JP3410057B2 - 高抵抗磁性膜 - Google Patents

高抵抗磁性膜

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JP3410057B2 JP2000005353A JP2000005353A JP3410057B2 JP 3410057 B2 JP3410057 B2 JP 3410057B2 JP 2000005353 A JP2000005353 A JP 2000005353A JP 2000005353 A JP2000005353 A JP 2000005353A JP 3410057 B2 JP3410057 B2 JP 3410057B2
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    • B82Y25/00Nanomagnetism, e.g. magnetoimpedance, anisotropic magnetoresistance, giant magnetoresistance or tunneling magnetoresistance
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/007Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure ultrathin or granular films

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録ヘッド、
磁気再生ヘッド、磁気インピーダンスセンサーを始めと
する磁気センサーや、磁気コイル、インダクター、トラ
ンス、磁気シールドなどの磁気応用部品で用いられる高
抵抗磁性膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気デバイスの高周波化への要求
は強く、100MHz以上の周波数で軟磁気特性に優れ
た磁性材料が求められている。このような高周波で使用
される磁性材料は、主に渦電流および強磁性共鳴による
損失が小さいことが必要である。これを材料物性値とし
て言い換えれば、主として高電気抵抗率あるいは高飽和
磁束密度が必要ということになる。
【0003】従来、1T程度以上の高飽和磁束密度を実
現するために、磁性金属粒の表面に酸化物を形成し、そ
れを焼結した複合材料が特開平4−21739号公報で
提案されており、また酸化物としてMg−O、Ca−
O、Si−O、Al−O、Ti−Oなどを用いること
が、特開平6−120020号公報で提案されている。
【0004】一方、磁性体を構成する磁性結晶粒はサイ
ズを20nm程度以下に微細化することで、軟磁気特性
が向上することが、日本金属学会誌53(1989)2
41におけるFeNbCuSiBをはじめとする研究に
より報告されている。また、これらの複合材料と微細化
を兼ね備えることで軟磁気特性の向上と高飽和磁束密度
化を両立した材料として、スパッタリング法により成膜
された、FeM’NO(M’=Be、Mg、Al、S
i、Ca他)材料が特開平7−86035号公報で提案
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来提案されているF
eM’NO材料は、スパッタリング時に成膜したFeお
よびM元素がそれぞれの元素の酸化あるいは窒化物生成
自由エネルギーの差によってM’元素が選択酸化あるい
は選択窒化することにより、bcc結晶構造を持つFe
微結晶とその粒界を形成するM’OあるいはM’N化合
物に2相分離することで作製される。
【0006】しかしながら、スパッタリング法は、ター
ゲット元素を原子あるいは分子レベルに分解して、基板
上で合成を行う手法であり、またスパッタリング時のエ
ネルギーのみで、それぞれの元素が完全な2相分離を行
うことは実質的に困難である。このために成膜直後で
は、FeM’NO材料のFe微結晶には、必然的にO、
NまたはM’元素が固溶される。これがために、Feを
主組成とする微結晶がbcc構造を保っていても、材料
の磁歪定数が1×10-5程度以上に大きくなる、あるい
はFeの結晶磁気異方性エネルギーが大きくなるなどの
影響が生じ、軟磁気特性が劣化するという課題があっ
た。従って、工業応用上これらの材料を作製する場合、
僅かな組成ずれなどの影響により、大面積で低磁歪、高
軟磁気特性を制御することが困難であった。以上は、本
発明者がFeSiO、FeMgOなどの磁性膜を検討し
た結果、明らかになったことである。
【0007】2相分離を進行させるためには、FeM’
NOの成膜時の基板温度を上げる、あるいは成膜後に熱
処理を行うことによりほぼ達成できるが、これら熱処理
温度は一般には400℃以上となるために、結晶粒の粗
大化による軟磁気特性の劣化や、それ以下の低温プロセ
スが必要なデバイスでは使用できないという課題があっ
た。さらに、一般に、磁気デバイスは、同種のデバイス
でも、そのサイズ、使用周波数などによって要求される
最適な飽和磁束密度と電気抵抗率との関係が異なること
が知られている。しかし、従来はこれらの特性の最適な
調整の方法は知られていない。
【0008】そこで、本発明は、抵抗が高く、低磁歪で
高い軟磁気特性を備え、特性の調整など実用面からも優
れている磁性膜を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、Tabcde(ただし、a、b、c、dおよび
eは原子%であって下記式を満たす数値、TはFeま
たは30%以上のFeとCoおよびNiから選ばれる
少なくとも1種とからなる金属、MはBe、Mg、C
a、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種、Xは
Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Taおよびランタノ
イドから選ばれる少なくとも1種)なる組成式で表さ
れ、主として、平均結晶粒径が15nm以下である金属
磁性結晶粒と、粒界生成物とからなり、前記金属磁性結
晶粒の主組成が前記Tであり、前記粒界生成物が少なく
とも前記Mおよび前記Xの酸化物または窒化物を含み、
かつ飽和磁束密度が0.8T以上、電気抵抗率が80μ
Ωcm以上であることを特徴とする。
【0010】 a+b+c+d+e=100 45≦a≦85 5.5≦b≦28 0.5≦c≦16 6≦b+c≦28.5 0.4<b/c≦56 0≦d≦10 8≦d+e≦40e+q×d≦(b+c×n)×1.35 (ただし、nはXの最大価数の酸化物XO n により1〜
2.5の範囲で定まる数値、qはV、NbおよびTaに
ついては2.5、Ti、Zr、Hf、Ce、Prおよび
Tbについては2、その他の元素については1.5とし
てM元素およびX元素の合計量について加重平均した
値)
【0011】なお、ランタノイドとは、具体的には、L
a、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、T
b、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuである。
粒界生成物は、金属磁性結晶粒を略分離することが好ま
しい。本明細書では、主組成とは、50原子%以上、好
ましくは70原子%以上をいう。本発明の磁性膜は、例
えばNe、Ar、Kr、Xeなどの不活性元素の不純物
を1原子%以下、また、C、B、F、S、Pなどの不純
物であれば5原子%以下含んでいてもよい。
【0012】また、以下においても、組成比を示すため
の%表示は、すべて原子%である。
【0013】ここで、MおよびXは、Tに対しては比較
的難固溶性の材料である。またいずれの元素も酸化ある
いは窒化物生成自由エネルギーがTより低いという特徴
を持つが、その中では、Mは酸化物生成自由エネルギー
が大きく、またX元素は窒化物生成自由エネルギーが大
きい傾向がある。上記組成範囲の膜を作製すると、金属
磁性結晶粒子内に固溶するMあるいはXが少ないため
に、元素固溶による磁歪や結晶磁気異方性エネルギーの
増大が比較的小さな磁性膜を形成できる。またMあるい
はXが酸化あるいは窒化して主に磁性結晶粒子の粒成長
を抑制するとともに、高抵抗の粒界を形成する。
【0014】このとき、本発明ではMあるいはXと酸
素、窒素の組み合わせ比率を上記のように選択すること
で、粒界の幅あるいは磁性結晶粒子の被覆率を制御でき
るために、軟磁気特性とともに、広範な範囲での飽和磁
束密度と電気抵抗率とを任意に選択できる。
【0015】アルカリ土類金属であるMは、一般に反応
性が非常に高いため、工業上での取り扱い上、安定な化
合物状態で使用することが好ましい。例えば、MがCa
である場合、Ca単体で取り扱うよりもCaO、さらに
望ましくはMとXとの酸化物であるCaTiO3やCa
ZrO3として取り扱うことが便利である。
【0016】例えばFeとCaTiO3とをAr雰囲気
下でスパッタリングした場合、本発明者らは、実験的
に、磁性膜中に化学量論比よりも多くのOが含まれるこ
とを確認した。この過剰なOは、Feに固溶することで
磁歪を増大させるが、例えばTiなどのXを補うこと
で、Feへの過剰固溶を抑制でき、結果として磁歪を低
くすることができる。これはCaだけでなく上記M元素
について共通の現象であることも実験的に確認された。
このように、異なる酸化物、窒化物生成自由エネルギー
を持つMおよびXが、T中にとけ込む過剰なO、Nと選
択的に反応することで、磁性膜の磁歪を制御することが
できる。
【0017】Tの量の下限は、飽和磁束密度を1T以上
にするために、45%であり、上限はTを微細化する
M、X、O、Nを確保するために85%である。
【0018】MとXとの合計は、Tを微細化するために
少なくとも6%が必要であり、その一方、飽和磁束密度
を十分高く保つために28.5%以下としている。
【0019】Mの量は5.5%以上、Xの量は0.5%
以上あれば効果が得られる。また、MとXとの上記比率
は0.4〜56の範囲であれば、軟磁気特性を備えなが
ら様々な値の抵抗率を制御できる。これは、M−O酸化
物を用いた磁性膜が比較的低抵抗から軟磁気特性を得ら
れるのに対し、X−O酸化物を用いた磁性膜が、比較的
高抵抗から軟磁性を生じる傾向があるためであると考え
られる。
【0020】OとNとは電気抵抗率(比抵抗)を80μ
Ωcm以上とするために8%以上必要である。N元素は
O元素より添加量に対する抵抗増加率が少ないために、
広範な範囲での電気抵抗率の制御を可能にする。また、
O、Nの合計量が40%を超えると、結晶粒界が厚くな
りすぎるために、磁性結晶粒子同士の交換相互作用が弱
くなり、高抵抗化するものの軟磁気特性が劣化する。
【0021】本発明の磁性膜では、FeaMgbcd
e(ただし、a、b、c、dおよびeは原子%であって
下記式を満たす数値、Xは上記に同じ)なる組成式で表
される組成を有することが好ましい。 a+b+c+d+e=100 50≦a≦85 5.5≦b≦25.5 0.5≦c≦11 6≦b+c≦26 1≦b/c≦51 0≦d≦10 8≦d+e≦35
【0022】この好ましい例によれば、特に高抵抗率、
軟磁気特性を有し、高飽和磁束密度(1T以上)を備え
た磁性膜を提供することができる。
【0023】Mgは、Feに対して比較的、難固溶性で
あるとともにFeとの間に金属間化合物を生成し難い。
このためにFeへの固溶による磁歪や結晶磁気異方性エ
ネルギーの増大が小さく、かつFeとMg−Oあるいは
Mg−Nとの相分離ばかりでなく、Fe、Mgそのもの
が相分離するために、非磁性元素添加量の全体量が比較
的少なくても、Fe結晶を微細化できる。その結果とし
