JP6949621B2 - セレン含有土壌・岩石の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セレン含有土壌・岩石の処理方法に関する。
山岳トンネルの建設工事において掘削された土壌や泥岩・頁岩等の岩石から、土壌汚染対策法の溶出量基準(0.01mg/L)を超過する自然由来のセレンが検出されることがある。通常、土壌や岩石に含まれるセレンの全含有量値は0.5〜1mg/kg程度であり、雨水等によるセレンの溶出量は0.01〜0.05mg/L程度である。
基準値以上のセレンを含む土壌や岩石は、建設発生土として処分することはできず、汚染土壌として処分しなければならない。従来の処分方法として、指定された処分場に埋め立てることが行われているが、処分場が逼迫しているため、今後も同様の処分を続けることは難しいことが懸念される(非特許文献1,2参照)。
嘉門雅史・勝見武監修,土木研究所・土木研究センター・地盤汚染対応技術検討委員会編,建設工事で発生する自然由来重金属等含有土対応ハンドブック,「発刊にあたって」「監修の辞」, 大成出版社, 2015年 北岡幸,自然由来の重金属等に係る調査及び対策について,地球環境, Vol.15, No.1, p.23-30, 2010.
本発明者らが鋭意検討したところ、自然由来の土壌や岩石から溶出されるセレンの量は前述のように基準値を超過するが、適切な化学処理を行えば充分に低減できるレベルであると考えられた。
本発明は、土壌や岩石におけるセレン含有量を低減することが可能な、セレン含有土壌・岩石の処理方法を提供する。
[1] セレンが含まれる土壌又は岩石の粒子に、酸化剤を接触させ、セレンを含む抽出液を得る抽出工程を有することを特徴とするセレン含有土壌・岩石の処理方法。
[2] 前記土壌又は岩石が硫黄成分を含み、その硫黄成分と前記酸化剤との接触により硫酸が生成され、その硫酸によってセレンを抽出することを特徴とする[1]に記載のセレン含有土壌・岩石の処理方法。
[3] 前記土壌又は岩石においてセレンが固溶していることを特徴とする[1]又は[2]に記載のセレン含有土壌・岩石の処理方法。
[4] セレンが含まれる土壌又は岩石を破砕することによって前記粒子を得る破砕工程を有することを特徴とする[1]〜[3]の何れか一項に記載のセレン含有土壌・岩石の処理方法。
[5] 硫酸イオン及びセレン酸イオンを含む前記抽出液を得て、この抽出液に、バリウムイオンを添加して硫酸バリウムを生成し、遊離の硫酸イオンの濃度が低減した一次処理液を得る第一工程と、前記一次処理液をアカガネイトに接触させることにより、前記セレン酸イオンを前記アカガネイトに吸着させ、前記セレン酸イオンの濃度が低減した二次処理液を得る第二工程と、を有することを特徴とする[2]に記載のセレン含有土壌・岩石の処理方法。
本発明のセレン含有土壌・岩石の処理方法によれば、工事の掘削により生じたセレン含有土壌・岩石に含まれるセレン含有量を低減した浄化土を得ることができる。浄化土は従来の建設発生土と同様に処分することができる。
セレン含有土壌・岩石の処理に適用可能な処理システムの一例の模式図である。 セレン排水の処理に適用可能な水処理システムの一例の模式図である。 アカガネイトのトンネル構造を表す模式図である。 3種の酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンの吸着等温線である。 アカガネイトにおいて、硫酸イオンの吸着に伴って塩化物イオンの脱離が起こることを示す実験結果である。
《セレン含有土壌・岩石の処理方法》
本発明の第一態様は、セレンが含まれる土壌又は岩石の粒子に、酸化剤を接触させ、セレンを含む抽出液を得る抽出工程を有する、セレン含有土壌・岩石の処理方法である。
本処理方法において、セレンが含まれる土壌又は岩石を破砕することによって前記粒子を得る破砕工程を有していてもよい。
前記土壌は、岩石が風化して生成した粗粒又は粘土(粘っこい土)状の無機物、生物体に由来する有機物等などを含み、一般に土と呼ばれる。
