JP3407612B2 - 環状ゴム積層金属板 - Google Patents

環状ゴム積層金属板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、環状ゴム積層金属
板に関する。更に詳しくは、積層ゴム自体の厚さを部分
的に変えて加硫成形し得る環状ゴム積層金属板に関す
る。
【0002】
【従来の技術】本出願人は先に、金属板の片面または両
面にフェノール樹脂とニトリルゴムコンパウンドからな
るプライマー層およびニトリルゴムコンパウンドから形
成された加硫ゴム層を順次積層させてなり、プライマー
層形成および加硫ゴム層形成に用いられるニトリルゴム
コンパウンドとして、ニトリルゴム、これに対して20重
量%以上の白色充填剤(けい酸カルシウム、炭酸カルシウ
ム、シリカ等)、カーボンブラック、酸化亜鉛および有
機過酸化物を含有するゴムコンパウンドが用いられたゴ
ム積層金属板を提案している(特開平6-335,990号公
報)。
【0003】この提案されたゴム積層金属板は、耐不凍
液性にはすぐれているものの、不凍液、エンジンオイ
ル、燃料ガス等の洩れを防止するために、シール部の厚
さを他の加硫ゴム部分よりも厚くすることが製造コスト
面で難かしく、そのため金属板自身に凹凸を付けること
により、洩れの防止を図っている。
【0004】しかるに、このゴム積層金属板をエンジン
周りのガスケットなどとして用いる場合、エンジンの形
状によっては金属板の凹凸の大きさや高さを変えてもシ
ールできない場合があり、積層ゴム層自体の厚さを部分
的に変えて加硫成形し得るようなものが求められてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、一定
形状に打ち抜いた金属板の片面または両面に積層ゴム層
を設けたゴム積層金属板であって、積層ゴム層の厚さを
部分的に変えて加硫成形することができ、それをガスケ
ットなどとして用いたときシール性能を確保し得るもの
を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、
複合型クロメート処理された穿孔金属板上に、ノボラッ
ク型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂を
接着性成分とする接着剤から形成された接着剤層を形成
させた後、天然シリカおよび合成含水シリカの少くとも
一種を充填剤として含有する過酸化物架橋水素化ニトリ
ルゴム層を環状に形成させた環状ゴム積層金属板によっ
て達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】金属板としては、一般にSUS301、
SUS304、SUS430等のステンレス鋼板が用いられ、それら
をリング状に打ち抜いた穿孔金属板が、好ましくはショ
ットブラスト等の方法で表面を粗面化した後、アルカリ
脱脂した上で、シリカ、リン酸化合物およびクロム酸を
含む複合型クロメート処理剤による化学的表面処理が行
われる。
【0008】複合型クロメート処理剤の塗布量(目付量)
は、約20〜100mg/m2、好ましくは約40〜80mg/m2であ
り、これより少ない塗布量では不凍液浸漬後の積層ゴム
層の接着性が低下し、一方これより多い塗布量では金属
板との初期接着性が低下するようになる。
【0009】片面または両面が複合型クロメート処理さ
れた穿孔金属板上には、ノボラック型フェノール樹脂お
よびレゾール型フェノール樹脂を接着性成分とする接着
剤がアルコール、ケトンまたはこれらの混合溶媒、好ま
しくはメチルエチルケトン溶液などとして塗布され、片
面厚さ約1〜10μm、好ましくは約2〜5μmの接着剤層を
形成させる。
【0010】ノボラック型フェノール樹脂は、フェノー
ル類とホルムアルデヒドとを約0.1〜1.0のモル比で、塩
酸、しゅう酸等の酸性触媒の存在下で反応させることに
よって得られたものであり、フェノール類としては、例
えばフェノール、m-クレゾール、m-クレゾールとp-クレ
ゾールとの混合物、ビスフェノールA等が用いられる。
本発明においては、融点が約60〜170℃、好ましくは約1
00〜150℃の室温で固体のものであって、アルコール、
ケトン等の有機溶媒に可溶性のものが用いられる。
【0011】また、レゾール型フェノール樹脂は、フェ
ノール類とホルムアルデヒドとを1〜3程度のモル比で、
アルカリ金属またはマグネシウムの水酸化物等の塩基性
触媒の存在下で反応させることによって得られる。その
際、フェノール類としては、例えばフェノール、m-クレ
ゾールとp-クレゾールの混合物、p-第3ブチルフェノー
ル、p-フェニルフェノール、ビスフェノールA等のフェ
ノール性水酸基に対してo-位、p-位またはo,p-位に2個
または3個の置換可能な核水素原子を有するものであれ
ば、任意のものを用いることができる。本発明において
は、室温で液状(分子量約200〜1000)であり、アルコー