て、磁性膜の高飽和磁束密度化と軟磁性化とが両立でき
る。
【0024】またMg、Xは、酸化あるいは窒化して、
主に磁性結晶粒子の粒成長を抑制するとともに、高抵抗
の粒界を形成する。特にMgと異なる酸化物あるいは窒
化物生成自由エネルギー、あるいはMgと異なるα−F
e中での拡散速度を持つXを上記組成範囲で組み合わせ
ることにより、Fe中にとけ込むOあるいは過剰なN量
を制御でき、その結果、磁歪などを調整することもでき
る。
【0025】Feの量の下限は、飽和磁束密度を大きく
するために、50%とすることが好ましい。上限は、F
eの微細化、膜の高抵抗化をするMg、X、O、Nを確
保するために85%である。
【0026】MgとXとの合計量は、Feを微細化と膜
の高抵抗化のために6%以上を必要とする。ここで、X
の量は0.5%以上あれば効果が得られる。
【0027】また、Mgの量がX以上であることで抵抗
率の広範な範囲の制御が可能となる。 ここでも、Oと
Nとは抵抗率を80μΩcm以上とするために8%以上
必要である。N元素はO元素より添加量に対する抵抗増
加率が少ないために、広範な範囲での電気抵抗率の制御
を可能にする。また、飽和磁束密度の観点から、N、O
の合計量は35%以下が好ましい。
【0028】本発明の磁性膜は、e+q×d≦(b+c
×n)×1.35(ただし、b、c、dおよびeは上記
に同じ、nはXの最大価数の酸化物XOnにより1〜
2.5の範囲で定まる数値、qはV、NbおよびTaに
ついては2.5、Ti、Zr、Hf、Ce、Prおよび
Tbについては2、その他の元素については1.5とし
てM元素およびX元素の合計量について加重平均した
値)が満たされる組成式で表されるため、特に低磁歪と
高抵抗とが両立できる。
【0029】上記式において、bは、正確にはb×1で
ある。これは、Mの最大価数酸化物MO(具体的には、
BeO、MgO、CaO、SrO、BaOから選ばれる
少なくとも1種)におけるOに対するMの比率に基づい
ている。なお、上記式は、d=0であれば(磁性膜に窒
素が含有されていなければ)、e≦(b+c×n)×
1.35となる。
【0030】一方、Xの最大価数酸化物はXにより酸素
との比率が変化する。したがって、上記nもXにより変
化する。nは、上記qと同様、例えばXがY、Laなど
であれば1.5、Ti、Zr、Hfなどでは2、V、N
b、Taでは2.5となる。
【0031】Xが2種類以上の元素を含む場合は、nは
原子加重平均(原子%により重みづけした平均値)とな
る。
【0032】なお、e+q×dが(b+c×n)×1.
35を超える場合は磁歪が大きくなる傾向が現れる。
【0033】eは、(b+c×n)×0.9≦e+q×
d≦(b+c×n)×1.1の範囲にあることがさらに
好ましい。さらに低磁歪と高抵抗、軟磁気特性と高飽和
磁束密度との両立が達成できるからである。ここでも、
d=0であれば、上記式は、(b+c×n)×0.9≦
e≦(b+c×n)×1.1となる。
【0034】本発明の磁性膜においては、XがZr、N
b、HfおよびTaから選ばれる少なくとも1種である
ことが好ましい。添加による磁歪低下の効果が特に大き
いからである。またその含有量は、特に飽和磁束密度を
優先する場合、0.5≦c≦5の範囲とすることがさら
に好ましい。
【0035】また、本発明の磁性膜においては、Tの5
%以下をRu、Rh、Ir、Pd、Pt、AgおよびA
uから選ばれる少なくとも1種と置換してもよい。特に
飽和磁束密度が1.4T以上の磁性膜において、耐食性
を高めることができるからである。耐食性を高めるため
には、置換量を0.5%以上とすることが好ましく、一
方、飽和磁束密度の低下を抑制するため置換量を5%以
下とすることが好ましい。
【0036】また、本発明の磁性膜は、膜垂直方向に、
少なくともM元素が略周期的に組成変調された領域を有
することが好ましい。軟磁気特性と同時に高飽和磁束密
度が実現しやすいからである。
【0037】また、本発明の磁性膜においては、上記組
成変調の周期を10nm以下とすることが好ましい。さ
らに軟磁気特性が高い磁性膜を実現できるからである。
【0038】本発明の磁性膜は、磁性膜中のMおよびO
を、主として前記Mの酸化物をスパッタリングすること
により供給することにより製造することが好ましい。よ
り少ないMおよびOの添加量で磁性結晶粒を微細化でき
るからである。
【0039】また、本発明の磁性膜は、金属および化合
物を配置した複合ターゲットをスパッタリングすること
により、前記複合ターゲットに対して少なくとも2方向
に移動する基板上に成膜を行って製造することが好まし
い。比較的大面積においても均一な組成の膜を作製する
ことができるからである。
【0040】また、本発明の磁性膜は、同一電極上に金
属および化合物を配置した複合ターゲット、または少な
くとも2つの電極上の金属ターゲットおよび化合物ター
ゲットをスパッタリングすることにより、バイアス電圧
を印加した基板上に成膜を行って製造することが好まし
い。磁性膜中の主にOあるいはN量を上記好ましい範囲
に制御することが容易になるからである。
【0041】さらに、上記磁性膜は、成膜後に350℃
以下の熱処理を行うことにより、さらに優れた軟磁気特
性を示すようになる。
【0042】
【発明の実施の形態】本発明の構造、組成を持つ磁性薄
膜は、低ガス圧雰囲気で蒸着法により形成することが最
良である。蒸着法の中では、高周波マグネトロンスパッ
タリング、直流スパッタリング、対向ターゲットスパッ
タリング、イオンビームスパッタリングなどに代表され
るスパッタリング法や、基板付近に反応性ガス導入部を
持つ、反応性スパッタリング法、あるいは基板付近に反
応性ガス導入部を持ち、蒸着材料を溶解する溶解部をも
った反応性蒸着法などが好ましい。
【0043】スパッタリング法を採用する場合、特に、
