JP3408504B2 - 引張試験機のチャッキング装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は引張試験機のチャッ
キング装置にかかり、試験片の破断後も残存試験片がチ
ャック爪から離れずに元の位置に戻る型式のものに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】図４に示すような、テーパー型チャック
爪２０１を摺動して引張用の試験片２０２をチャックす
る方式が、多用されている。この型式のものは、試験片
２０２に引張り荷重が加わると相対するチャック爪２０
１同士が、チャックヘッド２０３の斜面２０４を摺動し
つつ互いに近づいて、試験片２０２を更に緊く締め付け
るようになっている。この場合、試験片２０２の寸法に
よりチャック爪２０１の飛出摺動量Ｌ′の値が大きく変
動することが多い。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記の型式の場合、チ
ャック爪２０１の飛出摺動量Ｌ′の値が大きく変動する
と、チャック位置が不安定となり易い。特にチャック爪
２０１の下端部がチャックの摺動する斜面２０４より大
きく飛び出した場合に、チャック爪２０１が折損した
り、摺動面を損なうことが多々ある。また、引張破断時
に試験片２０２がチャック爪２０１内より脱落し、更に
は飛散して、危険な場合もある。また破断後に斜面２０
４に圧接したチャック爪２０１を上方に復元するために
手動、電動または油圧式のチャック爪引き上げ装置２０
５を必要とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明にかかる引張試験
機のチャッキング装置は一対のスライド式のチャックホ
ルダーを同一直線上で同時に接近離別自在に配設し、該
チャックホルダーの対向面に支持したチャック爪により
試験片を平行にチャックするチャッキング装置を前提と
する。該チャックホルダーは該チャック爪をチャック時
点の位置に戻すための単板バネを備えている。該チャッ
クホルダーとチャックヘッドの受圧部に、ギャップを保
って２個のバネホルダーを対設し、両バネホルダー間に
チャックが終了しかつ該バネホルダー同士が密着した状
態で一定の予圧でチャック爪を押圧する予圧バネを渡設
する。そして、該試験片のチャック状態を引張破断後も
保つようにする。

【０００５】相対するチャック爪間に試験片を差し入
れ、押出しねじを回転する。チャックホルダーがスライ
ドして進出し、両チャック爪が試験片に当たってこれを
仮に挟持する。更に押出しねじを回転すると、チャック
ホルダーは進出できないので押出しねじがチャックホル
ダーから抜け出し、相対するバネホルダーは両者間のギ
ャップを狭めながら近づいて遂には接触し、この時点で
予圧バネは所定の予圧を保つ。一対のバネホルダーはギ
ャップがゼロになった以降は相対位置が不変なので、予
圧バネにそれ以上の過負荷は作用せず、変形したり、破
損したりしない。

【０００６】引張試験の進行で試験片が破断すると、反
動でチャック爪相互が離れる方向へ移動しようとする。
然しながらチャックホルダーには押付け予圧バネによる
予圧が与えられているので、チャック爪相互間が広がる
ことが無く、残存試験片は依然としてチャック爪間に挾
持される。従って、残存試験片が落下したり、飛散した
りすることがなく、安全な引張り試験作業を行え、ま
た、チャック爪の破損や、チャック爪とチャックホルダ
ーの摺動面の損傷も防げる。また、試験片はチャックホ
ルダーの摺動により把握されるから、引張り荷重の上昇
に伴ってチャック爪の下方への飛出摺動量は僅少であ
る。そのため、単板バネという極めて簡単な手段によっ
て、破断後にチャック爪を自動的にかつ試験片を一定の
圧力（予圧）で保持したまま元の位置に戻せる。

【０００７】該チャックホルダーは押出しネジと螺合
し、該押出しネジの回転シャフトと駆動ギヤーは過負荷
防止用のトルクリミッターを介して導結されていてもよ
い。この場合、チャック時の締付け力はトルクリミッタ
ーにより制限され、過負荷によって駆動装置や電動機等
の駆動源が損傷するのを保護する。