前記岩石は、鉱物又はその混合物であり、金属成分、天然ガラス成分等を含んでいてもよい。本明細書において、土壌と岩石を合わせて土壌・岩石と記すことがある。
[破砕工程]
工事現場から排出される土壌・岩石の大きさは、通常数センチから数十センチの塊をなしていることが多い。これらの塊を前記破砕工程において細かい粒子にする。例えば、ジョークラッシャー、ロッドミル等の公知の破砕機を用いることによって、粒子の長径(粒子径)を10mm以下にすることが好ましく、5mm以下にすることがより好ましく、2mm以下にすることがさらに好ましい。
上記の粒子径以下に細かく砕くと、酸化剤によるセレンの抽出効率を高め、塊内部に残留するセレンの量を低減することができる。上記粒子径の下限値は特に限定されないが、過度に小さいと取り扱いや回収が難しくなるので、例えば10μm以上であることが好ましい。通常、公知の破砕機によって土壌・岩石を破砕した場合には、上限値の制御は比較的容易であるが、粒子径を一定にすることは難しい。このため、破砕工程によって得られる破砕物は、種々の粒子径の混合物となる。
なお、本明細書において、「破砕」の用語は「解砕」と同義である。
[抽出工程]
破砕工程で得た破砕物に含まれる前記粒子に酸化剤を接触させる方法としては、例えば、前記破砕物に酸化剤を含む溶液を滴下したり噴霧したりする方法、酸化剤の溶液に前記破砕物を投入する方法等が挙げられる。
酸化剤が前記粒子に接触すると、化学反応によって粒子からセレンが抽出される。つまり、粒子中に含まれるセレンが、粒子から遊離して、抽出液中に溶解又は分散する。抽出されるセレンは、セレン単体(金属セレン)であってもよいし、セレンを含む化合物であってもよい。
前記土壌・岩石がセレンを含む形態としては、遊離のセレン又はセレンを含む化合物が土壌・岩石に吸着した形態であってもよいし、土壌・岩石を構成する鉱物にセレン又はセレンを含む化合物が固溶した形態であってもよいし、鉱物を構成する元素として含まれる形態であってもよい。ここで、セレンが土壌・岩石を構成する鉱物中に固溶していることはEDS(エネルギー分散型X線分光器)またはXPS(X線光電子分光分析法)による元素分析の方法によって確認することができる。
セレンを構成元素とする鉱物としては、例えば、サークナイト(FeSe)、クルタ鉱(CuSe)、トログタライト(CoSe)、ペンローゼ鉱{(Ni,Co,Cu)Se}等が挙げられる。
前記土壌・岩石は、硫黄成分を含むことが好ましい。この硫黄成分が酸化剤と接触すると硫酸が生成し、さらに硫酸がセレンを溶出する。
硫黄成分を含む土壌・岩石としては、硫黄(S)の他、例えば、黄鉄鉱(FeS)、磁硫鉄鉱(Fe1−x;x=0.09〜0.17)、輝水鉛鉱(MoS)、黄銅鉱(CuFeS)、方鉛鉱(PbS)、ハウエル鉱(MnS)、ベース鉱(NiS)、カチエル鉱(CoS)、ラウラ鉱(RuS)、エルリッチマン鉱(OsS)、ビラマニン鉱{(Cu,Ni,Co,Fe)S}、福地鉱(CuFeS)、辰砂(HgS)等の硫化鉱物が挙げられる。
これらのうち、特に黄鉄鉱を含む土壌・岩石に含まれるセレンに対して、本方法によるセレン抽出効率が高いので好ましい。
前記酸化剤は、セレンを溶出可能な酸化剤であることが好ましく、例えば、過酸化水素、硝酸カリウム、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、及び過塩素酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。これらの好適な酸化剤を用いると、土壌・岩石に含まれる硫黄成分と反応して硫酸が生成し、セレンを容易に抽出することができる。また、硫酸を酸化剤として用いてもよい。
破砕物に含まれる前記粒子に接触させる酸化剤の量は、粒子に含まれるセレンを溶出させるに足りる量であればよい。一例として、例えば1gの黄鉄鉱に対して次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:2〜15%)を1〜20ml程度で接触させる量が挙げられる。
