共に溶接により接合して一体化するの
で、所望の大きさ及び形状の冷却用空間を所望の位置に
容易且つ自在に形成することが可能であり、ひいては金
型を安価に製造することが可能となり、さらに、少なく
とも溶接部分及びその周辺の分割ブロック表面部分が、
溶接部分と同一材料若しくは分割ブロックをなす熱間工
具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料によっ
て覆われ、表面部分に溶接部分の融合部や熱影響部が存
在せず、溶接部分近傍におけるヒートチェック現象の発
生等を防止することができる。そして、このようにして
製造された金型によれば、冷却用空間に冷却媒体を通す
ことにより内部から効率的に冷却が行われるため、摩
耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせる
ことにより長寿命化を図ることができるという効果を奏
する。
【0010】また、請求項に記載のシリンダブロック
鋳造用ボアーピンの製造方法は、内部に冷却用空間を有
するシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法であ
って、前記ボアーピンを構成するための熱間工具鋼から
なる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数
の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が
形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分
割ブロックを組み合わせると共に、熱間工具鋼系溶接材
料を用いて前記各分割ブロックを溶接により接合して一
体化することを特徴とする。従って、シリンダブロック
鋳造用ボアーピンを熱間工具鋼からなる複数の分割ブロ
ックにより構成し、それらの少なくとも一つに開口形状
を形成した後に、それら複数の分割ブロックを組み合わ
せると共に溶接により接合して一体化するので、所望の
大きさ及び形状の冷却用空間を所望の位置に容易且つ自
在に形成することが可能であり、ひいてはボアーピンを
安価に製造することが可能となり、さらに、溶接材料が
分割ブロックと同一の熱間工具鋼系であるため、溶接部
分と分割ブロック部分とが均質となり、熱間工具鋼から
なる一つのブロックからシリンダブロック鋳造用ボアー
ピンを製造した場合と同等の品質を得ることができる。
そして、このようにして製造されたシリンダブロック鋳
造用ボアーピンによれば、冷却用空間に冷却媒体を通す
ことにより内部から効率的に冷却が行われるため、摩
耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせる
ことにより長寿命化を図ることができるという効果を奏
する。
【0011】また、請求項に記載のシリンダブロック
鋳造用ボアーピンの製造方法は、少なくとも溶接部分及
びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部
分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間
工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉
盛りすることにより覆うことを特徴とする。従って、少
なくとも溶接部分及びその周辺の分割ブロック表面部分
が、溶接部分と同一材料若しくは分割ブロックをなす熱
間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料に
よって覆われ、表面部部分に溶接部分の融合部や熱影響
部が存在せず、溶接部分近傍におけるヒートチェック現
象の発生等を防止することができる。
【0012】また、請求項に記載の鍛造用穿孔パンチ
の製造方法は、内部に冷却用空間を有する鍛造用穿孔パ
ンチの製造方法であって、前記パンチを構成するための
熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一
つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前
記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した
後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前
記各分割ブロックを溶接により接合して一体化すること
を特徴とする。従って、鍛造用穿孔パンチを、熱間工具
鋼からなる複数の分割ブロックにより構成し、それらの
少なくとも一つに開口形状を形成した後に、それら複数
の分割ブロックを組み合わせると共に溶接により接合し
て一体化するので、所望の大きさ及び形状の冷却用空間
を所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であ
り、ひいてはパンチを安価に製造することが可能とな
る。そして、このようにして製造された鍛造用穿孔パン
チによれば、冷却用空間に冷却媒体を通すことにより内
部から効率的に冷却が行われるため、摩耗、かじり、熱
亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿
命化を図ることができるという効果を奏する。
【0013】また、請求項に記載の鍛造用穿孔パンチ
の製造方法は、前記分割ブロックの溶接において、コバ
ルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料を用いたこと
を特徴とする。従って、耐熱性及び/又は耐摩耗性が高
いコバルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料として
用いることにより、溶接部分における耐熱性及び/又は
耐摩耗性を向上させることができる。
【0014】また、請求項に記載の鍛造用穿孔パンチ
の製造方法は、前記複数の分割ブロックを組み合わせた
ときにパンチ本体部分の外形形状に略沿った冷却用空間
が形成されるように、前記開口形状を形成することを特
徴とする。従って、冷却用空間が、パンチ本体部分の外
形形状に略沿って形成されるので、冷却用空間の容積を
大きく確保することができ、且つ、冷却が必要とされる
表面部分の近傍に冷却用空間が設けられるので、鍛造用
穿孔パンチの冷却効率をより一層向上させることができ
る。
【0015】また、請求項に記載の鍛造用穿孔パンチ
の製造方法は、パンチ先端のコーナー部分に、前記分割
ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は
耐摩耗性が高い材料からなる肉盛が形成されることを特
徴とする。従って、高温の鋼との摩擦により損傷が生じ
易いパンチ先端のコーナー部分に、分割ブロックをなす
前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い
材料によって肉盛が形成されるので、鍛造用穿孔パンチ
の耐熱性及び/又は耐摩耗性をより一層向上させてさら
なる長寿命化を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した金型の
製造方法の各実施形態について図面を参照しつつ説明す
る。まず、本発明の第一の実施形態であるシリンダ鋳造
用ボアーピン(以下、単にボアーピンと称する)の製造
方法について、図1乃至図9を参照しつつ説明する。
尚、本実施形態の方法により製造されるボアーピンと
は、略円柱状の外観形状を有する金型部材であって(図
7参照)、自動車用エンジンのシリンダブロックをダイ
カスト鋳造する際に、シリンダボアを形成すべき位置
に、その軸線とシリンダボアの軸線とを一致させ、且つ
先端部が金型装置のキャビティ内に突入するように配設
されるものである。
【0017】本実施形態におけるシリンダ鋳造用ボアー
ピンの製造方法は、一体構造では自在に加工することが
極めて困難であった冷却用空間を、分割構造を採用する
ことにより予め加工し、その後、これらを近年に確立さ
れた熱間工具鋼の溶接技術を利用して一体化するもので
あり、図1のフローチャートに示すように、開口形状の
形成を含む分割ブロックの作製工程(ステップ1、以下
S1と略記する。他のステップも同様である)と、分割
ブロックの組み合わせ工程(S2)と、接合溶接工程
(S3)と、表面研削工程(S4)とからなる。以下、
各工程の詳細について図1のフローチャートと、図2乃
至図9の各図面を参照しつつ説明する。
【0018】最初に、熱間工具鋼からなる2個のワーク
(例えば、材質:JIS SKD61の焼き入れ焼き戻
し材、硬度:HRC48)を用意する。そして、これら
に公知の切削加工等を施すことにより、図2に示される
先端ブロック10、及び図3,図4に示される本体ブロ
ック20をそれぞれ作製する(図1:S1)。尚、先端
ブロック10及び本体ブロック20は、組み合わせるこ
とによってシリンダブロック鋳造用ボアーピンを構成す
るための本発明における複数の分割ブロックを構成する
ものである。
【0019】以下、S1の工程において作製された先端
ブロック10及び本体ブロック20の各部の加工形状に
ついて説明する。先端ブロック10は、ボアーピン1の
先端部11を構成するブロック状部材であり、図2に示
すように、円柱状の先端部本体11と、先端部本体11
より基端方向に突出する円筒状の嵌合凸部12とから構
成されている。先端部本体11の基端側の周縁部には、
縦断面が略半U字状の開先形状を有する開先部11aが
形成されている。また、嵌合凸部12は、その外径が、
後述する本体ブロック20の本体側開口凹部21aの内
径よりも僅かに小さく設定され、本体ブロック20の本
体側開口凹部21aに嵌合凸部12が嵌合することによ
り両ブロック10,20が機械的に結合される構造とな
っている。また、嵌合凸部12の径内側には、基端側に
向かって開口する先端側開口凹部12aが形成されてい
る。
【0020】本体ブロック20は、図3に示すように、
ボアーピン1の本体部21及び基端部31を構成するブ
ロック状部材である。本体部21は、シリンダボアーの
内周面をなす円筒状スリーブが装着される外周面を有す
る円柱状部分である。本体部21には、先端側に向かっ
て開口する本体側開口凹部21aが形成されている。本
体側開口凹部21aは、先端側開口凹部12aとともに
冷却用空間を形成する内壁部分であり、冷却液の流量を
多くして冷却効率を向上させるために、許容される強度
範囲内においてできる限り大きな容積を有するように形
成される。例えば、本体部21の外径が70mm程度と
した場合、本体側開口凹部21aは、本体部21外周面
より10mm程度の厚みを残して外周形状に略沿って内
側が切削加工によりくり貫かれることにより形成され
る。本体部21においては、先端側端面からドリル等に
よる切削加工を施すことが可能であるので、所望の大き
さ及び形状の本体側開口凹部21aを所望の位置に、容
易且つ自在に形成することができる。
【0021】また、本体部21の先端側の周縁部には、
縦断面が略半U字状の開先形状を有する開先部21bが
形成されている。開先部21bは、両ブロック10,2
0が組み合わされたときに先端ブロック10側の開先部
11aと共にU形開先部15をなし、溶接が施される部
分である。基端部31は、本体部21より基端側に向か
って突出状に設けられ、図示しない金型装置の可動ベー
スに固定される取り付け部である。基端部31は、横断
面が角丸四角形状を呈し、その一辺の長さは本体部21
の外径よりも小さく設定されている(図4参照)。ま
た、基端部31には、基端側端面において開口すると共
に本体部21の本体側開口凹部21aに連通するように
軸線に沿って設けられた配管挿入孔31aと、金型装置
の可動ベースにネジ止め固定するために螺刻された複数
のネジ孔31bとが形成されている。尚、配管挿入孔3
1aの内径は、基端部31断面の大きさ及び複数のネジ
孔31bの配置によって制約され、本体側開口凹部21
aよりも小径となっている。
【0022】次に、先端ブロック10の嵌合凸部12を
本体ブロック20の本体側開口凹部21aに嵌合させる
ことにより、先端ブロック10と本体ブロック20とを
組み合わせる(図1:S2)。この状態では、先端ブロ
ック10の開先部11aと、本体ブロック20の開先部
21bとが対向し且つ当接することにより、先端ブロッ
ク10と本体ブロック20との境界部分に断面略U字状
を呈するU形開先部15が全周に亘って形成される(図
5参照)。次に、先端ブロック10と本体ブロック20
との境界部分に形成されたU形開先部15に溶接を施す
ことにより、両ブロック10,20を接合して一体化す
る(図1:S3、図6参照)。
【0023】U型開先部15への溶接は、公知のTIG
溶接法により行う。また、U型開先部15の接合溶接に
使用される溶接材料としては、下盛用に熱間工具鋼系溶
接材料を、上盛用に本体部21の材質に近似の化学成分
を有する熱間工具系鋼溶接材料をそれぞれ使用する。
尚、下盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料は、例え
ば、重量%で、C:0.1、Si:0.4、Mn:0.
