JP3412944B2 - 損傷検出装置 - Google Patents

損傷検出装置

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JP3412944B2
JP3412944B2 JP03367695A JP3367695A JP3412944B2 JP 3412944 B2 JP3412944 B2 JP 3412944B2 JP 03367695 A JP03367695 A JP 03367695A JP 3367695 A JP3367695 A JP 3367695A JP 3412944 B2 JP3412944 B2 JP 3412944B2
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  • Measurement Of Mechanical Vibrations Or Ultrasonic Waves (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、検出対象である物体の
損傷を検出する装置に係わり、特に、嵌着部分を備えた
物体の損傷を検出する損傷検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、大型のモータや発電機等の回転
電機は、製造後5〜15年経つとステータやロータのコ
イルが損傷して緩んでくることがある。従来、このよう
な緩みは定期点検の際の目視や触診で検出している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たような従来の目視・触診では、微小な緩みを検出する
ことが困難であることから、発生した損傷を確実に検出
することが困難であった。
【0004】ここにおいて、一般に、嵌着部分を有する
物体は、その嵌着部分において損傷等によって緩みが生
じると、その緩みが微小なものであっても振動特性に変
化が現れることが知られている。すなわち、緩みの発生
によって物体の固有振動数は低下し、減衰比は逆に増大
する。この固有振動数及び減衰比は、物体の振動特性を
示す伝達関数(=振動応答/加振力)を測定し、この伝
達関数におけるピークとなる周波数及びそのピークの鋭
さとして算出することができる。このような伝達関数の
測定方法に関する公知技術としては、たとえば特公平3
−79658号に記載のような、ステップ加振法で得ら
れた信号にハイ・パスフィルタを通過させた後、フーリ
エ変換等の処理を施す方法が提唱されている。また、こ
の他にも、高速フーリエ変換(FFT)を使ったフーリ
エアナライザ等が既に多数市販されている。
【0005】しかしながら、上記公知技術においては、
各物体の固有振動数及び減衰比を個別に算出することは
できるものの、これら固有振動数や減衰比の値から物体
の損傷を検出する点について特に配慮されていない。す
なわち、例えば上記公知技術によって回転電機のコイル
の損傷を検出しようとする場合、まず、現場でフーリエ
アナライザ等を用いて回転電機に多数個備えられたコイ
ルについて一つ一つ伝達関数を測定する。そしてこれら
測定した伝達関数値を持ち帰って伝達関数から各コイル
の固有振動数及び減衰比を算出する。そしてさらに、こ
れらを各コイルの過去の固有振動数・減衰比の値と比較
するか、他のコイルの固有振動数・減衰比の値と比較す
るという煩雑な作業が必要となる。よって、物体の損傷
を現場で容易に検出することが困難となる。
【0006】本発明の目的は、嵌着部分を備えた物体の
損傷を現場で容易かつ確実に検出することができる損傷
検出装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、物体に加振力を加えて振動を発生
させる加振手段と、この加振手段の加振力を計測し対応
する加振力信号を出力するロードセルと、前記物体に発
生した振動を計測し対応する振動信号を出力する振動セ
ンサと、前記加振力信号と前記振動信号とが入力されこ
れらの信号に基づき前記物体の固有振動数及び減衰比の
値を算出する計算手段と、この計算手段で算出される複
数個の前記物体の固有振動数及び減衰比の値が入力され
記憶される記憶手段と、この記憶手段に記憶された各物
体の固有振動数及び減衰比の値を、固有振動数と減衰比
との相関データとしてかつ各物体間で互いに比較可能な
データとして一覧表示する表示手段とを有し、前記表示
