JP2004034133A - 金型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリンダブロック鋳造用ボアーピン1は、熱間工具鋼からなる先端ブロック10及び本体ブロック20に、両ブロック10,20を組み合わせたときに所望形状の冷却用空間1aが本体ブロック20内に形成されるように先端側開口凹部12a、本体側開口凹部21aをそれぞれ形成した後、両ブロック10,20を組み合わせると共に、溶接により接合して一体化することにより製造される。
【選択図】 図7
Description
【請求項1】内部に冷却用空間を有する金型の製造方法であって、
前記金型を構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化し、少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うことを特徴とする金型の製造方法。
【請求項2】内部に冷却用空間を有するシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法であって、
前記ボアーピンを構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、熱間工具鋼系溶接材料を用いて前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とするシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。
【請求項3】少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うことを特徴とする請求項2に記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。
【請求項4】内部に冷却用空間を有する鍛造用穿孔パンチの製造方法であって、
前記パンチを構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とする鍛造用穿孔パンチの製造方法。
【請求項5】前記分割ブロックの溶接において、コバルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料を用いたことを特徴とする請求項4に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法。
【請求項6】前記複数の分割ブロックを組み合わせたときにパンチ本体部分の外形形状に略沿った冷却用空間が形成されるように、前記開口形状を形成することを特徴とする請求項4又は5に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法。
【請求項7】パンチ先端のコーナー部分に、前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料からなる肉盛が形成されることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイカスト鋳造や鍛造等に用いられる内部に冷却用空間を有する金型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鋳造や鍛造等の熱間加工に用いられる金型においては、金型内部に冷却用空間を設けた種々のタイプの金型が広く実用に供されている。すなわち、金型の寿命は摩耗、かじり、或いは熱亀裂等の発生に支配されるのであるが、これらの損傷に最も大きな影響を与える要因が金型表面の温度上昇である。鋳造用の金型や鍛造用の金型では、高温の金属溶湯或いは高温に加熱された鋼等に金型の表面部が接することにより表面温度が上昇し易いため、金型内部に設けた冷却用空間内に冷却液を流動させて金型表面温度の上昇を防止し、金型の長寿命化が図られている。
【0003】
例えば、自動車用エンジンのシリンダブロックの鋳造に用いられる従来技術におけるボアーピン101は、図19に示すように、熱間工具鋼により略円柱状の外観を呈するように一体的に形成され、約650℃のアルミニウム溶湯に直接接する先端部111と、外周にシリンダボアーの内周面をなすスリーブが装着される本体部121と、金型装置の可動ベースへの取付け部としての基端部131とを有している。また、ボアーピン101の内部には軸線に沿って冷却路121aが形成されている。そして、鋳造実施時には、冷却路121aに冷却液配管が挿入配設され、図19において図示されるように、冷却液配管を介して冷却液を冷却路内で流動させることによりボアーピン101を内側から冷却しつつ外部に排出する構造となっている。
【0004】
また、従来技術における鍛造用穿孔パンチ104は、図20に示すように、熱間工具鋼により略円柱状の外観を呈するように一体的に形成され、先端部181と、本体部191と、金型装置の可動ベースへの取付け部としての基端部195とを備えている。また、パンチ104の内部には軸線に沿って冷却路191aが形成されている。そして、穿孔実施時には、冷却路191aに冷却液配管が挿入配設され、図20にて図示されるように、冷却液配管を介して冷却液を冷却路191a内で流動させることによりパンチ104を内側から冷却しつつ外部に排出する構造となっている。また、先端部181には、耐熱性をさらに向上させるために、コバルト合金による肉盛りが施される場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内部に冷却用空間を設けた金型において、金型内部からの冷却効率は冷却用空間の設計に大きく依存している。すなわち、冷却効率の高い冷却用空間を設計するためには、主として、以下の二つを考慮する必要がある。一つは、冷却用空間を、金型における温度上昇が著しい部位にできる限り近接させて形成することである。他の一つは、金型内部において、より大量の冷却液の流動を可能とすべく、冷却用空間の容積を大型化することである。
しかしながら、上述した従来技術における鋳造用ボアーピンや鍛造用パンチにおいては、冷却性能をより一層向上させるように冷却用空間を設計することが困難であるという問題があった。
【0006】
例えば、従来技術におけるボアーピン101においては、冷却路121aは基端部131の基端側端面からドリル加工等により形成されるため、冷却路121aは軸線に沿った直線状であり且つ内径が全長に亘って同一の空間とならざるを得ない。しかも、基端部131の外形寸法は本体部121よりも小さく、さらに、基端部131に設けられたネジ孔131aによっても冷却路121aの内径が制約されるため、結果として、図19に図示されるような、径の細い冷却路121aしか形成することができず、十分な冷却効果を発揮することが困難であった。
