JP3407041B2 - セレン汚染土壌用洗浄剤並びに安定化剤及びこれらを用いたセレン汚染土壌修復方法 - Google Patents

セレン汚染土壌用洗浄剤並びに安定化剤及びこれらを用いたセレン汚染土壌修復方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有害化学物質の不
適切な取扱い、不法投棄、鉱物資源の開発利用などの行
為の結果として発生しうるセレンで汚染された土壌の修
復に関するものであり、更に詳しくは、セレンで汚染さ
れた土壌からセレンを高効率で除去することにより、セ
レンによる環境負荷を大幅に減らしてリスクを軽減する
と共に、微量に残留するセレンを安定化してその溶出を
抑制して土壌環境基準を満足し、土壌の再利用を可能に
するセレン汚染土壌洗浄剤、安定化剤及びこれらを用い
たセレン汚染土壌の修復方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セレンは栄養学的には必須な金属元素で
あり、食品中に0.05〜0.2ppmのセレンが存在
することが必要とされている。(文献:和田攻「金属と
ヒト」p134〜144、朝倉書店1986年) しかし、食品中に0.5ppm以上のセレンが存在する
と中毒の危険性があり、例えばセレンで汚染された土壌
で栽培した農作物等にはセレンが濃縮され、これを継続
的に摂取するとセレン中毒が発生するため、セレンを含
む土壌は国の土壌環境基準の対象に指定されている。
【0003】ところで、環境庁の報告資料「平成10年
度土壌汚染事例及び対応状況に関する調査結果の概要」
(環境庁水質保全局土壌農薬課 平成12年3月22
日)によると昭和50年度〜平成10年度に報告された
土壌汚染事例の総数は累積で292件であり、そのうち
13件のセレン汚染土壌の事例が報告されている。こう
した汚染土壌については、これまでは掘削除去、封じ込
め、飛散防止、セメントによる固形化・不溶化、最終処
分場への埋立処分といった対策がとられてきた。
【0004】しかしこれらの方法では、セレンは全量が
そのまま土壌中に残留したままであるため、長期間にわ
たってその対策効果が持続するものではない。風雨や地
下水の浸透などによって土壌中のセレンが溶出して、二
次的環境汚染を引き起こすことが心配される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な技術的背景の下でなされたものであって、第一の目的
は、セレン汚染土壌からセレンを効率的に抽出除去でき
るセレン汚染土壌洗浄剤を提供することにあり、第二の
目的は、セレン汚染土壌中のセレンを効率的に安定化・
不溶化し得るセレン汚染土壌安定化剤を提供することに
あり、第三の目的は、洗浄処理によってセレンを汚染土
壌から効率よく抽出除去することにより、セレンによる
環境負荷を大幅に減らしてそのリスクを軽減し得るセレ
ン汚染土壌の洗浄方法を提供することにあり、第四の目
的は、該洗浄処理後においても残留する微量セレンを不
溶化しその溶出を最低限に抑制して土壌の再利用を可能
ならしめるセレン汚染土壌の修復方法を提供することに
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
達成するために、数多くの酸によるセレン汚染土壌の洗
浄処理の有効性について、試行錯誤により鋭意検討した
結果、意外にも硫酸及びリン酸のみが特異的な作用・効
果を発現すること、及びランタン化合物、セリウム化合
物、及び鉄化合物が土壌中のセレンの安定化(不溶化)
効果に極めて有効であることを見出し、本発明を完成す
るに至った。
【0007】すなわち、本発明によれば、第一に、硫酸
水溶液及びリン酸水溶液から選ばれる少なくとも一種の
水溶液からなるセレン汚染土壌洗浄剤が提供される。第
二に、ランタン塩水溶液、セリウム(III)塩水溶液、
及び鉄(III)塩水溶液から選ばれる少なくとも一種の
水溶液からなるセレン汚染土壌安定化剤が提供される。
第三に、酸化ランタン、水酸化ランタン、酸化セリウム