手段は、直交する二軸を備えた画面を有するとともに、
該二軸のうち一の軸を前記固有振動数の大きさ、他の軸
を前記減衰比の大きさにとって表示することを特徴とす
る損傷検出装置が提供される。
【0008】
【0009】
【0010】また上記目的を達成するために、本発明に
よれば、物体に加振力を加えて振動を発生させる加振手
段と、この加振手段の加振力を計測し対応する加振力信
号を出力するロードセルと、前記物体に発生した振動を
計測し対応する振動信号を出力する振動センサと、前記
加振力信号と前記振動信号とが入力されこれらの信号に
基づき前記物体の固有振動数及び減衰比の値を算出する
計算手段と、この計算手段で算出される複数個の前記物
体の固有振動数及び減衰比の値が入力され記憶される記
憶手段と、この記憶手段に記憶された各物体の固有振動
数及び減衰比の値を、固有振動数と減衰比との相関デー
タとしてかつ各物体間で互いに比較可能なデータとして
一覧表示する表示手段とを有し、前記計算手段は、前記
振動信号による振動応答の値を前記加振信号による加振
力の値で除して伝達関数を求める伝達関数算出手段と、
この伝達関数算出手段で求められた伝達関数の波形のピ
ークから固有振動数foを求める固有振動数算出手段
と、この固有振動数算出手段で求められた固有振動数f
oにおける振動レベルをAoとしたときに振動レベルがA
o/√2となる周波数f1,f2を算出し、これら2つの周
波数f1,f2の差を2foで除して減衰比ζを求める減衰
比算出手段とを備え、かつ、伝達関数の算出を意図する
任意の周波数範囲を設定し対応する指令信号を前記伝達
関数算出手段に出力する周波数設定手段を設け、前記伝
達関数算出手段は、前記周波数設定手段からの指令信号
で指示された周波数範囲における伝達関数を算出するこ
とを特徴とする損傷検出装置が提供される。
【0011】また上記目的を達成するために、本発明に
よれば、物体に加振力を加えて振動を発生させる加振手
段と、この加振手段の加振力を計測し対応する加振力信
号を出力するロードセルと、前記物体に発生した振動を
計測し対応する振動信号を出力する振動センサと、前記
加振力信号と前記振動信号とが入力されこれらの信号に
基づき前記物体の固有振動数及び減衰比の値を算出する
計算手段と、この計算手段で算出される複数個の前記物
体の固有振動数及び減衰比の値が入力され記憶される記
憶手段と、この記憶手段に記憶された各物体の固有振動
数及び減衰比の値を、固有振動数と減衰比との相関デー
タとしてかつ各物体間で互いに比較可能なデータとして
一覧表示する表示手段と、前記記憶手段に記憶される複
数個の物体の固有振動数及び減衰比の値に対して、各物
体に対応した番号を付す番号設定手段とを有し、前記記
憶手段は、前記番号設定手段で付された番号とこれに対
応する物体の固有振動数及び減衰比の値とを関連づけて
記憶し、前記表示手段は、前記番号とこれに対応する物
体のデータとを併せて表示することを特徴とする損傷検
出装置が提供される。
【0012】
【作用】以上のように構成した本発明においては、例え
ば、検査作業員が嵌着部分を備えている物体に加振手段
で加振力を加えて振動を起こさせると、加振手段による
加振力がロードセルで計測されるとともに物体の振動が
振動センサで計測され、それぞれ加振力信号及び振動信
号となって計算手段に入力される。計算手段では、これ
ら2つの信号に基づき、物体の固有振動数及び減衰比の
値を算出する。そしてこの算出された固有振動数及び減
衰比は記憶手段に記憶される。このようにして嵌着部分
を備えている複数個の物体を加振手段によって次々に加
振していくと、計算手段で算出された各物体の固有振動
数及び減衰比の値が順次記憶手段に入力されて記憶され
る。そして表示手段によって、記憶手段に記憶されてい
る各物体の固有振動数及び減衰比の値が、固有振動数と
減衰比との相関データとして、かつ各物体間で互いに比
較可能なデータとして一覧表示される。これにより、例
えば複数個の物体のうちのどれか1つの嵌着部分に損傷
による緩みが存在していた場合には、その物体のデータ
は本来の状態よりも固有振動数の値が低下するとともに
減衰比が増大しているはずであるから、固有振動数−減
衰比の相関データ表示状態において、他の物体と比較し
て明らかに異質なデータとして表示されることになる。
したがって、検査作業員は、この物体のみが異常状態で
あると直ちに識別することができる。
