JP3409783B2 - ハイブリッド車両およびその制御方法 - Google Patents

ハイブリッド車両およびその制御方法

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JP3409783B2 JP2000305885A JP2000305885A JP3409783B2 JP 3409783 B2 JP3409783 B2 JP 3409783B2 JP 2000305885 A JP2000305885 A JP 2000305885A JP 2000305885 A JP2000305885 A JP 2000305885A JP 3409783 B2 JP3409783 B2 JP 3409783B2
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    • Y02T10/62Hybrid vehicles

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力源としてエン
ジンと電動機とを備えるハイブリッド車両に関し、詳し
くは、前記電動機の結合先を前記エンジンの出力軸と駆
動軸とに切り替え可能な切替機構を有するハイブリッド
車両に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンと電動機とを動力源とするハイ
ブリッド車両の一種としていわゆるパラレルハイブリッ
ド車両がある。パラレルハイブリッド車両は、エンジン
に動力調整装置が結合されており、エンジンから出力さ
れた動力は、その一部が動力調整装置により駆動軸に伝
達され、残余が電力として回生される。この電力はバッ
テリに蓄電されたり、エンジン以外の動力源としての電
動機を駆動するのに用いられる。パラレルハイブリッド
車両は、上述の動力の伝達過程において、動力調整装置
および電動機を制御することによって、エンジンから出
力された動力を任意の回転数およびトルクで駆動軸に出
力することができる。駆動軸の回転数およびトルクに関
わらず、運転効率の高い運転ポイントを選択してエンジ
ンを運転することができるため、ハイブリッド車両は省
資源性および排気浄化性に優れている。
【0003】パラレルハイブリッド車両における電動機
の結合先は、駆動軸とエンジンの出力軸の2通りが可能
である。電動機を駆動軸に結合した場合は、エンジン側
からエンジン、動力調整装置、電動機の順に結合された
構成となる。図37は電動機を駆動軸に結合したハイブ
リッド車両の概略構成を示す説明図である。ここでは、
動力調整装置として、相対的に回転可能なインナロータ
IRとアウタロータORとを備える対ロータ電動機CM
を適用した場合を示した。図示する通り、エンジンEG
の出力軸CSに、動力調整装置としての対ロータ電動機
CMが結合され、駆動軸DSに電動機AMが結合され
る。かかる構成では、エンジンの回転数よりも駆動軸の
回転数が低いアンダードライブ走行時に運転効率が高く
なる特性があることが知られている。
【0004】図38はアンダードライブ結合において、
「エンジンの回転数>駆動軸の回転数」の状態での動力
の伝達の様子を示す説明図である。エンジンEGから出
力される動力は、回転を低減するとともにトルクを増大
して駆動軸DSから出力される。エンジンEGから出力
された動力PU1は、対ロータ電動機CMによって回転
数のみが低減された動力PU2として伝達される。この
際、対ロータ電動機CMでは、2つのロータ間に相対的
な滑りが生じるから、両ロータ間の回転数差に基づいて
発電が行われる。この結果、エンジンEGから出力され
た動力の一部は電力EU1として回生される。この電力
によってアシストモータAMを力行し、不足分のトルク
を補償することによって、要求された回転数およびトル
クからなる動力PU3が駆動軸DSに出力される。
【0005】図39はアンダードライブ結合において、
「エンジンの回転数<駆動軸の回転数」の状態での動力
の伝達の様子を示す説明図である。エンジンEGから出
力された動力PU1は、対ロータ電動機CMを力行する
ことによって回転数のみが増速された動力PU4として
伝達される。次に、アシストモータAMで負荷を与え
て、余剰のトルクを低減することによって、要求された
回転数およびトルクからなる動力PU3が駆動軸DSに
出力される。アシストモータAMでは動力PU4の一部
を電力EU2として回生することによって負荷を与え
る。この電力は対ロータ電動機CMの力行に用いられ
る。
【0006】両者を比較すると、エンジンEGの回転数
が駆動軸の回転数よりも高い場合(図38)では、エン
ジンから出力された動力が駆動軸に伝達される経路にお
いて、上流側に位置する対ロータ電動機CMで回生され
た電力が下流側に位置するアシストモータAMに供給さ
れる。エンジンEGの回転数が駆動軸の回転数よりも低
い場合(図39)では、逆に、下流側に位置するアシス
トモータAMで回生された電力が上流側に位置する対ロ
ータ電動機CMに供給される。対ロータ電動機CMに供
給された電力は、再び機械的な動力として下流側に位置
するアシストモータAMに供給される。この結果、図3
9中に示す動力の循環γ1が生じる。動力の循環γ1が
生じると、エンジンEGから出力された動力のうち、有
効に駆動軸DSに伝達される動力が低減するため、ハイ
ブリッド車両の運転効率が低下する。
【0007】逆に、電動機を出力軸に結合した場合は、
エンジン、電動機、動力調整装置の順に結合した構成と
なる。図40は電動機を出力軸に結合したハイブリッド
車両の概略構成を示す説明図である。図示する通り、エ
ンジンEGの出力軸CSに電動機AMが結合され、駆動
軸DSに動力調整装置としての対ロータ電動機CMが結
合される。かかる構成では、逆に、エンジンの回転数よ
りも駆動軸の回転数が高いオーバードライブ走行時に運
転効率が高くなる特性がある。
【0008】図41はオーバードライブ結合において、
「エンジンの回転数>駆動軸の回転数」の状態での動力
の伝達の様子を示す説明図である。図42はオーバード
ライブ結合において、「エンジンの回転数<駆動軸の回
転数」の状態での動力の伝達の様子を示す説明図であ
る。伝達される動力について、回転数の調整は対ロータ
電動機CMでのみ可能であるため、オーバードライブ結
合では、アンダードライブ結合の場合と逆の現象が起き
る。エンジンEGの回転数が駆動軸の回転数よりも低い
場合(図41)では、下流側に位置する対ロータ電動機
CMで回生された電力EO1が上流側に位置するアシス
トモータAMに供給される。逆に、エンジンEGの回転
数が駆動軸の回転数よりも高い場合(図42)では、上
流側に位置するアシストモータAMにより回生されたE
O2が下流側に位置する対ロータ電動機CMに供給され
る。従って、電動機をエンジンの出力軸に結合した状態
では、前者の場合に図41に示す動力の循環γ2が生
じ、ハイブリッド車両の運転効率が低下する。
【0009】このようにハイブリッド車両では、車速お
よび出力トルクで表される車両の運転領域において、ア
シストモータAMの結合先によって効率が高くなる領域
が変動する。ハイブリッド車両の運転効率を広範囲な領
域で向上するために、アシストモータAMの結合先をエ
ンジン側と駆動軸側で切り替える構成も提案されてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アシス
トモータAMの結合先の切り替えを実現するためには以
下に示す種々の課題が存在した。切り替え機構の具体例
に基づいて説明する。図43はアシストモータAMの結
合先を切り替え可能なハイブリッド車両の構成を示す説
明図である。アシストモータAMは3組のギヤSG1,
SG2,SG3からなるシンクロナイズドギヤにより結
合先を切り替えることができる。つまり、アシストモー
タAMのロータは図中の矢印方向にスライド可能なギヤ
SG3に結合されている。ギヤSG1,SG2にはそれ
ぞれクラッチモータCM、エンジンEGの回転軸が結合
されている。ギヤSG3を図示する通りスライドするこ
とにより、アシストモータAMの結合先を切り替えるこ
とができる。
【0011】シンクロナイズドギヤは、軸方向にギヤS
G3が移動可能なスペースを設ける必要があるため、切
替機構が大型化するという課題があった。特に、車両に
搭載する場合には、動力系統の搭載スペースは限られて
いるため、装置の大型化は看過し得ない大きな課題であ
った。また、シンクロナイズドギヤでは、切り替え時に
はギヤSG3がギヤSG2、SG1間の比較的長いスト
ロークで移動するため、切替に時間を要するという課題
もあった。さらに、切替途中でギヤSG3がギヤSG
2、SG1のいずれとも係合しないニュートラル状態を
経るため、駆動軸の動力が一瞬低下するトルク抜けが生
じていた。
【0012】ここではシンクロナイズドギヤを用いた構
成を例にとって課題を説明したが、アシストモータとエ
ンジンおよびクラッチモータとの結合・切り離しを行う
2つのクラッチを並列した場合も装置の大型化という課
題を招く。また、2つのクラッチを順次切り替えること
により、切り替えに時間を要するという課題もあった。
本発明はこれらの課題を解決するためになされ、電動機
の結合先の切り替えを小型の切替機構で実現するととも
に、短時間で切り替えを実現可能なハイブリッド車両を
提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は出
力軸を有するエンジンと、動力を出力するための駆動軸
と、前記出力軸及び駆動軸に結合され電力のやりとりに
よって前記エンジンから出力された動力を増減して前記
駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、回転軸を有する電
動機と、該電動機の回転軸を前記出力軸と前記駆動軸と
に切り替えて結合する切替機構とを備えるハイブリッド
車両において、切替機構として、前記電動機の回転軸と
前記出力軸との結合および切り離しを行う第1クラッチ
と、該回転軸と前記駆動軸との結合および切り離しを行
う第2クラッチとを、該回転軸の内外にそれぞれ一つず
つ備える2段クラッチを適用した。
【0014】2段クラッチを適用することにより、上記
回転軸、出力軸、駆動軸の3つを無駄なく配置すること
ができ、装置全体を小型化することができる。もちろ
ん、2段クラッチは径方向に2つのクラッチを配列した
ものであるため、単段クラッチに比べて径方向のサイズ
は大きくなる。しかしながら、ハイブリッド車両の動力
系統では、電動機、動力調整装置、エンジンなど径方向
に比較的大きなサイズの要素を用いるため、切替機構の
径方向が大型化しても装置全体の大型化にはつながらな
い。これに対し、2段クラッチの適用による軸方向サイ
ズの短縮は装置の小型化に大きく寄与する。
【0015】また、2段クラッチを適用することによ
り、電動機の結合先を速やかに切り替えることが可能と
なる。図43で示したシンクロナイズドギヤと異なり、
ギヤの移動を伴わずに切り替えることが可能だからであ
る。また、ニュートラル状態を経ることなく切り替える
ことも可能であるため、トルク抜けも抑制することがで
きる。
【0016】2段クラッチは種々の構成を適用可能であ
るが、特に、電磁力の作用によって結合および切り離し
を行う2段クラッチを適用することが望ましい。2段ク
ラッチであれば、電磁力を制御することによって比較的
容易かつ高精度、高応答性で動作を制御することができ
る。
【0017】2段クラッチは例えば、ローラを係合子と
して使用する電磁式ローラクラッチを用いることができ
る。ローラクラッチは小型でかつ比較的大きな動力の伝
達も可能であるため、本発明の切替機構に適している。
もちろん、ローラクラッチではなく、電磁力で2つのク
ラッチ板が吸着・離反する構成としてもよい。
【0018】本発明の切替機構を有するハイブリッド車
両においては、電動機の結合先を手動で切り替えるもの
としても構わないが、さらに、該車両の運転状態および
電動機の結合状態に基づいて、前記電動機の結合先を切
り替えるべきか否かを判定する切替判定手段と、前記切
り替えを行うべきと判定された場合に、前記切替機構を
制御して、前記電動機の結合先を切り替える切替制御手
段とを備えるものとすることが望ましい。こうすれば、
運転状態に応じて電動機を適切に切り替えることができ
る。例えば、図37〜42で説明した動力の循環が生じ
る運転状態、結合状態にある場合には、動力の循環を回
避可能な結合状態に切り替えるものとすれば、ハイブリ
ッド車両の運転効率の向上等を図ることができる。
【0019】切り替えの判断は種々の態様で実現でき、
例えば、前記切替判定手段は、前記電動機が前記出力軸
に結合されている状態において、前記駆動軸から出力す
べき要求トルクの増加率が所定以上の場合に前記切り替
えを行うべきと判定する手段とすることができる。
【0020】これは、先に説明した図40の構成で走行
中に要求トルクが急激に増加した場合には、図37の構
成に切り替える態様に相当する。既に説明した通り、図
40の構成では、エンジンの回転数が駆動軸の回転数よ
りも低い場合に効率が高い。図37の構成は、その逆の
場合に効率が高い。要求トルクが急増した場合は、通
常、運転者は急激な加速を意図しているから、駆動軸の
回転数が高くなり、図37の構成の方が運転効率が高く
なることが予想される。上記構成では、かかる観点から
要求トルクの急増とともに図37の構成を実現するよう
切り替えを行うのである。
【0021】上記切り替え判断は、運転効率の面だけで
はなく、速やかな加速を実現できるという利点もある。
加速時にはエンジンの出力に加えて電動機もトルクを出
力することが望ましい。エンジン側に電動機が出力され
た場合、下流側に位置する動力調整装置を経て全トルク
が出力されるため、駆動軸から出力可能なトルクの上限
値は動力調整装置のトルク伝達能力で制限される可能性
がある。これに対し、電動機を駆動軸側に結合すれば、
かかる弊害なく大きなトルクを駆動軸から出力すること
ができ、十分な加速度を確保することが可能となる。
【0022】切り替えを制御する場合においては、前記
切替制御手段は、前記第1クラッチおよび第2クラッチ
のうち非係合側のクラッチに、該クラッチに結合された
2軸の回転状態の差違に応じて許容される係合力で係合
させる同期電圧を印加して、両者の回転状態の偏差を低
減させる非係合クラッチ制御手段と、該非係合クラッチ
制御手段の実行によって前記2軸の回転状態が該非係合
側のクラッチに関する所定の係合許容条件を満足すると
判断された場合に第1クラッチおよび第2クラッチを切
り替える手段とを備えるものとすることが望ましい。
【0023】非係合側のクラッチを係合させるために
は、そのクラッチに結合された2軸の回転数をほぼ一致
させる必要がある。この場合、2軸に結合された動力調
整装置等の要素を制御して両者の回転数を一致させるこ
とも可能である。上記制御では、2軸の回転状態が異な
っていても、クラッチの許容範囲で両者を係合させるこ
とにより、徐々に2軸の回転状態、即ち回転数、トルク
の少なくとも一方を同期させる。こうすることにより、
2軸の回転の同期を速やかにとることができ、切り替え
に要する時間を短縮することができる。もちろん、上記
制御は、単独で用いることもできるし、動力調整装置等
の要素の制御とともに用いることもできる。
【0024】クラッチの許容範囲で2軸を係合させる態
様としては、例えば、前記2軸の回転数差が小さくなる
につれて非係合側のクラッチを強く係合させる態様、前
記非係合側クラッチの係合力を段階的に変化させる態
様、前記非係合側のクラッチの係合力を強弱に変動させ
て係合させる態様などを採ることができる。もちろんこ
れらに限定されるものではない。
【0025】第1、第2の態様は、いわゆる半クラッチ
状態に相当する。つまり、2軸の回転数差が大きい場合
には小さい係合力で滑りが生じるようにクラッチを係合
させ、両者間で作用する摩擦力により回転数を一致させ
るのである。回転数差が小さくなるにつれて徐々に係合
力を強めることにより、回転数を迅速に一致させること
ができる。第2の態様の場合、係合許容条件を満足する
までに、係合力を数段階に変化させてもよいし、上記滑
りを生じる係合力を維持するものとしてもよい。係合力
を段階的に変化させる第2の態様では、クラッチの制御
が容易になる利点があり、電磁力によって作動するクラ
ッチの場合は、回路構成が簡略化できるなどの利点もあ
る。
【0026】後者の態様には、係合時にクラッチに生じ
る衝撃トルクに応じて係合力を変動させるものが含まれ
る。つまり、2軸の回転状態が大きく異なるときにクラ
ッチを係合させれば慣性に起因する大きな衝撃トルクが
作用する。ここで係合力を弱めればクラッチに作用する
トルクが低減し、寿命の極端な低下などの不都合を回避
することができる。一方、先に作用した衝撃トルクによ
って2軸の回転状態の差違は当初よりも小さくなる。こ
のようにクラッチの係合力を強弱に変動させることによ
っても切替時間の短縮を図ることができる。
【0027】切替時間を短縮するための制御のより具体
的な態様として、前記切替機構が、電磁力の作用によっ
て作動するローラクラッチを備え、解放状態、ローラを
介してトルクを伝達可能な完全係合状態、ローラを介さ
ずに完全係合状態で伝達可能なトルクよりも低い範囲で
トルクを伝達可能な弱係合状態の少なくとも3種類の係
合状態を実現可能な機構である場合には、前記非係合ク
ラッチ制御手段は、前記弱係合状態で前記非係合側のク
ラッチを係合させる手段であるものとすることができ
る。弱係合状態はローラが解放状態から完全係合状態に
移行する過渡状態に相当する。
【0028】解放状態、完全係合状態、弱係合状態につ
いて説明する。ローラクラッチの代表的な構成例とし
て、第1回転軸と、該第1回転軸と同心円状に配置され
た中空の第2回転軸と、前記第1回転軸の外周面と、前
記第2回転軸の内周面との間に形成される擬楔状空間内
に移動可能に備えられたローラと、電磁力の作用によっ
て吸着し、前記第1回転軸と第2回転軸との間で摩擦力
によるトルク伝達を可能とする摩擦係合器と、該電磁力
を生じさせる電磁石と、該摩擦係合器に連結され、前記
ローラを保持する保持器と、前記電磁石に印加される電
圧を制御することによって、クラッチを係合させる電圧