6、Cr:6.5、Mo:3.0を含有し、残部Fe及
び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するものと
する。一方、上盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料
は、例えば、重量%で、C:0.35、Si:0.6、
Mn:1.2、Cr:7.0、Mo:2.25及び微量
のTiを含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる
化学成分組成を有するものとする。尚、上述した下盛り
用又は上盛り用の熱間工具鋼系溶接材料の化学成分組成
は、一例を示すものであって、適宜変更して実施するこ
とが可能である。
【0024】溶接条件は、直径1.6mmのTIGワイ
ヤを使用する場合、電流:150A、電圧:30Vと
し、温度条件は、図8のグラフに示すように、予熱・パ
ス間温度:380℃とする。溶接を施工した後、一旦、
常温まで温度を低下させた後、後熱処理を温度条件55
0℃で5時間施し(図8参照)、後熱処理後の溶接部の
硬さをHRC48(先端ブロック10及び本体ブロック
20の硬さと同一)とする。尚、上述した各条件は、溶
接対象物の大きさ等によって適宜設定されるものであ
る。溶接工程は、図9に示すように、公知のTIG溶接
装置(図示せず)、電気炉、及び熱管理装置を使用して
行われる。電気炉は、上面が開口する箱形容器状の装置
であって、内壁に複数の電気ヒータが設けられて内部に
設置されたワーク全体を均一に加熱することができるよ
うになっている。熱管理装置は、電気炉内に設置された
ワークの温度を常時検出し、ワークの温度が設定温度に
保持されるように、電気ヒータのオン/オフ制御を行う
装置である。つまり、先端ブロック10及び本体ブロッ
ク20は、電気炉内に設置され、熱管理装置によって図
8のグラフに示す温度条件が保持されつつ、TIG溶接
装置を用いて溶接作業が施されるのである。
【0025】次に、U形開先部15が上述した溶接材料
により接合溶接されて一体となった先端ブロック10及
び本体ブロック20の表面部分に、公知の研削盤を用い
て所定の深さの研削加工を施す(図1:S4)。研削加
工の深さは、例えば、0.5mm程度とする(図6にお
いて研削加工後の外形形状を破線にて示す)。研削加工
では、両ブロック10,20の表面部分と共に、溶接金
属17の表面部分も所定深さで研削されることによって
表面が平滑に加工され、且つ、溶接用上盛材料が両ブロ
ック10,20とほぼ同一の材質であるので、研削加工
によって表面が平滑となったブロック10,20部分と
溶接部分17とは、目視による判別が極めて困難な程度
に均一な外観を呈している。以上のS1乃至S4の工程
を経て、図7に示すシリンダブロック鋳造用ボアーピン
1が完成する。
【0026】ボアーピン1は、図7に示すように、先端
ブロック10と本体ブロック20とが組み合わされ且つ
溶接により接合され、先端ブロック10の先端側開口凹
部12aと本体ブロック20の本体側開口凹部21aと
により、内部に冷却用空間1aが形成されている。冷却
用空間1aは、十分に大きな容積が確保されると共に、
損傷が生じやすく、特に冷却が必要とされる先端部11
外周の近傍にまで達するように形成されている。従っ
て、ボアーピン1を使用してシリンダブロックを鋳造す
る際に、基端部31の配管挿入孔31aを介して挿入さ
れた冷却液配管の先端開口部より冷却用空間1a内に冷
却媒体としての冷却液が導入され、冷却液が冷却用空間
1a内を流動することによりボアーピン1の内側から吸
熱し、温度上昇した冷却液が配管挿入孔31aの基端側
開口より外方へ排出されるので、極めて効率的にボアー
ピン1の冷却を行うことができる。これにより、ボアー