酸素あるいは窒素元素の供給源として酸化物あるいは窒
化物を用いる場合、まず本発明の磁性膜のそれぞれ成膜
後の組成を考慮して組成決定した金属または合金と、酸
化物、窒化物、金属元素などの添加元素を同一電極上に
適度に配置した複合ターゲットを用いたスパッタ法、あ
るいは複数の電極上に配置した金属、合金、酸化物また
は窒化物のターゲットを同時放電し、基板上に元素供給
を同時行うコ・スパッタ法、あるいは複数の電極上に配
置された金属、合金、酸化物または窒化物のターゲット
直上近に、基板を順次移動させ成膜を行うタンデム法な
どが好ましい。
【0044】ここで複合ターゲットを使用する場合は、
添加物ペレットの配置個所に対応する基板内の膜組成分
布の影響を押さえるために、基板自身を、少なくとも2
方向に移動させながら成膜することが好ましい。これは
コ・スパッタ、タンデムスパッタを行う場合についても
それぞれ組成均一化の効果がある。
【0045】また、タンデムスパッタを行う際に、それ
ぞれのターゲットからの成膜速度と、各ターゲット上で
の基板の滞在あるいは移動時間を調整することで、磁性
膜の好ましい組成変調構造を形成することができる。同
様に、このような組成変調は、ターゲット上の入射角を
周期的に変化させること、あるいは反応性ガスをスパッ
タリング時に周期的に導入することでも達成できる。ま
たいずれの成膜方法を用いる場合においても、基板に対
して一方向に磁界をかけながら成膜を行うこと、あるい
は一方向に磁界をかけながら、350℃以下程度で熱処
理することで磁性膜に一軸異方性を形成することができ
る。
【0046】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるも
のではない。
【0047】以下の実施例では、磁性膜をRFマグネト
ロンスパッタリングを用いて作製した。また、以下、基
板温度として、室温から100℃程度まで幅があるの
は、成膜時のエネルギーによる自然昇温であり、実際に
は300℃以下程度であれば本実施例の好ましい磁性薄
膜を作製することが可能である。膜構造はX線回折(X
RD)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し
た。また組成分析はEPMA、また抗磁力はBHループ
トレーサー、飽和磁束密度はVSMで評価した。
【0048】(実施例1)FeaMgbcde膜につ
いて検討した結果を示す。成膜条件は次の通りである。 ・基板:非磁性セラミックス基板、SiまたはC基板
(Si基板とC基板は組成分析用) ・基板温度:室温〜100℃ ・ターゲット:3インチのFe上に、5×5mmのSi
2あるいはMgOチップあるいはMg32チップおよ
び5×5mmの金属元素のチップを下記表中の組成にな
るように配置 ・ターゲットサイズ:3インチ ・放電ガス圧:8mTorr ・放電電力:200W ・スパッタガス:Ar (表1)および(表2)に、250℃の真空中で熱処理
した後の磁性膜の磁気特性と組成を示す。磁性膜の厚み
はすべて1μmとした。
【0049】 (表1) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― サンプル 磁性膜組成 抗磁力 磁歪 抵抗率 (原子%) (Oe) (×10-5) (μΩcm) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― aa Fe64Si10O26 3.2 1.3 250 ab Fe64Mg15O21 1.2 1.0 150 ac Fe62Mg16Si1O21 1.7 1.1 170 ad Fe60Mg16Si2O22 1.9 1.2 240 ae Fe62Mg16Al2O20 1.6 1.0 190 af Fe62Mg16Ti1O21 1.2 0.7 180 ag Fe61Mg16Ti2O21 1.1 0.6 190 ah Fe62Mg16V1O21 1.1 0.6 180 ai Fe61Mg16V2O21 1.3 0.5 210 aj Fe63.5Mg15Zr0.5O21 0.9 0.6 160 ak Fe62.5Mg15Zr1.5O21 0.9 0.3 200 al Fe62.5Mg16Nb0.5O21 0.6 0.7 160 am Fe60.5Mg16Nb2.5O21 0.7 0.4 200 an Fe61.5Mg16Hf1.5O21 0.9 0.3 190 ao Fe60.5Mg16Hf2.5O21 0.9 0.2 210 ap Fe61.5Mg16Ta1.5O21 1.0 0.4 190 aq Fe60.5Mg16Ta2.5O21 1.0 0.4 210 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0050】 (表2) ――――――――――――――――――――――――――――― サンプル 磁性膜組成 磁歪 (原子%) (×10-5) ――――――――――――――――――――――――――――― ar Fe64.9Mg13Hf1.1O21 0.6 as Fe65.0Mg13Hf1.0O21 0.6 at Fe65.1Mg13Hf0.9O21 0.6 au Fe64.9Mg12Hf1.1O22 0.6 av Fe63.6Mg13Hf2.4O21 0.5 aw Fe63.7Mg13Hf2.3O21 0.5 ax Fe65.3Mg13Hf1.7O20 0.5 ay Fe65.2Mg13Hf1.8O20 0.5 ―――――――――――――――――――――――――――――
【0051】以上のように、FeMgO系材料に元素を
添加したところ、Feと固溶性の高いSiやAlでは磁
歪が低下せず(サンプルaa〜ae)、サンプルaf〜aqに示
したように、Feと難固溶性である元素についてわずか
0.5%の添加から、磁歪の低下とともに、抵抗率の上
昇が確認された。
【0052】その他、同様に、Feに対して難固溶性で