制御手段とを備える構成が挙げられる。電磁力によって
生じた摩擦力が保持器を介してローラ位置を移動させク
ラッチを係合させる機構である。ここで、摩擦係合器は
例えば、第1回転軸または第2回転軸の一方に固定され
た固定部材と、他方の回転軸に対し軸方向に移動可能か
つ所定範囲で相対的に回動可能に取り付けられたアマチ
ュアとで構成することができる。
【0029】かかる機構を例に採れば、解放状態は、ロ
ーラが楔状空間内の広間隔位置にあるとともに摩擦係合
器が非接触となっている状態に相当する。完全係合状態
は、ローラが楔状空間内の狭間隔位置にあり、ローラを
介したトルク伝達が行われる状態に相当する。弱係合状
態は、ローラが楔状空間内の広間隔位置にあるとともに
摩擦係合器が接触している状態に相当する。トルクは摩
擦力によって伝達される。弱係合状態でクラッチを係合
させることにより、2軸の回転数を比較的速やかに同期
させることができる。
【0030】その他、速やかに同期させる制御方法とし
て、前記非係合クラッチ制御手段は、該ローラクラッチ
を断続的に係合させる手段であるものとしてもよい。こ
の場合、クラッチを作動させる電磁力は、オン・オフの
2値的な制御で済むため、制御処理が容易になる利点が
ある。
【0031】このように切替時間を短縮するための制御
を行うか否かに関わらず、切り替えは、第1クラッチお
よび第2クラッチの双方が係合した状態を経て前記切り
替えを実行することが望ましい。こうすれば、切り替え
時のトルク抜けを回避することができ、車両の滑らかな
運転を実現することができる。
【0032】2軸の回転数を同期期間を短縮する制御に
併せて、クラッチの切替時間を短縮するため、本発明で
は、次に示す初動電圧の制御を行うことも好ましい。こ
の制御は、第1クラッチおよび第2クラッチは、ローラ
クラッチである場合に有効性が高い。初動電圧の制御と
は、非係合クラッチ制御手段に先立って、同期電圧より
も高い電圧を非係合側のクラッチに印加する制御を言
う。
【0033】ローラクラッチは、ローラ位置を移動させ
る移動機構、例えば先に示した摩擦係合器を電磁力で吸
着することで係合動作を行う。速やかに係合するために
は、これらの移動機構を速やかに吸着することが必要と
なる。同期期間に印加される電圧は、係合ショックの少
ない弱係合状態を実現する比較的低い電圧であるため、
移動機構に作用する電磁力も比較的弱い。一方、非係合
クラッチの係合初期から高い電圧値を印加すれば、移動
機構が強く吸着され、係合ショックを生じる可能性があ
る。上記初動電圧を印加すれば、係合初期には高い電圧
によって摩擦係合器を速やかに吸着できるとともに、同
期電圧に電圧値を低減することによって係合ショックを
低減することができる。
【0034】初動電圧には、コイルへの通電特性に起因
する効果もある。一般にコイルに電圧を印加することに
より生じる電磁力は、コイルのインダクタンスに起因し
て、電圧印加直後の立ち上がりが比較的遅い特性があ
る。電磁力の立ち上がり遅れは移動機構の動作遅れにつ
ながる。最初に同期電圧以上の電圧を初動電圧として印
加すれば、速やかに強い電磁力を作用させることが可能
となり、初動の応答性を向上することができる。
【0035】初動時の電圧は、予め設定された一定期間
印加するものとしてもよいが、前記電動機の回転軸の回
転数変化またはトルク変化に基づいて印加するものとし
てもよい。本発明のハイブリッド車両では、2軸間でト
ルクの伝達が行われるようになったか否かは、電動機の
回転数変化またはトルク変化によって判断することがで
きる。この判断に基づいて電圧値を同期電圧に切り替え
ることにより、初動時の電圧の印加期間の過不足をなく
すことができる。
【0036】初動電圧は、予め設定されたシーケンスで
印加することができる。最も単純なシーケンスとして、
一定の電圧を印加する場合が挙げられる。初動電圧から
同期電圧へは、電圧値が不連続に変化するものとしても
よいし、連続的に変化させる態様としても良い。後者の
態様では、係合時のショックを低減できる利点がある。
【0037】初動電圧の値は、移動機構を目標時間内で
吸着可能な範囲で任意に設定可能である。通常、同期電
圧よりも高くなる。初動電圧は、完全係合を実現する電
圧よりも低いことが望ましい。こうすれば、初動電圧か
ら同期電圧への移行が、移動機構の吸着よりも遅れた場
合に、ローラが急激に係合することを回避でき、激しい
係合ショックの発生を回避することができる。
【0038】本発明において、同期電圧は、電動機の回
転軸の回転数変化またはトルクに基づいてフィードバッ
ク制御してもよい。こうすることにより、同期中の回転
数変化またはトルクの目標値を安定的に実現することが
でき、係合動作を安定させることができる。クラッチの
係合機構は、例えば経年変化により、同期電圧と係合力
との関係が変動することがある。フィードバック制御
は、かかる変動に対しても安定した同期を実現すること
ができる点で有効性が高い。
【0039】フィードバック制御は、同期時にのみ適用
するものとしてもよいが、2軸が完全に非係合状態にあ
る場合も含めて、即ち、初動時から適用するものとして
もよい。非係合時には回転数変化は生じないため、フィ
ードバック制御では、高い電圧値が設定される。従っ
て、同期電圧よりも高い初動電圧を印加することができ
る。但し、設定される初動電圧が非常に高い値となる可
能性があるため、係合力が所定値を超えない範囲に上限
値のガードを施すことが望ましい。
【0040】同期制御を行う際には、切り替え判断が行
われた時点での該車両の車速、アクセルペダルポジショ
ン、前記非係合クラッチに結合された2軸の回転数差、
前記電動機から継続的に出力可能な動力の少なくとも一
つを切替制御関連パラメータとして検出し、その検出結
果に応じて非係合クラッチ制御手段の実行タイミングを
調整することが望ましい。実行タイミングとは、初動電
圧または同期電圧の印加開始タイミングに相当する。
【0041】クラッチの切り替え過程では、第1クラッ
チ、第2クラッチに結合された3軸の回転数が動的に変
化する。クラッチの切り替え制御処理は、3軸の回転数
変化を踏まえて適切なタイミングで行う必要がある。特
に同期電圧は、非係合クラッチに結合された2軸の回転
数を同期するために印加されるものであるため、残余の
1軸の回転数変化に追随した同期を実現するタイミング
で印加されることが望ましい。例えば、残余の回転軸の
回転数変化が比較的急激な場合には、これに追随した切
り替えを実現するために、早期に同期制御を開始するこ
とが望ましい。残余の回転軸の回転数変化が比較的緩い
場合には、長期間の同期制御により非係合クラッチが摩
耗するのを回避するため、同期制御の開始を遅らせるこ
とが望ましい。かかる観点から、適切な同期制御の開始
タイミングは、3軸の回転状態に影響を受け、本発明の
ハイブリッド車両の構成では、先に例示した切替制御関
連パラメータによって影響を受ける。従って、切替制御
関連パラメータの少なくとも一つに応じて実行タイミン
グを調整することにより、過不足ない同期期間を確保す
ることができる。
【0042】実行タイミングは、上述の切替制御関連パ
ラメータのいずれか一つに応じて調整してもよいし、適
宜組み合わせて調整してもよい。実行タイミングは、非
係合クラッチに結合された2軸の回転数差、クラッチの
切替判断が行われてからの経過時間などをパラメータと
して特定することができ、切替制御関連パラメータに応
じてこれらの値を変更することでタイミングの調整を実
現することができる。実行タイミングを特定するパラメ
ータと切替制御関連パラメータとの関係は、マップ、関
数などの形式で予め設定しておけばよい。
【0043】以上の構成では、2軸を速やかに同期させ
る方法を説明した。本発明では、以下の構成によって、
電動機のトルクを常に伝達したままクラッチの切り替え
を行うこともできる。
【0044】ここで、前記第1クラッチおよび第2クラ
ッチは、前記回転軸と、前記出力軸または駆動軸との間
に形成される擬楔状空間内に移動可能に備えられたロー
ラと、電磁力の作用によって吸着し、前記回転軸と、前
記出力軸または駆動軸との間で摩擦力によるトルク伝達
を可能とする摩擦係合器と、該摩擦係合器に連結され、
前記ローラを保持する保持器を備え、該保持器によって
前記ローラを前記擬楔状空間内で移動させクラッチの係
合および解放を行うローラクラッチであるものとする。
【0045】このとき、第1クラッチおよび第2クラッ
チのうち既係合クラッチの解放と、非係合クラッチの係
合とを制御する切替制御手段を、前記既係合クラッチに
対し、ローラを係合位置に保持する電磁力をオフにする
解放制御手段と、少なくとも非係合クラッチの係合が完
了するまでの期間、前記既係合クラッチのローラを係合
位置に保持可能なトルクを、前記出力軸または駆動軸に
付加するよう前記電動機を制御する電動機制御手段と、
前記非係合クラッチを係合させる非係合クラッチ制御手
段とを備える構成とすることができる。
【0046】既係合クラッチの係合状態を、電磁力では
なく、電動機のトルク付与によって維持しつつ、非係合
クラッチを係合させる方法である。電動機とのトルク伝
達が非係合クラッチ側を通じて行われるようになった時
点で、電磁力がオフとされた既係合クラッチは自然と解
放される。切り替え期間中は、電動機は既係合クラッチ
または非係合クラッチのいずれかと常にトルク伝達がさ
れている。従って、ハイブリッド車両の走行中にクラッ
チの切り替えに伴うトルク抜けの発生を抑制することが
できる。
【0047】かかる制御においても、非係合クラッチの
係合制御においては、先に例示した同期電圧の印加、初
動電圧の印加など種々の制御を適用することができる。
また、係合制御の実行タイミング、即ち同期電圧または
初動電圧の印加を開始するタイミングは、先に例示した
切替制御関連パラメータに応じて調整することが好まし
い。
【0048】本発明のハイブリッド車両において、前記
動力調整装置は、種々の構成を適用可能である。例え
ば、前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1
のロータと、前記駆動軸に結合された第2のロータとを
有する対ロータ電動機であるものとすることができる。
【0049】かかる対ロータ電動機によれば、第1のロ
ータと第2のロータとの電磁的な結合により一方のロー
タから他方のロータに動力を伝達することが可能であ
る。また、両者間の相対的な滑りによって動力の一部を
電力として回生することも可能である。上述の対ロータ
電動機は、これらの2つの作用によって動力調整装置と
して機能することができる。
【0050】また、前記動力調整装置は、ロータ軸を有
する発電機と、3つの回転軸を有し、該回転軸が前記出
力軸、駆動軸、およびロータ軸にそれぞれ結合されたプ
ラネタリギヤとを備える装置であるものとすることもで
きる。
【0051】かかる構成によれば、プラネタリギヤの一
般的な動作に基づいて、出力軸の回転による動力を駆動
軸とロータ軸に分配して伝達することができる。従っ
て、出力軸に入力された動力の一部を駆動軸に伝達する
とともに、ロータ軸に分配された動力を発電機によって
電力として回生することができる。上述の装置は、これ
らの2つの作用によって動力調整装置として機能するこ
とができる。
【0052】本発明は、ハイブリッド車両としての構成
の他、該車両の制御方法、ローラクラッチおよびその制
御方法など種々の態様で構成可能である。ローラクラッ
チは、2軸の係合および切り離しを行う機構として構成
してもよい。また、内軸、中間軸、外軸の3軸に対し、
中間軸と内軸との間に設けられた内側クラッチ、中間軸
と外軸との間に設けられた外側クラッチを備える2段ク
ラッチとして構成してもよい。
【0053】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例に基
づいて以下の順序で説明する。 A.装置の構成: B.2段クラッチの構成: C.動力系統の結合状態: D.一般的動作: E.運転制御処理: F.結合状態切り替え制御: G.非係合クラッチの係合態様: G1.第1の変形態様: G2.第2の変形態様: G3.第3の変形態様: G4.第4の変形態様: G5.第5の変形態様: H.効果: I.第2実施例: J.第3実施例: H.変形例:
【0054】A.装置の構成:はじめに、実施例の構成
について図1を用いて説明する。図1は本実施例のハイ
ブリッド車両の概略構成を示す説明図である。このハイ
ブリッド車両の動力系統はエンジン150、クラッチモ
ータ130、アシストモータ140を主として構成され
ている。後述する通り、アシストモータ140はその結
合先をエンジン150側とクラッチモータ130側に切
り替えることができる。以下、各要素の構成について順
に説明する。
【0055】エンジン150は通常のガソリンエンジン
である。エンジン150の運転はEFIECU170に
より制御されている。EFIECU170は内部にCP
U、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコ
ンピュータであり、ROMに記録されたプログラムに従
いCPUがエンジン150の燃料噴射など制御を行う。
これらの制御を可能とするために、EFIECU170
にはエンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接
続されている。その一つとしてクランクシャフト156
の回転数を検出する回転数センサ152がある。その他
のセンサおよびスイッチなどの図示は省略した。なお、
EFIECU170は、制御ユニット190とも電気的
に接続されており、制御ユニット190との間で種々の
情報を、通信によってやりとりしている。EFIECU
170は、制御ユニット190からエンジン150の運
転状態に関する種々の指令値を受けてエンジン150を
制御している。
【0056】エンジン150のクランクシャフト156
はダンパ157を介してクラッチモータ130のインナ
ロータ132に結合されている。クラッチモータ130
は、インナロータ軸133に結合されたインナロータ1
32と駆動軸135に結合されたアウタロータ134を
備え、両者が相対的に回転可能な対ロータ電動機であ
る。アウタロータ134は、駆動軸135、ディファレ
ンシャルギヤ114を介して、駆動輪116R,116
Lを備えた車軸116に結合されている。クラッチモー
タ130は電力の供給を受けてインナロータ132、ア
ウタロータ134の両者が相対的に回転駆動する電動機
として動作し、両者が外力によって回転させられる場合
には発電機としても動作する。なお、クラッチモータ1
30は、インナロータ132とアウタロータ134との
間の磁束密度が円周方向に正弦分布する正弦波着磁モー
タを適用することも可能であるが、本実施例では、比較
的大きなトルクを出力可能な非正弦波着磁モータを採用
した。
【0057】クラッチモータ130はインナロータ13
2とアウタロータ134の双方が回転可能であるため、
インナロータ軸133および駆動軸135の一方から入
力された動力を他方に伝達することができる。クラッチ
モータ130を力行運転すれば他方の軸には動力を増大
して伝達することができるし、回生運転すれば動力の一
部を電力の形で取り出しつつ残余の動力を伝達すること
ができる。力行運転も回生運転も行わなければ、動力が
伝達されない状態となる。この状態は機械的なクラッチ
を解放にした状態に相当する。
【0058】アウタロータ134はスリップリング13
8および駆動回路191を介してバッテリ194に電気
的に接続されている。駆動回路191は内部にスイッチ
ング素子としてのトランジスタを複数備えたトランジス
タインバータであり、制御ユニット190と電気的に接
続されている。制御ユニット190が駆動回路191の
トランジスタのオン・オフの時間をPWM制御するとバ
ッテリ194を電源とする三相交流がスリップリング1
38を介してアウタロータ134に流れ、クラッチモー
タ130は回転する。
【0059】アシストモータ140も、クラッチモータ
130と同様に同期電動発電機として構成され、外周面
に複数個の永久磁石を有するロータ142と、回転磁界
を形成する三相コイルが巻回されたステータ144とを
備える。アシストモータ140は駆動回路192を介し
てバッテリ194に接続されている。駆動回路192も
トランジスタインバータで構成されている。制御ユニッ
ト190が駆動回路192のトランジスタをスイッチン
グすることによりステータ144に回転磁界を生じアシ
ストモータ140が回転する。本実施例では、アシスト
モータ140として非正弦波着磁モータを適用した。
【0060】アシストモータ140、クラッチモータ1
30、エンジン150はそれぞれ2段クラッチ200に
結合されている。動力系統について、エンジン側を上
流、車軸116側を下流と呼ぶものとすると、本実施例
では、2段クラッチ200の作用により、アシストモー
タ140の結合先をクラッチモータ130の上流側と下
流側とに切り替えることができる。
【0061】B.2段クラッチの構成:図2は2段クラ
ッチ200の概略構成を示す説明図である。回転軸を含
む断面の上半分を示した。2段クラッチ200は、3つ
の回転ユニットと1つの固定ユニットから構成される。
回転ユニットは回転軸側から内側回転部300、中間回
転部400、外側回転部500の順に配置され、それぞ
れ軸受701〜705により相対的に回転可能に組み付
けられている。軸受701〜704は針状棒軸受を適用
し、軸受705は玉軸受けを適用した。本実施例では、
内側回転部300にエンジン150、中間回転部400
にアシストモータ140、外側回転部500にクラッチ
モータ130のアウタロータ134がそれぞれ結合され
ている。固定ユニットおよび各回転ユニットの構成につ
いて説明する。
【0062】固定ユニット600は磁性体で形成され、
電磁石を形成するコイル601,603を収納するコア
602,604を有している。固定ユニット600はク
ラッチの収納ケース等にボルトで固定されている。コイ
ル601,603には、図1に示す通り、バッテリ19
4から電力が供給される。電力の供給はそれぞれスイッ
チ611,613のオン・オフによって制御される。
【0063】図3は内側回転部300の構成を示す説明
図である。実線で示した部分が内側回転部300に相当
