JP3426563B2 - 光化学反応セル - Google Patents

光化学反応セル

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光化学反応セルに関
し、特に、窒化物半導体発光素子を光源として用いた光
化学反応セルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、紫外領域での光化学反応を利用し
て化学分析を行ったり、化学合成・分解を行う場合に、
例えば、重水素ランプやHe-Cdレーザ等の巨大かつ
大電力を要する光源を使用していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法において
は、可視光よりも大きな反応開始エネルギーが得られる
ので、この方法の有用性が期待されるのであるが、紫外
光源のエネルギー変換効率が極めて低いこと、発光に付
随する発熱の影響を避けるために光源と反応部とを分離
する必要が生じ両者間の光学的な結合が貧弱となるこ
と、光源の発光スペクトルが線スペクトルであるため使
用可能な発光波長が制限されること等の問題もある。
【0004】更に、反応装置を大規模化して、この方法
を実用化するには、低エネルギー変換効率と発熱の問題
のために、多大の経費を必要とした。
【0005】また、研究施設等の屋内施設内では実施可
能な分析技術を、野外等の一般環境下において実施する
には多大な労力を要し、その実現は困難であった。
【0006】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので
あり、その課題は、紫外域での光化学反応を用いた分析
・合成・分解を、コンパクトなシステムによって、低エ
ネルギー損失で実行することを可能とする光化学反応セ
ルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、請求項1に記載のように、窒化物半導体
発光素子と管状部材とを有する光化学反応セルであっ
て、該管状部材の少なくとも一部分は該発光素子が発す
る光を透過させる材料よりなり、光触媒体を前記管状部
材の内部に設けたことを特徴とする光化学反応セルを構
成する。
【0008】また、本発明は、請求項2に記載のよう
に、前記管状部材の外部に、前記発光素子が発する光を
該管状部材内部に向けて反射する反射鏡を設けたことを
特徴とする請求項1に記載の光化学反応セルを構成す
る。
【0009】また、本発明は、請求項3に記載のよう
に、前記光触媒体が、前記発光素子が発する光の光子エ
ネルギーよりも小さい光学的バンドギャップエネルギー
を有する固体であることを特徴とする請求項1又は2に
記載の光化学反応セルを構成する。
【0010】また、本発明は、請求項4に記載のよう
に、前記光触媒体が二酸化チタンを構成要素とすること
を特徴とする請求項1又は2に記載の光化学反応セルを
構成する。
【0011】
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る光化学反応セルは、
窒化物半導体発光素子と管状部材と管状部材の内部に設
けた光触媒体とを有する光化学反応セルであって、該管
状部材の少なくとも一部分は該発光素子が発する光を透
過させる材料よりなることを特徴とする。前記管状部材
の内部は、光化学反応もしくは光触媒反応によって化学
変化を起こす反応物質が通過する管路になっている。前
記発光素子は、前記反応を誘起する光を発する光源とし
て用いられる。前記管状部材の少なくとも一部分は、該
部材の外壁から内壁に至るまで、前記の光を透過させる
材料よりなり、この光は該部分を透過して前記管路に入
り、前記光化学反応しくは光触媒反応を誘起する。
【0013】また、本発明に係る光化学反応セルには、
上記管路を透過した光を再利用するための反射鏡が設け
られる場合もあり、上記光触媒体が、前記発光素子が発
する光の光子エネルギーよりも光学的バンドギャップエ
ネルギーの小さい固体である場合もある。本発明におい
ては、前記光学的バンドギャップエネルギーの小さい固
体を光触媒体として用いるのであるが、一般的には、該
固体は「光触媒」とは呼ばれない場合もある。
【0014】以下に、本発明の実施の形態を、図を用い
て、さらに詳細に説明する。
【0015】図1は本発明に係る光化学反応セルを示す
概略図である。図中、1は窒化物半導体発光素子の一種