【0013】また、表示手段は、直交する二軸を備えた
画面を有し、二軸のうち一の軸を固有振動数の大きさ、
他の軸を減衰比の大きさにとって表示する。これによ
り、例えば、固有振動数を横軸にとり減衰比を縦軸にと
った場合には、嵌着部分に緩みがない正常な物体のデー
タは固有振動数が高く減衰比が小さいので画面の右下隅
に表示され、嵌着部分に緩みがある物体のデータは固有
振動数が低く減衰比が大きくなるので画面の左上隅に表
示される。したがって、損傷の発生した物体をさらに明
瞭に識別することができるので、例えば、振動の知識が
ない人でも容易に損傷の診断を行うことができる。さら
に、計算手段において、伝達関数算出手段で振動信号に
よる振動応答の値を加振信号による加振力の値で除して
伝達関数を求め、固有振動数算出手段でこの伝達関数の
波形のピークから固有振動数foを求め、減衰比算出手
段でこの固有振動数foにおける振動レベルをAoとした
ときに振動レベルがAo/√2となる周波数f1,f2を算
出し、これら2つの周波数f1,f2の差を2foで除して
減衰比ζを求める。これにより、加振力信号と振動信号
とに基づき物体の固有振動数及び減衰比の値を算出する
手段を実現することができる。また、一般に、伝達関数
には通常多くの固有振動数が含まれているが、周波数設
定手段で伝達関数の算出を意図する任意の周波数範囲を
設定し、伝達関数算出手段で周波数設定手段からの指令
信号で指示された周波数範囲における伝達関数を算出す
ることにより、固有振動数算出手段でいたずらに多くの
固有振動数foを算出するのを防止し、ほんとうに必要
な範囲の固有振動数foのみを迅速に算出することがで
きる。またこれにより減衰比算出手段で円滑に減衰比ζ
を算出することができる。さらに、番号設定手段で各物
体に対応した番号を付し、記憶手段で番号とこれに対応
する物体の固有振動数及び減衰比の値とを関連づけて記
憶し、表示手段で番号とこれに対応する物体のデータと
を併せて表示することにより、データと物体との対応関
係をさらに明確にすることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1〜図9により説
明する。本発明の第1の実施例を図1〜図7により説明
する。本実施例による損傷検出装置100の構成を示す
外観図を図1に示す。図1において、損傷検出装置10
0は、測定器本体7と、測定対象物1に取り付けられ測
定対象物1に発生した振動を計測し対応する振動信号を
出力する振動センサ4と、測定器本体7の入力端子6a
と振動センサ4とを接続するケーブル5aと、振動を加
えるための加振力を与えるハンマ2と、ハンマ2先端に
取付けられハンマ2の加振力を計測し対応する加振力信
号を出力するロードセル3と、測定器本体7の入力端子
6bとロードセル3とを接続するケーブル5bと、検出
したい固有振動数の範囲を大まかに指定する周波数帯域
設定器8と、測定対象物1に対応する番号を測定データ
に付すための測定番号設定器9と、測定対象物1の検出
結果を固有振動数と減衰比との相関データとして一覧表
示する表示器10と、表示器10による表示の方法を選
択する表示選択スイッチ11と、リセットスイッチ12
及び電源スイッチ13とを備えている。
【0015】入力端子6a,6bから測定器本体7内に
入力された振動信号及び加振力信号が、検出結果として
表示器10において表示されるまでの計算処理を図2〜
図4により説明する。測定器本体7における信号の流れ
を表すブロック図を図2に示す。
【0016】図2において、測定対象物1に振動センサ
4を取り付けた後にハンマ2で測定対象物1を打撃して
振動を起こさせると、振動信号及び加振力信号がそれぞ
れケーブル5a,5bを介して入力端子6a,6bより測
定器本体7内に入力される。測定器本体7内において、
これら2つの信号は増幅器14で増幅された後A/D変
換器16へ送られる。A/D変換器16でディジタル量
へ変換された信号は、高速フーリエ変換器19でフーリ
エ変換されて周波数領域のデータ、すなわち実数部と虚
数部をもった複素数のデータに変換される。フーリエ変
換された結果は演算器17へ送られる。演算器17では
振動信号による振動応答の値と、加振信号による加振力
の値とを用いて、周波数毎に伝達関数(=振動応答/加
振力)の計算を行う。このようにして求められた伝達関
数の一例を図3に示す。図3は、周波数(Hz)を横軸