(IV)、及び水酸化セリウム(IV)から選ばれる少なく
とも一種の酸化物からなるセレン汚染土壌安定化剤が提
供される。第四に、セレン汚染土壌を第一発明のセレン
汚染土壌洗浄剤で処理して、セレンを抽出除去すること
を特徴とするセレン汚染土壌洗浄方法が提供される。第
五に、第四発明のセレン汚染土壌洗浄方法で処理された
土壌に第二発明の安定化剤を添加混合し、更にアルカリ
で中和処理して土壌中のセレンを不溶化することを特徴
とするセレン汚染土壌修復方法が提供される。第六に、
第四発明のセレン汚染土壌洗浄方法で処理された土壌に
第三発明の安定化剤を添加混合し、土壌中のセレンを不
溶化することを特徴とするセレン汚染土壌修復方法が提
供される。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明者は、上記課題を達成する
ために、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、臭化水
素酸、フッ化水素酸、酢酸、過酸化水素などの数多くの
広く工業的に使用されている酸のセレン汚染土壌の洗浄
処理の有効性を、高いセレン抽出除去効果、洗浄処
理後の土壌自体の損傷の有無、耐久性、後処理の容
易さ、処理剤コストの節減、などを指標にして、鋭意
研究を重ねた結果、これらの中でも硫酸及びリン酸のみ
が他の酸と大きく異なり、汚染土壌中のセレンの洗浄剤
として極めて有効であることを知見した。
【0009】すなわち、本発明者は、硫酸、リン酸、塩
酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、酢
酸、過酸化水素、混酸(3:1 塩酸+硝酸)、混酸
(2:1硝酸+過塩素酸)の濃度を段階的に調節した水
溶液に、セレン汚染土壌を加え、20℃においてその土
壌洗浄効果についての考察実験を行った(実施例1;図
1)。その結果、濃度約10(w/v)%における各種の酸に
よるセレンの抽出除去効果は、硫酸は99%以上、リン
酸は87%以上の高いセレン除去率を示した。一方、非
常に強い酸である王水(塩酸+硝酸)でも88%以下で
あった。王水の場合、塩素や塩化ニトロシルなどの有毒
ガスが発生するため、土壌洗浄剤としては適さない。ま
た、その他の酸のセレン除去率はすべて70%以下であ
り、その効果は低いことが判明した。こうしたことか
ら、本発明者はセレン汚染土壌洗浄剤としては、硫酸及
びリン酸が最も適しているものと判断した。従って、こ
れらの酸でセレン汚染土壌を洗浄すると、土壌に損傷を
与えることなく、低廉な価格で、大部分のセレンを高い
抽出効率で除去することができ、セレンによる環境負荷
を大幅に減らしてリスクを軽減することができる。
【0010】本発明の土壌洗浄剤は通常水溶液の形態で
使用される。水溶液中の硫酸又はリン酸の濃度は処理対
象土壌のセレン汚染濃度にもよるが、通常10(w/v)%濃
度としておけば充分である。また、本発明の土壌洗浄剤
の使用量は、土壌中のセレン濃度と用いる洗浄剤の水溶
液濃度とを適宜勘案して決めればよいが、通常汚染土壌
1kg当たり10Lとしておけば充分である。
【0011】また、後記実施例2の結果の図2及び図3
に示すように、本発明に係る硫酸又はリン酸水溶液によ
る汚染土壌からのセレンの除去速度は反応初期において
非常に大きく、すみやかに平衡に到達するので、洗浄処
理時間は短時間で充分である。また、本発明に係る洗浄
剤処理による土壌成分のうちのシリカ及びカルシウムの
溶出量は数%以下であり、洗浄処理後の土壌は比較的安
定であることが分かる。
【0012】なお、アルミニウム、鉄、マグネシウムの
溶出はかかる酸洗浄処理により溶出するが、これらの成
分の溶出は、セレンの除去速度と比較して緩慢であるた
め、酸による洗浄を短時間で終了することにより土壌成
分の溶出を低く抑えることが可能である。これらのこと
から、本発明による汚染土壌の酸による洗浄処理は約1
時間とすることが望ましい。
【0013】本発明に係る硫酸水溶液又はリン酸水溶液