類である、波長370nmの紫外光を発する窒化物半導
体発光ダイオードであり、2は発光ダイオード1に密着
する管状部材である矩形断面石英チューブであり、石英
チューブ2の内部は反応物質が通過する管路となってい
る。石英チューブ2のすべての部分は発光ダイオード1
が発する光を透過させる。3は、石英チューブ2の外壁
に設けられ、発光ダイオード1が発する光を石英チュー
ブ2の内部に向けて反射する反射鏡であるAl金属反射
鏡であり、4は発光ダイオード1が発する光の照射によ
って光触媒機能を示す光触媒体である光触媒層である。
光触媒層4の一例としては、波長約400nm以下の光
を吸収し光触媒機能を示す二酸化チタン(TiO)膜
がある。
【0016】発光ダイオード1が発する波長370nm
の紫外光は、石英チューブ2の壁を透過し、光触媒層4
を照射する。光触媒層4が二酸化チタン膜である場合に
は、光触媒層4は、発光ダイオード1が発する光の光子
エネルギーよりも小さい光学的バンドギャップエネルギ
ーを有する固体でもあるので、発光ダイオード1が発す
る光を吸収し、この光吸収により膜表面が化学的に活性
化され、触媒活性が現れる。この活性化された表面は酸
素と容易に反応し、化学活性の極めて高い活性酸素を生
ぜしめる。この活性酸素は比較的寿命が短いために長時
間効率よく蓄積することは困難である。しかしながら、
図1に示すように、石英チューブ2の内壁に設けられた
光触媒層4(例えばTiO膜)が光学的に活性化さ
れ、光化学反応セルの入口側(図1における右側)か
ら、例えば、反応物質であるメタン等の炭化水素ガスを
含有する大気を供給する場合には、活性酸素がその場で
メタン等の炭化水素ガスと容易に反応するので、効率よ
く酸化反応が起こり、反応物質が無害な二酸化炭素と水
とに分解する。このような酸化反応は炭化水素からなる
有害物の除去に有効である。
【0017】また、光触媒層4(例えばTiO膜)を
透過した紫外線は背面のAl金属反射鏡3により反射さ
れ、再び光触媒層4(例えばTiO膜)を照射するの
で、より効率よく光触媒層4(例えばTiO膜)表面
を活性化することが可能になる。
【0018】上記の窒化物半導体発光ダイオード1を例
とする窒化物半導体発光素子は高発光効率を特徴として
いるので、この素子を紫外光源として用いて、高強度の
紫外線を低電力で、低発熱の状態において、発生させる
ことができる。従って、従来技術における紫外光源のエ
ネルギー変換効率が極めて低いという問題が本発明によ
って解決される。更に、紫外線発生に伴う発熱が少ない
ので、光源と反応部とを分離する必要がなくなり、図1
に示したように、光源(窒化物半導体発光ダイオード
1)と反応部(石英チューブ2)とを良好な光学的結合
によって結合させることができ、従来技術における光源
と反応部との光学的な結合が貧弱となるという問題が本
発明によって解決される。また、この光源が小型で、し
かも高効率、低発熱であることによって、大規模化も容
易となり、従来技術における大規模化に伴う問題も本発
明によって解決される。
【0019】ここでは、波長370nmの窒化物半導体
発光ダイオードを用いた場合を例として説明したが、例
えば、より発光波長の短い窒化物半導体発光ダイオード
(文献、Phys. Stat. Sol. (a) 176, 45 (1999)に記
載)を用いると、TiO膜表面での紫外光の吸収効率
が向上することから、より効率の高い光活性化が可能と
なる。
【0020】更に、窒化物半導体発光ダイオードの発光
層のAl組成を増加することにより、原理的には200
nmまでの短波長発光が可能である。従って、吸収波長
が200nmより短いSiOを除く多くの酸化物ガラ
スも、前記発光ダイオードが発する光の光子エネルギー
よりも小さい光学的バンドギャップエネルギーを有する
固体となりえて、該酸化物ガラスに、前記TiO膜と
同種の光触媒機能を付与することが可能となる。この場
合、光学的バンドギャップエネルギーがTiO のそれ
よりも大きくなるので、酸素分子だけではなく、更に分
解はしにくいが、その分解反応生成物の反応性は更に高
いような物質を用いることも可能となる。このように、
従来技術における使用可能な発光波長が制限されるとい
う問題が本発明によって解決される。
【0021】また、上記の説明においては、光触媒機能
を有する材料として酸化物(例えばTiO)を採り上
げたが、紫外域に反応活性化の励起波長を有する材料で
あれば、有機・無機に係わらず、本発明における光触媒