する。内側回転部300の動力伝達軸は内軸301であ
る。内軸301の外周にはカム302が固定されてい
る。図4は内側回転部300のA−A断面を示す断面図
である。図示する通り、カム302は正十角形の断面形
状をなしている。中間回転部400の動力伝達軸となる
中間軸401の内周は円形断面であるため、この内周面
とカム302の外周面との間隔は正十角形の頂点近傍で
狭く、各辺の中央近傍で広い擬楔状空間を形成してい
る。なお、カム302は内軸301と一体形成しても構
わない。
【0064】カム302の外周には保持器305および
ローラ304が周方向に回転可能に組み付けられてい
る。図4に示す通り、保持器305は周方向に10カ所
のポケットがあり、10個のローラ304が保持器30
5の各ポケットに入っている。ローラ304の径は中間
軸401とカム302との間隔の最大値よりも小さく、
最小値よりも大きい値である。つまり、ローラ304が
擬楔状空間の中央付近にある場合には、カム302、ロ
ーラ304、中間軸401の間に隙間が生じ、内軸30
1と中間軸401の間で動力の伝達はできない。
【0065】ローラr1が図4中に矢印で示す通り、周
方向に移動し、擬楔状空間の両端WRまたはWL近傍に
来ると、カム302、ローラ304、中間軸401が一
体的に係合し、内軸301と中間軸401の間で動力の
伝達が可能となる。内軸301が右側に回転している場
合にはローラ304がWL部で係合することにより、中
間軸401に動力を伝達することができる。左側に回転
している場合にはローラ304がWR部で係合すること
により、中間軸401に動力を伝達することができる。
【0066】このように本実施例のクラッチは、ローラ
304の位置によって内軸301と中間軸401との結
合・切り離しを行うことができる。続いて、ローラ30
4の位置を制御するための機構について説明する。図3
に示す通り、保持器305およびカム302には一端に
スイッチバネ303が取り付けられている。図5は内側
回転部300のB−B断面を示す断面図である。カム3
02および保持器305はそれぞれ一部に切り欠きが設
けてあり、そこにスイッチバネ303がセットされてい
る。スイッチバネ303は図5中に矢印で示す方向に弾
性力を作用させ、外力が働かない状態では保持器305
を図示する位置、即ちニュートラル状態に保つ。
【0067】図3に示す通り、保持器305にはスイッ
チバネ303と反対側の端の数カ所に円柱状の突起30
6が固定されている。また、この突起306に円盤状の
アマチュア307がはめ込まれている。アマチュア30
7は突起306があるため、保持器305と一体的に回
転する。しかしながら、アマチュア307は突起306
に固定されている訳ではなく、若干の隙間をもってはめ
込まれており、回転軸方向に移動可能になっている。
【0068】コイル603に通電すると、アマチュア3
07が中間軸401の径方向側面410に吸着し、両者
は一体となって回転しようとする。アマチュア307と
径方向側面410との吸着力は十分強いため、スイッチ
バネ303の弾性力に抗じて保持器305も周方向に移
動する。従って、ローラ304の位置が周方向に移動
し、先に図4で説明した通り、内軸301と中間軸40
1とが係合状態となる。このように2段クラッチ200
は、カム302、ローラ304、保持器305および突
起306、アマチュア307、スイッチバネ303、コ
イル603、径方向側面410が内側クラッチユニット
を構成する。アマチュア307および径方向側面410
が内側クラッチユニットの摩擦係合器に相当する。
【0069】なお、カム302は図4に示した形状の
他、種々の断面形状のものを適用することができる。図
6は第1の変形例としてのカム302aの断面形状を示
す説明図である。図4ではカム302の外周を平面にし
て擬楔状空間を形成した。これに対し、変形例では、カ
ム302aの外周を部分的に内側に凸の弧面302bと
する。ここでは、カム302aの外径とほぼ同等の曲率
半径c1の弧とした。かかる断面形状とすると、カム3
02aの外周と中間軸401の内周との間隔が図4に比
べて周方向に急激に狭くなるため、ローラ304が係合
しやすい利点がある。つまり、ニュートラル位置にある
ローラ304は周方向にわずかに移動するだけで領域W
R’,WL’で係合するようになる。このため、変形例
の断面形状を適用すれば、回転方向が変動した際のバッ
クラッシュを低減することができる。カムはこれらに限
らず、中間軸401の内周面との間で擬楔状空間を形成
可能な種々の断面形状を適用することができる。
【0070】クラッチユニットは、ローラの保持態様を
変えるものとしてもよい。図7は変形例としてのカムお
よびローラの断面を示す説明図である。ここでは、カム
302cの一部を示した。図4ではそれぞれの擬楔状空
間に一つのローラ304を挿入し、左右双方向の回転と
もに単一のローラを係合させた。これに対し、図7の変
形例では、回転方向に応じて2つのローラを使い分ける
点で相違する。図示する通り、変形例では、ニュートラ
ル状態において、ローラ304a、304bがそれぞれ
カム302cの各辺の中央付近よりも互いに近寄らせて
保持されている。中間軸401が図のrd1方向に回転
している場合には、ローラ304aが破線部分に移動し
て係合する。逆にrd2方向に回転している場合には、
ローラ304bが破線部分に移動して係合する。それぞ
れの回転方向について1対のローラを分担して係合させ
ることにより、ローラを速やかに係合させることがで
き、バックラッシュを低減することができる。カムおよ
びローラは非係合状態と係合状態を実現可能な態様であ
れば、この他にも種々の保持態様を適用することができ
る。各擬楔状空間に複数のローラを備えるものとしても
よい。
【0071】次に外側回転部500の構成について説明
する。図8は外側回転部500の構成を示す説明図であ
る。実線で示した部分が外側回転部500に相当する。
外側回転部500の動力伝達軸は外軸501である。外
軸501にはコイル601に対向する部位にロータ50
2がはめ込まれている。ロータ502は磁性体でリング
形状に形成されており、外軸501と一体的に回転する
ように固定されている。ロータ502の回転を妨げない
よう、ロータ502とコイル601との間にはわずかの
隙間が設けてある。ロータ502は、外側電磁クラッチ
ユニットの摩擦係合器となる。なお、外軸501はその
動力をチェーンベルト504で抽出できるよう、スプロ
ケット503としてもよい。
【0072】次に、中間回転部400の構成について説
明する。図9は中間回転部400の構成を示す説明図で
ある。実線で示した部分が中間回転部400に相当す
る。中間回転部400の動力伝達軸は中間軸401であ
る。中間軸401は鋼で形成されており、図示する通
り、円盤状の径方向側面410を挟んで太径部と細径部
とを有している。太径部の外周と、外軸501との間に
は外側電磁クラッチユニットが備えられている。外側電
磁クラッチユニットの構成は、内側電磁クラッチユニッ
トとほぼ同じである。即ち、中間軸401の太径部の外
周にカム402が固定されている。カム402の外周に
はローラ404と保持器405がスイッチバネ403と
共に組み付けられている。保持器405には突起406
が設けてあり、アマチュア407が挿入されている。こ
れらの各要素、およびロータ502、コイル601が外
側電磁クラッチユニットを構成する。その動作は、内側
電磁クラッチユニットと同様であるため、ここでは詳細
な説明を省略する。既に説明した通り、中間軸401は
外周面に設けられたカム402等が外側電磁クラッチユ
ニットを構成すると同時に、内周面および径方向側面4
10が内側電磁クラッチユニットを構成する。
【0073】2段クラッチ200の切り替えを行う制御
機構について説明する。図1に示す通り、2段クラッチ
200のコイル601,603は、それぞれスイッチ6
11、613を介してバッテリ194に結合されてい
る。図1では模式的に示したが、スイッチ611,61
3はスイッチング素子としてのトランジスタである。ス
イッチ611,613のオン・オフは制御ユニット19
0が制御している。スイッチング素子がオンとなってい
るデューティを制御することにより、コイル601、6
03の電圧を制御することができるから、アマチュア3
07、407の吸着状態を徐々に強めるなど時間的に変
化させて2軸を係合させることも可能である。なお、ス
イッチ611,613はサイリスタなど種々のスイッチ
ング素子を適用可能であり、またリレーを用いるものと
してもよい。
【0074】C.動力系統の結合状態 以上で説明した本実施例の2段クラッチの動作、および
該動作によって実現される動力系統の結合状態について
説明する。図10は2段クラッチのオン・オフと動力系
統の構成との対応関係を示す説明図である。2段クラッ
チ200の切り替えにより、ハイブリッド車両の構成を
図10に示す結合状態A〜Dの4通りに変更することが
できる。
【0075】結合状態Aは、内側クラッチおよび外側ク
ラッチの双方がオンの状態、即ちコイル601、603
の双方に通電した状態である。このとき、内側クラッ
チ、外側クラッチの双方が係合状態となるため、内軸3
01、中間軸401、外軸501は全て一体的に回転す
る。つまり、結合状態Aに示す通り、クラッチモータ1
30は機能し得ず、エンジン150およびアシストモー
タ140を駆動軸に直結した結合状態に等価な構成とな
る。
【0076】結合状態Bは、内側クラッチがオフ、外側
クラッチがオンの状態、即ちコイル601にのみ通電し
た状態である。このとき外側クラッチのみが係合状態と
なるため、アシストモータ140はクラッチモータ13
0のアウタロータ134側に結合した状態に等価な構成
となる。これは先に図37で示した構成と同じである。
以下、この結合状態をアンダードライブ結合と呼ぶ。
【0077】結合状態Cは、内側クラッチがオン、外側
クラッチがオフの状態、即ちコイル603にのみ通電し
た状態である。このとき内側クラッチのみが係合状態と
なるため、アシストモータ140はエンジン150側に
結合した状態に等価な構成となる。これは先に図40で
示した構成と同じである。以下、この結合状態をオーバ
ードライブ結合と呼ぶ。
【0078】結合状態Dは、内側クラッチ、外側クラッ
チが共にオフの状態、即ちコイル601,603のいず
れにも通電しない状態である。このとき、内側クラッ
チ、外側クラッチの双方が解放状態となるため、アシス
トモータ140はエンジン150、クラッチモータ13
0の双方から切り離された状態となる。従って、この場
合は、図示する通り、エンジン150はクラッチモータ
130のみを介して駆動軸に結合された構成となる。
【0079】本実施例のハイブリッド車両は、上述の通
り、2段クラッチ200のオン・オフによって4通りの
結合状態をとり得る。但し、上述の通り、ハイブリッド
車両の走行に実質的に有効なのは、結合状態B(アンダ
ードライブ結合)と結合状態C(オーバードライブ結
合)である。従って、本実施例では結合状態A〜Dの4
通りのうち、結合状態B,Cを車両の走行状態に応じて
使い分けている。
【0080】このような結合状態の使い分けを含め、本
実施例のハイブリッド車両の運転状態は制御ユニット1
90により制御されている。制御ユニット190もEF
IECU170と同様、内部にCPU、ROM、RAM
等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、
ROMに記録されたプログラムに従い、CPUが後述す
る種々の制御処理を行うよう構成されている。これらの
制御を可能とするために、制御ユニット190には、各
種のセンサおよびスイッチが電気的に接続されている。
制御ユニット190に接続されているセンサおよびスイ
ッチとしては、アクセルペダルの操作量を検出するため
のアクセルペダルポジションセンサ165、車軸116
の回転数を検出する回転数センサ117、およびアシス
トモータ140の回転数を検出する回転数センサ145
等が挙げられる。制御ユニット190は、EFIECU
170とも電気的に接続されており、EFIECU17
0との間で種々の情報を、通信によってやりとりしてい
る。制御ユニット190からエンジン150の制御に必
要な情報をEFIECU170に出力することにより、
エンジン150を間接的に制御することができる。逆に
エンジン150の回転数などの情報をEFIECU17
0から入力することもできる。
【0081】D.一般的動作 次に、本実施例のハイブリッド車両の一般的動作とし
て、エンジン150から出力された動力を要求された回
転数およびトルクに変換して車軸116に出力する動作
について説明する。以下では、説明の容易のため、ディ
ファレンシャルギヤ114のギヤ比は値1であるものと
して説明する。つまり、車軸116の回転数およびトル
クと駆動軸135の回転数およびトルクは等しいものと
する。
【0082】本実施例のハイブリッド車両では、エンジ
ン150の回転数Neと車軸116の回転数Ndとの大
小関係、およびアシストモータ140の結合状態に応じ
て、上記変換の経路が異なる。以下、それぞれの場合に
ついて個別に説明する。
【0083】最初にアンダードライブ結合(図10の結
合状態B)について説明する。図11はアンダードライ
ブ結合について、「車軸116の回転数Nd<エンジン
150の回転数Ne」の場合におけるトルク変換の様子
を示す説明図である。横軸に回転数N、縦軸にトルクT
を採り、エンジン150の運転ポイントPeと車軸11
6の回転ポイントPdを示した。図11中の曲線Pは動
力、つまり回転数とトルクの積が一定の曲線である。回
転数Ne、トルクTeでエンジン150から出力された
動力Peを、Neよりも低い回転数Nd、Teよりも高
いトルクTdの動力Pdに変換して車軸116から出力
する場合を考える。
【0084】図11に示した変換を行う場合、車軸11
6の回転数Ndはエンジン150の回転数Neよりも小
さいから、クラッチモータ130は相対的に逆転するこ
とになり、クラッチモータ130はエンジン150から
出力された動力の一部を車軸116に伝達しつつ、残り
を電力として回生する状態で運転される。このとき、回
生される電力はクラッチモータ130の動力、即ち領域
GU1の面積に等しい。一方、車軸116のトルクTd
はエンジン150のトルクTeよりも大きい。従って、
アシストモータ140は正のトルク、正の回転数で運転
される。つまり、アシストモータ140は電力の供給を
受け力行される。このとき供給される電力はアシストモ
ータ140が出力する動力、即ち領域AU1の面積に等
しい。
【0085】両モータでの運転効率を100%と仮定す
れば、クラッチモータ130で回生される電力とアシス
トモータ140に供給される電力とは等しくなる。つま
り、クラッチモータ130で領域GU1に相当する分の
エネルギを電力の形で取り出し、領域AU1に相当する
分のエネルギとして供給することによりエンジン150
の運転ポイントPeで表される動力を、ポイントPdの
状態に変換する。実際には運転効率が100%になるこ
とはないため、バッテリ194からの電力の持ち出しを
伴ったり、損失に相当する動力をエンジン150から余
分に出力したりして、上記変換を実現する。説明の容易
のため、以下では、運転効率を100%として本実施例
の動作について説明する。
【0086】図12はアンダードライブ結合について、
「車軸116の回転数Nd>エンジン150の回転数N
e」の場合におけるトルク変換の様子を示す説明図であ
る。図12に示した変換を行う場合、クラッチモータ1
30は電力の供給を受けて力行される。供給される電力
は領域「GU2+GU3」の面積に等しい。一方、車軸
116のトルクTdはエンジン150のトルクTeより
も小さい。従って、アシストモータ140は回生運転さ
れる。このとき回生される電力は領域「AU2+GU
3」の面積に等しい。両モータでの運転効率を100%
と仮定すれば、アシストモータ140で回生される電力
とクラッチモータ130に供給される電力とが等しくな
る。かかる変換では、下流側に位置するアシストモータ
140から上流側に位置するクラッチモータ130に電
力が供給されるため、動力の循環が生じる。図12中の
領域GU3が循環する動力に相当する。
【0087】アンダードライブ結合において、上述の変
換を実現するための、アシストモータ140およびクラ
ッチモータ130の運転ポイントは、それぞれ次式
(1)の通りとなる。 クラッチモータ130の回転数Nc=Nd−Ne; トルクTc=Te; アシストモータ140の回転数Na=Nd; トルクTa=Td−Te; ・・・(1)
【0088】図13はオーバードライブ結合について、
「車軸116の回転数Nd<エンジン150の回転数N
e」の場合におけるトルク変換の様子を示す説明図であ
る。図13に示した変換を行う場合、車軸116のトル
クTdはエンジン150のトルクTeよりも大きい。従
って、アシストモータ140は領域「AO1+AO2」
の面積に等しい電力の供給を受けて力行される。一方、
車軸116の回転数Ndはエンジン150の回転数Ne
よりも小さいため、クラッチモータ130は回生運転と
なる。回生される電力は領域「AO2+GO1」の面積
に等しい。クラッチモータ130で回生された電力は、
アシストモータ140の力行に供給される。回生された
電力と供給される電力とは等しい。かかる変換では、下
流側に位置するクラッチモータ130から上流側に位置
するアシストモータ140に電力が供給されるため、動
力の循環が生じる。図13中の領域AO2が循環する動
力に相当する。
【0089】図14はオーバードライブ結合について、
「車軸116の回転数Nd>エンジン150の回転数N
e」の場合におけるトルク変換の様子を示す説明図であ
る。図14に示した変換を行う場合、車軸116のトル
クTdはエンジン150のトルクTeよりも小さい。従
って、アシストモータ140は回生運転され、領域「A
O3」の面積に等しい電力を回収する。一方、車軸11
6の回転数Ndはエンジン150の回転数Neよりも大
きいため、クラッチモータ130は領域「GO2」の面
積に等しい電力の供給を受けて力行運転する。回生され
た電力と供給される電力とは等しい。かかる変換では、
上流側に位置するアシストモータ140から下流側に位