に、伝達関数(=振動応答/加振力)の大きさ(絶対
値;dB)をとって表しており、広い周波数帯域にわた
り多数の山(ピーク、すなわち固有振動数)や谷が分布
している。なお、図3上図には振動応答と加振力との位
相差を併せて示してある。
【0017】図3に示すように、測定されたデータから
算出された伝達関数は、通常多数の固有振動数を含んで
いるが、このとき演算器17には、周波数帯域設定器8
で指定した周波数範囲を示す指令信号が入力されてお
り、演算器17はこの指令された周波数範囲内の伝達関
数だけを取り出して算出する。取り出された伝達関数は
通常図4に示すような形となる。図4において、演算器
17は、取りだした伝達関数のピークを示す固有振動数
oを検出する。そしてまた演算器17は、この固有振
動数foのときの振動レベル(=Ao)の1/√2の振動
レベル(Ao/√2)を示す周波数f1及びf2を検出
し、 ζ=(f2−f1)/2fo の演算を行って減衰比ζを算出する。なお、図4上図に
は、図3同様、振動応答と加振力との位相差を併せて示
す。すなわち、本実施例のように振動応答を変位で測定
する場合には、固有振動数foよりある程度低い周波数
で加振すると加振力と同相で振動するが、固有振動数f
oでは加振力より90°の位相遅れが生じ、さらに固有
振動数foよりある程度高い周波数では加振力より18
0°の位相遅れが生じる(=逆相)。
【0018】上記手順によって演算器17内において固
有振動数foと減衰比ζとが求められる。このとき演算
器17には測定番号設定器9で指定した測定番号が入力
されており、求められた固有振動数foと減衰比ζとは
この測定番号とを関連づけてメモリ18に記憶される。
以上のようにして、検査作業員が複数個の測定対象物1
を次々に加振して測定を行い、各測定対象物1の固有振
動数fo、減衰比ζ、及び測定番号が関連づけられて順
次メモリ18に記憶される。そしてメモリ18に記憶さ
れたすべてのデータ、すなわち各測定対象物1の測定番
号、固有振動数fo、及び減衰比ζは、表示器10に一
覧表示される。このときの表示方法は、図1に示すよう
に固有振動数fo及び減衰比ζの大きさをそれぞれ横軸
及び縦軸にとって表示される方法のほか、図5に示すよ
うに測定番号順に表として表示される方法がある。この
選択は、表示選択スイッチ11を「GRAPH」位置に
するか「LIST」位置にするかで行われ、この選択に
応じた信号が表示器10に入力されて表示方法が切り換
えられる。また、メモリ18に記憶されまた表示器10
に表示されている全データは、リセットスイッチ12を
押すことによりクリアすることができる。なお、高速フ
ーリエ変換器19及び演算器17が、加振力信号と振動
信号とに応じて固有振動数及び減衰比を算出する計算手
段を構成する。
【0019】次に、回転電機のステータコイルの損傷診
断を行う場合を例にとり、本実施例の作用効果を説明す
る。回転電機のステータコイルの断面を図6及び図7に
示す。一般に回転電機においては、薄い絶縁層20で被
われたステータコイル21が、ステータコア22の溝に
嵌着された構造(図6参照)となっているか、若しくは
その嵌着部分をさらにウェッジ23で押さえる構造(図
7参照)となっている。このような構造において、ステ
ータコイル21とステータコア22の溝との嵌着部分に
緩みが進行すると、摩擦によって絶縁層20がはがれ落
ちて放電が発生し、最終的にステータコイル21やステ
ータコア22の性能が劣化してモータの駆動に著しい悪
影響を与える場合がある。したがって、緩みが初期の段
階で検知して修復することが非常に重要となる。以下、
本実施例の損傷検出装置100を用いて検査作業員がス
テータコイル21の損傷検出を行う手順を詳細に説明す
る。
【0020】一般に、回転電機のステータコア22で
は、通常、数十個以上の溝があってそれぞれにステータ
コイル21が嵌着されている。そして、検査作業員は、
本実施例の検出装置100を用いて全てのステータコイ
ル21について固有振動数foと減衰比ζとを測定する
ことになる。すなわち、電源スイッチ13を「ON」に
し、周波数帯域設定器8の例えば「UPPER」を95
0Hz「LOWER」を500Hzにセットし、測定番
号設定器9で番号を「001」に設定し、そして表示選
択スイッチ11を「GRAPH」位置にした後、まず、
1つのステータコイル21(若しくはウェッジ23)に
振動センサ4を取り付けてハンマ2で打撃する。すると
