JP3423622B2 - 熱間突き合わせ圧接時の脱スケール方法 - Google Patents

熱間突き合わせ圧接時の脱スケール方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鋼材の連続熱間
圧延ラインにおいて圧延鋼材(たとえば900 ℃以上の赤
熱鋼材)を効率よく、しかも確実に接合するため脱スケ
ールする方法に関し、詳しくは脱スケールするための熱
間切削方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼製造工場では、省エネルギー、製品
歩留りの向上、生産性の向上等を目的として、製造工程
の連続化が精力的に進められている。その中でも、熱延
鋼板(ホットコイル)を製造する熱間圧延工程の連続化
は重要な課題の一つとなっている。
【0003】近年、粗圧延機と仕上圧延機の間で、先行
する粗圧延済みの鋼材(以下、先行鋼材という)と、後
続する粗圧延済みの鋼材(以下、後行鋼材という)とを
接合し、仕上圧延を連続的に行う方法が提案されてい
る。
【0004】たとえば、熱延鋼板の重ね合わせ部を還元
炎雰囲気の下で加熱し、スケールを還元して熱延鋼板の
全幅を厚さ方向に圧接する方法(特開平6-312277号公
報、参照)。また、厚いスケールが生成している鋼板、
あるいは還元されにくい組成のスケールが生成している
鋼板の場合には、回転切削工具などによって機械的に脱
スケールして圧接する方法(特開平6-335785号公報、同
8-19804号公報、同9-57302号公報、参照)などがある。
【0005】図1は、熱間圧接装置を配置した熱間連続
圧延設備の概要を示す図である。鋳片のスラブ9は、粗
圧延機1によって圧延され圧延鋼材Sとなり、一旦中間コ
イラー2においてコイルに巻き取られる。そして仕上げ
圧延機群6に送られる前に巻き戻され、レベラー3によっ
てコイルの巻き癖が矯正され、クロップシャー4で端部
の不良部分が切断される。その後、走行する熱間圧接装
置5において先行鋼材S1の後端部と後行鋼材S2の先端部
とを圧接した後、仕上げ圧延機群6によって仕上げ圧延
が行われ、ダウンコイラー8に巻き取られる。そして高
速シャー7で切断され、熱延鋼板コイルとなる。
【0006】熱間接合は、鋼板の接合部の形状によって
重ね合わせて行う方法と、突き合わせて行う方法とがあ
る。
【0007】図2は、接合の態様を示す図であり、(a)
〜(c)は鋼板を重ね合わせてその厚さ方向に押圧して接
合する状況を示す図、(d)は鋼板を突き合わせてその長
手方向に押圧して接合する状況を示す図である。
【0008】重ね合わせて行う方法は、図2(a) に示す
ように接合部を斜めに切削したもの、同図(b) のように
階段状に切削したもの、同図(c) のように溝状の切欠を
つけたものなどがある。いずれも把持装置11で鋼板S1,S
2 を把持し、切削面12,13 を重ね合わせ、圧接プレス10
と下金型14とによって鋼材の厚さ方向に圧下する。圧下
と同時に、いずれかの把持装置(この場合には後行鋼板
把持装置11-1)を圧下量に応じて移動させるか、または
把持装置を開放する。なお、切削および接合の際には、
バーナー15から還元炎を吹き付け、酸化を防止する。
【0009】突き合わせて行う方法は、図2(d) に示す
ように切削または切断後、鋼材S1,S2を把持装置11,11-1
で把持し、切削部または切断面12,13を同一平面に突き
合わせ、さらに把持装置を鋼板の長手方向にそれぞれ対
向する方向に移動し、押圧して接合する。また、切削お
よび接合の際には、バーナー15から還元炎を吹き付け、
酸化を防止する。
【0010】図3は、熱間突き合わせ圧接装置の概要を
示す側面図である。突き合わせ圧接は、次のように行わ
れる。
【0011】先行鋼材S1は、ピンチロール16によって搬
送され、その後端部が回転切削工具17で切削される位置