ピン1の摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展と
を遅らせることにより長寿命化を図ることができる。
【0027】尚、本発明者による実験では、図19に示
す従来技術によるボアーピンと図7に示す本実施形態に
よるボアーピンとをそれぞれ用いて、同一条件でシリン
ダブロックの鋳造を行った場合、従来のボアーピンに対
して、本実施形態のボアーピンは、摩耗及びかじりの発
生及び進展が約1/2のレベルに、熱亀裂の発生は約1
/3のレベルにまで低下することが確認されている。ま
た、従来技術におけるボアーピンは一体構造であり(図
19参照)、基端部131端面からドリル等により冷却
路121aの切削加工が行われていたため、基端部13
1の断面サイズやネジ孔131aの配置等により冷却路
121aの大きさや形成位置が制約されていた。これに
対し、本実施形態の製造方法によれば、ボアーピン1が
複数のブロック10,20に分割された分割構造である
ので、各ブロック10,20の端面に、冷却用空間1a
を形成するための開口凹部12a、21aをそれぞれ所
望の大きさ及び形状で所望の位置に容易且つ自在に形成
することが可能であり、ひいてはボアーピンを安価に製
造することができるという顕著な効果を奏する。
【0028】また、先端ブロック10の嵌合凸部12が
本体ブロック20の本体側開口凹部21aに嵌合して機
械的に結合する構造となっているので、溶接作業時に両
ブロック10,20の開先部11a,21bの位置がず
れることが防止され、溶接作業を容易且つ正確に行うこ
とができるという効果をも奏する。
【0029】次に、第一の実施形態の種々の変形例につ
いて図面を参照しつつ説明する。尚、第一の実施形態と
同一の構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略す
る。まず、第一の変形例について図10を参照しつつ説
明する。第一の実施形態では、ボアーピンの先端部と本
体部及び基端部とを分割する構成であったが、本変形例
のボアーピン2は、先端部51及び本体部61からなる
本体ブロック60と、基端部71からなる基端ブロック
70とに分割し、両ブロック60,70を組み合わせて
溶接により接合して一体化する構成としたものである。
尚、本体ブロック60及び基端ブロック70は、組み合
わせることによってシリンダブロック鋳造用ボアーピン
を構成するための本発明における複数の分割ブロックを
構成するものである。
【0030】本体ブロック60に本体側開口凹部61a
が、基端ブロック70に基端側開口凹部72aがそれぞ
れ形成されている。そして、基端ブロック70の嵌合凸
部72を本体側開口凹部61aに嵌合して組み合わせる
ことにより境界部分に形成されるU形開先部65に溶接
を施して両ブロック60,70を接合・一体化すること
により、冷却用空間3aが形成される。尚、溶接部分6
7は、上述した第一の実施形態と同様の溶接材料により
形成される。本変形例では、本体ブロック60の基端側
端面から本体側開口凹部61aを所望の大きさ及び形状
で所望の位置に自在に加工することができる。
【0031】次に、第二の変形例について、図11を参
照しつつ説明する。本変形例では、U形開先部15に溶
接を施すのに加えて、損傷が発生しやすい先端部11表
面に耐熱性及び又は耐摩耗性に優れた材料を肉盛りして
複合化したものである(図11の符号18部分参照)。
具体的には、例えば、ボアーピン3(先端ブロック10
及び本体ブロック20)の材質をSKD61とし、先端
部11の肉盛り部分18には、ボアーピン2と近似する
熱膨張係数をもち、より耐熱性及び/又は耐摩耗性に優
れた材料として、重量%で、C:0.28、Mn:0.