ロードセル3及び振動センサ4からの加振力信号及び振
動信号に基づき、測定器本体7内において上述した手順
により固有振動数fo及び減衰比ζの値が算出され、メ
モリ8に記憶される。また同時に、表示器10の画面の
該当する位置に例えば「・1」のように表示され(図1
参照)、これにより測定対象物1とそのデータとの対応
関係が明確にされている。なおこのとき、周波数帯域設
定器8で指定した周波数範囲が広すぎて、その範囲内に
複数の固有振動数(例えば、3個のfo1,fo2,fo3の3
個)が検出された場合には、演算器17が、指定された
周波数範囲をそれぞれの固有振動数を含む適当な幅の周
波数範囲に分割(例えば、fo1を含むある範囲、fo2
含むある範囲、fo3を含むある範囲の3分割)し、それ
ぞれに対応する減衰比ζ123を算出する。そして
これら3つのデータのうちいずれか1つを選択してメモ
リ18に記憶されるとともに、表示器10に1つの「・
1」が表示される。この1つの選択の仕方は、複数の固
有振動数のうち最大値としたり、最小値としたり、所定
値に最も近いものにしたり等が考えられ、あらかじめそ
のように選択するように演算器17が動作する。
【0021】以上のようにして始めのステータコイル2
1に関するデータ表示が終わると、次に、測定番号設定
器9の番号を「002」に変更し、次のステータコイル
21(若しくはウェッジ23)に振動センサ4を取り付
けてハンマ2で打撃すると、上記同様に該当する位置に
例えば「・2」のように表示される。測定したいすべて
のステータコイル21についてこの手順を繰り返すこと
により、すべてのステータコイル21の固有振動数fo
及び減衰比ζの値が表示器10の画面に例えば「・(測
定番号)」として一覧表示される。
【0022】このとき、測定を行った全てのステータコ
イル21のうち、正常なステータコイル21は固有振動
数foが比較的高く減衰比が比較的小さいことから、表
示器10の画面の右下隅に表示される。図1にはこのよ
うな場合を測定番号1,2,3,6,7,8,12,13,1
4,15,16を付した・で示している。一方、損傷によ
る緩みが発生しているステータコイル21は正常なもの
より固有振動数foが低く減衰比が大きくなるので、表
示器10の画面の左上隅に表示される。図1にはこのよ
うな場合を例えば測定番号4,5,9,10,11を付した
・で示している。
【0023】このような表示において、測定番号4,5,
9,10,11のステータコイル21のデータは他のステ
ータコイル21と比較して明らかに異質なデータとして
表示されることとなるので、検査作業員は、これらのス
テータコイル21が緩み発生等の異常状態であることを
直ちに識別することができる。よって、現場において損
傷の発生を容易に検出することができる。そしてこのと
き、従来の目視及び触診では検出困難であった微小な緩
みも検出できるので、損傷の発生を確実に防止すること
ができる。またこれに加え、ステータコイル21の損傷
による緩みが発生する兆候を予め容易に発見でき、また
例えばステータコイル21に亀裂が入った場合でもその
亀裂の存在を容易に識別できるので、ステータコイル2
1が破損する前に修復することもできる。よって、破損
による大きな損害を未然に防止することができる。ま
た、上述したように損傷の発生しているステータコイル
21のみが画面上の左上に表示されるので、例えば、振
動の知識がない人でも容易に損傷の診断を行うことがで
きる。さらに周波数帯域設定器8で伝達関数の算出を意
図する周波数範囲を設定するので、ほんとうに必要な範
囲の固有振動数foのみを迅速に算出し、さらにこれに
よって円滑かつ迅速に減衰比ζを算出することができ
る。
【0024】なお、上記第1の実施例においては、表示
器10において、減衰比ζの大きさを縦軸に、固有振動
数foの大きさを横軸にとって表示したが、これに限ら
れるものではない。すなわち、逆に減衰比ζの大きさを
横軸に、固有振動数foの大きさを縦軸にとって表して
もよい。また、直交二軸による表示に限られるものでも
なく、これ以外の表示であっても、固有振動数foと減
衰比ζとの相関で表され、各測定対象物1どうしで比較
可能な表示であればよい。これらの場合も同様の効果を
得る。また、上記第1の実施例においては、周波数帯域
設定器8で指定した周波数範囲が広すぎて演算器17で
複数の固有振動数が検出された場合、そのうち1つを演