あるランタノイドについて添加効果を調べたところ、同
様の効果が確認された。また磁歪低下の効果は、Zr、
Nb、Hf、Taで特に顕著であった。
【0053】サンプルaf〜ayの磁性膜の飽和磁束密度は
いずれも1T以上で、X線回折で求めた磁性結晶粒子の
平均結晶粒径は15nm以下であった。このうち、サン
プルamについてTEM観察したところ、α−Feの微結
晶が粒界生成物でほぼ覆われ、互いに分離された複合構
造を有し、粒界生成物は結晶性が低く非晶質とみなせる
ものであった。また、この粒界生成物の組成は、少なく
とも、MgとNbとの酸化物を含むことが確認された。
【0054】次に、スパッタガスを、Arガス、または
ArガスにO2もしくはN2を適度に加えた混合ガスとし
て、様々な組成について、磁気特性を調べた。
【0055】(表3)に、250℃の真空中で熱処理し
た後の磁性膜の磁気特性と組成を示す。磁性膜の厚さは
すべて1μmとした。なお、表中、不足物性が記載され
ていないサンプルについては、抗磁力が2Oe以下、電
気抵抗率が80μΩcm以上、飽和磁束密度が1T以
上、かつ磁歪が0.7×10-5以下であった。不足物性
は、上記特性が満たされていないものを示している。表
中においても、a、b、c、d、eおよびnは、上記に
説明したとおりである。
【0056】 (表3) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― サンフ゜ル 磁性膜組成 不足物性 Q* (b+c) (b/c) (d+e) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ba Fe90Mg5V0.5O4.5 抗磁力 0.72 5.5 10 4.5 bb Fe85Mg4V0.5O10.5 磁歪 2.0 4.5 8 10.5 bc Fe85Mg5V0.5O9.5 磁歪 1.52 5.5 10 9.5 bd Fe85Mg6O9 磁歪 1.5 6 − 9 be Fe85Mg5.5Ta0.5O9 1.33 6 11 9 bf Fe85Mg7Hf1O7 抗磁力 0.74 8 7 7 bg Fe85Mg6Hf1O8 0.94 7 6 8 bh Fe85Mg6Ta0.5O8.5 1.17 6.5 12 8.5 bi Fe75Mg9Nb2O14 1 11 4.5 14 bj Fe75Mg9Zr2O14 1.08 11 4.5 14 bk Fe75Mg9La2O14 1.17 11 4.5 14 bl Fe70Mg12O18 磁歪 1.5 12 − 18 bm Fe70Mg10Ta2O18 1.2 12 5 18 bn Fe70Mg10Hf2O18 1.29 12 5 18 bo Fe70Mg10Zr3O17 1.06 13 3.3 17 bp Fe70Mg11Zr3N3O13 1.05 13 3.3 17 bq Fe70Mg11Zr3N10O6 1.3 13 3.3 17 br Fe70Mg11Zr3N12O4 抗磁力 1.37 13 3.3 17 bs Fe70Mg13Y1O16 1.1 14 13 16 bt Fe65Mg15Nb1O19 1.09 16 15 19 bu Fe65Mg13Hf2O20 1.18 15 6.5 20 bv Fe50Mg11Y11O28 1.02 22 1 28 bw Fe50Mg12Y12O26 0.87 24 1 26 bx Fe50Mg22La3O25 0.94 25 7.3 25 by Fe50Mg25.5Ti0.5O24 0.91 26 51 24 bz Fe50Mg26Ti0.5O23.5 抗磁力 0.87 26.5 52 23.5 ca Fe50Mg7.5Nb7.5O35 1.33 15 1 35 cb Fe50Mg7.5Nb6.5O36 磁歪 1.52 14 1.2 36 cc Fe50Mg7Hf8O35 磁歪 1.52 15 0.88 35 cd Fe45Mg10Ta10O35 飽和磁束密度 1.0 20 1 35 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― *上記Qは、(e+q×d)/(b+c×n)である。
【0057】(表3)より、磁性膜をFeaMgbcd
e(ただし、添え字のa、b、c、dおよびeは原子
%を示す。XはY、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta
およびランタノイドから選ばれる少なくとも1種)なる
組成式で表した場合、a+b+c+d+e=100、5
0≦a≦85、5.5≦b≦25.5、0.5≦c≦1
1、6≦b+c≦26、1≦b/c≦51、0≦d≦1
0、8≦d+e≦35の範囲であるときに、高抵抗と高
飽和磁束密度を有する軟磁気特性が得られることがわか
る。
【0058】これらの磁性膜は、X線回折とTEM観察
とにより、いずれも実質的に平均結晶粒径が15nm以
下である金属磁性結晶粒と、この金属磁性結晶粒をほぼ
覆った粒界生成物とからなることが分かった。またこの
金属磁性結晶粒は主にα−Feから構成されており、粒
界生成物は少なくともMおよびXの酸化物または窒化物
を含んでいた。
【0059】同時に、e+q×d≦(b+c×n)×
1.35であるときに低磁歪が得られ、特に、(b+c
×n)×0.9≦e+q×d≦(b+c×n)×1.1
であるときに、磁歪が0.5×10-5以下の優れた軟磁
気特性が得られた。
【0060】なお、サンプルbvとサンプルbwとを比較す
ると、サンプルbvが抗磁力が良好であった。
【0061】また、上記組成式で表されるサンプルのF
eの5%以下をRu、Rh、Ir、Pd、Pt、Agお
よびAuから選ばれる少なくとも1種により置換したと
ころ、飽和磁束密度や磁気特性の劣化をほとんど起こさ
ずに、耐食性が向上する効果があることが確認された。