ル、ケトン等の有機溶媒に可溶性のものが用いられる。
【0012】ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型
フェノール樹脂とは、前者が約40〜90重量%、好ましく
は約50〜80重量%に対して、後者が約60〜10重量%、好ま
しくは約50〜20重量%の割合で用いられる。前者の割合
がこれより少ないと、ゴムとの初期接着強度が低下し、
一方これより多い割合で用いると、温水や高温不凍液中
に浸漬したとき、接着剤層に剥れを生ずるようになる。
【0013】接着剤中には、これらのフェノール樹脂の
ための硬化剤として、これらの合計量に対して約0.5〜5
重量%の割合でヘキサメチレンテトラミンが添加されて
用いられる。添加量がこれより少ないと、接着剤層の耐
熱性が低下するようになり、一方これより多い割合で添
加されると、ゴムの加熱硬化時にガス発生量が多くなる
傾向がみられる。
【0014】かかる接着剤から形成された接着剤層上に
は、天然シリカおよび合成含水シリカの少くとも一種を
充填剤として含有する過酸化物架橋水素化ニトリルゴム
層が環状に形成される。
【0015】水素化ニトリルゴムとしては、約30〜50モ
ル%のアクリロニトリルと約70〜50モル%のブタジエンと
の共重合ゴムの水素化物であって、不飽和結合量が20%
以下、好ましくは10%以下のものが用いられ、これは一
般に用いられている有機過酸化物による架橋が可能であ
り、架橋に際してはトリアリルイソシアヌレート、トリ
アリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタ
クリレート等の多官能性不飽和化合物を架橋助剤として
併用することが好ましい。
【0016】このようにして過酸化物架橋される水素化
ニトリルゴムコンパウンド中には、一般的に用いられて
いるカーボンブラックに加えて、天然シリカおよび合成
含水シリカの少くとも一種が水素化ニトリルゴム100重
量部に対して約20重量部以上、好ましくは約40〜80重量
部程度が添加されて用いられる。これより少ない添加量
では、初期接着性が低下したり、高温不凍液中への浸漬
時にゴム層の剥れを生ずるようになり、一方これより多
い割合で用いられると、ゴム硬度が高くなって、ゴム弾
性が失われるようになる。
【0017】後者の合成含水シリカは、けい酸ナトリウ
ムを硫酸で分解させ、ロ過、水洗、乾燥後、粉砕および
分級して得られるものであり、一般式SiO2・nH2Oで表わ
され、その内のSiO2は約80〜95重量%であって残りは結
合水を含み、表面にシラノール基Si-OHを有していてア
ルカリ性を呈する。そして、その比表面積(窒素吸着法
による)が約20〜200m2/g、好ましくは約40〜100mg/gの
ものが用いられる。一方、前者の天然シリカは、含水け
い酸アルミニウムXSiO2・Al2O3・YH 2 O(SiO2は約60〜70重
量%であって残りは付着水分、結合水を含む)を主成分と
しており、その比表面積が約5〜100m2/g、好ましくは約
10〜80m2/gの市販品がそのまま用いられる。比表面積が
これより小さいものは、接着剤との初期接着性が低く、
また高温不凍液中への浸漬でゴム層の剥れが生じ易くな
り、一方これより大きい比表面積のものは、ゴム中への
分散性に欠けるようになる。
【0018】以上の各成分を含有する水素化ニトリルゴ
ムコンパウンドは、インターミックス、ニーダ、バンバ
リーミキサ、オープンロール等を用いて混練した後、接
着剤層を形成させた金属板上に環状に貼り付け、約150
〜200℃で約3〜60分間射出成形機、圧縮成形機、加硫プ
レス等で圧縮加硫し、次いで必要に応じて約120〜200℃
で約1〜24時間程オーブン加硫することにより、環状加
硫ゴム層を穿孔金属板上に形成させる。その際、凹凸を
付けた成形金型を用いることにより、環状加硫ゴム層自
体の厚さを部分的に変えることができる。
【0019】
【発明の効果】本発明に係る環状ゴム積層金属板は、エ
ンジン周りの不凍液、エンジンオイル、燃料ガス等のシ
ール部品として有効に使用することができ、特にエンジ
ン周りのガスケットとして組み込まれて用いた場合、高
温の不凍液浸漬による積層ゴム層の剥れ防止および剥れ
による不凍液の洩れ防止に効果的である。
【0020】このように、この環状ゴム積層板は、不凍
液浸漬時の金属とゴム層との接着性にすぐれているばか
りではなく、積層ゴム層自体の厚さを部分的に変えて加
硫成形することもできるので、それをガスケットなどと
して用いたときのシール性能が確保され、また組み込み
性も改善されるという効果をも奏する。
【0021】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0022】実施例1 厚さ0.3mmの穿孔SUS304ステンレス鋼板(内径10mm、外径
20mm)の表面をショットブラストで粗面化し、アルカリ