同様に、従来技術におけるパンチ104においても、冷却路191aの内径は、本体部191よりも小径の基端部195の外形寸法により制約されるため、結果として、図20に図示されるような、細い冷却路191aしか形成することができず、十分な冷却効果を発揮することは困難であった。
【0007】
すなわち、冷却室は、一体構造をなす鋳造用ボアーピンや鍛造用パンチの基端部側からドリル等により形成するため、冷却室の内径は、基端部の外径寸法や基端部に設けられたネジ孔等によって必然的に制約される。さらに、基端部側からのドリル加工によって形成可能な冷却室は、軸線に沿った略直線状のものに限られるため、温度上昇が著しい部位に近接する位置に自在に冷却室を形成することは極めて困難である。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱間工具鋼からなる金型の内部に冷却用空間を自在に形成することが可能な金型の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に記載の金型の製造方法は、内部に冷却用空間を有する金型の製造方法であって、前記金型を構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化し、少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うことを特徴とする。
従って、金型を熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックにより構成し、それらの少なくとも一つに開口形状を形成した後に、それら複数の分割ブロックを組み合わせると共に溶接により接合して一体化するので、所望の大きさ及び形状の冷却用空間を所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であり、ひいては金型を安価に製造することが可能となり、さらに、少なくとも溶接部分及びその周辺の分割ブロック表面部分が、溶接部分と同一材料若しくは分割ブロックをなす熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料によって覆われ、表面部分に溶接部分の融合部や熱影響部が存在せず、溶接部分近傍におけるヒートチェック現象の発生等を防止することができる。そして、このようにして製造された金型によれば、冷却用空間に冷却媒体を通すことにより内部から効率的に冷却が行われるため、摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿命化を図ることができるという効果を奏する。
【0010】
また、請求項2に記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法は、内部に冷却用空間を有するシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法であって、前記ボアーピンを構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、熱間工具鋼系溶接材料を用いて前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とする。
従って、シリンダブロック鋳造用ボアーピンを熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックにより構成し、それらの少なくとも一つに開口形状を形成した後に、それら複数の分割ブロックを組み合わせると共に溶接により接合して一体化するので、所望の大きさ及び形状の冷却用空間を所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であり、ひいてはボアーピンを安価に製造することが可能となり、さらに、溶接材料が分割ブロックと同一の熱間工具鋼系であるため、溶接部分と分割ブロック部分とが均質となり、熱間工具鋼からなる一つのブロックからシリンダブロック鋳造用ボアーピンを製造した場合と同等の品質を得ることができる。そして、このようにして製造されたシリンダブロック鋳造用ボアーピンによれば、冷却用空間に冷却媒体を通すことにより内部から効率的に冷却が行われるため、摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿命化を図ることができるという効果を奏する。
【0011】
また、請求項3に記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法は、少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うことを特徴とする。
従って、少なくとも溶接部分及びその周辺の分割ブロック表面部分が、溶接部分と同一材料若しくは分割ブロックをなす熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料によって覆われ、表面部部分に溶接部分の融合部や熱影響部が存在せず、溶接部分近傍におけるヒートチェック現象の発生等を防止することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法は、内部に冷却用空間を有する鍛造用穿孔パンチの製造方法であって、前記パンチを構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とする。
従って、鍛造用穿孔パンチを、熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックにより構成し、それらの少なくとも一つに開口形状を形成した後に、それら複数の分割ブロックを組み合わせると共に溶接により接合して一体化するので、所望の大きさ及び形状の冷却用空間を所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であり、ひいてはパンチを安価に製造することが可能となる。そして、このようにして製造された鍛造用穿孔パンチによれば、冷却用空間に冷却媒体を通すことにより内部から効率的に冷却が行われるため、摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿命化を図ることができるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項5に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法は、前記分割ブロックの溶接において、コバルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料を用いたことを特徴とする。