【0062】上記の例では、磁性膜は室温で成膜を行っ
たが、成膜時の基板温度を水冷などを用いて冷却するこ
と、あるいは基板温度が200℃以下、好ましくは15
0℃以下でも作製できることも確認された。
【0063】さらに、上記の例では250℃の真空中で
熱処理を行ったが、成膜直後から軟磁性が発現され、3
50℃以下の熱処理であれば、軟磁気特性がほとんど変
化しないことも確認された。
【0064】特に一軸磁場中で成膜する、あるいは一軸
磁場中で150℃以上350℃以下の熱処理を行うこと
で、上記例の磁性膜には、一軸磁気異方性が付与される
ことも確認された。この結果、これらの磁性膜を少なく
とも磁化困難軸方向に励磁するデバイスに応用した場
合、100MHz以上の高周波でも渦電流損失と共鳴損
失が少ない高特性を実現できる。
【0065】また、上記の例では、ターゲット上にMg
Oチップを配置した複合ターゲットを用いているが、例
えばFeMgX焼結ターゲットなどをAr+O2混合ガ
ス中などでスパッタする、いわゆる反応性スパッタ法を
用いても、同様の磁性膜が作製できることが確認され
た。また上記の例では、基板はターゲットに対して固定
した状態でスパッタリングを行ったが、複合ターゲット
に対して基板位置を回転させる、あるいはターゲットに
対して前後左右などに平行移動するなど、少なくとも2
方向に稼働している基板上に成膜を行うことで、組成の
均一性が向上し、磁歪をはじめとする磁気特性が上記値
よりもさらに向上することが一部の組成で確認された。
【0066】また、上記の例のように、同一電極上で金
属および化合物を適度に配置した複合ターゲットを用い
たスパッタリング法、あるいは少なくとも2つ以上の異
なる電極上の金属ターゲットおよび化合物ターゲットを
用いたスパッタリング法において、基板側にバイアスを
印加しながら成膜を行うことで、膜中の酸素量を制御す
ることができ、その結果、磁性膜のO組成量を、本発明
の好ましい範囲に制御でき、磁歪をはじめとする軟磁気
特性を制御できることも確認された。
【0067】(実施例2)次に、Feabcde
について検討した結果を示す。成膜条件は次の通りであ
る。 ・基板:非磁性セラミックス基板またはSi基板(Si
基板は組成分析用) ・基板温度:室温〜100℃ ・ターゲット:3インチのFe上に5×5mmの酸化物
焼結チップおよび5×5mmの金属元素のチップを下記
表中の組成になるように配置(用いた酸化物チップの一
部は、化学量論比よりも酸素の量が少ない、酸素欠陥が
あるものを使用) ・ターゲットサイズ:3インチ ・放電ガス圧:8mTorr ・放電電力:200W ・スパッタガス:ArまたはAr+O2
【0068】(表4)に、250℃の真空中で熱処理し
た後の磁性膜の磁気特性と組成を示す。磁性膜の厚みは
すべて1μmとした。
【0069】なお、表中不足物性が記載されていないサ
ンプルについては、抗磁力2Oe以下、電気抵抗率が8
0μΩcm以上、飽和磁束密度が1T以上、かつ磁歪が
0.7×10-5以下であった。不足物性は、上記特性が
満たされていないものを示している。
【0070】 (表4) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― サンフ゜ル 磁性膜組成 不足物性 Q* (b+c) (b/c) (d+e) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― da Fe85Ca3Zr3O9 1 6 1 9 db Fe75Ca5Ti5O15 1 10 1 15 dc Fe75Sr5Ti5O15 1 10 1 15 dd Fe75Ba5Ti5O15 1 10 1 15 de Fe75Mg2.5V5O17.5 1.17 7.5 0.5 17.5 df Fe75Ca2.5Nb5O17.5 1.17 7.5 0.5 17.5 dg Fe75Sr2.5V5O17.5 1.17 7.5 0.5 17.5 dh Fe75Ba2.5Nb6O16.5 0.94 8.5 0.42 16.5 di Fe75Ba3Nb8O14 抗磁力 0.61 11 0.38 14 dj Fe45Mg28Ce0.5O26.5 0.92 28.5 56 26.5 dk Fe45Mg29Ce0.5O25.5 抗磁力 0.86 29.5 58 25.5 dl Fe45Ca8Y16O31 0.97 24 0.5 31 dm Fe45Ca8Y17O30 抗磁力 0.89 25 0.47 30 dn Fe45Sr4.5Nb10.5O40 1.3 15 0.43 40 do Fe45Sr4Nb10O41 磁歪 1.41 14 0.4 41 dp Fe40Sr7Ta13O40 飽和磁束密度 1.01 20 0.54 40 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― *上記Qは、(e+q×d)/(b+c×n)である。
【0071】(表4)より、Feabcde(ただ
し、添え字のa、b、c、dおよびeは原子%を示す。
MはBe、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少
なくとも1種、XはY、Ti、Zr、Hf、V、Nb、
Taおよびランタノイドから選ばれる少なくとも1種)
なる組成式で表され、a+b+c+d+e=100、4
5≦a≦85、5.5≦b≦28、0.5≦c≦16、
6≦b+c≦28.5、0.4<b/c≦56、0≦d
≦10、8≦d+e≦40の範囲であるときに、高抵抗
と高飽和磁束密度を有する軟磁気特性が得られることが
わかる。
【0072】これらの磁性膜は、X線回折とTEM観察
とにより、いずれも主として平均結晶粒径が15nm以
下である金属磁性結晶粒と、この金属磁性結晶粒をほぼ
覆った粒界生成物とよりなることが分かった。またこの
金属磁性結晶粒は主にα−Feから構成されており、粒
