JP3421099B2 - 超電導磁気シールド構造物 - Google Patents

超電導磁気シールド構造物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生体磁場計測や精密物
理計測等の微小磁場計測、半導体製造装置のEB露光な
どの分野において使用される、比較的大型の磁気シール
ド空間を作るための超電導磁気シールド構造物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般に超電導体を利用した磁気シールド
構造は、磁力線が超電導体の内部に入り込めないという
マイスナー効果を利用した磁気シールド構造であり、例
えばマイスナー効果を有する材料を筒状構造物とし、こ
れを臨界温度以下に冷却して超電導状態に転移させ、筒
状構造物の内部空間を磁気シールドするものである。
【0003】人体の脳から発生する微弱磁界を検出する
生体磁場計測などの分野においても、構造物自体のより
一層の大型化が望まれている。しかしながら、単純に大
型化といっても、全てが超電導体で覆われた一体成形型
の超電導磁気シールド構造物では、その大きさに見合っ
た焼成炉が必要となり、さらに超電導物質の塗布、構造
物の運搬の際にもその取扱いに困難が生じるため、大型
化にも自ずと限界があった。
【0004】そのために、互いの径の異なる円筒状超電
導体を、円筒軸が互いに一致するように重ね合わせた超
電導磁気シールド構造物が提案されている。これは、あ
る程度の大きさの超電導体を組み合わせることによっ
て、大型化(大容量化)の要求を満たそうとするもので
ある。
【0005】しかしながらこれら従来の構造物にあって
は、重ね合わせ部分の隙間からの磁場漏洩の影響が極め
て大きく、その上、磁力線が狭い重ね合わせの隙間部分
に集中するため、その部分の超電導体に過度の磁場がか
かり、超電導状態が破れて、さらに磁場漏洩が大きくな
るという欠点を有していた。
【0006】つまり、同じサイズの超電導磁気シールド
構造物で、その磁気シールド特性を比較した場合、上記
の理由によって複数個の超電導体を重ね合わせたタイプ
の磁気シールド構造物は、一体成形のものに比べて特性
的にかなり劣ったものになっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題を解
決するものであって、複数個の超電導体を重ね合わせた
場合に生ずる重ね合わせ部分の隙間からの磁場漏洩の影
響を抑えて、一体成形で作製された同じサイズのものと
同等の高いシールド効率を構造体内部で実現できる新規
な超電導磁気シールド構造物を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は斯かる課題
を解決するために鋭意研究したところ、超電導材料から
なる少なくとも2つ以上の互いに径の異なる円筒状超電
導体を、円筒軸が一致するように重ね合わせた場合、そ
の重ね合わせの隙間部分のすぐ外側に、隙間に沿ったリ
ング状の強磁性体を配置することによって磁場洩洩を防
止し得ることを見いだし、本発明を提供することができ
た。
【0009】 すなわち本発明は第1に、超電導材料か
らなる少なくとも2個以上の互いに径の異なる円筒状超
電導体を用いて、円筒軸が一致するように重ね合わせた
超電導磁気シールド構造物において、前記の重ね合わせ
た円筒状超電導体の超電導材料同士が直接に相互に重な
り合うとともに、前記重ね合わせの個所においてリング
状の強磁性体を、その内周面が前記の重ね合わされたう
ちの小径の円筒状超電導体の外周面に重ね合わされ、そ
の側面を前記の重ね合わされたうちの大径の円筒状超電
導体の端面に沿って配置したことを特徴とする超電導磁
気シールド構造物;第2に、超電導材料からなる少なく
とも2個以上の互いに径の異なる円筒状超電導体を用い
て、該円筒状超電導体のうちの小径の円筒状超電導体同
士を円筒軸が一致するように端面同士を突き合わせると
ともに、該突き合わせの個所を覆う形体で該円筒状超電
導体に前記の円筒状超電導体のうちの大径の円筒状超電
導体を円筒軸が一致するように重ね合わせた超電導磁気
シールド構造物において、前記の重ね合わせた円筒状超
電導体の超電導材料同士が直接に相互に重なり合うとと
もに、前記重ね合わせの個所においてリング状の強磁性
体を、その内周面が前記の重ね合わされたうちの小径の
円筒状超電導体の外周面に重ね合わされ、その側面を前
記の重ね合わされたうちの大径の円筒状超電導体の端面
に沿って配置したことを特徴とする超電導磁気シールド
構造物である。
【0010】この場合、前記円筒状超電導体は、両端
閉、片端閉、両端開放の形状であるいずれかの円筒状中
空体、あるいは多角形状中空体であることに特徴を有す
るものである。
【0011】
【作用】本発明において、一例として開口径(50mm)
の等しい2つの筒状超電導体として、図5に示す両端開
放タイプ、あるいは図6に示す片端閉塞タイプを用い
て、先ず両開口部を互いに突き合わせるように配置し、
その部分を覆う形体で開口径52mmの筒状超電導体3を
重ね合わせる。
【0012】次いで、その重ね合わせの隙間部分のすぐ
外側に、隙間に沿ってリング状の強磁性体4(内径52
mm×外径62mm×厚さ10mm)を配置した。
【0013】この場合、従来であると図7に示すよう
に、重ね合わせ部分の隙間からの磁場漏洩の影響が極め
て大きいものであったが、本発明では、図8に示すよう