従って、耐熱性及び/又は耐摩耗性が高いコバルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料として用いることにより、溶接部分における耐熱性及び/又は耐摩耗性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項6に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法は、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときにパンチ本体部分の外形形状に略沿った冷却用空間が形成されるように、前記開口形状を形成することを特徴とする。
従って、冷却用空間が、パンチ本体部分の外形形状に略沿って形成されるので、冷却用空間の容積を大きく確保することができ、且つ、冷却が必要とされる表面部分の近傍に冷却用空間が設けられるので、鍛造用穿孔パンチの冷却効率をより一層向上させることができる。
【0015】
また、請求項7に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法は、パンチ先端のコーナー部分に、前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料からなる肉盛が形成されることを特徴とする。
従って、高温の鋼との摩擦により損傷が生じ易いパンチ先端のコーナー部分に、分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料によって肉盛が形成されるので、鍛造用穿孔パンチの耐熱性及び/又は耐摩耗性をより一層向上させてさらなる長寿命化を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した金型の製造方法の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第一の実施形態であるシリンダ鋳造用ボアーピン(以下、単にボアーピンと称する)の製造方法について、図1乃至図9を参照しつつ説明する。
尚、本実施形態の方法により製造されるボアーピンとは、略円柱状の外観形状を有する金型部材であって(図7参照)、自動車用エンジンのシリンダブロックをダイカスト鋳造する際に、シリンダボアを形成すべき位置に、その軸線とシリンダボアの軸線とを一致させ、且つ先端部が金型装置のキャビティ内に突入するように配設されるものである。
【0017】
本実施形態におけるシリンダ鋳造用ボアーピンの製造方法は、一体構造では自在に加工することが極めて困難であった冷却用空間を、分割構造を採用することにより予め加工し、その後、これらを近年に確立された熱間工具鋼の溶接技術を利用して一体化するものであり、図1のフローチャートに示すように、開口形状の形成を含む分割ブロックの作製工程(ステップ1、以下S1と略記する。他のステップも同様である)と、分割ブロックの組み合わせ工程(S2)と、接合溶接工程(S3)と、表面研削工程(S4)とからなる。以下、各工程の詳細について図1のフローチャートと、図2乃至図9の各図面を参照しつつ説明する。
【0018】
最初に、熱間工具鋼からなる2個のワーク(例えば、材質:JIS SKD61の焼き入れ焼き戻し材、硬度:HRC48)を用意する。
そして、これらに公知の切削加工等を施すことにより、図2に示される先端ブロック10、及び図3,図4に示される本体ブロック20をそれぞれ作製する(図1:S1)。尚、先端ブロック10及び本体ブロック20は、組み合わせることによってシリンダブロック鋳造用ボアーピンを構成するための本発明における複数の分割ブロックを構成するものである。
【0019】
以下、S1の工程において作製された先端ブロック10及び本体ブロック20の各部の加工形状について説明する。
先端ブロック10は、ボアーピン1の先端部11を構成するブロック状部材であり、図2に示すように、円柱状の先端部本体11と、先端部本体11より基端方向に突出する円筒状の嵌合凸部12とから構成されている。
先端部本体11の基端側の周縁部には、縦断面が略半U字状の開先形状を有する開先部11aが形成されている。また、嵌合凸部12は、その外径が、後述する本体ブロック20の本体側開口凹部21aの内径よりも僅かに小さく設定され、本体ブロック20の本体側開口凹部21aに嵌合凸部12が嵌合することにより両ブロック10,20が機械的に結合される構造となっている。また、嵌合凸部12の径内側には、基端側に向かって開口する先端側開口凹部12aが形成されている。
【0020】
本体ブロック20は、図3に示すように、ボアーピン1の本体部21及び基端部31を構成するブロック状部材である。
本体部21は、シリンダボアーの内周面をなす円筒状スリーブが装着される外周面を有する円柱状部分である。本体部21には、先端側に向かって開口する本体側開口凹部21aが形成されている。本体側開口凹部21aは、先端側開口凹部12aとともに冷却用空間を形成する内壁部分であり、冷却液の流量を多くして冷却効率を向上させるために、許容される強度範囲内においてできる限り大きな容積を有するように形成される。例えば、本体部21の外径が70mm程度とした場合、本体側開口凹部21aは、本体部21外周面より10mm程度の厚みを残して外周形状に略沿って内側が切削加工によりくり貫かれることにより形成される。本体部21においては、先端側端面からドリル等による切削加工を施すことが可能であるので、所望の大きさ及び形状の本体側開口凹部21aを所望の位置に、容易且つ自在に形成することができる。
【0021】
また、本体部21の先端側の周縁部には、縦断面が略半U字状の開先形状を有する開先部21bが形成されている。開先部21bは、両ブロック10,20が組み合わされたときに先端ブロック10側の開先部11aと共にU形開先部15をなし、溶接が施される部分である。