界生成物は少なくともMおよびXの酸化物または窒化物
を含んでいた。
【0073】同時に、e+q×d≦(b+c×n)×
1.35であるときに低磁歪が得られ、特に、(b+c
×n)×0.9≦e+q×d≦(b+c×n)×1.1
であるときに、磁歪が0.5×10-5以下の優れた軟磁
気特性が得られた。また、上記組成式で表されるサンプ
ルのFeの5%以下をRu、Rh、Ir、Pd、Pt、
AgおよびAuから選ばれる少なくとも1種により置換
したところ、飽和磁束密度や磁気特性の劣化をほとんど
起こさずに、耐食性が向上する効果があることが確認さ
れた。
【0074】また、上記例におけるFeに代えて、Fe
の70%以下を、CoまたはNiで置換した磁性金属を
用いた場合も、上記と同じ組成範囲において優れた高飽
和磁束密度と高抵抗、軟磁性が両立できることも確認で
きた。
【0075】上記の例では、磁性膜は室温で成膜を行っ
たが、成膜時の基板温度を水冷などを用いて冷却するこ
と、あるいは基板温度が200℃以下、好ましくは15
0℃以下でも作製できることも確認された。
【0076】さらに、上記の例では250℃の真空中で
熱処理を行ったが、成膜直後から軟磁性が発現され、3
50℃以下の熱処理であれば、軟磁気特性がほとんど変
化しないことも確認された。
【0077】特に一軸磁場中で成膜する、あるいは一軸
磁場中で150℃以上350℃以下の熱処理を行うこと
で、上記例の磁性膜には、一軸磁気異方性が付与される
ことも確認された。この結果、これらの磁性膜を少なく
とも磁化困難軸方向に励磁するデバイスに応用した場
合、100MHz以上の高周波でも渦電流損失と共鳴損
失が少ない高特性を実現できる。
【0078】また、上記の例では、ターゲット上にMg
Oチップを配置した複合ターゲットを用いているが、例
えばFeMgX焼結ターゲットなどをAr+O2混合ガ
ス中などでスパッタする、いわゆる反応性スパッタ法を
用いても、同様の磁性膜が作製できることが確認され
た。また上記の例では、基板はターゲットに対して固定
した状態でスパッタリングを行ったが、複合ターゲット
に対して基板位置を回転させる、あるいはターゲットに
対して前後左右などに平行移動するなど、少なくとも2
方向に稼働している基板上に成膜を行うことで、組成の
均一性が向上し、磁歪をはじめとする磁気特性が上記の
値よりもさらに向上することが一部の組成で確認され
た。
【0079】また、上記の例のように、同一電極上で金
属および化合物を適度に配置した複合ターゲットを用い
たスパッタリング法、あるいは少なくとも2つ以上の異
なる電極上の金属ターゲットおよび化合物ターゲットを
用いたスパッタリング法において、基板側にバイアスを
印加しながら成膜を行うことで、膜中の酸素量を制御す
ることができ、その結果、磁性膜のO組成量を、本発明
の好ましい範囲に制御でき、磁歪をはじめとする軟磁気
特性を制御できることも確認された。
【0080】(実施例3)異なる2つのターゲットを異
なる電極で放電しながら、それぞれのターゲット直上近
辺に基板を交互に移動させる一種のタンデムスパッタ法
を用いて、FeMgHfO磁性膜を作製した。 成膜条件は次の通りである。 ・基板:非磁性セラミックス基板、Si基板(Si基板
は組成分析用) ・基板温度:水冷 ・ターゲット:4インチのFe上に5×5mmのHfチ
ップをのせた複合ターゲットおよび4インチの Mgタ
ーゲット ・放電ガス圧:5mTorr ・放電電力:Fe複合ターゲット220W、Mgターゲ
ット300W ・スパッタガス:基板がFe+Hfターゲット上ではA
rのみ、基板がMgターゲット上ではAr+O2
【0081】基板の移動周期を変化させることで、それ
ぞれのターゲット上での一回当たりの通過時間(一回毎
の実質的な成膜時間)を変化させ、FeHf層とMgO
層の成膜周期を変化させた。
【0082】いずれの磁性膜も全体としての膜組成は、
ほぼ、Fe61.5Mg16Hf1.521とした。比較のた
め、Feターゲット上にMgOチップとHfチップとを
配置して成膜し、無周期(従って周期長は膜厚)のFe
61.5Mg16Hf1.521を作製した。(表5)に250
℃の真空中で熱処理した後の磁性膜の磁気特性と組成を
示す。磁性膜の厚みはすべて1μmとした。
【0083】 (表5) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― サンフ゜ル 周期長 抗磁力 磁歪 抵抗率 (nm) (Oe) (×10-5) (μΩcm) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ea 1000 0.9 0.3 200 eb 100 10 -1.0 100 ec 50 1.5 -0.5 80 ed 10 0.6 -0.1 190 ee 5 0.8 0.1 180 ef 0.5 0.9 0.3 200 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0084】(表5)の磁性膜について0.1molの食塩
水中に浸漬する耐食性試験を実施した結果、周期が短く
なるにつれて高耐食性を示すことが確認された。また、
成膜周期長が10nm以下の膜では小さな磁歪と高抵抗
とが両立していることが分かる。これらの膜をオージェ
デプスプロファイルで膜厚方向の組成変調を調べたこと
ころ、サンプルefでは、実質的にサンプルeaとの判別が
困難であったが、サンプルee、edでは主としてMgの組
成変調が確認できた。これらの結果より、少なくとも膜
厚方向にM元素が組成変調された磁性膜であって、その
組成変調の周期が10nm以下であるときに、優れた軟
磁気特性とともに高抵抗の磁性膜が実現できることが分
かった。
【0085】上記の例では、タンデムスパッタによる組
成変調膜の作製例を示したが、その他の実験から、Fe