にリング状の強磁性体として代表的なパーマロイを用い
たところ、比透磁率が約100,000と非常に大きい
ため、磁束はその内部に取り入れられ、その結果、重ね
合わせ部分の隙間にかかる実質的な磁場の強度は著しく
低減され、重ね合わせ部分の隙間からの磁場漏洩は極端
に少なくなることがわかった。
【0014】また、従来のように過度の磁場がかかった
場合においても超電導状態が破れて磁場漏洩が大きくな
ってしまうということもなかった。
【0015】以下、図面を参照に本発明について詳細に
説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるもので
はない。
【0016】
【実施例1】図1に示すように外径50mm×長さ50mm
×厚さ1mmの片端閉塞タイプの円筒状超電導体が端部に
位置するよう、他の2個の円筒状超電導体と同軸的に順
次組み合わせると共に、重ね合わせの隙間部分には、内
径52mm×外径62mm×厚さ10mmのリング状の強磁性
体4と、内径54mm×外径64mm×厚さ10mmの強磁性
体4とを取り付けた。
【0017】この超電導磁気シールド構造物の中心軸に
平行に外部磁場Hex(1.0G)を印加した場合、図
中の点P1において、透過磁場Htrが1.0μG、磁
場減衰率(Htr/Hex)として10-6の値が得られ
たが、リングを取り外した場合の磁場減衰率は10-3
半分の値であった。
【0018】
【実施例2】図3に示すように、突き合わせた2個の外
径50mm×長さ50mm×厚さ1mmの両端開放タイプの円
筒状超電導体1の中央部に、外径53mm×長さ50mm×
厚さ1mmの円筒状超電導体3を重ね合わせ、両端部の隙
間に内径52mm×外径62mm×厚さ10mmのリング状の
強磁性体4を取り付けた。
【0019】この超電導磁気シールド構造物の中心軸に
平行に外部磁場Hex(1.0G)を印加した場合、図
中の点P2において、透過磁場Htrは1.0μG、磁
場減衰率(Htr/Hex)として10-6の値が得られ
たが、リングを取り外した場合の磁場減衰率は10-3
半分の値であった。
【0020】
【発明の効果】上述のように本発明構造物は、重ね合わ
せの隙間部分のすぐ外側に配置されたリング状の強磁性
体によって、外部の磁力線は、強磁性体の透磁率が非常
に大きいために、強磁性体内部に取り入れられ、その結
果、重ね合わせ部分の隙間にかかる実質的な磁場の強度
は著しく低減され、重ね合わせ部分の隙間からの磁場漏
洩が極端に少なくなり、非常に高いシールド効率を有す
る超電導磁気シールド構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に示す本発明構造物の斜視図。
【図2】上記構造物の断面図。
【図3】実施例2に示す本発明構造物の斜視図。
【図4】上記構造物の断面図。
【図5】本発明構造物の説明図(両端開放タイプ)。
【図6】本発明構造物の説明図(片方閉塞タイプ)。
【図7】従来構造物における磁力線の移動図。
【図8】本発明構造物における磁力線の移動図。
【符号の説明】
1 円筒状超電導体 2 端部 3 円筒状超電導体 4 強磁性体リング 5 磁力線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−266094(JP,A) 特開 平5−283892(JP,A) 特開 平5−291788(JP,A) 特開 平6−334384(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 9/00 H01L 39/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超電導材料からなる少なくとも2個以上
    の互いに径の異なる円筒状超電導体を用いて、円筒軸が
    一致するように重ね合わせた超電導磁気シールド構造物
    において、前記の重ね合わせた円筒状超電導体の超電導
    材料同士が直接に相互に重なり合うとともに、前記重ね
    合わせの個所においてリング状の強磁性体を、その内周
    面が前記の重ね合わされたうちの小径の円筒状超電導体
    の外周面に重ね合わされ、その側面を前記の重ね合わさ
    れたうちの大径の円筒状超電導体の端面に沿って配置し
    たことを特徴とする超電導磁気シールド構造物。
  2. 【請求項2】 超電導材料からなる少なくとも2個以上
    の互いに径の異なる円筒状超電導体を用いて、該円筒状
    超電導体のうちの小径の円筒状超電導体同士を円筒軸が
    一致するように端面同士を突き合わせるとともに、該突
    き合わせの個所を覆う形体で該円筒状超電導体に前記の
    円筒状超電導体のうちの大径の円筒状超電導体を円筒軸
    が一致するように重ね合わせた超電導磁気シールド構造
    物において、前記の重ね合わせた円筒状超電導体の超電
    導材料同士が直接に相互に重なり合うとともに、前記重
    ね合わせの個所においてリング状の強磁性体を、その内
    周面が前記の重ね合わされたうちの小径の円筒状超電導
    体の外周面に重ね合わされ、その側面を前記の重ね合わ
    されたうちの大径の円筒状超電導体の端面に沿って配置
    したことを特徴とする超電導磁気シールド構造物。
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