【０００８】

【発明実施の形態】図１は本発明にかかる引張試験機本
体の概要を示す一部切欠正面図で、下部チャックヘッド
１０４はチャックホルダー２を省略し、かつ右側部分で
は昇降用ネジ１０５を主体に表示し、左側部分では押上
げロッド１０７を主体に表示してある。

【０００９】１０１はベース、１０２は主ラム・シリン
ダー、１０３はテーブル、１０４は下部チャックヘッ
ド、１０５は下部チャックヘッド１０４の昇降用ネジで
ベース１０１から起立してテーブル１０３を緩通し、下
部チャックヘッド１０４に設けた定位置回転の駆動ギヤ
１０６と係合している。

【００１０】１０７は上側のチャックヘッド１を押上げ
るための押上げロッドで、テーブル１０３から起立して
下部チャックヘッド１０４を緩通し、上端でチャックヘ
ッド１を支持している。

【００１１】図２は本発明にかかる引張試験機チャッキ
ング装置の具体例を示すチャック前の正面図で、一部を
切欠し、かつ右側の大部分を省略してある。図３は同じ
くチャック後を示してある。

【００１２】図１乃至図３を参照して、１は既に述べた
通りチャックヘッドである。Ｔは試験片で、Ｔ’は破断
面、Ｔ１とＴ２は標点ポンチで両標点ポンチ間が引張試
験の標点距離となっている。

【００１３】２、２は一対のスライド式のチャックホル
ダーで、チャックヘッド１に同一直線上で設けられた案
内溝３、３に各別に摺動自在にかつ同時に接近離別自在
に収容され、それぞれチャック方向の先端の傾斜面４で
チャック爪５の傾斜面６と接して、これを支持するよう
になっている。チャックホルダー２はチャック爪５をチ
ャック時点の位置に戻すための単板バネ１４を備えてい
る。

【００１４】７は予圧バネで、スライド式のチャックホ
ルダー２とチャックヘッド１の受圧部８にギャップｇを
保って対設した２個のバネホルダー９、９間に、渡設さ
れる。この予圧バネ７は、試験片Ｔのチャック時にバネ
ホルダー９、９同士が密着することにより、一定の圧力
以上の負荷を受けることがなく、損傷したりしない。そ
してこの試験片に一定の予圧（圧力）を与えるようにな
っている。

【００１５】相対するチャック爪５、５間に試験片Ｔを
差し入れ、通常のように左右シンクロ駆動機構Ｓにより
チャックホルダー２、２をスライドさせると、試験片Ｔ
が両チャック爪５、５間に挾持される。各チャックホル
ダー２とチャックヘッド１の間に押付け用の予圧バネ７
が介装されており、チャック爪５、５による挾持力に加
え、これらの予圧バネ７により一定の圧力が予圧として
試験片Ｔに与えられている。

【００１６】引張試験の進行で試験片Ｔが破断すると、
反動でチャック爪５、５相互が離れる方向へ移動しよう
とする。然しながら、チャックホルダー２には予圧バネ
７による予圧が与えられているので、チャック爪５、５
相互間が広がることがなく、残存試験片は依然としてチ
ャック爪５、５間に挾持される。従って、残存試験片が
落下したり、飛散したりすることがなく、安全な引張り
試験作業を行える。また、チャック爪５は移動しないの
で、チャック爪５が破損したり、チャック爪５とチャッ
クホルダー２の摺動面が損傷したりすることもない。試
験片Ｔはチャックホルダー２の摺動により把握されるか
ら、引張り荷重の上昇に伴ってチャック爪５の下方への
飛出摺動量Ｌは僅少である。そのため、単板バネ１４と
いう極めて簡単な手段によって、破断後にチャック爪５
を自動的にかつ残存試験片を一定の圧力（予圧）で保持
したまま元の位置に戻せる。

【００１７】チャックホルダー２は押出しネジ１０と螺
合し、この押出しネジ１０の回転シャフト１１と駆動ギ
ヤー１２は過負荷防止用のトルクリミッター１３を介し
て導結されている。こうすると、チャック時の締付け力
はトルクリミッター１３により制限され、過負荷によっ
て駆動装置や電動機等の駆動源が損傷するのを保護す
る。