基端部31は、本体部21より基端側に向かって突出状に設けられ、図示しない金型装置の可動ベースに固定される取り付け部である。基端部31は、横断面が角丸四角形状を呈し、その一辺の長さは本体部21の外径よりも小さく設定されている(図4参照)。また、基端部31には、基端側端面において開口すると共に本体部21の本体側開口凹部21aに連通するように軸線に沿って設けられた配管挿入孔31aと、金型装置の可動ベースにネジ止め固定するために螺刻された複数のネジ孔31bとが形成されている。尚、配管挿入孔31aの内径は、基端部31断面の大きさ及び複数のネジ孔31bの配置によって制約され、本体側開口凹部21aよりも小径となっている。
【0022】
次に、先端ブロック10の嵌合凸部12を本体ブロック20の本体側開口凹部21aに嵌合させることにより、先端ブロック10と本体ブロック20とを組み合わせる(図1:S2)。この状態では、先端ブロック10の開先部11aと、本体ブロック20の開先部21bとが対向し且つ当接することにより、先端ブロック10と本体ブロック20との境界部分に断面略U字状を呈するU形開先部15が全周に亘って形成される(図5参照)。
次に、先端ブロック10と本体ブロック20との境界部分に形成されたU形開先部15に溶接を施すことにより、両ブロック10,20を接合して一体化する(図1:S3、図6参照)。
【0023】
U型開先部15への溶接は、公知のTIG溶接法により行う。また、U型開先部15の接合溶接に使用される溶接材料としては、下盛用に熱間工具鋼系溶接材料を、上盛用に本体部21の材質に近似の化学成分を有する熱間工具系鋼溶接材料をそれぞれ使用する。尚、下盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料は、例えば、重量%で、C:0.1、Si:0.4、Mn:0.6、Cr:6.5、Mo:3.0を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するものとする。一方、上盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料は、例えば、重量%で、C:0.35、Si:0.6、Mn:1.2、Cr:7.0、Mo:2.25及び微量のTiを含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するものとする。尚、上述した下盛り用又は上盛り用の熱間工具鋼系溶接材料の化学成分組成は、一例を示すものであって、適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
溶接条件は、直径1.6mmのTIGワイヤを使用する場合、電流:150A、電圧:30Vとし、温度条件は、図8のグラフに示すように、予熱・パス間温度:380℃とする。溶接を施工した後、一旦、常温まで温度を低下させた後、後熱処理を温度条件550℃で5時間施し(図8参照)、後熱処理後の溶接部の硬さをHRC48(先端ブロック10及び本体ブロック20の硬さと同一)とする。尚、上述した各条件は、溶接対象物の大きさ等によって適宜設定されるものである。
溶接工程は、図9に示すように、公知のTIG溶接装置(図示せず)、電気炉、及び熱管理装置を使用して行われる。電気炉は、上面が開口する箱形容器状の装置であって、内壁に複数の電気ヒータが設けられて内部に設置されたワーク全体を均一に加熱することができるようになっている。熱管理装置は、電気炉内に設置されたワークの温度を常時検出し、ワークの温度が設定温度に保持されるように、電気ヒータのオン/オフ制御を行う装置である。つまり、先端ブロック10及び本体ブロック20は、電気炉内に設置され、熱管理装置によって図8のグラフに示す温度条件が保持されつつ、TIG溶接装置を用いて溶接作業が施されるのである。
【0025】
次に、U形開先部15が上述した溶接材料により接合溶接されて一体となった先端ブロック10及び本体ブロック20の表面部分に、公知の研削盤を用いて所定の深さの研削加工を施す(図1:S4)。研削加工の深さは、例えば、0.5mm程度とする(図6において研削加工後の外形形状を破線にて示す)。研削加工では、両ブロック10,20の表面部分と共に、溶接金属17の表面部分も所定深さで研削されることによって表面が平滑に加工され、且つ、溶接用上盛材料が両ブロック10,20とほぼ同一の材質であるので、研削加工によって表面が平滑となったブロック10,20部分と溶接部分17とは、目視による判別が極めて困難な程度に均一な外観を呈している。
以上のS1乃至S4の工程を経て、図7に示すシリンダブロック鋳造用ボアーピン1が完成する。
【0026】
ボアーピン1は、図7に示すように、先端ブロック10と本体ブロック20とが組み合わされ且つ溶接により接合され、先端ブロック10の先端側開口凹部12aと本体ブロック20の本体側開口凹部21aとにより、内部に冷却用空間1aが形成されている。冷却用空間1aは、十分に大きな容積が確保されると共に、損傷が生じやすく、特に冷却が必要とされる先端部11外周の近傍にまで達するように形成されている。従って、ボアーピン1を使用してシリンダブロックを鋳造する際に、基端部31の配管挿入孔31aを介して挿入された冷却液配管の先端開口部より冷却用空間1a内に冷却媒体としての冷却液が導入され、冷却液が冷却用空間1a内を流動することによりボアーピン1の内側から吸熱し、温度上昇した冷却液が配管挿入孔31aの基端側開口より外方へ排出されるので、極めて効率的にボアーピン1の冷却を行うことができる。これにより、ボアーピン1の摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿命化を図ることができる。
【0027】
尚、本発明者による実験では、図19に示す従来技術によるボアーピンと図7に示す本実施形態によるボアーピンとをそれぞれ用いて、同一条件でシリンダブロックの鋳造を行った場合、従来のボアーピンに対して、本実施形態のボアーピンは、摩耗及びかじりの発生及び進展が約1/2のレベルに、熱亀裂の発生は約1/3のレベルにまで低下することが確認されている。
また、従来技術におけるボアーピンは一体構造であり(図19参照)、基端部131端面からドリル等により冷却路121aの切削加工が行われていたため、基端部131の断面サイズやネジ孔131aの配置等により冷却路121aの大きさや形成位置が制約されていた。これに対し、本実施形態の製造方法によれば、ボアーピン1が複数のブロック10,20に分割された分割構造であるので、各ブロック10,20の端面に、冷却用空間1aを形成するための開口凹部12a、21aをそれぞれ所望の大きさ及び形状で所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であり、ひいてはボアーピンを安価に製造することができるという顕著な効果を奏する。