からなる洗浄剤が、このように優れたセレン抽出除去機
能を有する理由は現時点では定かではないが、これらの
酸が土壌中のセレン吸着能を有する遊離酸化アルミニウ
ム或いは遊離酸化鉄に作用してそれらを溶解させること
により、吸着されていたセレンも溶出することによるも
のと推定される。
【0014】本発明に係る土壌洗浄剤を用いて、セレン
汚染土壌を処理するには、該セレン汚染土壌を掘削など
の手段で地中から取り出し、所定の洗浄装置に搬入した
後、洗浄剤である硫酸水溶液又はリン酸水溶液を適量添
加し、混合攪拌し、セレンを抽出し、ついで抽出された
セレンを含む洗浄液を回収する方法をとればよい。回収
した洗浄液は、セレン濃度及び溶解土壌成分の濃度が所
定値に達するまで循環使用できる。
【0015】本発明においては、前記した土壌洗浄剤を
用いることにより、セレン汚染土壌の特性に損傷を与え
ることなく、低廉な価格で、大部分のセレンを高い抽出
効率で除去することができるが、更に、洗浄後の土壌
に、ランタン塩水溶液、セリウム(III)塩水溶液、及
び鉄(III)塩水溶液から選ばれる少なくとも一種の水
溶液、あるいは酸化ランタン、水酸化ランタン、酸化セ
リウム(IV)、及び水酸化セリウム(IV)から選ばれる
少なくとも一種の酸化物からなるセレン汚染土壌安定化
剤を混合することにより、セレンによる環境負荷を更に
大幅に低減することができる。
【0016】すなわち、かかる安定化剤を利用すること
により、セレン汚染土壌を修復しその土地、土壌の再利
用を可能にするために環境庁が定めた、「溶出セレン濃
度が土壌環境基準(0.01mg/L)以下にならなけ
ればならない」とする土壌環境基準(環境庁水質保全局
編「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針運用基
準」、133頁、平成11年3月8日大蔵省印刷局発
行)を満たすことが可能となる。
【0017】例えば、後記実施例3の結果の表3に示す
ように、硫酸水溶液又はリン酸水溶液で、参考例1の汚
染土壌を後記参考例2に従って2時間洗浄処理したとき
のセレン除去率は、それぞれ99.8%及び87.1%
であり、洗浄処理後も微量のセレンが土壌中に残留して
いる。そして、これらの酸で洗浄処理した後の土壌につ
いて溶出試験を行うと、それぞれ0.140及び0.1
32 mg/Lのセレンが溶出する。
【0018】しかし、該酸洗浄処理後の土壌を、ランタ
ン塩水溶液、セリウム(III)塩水溶液、又は鉄(III)
塩水溶液で処理し、ついでアルカリで中和し、土壌中の
セレンを不溶化させた土壌、あるいは該酸洗浄処理後の
土壌を酸化ランタン、水酸化ランタン、酸化セリウム
(IV)又は水酸化セリウム(IV)で処理し、土壌中のセ
レンを不溶化させた土壌は、その後の溶出試験を行って
も、セレンの溶出量は後記実施例3にみられるように、
極めて少なくなり前記環境基準を満足したものとなる。
【0019】本発明に係る安定化剤のうち、ランタン
塩、セリウム(III)塩、又は鉄(III)塩を用いて、土
壌中のセレンを安定化(不溶化)するには、汚染土壌を
上記の洗浄処理を行った後、該安定化剤水溶液を適量添
加し、混合かくはんし、アルカリで中和し、しばらく放
置した後、余分の水を脱水する方法をとればよい。
【0020】ランタン塩、セリウム(III)塩、及び鉄
(III)塩としては、具体的には塩化物、硝酸塩、硫酸
塩などを例示することができる。これらの安定化剤は通
常水溶液の形態で使用される。
【0021】水溶液中のランタン塩、セリウム(III)
塩、又は鉄(III)塩の濃度は処理対象土壌中の残留セ
レン濃度にもよるが、通常1当量濃度としておけば充分
である。また、これらの安定化剤の使用量は、土壌中の
残留セレン濃度を適宜勘案して決めればよいが、通常土
壌1kg当たり1Lとしておけば充分である。
【0022】また、本発明に係る安定化剤のうち、酸化
ランタン又は酸化セリウム(IV)を用いて、土壌中のセ
レンを安定化するには、汚染土壌に対して上記の洗浄処