算器17が自動的に選択するようになっていたが、これ
に限られない。例えば、指定した周波数範囲が広すぎる
場合には「広すぎて1つの固有振動数の検出ができな
い」旨の表示を出し、検査作業員に周波数範囲の再設定
を促し、1つの固有振動数の検出が可能となるまでこの
手順を繰り返す構成等でもよく、この場合も同様の効果
を得る。さらに、上記第1の実施例においては、嵌着部
を備えた物体の例として回転電機のステータコイル21
を例示したが、これに限られるものではない。また嵌着
部分以外でも、損傷によって固有振動数foと減衰比ζ
との値が変化して損傷しない正常なものと識別可能であ
る構造であれば、本実施例の損傷検出器100を適用可
能であり、これらの場合も同様の効果を得る。また、上
記第1の実施例においては、測定対象物1を加振する手
段としてハンマ2を用いたが、これに限られず、通常の
加振機を用いてもよい。この場合も、同様の効果を得
る。
【0025】本発明の第2の実施例を図8及び図9によ
り説明する。本実施例は、固有振動数及び減衰比の算出
方法が異なる実施例である。第1の実施例と共通の部材
・機能には同一の符号を付す。本実施例による損傷検出
装置が第1の実施例の損傷検出装置100と異なる主要
な点は、ハンマ2の加振力を計測し対応する加振力信号
を出力するロードセル3と、測定器本体7の入力端子6
bとロードセル3とを接続するケーブル5bとが省略さ
れている点と、測定器本体207の内部機能とである。
この測定器本体207内における信号の流れを表すブロ
ック図を図8に示す。この図8は、第1の実施例におけ
る図2に対応する図である。
【0026】図8において、測定対象物1に振動センサ
4を取り付けた後にハンマ2で測定対象物1を打撃して
振動(=自由振動)を起こさせると、振動信号がケーブ
ル5aを介して入力端子6aより測定器本体207内に
入力される。測定器本体207内において、この振動信
号は増幅器14で増幅された後に帯域フィルタ215へ
送られる。このときの振動信号には測定対象物1以外の
振動信号が重畳されているので、この帯域フィルタ21
5において予め測定対象物1の固有振動数以外の成分を
除去する。このとき帯域フィルタ215には、周波数帯
域設定器8で指定した周波数範囲を示す指令信号が入力
されており、帯域フィルタ215はこの指令された周波
数範囲以外の成分を除去する。このような帯域フィルタ
215を通過後の振動信号は、図9に示すような減衰正
弦振動波形となる。すなわち、図9において、振動信号
は、時刻t1,t2,t3,t4,t5,t6,…,t,tn+1,tn+2
において振幅の極大値x1,x2,x3,x4,x5,x6,…,x,
n+1,xn+2をとる波形となる。なお、フィルタは電圧
制御型フィルタを用いることにより、カットオフ周波数
は周波数に比例した電圧信号として与えることができ
る。このようにフィルタ215で減衰正弦振動波形(=
減衰自由振動波形)となった振動信号は、A/D変換器
16へ送られてディジタル量へ数値化変換された後、さ
らに演算器17へと送られる。
【0027】演算器17においては、以下の演算を行っ
て固有振動数fo及び減衰比ζとを求める。すなわち、
まず、減衰正弦振動の各周期T1,T2,T3,T4,…Tnを T1=t3−t12=t4−t23=t5−t34=t6−t4 … Tn=tn+2−tn で求め、これら各周期の平均Tmを、 Tm=(T1+T2+T3+T4+…)/n で求める。すると、固有振動数foは、周期の逆数であ
ることから、 fo=1/Tm で求めることができる。
【0028】次に、隣り合った極大値の振幅比をそれぞ
れ、 r1=x1/x22=x2/x33=x3/x44=x4/x55=x5/x6 … rn=xn/xn+1n+1=xn+1/xn+2 …(1) とすると、これらの平均値rmは、 rm=(r1+r2+r3+r4+r5+r6+…+rn+rn+1+rn+2)/(n+2 ) …(2) となる。そして、対数減衰率δは、 δ=logem …(3) で与えられることになる。
【0029】ここで、減衰比ζと対数減衰率δとの間に
は、 δ=2πζ/√(1−ζ2) …(4) の関係があるが、減衰比ζは、通常1よりもはるかに小
さいので、(4)式は、 δ≒2πζ となり、よって、(3)式を代入すれば、 ζ≒δ/2π =logem/2π =(log10m/log10e)/2π =0.3646×log10m となり、これと、(1)式及び(2)式によって減衰比