にきたとき、把持装置11によって固定される。同様に、
後行鋼材S2は、ピンチロール16-1によって前進させら
れ、その先端部が回転切削工具で切削される位置にきた
とき、把持装置11-1によって固定される。その後、バー
ナー15から還元炎を噴射した後、回転切削工具17を圧延
鋼材の幅端部から他方の端部まで幅方向(紙面に垂直方
向)に移動して、先行鋼材S1および後行鋼材S2の端部を
切削する。切削後、直ちに後行鋼材側の把持装置11-1を
押圧装置18によって先行鋼材側に移動し、切削面12,13
を突き合わせ、さらに押圧して圧接接合が行われる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】突き合わせ圧接による
方法で接合を行った後、連続化熱間圧延を行うと、重ね
合わせ圧接による接合の場合に比べ接合部が開口または
破断することがあった。
【0013】本発明の目的は、突き合わせ圧接であって
も接合部から開口または破断することのない接合方法を
提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】前述の突き合わせ圧接装
置では、脱スケールのための切削に円筒状回転切削工具
を使用したため、両端部の切削面が幅方向に平行に切削
されている。このため、突き合わせたときの圧延鋼材端
部の圧力分布が均一でなく、接合部から破断、または開
口することを突き止め、本発明を完成した。本発明の要
旨は、下記に示す脱スケール方法にある。
【0015】2つの圧延鋼材の端部を突き合わせ接合
して連続化熱間圧延を行うに際し、高温の圧延鋼材を切
削して脱スケールする方法であって、回転切削工具での
切削量を圧延鋼材の厚さ方向の中央部で、その他の部分
よりも多くする熱間突き合わせ圧接時の脱スケール方
法。
【0016】2つの圧延鋼材の端部を突き合わせ接合
して連続化熱間圧延を行うに際し、高温の圧延鋼材を切
削して脱スケールする方法であって、把持装置を回転切
削工具側に移動させて、回転切削工具での切削量を圧延
鋼材の幅方向の中央部で、その他の部分よりも多くする
熱間突き合わせ圧接時の脱スケール方法。
【0017】2つの圧延鋼材の端部を突き合わせ接合
して連続化熱間圧延を行うに際し、高温の圧延鋼材を切
削して脱スケールする方法であって、回転切削工具での
切削量を圧延鋼材の厚さ方向の中央部および幅方向の中
央部で、その他の部分よりも多くする熱間突き合わせ圧
接時の脱スケール方法。
【0018】
【発明の実施の形態】図4は、円筒状回転切削工具によ
る脱スケールと圧接時の圧力分布を示す図であり、(a)
は切削中の平面図、(b)は切削中の側面図、(c)は圧延鋼
材幅方向の圧接時の圧力分布、(d)は圧延鋼材厚さ方向
の圧接時の圧力分布を示す図である。図において、これ
らの圧力分布は、材料の温度を1000℃として計算で求め
た。
【0019】図4(a)および図4(b)から明らかなように、
突き合わせ圧接では、脱スケールのための切削に円筒状
回転切削工具17を使用しているため、両端部の切削面が
幅方向および厚さ方向が平行に切削されている。このた
め、突き合わせたときの圧延鋼材端部の圧力分布が図4
(c)および図4(d)に示すように均一でない。これを連続
化熱間圧延すると、圧力分布の低い接合部から開口また
は破断することを見いだした。
【0020】本発明は、圧延鋼材の切削面の形状を変え
て厚さおよび幅方向の端部の接合圧力を高くして接合強
度の向上を図るものである。
【0021】図5は、刃先が山形の回転切削工具を取り
付けた熱間圧接装置の概要を示す側面図である。回転切
削工具として、刃先の形状が山形をした回転工具を取り
付けた熱間突き合わせ圧接装置である。切削および接合
は、図3に示した装置と同様に行う。
【0022】図6は、刃先が山形の回転切削工具による
脱スケールと圧接時の圧力分布を示す図であり、(a)は