3、Si:0.8、Ni:18、Mo:5、Co:1
0、微量のTi及びAlを含有し、残部Fe及び不可避
的不純物からなる化学成分組成を有するものを用いた。
尚、上述した化学成分組成は、一例を示すものであっ
て、適宜変更して実施することが可能である。
【0032】本変形例によれば、金属溶湯に直接接する
ことにより損傷が生じ易い先端部11の表面部分に、耐
熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料が肉盛りされてい
るので、より一層、ボアーピンの長寿命化を図ることが
可能となる。また、先端部11への肉盛りは、U形開先
部15への溶接作業と併せて効率的に行うことができる
ので、工数の増加は少ない。
【0033】次に、第三の変形例について、図12及び
図13を参照しつつ説明する。まず、本変形例によるボ
アーピンの製造方法についての説明に先立って、第一の
実施形態の図6の状態におけるボアーピン1の溶接部1
7近傍の構成について、図12の拡大断面図を参照しつ
つ説明する。溶接部17近傍は、図12に示すように、
溶接金属部、融合部(ボンド部とも称される)、熱影響
部、及び原質部の各部に分けられる。ここで、溶接金属
部は、溶接棒から滴下した溶融金属と、溶融した母材
(ブロック10又は20、以下同様)の一部とが混ざり
合って短時間に凝固した部分である。融合部は、溶接金
属部と母材との接点に相当する部分である。熱影響部
は、融合部に接する母材部分であり、母材の内では最も
大きな溶接熱影響を受ける部分である。原質部は、溶接
熱影響をまったく受けないか、受けても無視できる程度
の母材部分である。
【0034】そして、ボアーピンに対して繰り返される
加熱−冷却によって、母材、すなわちブロック10又は
20表面よりも先に、上述した融合部近傍において、熱
間加工用金型の代表的な損傷の一つであるヒートチェッ
ク現象が現れる傾向がある。ここで、融合部近傍におけ
るヒートチェック現象が、ボアーピン先端部の損傷と同
時期或いは遅れて発生する場合は問題がない。しかし、
使用条件によっては、冷却用空間への冷却液の循環によ
る冷却効果によってボアーピン先端部が損傷発生に到っ
ていないにも拘らず、融合部近傍にヒートチェック現象
が発生し、これがボアーピンの寿命を支配する場合は問
題となる。
【0035】そこで、本変形例のボアーピン4では、図
13に示すように、ブロック10,20部分の外形形状
を3mm程度以内で予め小さく加工し、少なくとも溶接
部17及びその周辺の先端部11及び本体部21の表面
部分(図13では先端部11及び本体部21表面部分の
全体)を溶接材料で肉盛りすることにより、これらの表
面部分を覆う表面溶接部19を設けている。本変形例に
よれば、加熱−冷却にさらされるボアーピン4表面が溶
接金属で被われて同一成分となっており、表面部分には
図12に示されるような異なる性質を有する融合部や熱
影響部が存在しないので、溶接部分近傍においてヒート
チェック現象が先端部よりも先行して発生することを防
止できる。尚、表面溶接部19に使用する溶接材料は、
基本的には、両ブロック10,20の溶接に使用した溶
接材料と同一で問題ないが、ボアーピンの使用条件を勘
案して、より耐熱性、耐摩耗性、耐ヒートチェック性の
少なくとも一つに優れた溶接材料を適宜選択して使用す
ることも可能である。
【0036】次に、本発明の第二の実施形態について、
図14乃至17を参照しつつ説明する。本実施形態は、
本発明の金型の製造方法を、鍛造用穿孔パンチの製造方
法に適用したものである。最初に、熱間工具鋼からなる
ワーク(例えば、材質:JIS SKD8の焼き入れ焼
き戻し材、硬度:HRC52)を2個用意する。そし
て、これらに公知の切削加工等を施すことにより、図1
4(a)に示される先端ブロック80、及び図14
(b)に示される本体ブロック90をそれぞれ作製する
(図1:S1)。尚、先端ブロック80及び本体ブロッ
ク90は、組み合わせることによって鍛造用穿孔パンチ
を構成するための本発明における複数の分割ブロックを
構成するものである。
【0037】以下、S1の工程において作製された先端
ブロック80及び本体ブロック90の各部の加工形状に
ついて説明する。先端ブロック80は、鍛造用穿孔パン
チ(以下、単にパンチと称する)5の先端部81を構成
するブロック状部材であり、図14(a)に示すよう
に、円盤状の先端部本体81と、先端部本体81より基
端方向に突出する嵌合凸部82とから構成されている。
先端部本体81の基端側の周縁部には、テーパ状の開先
形状を有する開先部81aが形成されている。また、嵌
合凸部82は、その外径が、後述する本体ブロック90
の本体側開口凹部91aの内径よりも僅かに小さく設定
され、本体ブロック90の本体側開口凹部91aに嵌合
凸部82が嵌合することにより両ブロックが結合される
構造となっている。また、嵌合凸部82の径内側には、
基端側に向かって開口する先端側開口凹部82aが形成
されている。
【0038】本体ブロック90は、図14(b)に示す
ように、パンチ5の本体部91及び基端部95を構成す
るブロック状部材である。本体部91は、円柱状の外観
を呈し、先端側に向かって開口する本体側開口凹部91
aを有している。本体側開口凹部91aは、先端側開口
凹部82aとともに冷却用空間4aを形成する内壁部分
であり、冷却液の流量を多くして冷却効率を向上させる
ために、許容される強度内においてできる限り大きな容
積を有するように形成される。例えば、本体部91の外
径を60mm程度とした場合、本体側開口凹部91a
は、本体部91外周面より10mm程度の厚みを残し
て、その内側が切削加工によりくり貫かれることにより
形成される。本体部91においては、先端側端面からド
リル等による切削加工を施すことが可能であるので、所
望の大きさ及び形状の本体側開口凹部91aを所望の位
置に、容易且つ自在に形成することができる。
【0039】また、本体部91の先端側の周縁部には、
テーパ状の開先形状を有する開先部91bが形成されて
いる。開先部91bは、先端ブロック80側の開先部8
1aと共にV形開先部85をなし、溶接が施される部分
である(図15参照)。基端部95は、本体部91より
基端側に向かって突出状に設けられ、図示しない金型装
置の可動ベースに固定される取り付け部である。基端部