【0028】
また、先端ブロック10の嵌合凸部12が本体ブロック20の本体側開口凹部21aに嵌合して機械的に結合する構造となっているので、溶接作業時に両ブロック10,20の開先部11a,21bの位置がずれることが防止され、溶接作業を容易且つ正確に行うことができるという効果をも奏する。
【0029】
次に、第一の実施形態の種々の変形例について図面を参照しつつ説明する。尚、第一の実施形態と同一の構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
まず、第一の変形例について図10を参照しつつ説明する。
第一の実施形態では、ボアーピンの先端部と本体部及び基端部とを分割する構成であったが、本変形例のボアーピン2は、先端部51及び本体部61からなる本体ブロック60と、基端部71からなる基端ブロック70とに分割し、両ブロック60,70を組み合わせて溶接により接合して一体化する構成としたものである。尚、本体ブロック60及び基端ブロック70は、組み合わせることによってシリンダブロック鋳造用ボアーピンを構成するための本発明における複数の分割ブロックを構成するものである。
【0030】
本体ブロック60に本体側開口凹部61aが、基端ブロック70に基端側開口凹部72aがそれぞれ形成されている。そして、基端ブロック70の嵌合凸部72を本体側開口凹部61aに嵌合して組み合わせることにより境界部分に形成されるU形開先部65に溶接を施して両ブロック60,70を接合・一体化することにより、冷却用空間3aが形成される。尚、溶接部分67は、上述した第一の実施形態と同様の溶接材料により形成される。
本変形例では、本体ブロック60の基端側端面から本体側開口凹部61aを所望の大きさ及び形状で所望の位置に自在に加工することができる。
【0031】
次に、第二の変形例について、図11を参照しつつ説明する。
本変形例では、U形開先部15に溶接を施すのに加えて、損傷が発生しやすい先端部11表面に耐熱性及び又は耐摩耗性に優れた材料を肉盛りして複合化したものである(図11の符号18部分参照)。
具体的には、例えば、ボアーピン3(先端ブロック10及び本体ブロック20)の材質をSKD61とし、先端部11の肉盛り部分18には、ボアーピン2と近似する熱膨張係数をもち、より耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料として、重量%で、C:0.28、Mn:0.3、Si:0.8、Ni:18、Mo:5、Co:10、微量のTi及びAlを含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するものを用いた。尚、上述した化学成分組成は、一例を示すものであって、適宜変更して実施することが可能である。
【0032】
本変形例によれば、金属溶湯に直接接することにより損傷が生じ易い先端部11の表面部分に、耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料が肉盛りされているので、より一層、ボアーピンの長寿命化を図ることが可能となる。また、先端部11への肉盛りは、U形開先部15への溶接作業と併せて効率的に行うことができるので、工数の増加は少ない。
【0033】
次に、第三の変形例について、図12及び図13を参照しつつ説明する。
まず、本変形例によるボアーピンの製造方法についての説明に先立って、第一の実施形態の図6の状態におけるボアーピン1の溶接部17近傍の構成について、図12の拡大断面図を参照しつつ説明する。
溶接部17近傍は、図12に示すように、溶接金属部、融合部(ボンド部とも称される)、熱影響部、及び原質部の各部に分けられる。
ここで、溶接金属部は、溶接棒から滴下した溶融金属と、溶融した母材(ブロック10又は20、以下同様)の一部とが混ざり合って短時間に凝固した部分である。
融合部は、溶接金属部と母材との接点に相当する部分である。
熱影響部は、融合部に接する母材部分であり、母材の内では最も大きな溶接熱影響を受ける部分である。
原質部は、溶接熱影響をまったく受けないか、受けても無視できる程度の母材部分である。
【0034】
そして、ボアーピンに対して繰り返される加熱−冷却によって、母材、すなわちブロック10又は20表面よりも先に、上述した融合部近傍において、熱間加工用金型の代表的な損傷の一つであるヒートチェック現象が現れる傾向がある。
ここで、融合部近傍におけるヒートチェック現象が、ボアーピン先端部の損傷と同時期或いは遅れて発生する場合は問題がない。しかし、使用条件によっては、冷却用空間への冷却液の循環による冷却効果によってボアーピン先端部が損傷発生に到っていないにも拘らず、融合部近傍にヒートチェック現象が発生し、これがボアーピンの寿命を支配する場合は問題となる。
【0035】
そこで、本変形例のボアーピン4では、図13に示すように、ブロック10,20部分の外形形状を3mm程度以内で予め小さく加工し、少なくとも溶接部17及びその周辺の先端部11及び本体部21の表面部分(図13では先端部11及び本体部21表面部分の全体)を溶接材料で肉盛りすることにより、これらの表面部分を覆う表面溶接部19を設けている。
本変形例によれば、加熱−冷却にさらされるボアーピン4表面が溶接金属で被われて同一成分となっており、表面部分には図12に示されるような異なる性質を有する融合部や熱影響部が存在しないので、溶接部分近傍においてヒートチェック現象が先端部よりも先行して発生することを防止できる。
尚、表面溶接部19に使用する溶接材料は、基本的には、両ブロック10,20の溶接に使用した溶接材料と同一で問題ないが、ボアーピンの使用条件を勘案して、より耐熱性、耐摩耗性、耐ヒートチェック性の少なくとも一つに優れた溶接材料を適宜選択して使用することも可能である。
【0036】
次に、本発明の第二の実施形態について、図14乃至17を参照しつつ説明する。
本実施形態は、本発明の金型の製造方法を、鍛造用穿孔パンチの製造方法に適用したものである。
最初に、熱間工具鋼からなるワーク(例えば、材質:JIS SKD8の焼き入れ焼き戻し材、硬度:HRC52)を2個用意する。