置するクラッチモータ130に電力が供給されるため、
動力の循環は生じない。
【0090】オーバードライブ結合において、上述の変
換を実現するための、アシストモータ140およびクラ
ッチモータ130の運転ポイントは、次式(2)の通り
となる。 クラッチモータ130の回転数Nc=Nd−Ne; トルクTc=Td; アシストモータ140の回転数Na=Ne; トルクTa=Td−Te; ・・・(2)
【0091】以上で説明した通り、本実施例のハイブリ
ッド車両は、アシストモータ140の結合状態、および
車軸116の回転数Ndとエンジン150の回転数Ne
との大小関係に応じて、エンジン150から出力された
動力を要求された回転数およびトルクからなる動力に変
換して、車軸116から出力することができる(以下、
この運転モードを通常走行と呼ぶ)。この他、エンジン
150を停止してアシストモータ140を動力源として
走行することも可能である(以下、この運転モードをE
V走行とよぶ)。EV走行はアンダードライブ結合で行
われる。また、停車中にエンジン150の動力でアシス
トモータ140を回生運転して発電することも可能であ
る。この発電はオーバードライブ結合で行われる。
【0092】図11〜14で説明した通り、「車軸11
6の回転数Nd>エンジン150の回転数Ne」の走行
時にオーバードライブ結合を採り、「回転数Nd<回転
数Ne」の走行時にアンダードライブ結合を採れば、動
力の循環を回避でき運転効率を向上することができる。
本実施例のハイブリッド車両は、運転効率を向上するた
め、回転数Nd,Neの大小関係に応じてアシストモー
タ140の結合状態を制御する。
【0093】図15は本実施例のハイブリッド車両にお
ける各種走行モードの使い分けの様子を示す説明図であ
る。図中の曲線LIMはハイブリッド車両が走行可能な
領域を示している。図示する通り、車速およびトルクが
比較的低い領域では、EV走行を行う。車速およびトル
クが所定値以上の領域では、通常走行を行う。図中の曲
線Aはエンジン150の回転数Neと車軸116の回転
数Ndが等しくなる境界を示している。かかる曲線Aよ
りもトルクが低い側の領域では原則としてオーバードラ
イブ結合により走行し、高い側の領域ではアンダードラ
イブ結合または中立状態により走行する。例えば、図1
5中の曲線DDに沿って車両の走行状態が変化していく
場合には、当初EV走行を行った後、オーバードライブ
結合による走行に移行することになる。
【0094】図15のマップから明らかな通り、アンダ
ードライブ結合は比較的高トルクが要求される領域で用
いられる。従って、本実施例のハイブリッド車両は、運
転効率に基づく上述の制御と併せて、アクセルが急激に
踏み込まれた場合などの加速時にアンダードライブ結合
に切り替え、高い応答性と滑らかな加速感の実現を図っ
ている。こうしたアシストモータ140の切り替えの制
御については、後に詳述する。
【0095】E.運転制御処理:先に説明した通り、本
実施例のハイブリッド車両は、EV走行、通常走行など
種々の運転モードにより走行することができる。制御ユ
ニット190内のCPU(以下、単に「CPU」とい
う)は車両の走行状態に応じて運転モードを判定し、そ
れぞれのモードについてエンジン150、クラッチモー
タ130、アシストモータ140等の制御を実行する。
これらの制御は種々の制御処理ルーチンを周期的に実行
することにより行われる。以下では、これらの運転モー
ドのうち、通常走行モードについてトルク制御処理の内
容を説明する。
【0096】図16は通常走行時のトルク制御ルーチン
のフローチャートである。この処理が開始されるとCP
Uは駆動軸135から出力すべきエネルギPdを設定す
る(ステップS10)。この動力は、アクセルペダルポ
ジションセンサ165により検出されたアクセルの踏み
込み量および車速に基づいて設定される。駆動軸から出
力すべきエネルギPdは、車軸116の回転数Nd*と
目標トルクTd*の積で表される。目標トルクTd*は
アクセル開度および車速に応じたテーブルとして予め設
定されている。
【0097】次に、充放電電力Pbおよび補機駆動エネ
ルギPhを算出する(ステップS15,S20)。充放
電電力Pbとは、バッテリ194の充放電に要するエネ
ルギであり、バッテリ194を充電する必要がある場合
には正の値、放電する必要がある場合には負の値を採
る。補機駆動エネルギPhとは、エアコンなどの補機を
駆動するために必要となる電力である。こうして算出さ
れた電力の総和が要求動力Peとなる(ステップS2
5)。
【0098】なお、トルク制御ルーチンでは、単位時間
当たりのエネルギ収支を考慮してエンジン150等の制
御を実行する。従って、本明細書でエネルギという場合
は、全て単位時間当たりのエネルギを意味するものとす
る。この意味で、本明細書においては、機械的なエネル
ギは動力と同義であり、電気的なエネルギは電力と同義
である。
【0099】次に、CPUは、こうして設定された要求
動力Peに基づいてエンジン150の運転ポイントを設
定する(ステップS30)。運転ポイントとは、エンジ
ン150の目標回転数Neと目標トルクTeの組み合わ
せをいう。エンジン150の運転ポイントは、予め定め
たマップに従って、基本的にはエンジン150の運転効
率を優先して設定する。
【0100】図17はエンジンの運転ポイントと運転効
率との関係について示す説明図である。回転数Neを横
軸に、トルクTeを縦軸にとりエンジン150の運転状
態を示している。図中の曲線Bはエンジン150の運転
が可能な限界範囲を示している。曲線α1からα6まで
はエンジン150の運転効率が一定となる運転ポイント
を示している。α1からα6の順に運転効率は低くなっ
ていく。また、曲線C1からC3はそれぞれエンジン1
50から出力される動力(回転数×トルク)が一定とな
るラインを示している。
【0101】エンジン150は図示する通り、回転数お
よびトルクに応じて、運転効率が大きく相違する。エン
ジン150から曲線C1に相当する動力を出力する場合
には、図中のA1点に相当する運転ポイント(回転数お
よびトルク)が最も高効率となる。同様に曲線C2およ
びC3に相当する動力を出力する場合には図中のA2点
およびA3点で運転する場合が最も高効率となる。出力
すべき動力ごとに最も運転効率が高くなる運転ポイント
を選択すると、図中の曲線Aが得られる。これを動作曲
線と呼ぶ。なお、この曲線Aは先に図15に示した曲線
Aと同じである。
【0102】図16のステップS30における運転ポイ
ントの設定では、予め実験的に求められた動作曲線Aを
制御ユニット190内のROMにマップとして記憶して
おき、かかるマップから要求動力Peに応じた運転ポイ
ントを読み込むことで、エンジン150の目標回転数N
eおよび目標トルクTeを設定する。こうすることによ
り、エンジン150について効率の高い運転ポイントを
設定することができる。
【0103】こうして設定されたエンジン150の運転
ポイントに応じて、CPUは結合状態切り替え制御処理
を行う(ステップS100)。この処理は、ハイブリッ
ド車両の走行状態に応じてアンダードライブ結合(図1
0の結合状態B)とオーバードライブ結合(図10の結
合状態C)とで切り替える処理である。処理内容の詳細
は後述する。この処理を実行することにより、アシスト
モータ140はアンダードライブ結合またはオーバード
ライブ結合のいずれかの結合状態を採る。
【0104】次にCPUはクラッチモータ130および
アシストモータ140のトルクおよび回転数の指令値を
設定する(ステップS200)。アンダードライブ結合
時には、先に示した式(1)において、車軸の回転数N
d、トルクTdにそれぞれ目標回転数Nd*、Td*を
代入し、エンジンの回転数Ne、トルクTeにステップ
S30で設定した目標回転数Ne*、目標トルクTe*
を代入して設定される。オーバードライブ結合の場合に
は、先に示した式(2)において、それぞれ上記諸量を
代入することにより設定される。
【0105】こうして設定されたトルク指令値および回
転数指令値に基づいて、CPUはクラッチモータ13
0、アシストモータ140、エンジン150の運転を制
御する(ステップS205)。モータの運転制御処理
は、同期モータの制御として周知の処理を適用すること
ができる。本実施例では、いわゆる比例積分制御による
制御を実行している。つまり、各モータの現在のトルク
を検出し、目標トルクとの偏差および目標回転数に基づ
いて、各相に印加する電圧指令値を設定する。印加され
る電圧値は上記偏差の比例項、積分項、累積項によって
設定される。それぞれの項にかかる比例係数は実験など
により適切な値が設定される。こうして設定された電圧
は、駆動回路191,192を構成するトランジスタイ
ンバータのスイッチングのデューティに置換され、いわ
ゆるPWM制御により各モータに印加される。
【0106】CPUは駆動回路191,192のスイッ
チングを制御することによって、上述の通り、クラッチ
モータ130およびアシストモータ140の運転を直接
制御する。これに対し、エンジン150の運転は現実に
はEFIECU170が実施する処理である。従って、
制御ユニット190のCPUはEFIECU170に対
してエンジン150の運転ポイントの情報を出力するこ
とで、間接的にエンジン150の運転を制御する。以上
の処理を周期的に実行することにより、本実施例のハイ
ブリッド車両は、エンジン150から出力された動力を
所望の回転数およびトルクに変換して駆動軸から出力
し、走行することができる。
【0107】F.結合状態切り替え制御:図18は結合
状態切り替え制御ルーチンのフローチャートである。本
ルーチンが開始されると、CPUは運転状態を表すパラ
メータを入力する(ステップS102)。パラメータと
しては、車軸116の目標回転数Nd*、目標トルクT
d*およびアクセル開度などが挙げられる。次に、これ
らのパラメータに基づいて結合状態の切替が必要である
か否かを判定する(ステップS104)。切り替えが必
要であるか否かは、第1に運転効率が高くなる結合状態
にあるか否かによって行われる。また、第2の条件とし
て運転者が要求したトルクを速やかに出力し、滑らかな
加速感を実現できるか否かによって行われる。
【0108】まず、運転効率に基づく判断について具体
例で説明する。図19はアンダードライブ結合からオー
バードライブ結合への切り替えの判断を示す説明図であ
る。図19中の曲線Aは先に示した図15中の曲線Aに
対応しており、アンダードライブ結合に適した走行領域
UDとオーバードライブ結合に適した走行領域ODとの
境界に相当する。曲線DUはハイブリッド車両の走行中
における車速とトルクの変遷を示している。図中の矢印
で示す通り、車両は走行抵抗DDよりも大きなトルクを
出力して加速される。加速とともに出力トルクが低下
し、やがて出力トルクと走行抵抗DDとが釣り合った速
度で定常的に走行する。アンダードライブ結合からオー
バードライブ結合への切り替えは、例えばこうした加速
の過程で生じる。車速の変化に伴って車軸116の回転
状態が、図中の矢印で示されるように変化し、曲線Aと
交差するポイントPD1に至ったとき、CPUはオーバ
ードライブ結合への切り替えを行うべきと判断する。
【0109】図20はオーバードライブ結合からアンダ
ードライブ結合への切り替えの判断を示す説明図であ
る。曲線DDは勾配のない道路を定常走行している状態
での車速とトルクとの関係である。ある車速で定常走行
している状態が図中の点PO0に相当する。この状態で
走行中に運転者がアクセルを踏み込むと、車両の出力ト
ルクは図中の曲線DOに示すように増加し車両は加速す
る。オーバードライブ結合からアンダードライブ結合へ
の切り替えは、例えばこうした過程で生じる。図中の矢
印に従って車軸116の回転状態が変化し、曲線Aと交
差するポイントPO1に至ったとき、CPUはアンダー
ドライブ結合への切り替えを行うべきと判断する。
【0110】このようにCPUは車速およびトルクが動
作曲線を横切るか否かに基づいて切り替えの必要性を判
断する。結合状態の切り替えが頻繁に行われるのを回避
するため、切り替えの判断処理に一定のヒステリシスを
持たせてもよい。例えば、アンダードライブ結合からオ
ーバードライブ結合への切り替えは、図19中に示す通
り、曲線Aと横切った後、領域OD内に設定された所定
の境界線ULに至った場合に切り替えが必要と判断して
もよい。オーバードライブ結合からアンダードライブ結
合への切り替えは、図20中に示す通り、曲線Aと横切
った後、領域UD内に設定された所定の境界線HLに至
った場合に切り替えが必要と判断してもよい。ヒステリ
シスの幅、即ち、曲線UL,HLの位置は車両の運転効
率や頻繁な切り替えによって生じる乗り心地の低下など
を考慮して、任意に設定することができる。
【0111】第2の条件、即ち滑らかな加速感を実現で
きるか否かに基づく判断は次の通りである。図20に示
したようにオーバードライブ結合状態から運転者がアク
セルを急激に踏み込んだ場合など急加速を要求した場合
を考える。この場合、運転者は高トルクを要求している
ため、図20のマップに示す通り加速途中でアンダード
ライブ結合に切り替える必要が生じる可能性が高い。か
かる場合には、加速開始当初、即ち図20の点PO0に
ある時点でアンダードライブ結合への切り替えを済ませ
ておけば、加速途中に切り替え制御が行われることを回
避でき、滑らかな加速感を実現することができる。
【0112】また、本実施例のハイブリッド車両の場
合、出力可能な最大トルクはアンダードライブ結合の方
が大きくなり、アンダードライブ結合の方が急加速に適
しているという特性もある。オーバードライブ結合の場
合は、上流側からエンジン150、アシストモータ14
0、クラッチモータ130の順に配置される。かかる構
成の最大トルクはクラッチモータ130が伝達可能なト
ルクの最大値で制限される。これに対し、アンダードラ
イブ結合の場合は、上流側からエンジン150、クラッ
チモータ130、アシストモータ140の順に配置され
る。この場合は、クラッチモータ130が伝達可能な最
大トルクに対し、さらにアシストモータ140でトルク
を付加することが可能となる。こうした種々の理由によ
り、急加速をする場合には、アンダードライブ結合の方
が適している。従って、本実施例では、運転者がアクセ
ルを急激に踏み込んだ場合、即ちアクセル開度の変化率
が所定以上になった場合には、急加速が要求されている
ものと判断し、アンダードライブ結合への切り替えを行
うべきと判断する。
【0113】ステップS104において、切り替えが必
要と判断された場合には、2段クラッチ200の切り替
え処理が実行され、切り替え不要と判断された場合に
は、この処理をスキップして結合状態切り替え制御ルー
チンを終了する。
【0114】切り替えは次の処理によって行われる。な
お、切り替え処理の説明においては、この処理によって
オフからオンに切り替えられるクラッチを非係合側クラ
ッチと呼び、オンからオフに切り替えられるクラッチを
既係合側クラッチと呼ぶ。アンダードライブ結合からオ
ーバードライブ結合への切り替えは、2段クラッチ20
0の内側クラッチをオンにするとともに外側クラッチを
オフにするから、内側クラッチが非係合側クラッチであ
り、外側クラッチが既係合側クラッチである。オーバー
ドライブ結合からアンダードライブ結合への切り替え
は、2段クラッチ200の外側クラッチをオンにすると
ともに内側クラッチをオフにするから、外側クラッチが
非係合側クラッチであり、内側クラッチが既係合側クラ
ッチである。
【0115】切り替えは2段クラッチ200の3軸の回
転数をほぼ一致させて非係合側クラッチをオンとして内
側クラッチ、外側クラッチの双方を係合状態にした後、
既係合側クラッチをオフにすることで行われる。CPU
は、まずかかる切り替えが可能であるか否かの判断基準
として「駆動軸の回転数Nd−エンジン回転数Ne」で
与えられる回転数差ΔNを算出する(ステップS10
8)。回転数差ΔNは、既係合側の2つの回転軸の回転
数と非係合側の1つの回転軸の回転数との差に相当す
る。
【0116】次に、この回転数差ΔNが小さくなるよう
に、アシストモータ140のトルクを制御する(ステッ
プS110)。本実施例では、ΔNに基づく比例積分制
御を適用した。例えば、オーバードライブ結合からアン
ダードライブ結合に切り替える場合を考える。オーバー
ドライブ結合は、「エンジンの回転数Ne<駆動軸の回
転数Nd」の状態で走行しているから、回転数差ΔN>
0である。切り替え時にはエンジン150の回転数Ne
を駆動軸の回転数Nd相当にまで上昇させる必要があ
る。アシストモータ140はエンジン150に結合され
ているため、回転数差ΔNに応じた正のトルクを出力
し、エンジン150の回転数を上昇させる。アンダード
ライブ結合からオーバードライブ結合への切り替えで
は、アシストモータ140が駆動軸に結合されているか
ら、アシストモータ140から回転数差ΔNに応じた正
のトルクを出力し、駆動軸の回転数を上昇させる。この
正のトルクを回転数差ΔNの比例項、積分項に所定のゲ
インを乗じて設定する。もちろん、アシストモータ14
0のトルクはこれに限らず種々の方法によって設定する
ことができる。
【0117】アシストモータ140の制御を行えば2段
クラッチ200に結合された3軸の回転数をほぼ一致さ
せることができるが、本実施例では、回転数を速やかに
一致させるため、非係合側クラッチの電圧制御も併せて
実行する(ステップS112)。この制御は、回転数差
がある状態でも、2段クラッチ200が許容できる範囲
で非係合側のクラッチを係合する処理である。オーバー
ドライブ結合からアンダードライブ結合への切り替えを
例にとって説明する。かかる切り替えを行う際には、駆
動軸の回転数Ndがエンジン回転数Neよりも高い。こ
の状態で、非係合側クラッチである外側クラッチを係合
すると、駆動軸の動力がエンジン側に伝達されるため、
エンジンの回転数を上昇させることができる。ステップ
S112では、かかる効果を得るように非係合側クラッ
チを係合させるのである。その態様については後で詳述
する。
【0118】アシストモータ140の制御および非係合
側クラッチの制御を実行した後、CPUはクラッチの切
り替え操作を行ってもよいか否かを判定する(ステップ
S114)。この判定は、回転数差ΔNが所定の値NT