切削中の平面図、(b)は切削中の側面図、(c)は圧延鋼材
幅方向の圧接時の圧力分布、(d)は圧延鋼材厚さ方向の
圧接時の圧力分布を示す図である。
【0023】回転切削工具19は、刃先中央部の回転半径
(D>D0)を大きくした山形状の工具である。この回転
切削工具を圧延鋼材の幅方向に移動させると、圧延鋼材
の厚さ方向の中央部が多く切削される。これにより、図
5(c)および図(d)から明らかなように、厚さ方向の表面
近傍の圧力分布が高くなり、連続化熱間圧延したとき接
合部から開口または破断することがない。
【0024】図7は、圧延鋼材幅方向の中央部を多く切
削する状況と圧接時の圧力分布を示す図であり、(a)は
回転切削工具を幅方向に移動して切削している平面図、
(b)は幅方向の圧力分布を示す図である。圧延鋼材の幅
方向の中央部を多く切削するのは、図(a)に示すように
回転切削工具を幅方向に移動させながら後行鋼材を工具
側に往復移動させる。図3に示すように、この往復移動
は、後行鋼材の把持装置11-1を押圧装置18によって行
う。この場合も、幅方向両端部の圧力分布が、図4に示
す場合に比べて高くなっていることがわかる。
【0025】図6に示す山形回転切削工具19を用い、図
7に示す方法で脱スケールすると、圧延鋼材の厚さ方向
および幅方向の中央部が多く切削され、圧接時における
圧力分布が均一になり、連続化熱間圧延が安定して行う
ことができる。
【0026】接合部の圧力は、厚さ方向の表層部または
幅方向のエッジ部において約8kgf/mm2以上あればよい
ことが、実験結果から明らかになった。なお、図7での
切削は、先行鋼材および後行鋼材の片方をまたは両方を
移動させても良い。
【0027】
【実施例】厚さ30mm、幅 300mm、長さ1000mmの鋼板
(C:0.1重量%、Si:0.5重量%、Mn:1.2重量%)を1250
℃に加熱して、図5に示す熱間圧接装置を用い、接合試
験を行った。
【0028】切削工具は、図4に示すような円盤状回転
切削工具および図6に示す刃先が山形となった回転切削
工具を用意した。円盤状回転切削工具は、外径が300m
m、長さが40 mmで、フラットな刃先形状とした。刃先が
山形の回転切削工具は、図6に示すように最大外径Dを
300mm、D0を294mm、山部の底辺の長さBを18mmとした。
【0029】切削に先立ち、直火還元炎を切削部に吹き
付け、切削は還元雰囲気の下で行なった。還元炎は、ノ
ズル内混合方式のバーナーを鋼板の幅方向に配置し、リ
ング状のスリットノズルからLPGガス(6Nm3/hr)
と酸素濃度60%の酸素富化空気(空気比m=0.6 )の混
合ガスを燃焼させ、生成させた。なお、空気比mは、実
際に使用した空気量を完全燃焼に必要な空気量で除した
値である。
【0030】切削後、還元炎を吹き付けたまま切削部を
突き合わせ、押圧装置を用いて鋼板の長手方向に押圧
し、接合した。このときの温度は1050℃、アップセット
量は最大8mmであった。
【0031】圧接後、鋼材温度が1000℃になったとき、
3台の仕上げ圧延機により、それぞれ40%、35%、30%
の圧下率と張力をかけて圧延を行い、板厚8.2mmの鋼板
とした。
【0032】これらの脱スケール、圧接および圧延を行
った結果を表1にまとめて記した。
【0033】
【表1】
【0034】表1から明らかなように、圧延鋼材の幅方
向または厚さ方向を多く切削する方法で脱スケールした
ものは、圧接時の圧接力も小さく、圧延張力に耐える接
合ができている。
【0035】
【発明の効果】本発明の方法によると、圧延鋼材の厚さ
方向または幅方向の中央部を多く切削するので、突き合
わせ圧接における圧力分布が均一化され、圧接力が小さ
く、接合力が高くなる。これにより、粗圧延鋼材の接合
が十分となり、次の仕上圧延で破断することなく、連続
的に圧延ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間圧接装置を配置した熱間連続圧延設備の概