そして、これらに公知の切削加工等を施すことにより、図14(a)に示される先端ブロック80、及び図14(b)に示される本体ブロック90をそれぞれ作製する(図1:S1)。尚、先端ブロック80及び本体ブロック90は、組み合わせることによって鍛造用穿孔パンチを構成するための本発明における複数の分割ブロックを構成するものである。
【0037】
以下、S1の工程において作製された先端ブロック80及び本体ブロック90の各部の加工形状について説明する。
先端ブロック80は、鍛造用穿孔パンチ(以下、単にパンチと称する)5の先端部81を構成するブロック状部材であり、図14(a)に示すように、円盤状の先端部本体81と、先端部本体81より基端方向に突出する嵌合凸部82とから構成されている。
先端部本体81の基端側の周縁部には、テーパ状の開先形状を有する開先部81aが形成されている。また、嵌合凸部82は、その外径が、後述する本体ブロック90の本体側開口凹部91aの内径よりも僅かに小さく設定され、本体ブロック90の本体側開口凹部91aに嵌合凸部82が嵌合することにより両ブロックが結合される構造となっている。また、嵌合凸部82の径内側には、基端側に向かって開口する先端側開口凹部82aが形成されている。
【0038】
本体ブロック90は、図14(b)に示すように、パンチ5の本体部91及び基端部95を構成するブロック状部材である。
本体部91は、円柱状の外観を呈し、先端側に向かって開口する本体側開口凹部91aを有している。本体側開口凹部91aは、先端側開口凹部82aとともに冷却用空間4aを形成する内壁部分であり、冷却液の流量を多くして冷却効率を向上させるために、許容される強度内においてできる限り大きな容積を有するように形成される。例えば、本体部91の外径を60mm程度とした場合、本体側開口凹部91aは、本体部91外周面より10mm程度の厚みを残して、その内側が切削加工によりくり貫かれることにより形成される。本体部91においては、先端側端面からドリル等による切削加工を施すことが可能であるので、所望の大きさ及び形状の本体側開口凹部91aを所望の位置に、容易且つ自在に形成することができる。
【0039】
また、本体部91の先端側の周縁部には、テーパ状の開先形状を有する開先部91bが形成されている。開先部91bは、先端ブロック80側の開先部81aと共にV形開先部85をなし、溶接が施される部分である(図15参照)。
基端部95は、本体部91より基端側に向かって突出状に設けられ、図示しない金型装置の可動ベースに固定される取り付け部である。基端部95は、本体部91よりも小径の円柱状を呈し、外周には可動ベースに取付けるための雄ネジ95bが螺刻されている。また、基端部95には、基端側端面において開口すると共に本体部91の本体側開口凹部91aに連通するように軸線に沿って設けられた配管挿入孔95aが形成されている。尚、配管挿入孔31aの内径は、基端部95断面の大きさによって制約され、本体側開口凹部91aよりも小径となっている。
【0040】
次に、先端ブロック80の嵌合凸部82を本体ブロック90の本体側開口凹部91aに嵌合させることにより、先端ブロック80と本体ブロック90とを組み合わせる(図1:S2)。この状態では、先端ブロック80の開先部81aと、本体ブロック90の開先部91bとが対向し且つ当接することにより、先端ブロック80と本体ブロック90との境界部分に断面略V字状を呈するV形開先部85が全周に亘って形成される(図15参照)。
次に、先端ブロック80と本体ブロック90との境界部分に形成されたV形開先部85に溶接を施すことにより、両ブロック80,90を接合して一体化する(図1:S3、図16参照)。
【0041】
V型開先部85への溶接は、公知のTIG溶接法により行う。また、V型開先部85の接合に使用される溶接材料としては、下盛用に熱間工具鋼系溶接材料を、上盛用に熱間工具鋼系溶接材料をそれぞれ使用する。尚、下盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料は、重量%で、例えば、C:0.1、Si:0.4、Mn:0.6、Cr:6.5、Mo:3.0を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するものとする。一方、上盛用として用いる熱間工具鋼系溶接材料は、重量%で、例えば、C:0.4、Cr:6.5、Mo:1.5、W:8、V:0.5を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するものとする。尚、上述した下盛り用又は上盛り用の熱間工具鋼系溶接材料の化学成分組成は、一例を示すものであって、適宜変更して実施することが可能である。
【0042】
溶接条件は、直径2.0mmのTIGワイヤを使用する場合、電流:200A、電圧:35Vとし、温度条件は、予熱・パス間温度:450℃とする。溶接を施工した後、一旦、常温まで温度を低下させた後、後熱処理を温度条件570℃で3時間施し、後熱処理後の溶接部の硬さをHRC52(先端ブロック80及び本体ブロック90の硬さと同一)とする。尚、溶接工程に用いる装置は、第一の実施形態と同様である(図9参照)。また、上述した各条件は、溶接対象物の大きさ等によって適宜設定されるものである。
【0043】
次に、V形開先部85が上述した溶接材料により接合溶接されて一体となった先端ブロック80及び本体ブロック90の表面部分に、公知の研削盤を用いて所定の深さの研削加工を施す(図1:S4)。研削の深さは、例えば、0.5mm程度とする(図16に研削加工後の外形形状を破線にて示す)。研削加工では、両ブロック80,90の表面と共に、溶接金属87の表面部分も所定深さで研削されることによって表面が平滑に加工され、且つ、溶接用上盛材料が両ブロック80,90とほぼ同一の材質であるので、研削加工によって表面が平滑となったブロック80,90部分と溶接部分87とは、目視による判別が極めて困難な程度に均一な外観を呈している。
以上のS1乃至S4の工程を経て、図17に示す鍛造用穿孔パンチ5が完成する。
【0044】
パンチ5は、図17に示すように、先端ブロック80と本体ブロック90とが溶接により接合され、先端ブロック80の先端側開口凹部82aと本体ブロック90の本体側開口凹部91aとにより、内部に冷却用空間4aが形成されている。冷却用空間4aは、十分に大きな容積が確保されると共に、損傷が生じやすく、特に冷却が必要とされる先端部81のコーナー部近傍にまで達するように形成されている。従って、パンチ5を使用して穿孔を行う際に、基端部95の配管挿入孔95aを介して挿入された冷却液配管の先端開口部より冷却用空間4a内に冷却液が導入され、冷却液が冷却用空間4a内を流動することによりパンチ5の内側から吸熱し、温度が上昇した冷却液が配管挿入孔95aの基端側開口より排出されるので、極めて効率的にパンチ5の冷却を行うことができる。これにより、パンチ5の摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿命化を図ることができる。