未満であるか否かによって行われる。所定の値NTはク
ラッチが係合可能な許容回転数差であり、2段クラッチ
に応じて設定される。回転数差ΔNが所定の値NT未満
である場合には、回転数差が許容範囲に入ったと判断さ
れ、クラッチの切り替えを行う。即ち、非係合側のクラ
ッチをオンにするとともに、既係合側のクラッチをオフ
にするのである(ステップS116)。両者を瞬時に切
り替えることもできるが、本実施例では、一旦双方が係
合した状態を経てから既係合側のクラッチをオフにして
いる。一方、回転数差ΔNが所定の値NT以上である場
合には、切り替えが許容されないと判断し2軸の回転数
差を縮めるための制御(ステップS108〜S112)
を繰り返し実行する。以上の処理により、本実施例のハ
イブリッド車両は、運転状態に応じてアシストモータ1
40の結合状態を切り替えつつ、走行することができ
る。
【0119】なお、図18の制御処理では、既係合側ク
ラッチを係合したまま、2段クラッチの全回転軸の回転
数を一致させ、非係合側のクラッチをオンにするととも
に、既係合側のクラッチをオフにする(ステップS11
6)場合を例示した。結合状態の切り替え処理は、かか
る態様に限らず、双方のクラッチがオフとなっている状
態を経て切り替えを行うものとしてもよい。つまり、既
係合側クラッチをオフにした後、非係合側のクラッチの
2つの回転軸の回転数を一致させ、非係合側のクラッチ
を係合するものとしてもよい。また、アシストモータの
トルク制御(ステップS110)を行うことなく、非係
合側クラッチの電圧制御(ステップS112)のみを行
うものとしてもよい。
【0120】G.非係合クラッチの係合態様:以下、図
18のステップS112の具体的な制御内容について説
明する。図21は切り替え時における2段クラッチの係
合状態および中間軸の回転数の変化を示す説明図であ
る。ここでは、アンダードライブ結合からオーバードラ
イブ結合への切り替え時を例示した。外側クラッチがオ
ン、内側クラッチがオフとなっており、中間軸が駆動軸
135に結合された外軸に係合している初期状態から、
中間軸がエンジンに係合する状態への切り替えである。
駆動軸135の回転数がエンジンの回転数よりも低い状
態で切り替えが行われる場合を例示した。なお、ここで
は既係合クラッチである外側クラッチを解放した後、中
間軸と内軸の回転数を一致させて非係合側のクラッチを
係合する制御を行った場合を例示した。もちろん、図1
8で示した制御処理に従い外側クラッチを係合したまま
回転数を制御して切り替えることも可能である。
【0121】図示する通り、時刻t1において外側クラ
ッチをオフにする制御信号を出力して切り替えを開始す
ると、所定の遅れ時間経過後の時刻t2において外側ク
ラッチが解放状態となる。このとき、中間軸の回転数
は、外軸の回転数Noutと同じである。
【0122】次に、若干の遅れ時間を経た時刻t3にお
いて内側クラッチにロウの信号を出力すると、時刻t4
において内側クラッチが半係合状態となる。半係合状態
とは、クラッチがアマチュア307と中間軸401の径
方向側面410との摩擦力のみによってトルクを伝達可
能な状態をいう。先に説明した通り、本実施例で用いて
いる2段クラッチは、内軸に取り付けられたローラ30
4が中間軸に係合することにより、トルクを伝達する。
ローラ304は、通常、スイッチバネ303により中立
位置に保持されており、アマチュア307と径方向側面
410が接触して、スイッチバネ303に抗し得る摩擦
力が作用すると係合位置に移動する。但し、ローラ30
4が係合位置に移動していない状態であっても、アマチ
ュア307と径方向側面410が接触していれば、両者
の摩擦力によって、中間軸と内軸との間で一定範囲のト
ルクの伝達が可能である。半係合状態とは、このように
摩擦力によってトルクが伝達される状態をいい、内側ク
ラッチのコイル603に低電圧を印加してアマチュア3
07を小さい力で吸引することにより実現される。当
然、半係合状態で伝達されるトルクの大きさはローラ3
04が係合している状態で伝達されるトルクよりも小さ
い。
【0123】このように内側クラッチを半係合状態にす
ると、内軸と中間軸とが滑りを生じながら係合するた
め、中間軸の回転数は内軸に連れ回されるように内軸の
回転数Ninまで増大する。両者の回転数がほぼ一致し
た時刻t5において、内側クラッチにハイの信号を出力
すると、コイル603に高い電圧が印加され、アマチュ
ア307を強く吸引し、時刻t6においてローラ304
を係合位置に移動させる。こうして切り替えが完了す
る。
【0124】図21には、非係合側クラッチを半係合に
しない場合の中間軸の回転数の変化を破線で示した。非
係合側クラッチを半係合にしない場合には、アシストモ
ータ140のみの制御によって中間軸の回転数を増大さ
せる必要が生じるが、かかる制御は過渡応答時にオーバ
ーシュートやアンダーシュートを生じることが多く、図
示する通り、中間軸の回転数がNinに一致するまでに
長時間を要する。これに対し、非係合側クラッチを半係
合状態にする場合、中間軸の回転数は内軸の回転に連れ
回されることで増大するから、オーバーシュートするこ
となくNinに一致する。従って、速やかに切り替えを
行うことができる。ここでは内側クラッチが非係合クラ
ッチとなる場合を例示したが、外側クラッチが非係合ク
ラッチとなる場合も同様である。
【0125】図21の態様で非係合側クラッチを制御す
る場合、半係合状態における係合力は、切り替えに要す
る目標時間に応じて以下の手順で設定すればよい。ま
ず、運転感覚上の要求から、切り替えに要する目標時間
(図21中の時刻t1〜t6間の時間)を設定する。次
に、この目標時間に基づいて、クラッチを半係合状態に
することで非係合側クラッチの回転数を一致させる目標
時間(図21中の時刻t4〜t5間の時間に相当)を設
定する。非係合側クラッチの回転数を一致させるための
目標時間をΔt(sec)とする。クラッチの切り替え
を行う場合、初期状態における既係合側クラッチの回転
数と非係合側の回転数との差(図21中のNinとNo
utの差)は、状況に応じて変動するが、目標時間Δt
は、これらのうち代表的な初期の回転数差ΔN(rad
/sec)に対して設定する。
【0126】回転数差ΔNが目標時間Δtで値0に収束
するために、半係合状態において、中間軸に作用させる
べきトルクT(Nm)は、一般に次式で与えられる。 T=I×ΔN/Δt; ここで、Iは中間軸およびそれに結合されたアシストモ
ータ140の慣性モーメント(kg・m2)である。中
間軸に作用するトルクTは、非係合側クラッチのアマチ
ュアの断面二次極モーメント、摩擦係数および吸引力に
比例する。従って、上式により得られたトルクTを非係
合側クラッチのアマチュアの断面二次極モーメント、摩
擦係数で除すれば目標となる吸引力およびそのために内
側クラッチのコイルに印加すべき電圧を設定することが
できる。
【0127】上式で得られたトルクTが、非係合側のス
イッチバネによるトルクを上回り、ローラを係合させる
程度に大きい場合には、クラッチは係合状態となってし
まう。かかる事態を回避するため、非係合クラッチのス
イッチバネは、上記トルクTよりも大きいトルクを作用
させられるよう設計する。さらに、非係合クラッチのコ
イルにハイの信号を出力した状態では、スイッチバネの
トルクよりも大きいトルクが摩擦係合器で作用する必要
があるから、かかるトルクが作用するよう、非係合側ク
ラッチのコイルに印加する電圧値を設定する。
【0128】なお、オーバードライブ結合からアンダー
ドライブ結合に切り替える場合と、逆方向に切り替える
場合とで、切り替えの目標時間Δtおよび代表的な回転
数差ΔNは個別に設定できる。それぞれ個別に設定する
ことにより、外側クラッチと内側クラッチのスイッチバ
ネのトルク、半係合状態における電圧値(以下、この電
圧を「同期電圧」と呼ぶ)を、切り替えに応じた適切な
値に設定することができる。
【0129】以上で説明した通り、非係合側クラッチを
半係合状態を経て係合させることにより、非係合側クラ
ッチの回転軸の回転数を速やかに一致させることがで
き、切り替えに要する時間を短縮することができる。
【0130】G1.第1の変形態様:非係合側クラッチ
はこの他にも、種々の態様で係合させることができる。
図22は第1の変形態様での電圧制御の様子を示す説明
図である。このように非係合側クラッチを構成するコイ
ルの電圧を回転数差に応じて徐々に増加して係合力を徐
々に強めるものとしてもよい。図21に示したのと同
様、非係合側のクラッチでは、摩擦係合器に滑りを生じ
つつ両回転軸の回転数を一致させる向きのトルクが互い
に作用する。時間の経過とともに両回転軸の回転数差は
縮まるから、係合力を強めることができ、より速やかに
回転数を一致させることができる。図22では半クラッ
チ状態での係合が許容される回転数差の上限値NL以下
の範囲でΔNが小さくなるにつれて係合力を強くする場
合を例示した。ΔNが所定の値NTより小さくなれば、
クラッチを完全に係合させることができる。ここでは、
係合力を直線的に変化させる場合を例示したが、曲線的
に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0131】G2.第2の変形態様:図23は第2の変
形態様での電圧制御の様子を示す説明図である。このよ
うにコイルの電圧を強弱に変化させるものとしてもよ
い。回転数差がある状態でコイルに電圧を印加し、クラ
ッチを係合させれば、両回転軸には回転数差に起因する
衝撃トルクが回転数差を縮める向きに作用する。但し、
この状態でクラッチを係合し続けると、衝撃トルクによ
ってクラッチの寿命を著しく縮める等のおそれがある。
従って、クラッチを係合させた後、速やかにコイルの電
圧を弱め、係合力を低下させるのである。こうして、係
合力を強弱に変化させつつクラッチを係合させることに
より、衝撃トルクを断続的に作用させることができ、両
回転軸の回転数差を速やかに縮めることができる。な
お、係合力の強弱変化の周期および強さはクラッチの許
容範囲および回転数差に応じて任意に設定することがで
きる。また、係合時に生じるトルクショックによる乗り
心地への影響も考慮して設定することが望ましい。図2
3では、一例として、回転数差ΔNが小さくなるにつれ
て係合力のピークを強くする場合を例示した。この他、
回転数差ΔNが小さくなるにつれて係合期間が長くなる
ようにしてもよい。これらの変化は、回転数差ΔNを検
出して強弱を設定するものとしてもよいし、予め定めた
パターンで時間的に変化させるものとしてもよい。もち
ろん、回転数差ΔN、経過時間に関わらず一定周期で強
弱に変化させて係合させるものとしてもよい。
【0132】G3.第3の変形態様:図24は第3の変
形態様での電圧制御の様子を示す説明図である。このよ
うにクラッチを断続的に係合させるものとしてもよい。
ここでは、ローラが完全に係合する状態で断続的に係合
させる場合を例示した。ローラを完全に係合させれば、
非常に強い衝撃トルクが発生するものの、非係合側クラ
ッチの2つの回転軸を速やかに一致させることができ
る。かかる係合を断続的に行うことにより、非係合側の
クラッチの寿命の低下を回避して速やかな切り替えを実
現できる。図24では回転数差ΔNが小さくなるにつれ
てクラッチが係合している期間が短くするとともに、係
合させる間隔を長くした場合を例示した。かかる態様に
おいても、回転数差ΔNに応じて係合力を変化させるな
ど種々の態様を適用することができる。
【0133】G4.第4の変形態様:図25は第4の変
形態様での電圧制御の様子を示す説明図である。この変
形態様では、同期電圧を印加する前に、それよりも高い
電圧(以下、「初動電圧」と呼ぶ)を印加する。図示す
る通り、時刻ta1において、クラッチの係合指示がな
されると、CPUはコイルに所定の初期電圧Viを時刻
ta2までの所定期間sa1だけ印加する。この間にア
マチュア307は径方向側面410に吸着される。吸着
前は中間軸の回転数は変化しない。時刻ta2になって
アマチュア307が吸着されると、その後、CPUはコ
イルに同期電圧Vsを印加する。そして、時刻ta3に
おいて、中間軸の回転数と内軸の回転数Ninとの差が
許容範囲に入ったところで、係合電圧Vlを印加してク
ラッチを完全係合させる。同期電圧Vsの印加期間sa
2は中間軸と内軸の回転数差の変化によって変動する。
ここでは、一定の同期電圧Vsを印加する場合を例示し
たが、図22〜図24で示した種々の態様で同期電圧を
印加することも可能である。
【0134】初動電圧Viは、アマチュア307と径方
向側面410との接触を速やかに実現するための電圧で
ある。アマチュア307は既に説明した通り、電磁力の
作用によって吸着される。同期電圧Vsは比較的小さい
ため、アマチュア307を速やかに吸着するのに十分な
電磁力を作用させることができない場合がある。また、
コイルでは一般にインダクタンスの影響により、電磁力
の立ち上がりが電圧印加よりも遅れる。つまり、電圧印
加当初は、アマチュア307を吸着するのに十分な電磁
力を発生できないことが多い。第4の変形態様では、同
期電圧Vsよりも高い初動電圧Viを印加することによ
り、これらの弊害を抑制し、アマチュア307の速やか
な吸着を実現することができる。
【0135】初動電圧Viの値は、アマチュア307を
吸着可能な電磁力を作用させることが可能な範囲で任意
に設定可能であるが、アマチュア307吸着時にローラ
をロックさせるに至らない範囲で設定することが好まし
い。つまり、同期電圧Vsより大きく、係合電圧Vlよ
り小さい範囲で設定することが好ましい。この範囲で設
定することにより、アマチュア307が吸着された瞬間
にローラがロックすることを回避でき、係合時のショッ
クを低減することができる。
【0136】初期電圧の印加期間sa1は、アマチュア
307と径方向側面410との間隔、アマチュア307
の慣性、コイルのインダクタンスなどに応じて、アマチ
ュア307の速やかな吸着を実現できる範囲で設定すれ
ばよい。中間軸の回転数変化に基づき、印加期間s1を
動的に制御してもよい。つまり、アマチュア307が吸
着されると、摩擦力によって中間軸の回転数の変化率に
変動が生じるから、この変動を検出した時点で初期電圧
の印加を停止するものとしてもよい。摩擦力によって中
間軸のトルクに変動が生じるから、中間軸にトルクセン
サを付加し、その値に応じて初期電圧の印加を停止する
ものとしてもよい。
【0137】G5.第5の変形態様:図26は第5の変
形態様での電圧制御の様子を示す説明図である。この態
様では、同期電圧の印加をフィードバック制御する。時
刻tb1において、クラッチの係合指示がなされると、
CPUは初動電圧を期間sb1だけ印加する。時刻tb
2になってアマチュア307と径方向側面410とが係
合すると、CPUは初動電圧の印加を停止し、同期電圧
の印加に切り替える。同期電圧の印加は、中間軸の回転
数変化率ΔNmが目標値となるようフィードバック制御
される。比例積分制御など種々の制御手法を適用可能で
ある。中間軸と内軸との回転数差が許容範囲に入った時
点tb3で、CPUは同期電圧の印加を停止し、係合電
圧Vlを印加する。
【0138】第5の変形態様では、中間軸の回転数変化
率ΔNmを目標値として同期電圧を制御するため、同期
期間の安定化を図ることができる。アマチュア307と
径方向側面410の摩擦係数は経年変化、製造時のバラ
ツキなど種々の要因によって変動が生じる。予め設定さ
れた同期電圧を印加する場合、摩擦係数の変動は、同期
期間の変動、特に長期化につながる。第5の変形例で
は、フィードバック制御によって、これらの変動による
影響を抑制し、係合期間を安定させることができる。中
間軸の回転数変化は中間軸のトルクと相関があるから、
中間軸にトルクセンサを付加し、トルクの目標値に基づ
くフィードバック制御を行うものとしてもよい。この場
合のトルクの目標値は、中間軸の回転数変化率の目標値
ΔNmと、中間軸およびアシストモータ140の慣性モ
ーメントIとの積によって設定することができる。
【0139】G6.第6の変形態様:図27は第6の変
形態様での電圧制御の様子を示す説明図である。この態
様では、初動電圧も含めて回転数変化に基づく同期電圧
の印加をフィードバック制御する。時刻tc1におい
て、クラッチの係合指示がなされると、CPUは中間軸
の回転数変化率に基づくフィードバック制御で印加電圧
を設定する。アマチュア307と径方向側面410が接
触していない期間sc1(図中のtc1〜tc2の期
間)では、中間軸の回転数変化が生じないから、印加電
圧は非常に高い値に設定されることになる(図中の破線
参照)。印加電圧の回路保護および係合時のショック軽
減のため、フィードバック制御中の印加電圧は所定の値
Vi以下に上限値を制限する。上限値は、第4の変形態
様における初動電圧相当に設定する。アマチュア307
が吸着されるまでは、上限値に相当する電圧Viが印加
されることになる。アマチュア307が吸着されると、
第5の変形態様と同様、回転数変化率に基づく同期電圧
が印加される。CPUは中間軸と内軸の回転数差が許容
範囲に達した時刻tc3において、同期電圧のフォード
バック制御を停止し、係合電圧Vlを印加する。
【0140】第6の変形態様によれば、アマチュア30
7の吸着前は、上限値を制限したフィードバック制御に
より、同期電圧よりも高い初動電圧を印加することがで
きる。従って、第6の変形態様では、制御モードの切り
替えを伴うことなく、初動電圧と同期電圧とを印加する
ことができる。
【0141】上述の例では、内側クラッチが非係合側ク
ラッチとなっている場合の切り替え動作を例示した。同
様の制御は、外側クラッチが非係合側クラッチとなって
いる場合にも適用可能である。外側クラッチについて
も、第1〜第6の変形態様によって、係合に要する期間
を短縮することが可能である。第4〜第6の変形態様を
外側クラッチに適用すれば、アマチュア407の吸着を
速やかに行うことができる。外側クラッチは径の大きさ
に起因してアマチュア407の慣性が大きいため、第4
〜第6の変形態様の適用は、特に有用性が高い。
【0142】先に説明した制御処理のステップS112
では、このように種々の態様の中から予め設定された態
様で非係合側クラッチの電圧を制御するのである。本実
施例では、2段クラッチ200のコイル601,603