理を行った後、安定化剤の適量を粉体のまま、もしくは
少量の水に懸濁させて添加し、混合攪拌し、しばらく放
置した後、余分の水を脱水する方法をとればよい。ま
た、酸化ランタン又は酸化セリウム(IV)の代わりに、
水酸化ランタン又は水酸化セリウム(IV)を用いてもよ
い。
【0023】また、これらの安定化剤の使用量は、土壌
中の残留セレン濃度と用いる安定化剤の水溶液濃度とを
適宜勘案して決めればよいが、通常土壌1kg当たり1
0〜20gとしておけば充分である。
【0024】本発明に係るセレン汚染土壌修復方法は要
約すれば、図4に示す通りである。即ち、セレンで汚染
された土壌を掘削して、所定の洗浄装置に搬入する。硫
酸又はリン酸水溶液の適量を加え、約1時間混合かくは
んする。次に、重力沈降法、遠心分離などにより固液分
離し、洗浄液は回収して循環使用する。但し、洗浄液中
のセレン或いは溶解成分の濃度が所定値以上になれば、
次の工程からの廃液と合わせる。洗浄処理した土壌は、
残留する酸を除去するために、適宜水洗する。洗液及び
前記の使用ずみ洗浄液は既存の水処理法により処理す
る。こうした酸洗浄により、汚染土壌中の大部分のセレ
ンを抽出除去して、環境リスクを軽減する。洗浄処理し
た土壌は、微量のセレンが残留しているため、次のいず
れかの安定化法でセレンを不溶化する。ひとつは、洗浄
処理した土壌に塩化ランタン、塩化セリウム(III)、
又は塩化鉄(III)水溶液を加えた後、中和する方法で
ある。もうひとつは、酸化ランタン又は酸化セリウム
(IV)の粉末もしくは懸濁液を添加混合する方法であ
る。こうして安定化処理を施した土壌は、環境庁が定め
る土壌環境基準を満足し、該土壌の再利用が可能とな
る。
【0025】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。なお、モデルセレン汚染土壌の調製は参考例1
により、また土壌洗浄実験は参考例2によった。
【0026】参考例1(モデルセレン汚染土壌の調製) 茨城県つくば市において採集した黒ボク土を1週間風乾
したのち、標準ふるいで粒径2mm以下の土壌をふるい
分けた。その1.5kgを5L容塩化ビニル製容器にと
り、25mMの亜セレン酸ナトリウム水溶液4.0Lを
加え、pHを約4に調節し、随時、しんとうさせながら
3カ月間処理して汚染させた。水相をろ別し、得られた
ろ過残渣を数回水洗した後風乾して、モデルセレン汚染
土壌を調製した。汚染土壌の特性及び化学組成はそれぞ
れ表1及び表2に示すとおりである。該汚染土壌のセレ
ン含有量は 47.2mmol/kg = 3,730m
g/kg (Seとして)であった。該土壌は日本の代
表的な土壌のひとつであり、有機質に富み弱酸性を示
す。また、遊離酸化アルミニウム及び遊離酸化鉄に富ん
でいるため、比較的高いセレン吸着容量を有するもので
ある。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】参考例2(土壌洗浄実験) 35mL容ポリカーボネート製遠心沈殿管に参考例1で
調製したセレン汚染土壌1gと洗浄剤水溶液25mLを
入れ、20℃に保持した恒温槽中でしんとう器にて横方
向(振幅10cm)に所定時間しんとうした。ついで、
冷凍機付き高速遠心機を用いて9,000rpmで20
分間遠心分離し、分離した上澄液を孔径0.45μmの
メンブレンフィルタでろ過した。得られたろ液につい
て、セレン濃度を水素化物発生原子吸光法により、また
アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、シリカ
濃度をICP発光分析法により測定した。
【0030】実施例1 セレン汚染土壌の洗浄処理の目的は、土壌中からセレン
をできるだけ除去して、セレンによる環境リスクを軽減
することである。この実施例では、広く工業的に使用さ
れている数多くの酸について、セレン汚染土壌に対する
洗浄効果を比較検討した。初濃度を段階的に変化させた