【0045】
尚、本発明者による実験では、従来技術によるパンチの平均寿命が約250ショットであったのに対し、本実施形態によって製造されたパンチの平均寿命は約600ショットとなっており、寿命が約2倍以上に向上することが確認されている。
また、従来技術におけるパンチ(図20参照)では、基端部195端面からドリル等により冷却路191aの切削加工が行われていたため、基端部195の断面サイズ等により冷却路191aの大きさや形成位置が制約されていた。これに対し、本実施形態の製造方法によれば、パンチ5が複数のブロック80,90に分割されているので、各ブロック80,90の端面に、冷却用空間4aを形成するための開口凹部82a、91aをそれぞれ所望の大きさ及び形状で所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能であるという顕著な効果を奏する。
【0046】
また、先端ブロック80の嵌合凸部82が本体ブロック90の本体側開口凹部91aに嵌合して結合する構造となっているので、溶接作業時に両ブロック80,90の開先部81a,91bの位置がずれることが防止され、溶接作業を容易且つ正確に行うことができるという効果をも奏する。
【0047】
次に、第二の実施形態の変形例について、図18を参照しつつ説明する。
本変形例では、先端ブロック80と本体ブロック90とから形成されるV形開先部86が先端部81のコーナー部に位置している。そして、V形開先部86に耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料で溶接を施して両ブロックを接合すると共に、損傷が生じやすい先端部81のコーナー形状を当該溶接材料を肉盛りすることにより形成したものである(図18の符号88部分参照)。
【0048】
具体的には、例えば、パンチ6(先端ブロック80及び本体ブロック90)の材質をSKD8とし、先端部81の肉盛り部分88には、より耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料として、重量%で、C:0.3、Cr:30、Mo:5、Ni:4を含有し、残部Co及び不可避的不純物からなる化学成分組成を有するコバルト合金系溶接材料を用いる。尚、耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料として、コバルト合金系溶接材料に代えてニッケル合金系溶接材料を使用することも可能である。
本変形例によれば、損傷が生じ易い先端部81のコーナー部分88が、耐熱性及び/又は耐摩耗性に優れた材料が肉盛りされて形成されているので、より一層、パンチの長寿命化を図ることが可能となる。また、先端部81コーナー部分88の形成は、V形開先部86への溶接作業と同時に行われるので、工数は殆ど増加することがない。尚、本発明者による実験により、本変形例のパンチ6では、上述した第二の実施形態のパンチ5と比較して寿命が更に20〜50%向上することを確認している。
【0049】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、前記各実施形態では、シリンダブロック鋳造用ボアーピン又は鍛造用穿孔パンチの製造方法に本発明を適用した例を示したが、金型の種類はこれらに限られず、内部に冷却用空間を有する種々の金型の製造に適用することが可能である。
例えば、前記第一の実施形態では、先端ブロック10と本体ブロック20とに、それぞれ開口形状を形成したが、一方のみに形成してもよい。要するに、両ブロックが組み合わされたときに内部に冷却用空間が形成されるように、少なくも一つのブロックに開口形状を形成すればよいのである。また、開口形状は、上述した各実施形態において示した凹部形状に限定されず、冷却が特に必要とされる部位への冷却効果が高い種々の形状の冷却用空間を形成するために溝状、孔状等の種々の開口形状とすることが可能である。
【0050】
また、前記各実施形態では、略円柱状の外形形状を有する金型(ボアーピン又はパンチ)を、先端部と本体部との間、又は本体部と基端部との間で軸線と直交する平面にて分割する例を示したが、金型の複数ブロックへの分割態様はこれらに限定されない。例えば、内部に冷却用空間を有する金型本体部の長手方向の中間部分において軸線と直交する平面にて分割してもよく、或いは、略円柱状の軸線を通る平面にて縦割り状に分割しても構わない。また、分割位置は1箇所には限られず、2箇所以上に分割位置を設けて3個以上の分割ブロックを組み合わせることにより金型を構成しても構わない。
また、前記第一の実施形態の第二の変形例及び第三の変形例においては、表面部分を覆う肉盛り材料としてワイヤに代えて粉末材料を使用する溶接技術を用いてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、シリンダブロック鋳造用ボアーピンや鍛造用穿孔パンチ等の金型の内部に所望の大きさ及び形状の冷却用空間を所望の位置に容易且つ自在に形成することが可能である。従って、本発明の製造方法により製造されたシリンダブロック鋳造用ボアーピンや鍛造用穿孔パンチ等の金型によれば、冷却用空間に冷却媒体を通すことにより内部から効率的に冷却が行われるため、摩耗、かじり、熱亀裂等の損傷の発生と進展とを遅らせることにより長寿命化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金型の製造方法における各工程の流れを示すフローチャートである。
【図2】(a)は、本発明の第一の実施形態のボアーピンを構成する先端ブロックの側面図であり、(b)は(a)においてA線矢視方向における正面図である。
【図3】第一の実施形態のボアーピンを構成する本体ブロックの側面図である。
【図4】図3の本体ブロックにおいてB線矢視方向における背面図である。
【図5】第一の実施形態における先端ブロックと本体ブロックとを組み合わせた状態を示す縦断面図である。
【図6】第一の実施形態における先端ブロックと本体ブロックとを溶接により接合して一体化した状態を示す縦断面図である。
【図7】第一の実施形態における完成したボアーピンの縦断面図である。