要を示す図である。
【図2】接合の態様を示す図であり、(a)〜(c)は鋼板を
重ね合わせてその厚さ方向に押圧して接合する状況を示
す図、(d)は鋼板を突き合わせてその長手方向に押圧し
て接合する状況を示す図である。
【図3】熱間突き合わせ圧接装置の概要を示す側面図で
ある。
【図4】円筒状回転切削工具による脱スケールと圧接時
の圧力分布を示す図であり、(a)は切削中の平面図、(b)
は切削中の側面図、(c)は圧延鋼材幅方向の圧接時の圧
力分布、(d)は圧延鋼材厚さ方向の圧接時の圧力分布を
示す図である。
【図5】刃先が山形の回転切削工具を取り付けた熱間圧
接装置の概要を示す側面図である。
【図6】刃先が山形の回転切削工具による脱スケールと
圧接時の圧力分布を示す図であり、(a)は切削中の平面
図、(b)は切削中の側面図、(c)は圧延鋼材幅方向の圧接
時の圧力分布、(d)は圧延鋼材厚さ方向の圧接時の圧力
分布を示す図である。
【図7】圧延鋼材幅方向の中央部を多く切削する状況と
圧接時の圧力分布を示す図であり、(a)は回転切削工具
を幅方向に移動して切削している平面図、(b)は幅方向
の圧力分布を示す図である。
【符号の説明】
1:粗圧延機 2.中間コイラー 3.レベラー 4.クロップシャー 5.熱間圧接装置 6.仕上げ圧延機群 7.高速シャー 8.ダウンコイラー 9.スラブ 10.圧接プレス 11.把持装置 12,13.切削面 14.下金型 15.バーナー 16.ピンチロール 17.回転切削工
具 18.押圧装置 19.山形回転切削工具
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩波 紀夫 神奈川県横浜市磯子区新中原町1番地石 川島播磨重工業株式会社横浜エンジニア リングセンター内 (72)発明者 田添 信広 東京都江東区毛利1丁目19番地10号石川 島播磨重工業株式会社江東事務所内 (72)発明者 長田 史郎 神奈川県横浜市磯子区新中原町1番地石 川島播磨重工業株式会社横浜エンジニア リングセンター内 (56)参考文献 特開 平6−79308(JP,A) 特開 平9−216003(JP,A) 特開 平7−256305(JP,A) 特開 平5−50112(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 45/06 B21B 15/00 B23K 20/00 340

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2つの圧延鋼材の端部を突き合わせ接合し
    て連続化熱間圧延を行うに際し、高温の圧延鋼材を切削
    して脱スケールする方法であって、回転切削工具での切
    削量を圧延鋼材の厚さ方向の中央部で、その他の部分よ
    りも多くすることを特徴とする熱間突き合わせ圧接時の
    脱スケール方法。
  2. 【請求項2】2つの圧延鋼材の端部を突き合わせ接合し
    て連続化熱間圧延を行うに際し、高温の圧延鋼材を切削
    して脱スケールする方法であって、把持装置を回転切削
    工具側に移動させて、回転切削工具での切削量を圧延鋼
    材の幅方向の中央部で、その他の部分よりも多くするこ
    とを特徴とする熱間突き合わせ圧接時の脱スケール方
    法。
  3. 【請求項3】2つの圧延鋼材の端部を突き合わせ接合し
    て連続化熱間圧延を行うに際し、高温の圧延鋼材を切削
    して脱スケールする方法であって、回転切削工具での切
    削量を圧延鋼材の厚さ方向の中央部および幅方向の中央
    部で、その他の部分よりも多くすることを特徴とする熱
    間突き合わせ圧接時の脱スケール方法。
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