ζを算出することができる。
【0030】以下の処理手順は、第1の実施例と同様で
ある。その他の損傷検出装置の構成及び機能は、第1の
実施例の損傷検出装置100とほぼ同様である。
【0031】本実施例によっても、第1の実施例と同様
の効果を得る。
【0032】なお、上記第1の実施例においては振動応
答/加振力から固有振動数fo及び減衰比ζを求め、第
2の実施例においては振動の時間波形に基づいて固有振
動数fo及び減衰比ζを求めたが、これに限られず、例
えば、周波数分析による手法でこれら固有振動数fo
び減衰比ζを求める場合であっても本発明を適用するこ
とができる。すなわち、これらの場合も表示器10にお
いてデータを一覧表示することで、同様の効果を得るこ
とができる。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、複数個の物体の加振が
終了した後に、表示手段が、固有振動数と減衰比との相
関データとしてかつ各物体間で互いに比較可能なデータ
として一覧表示するので、例えば複数個の物体のうちの
どれか1つの嵌着部分に損傷による緩みが存在していた
場合には、他の物体と比較して明らかに異質なデータと
して表示されることになる。したがって、検査作業員
は、この物体のみが異常状態であると直ちに識別するこ
とができ、現場において損傷の発生を容易に検出するこ
とができる。そしてこのとき、従来の目視・触診では検
出困難であった微小な緩みも検出できるので、損傷の発
生を確実に防止することができる。これに加え、嵌着部
分の損傷による緩みが発生する兆候を予め容易に発見で
き、また例えば物体に亀裂が入った場合でもその亀裂の
存在を容易に識別できるので、物体が破損する前に修復
することができる。よって、破損による大きな損害を未
然に防止することができる。
【0034】また、表示手段は、直交する二軸を備えた
画面を有し、二軸のうち一の軸を固有振動数の大きさ、
他の軸を減衰比の大きさにとって表示するので、損傷の
発生した物体をさらに明瞭に識別することができるの
で、例えば、振動の知識がない人でも容易に損傷の診断
を行うことができる。さらに、周波数設定手段で伝達関
数の算出を意図する任意の周波数範囲を設定するので、
ほんとうに必要な範囲の固有振動数foのみを迅速に算
出することができる。またこれにより減衰比算出手段で
円滑に減衰比ζを算出することができる。また、表示手
段で番号とこれに対応する物体のデータとを併せて表示
するので、データと物体との対応関係をさらに明確にす
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による損傷検出装置の構
成を示す外観図である。
【図2】図1に示された測定器本体における信号の流れ
を表すブロック図である。
【図3】図2に示された演算器で求められた伝達関数の
一例を示す図である。
【図4】図2に示された演算器で取り出して算出された
伝達関数の一例を示す図である。
【図5】図1に示された表示器における他の表示方法の
例を示す図である。
【図6】回転電機のステータコイルの断面図である。
【図7】回転電機のステータコイルの断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例による損傷検出器に備え
られた測定器本体における信号の流れを表すブロック図
である。
【図9】図8に示された帯域フィルタを通過後の振動信
号の減衰正弦振動波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 測定対象物(物体) 2 ハンマ(加振手段) 3 ロードセル 4 振動センサ 7 測定器本体 8 周波数帯域設定器(周波数設定手段) 9 測定番号設定器(番号設定手段) 10 表示器 11 表示選択スイッチ 14 増幅器 16 A/D変換器 17 演算器(伝達関数算出手段、固有振動数算
出手段、減衰比算出手段) 18 メモリ(記憶手段) 19 高速フーリエ変換器 20 絶縁層 21 ステータコイル 22 ステータコア 23 ウェッジ 100 損傷検出器 207 測定器本体 215 帯域フィルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−109578(JP,A) 特開 平2−212722(JP,A) 特公 平3−79658(JP,B2) 国際公開94/020826(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01M 7/02 G01H 17/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】物体に加振力を加えて振動を発生させる加