体の構成要素として使用可能である。特に有機材料の場
合、一般に有機材料の耐熱性は低いので、発熱の少ない
窒化物半導体発光素子を光源として使用することは従来
の紫外線ランプを使用する場合に比較し極めて有効であ
る。
【0022】また、上記の説明においては、光触媒層
(例えばTiO膜)を反応セル内部に設け、反応を促
進したが、反応物質が直接紫外光により反応する場合に
は、石英などの不活性な透明セルの内部に、光触媒体を
設けることなく、反応物質を通過させることによって目
的を達成することが可能である。
【0023】なお、TiOは上記発光ダイオードが発
する光の光子エネルギーよりも小さい光学的バンドギャ
ップエネルギーを有し、かつ、光触媒活性材料(光触
媒)でもあるが、上記発光ダイオードが発する光の光子
エネルギーよりも小さな光学的バンドギャップエネルギ
ーを有する材料と光触媒活性材料(光触媒)とが別々の
材料であり、それらが、上記管状部材の内部に別々に設
置されていても良い。
【0024】また、発光ダイオードが発する光の波長は
殆ど発光層となる半導体のバンドギャップエネルギーに
集中するために、他の波長に由来する寄生反応や、反応
後の物質の分析におけるノイズの混入が防止できる。
【0025】以上の説明においては、光触媒体あるいは
上記発光ダイオードが発する光の光子エネルギーよりも
小さい光学的バンドギャップエネルギーを有する固体の
形状を層状としていたが、この形状はその他の形状、例
えば球状あるいは粒状であってもよい。また、球状担体
の表面に光触媒を担持させてなる球状光触媒体を管路内
に充填して使用してもよい。
【0026】本発明に係る光化学反応セルは高効率、低
消費電力を特徴とし、しかも、図1に例示したように、
極めて小型であるので、この光化学反応セルを吸光分析
や蛍光分析等の分析装置に組み込むことにより、小型で
実用的な分析装置を構成することができ、更に、このよ
うな分析装置をデーター解析装置と組み合わせて、医療
・衛生機器や環境モニタを実現できる。また、この光化
学反応セルを用いて、例えば電池を電源とする可搬型の
分析装置を構成することも可能となる。
【0027】また、光化学反応セルを原料貯蔵容器、原
料供給装置、生成物貯蔵容器と連結して、化学合成・分
解プロセス装置を構成することも可能となる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の実施によ
り、紫外域での光化学反応を用いた分析・合成・分解
を、コンパクトなシステムによって、低エネルギー損失
で実行することを可能とする光化学反応セルを提供する
ことができる。
【0029】本発明に係る光化学反応セルを用いて、例
えば、電池を電源とする可搬型の分析装置、医療・衛生
機器、環境モニタ、化学合成・分解プロセス装置等を構
成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を説明する概略図である。
【符号の説明】
1…窒化物半導体発光ダイオード、2…石英チューブ、
3…Al金属反射鏡、4…光触媒層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 19/12

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化物半導体発光素子と管状部材とを有す
    る光化学反応セルであって、該管状部材の少なくとも一
    部分は該発光素子が発する光を透過させる材料よりな
    り、光触媒体を前記管状部材の内部に設けたことを特徴
    とする光化学反応セル。
  2. 【請求項2】前記管状部材の外部に、前記発光素子が発
    する光を該管状部材内部に向けて反射する反射鏡を設け
    たことを特徴とする請求項1に記載の光化学反応セル。
  3. 【請求項3】前記光触媒体が、前記発光素子が発する光
    の光子エネルギーよりも小さい光学的バンドギャップエ
    ネルギーを有する固体であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の光化学反応セル。
  4. 【請求項4】前記光触媒体が二酸化チタンを構成要素と
    することを特徴とする請求項1又は2に記載の光化学反
    応セル。
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