HfMg焼結ターゲットなどを、Arガスで放電中に、
周期的に酸素ガスを導入する、パルスリアクティブスパ
ッタリングによっても類似の構造と磁気特性が得られる
ことも確認された。
【0086】また、上記に示した組成例に限らず、本発
明の好ましい組成範囲であれば、同様の効果が得られる
ことも確認された。
【0087】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、磁歪定
数が低く、かつ高周波での軟磁気特性に優れ、高い飽和
磁束密度、高比抵抗を有する磁性材料を、350℃以下
の低温プロセスで製造することができる。しかも、本発
明の組成および構造を備えた磁性膜は、量産時に安定し
た材料供給を可能とする、という工業上優れた効果も有
する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻 弘恭 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 榊間 博 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−86035(JP,A) 特開 平6−132125(JP,A) 特開 平8−227813(JP,A) 特開 平10−306314(JP,A) 特開 平2−163911(JP,A) 特開 平2−228454(JP,A) 特開 平6−124846(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 10/00 - 10/32 H01F 41/14 - 41/34 C22C 38/00

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Tabcde(ただし、a、b、
    c、dおよびeは原子%であって下記式を満たす数値、
    TはFeまたは30原子%以上のFeとCoおよび
    Niから選ばれる少なくとも1種とからなる金属、Mは
    Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なく
    とも1種、XはY、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta
    およびランタノイドから選ばれる少なくとも1種)なる
    組成式で表され、主として、平均結晶粒径が15nm以
    下である金属磁性結晶粒と、粒界生成物とからなり、前
    記金属磁性結晶粒の主組成が前記Tであり、前記粒界生
    成物が少なくとも前記Mおよび前記Xの酸化物または窒
    化物を含み、かつ飽和磁束密度が0.8T以上、電気抵
    抗率が80μΩcm以上であることを特徴とする磁性
    膜。 a+b+c+d+e=100 45≦a≦85 5.5≦b≦28 0.5≦c≦16 6≦b+c≦28.5 0.4<b/c≦56 0≦d≦10 8≦d+e≦40e+q×d≦(b+c×n)×1.35(ただし、nは
    Xの最大価数の酸化物XO n により1〜2.5の範囲で
    定まる数値、qはV、NbおよびTaについては2.
    5、Ti、Zr、Hf、Ce、PrおよびTbについて
    は2、その他の元素については1.5としてM元素およ
    びX元素の合計量について加重平均した値)
  2. 【請求項2】 FeaMgbcde(ただし、a、
    b、c、dおよびeは原子%であって下記式を満たす数
    値、Xは上記に同じ)なる組成式で表され、飽和磁束密
    度が1T以上である請求項1に記載の磁性膜。 a+b+c+d+e=100 50≦a≦85 5.5≦b≦25.5 0.5≦c≦11 6≦b+c≦26 1≦b/c≦51 0≦d≦10 8≦d+e≦35
  3. 【請求項3】 (b+c×n)×0.9≦e+q×d≦
    (b+c×n)×1.1(ただし、b、c、d、e、n
    およびqは上記に同じ)が満たされる組成式で表される
    請求項1または2に記載の磁性膜。
  4. 【請求項4】 XがZr、Nb、HfおよびTaから選
    ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに
    記載の記載の磁性膜。
  5. 【請求項5】 Tの5原子%以下を、Ru、Rh、I
    r、Pd、Pt、Ag、およびAuから選ばれる少なく
    とも1種と置換した請求項1〜のいずれかに記載の磁
    性膜。
  6. 【請求項6】 膜垂直方向に、少なくともM元素が略周
    期的に組成変調された領域を有する請求項1〜のいず
    れかに記載の磁性膜。
  7. 【請求項7】 組成変調の周期が10nm以下である請
    求項に記載の磁性膜。
  8. 【請求項8】 磁性膜中のMおよびOを、主として前記
    Mの酸化物をスパッタリングすることにより供給して成
    膜した請求項1〜のいずれかに記載の磁性膜。
  9. 【請求項9】 金属および化合物を配置した複合ターゲ
    ットをスパッタリングすることにより、前記複合ターゲ
    ットに対して少なくとも2方向に移動する基板上に成膜
    を行って得た請求項1〜のいずれかに記載の磁性膜。
  10. 【請求項10】 同一電極上に金属および化合物を配置
    した複合ターゲット、または少なくとも2つの電極上の
    金属ターゲットおよび化合物ターゲットをスパッタリン
    グすることにより、バイアス電圧を印加した基板上に成
    膜を行って得た請求項1〜のいずれかに記載の磁性
    膜。
  11. 【請求項11】 成膜後に350℃以下の熱処理を行っ
    て得た請求項8〜10のいずれかに記載の磁性膜。
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