脱脂処理した後、シリカ、リン酸化合物およびクロム酸
を含む複合型クロメート処理剤を50mg/m2の塗布量で塗
布した。この表面化学処理金属板上に、 クレゾール変性ノボラック型フェノール樹脂(融点110℃) 70重量部 液状レゾール型フェノール樹脂(分子量380) 30 〃 ヘキサメチレンテトラミン 4 〃 メチルエチルケトン 900 〃 よりなる接着剤を塗布し、片面厚さ5μmの接着剤層をそ
の両面に形成させた。
【0023】この接着剤層形成穿孔金属板上に、下記配
合組成の水素化ニトリルゴムコンパウンドを環状に貼り
付け、180℃で10分間プレス加硫して、環状の加硫ゴム
層をその両面側に形成させた。この環状加硫ゴム層の幅
は、穿孔金属板の中心から内径13mm、外径16mmの位置に
あり、その厚さは0.8mmであって、幅方向中央部分は1mm
の高さに盛り上がっている。 水素化ニトリルゴム(日本ゼオン製品ゼットポール2020L) 100重量部 MTカーボンブラック 40 〃 天然シリカ 20 〃 合成含水シリカ 20 〃 炭酸カルシウム 30 〃 2-メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩 2 〃 トリアリルイソシアヌレート 4 〃 1,3-ビス(第3ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン 4 〃
【0024】実施例2 実施例1において、合成含水シリカを用いずに、天然シ
リカ量を50重量部に変更した。
【0025】実施例3 実施例1において、天然シリカを用いずに、合成含水シ
リカ量を30重量部に変更した。
【0026】比較例1 実施例において、接着剤としてフェノール系接着剤(ロ
ードファーイースト製品ケムロック205)50重量部をメチ
ルエチルケトン100重量部に溶解させたものが用いら
れ、また水素化NBRコンパウンドには天然シリカおよび
合成含水シリカが用いられなかった。
【0027】比較例2 比較例1において、金属板として複合型クロメート処理
が施されなかった穿孔SUS304ステンレス鋼板が用いられ
た。
【0028】比較例3 実施例1において、フェノール系接着剤(ケムロック205)
50重量部をメチルエチルケトン100重量部に溶解させた
ものが用いられた。
【0029】比較例4 実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンドに
は天然シリカおよび合成含水シリカが用いられなかっ
た。
【0030】比較例5 実施例1において、水素化ニトリルゴムコンパウンドの
代りに、下記配合組成のニトリルゴムコンパウンドが用
いられた。 ニトリルゴム(日本合成ゴム製品N235S) 100重量部 MTカーボンブラック 60 〃 天然シリカ 20 〃 合成含水シリカ 20 〃 炭酸カルシウム 30 〃 酸化亜鉛 5 〃 老化防止剤(精工化学製品ノンフレックスRD) 2 〃 トリアリルイソシアヌレート 2 〃 1,3-ビス(第3ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン 2.5 〃
【0031】以上の実施例および各比較例で得られた
環状ゴム積層金属板について、160℃の50%LLC溶液中に2
00時間全浸漬したときのゴム残率を測定すると、実施
例では100%であったが、各比較例ではいずれも0%であっ
た。また、150℃、500時間の空気加熱老化試験を行な
い、積層環状ゴムの剥れの有無を目視で調べると、各実
施例および比較例1,3,4では剥れが認められなかった
が、比較例2,5では大きな剥れがみられた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−265764(JP,A) 特開 平8−302323(JP,A) 特開 平4−189130(JP,A) 特開 平6−306211(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B29C 35/00 - 35/18

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複合型クロメート処理された穿孔金属板
    上に、ノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フ
    ェノール樹脂を接着性成分とする接着剤から形成された
    接着剤層を形成させた後、天然シリカおよび合成含水シ
    リカの少くとも一種を充填剤として含有する過酸化物架
    橋水素化ニトリルゴム層を環状に形成させてなる、積層
    ゴム層自体の厚さを部分的に変えて加硫成形した環状ゴ
    ム積層金属板。
  2. 【請求項2】 ガスケットとして用いられる請求項1記
    載の環状ゴム積層金属板。
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