    振手段と、この加振手段の加振力を計測し対応する加振
    力信号を出力するロードセルと、前記物体に発生した振
    動を計測し対応する振動信号を出力する振動センサと、
    前記加振力信号と前記振動信号とが入力されこれらの信
    号に基づき前記物体の固有振動数及び減衰比の値を算出
    する計算手段と、この計算手段で算出される複数個の前
    記物体の固有振動数及び減衰比の値が入力され記憶され
    る記憶手段と、この記憶手段に記憶された各物体の固有
    振動数及び減衰比の値を、固有振動数と減衰比との相関
    データとしてかつ各物体間で互いに比較可能なデータと
    して一覧表示する表示手段とを有し、 前記表示手段は、直交する二軸を備えた画面を有すると
    ともに、該二軸のうち一の軸を前記固有振動数の大き
    さ、他の軸を前記減衰比の大きさにとって表示すること
    を特徴とする損傷検出装置。
  2. 【請求項2】物体に加振力を加えて振動を発生させる加
    振手段と、この加振手段の加振力を計測し対応する加振
    力信号を出力するロードセルと、前記物体に発生した振
    動を計測し対応する振動信号を出力する振動センサと、
    前記加振力信号と前記振動信号とが入力されこれらの信
    号に基づき前記物体の固有振動数及び減衰比の値を算出
    する計算手段と、この計算手段で算出される複数個の前
    記物体の固有振動数及び減衰比の値が入力され記憶され
    る記憶手段と、この記憶手段に記憶された各物体の固有
    振動数及び減衰比の値を、固有振動数と減衰比との相関
    データとしてかつ各物体間で互いに比較可能なデータと
    して一覧表示する表示手段とを有し、 前記計算手段は、前記振動信号による振動応答の値を前
    記加振信号による加振力の値で除して伝達関数を求める
    伝達関数算出手段と、この伝達関数算出手段で求められ
    た伝達関数の波形のピークから固有振動数foを求める
    固有振動数算出手段と、この固有振動数算出手段で求め
    られた固有振動数foにおける振動レベルをAoとしたと
    きに振動レベルがAo/√2となる周波数f1,f2を算出
    し、これら2つの周波数f1,f2の差を2foで除して減
    衰比ζを求める減衰比算出手段とを備え、 かつ、伝達関数の算出を意図する任意の周波数範囲を設
    定し対応する指令信号を前記伝達関数算出手段に出力す
    る周波数設定手段を設け、 前記伝達関数算出手段は、前記周波数設定手段からの指
    令信号で指示された周波数範囲における伝達関数を算出
    することを特徴とする損傷検出装置。
  3. 【請求項3】物体に加振力を加えて振動を発生させる加
    振手段と、この加振手段の加振力を計測し対応する加振
    力信号を出力するロードセルと、前記物体に発生した振
    動を計測し対応する振動信号を出力する振動センサと、
    前記加振力信号と前記振動信号とが入力されこれらの信
    号に基づき前記物体の固有振動数及び減衰比の値を算出
    する計算手段と、この計算手段で算出される複数個の前
    記物体の固有振動数及び減衰比の値が入力され記憶され
    る記憶手段と、この記憶手段に記憶された各物体の固有
    振動数及び減衰比の値を、固有振動数と減衰比との相関
    データとしてかつ各物体間で互いに比較可能なデータと
    して一覧表示する表示手段と、前記記憶手段に記憶され
    る複数個の物体の固有振動数及び減衰比の値に対して、
    各物体に対応した番号を付す番号設定手段とを有し、 前記記憶手段は、前記番号設定手段で付された番号とこ
    れに対応する物体の固有振動数及び減衰比の値とを関連
    づけて記憶し、前記表示手段は、前記番号とこれに対応
    する物体のデータとを併せて表示することを特徴とする
    損傷検出装置。
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