への通電はスイッチング素子としてのトランジスタのオ
ン・オフによって制御することができるから、予め設定
された態様の電圧が非係合側クラッチのコイルに印加さ
れるよう、スイッチ611,613をPWM制御すれば
よい。
【0143】本実施例では、切り替え制御処理におい
て、常に非係合側クラッチの制御(図18のステップS
112)を実行する場合を例示した。非係合側クラッチ
の制御は、クラッチの切り替えに要する時間を短縮する
ために実行される処理である。従って、切り替えの短縮
が要求される場合にのみ非係合側クラッチの制御を行う
ものとしてもよい。例えば、アクセルが急激に踏み込ま
れた場合においてのみ非係合側クラッチの制御を行い、
その他の切り替え時にはこの処理を省略するものとして
もよい。
【0144】H.効果:以上で説明した本実施例のハイ
ブリッド車両によれば、車軸116とエンジン150の
回転数の大小関係に応じてアシストモータ140の結合
先を切り替えることによって、動力の循環を抑制し、高
い効率でハイブリッド車両を運転することができる。ま
た、加速時にアンダードライブ結合を適用することによ
り、高い応答性で滑らかな加速感を実現することができ
る。
【0145】ここで、本実施例のハイブリッド車両は、
2段クラッチ200を結合状態の切り替え機構として用
いる。2段クラッチはその構成上、回転軸方向のサイズ
が小さいという特徴があり、切り替え機構を含む動力系
統全体を小型化できる利点がある。また、2段クラッチ
を用いることにより、エンジン、クラッチモータの双方
から切り離された状態を経ることなくアシストモータ1
40の結合先を切り替えることができる。このため、以
下に示す通り、車両の応答性を向上することができるな
どの利点がある。
【0146】第1に実施例のハイブリッド車両では、2
段クラッチに結合された3つの回転軸の回転数をほぼ一
致させた上で、内側クラッチ、外側クラッチの双方が係
合した状態を経てクラッチの切り替えを行う。このた
め、クラッチの切り替え時にアシストモータ140がエ
ンジン150、クラッチモータ130の双方から切り離
された状態となることを回避でき、切り替え途中でも十
分な出力トルクを確保することができる。なお、上記切
り替え制御処理によれば、3つの回転軸の回転数を十分
に接近させてから切り替えるため、アシストモータ14
0がエンジン150、クラッチモータ130の双方から
切り離されている期間を十分短縮することができる。従
って、上記実施例では、双方のクラッチが係合した状態
を経る場合を例示したが、アシストモータ140がエン
ジン150、クラッチモータ130の双方から切り離さ
れた状態を経て切り替えを行うものとしても、出力トル
クを確保することが可能である。
【0147】第2に実施例では、切り替え制御処理にお
いて、非係合側クラッチの電圧制御を行うことにより
(ステップS112参照)、切り替えに要する時間を短
縮することができる。図28は切り替え処理における回
転数変化の様子を示す説明図である。駆動軸回転数の時
間的変化を実線で示し、エンジン回転数の時間的変化を
破線で示した。それぞれ太い線が非係合側クラッチの電
圧制御を適用した場合の変化を示し、細い線が適用しな
い場合の変化を示している。
【0148】時刻tt1において、オーバードライブ結
合(OD)の状態で、アクセルが急激に踏み込まれ、切
り替え制御が開始されたものとする。アクセルの踏み込
みに伴い、車両は加速するため、駆動軸の回転数は徐々
に増加する。エンジンの回転数は、アシストモータ14
0の制御や非係合側クラッチの制御によって同様に上昇
する。ここで、非係合側クラッチの制御を行わない場合
には、図中の細い線で示す通り、エンジンの回転数は徐
々に上昇し、時刻tt3で駆動軸回転数とほぼ一致す
る。この時刻でオーバードライブ結合からアンダードラ
イブ結合への切り替えが行われアシストモータ140か
らも加速用のトルクを出力可能となるため、以後、図中
に細い線で示す通り加速が行われる。
【0149】これに対し、非係合側クラッチの制御を行
えば、駆動軸の回転動力がエンジンの回転数を上昇する
向きに伝達されるため、図中に太い線で示すようにエン
ジンの回転数が速やかに上昇し、時刻tt2で駆動軸回
転数とほぼ一致する。両者が一致する時刻tt2は、先
に説明した時刻tt3よりも早い。時刻tt2でオーバ
ードライブ結合からアンダードライブ結合への切り替え
が行われ、以後、図中に太い線で示す通り加速が行われ
る。図中の細い線と太い線を比較すれば明らかな通り、
非係合側クラッチの制御を行うことにより、クラッチの
切り替えおよび加速を速やかに行うことができる。かか
る作用により、本実施例のハイブリッド車両は、高い応
答性で滑らかな加速感を実現することができる。
【0150】I.第2実施例:第1実施例と同様のハー
ドウェア構成を備えるハイブリッド車両において、第2
実施例としてのクラッチ切り替え処理について説明す
る。第2実施例では、クラッチの切り替え期間を通じ
て、アシストモータ140のトルクを走行に利用可能な
制御処理を行う。
【0151】第2実施例の制御処理に先立ち、本実施例
のローラクラッチ機構の特性について説明する。図29
はローラクラッチの動作状態を示す説明図である。回転
軸に直交する拡大断面図を示した。機構の詳細は、図2
〜図9で説明した通りである。既に説明した通り、完全
係合状態での2つの回転軸Axi、Axo間のトルク伝
達はローラを介して行われる。
【0152】図中の上段には外側の回転軸Axoから内
側の回転軸Axiにトルクが伝達される様子を示した。
回転軸Axoに動力が入力され、図中の矢印方向に回転
しているものとする。この時、ローラは図中の位置PL
で係合し、回転軸Axoから回転軸Axiにトルクが伝
達される。ローラがこのようにロックすると、回転軸A
xoが図中の向きに回転しトルク伝達が行われる限り、
コイルへの電圧印加が停止されても、回転軸とローラと
の間に作用する摩擦力の効果により、ロック状態が維持
される。
【0153】図中の下段には、上段の状態から回転軸A
xiが動力の入力軸に移行した場合のトルク伝達の様子
を示した。左側は、ローラをロックする電圧が印加され
たまま移行した場合、右側には、ローラをロックする電
圧がオフされた状態で移行した場合を示した。ロック電
圧が印加されている場合には、アマチュアおよび保持器
を通じてローラが移動させられ、図中の位置PRで再び
ロックする。従って、回転軸Axiから回転軸Axoに
ローラを介してトルクが伝達される。ローラが解放され
ている場合には、回転軸Axiが入力軸となった時点
で、ローラを係合位置PLに保持していた力、即ち回転
軸とローラとの間に作用する摩擦力が作用しなくなるか
ら、ローラはスイッチバネの力でニュートラル位置に保
持される。従って、この時は、回転軸Axiから回転軸
Axoへのトルク伝達は行われなくなる。回転軸Axo
の回転数が回転軸Axiよりも低くなった場合も同様に
してクラッチが切り離される。
【0154】第2実施例では、上述の動作原理を利用し
たクラッチの切り替え例を示す。つまり、ロック電圧を
オフにした状態でトルク伝達を行ってローラを係合位置
に保持する状態を経てクラッチの切り替えを行う場合を
例示する。
【0155】図30は第2実施例におけるクラッチの切
り替えシーケンスを示す説明図である。オーバードライ
ブ結合で走行中にアンダードライブ結合に切り替えて、
加速を行う場合を例示した。内側クラッチがオン、外側
クラッチがオフの状態から、内側クラッチがオフ、外側
クラッチがオンの状態への切り替えである。
【0156】オーバードライブ走行中なので、初期状態
では、駆動軸の回転数(外軸の回転数)はエンジンの回
転数(内軸の回転数)よりも高い。また、エンジン側に
結合されたアシストモータ140は、回生運転されてい
る。図中には、クラッチの係合状態を併せて示した。状
態Aが初期状態に相当する。内側クラッチのローラが係
合し、エンジンが結合された内軸301から中間軸40
1にトルクが伝達される。このトルクを利用して中間軸
401に結合されたアシストモータ140で回生が行わ
れる。
【0157】時刻td1で、運転者がアクセルペダルを
急激に踏み、いわゆるキックダウンをすると、クラッチ
の切り替えが開始される。CPUは、まずアシストモー
タ140を力行運転する。アシストモータ140のトル
クは、エンジンのトルクと併せてクラッチモータ130
の定格内で駆動軸に伝達され、車両を加速させる。アシ
ストモータ140の動力は、またエンジンの回転数の速
やかな上昇にも供される。この時点でのクラッチの係合
状態を状態Bに示した。内側クラッチには係合電圧Vl
が印加されているから、中間軸401が動力の入力軸と
なると、ローラは状態Aと逆側で係合する。こうしてア
シストモータ140の動力が中間軸401から内軸30
1に伝達される。
【0158】続いて時刻td2において、CPUは内側
クラッチの電圧をオフにする。但し、アシストモータ1
40は力行運転を継続している。内側クラッチは、この
トルク伝達により、状態Bが維持される。
【0159】エンジンの回転数が十分に上昇すると、C
PUは外側クラッチの係合制御に入る。時刻td3にお
いて、CPUは外側クラッチに初動電圧Viを印加し、
時刻td4において同期電圧を印加する。初動電圧およ
び同期電圧の印加については、図22〜図27で例示し
た種々の態様を適用できる。同期時のクラッチの係合状
態を状態Cに示した。同期中もアシストモータ140か
らエンジンへのトルク伝達は行われているから、内側ク
ラッチのローラは係合状態に維持される。外側クラッチ
は同期中であるからローラはニュートラルである。この
同期制御によって、アシストモータの回転数と駆動軸の
回転数の同期がとられる。
【0160】時刻td5において、アシストモータの回
転数と駆動軸の回転数が外側クラッチの許容範囲に入っ
た時点で、CPUは同期電圧の印加を停止し、外側クラ
ッチに係合電圧Vlを印加する。この時点での係合状態
を状態Dに示した。外側クラッチの係合により、中間軸
401から外軸501にトルク伝達が開始される。これ
に伴って、中間軸401から内軸301に伝達されるト
ルクが低減する。また、エンジンの回転数が引き続き上
昇するため、内軸301と中間軸401との間に回転数
差が生じる。内側クラッチの係合電圧はオフとされてい
るから、かかるトルクの低減および回転数差に基づき、
内側クラッチのローラはニュートラル位置に移動し、ク
ラッチは解放状態となる。
【0161】以上で説明した通り、第2実施例の切り替
え制御によれば、アシストモータ140のトルクを加速
およびエンジン回転数の上昇に常に利用しつつ、クラッ
チの切り替えを行うことができる。外側クラッチの係合
に伴って、内側クラッチは自然に解放されるから、時刻
td5での切り替えを速やかに実行することができる。
しかも、ローラクラッチの動作特性を利用することによ
り、かかる作用を比較的簡単な制御で実現することがで
きる。
【0162】図31は比較例としてのクラッチ切り替え
シーケンスを示す説明図である。通常行われる制御、つ
まり内側クラッチを切り離した後、中間軸401と外軸
501との同期をとり、外側クラッチを係合させるシー
ケンスを例示した。
【0163】初期状態Aおよびアシストモータ140の
力行を開始した状態Bは、第2実施例(図30)と同じ
である。エンジンの回転数がある程度上昇した時点で、
CPUはクラッチを切り替えるため、内側クラッチの電
圧をオフにする。これに伴い、アシストモータ140の
トルクが0になるように電圧制御する。つまり、回生も
力行も行わず、中間軸と共にフリーで回転する状態とす
る。この時の係合状態を状態C1に示した。アシストモ
ータ140からのトルクが付加されないため、内側クラ
ッチのローラはニュートラル位置に保持される。内側ク
ラッチ、外側クラッチともに完全に解放状態となる。
【0164】その後、CPUは外側クラッチの係合制御
を行う。時刻te3〜te5において、初動電圧、同期
電圧、係合電圧を外側クラッチに印加する。係合電圧が
印加されると(時刻te5)、外側クラッチは状態Dに
示す通りローラがロックされ、トルクの伝達が可能とな
る。この時点で、CPUはアシストモータ140を力行
し、車両を加速する。
【0165】図31の制御では、時刻te2〜te5ま
での期間で、アシストモータ140のトルクを車両の加
速、エンジンの回転数上昇のいずれにも利用することが
できない。つまり、加速時にいわゆるトルク抜けが生じ
る。また、外側クラッチの係合動作が開始されるまでの
期間(時刻te2〜te3)、アシストモータ140の
回転数は上昇しないから、外側クラッチの同期期間(時
刻te4〜te5)も長期間を要することになる。第2
実施例の制御(図30)では、これらの弊害を回避し、
トルク抜けなく滑らかな加速を実現することができる。
【0166】第2実施例のシーケンスにおいて、内側ク
ラッチの電圧をオフにする解放タイミング(時刻td
2)、外側クラッチの係合制御を開始する実行タイミン
グ(時刻td3)は、車両の構成に応じて種々設定可能
である。解放タイミングは予め設定された一定値として
もよいし、中間軸または内軸の回転数変化、トルク変化
に基づいて状態Aから状態Bへの移行が検出された時点
としてもよい。解放タイミングは、外側クラッチの係合
制御が開始される前に限らない。外側クラッチが完全係
合する時刻td5の時点で、内側クラッチのアマチュア
307の離反が完了するタイミングであればよい。
【0167】外側クラッチの係合制御を開始する実行タ
イミングも切替指示から予め設定された一定期間経過後
としてもよいし、エンジンと駆動軸の回転数差が所定以
下となるタイミング、または駆動軸への伝達トルクがク
ラッチモータ130の定格範囲を超えようとするタイミ
ングとしてもよい。
【0168】外側クラッチの係合制御を開始する実行タ
イミングは、切替指示が出された時点(時刻td1)か
ら駆動軸とエンジンの回転数が同等となる時刻td5ま
での期間に影響を与える切替制御関連パラメータに応じ
て動的に変動させることも可能である。切替制御関連パ
ラメータとしては、切替指示が出された時点での車速、
アクセルペダルポジション、駆動軸とアシストモータの
回転数差、電動機から継続的に出力可能な動力などを用
いることができる。電動機から継続的に出力可能な動力
は、バッテリの残容量で代表させても良い。
【0169】図32は外側クラッチの係合制御を開始す
る実行タイミングと切替制御関連パラメータとの関係を
示す説明図である。図30に示したシーケンスから、エ
ンジンおよび駆動軸の回転数変化、非係合クラッチに相
当する外側クラッチの印加電圧のみを抜粋して示した。
折れ線E1が図30に示したエンジンの回転数変化に対
応し、Sig1が図30の印加電圧に相当する。外側ク
ラッチの係合制御を開始する実行タイミングは、駆動軸
とエンジンの回転数がほぼ一致する時刻td5を基準と
して、十分な初動期間s1,同期期間s2を確保できる
ように設定される。制御上は、切替指示が出された時刻
td1からの経過期間Δt、またはエンジンと駆動軸の
回転数差ΔNcをトリガーとして、係合制御を開始する
ことができる。
【0170】折れ線E2は、アクセルペダルの踏み込み
量が折れ線E1よりも大きい場合のエンジン回転数の変
化である。折れ線E1よりもエンジンの回転数は急激に
上昇するため、エンジンと駆動軸の回転数がほぼ一致す
る時刻も早くなる。かかる場合に、折れ線E1と同じ実
行タイミングで外側クラッチの係合制御を開始し、Si
g1の電圧を印加すれば、初動期間s1においてエンジ
ンと駆動軸の回転数が同等となり、外側クラッチの係合
制御を円滑に行うことができない。従って、折れ線E2
に対しては、Sig2に示すように、係合制御の実行タ
イミングを早める必要がある。Sig1,Sig2は図
の煩雑さを回避するため、上下方向にずらして示してあ
るが、印加される電圧値は同等である。実行タイミング
の調整は、アクセルペダルの踏み込み量が大きい場合に
は、所定の期間Δtを小さくすること、または回転数差
ΔNの値を大きくすることにより実現される。初動期間
s1は回転数の変化率等に関わらずほぼ一定期間となる
が、同期期間s2は回転数の変化率の相違に応じて変更
してもよい。
【0171】折れ線E3は、アクセルペダルの踏み込み
量は折れ線E1と同等であるが、初期の回転数差が相違
する。折れ線E1の初期回転数差ΔN1に比較して、折
れ線E3の初期回転数差ΔN3は小さい。エンジン回転
数の変化は折れ線E1と同等であるが、初期回転数差Δ
N3が小さいため、折れ線E3では、駆動軸とエンジン
の回転軸は時刻td5よりも早くに同等となる。従っ
て、Sig3に示すように、外側クラッチの係合制御の
実行タイミングを早める必要がある。
【0172】その他、切替指示が出された時点での車
速、即ち駆動軸の回転数、電動機から継続的に出力可能
な動力などによっても実行タイミングは影響を受ける。
これらの切替制御関連パラメータに応じて、実行タイミ
ングを特定するパラメータΔtまたはΔNcを変化させ
ることによって、外側クラッチの円滑な係合を実現する
ことができる。実行タイミングのみならず、同期電圧の
印加期間s2を切替制御関連パラメータによって変動さ
せてもよい。切替制御関連パラメータとΔtまたはΔN
cとの関係は、予め実験または解析によって設定するこ
とができる。
【0173】第2実施例では、車両を加速する場合を例
示した。同様のシーケンスは、その他種々の運転状態に
適用可能である。外側クラッチがオン、内側クラッチが
オフの初期状態から、アシストモータ140から外軸5
01にトルクを付加しつつ、外側クラッチの電圧をオフ
にした状態を経て、外側クラッチがオフ、内側クラッチ
がオンの状態に切り替えるものとしても良い。アシスト
モータ140から回生トルクを付加しつつ、クラッチを
切り替えるものとしてもよい。
【0174】第2実施例の制御は、第1実施例の切り替
え制御処理と併用しても良い。例えば、運転効率に基づ
く切り替え処理を第1実施例の制御で実行し、キックダ
ウン時の切り替え処理を第2実施例の制御で実行するこ
とができる。非係合クラッチの係合制御の実行タイミン
グを切替制御関連パラメータに応じて調整する態様を第
1実施例の切り替え制御処理に適用することも可能であ
る。
【0175】J.第3実施例:実施例では、クラッチモ