95は、本体部91よりも小径の円柱状を呈し、外周に
は可動ベースに取付けるための雄ネジ95bが螺刻され
ている。また、基端部95には、基端側端面において開
口すると共に本体部91の本体側開口凹部91aに連通
するように軸線に沿って設けられた配管挿入孔95aが
形成されている。尚、配管挿入孔31aの内径は、基端
部95断面の大きさによって制約され、本体側開口凹部
91aよりも小径となっている。
【0040】次に、先端ブロック80の嵌合凸部82を
本体ブロック90の本体側開口凹部91aに嵌合させる
ことにより、先端ブロック80と本体ブロック90とを
組み合わせる(図1:S2)。この状態では、先端ブロ
ック80の開先部81aと、本体ブロック90の開先部
91bとが対向し且つ当接することにより、先端ブロッ
ク80と本体ブロック90との境界部分に断面略V字状
を呈するV形開先部85が全周に亘って形成される(図
15参照)。次に、先端ブロック80と本体ブロック9
0との境界部分に形成されたV形開先部85に溶接を施
すことにより、両ブロック80,90を接合して一体化
する(図1:S3、図16参照)。
【0041】V型開先部85への溶接は、公知のTIG
溶接法により行う。また、V型開先部85の接合に使用
される溶接材料としては、下盛用に熱間工具鋼系溶接材
料を、上盛用に熱間工具鋼系溶接材料をそれぞれ使用す
る。尚、下盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料は、
重量%で、例えば、C:0.1、Si:0.4、Mn:
0.6、Cr:6.5、Mo:3.0を含有し、残部F
e及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するも
のとする。一方、上盛用として用いる熱間工具鋼系溶接
材料は、重量%で、例えば、C:0.4、Cr:6.
5、Mo:1.5、W:8、V:0.5を含有し、残部
Fe及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有する
ものとする。尚、上述した下盛り用又は上盛り用の熱間
工具鋼系溶接材料の化学成分組成は、一例を示すもので
あって、適宜変更して実施することが可能である。
【0042】溶接条件は、直径2.0mmのTIGワイ
ヤを使用する場合、電流:200A、電圧:35Vと
し、温度条件は、予熱・パス間温度:450℃とする。
溶接を施工した後、一旦、常温まで温度を低下させた
後、後熱処理を温度条件570℃で3時間施し、後熱処
理後の溶接部の硬さをHRC52(先端ブロック80及
び本体ブロック90の硬さと同一)とする。尚、溶接工
程に用いる装置は、第一の実施形態と同様である(図9
参照)。また、上述した各条件は、溶接対象物の大きさ
等によって適宜設定されるものである。
【0043】次に、V形開先部85が上述した溶接材料
により接合溶接されて一体となった先端ブロック80及
び本体ブロック90の表面部分に、公知の研削盤を用い
て所定の深さの研削加工を施す(図1:S4)。研削の
深さは、例えば、0.5mm程度とする(図16に研削
加工後の外形形状を破線にて示す)。研削加工では、両
ブロック80,90の表面と共に、溶接金属87の表面
部分も所定深さで研削されることによって表面が平滑に
加工され、且つ、溶接用上盛材料が両ブロック80,9
0とほぼ同一の材質であるので、研削加工によって表面
が平滑となったブロック80,90部分と溶接部分87
とは、目視による判別が極めて困難な程度に均一な外観
を呈している。以上のS1乃至S4の工程を経て、図1
7に示す鍛造用穿孔パンチ5が完成する。
【0044】パンチ5は、図17に示すように、先端ブ
ロック80と本体ブロック90とが溶接により接合さ
れ、先端ブロック80の先端側開口凹部82aと本体ブ
ロック90の本体側開口凹部91aとにより、内部に冷
却用空間4aが形成されている。冷却用空間4aは、十
分に大きな容積が確保されると共に、損傷が生じやす
く、特に冷却が必要とされる先端部81のコーナー部近
傍にまで達するように形成されている。従って、パンチ
5を使用して穿孔を行う際に、基端部95の配管挿入孔
95aを介して挿入された冷却液配管の先端開口部より
冷却用空間4a内に冷却液が導入され、冷却液が冷却用
空間4a内を流動することによりパンチ5の内側から吸
熱し、温度が上昇した冷却液が配管挿入孔95aの基端
側開口より排出されるので、極めて効率的にパンチ5の
冷却を行うことができる。これにより、パンチ5の摩
耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせる
ことにより長寿命化を図ることができる。
【0045】尚、本発明者による実験では、従来技術に
よるパンチの平均寿命が約250ショットであったのに
対し、本実施形態によって製造されたパンチの平均寿命
は約600ショットとなっており、寿命が約2倍以上に
向上することが確認されている。また、従来技術におけ
るパンチ(図20参照)では、基端部195端面からド
リル等により冷却路191aの切削加工が行われていた
ため、基端部195の断面サイズ等により冷却路191
aの大きさや形成位置が制約されていた。これに対し、
本実施形態の製造方法によれば、パンチ5が複数のブロ
ック80,90に分割されているので、各ブロック8
0,90の端面に、冷却用空間4aを形成するための開
口凹部82a、91aをそれぞれ所望の大きさ及び形状
で所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であ
るという顕著な効果を奏する。
【0046】また、先端ブロック80の嵌合凸部82が
本体ブロック90の本体側開口凹部91aに嵌合して結
合する構造となっているので、溶接作業時に両ブロック
80,90の開先部81a,91bの位置がずれること
が防止され、溶接作業を容易且つ正確に行うことができ
るという効果をも奏する。
【0047】次に、第二の実施形態の変形例について、
図18を参照しつつ説明する。本変形例では、先端ブロ
ック80と本体ブロック90とから形成されるV形開先
部86が先端部81のコーナー部に位置している。そし
て、V形開先部86に耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れ