硫酸、リン酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、フ
ッ化水素酸、酢酸、過酸化水素、混酸(3:1塩酸+硝
酸)、混酸(2:1硝酸+過塩素酸)水溶液に参考例1
のセレン汚染土壌1gを加え、参考例2に従って6時間
洗浄処理を行った。その結果を図1に示す。なお、グラ
フの縦軸のセレン除去率は、水相のセレン溶出量の未処
理土壌中のセレン含有量に対する割合で示したものであ
る。図1において酸濃度約10(w/v)%における各種の酸
によるセレンの抽出除去効果を見てみると、硫酸>リン
酸>塩酸=混酸(塩酸+硝酸)>硝酸=混酸(硝酸+過
塩素酸)>臭化水素酸=フッ化水素酸>過塩素酸>過酸
化水素>酢酸 の順であった。即ち、硫酸及びリン酸は
87%以上の高いセレン除去率を示している。従って、
これらの酸のうち、高いセレン抽出除去効果、低い有害
性及び価格の点から、硫酸及びリン酸がセレン汚染土壌
の洗浄剤として最も適したものであり、これらの酸でセ
レン汚染土壌を洗浄して、セレンの大部分を抽出除去す
ることにより、セレンによる環境負荷を大幅に減らして
リスクを軽減することができることがわかる。
【0031】実施例2 9.4(w/v)%リン酸又は10.7(w/v)%硫酸水溶液50
0mLに参考例1のセレン汚染土壌20gを加え、マグ
ネチックスターラを用いて連続的にかくはんした。所定
時間ごとに該懸濁試料の約10mLをプラスチック製注
射筒を用いてとり、ただちに孔径0.45μmのメンブ
レンフィルタでろ過した。得られたろ液について、セレ
ン濃度を水素化物発生原子吸光法により、またアルミニ
ウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、シリカ濃度をI
CP発光分析法により測定した。得られた結果を図2及
び図3に示す。この結果から、いずれの酸による洗浄処
理においても、セレンの抽出除去は処理開始60分後に
はほぼ平衡に到達しており、汚染土壌の洗浄処理に要す
る時間は極めて短時間でよいことが分かる。また、土壌
成分のうちシリカ及びカルシウムの溶出量は数%以下で
あり、本発明による洗浄処理においては比較的安定であ
ることが分かる。一方、アルミニウム、鉄、マグネシウ
ムの溶出は、処理開始10時間後にはそれらの溶出率は
それぞれ、35〜40%、30〜40%、25%に達し
ている。しかし、これらの成分の溶出は、セレンの除去
速度と比較して緩慢であるため、酸による洗浄処理を短
時間で終了することにより、土壌成分の溶出を低く抑え
ることが可能である。
【0032】実施例3 9.4(w/v)%リン酸又は10.7(w/v)%硫酸25mLに
参考例1に示すセレン汚染土壌1gを加え、実施例1に
従って2時間洗浄処理した。処理後の土壌に少量の水を
加え水洗した。得られた洗浄土壌に1当量濃度の塩化ラ
ンタン、塩化セリウム(III)、塩化鉄(III)、又は塩
化カルシウム水溶液1mL及び水20mLを加え、十分
にかき混ぜた。0.1規定水酸化ナトリウム水溶液を用
いて、pH値が約7になるように中和した。一夜放置し
たのち遠心分離し、得られた残渣について溶出試験を行
った。一方、上記の安定化剤水溶液の代わりに、洗浄処
理を行った土壌に酸化ランタン、酸化セリウム(IV)、
水酸化鉄、水酸化カルシウム懸濁液を加え十分にかき混
ぜた。一夜放置したのち遠心分離し、得られた残渣につ
いて溶出試験を行った。その結果を表3に示す。硫酸又
はリン酸によるセレン除去率は、それぞれ99.8%及
び87.1%であり、洗浄処理後も微量のセレンが土壌
中に残留している。これらの酸で洗浄処理した後の土壌
について溶出試験を行うと、それぞれ0.140及び
0.132mg/Lのセレンが溶出している。しかし、
酸洗浄処理後の土壌に塩化ランタン、塩化セリウム(II
I)、又は塩化鉄(III)水溶液を添加混合し、更に前記
の金属塩を加水分解するために、水酸化ナトリウム水溶
液を用いてpH値が約7になるように中和し、一夜放置
した土壌について、その溶出試験を行った結果、セレン
の溶出量は、それぞれ、1.3ppb以下、9.6pp