ータ130を動力調整装置として適用した場合を例示し
た。動力調整装置とは、エンジン150から出力された
動力の大きさを電力のやりとりによって変更可能な装置
をいう。クラッチモータ130は電力の供給を受けて回
転数を増速したり、電力を回生することで回転数を低減
したりして、エンジン150から出力された動力の大き
さを変更しつつ、車軸116側に伝達することができ
る。動力調整装置は、かかる作用を奏する構成であれ
ば、クラッチモータ130に限らず種々の装置を適用す
ることができる。異なる構成の動力調整装置を適用した
場合を第3実施例として示す。
【0176】図33は第3実施例としてのハイブリッド
車両の概略構成を示す説明図である。ここでは、動力を
やりとりする要素についてのみ示し、制御ユニットや駆
動回路等の電気系統は図示を省略した。第3実施例は、
クラッチモータ130に代えてプラネタリギヤ230と
電動発電機240とが用いられる。その他の構成は、第
1実施例のハイブリッド車両(図1参照)と同じであ
る。
【0177】プラネタリギヤ230は、遊星歯車とも呼
ばれるギヤであり、中心で回転するサンギヤ231、そ
の周囲で自転するプラネタリピニオンギヤ232および
それをサンギヤ231周りに公転可能に軸支するプラネ
タリキャリア233、さらにその周囲で回転するリング
ギヤ234から構成されている。プラネタリギヤ230
のサンギヤ231は電動発電機240のロータ242に
結合されている。プラネタリキャリア233は、エンジ
ン150のクランクシャフト156および2段クラッチ
200の内軸と結合されている。リングギヤ234は2
段クラッチ200の外軸に結合されるとともに、チェー
ンベルト、ディファレンシャルギヤを介して車軸116
に結合されている。
【0178】電動発電機240は、アシストモータ14
0と同様の三相同期モータであり、ステータ244はケ
ースに固定されている。電動発電機240は電動機とし
て機能したり、発電機として機能したりする。電動発電
機240は、実施例のクラッチモータ130と同様、駆
動回路のトラジスタをオン・オフすることにより運転が
制御される。
【0179】プラネタリギヤ230は機構学上周知の通
り、サンギヤ231,プラネタリキャリア233,リン
グギヤ234のうち2つの回転状態が決定されると残余
の回転状態が一義的に決定するという特性を有してい
る。かかる特性に基づき、第3実施例のハイブリッド車
両では、プラネタリギヤ230と電動発電機240の組
み合わせにより、図1に示した実施例におけるクラッチ
モータ130と同等の作用、即ち動力調整装置としての
作用を奏することができる。クラッチモータ130のイ
ンナロータに相当するのがプラネタリキャリア233で
あり、駆動軸に相当するのがリングギヤ234である。
【0180】エンジン150からプラネタリキャリア2
33に動力が入力されると、リングギヤ234およひサ
ンギヤ231が回転する。リングギヤ234およびサン
ギヤ231のいずれか一方の回転を止めることも可能で
ある。リングギヤ234が回転することにより、エンジ
ン150から出力された動力の一部を車軸116に機械
的な形で伝達することができる。また、サンギヤ231
が回転することにより、エンジン150から出力された
動力の一部で電動発電機240を駆動することができ、
電力を回生することができる。一方、電動発電機240
を力行すれば、電動発電機240から出力されたトルク
は、サンギヤ231、プラネタリキャリア233および
リングギヤ234を介して車軸116に機械的に伝達す
ることができる。従って、電動発電機240を力行する
ことにより、エンジン150から出力されたトルクを増
大して車軸116に出力することも可能である。
【0181】このように、第3実施例では、プラネタリ
ギヤ230と電動発電機240の組み合わせにより、電
力のやりとりを通じてプラネタリキャリア233に入力
された動力の大きさを変更して、リングギヤ234側に
出力することができる。また、サンギヤ231とリング
ギヤ234の回転数はプラネタリギヤ230のギヤ比に
応じた拘束条件の下で任意に変更可能であるから、エン
ジン150から出力された動力を種々の回転数に変換し
てリングギヤ234に出力することも可能である。
【0182】第3実施例も実施例と同様、2段クラッチ
200の切り替えによって4つの結合状態を実現するこ
とができる。図34は第3実施例のハイブリッド車両に
ついて2段クラッチのオン・オフと動力系統の構成との
対応関係を示す説明図である。内側クラッチおよび外側
クラッチの双方をオンにすると、結合状態Aとなる。こ
のときはプラネタリギヤ230のプラネタリキャリア2
33とリングギヤ234とが一体的に回転する状態とな
り、結果として全ギヤが一体的に回転する。従って、電
動発電機240は機能し得ず、エンジン150およびア
シストモータ140を駆動軸に直結した結合状態に等価
な構成となる。これは実施例(図10)の結合状態Aと
同様の結合状態に対応する。
【0183】内側クラッチをオフ、外側クラッチをオン
とすると結合状態Bとなる。このとき外側クラッチのみ
が係合状態となるため、アシストモータ140はリング
ギヤ234に結合した状態に等価な構成となる。リング
ギヤ234は実施例におけるアウタロータに対応するか
ら、この構成は実施例の結合状態Bに対応する。つま
り、内側クラッチをオフ、外側クラッチをオンにするこ
とで第3実施例のハイブリッド車両はアンダードライブ
結合を実現することができる。
【0184】内側クラッチがオン、外側クラッチがオフ
とすると結合状態Cとなる。このとき内側クラッチのみ
が係合状態となるため、アシストモータ140はエンジ
ン150側に結合した状態に等価な構成となる。この構
成は実施例の結合状態Cに対応する。つまり、内側クラ
ッチをオン、外側クラッチをオフにすることで第3実施
例のハイブリッド車両はオーバードライブ結合を実現す
ることができる。
【0185】内側クラッチ、外側クラッチを共にオフと
すると、結合状態Dとなる。このとき、アシストモータ
140は完全に切り離された状態となる。従って、この
場合は、図示する通り、エンジン150、プラネタリギ
ヤ230、電動発電機240のみが結合された状態とな
る。この構成は実施例の結合状態Dに対応する。
【0186】以上で説明した通り、第3実施例のハイブ
リッド車両も、実施例と同様2段クラッチの切り替えに
よってアンダードライブ結合、オーバードライブ結合を
実現することができる。従って、実施例と同様の制御処
理を適用することができる。
【0187】H.変形例:本実施例に適用した2段クラ
ッチ200は、中間軸と内軸とを結合および切り離す内
側電磁クラッチユニットと、中間軸と外軸とを結合およ
び切り離す外側電磁クラッチユニットとを備えており、
内側電磁クラッチユニットおよび外側電磁クラッチユニ
ットのそれぞれが次の要件からなる概念構成を有するも
のである。第1にそれぞれ結合対象となる2軸が、両者
が対向する面の径方向の間隔が周方向の位置によって変
動する断面形状をなしていること。第2に径方向の間隔
の最小値と最大値の間の径を有するローラを前記2軸の
間に備えること。第3に前記2軸のうち一方に相対的に
回転可能に連結され、前記ローラを保持する保持器があ
ること。第4に前記2軸のうち他方に固定された第1の
摩擦係合器および前記保持器と相対的な回転不能に連結
され、電磁力の作用によって前記摩擦面と接触および離
反可能に設けられた第2の摩擦係合器を備えること。第
5に前記第2の摩擦係合器に前記電磁力を作用せしめる
電磁石とを備えること。
【0188】そして、さらに、中間軸は、前記回転軸に
直交する径方向側面を挟んで一方が太径、他方が細径の
軸であるとともに、該径方向側面が前記内側電磁クラッ
チユニットまたは外側電磁クラッチユニットの第1の摩
擦係合器を構成することにより小型化を図っている点に
特徴がある。もちろん、本発明の切替機構はかかる構成
に限定されるものではないが、このようなローラクラッ
チを適用すると、比較的大きなトルクを小型の装置で伝
達できる利点がある。こうした特徴を有するクラッチ
は、本実施例の他にも種々の構造が考え得る。また、こ
のクラッチ200とアシストモータ、エンジン、駆動軸
の結合状態は、アシストモータの回転軸が前記中間軸に
結合され、前記出力軸および駆動軸と前記内軸および外
軸とが1対1の対応で結合されているという条件下で種
々の態様が考え得る。これらの一例を変形例として以下
に説明する。
【0189】図35は第1の変形例としての2段クラッ
チの構成を示す説明図である。概略構成を模式的に示
し、アマチュアなど細部の図示は省略した。実施例で
は、中間軸401の太径部にカム等を組み込んだ場合を
例示した。第1の変形例は、中間軸401の細径部にカ
ム等を組み込んだ場合に相当する。
【0190】図示する通り、中間軸401Aは径方向側
面410Aを挟んで細径部と太径部とから構成される点
は実施例と同様である。但し、実施例と異なり、細径部
の内側に内側クラッチユニットを構成するローラ304
C、保持器305Aが組み付けられている。内側クラッ
チユニットおよび外側クラッチユニットを構成する2つ
のコイル601A、603Aは中間軸401Aの太径部
と内軸301Aとの間に固定されている。また、変形例
のクラッチでは、外軸501Aの内周面に外側クラッチ
ユニットを構成するローラ404A、保持器405Aが
組み付けられている。中間軸401の径方向側面410
Aは、実施例と異なり、外側クラッチユニットの摩擦係
合器を兼用している。内側クラッチユニットは内軸30
1Aに固定されたリング410Bが摩擦係合器として作
用する。かかる構成のクラッチでもコイル601A,6
03Aへの通電により中間軸401Aと内軸301Aお
よび外軸501Aとを結合および切り離すことができ
る。また、径方向側面410Aを有する中間軸401A
を用いることにより、装置の小型化を図ることができ
る。
【0191】図36は第2の変形例としての2段クラッ
チの構成を示す説明図である。概略構成を模式的に示し
た。第2の変形例は、内側クラッチユニットと外側クラ
ッチユニット双方の摩擦係合器が中間軸401Bに固定
されている点で実施例および第1の変形例と相違する。
【0192】図示する通り、中間軸401Bは第1の変
形例と同様、径方向側面410Cを挟んで細径部と太径
部とから構成される。内側クラッチユニットを構成する
ローラ304D、保持器305Bは内軸301Bに組み
付けられている。外側クラッチユニットを構成するロー
ラ404B、保持器405Bは外軸501Bに組み付け
られている。内側クラッチユニットおよび外側クラッチ
ユニットを構成する2つのコイル601B、603Bは
中間軸401Bの太径部と内軸301Bとの間に固定さ
れている。中間軸401Bの径方向側面410Cは外側
クラッチユニットの摩擦係合器を兼用する。コイル60
1Bによる磁力が外側クラッチユニットに適切に作用す
るよう中間軸401Bには実施例と同様の磁気回路の抑
制機構が設けてある。中間軸401Bには径方向側面4
10Cの回転軸中心側にリング410Dが固定されてい
る。このリング410Dは内側クラッチユニットの摩擦
係合器となる。本発明はかかる構成で実現することも可
能である。リング410Dを中間軸401Bと一体形成
するものとしてもよい。
【0193】ここでは、2段クラッチ200の変形例と
して電磁式のローラクラッチを例示したが、2段クラッ
チ200はこれらに限定されるものではない。内軸、中
間軸、外軸がそれぞれ同心円状に配置され、中間軸の内
外にそれぞれ一つずつクラッチ機構を備える種々の構成
を適用することができる。内側クラッチ、外側クラッチ
は例えばクラッチ板の吸着、離反を電磁的に行う形式の
電磁クラッチとしてもよい。また、電磁式に限らず油圧
等で作動するクラッチを組み込むものとしてもよい。
【0194】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内におい
て、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
例えば、本実施例のハイブリッド車両では、エンジンと
してガソリンエンジン150を用いたが、ディーゼルエ
ンジンその他の動力源となる装置を用いることができ
る。また、本実施例では、モータとして全て三相同期モ
ータを適用したが、誘導モータその他の交流モータおよ
び直流モータを用いるものとしてもよい。また、本実施
例では、種々の制御処理をCPUがソフトウェアを実行
することにより実現しているが、かかる制御処理をハー
ド的に実現することもできる。更に、制御ユニット19
0により結合状態の切替制御を行う場合を実施の形態と
して示したが、手動で切り替える態様、または自動での
切り替えと手動での切り替えとを選択可能な態様で構成
することも可能である。
【0195】本実施例で例示した各クラッチの切り替え
処理は、ハイブリッド車両に関わらず、2段クラッチ一
般に適用可能である。2段クラッチに限定されるもので
もない。また、同期制御を経てクラッチを係合させる処
理は、単段のクラッチに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例のハイブリッド車両の概略構成を示す
説明図である。
【図2】2段クラッチ200の概略構成を示す説明図で
ある。
【図3】内側回転部300の構成を示す説明図である。
【図4】内側回転部300のA−A断面を示す断面図で
ある。
【図5】内側回転部300のB−B断面を示す断面図で
ある。
【図6】第1の変形例としてのカム302aの断面形状
を示す説明図である。
【図7】変形例としてのカムおよびローラの断面を示す
説明図である。
【図8】外側回転部500の構成を示す説明図である。
【図9】中間回転部400の構成を示す説明図である。
【図10】2段クラッチのオン・オフと動力系統の構成
との対応関係を示す説明図である。
【図11】アンダードライブ結合について、「車軸11
6の回転数Nd<エンジン150の回転数Ne」の場合
におけるトルク変換の様子を示す説明図である。
【図12】アンダードライブ結合について、「車軸11
6の回転数Nd>エンジン150の回転数Ne」の場合
におけるトルク変換の様子を示す説明図である。
【図13】オーバードライブ結合について、「車軸11
6の回転数Nd<エンジン150の回転数Ne」の場合
におけるトルク変換の様子を示す説明図である。
【図14】オーバードライブ結合について、「車軸11
6の回転数Nd>エンジン150の回転数Ne」の場合
におけるトルク変換の様子を示す説明図である。
【図15】本実施例のハイブリッド車両における各種走
行モードの使い分けの様子を示す説明図である。
【図16】通常走行時のトルク制御ルーチンのフローチ
ャートである。
【図17】エンジンの運転ポイントと運転効率との関係
について示す説明図である。
【図18】結合状態切り替え制御ルーチンのフローチャ
ートである。
【図19】アンダードライブ結合からオーバードライブ
結合への切り替えの判断を示す説明図である。
【図20】オーバードライブ結合からアンダードライブ
結合への切り替えの判断を示す説明図である。
【図21】切り替え時における2段クラッチの係合状態
および中間軸の回転数の変化を示す説明図である。
【図22】第1の変形態様での電圧制御の様子を示す説
明図である。
【図23】第2の変形態様での電圧制御の様子を示す説
明図である。
【図24】第3の変形態様での電圧制御の様子を示す説
明図である。
【図25】第4の変形態様での電圧制御の様子を示す説
明図である。
【図26】第5の変形態様での電圧制御の様子を示す説
明図である。
【図27】第6の変形態様での電圧制御の様子を示す説
明図である。
【図28】切り替え処理における回転数変化の様子を示
す説明図である。
【図29】ローラクラッチの動作状態を示す説明図であ
る。
【図30】第2実施例におけるクラッチの切り替えシー
ケンスを示す説明図である。
【図31】比較例としてのクラッチ切り替えシーケンス
を示す説明図である。
【図32】外側クラッチの係合制御を開始する実行タイ
ミングと切替制御関連パラメータとの関係を示す説明図
である。
【図33】第3実施例としてのハイブリッド車両の概略
構成を示す説明図である。
【図34】第3実施例のハイブリッド車両について2段
クラッチのオン・オフと動力系統の構成との対応関係を
示す説明図である。
【図35】第1の変形例としての2段クラッチの構成を
示す説明図である。
【図36】第2の変形例としての2段クラッチの構成を
示す説明図である。
【図37】電動機を駆動軸に結合したハイブリッド車両
の概略構成を示す説明図である。
【図38】アンダードライブ結合において、「エンジン
の回転数>駆動軸の回転数」の状態での動力の伝達の様
子を示す説明図である。
【図39】アンダードライブ結合において、「エンジン
の回転数<駆動軸の回転数」の状態での動力の伝達の様
子を示す説明図である。
【図40】電動機を出力軸に結合したハイブリッド車両
の概略構成を示す説明図である。
【図41】オーバードライブ結合において、「エンジン
の回転数>駆動軸の回転数」の状態での動力の伝達の様
子を示す説明図である。
【図42】オーバードライブ結合において、「エンジン
の回転数<駆動軸の回転数」の状態での動力の伝達の様
子を示す説明図である。
【図43】アシストモータAMの結合先を切り替え可能
なハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
114…ディファレンシャルギヤ 116R,116L…駆動輪 116…車軸 117…回転数センサ 130…クラッチモータ 132…インナロータ 133…インナロータ軸 134…アウタロータ 135…駆動軸 138…スリップリング 140…アシストモータ 142…ロータ 144…ステータ 145…回転数センサ 150…エンジン 152…回転数センサ 156…クランクシャフト 157…ダンパ 165…アクセルペダルポジションセンサ 190…制御ユニット 191,192…駆動回路 194…バッテリ 230…プラネタリギヤ 231…サンギヤ 232…プラネタリピニオンギヤ 233…プラネタリキャリア 234…リングギヤ 240…電動発電機 242…ロータ 244…ステータ 300…内側回転部 301,310A,301B…内軸 302,302c…カム 302b…弧面 303…スイッチバネ 304,304a,304b,340C,304D…ロ