【図8】第一の実施形態の溶接工程及び後熱工程における温度変化を示すグラフである。
【図9】溶接工程において使用される装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図10】第一の実施形態の第一の変形例におけるボアーピンの縦断面図である。
【図11】第一の実施形態の第二の変形例におけるボアーピンの縦断面図である。
【図12】図6におけるボアーピンの溶接部付近の構成を拡大して示す拡大断面図である。
【図13】第一の実施形態の第三の変形例におけるボアーピンの縦断面図である。
【図14】(a)は第二の実施形態のパンチを構成する先端ブロックの側面図であり、(b)は本体ブロックの側面図である。
【図15】第二の実施形態における先端ブロックと本体ブロックとを組み合わせた状態を示す縦断面図である。
【図16】第二の実施形態における先端ブロックと本体ブロックとを溶接により接合して一体化した状態を示す縦断面図である。
【図17】第二の実施形態における完成したパンチの縦断面図である。
【図18】第二の実施形態の変形例におけるパンチの縦断面図である。
【図19】従来技術におけるボアーピンの縦断面図である。
【図20】従来技術におけるパンチの縦断面図である。
【符号の説明】
1,2,3,4…シリンダブロック鋳造用ボアーピン(金型)、1a,2a,3a、4a…冷却用空間、10…先端ブロック(分割ブロック)、20,60…本体ブロック(分割ブロック)、70…基端ブロック(分割ブロック)、12a…先端側開口凹部(開口形状)、21a,61a…本体側開口凹部(開口形状)、72a…基端側開口凹部(開口形状)、15…U形開先部、17…溶接部、18…先端肉盛部、19…表面溶接部、5,6…鍛造用穿孔パンチ(金型)、5a,6a…冷却用空間、80…先端ブロック、90…本体ブロック、82a…先端側開口凹部(開口形状)、91a…本体側開口凹部(開口形状)、85…V形開先部、87…溶接部、88…先端肉盛部。
Claims (15)
- 内部に冷却用空間を有する金型の製造方法であって、
前記金型を構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とする金型の製造方法。 - 前記分割ブロックの溶接後、少なくとも溶接部分を含む金型表面部分を所定の深さで研削加工することを特徴とする請求項1に記載の金型の製造方法。
- 少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の金型の製造方法。
- 前記金型において損傷が生じ易い部位に、前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料によって肉盛を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の金型の製造方法。
- 前記複数の分割ブロックが組み合わされたとき、前記各分割ブロック間に開先形状が形成され、その開先形状部分にて溶接が施されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の金型の製造方法。
- 前記複数の分割ブロックは、互いに機械的に結合可能な構造を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金型の製造方法。
- 内部に冷却用空間を有するシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法であって、
前記ボアーピンを構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とするシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。 - 前記分割ブロックの溶接において、熱間工具鋼系溶接材料を用いたことを特徴とする請求項7に記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。
- 前記複数の分割ブロックを組み合わせたときにボアーピン本体部分の外形形状に略沿った冷却用空間が形成されるように、前記開口形状を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。
- ボアーピン先端部に、前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料によって肉盛が形成されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。
- 少なくとも溶接部分及びその周辺の前記分割ブロック表面部分を、前記溶接部分と同一材料若しくは前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料を肉盛りすることにより覆うことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載のシリンダブロック鋳造用ボアーピンの製造方法。
- 内部に冷却用空間を有する鍛造用穿孔パンチの製造方法であって、
前記パンチを構成するための熱間工具鋼からなる複数の分割ブロックの少なくとも一つに、前記複数の分割ブロックを組み合わせたときに前記冷却用空間が形成されるように開口形状を形成した後、前記複数の分割ブロックを組み合わせると共に、前記各分割ブロックを溶接により接合して一体化することを特徴とする鍛造用穿孔パンチの製造方法。 - 前記分割ブロックの溶接において、コバルト合金系又はニッケル合金系の溶接材料を用いたことを特徴とする請求項12に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法。
- 前記複数の分割ブロックを組み合わせたときにパンチ本体部分の外形形状に略沿った冷却用空間が形成されるように、前記開口形状を形成することを特徴とする請求項12又は13に記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法。
- パンチ先端のコーナー部分に、前記分割ブロックをなす前記熱間工具鋼よりも耐熱性及び/又は耐摩耗性が高い材料からなる肉盛が形成されることを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の鍛造用穿孔パンチの製造方法。
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