b以下、及び8.9ppb以下となり、該安定化処理し
た土壌は前記土壌環境基準を満たすことが判った。一
方、凝集沈殿剤などとして広く使用されている塩化カル
シウムで処理したものは、いずれの場合も土壌環境基準
を満足せず、安定化効果は認められなかった。また、表
3から、硫酸又はリン酸で洗浄処理を行った土壌に適量
の酸化ランタン又は酸化セリウム(IV)を添加混合する
ことにより、セレンの溶出を大幅に抑制できることが認
められた。しかし、水酸化鉄(III)及び水酸化カルシ
ウムの添加は効果的ではなかった。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】本発明のセレン汚染土壌洗浄剤は、セ
レン抽出除去効果が高い、洗浄処理しても土壌自体を
損傷させない、耐久性に優れる、後処理が容易であ
る、コストが低廉である、などの多くの利点を有する
ものである。従って、これらの酸でセレン汚染土壌を洗
浄すると、土壌に損傷を与えることなく、低廉な価格
で、大部分のセレンを高い抽出効率で除去することがで
き、セレンによる環境負荷を大幅に減らしてリスクを軽
減することができる。また、本発明のセレン汚染土壌安
定化剤は、土壌中の微量のセレンを強く不溶化して、溶
出試験において土壌環境基準を満足する程度までセレン
の溶出を低く抑える機能をもつものであり、しかも安価
なものである。従って、本発明の土壌洗浄剤及び安定化
剤を用いた汚染土壌修復方法は、セレン汚染土壌からセ
レンを簡単に抽出除去することができ、セレンによる環
境負荷を大幅に軽減するとともに、土壌中に残留する微
量のセレンを安定化させて汚染土壌を確実に修復して該
土壌の再利用を可能ならしめるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】硫酸、リン酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、臭化水
素酸、フッ化水素酸、酢酸、過酸化水素、混酸(3:1
塩酸+硝酸)、混酸(2:1 硝酸+過塩素酸)によ
るセレン汚染土壌からのセレン除去効果の説明図。
【図2】硫酸水溶液によるセレン汚染土壌の洗浄処理に
おけるセレン除去率及び土壌成分溶出率の時間変化を表
す図面。
【図3】リン酸水溶液によるセレン汚染土壌の洗浄処理
におけるセレン除去率及び土壌成分溶出率の時間変化を
表す図面。
【図4】本発明に係る土壌洗浄剤及び安定化剤を用いた
セレン汚染土壌修復方法の概要説明図。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硫酸水溶液及びリン酸水溶液から選ばれる
    少なくとも一種の水溶液からなるセレン汚染土壌洗浄
    剤。
  2. 【請求項2】ランタン塩水溶液、セリウム(III)塩水
    溶液、及び鉄(III)塩水溶液から選ばれる少なくとも
    一種の水溶液からなるセレン汚染土壌安定化剤。
  3. 【請求項3】酸化ランタン、水酸化ランタン、酸化セリ
    ウム(IV)、及び水酸化セリウム(IV)から選ばれる少
    なくとも一種の酸化物からなるセレン汚染土壌安定化
    剤。
  4. 【請求項4】セレン汚染土壌を請求項1に記載のセレン
    汚染土壌洗浄剤で処理して、セレンを抽出除去すること
    を特徴とするセレン汚染土壌洗浄方法。
  5. 【請求項5】請求項4に記載のセレン汚染土壌洗浄方法
    で処理された土壌に請求項2に記載の安定化剤を添加混
    合し、更にアルカリで中和処理して土壌中のセレンを不
    溶化することを特徴とするセレン汚染土壌修復方法。
  6. 【請求項6】請求項4に記載のセレン汚染土壌洗浄方法
    で処理された土壌に請求項3に記載の安定化剤を添加混
    合し、土壌中のセレンを不溶化することを特徴とするセ
    レン汚染土壌修復方法。
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