ーラ 305,305A,350B…保持器 306…突起 307…アマチュア 400…中間回転部 401,401A,401B…中間軸 402…カム 403…スイッチバネ 404,404A,404B…ローラ 405,405A,405B…保持器 406…突起 407…アマチュア 410,410A,410C…径方向側面 410B,410D…リング 500…外側回転部 501,501A,501B…外軸 502…ロータ 503…スプロケット 504…チェーンベルト 600…固定ユニット 601,601A,601B…コイル 602,604…コア 603,603A,603B…コイル 611,613…スイッチ 701〜705…軸受
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B60L 11/14 B60L 11/14 F02D 29/02 F02D 29/02 D F16D 15/00 F16D 15/00 Z 27/12 27/12 A (56)参考文献 特開 平11−270582(JP,A) 特開 平10−75501(JP,A) 特開 平10−285868(JP,A) 特開 昭52−27951(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60K 6/02 - 6/06 B60K 17/04 B60L 11/02 - 11/14 F16D 11/00 - 27/14 F16D 48/00 - 48/12

Claims (21)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 出力軸を有するエンジンと、動力を出力
    するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され
    電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動
    力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、
    回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力
    軸と前記駆動軸とに切り替えて結合する切替機構とを備
    えるハイブリッド車両であって、 前記切替機構は、前記回転軸を中間軸、前記出力軸およ
    び駆動軸の一方を内軸、他方を外軸とし、該中間軸と内
    軸との間に設けられ、両者の結合および切り離しを行う
    第1クラッチと、該中間軸と外軸との間に設けられ、両
    者の結合および切り離しを行う第2クラッチとを、備
    、電磁力の作用によって結合および切り離しを行う
    段クラッチであり、該切替機構に備えられた第1クラッ
    チおよび第2クラッチは、ローラクラッチであるハイブ
    リッド車両。
  2. 【請求項2】 出力軸を有するエンジンと、動力を出力
    するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され
    電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動
    力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、
    回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力
    軸と前記駆動軸とに切り替えて結合する切替機構とを備
    えるハイブリッド車両であって、 前記切替機構は、電磁力の作用によって、前記電動機の
    回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1
    クラッチと、該回転軸と前記駆動軸との結合および切り
    離しを行う第2クラッチとを、該回転軸の内外にそれぞ
    れ一つずつ備える2段クラッチであり、 該車両の運転状態および電動機の結合状態に基づいて、
    前記電動機の結合先を切り替えるべきか否かを判定する
    切替判定手段と、 前記切り替えを行うべきと判定された場合に、前記切替
    機構を制御して、前記電動機の結合先を切り替える切替
    制御手段とを備え、 前記切替判定手段は、前記電動機が前記出力軸に結合さ
    れている状態において、前記駆動軸から出力すべき要求
    トルクの増加率が所定以上の場合に前記切り替えを行う
    べきと判定する手段であるハイブリッド車両。
  3. 【請求項3】 出力軸を有するエンジンと、動力を出力
    するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され
    電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動
    力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、
    回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力
    軸と前記駆動軸とに切り替えて結合する切替機構とを備
    えるハイブリッド車両であって、 前記切替機構は、電磁力の作用によって、前記電動機の
    回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1
    クラッチと、該回転軸と前記駆動軸との結合および切り
    離しを行う第2クラッチとを、該回転軸の内外にそれぞ
    れ一つずつ備える2段クラッチであり、 該車両の運転状態および電動機の結合状態に基づいて、
    前記電動機の結合先を切り替えるべきか否かを判定する
    切替判定手段と、 前記切り替えを行うべきと判定された場合に、前記切替
    機構を制御して、前記電動機の結合先を切り替える切替
    制御手段とを備え、 前記切替制御手段は、 前記第1クラッチおよび第2クラッチのうち非係合側の
    クラッチに、該クラッチに結合された2軸の回転状態の
    差違に応じて許容される係合力で係合させる同期電圧を
    印加して、両者の回転状態の偏差を低減させる非係合ク
    ラッチ制御手段と、 該非係合クラッチ制御手段の実行によって前記2軸の回
    転状態が該非係合側のクラッチに関する所定の係合許容
    条件を満足すると判断された場合に第1クラッチおよび
    第2クラッチを切り替える手段とを備えるハイブリッド
    車両。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記非係合クラッチ制御手段は、前記2軸の回転数差が
    小さくなるにつれて前記同期電圧を高くする手段である
    ハイブリッド車両。
  5. 【請求項5】 請求項3記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記非係合クラッチ制御手段は、前記同期電圧を段階的
    に変化させる手段であるハイブリッド車両。
  6. 【請求項6】 請求項5記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記切替機構は、電磁力の作用によって作動するローラ
    クラッチを備え、解放状態、ローラを介してトルクを伝
    達可能な完全係合状態、ローラを介さずに完全係合状態
    で伝達可能なトルクよりも低い範囲でトルクを伝達可能
    な弱係合状態の少なくとも3種類の係合状態を実現可能
    な機構であり、 前記非係合クラッチ制御手段は、前記弱係合状態で前記
    非係合側のクラッチを係合させる手段であるハイブリッ
    ド車両。
  7. 【請求項7】 請求項3記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記非係合クラッチ制御手段は、前記同期電圧を強弱に
    変動させて係合させる手段であるハイブリッド車両。
  8. 【請求項8】 請求項7記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記切替機構は、電磁力の作用によって解放状態、係合
    状態を切り替え可能なローラクラッチであり、 前記非係合クラッチ制御手段は、該ローラクラッチを断
    続的に係合させる手段であるハイブリッド車両。
  9. 【請求項9】 請求項3記載のハイブリッド車両であっ
    て、 前記第1クラッチおよび第2クラッチは、ローラクラッ
    チであり、 前記切替制御手段は、 前記非係合クラッチ制御手段に先立って、前記同期電圧
    よりも高い電圧を前記非係合側のクラッチに印加する初
    動制御手段を備えるハイブリッド車両。
  10. 【請求項10】 請求項9記載のハイブリッド車両であ
    って、 前記切替制御手段は、前記電動機の回転軸の回転数変化
    またはトルク変化に基づいて前記初動制御手段から前記
    非係合クラッチ制御手段への移行を制御するハイブリッ
    ド車両。
  11. 【請求項11】 請求項3記載のハイブリッド車両であ
    って、 前記非係合クラッチ制御手段は、前記電動機の回転軸の
    回転数変化またはトルクに基づいて前記2軸の係合力を
    フィードバック制御するハイブリッド車両。
  12. 【請求項12】 請求項11記載のハイブリッド車両で
    あって、 前記第1クラッチおよび第2クラッチは、ローラクラッ
    チであり、 前記非係合クラッチ制御手段は、前記2軸が完全に非係
    合状態にある場合も含めて、前記係合力が所定値を超え
    ない範囲で前記フィードバック制御を行うハイブリッド
    車両。
  13. 【請求項13】 請求項3記載のハイブリッド車両であ
    って、 前記切替制御手段は、 前記切り替え判断が行われた時点での該車両の車速、ア
    クセルペダルポジション、前記非係合クラッチに結合さ
    れた2軸の回転数差、前記電動機から継続的に出力可能
    な動力の少なくとも一つを切替制御関連パラメータとし
    て検出する手段と、 前記非係合クラッチ制御手段の実行タイミングを該切替
    制御関連パラメータに応じて調整するタイミング調整手
    段とを備えるハイブリッド車両。
  14. 【請求項14】 出力軸を有するエンジンと、動力を出
    力するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合さ
    れ電力のやりとりによって前記エンジンから出力された
    動力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置
    と、回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記
    出力軸と前記駆動軸とに切り替えて結合する切替機構と
    を備えるハイブリッド車両であって、 前記切替機構は、電磁力の作用によって、前記電動機の
    回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1
    クラッチと、該回転軸と前記駆動軸との結合および切り
    離しを行う第2クラッチとを、該回転軸の内外にそれぞ
    れ一つずつ備える2段クラッチであり、 該車両の運転状態および電動機の結合状態に基づいて、
    前記電動機の結合先を切り替えるべきか否かを判定する
    切替判定手段と、 前記切り替えを行うべきと判定された場合に、前記切替
    機構を制御して、前記電動機の結合先を切り替える切替
    制御手段とを備え、 前記第1クラッチおよび第2クラッチは、 前記回転軸と、前記出力軸または駆動軸との間に形成さ
    れる擬楔状空間内に移動可能に備えられたローラと、 電磁力の作用によって吸着し、前記回転軸と、前記出力
    軸または駆動軸との間で摩擦力によるトルク伝達を可能
    とする摩擦係合器と、 該摩擦係合器に連結され、前記ローラを保持する保持器
    を備え、 該保持器によって前記ローラを前記擬楔状空間内で移動
    させクラッチの係合および解放を行うローラクラッチで
    あり、 前記切替制御手段は、 前記第1クラッチおよび第2クラッチのうち既係合クラ
    ッチの解放と、非係合クラッチの係合とを制御する手段
    であって、 前記既係合クラッチに対し、ローラを係合位置に保持す
    る電磁力をオフにする解放制御手段と、 少なくとも非係合クラッチの係合が完了するまでの期
    間、前記既係合クラッチのローラを係合位置に保持可能
    なトルクを、前記出力軸または駆動軸に付加するよう前
    記電動機を制御する電動機制御手段と、 前記非係合クラッチを係合させる非係合クラッチ制御手
    段とを備えるハイブリッド車両。
  15. 【請求項15】 第1回転軸と、該第1回転軸と同心円
    状に配置された中空の第2回転軸との係合および切り離
    しを行うローラクラッチであって、 前記第1回転軸の外周面と、前記第2回転軸の内周面と
    の間に形成される擬楔状空間内に移動可能に備えられた
    ローラと、 電磁力の作用によって吸着し、前記第1回転軸と第2回
    転軸との間で摩擦力によるトルク伝達を可能とする摩擦
    係合器と、 該電磁力を生じさせる電磁石と、 該摩擦係合器に連結され、前記ローラを保持する保持器
    と、 前記電磁石に印加される電圧を制御することによって、
    クラッチを係合させる電圧制御手段とを備え、 該電圧制御手段は、 前記ローラが非係合位置に保たれる範囲で前記摩擦力を
    作用させる同期電圧を印加する同期制御手段と、 前記同期制御手段の実行によって前記第1回転軸と第2
    回転軸の回転数差が所定の係合許容条件を満足する場合
    に前記ローラを係合位置に移動可能な電圧を印加する係
    合制御手段とを有するローラクラッチ。
  16. 【請求項16】 請求項15記載のローラクラッチであ
    って、 前記電圧制御手段は、前記同期制御手段に先立って、前
    記同期電圧よりも高い電圧を印加する初動制御手段を備
    えるローラクラッチ。
  17. 【請求項17】 請求項16記載のローラクラッチであ
    って、 前記電圧制御手段は、前記第1回転軸および第2回転軸
    のうち動力の伝達先となる回転軸の回転数変化またはト
    ルク変化に基づいて前記初動制御手段から前記同期制御
    手段への移行を制御するローラクラッチ。
  18. 【請求項18】 請求項15記載のローラクラッチであ
    って、 前記同期制御手段は、前記第1回転軸および第2回転軸
    のうち動力の伝達先となる回転軸の回転数変化またはト
    ルクに基づいて前記同期電圧をフィードバック制御する
    ローラクラッチ。
  19. 【請求項19】 請求項18記載のローラクラッチであ
    って、 前記同期制御手段は、前記第1回転軸および第2回転軸
    が完全に非係合状態にある場合も含めて、前記同期電圧
    が所定値を超えない範囲で前記フィードバック制御を行
    うローラクラッチ。
  20. 【請求項20】 出力軸を有するエンジンと、動力を出
    力するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合さ
    れ電力のやりとりによって前記エンジンから出力された
    動力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置
    と、回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記
    出力軸と前記駆動軸とに切り替えて結合する2段クラッ
    チとを備えるハイブリッド車両の制御方法であって、 (a) 該車両の運転状態および電動機の結合状態に基
    づいて、前記電動機の結合先を切り替えるべきか否かを
    判定する工程と、 (b) 前記切り替えを行うべきと判定された場合に、
    前記2段クラッチを制御して、前記電動機の結合先を切
    り替える工程とを備え、 前記工程(b)は、 (b1) 前記2段クラッチのうち非係合側のクラッチ
    を、該クラッチに結合された2軸の回転状態の差違に応
    じて許容される範囲で係合させる工程と、 (b2) 前記2軸の回転状態が、前記非係合側のクラ
    ッチに関する所定の係合許容条件を満足するか否かを判
    断する工程と、 (b3) 該係合許容条件を満足すると判断された場合
    に、前記2段クラッチの係合状態の切り替えを実行する
    工程とを備える工程である制御方法。
  21. 【請求項21】 第1回転軸と、該第1回転軸と同心円
    状に配置された中空の第2回転軸との係合および切り離
    しを行うローラクラッチの係合状態を制御する制御方法
    であって、 該ローラクラッチは、 前記第1回転軸の外周面と、前記第2回転軸の内周面と
    の間に形成される擬楔状空間内に移動可能に備えられた
    ローラと、 電磁力の作用によって吸着し、前記第1回転軸と第2回
    転軸との間で摩擦力によるトルク伝達を可能とする摩擦
    係合器と、 該電磁力を生じさせる電磁石と、 該摩擦係合器に連結され、前記ローラを保持する保持器
    と、 前記電磁石に印加される電圧を制御することによって、
    クラッチを係合させる電圧制御手段とを備えるローラク
    ラッチであり、 (a) 前記ローラが非係合位置に保たれる範囲で前記
    摩擦力を作用させる同期電圧を印加する工程と、 (b) 前記工程(a)の実行によって前記第1回転軸
    と第2回転軸の回転数差が所定の係合許容条件を満足す
    る場合に前記ローラを係合位置に移動可能な電圧を印加
    する工程とを備えるローラクラッチの制御方法。
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