た材料で溶接を施して両ブロックを接合すると共に、損
傷が生じやすい先端部81のコーナー形状を当該溶接材
料を肉盛りすることにより形成したものである(図18
の符号88部分参照)。
【0048】具体的には、例えば、パンチ6(先端ブロ
ック80及び本体ブロック90)の材質をSKD8と
し、先端部81の肉盛り部分88には、より耐熱性及び
/又は耐摩耗性に優れた材料として、重量%で、C:
0.3、Cr:30、Mo:5、Ni:4を含有し、残
部Co及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有す
るコバルト合金系溶接材料を用いる。尚、耐熱性及び/
又は耐摩耗性に優れた材料として、コバルト合金系溶接
材料に代えてニッケル合金系溶接材料を使用することも
可能である。本変形例によれば、損傷が生じ易い先端部
81のコーナー部分88が、耐熱性及び/又は耐摩耗性
に優れた材料が肉盛りされて形成されているので、より
一層、パンチの長寿命化を図ることが可能となる。ま
た、先端部81コーナー部分88の形成は、V形開先部
86への溶接作業と同時に行われるので、工数は殆ど増
加することがない。尚、本発明者による実験により、本
変形例のパンチ6では、上述した第二の実施形態のパン
チ5と比較して寿命が更に20〜50%向上することを
確認している。
【0049】尚、本発明は上述した各実施形態に限定さ
れるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種
々の変更を施すことが可能である。例えば、前記各実施
形態では、シリンダブロック鋳造用ボアーピン又は鍛造
用穿孔パンチの製造方法に本発明を適用した例を示した
が、金型の種類はこれらに限られず、内部に冷却用空間
を有する種々の金型の製造に適用することが可能であ
る。例えば、前記第一の実施形態では、先端ブロック1
0と本体ブロック20とに、それぞれ開口形状を形成し
たが、一方のみに形成してもよい。要するに、両ブロッ
クが組み合わされたときに内部に冷却用空間が形成され
るように、少なくも一つのブロックに開口形状を形成す
ればよいのである。また、開口形状は、上述した各実施
形態において示した凹部形状に限定されず、冷却が特に
必要とされる部位への冷却効果が高い種々の形状の冷却
用空間を形成するために溝状、孔状等の種々の開口形状
とすることが可能である。
【0050】また、前記各実施形態では、略円柱状の外
形形状を有する金型(ボアーピン又はパンチ)を、先端
部と本体部との間、又は本体部と基端部との間で軸線と
直交する平面にて分割する例を示したが、金型の複数ブ
ロックへの分割態様はこれらに限定されない。例えば、
内部に冷却用空間を有する金型本体部の長手方向の中間
部分において軸線と直交する平面にて分割してもよく、
或いは、略円柱状の軸線を通る平面にて縦割り状に分割
しても構わない。また、分割位置は1箇所には限られ
ず、2箇所以上に分割位置を設けて3個以上の分割ブロ
ックを組み合わせることにより金型を構成しても構わな
い。また、前記第一の実施形態の第二の変形例及び第三
の変形例においては、表面部分を覆う肉盛り材料として
ワイヤに代えて粉末材料を使用する溶接技術を用いても
よい。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
シリンダブロック鋳造用ボアーピンや鍛造用穿孔パンチ
等の金型の内部に所望の大きさ及び形状の冷却用空間を
所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であ
る。従って、本発明の製造方法により製造されたシリン
ダブロック鋳造用ボアーピンや鍛造用穿孔パンチ等の金
型によれば、冷却用空間に冷却媒体を通すことにより内
部から効率的に冷却が行われるため、摩耗、かじり、熱
亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿
命化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金型の製造方法における各工程の流
れを示すフローチャートである。
【図2】 (a)は、本発明の第一の実施形態のボアー
ピンを構成する先端ブロックの側面図であり、(b)は
(a)においてA線矢視方向における正面図である。
【図3】 第一の実施形態のボアーピンを構成する本体
ブロックの側面図である。
【図4】 図3の本体ブロックにおいてB線矢視方向に
おける背面図である。
【図5】 第一の実施形態における先端ブロックと本体
ブロックとを組み合わせた状態を示す縦断面図である。
【図6】 第一の実施形態における先端ブロックと本体
ブロックとを溶接により接合して一体化した状態を示す
縦断面図である。
【図7】 第一の実施形態における完成したボアーピン
の縦断面図である。
【図8】 第一の実施形態の溶接工程及び後熱工程にお
ける温度変化を示すグラフである。
【図9】 溶接工程において使用される装置の構成を模
式的に示す説明図である。
【図10】 第一の実施形態の第一の変形例におけるボ
アーピンの縦断面図である。
【図11】 第一の実施形態の第二の変形例におけるボ
アーピンの縦断面図である。
【図12】 図6におけるボアーピンの溶接部付近の構
成を拡大して示す拡大断面図である。
【図13】 第一の実施形態の第三の変形例におけるボ
アーピンの縦断面図である。
【図14】 (a)は第二の実施形態のパンチを構成す
る先端ブロックの側面図であり、(b)は本体ブロック
の側面図である。
【図15】 第二の実施形態における先端ブロックと本
体ブロックとを組み合わせた状態を示す縦断面図であ
る。
【図16】 第二の実施形態における先端ブロックと本
体ブロックとを溶接により接合して一体化した状態を示
す縦断面図である。
【図17】 第二の実施形態における完成したパンチの
縦断面図である。
【図18】 第二の実施形態の変形例におけるパンチの
縦断面図である。
【図19】 従来技術におけるボアーピンの縦断面図で
ある。
【図20】 従来技術におけるパンチの縦断面図であ
る。
【符号の説明】
1,2,3,4…シリンダブロック鋳造用ボアーピン
(金型)、1a,2a,3a、4a…冷却用空間、10