【００１８】

【発明の効果】本発明によれば、チャックホルダーはチ
ャック爪をチャック時点の位置に戻すための単板バネを
備え、かつチャックホルダーとチャックヘッドの受圧部
にギャップを保って２個のバネホルダーを対設し、両バ
ネホルダー間に予圧バネを渡設したので、試験片のチャ
ック時、バネホルダー同士の密着で予圧バネに一定の圧
力以上の負荷がかかるのを防止でき、従って予圧バネの
損傷を防げ、試験片に一定の予圧を与えられるので、引
張破断後もチャック爪は移動せず、チャック爪が破損し
たり、チャック爪とチャックホルダーの摺動面が損傷し
たりすることがなく、残留試験片の脱落飛散の危険もな
く、破断伸びを測定する場合、標点ポンチ間の距離の測
定に際し、上下破断面の突き合わせを、上下破断片をチ
ャックしたまま容易に行え、チャック爪の飛出摺動量が
僅少なので、簡単な単板バネを用意するだけで破断後の
チャック爪上げが行え、特別なチャック爪の昇降用装置
は不要で、製作価格を低下し、又操作性も大幅に容易に
することができる。

【００１９】請求項２によれば、押出ネジシャフトに設
けられたトルクリミッターにより、チャッキング時にお
いてチャック爪に一定の圧力以上の圧力が加わるのを制
限でき、これにより駆動装置及び駆動源（電動機）を保
護できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用される引張試験機本体の概要を示
す一部切欠正面図で、左側と右側では表示内容を一部変
えてある。

【図２】本発明にかかる引張試験機のチャッキング装置
の具体例を示すチャック前の正面図で、一部を切欠し、
かつ右側の大部分を省略してある。

【図３】図２と同様の図で、チャック後の状態を示す。

【図４】図４はテーパー型チャック爪を摺動して引張用
の試験片をチャックする従来型の概略正面図である。

【符号の説明】

１ チャックヘッド ２ チャックホルダー Ｔ 試験片 ７ 予圧バネ ｇ ギャップ ９ バネホルダー １０ 押出しネジ １１ 回転シャフト １２ 駆動ギャー １３ トルクリミッター １４ 単板バネ

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平９−264827（ＪＰ，Ａ) 特開 昭50−62679（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−167433（ＪＰ，Ａ) 特開 昭52−17075（ＪＰ，Ａ) 実開 平６−39307（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭50−3577（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−35251（ＪＰ，Ｕ) 登録実用新案3003371（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G01N 3/00 - 3/62 ＪＩＣＳＴファイル（ＪＯＩＳ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一対のスライド式のチャックホルダー
   (2)を同一直線上で同時に接近離別自在に配設し、該チ
   ャックホルダー(2)の対向面に支持したチャック爪(5)に
   より試験片(T)を平行にチャックするチャッキング装置
   において、該チャックホルダー(2)は該チャック爪(5)を
   チャック時点の位置に戻すための単板バネ(14)を備えて
   おり、該チャックホルダー(2)とチャックヘッド(1)の受
   圧部(8)に、ギャップ(g)を保って２個のバネホルダー
   (9,9)を対設し、両バネホルダー(9,9)間にチャックが終
   了しかつ該バネホルダー(9,9)同士が密着した状態で一
   定の予圧でチャック爪(5)を押圧する予圧バネ(7)を渡設
   し、該試験片(T)のチャック状態を引張破断後も保つよ
   うにしたことを特徴とする引張試験機のチャッキング装
   置。
2. 【請求項２】 該チャックホルダー(2)は押出しネジ(1
   0)と螺合し、該押出しネジ(10)の回転シャフト(11)と駆
   動ギヤー(12)は過負荷防止用のトルクリミッター(13)を
   介して導結されている請求項１に記載の引張試験機のチ
   ャッキング装置。