…先端ブロック(分割ブロック)、20,60…本体ブ
ロック(分割ブロック)、70…基端ブロック(分割ブ
ロック)、12a…先端側開口凹部(開口形状)、21
a,61a…本体側開口凹部(開口形状)、72a…基
端側開口凹部(開口形状)、15…U形開先部、17…
溶接部、18…先端肉盛部、19…表面溶接部、5,6
…鍛造用穿孔パンチ(金型)、5a,6a…冷却用空
間、80…先端ブロック、90…本体ブロック、82a
…先端側開口凹部(開口形状)、91a…本体側開口凹
部(開口形状)、85…V形開先部、87…溶接部、8
8…先端肉盛部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B23K 9/04 B23K 9/04 X (56)参考文献 特開 平9−267177(JP,A) 特開 平11−291088(JP,A) 特開 昭61−182876(JP,A) 特開2002−144031(JP,A) 特開2002−168207(JP,A) 特開2002−160056(JP,A) 実開 平4−47842(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22C 9/06 B23K 9/00 - 9/32 B21J 13/02 B21D 28/14,28/34

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に冷却用空間を有する金型の製造方
    法であって、 前記金型を構成するための熱間工具鋼からなる複数の分
    割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロッ
    クを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるよ
    うに開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを
    組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により
    接合して一体化し、少なくとも溶接部分及びその周辺の
    前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料
    若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも
    耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすること
    により覆うことを特徴とする金型の製造方法。
  2. 【請求項2】 内部に冷却用空間を有するシリンダブロ
    ック鋳造用ボアーピンの製造方法であって、 前記ボアーピンを構成するための熱間工具鋼からなる複
    数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割
    ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成さ
    れるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロ
    ックを組み合わせると共に、熱間工具鋼系溶接材料を用
    いて前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化す
    ることを特徴とするシリンダブロック鋳造用ボアーピン
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも溶接部分及びその周辺の前記
    分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若し
    くは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱
    性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることによ
    り覆うことを特徴とする請求項に記載のシリンダブロ
    ック鋳造用ボアーピンの製造方法。
  4. 【請求項4】 内部に冷却用空間を有する鍛造用穿孔パ
    ンチの製造方法であって、 前記パンチを構成するための熱間工具鋼からなる複数の
    分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロ
    ックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成される
    ように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロック
    を組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接によ
    り接合して一体化することを特徴とする鍛造用穿孔パン
    チの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記分割ブロックの溶接において、コバ
    ルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料を用いたこと
    を特徴とする請求項に記載の鍛造用穿孔パンチの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 前記複数の分割ブロックを組み合わせた
    ときにパンチ本体部分の外形形状に略沿った冷却用空間
    が形成されるように、前記開口形状を形成することを特
    徴とする請求項又はに記載の鍛造用穿孔パンチの製
    造方法。
  7. 【請求項7】 パンチ先端のコーナー部分に、前記分割
    ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は
    耐摩耗性が高い材料からなる肉盛が形成されることを特
    徴とする請求項乃至のいずれかに記載の鍛造用穿孔
    パンチの製造方法。
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