前記酸化剤と前記粒子を混合して接触させる際の混合物の温度は、例えば、10〜60℃程度が挙げられる。また、前記混合物を撹拌することによって、セレンの抽出効率をより高めることができる。
前記酸化剤によって土壌・岩石から抽出されるセレンは、セレンのオキソ酸の形態をとることができる。ここで、セレンのオキソ酸イオンとしては、セレン酸イオン(SeO 2−)、セレン酸水素イオン(HSeO )、亜セレン酸イオン(SeO 2−)、亜セレン酸水素イオン(HSeO )が挙げられる。
前記酸化剤は、セレンのオキソ酸を4価から6価に酸化することができる。4価のセレンのオキソ酸は、土壌・岩石の粒子表面の水酸基に対して内圏錯体として比較的強く吸着し易い。その一方、6価のセレンのオキソ酸は、土壌・岩石の粒子表面の水酸基に対して外圏錯体として比較的弱く吸着し易い。このため、酸化剤によってセレン酸のオキソ酸を4価から6価に酸化することは、酸化剤中にセレンのオキソ酸を抽出する点で有利である。
前記酸化剤と前記粒子を接触させてセレンを抽出する時間は、粒子の大きさが小さい程、及び酸化剤の濃度が濃い程、短時間にすることができる。一例として、例えば、10mm以下の粒子径であれば、1時間〜24時間程度が好ましく、2mm以下の粒子径であれば、10分〜2時間程度が好ましい。
抽出の終了の目安は、例えば、抽出処理後の土壌・岩石のセレン全含有量が、処理前の10〜50%程度に低減すること、セレン溶出量が溶出量基準値(0.01mg/L)以下になることが挙げられる。
抽出の管理方法は、例えば、処理の対象とする土壌・岩石を用いて事前に抽出実験を行い、抽出処理後の土壌・岩石のセレン全含有量が、処理前の10〜50%程度に低減する、またはセレン溶出量が溶出量基準値(0.01mg/L)以下になるといった浄化目標を満たす酸化剤の添加率、抽出液と処理の対象とする土壌・岩石の液固比、抽出液と処理の対象とする土壌・岩石の接触時間を決定し、抽出実験で決定した条件で抽出処理を行うなどの方法が考えられる。この場合、抽出処理後の土壌・岩石を100mに1検体の頻度で分析し、浄化目標を満たしていることを確認する抜き取り検査を行うとより確実である。
[分離工程]
抽出後、土壌・岩石の残渣を含む抽出液(土壌・岩石分散液)から、抽出液を分離する。その分離方法としては、残渣に含まれる粒子の大きさにもよるが、例えば、大きな粒子から小さな粒子に向けて段階的に分離していく方法が挙げられる。
具体的には、例えば、第一段階で目開き2mm程度の篩に掛けて、粒子径2mm程度までの土粒子(残渣)を除き、第二段階でハイドロサイクロンを用いて75μm程度までの土粒子を除き、第三段階で抽出液に凝集剤を添加して、残った微細な土粒子を含むフロックを生成し、凝集及び沈殿させて除去する方法が挙げられる。
上記の各段階で除去した粒子は、セレンが除かれた清浄な粒子であるので、pHを中性域に戻して脱水した後、環境負荷の少ない廃棄物として処理することができる。処理方法は特に限定されず、例えば、建設発生土に対して行われる公知の固化処理によって、コーン指数200kN/m以上の強度を有する固化材とすることができる。
以上で説明した破砕工程、抽出工程、分離工程は、例えば、図1に示す処理システムによって行うことができる。
《セレン含有土壌・岩石の処理システム》
図1の処理システムは、セレンを含有する土壌・岩石からセレンを抽出するための処理に用いられ、次の構成を備える。すなわち、自然由来のセレンを含む土壌・岩石R1を細かい粒子にする(破砕する)破砕機1と、破砕した土壌・岩石の粒子に酸化剤を接触させ、セレンを含む抽出液を得る抽出槽2と、抽出液から土壌・岩石の残渣を分離するフルイ3と、フルイ3を通過した抽出液から土壌・岩石の粒子を分離するサイクロン4と、サイクロン4を通過した抽出液に残った微細な粒子を凝集剤で凝集させることにより分離し、土壌・岩石を除いた上澄み液としての抽出液を得る濁水処理装置5と、濁水処理装置5で回収された沈殿を一時的に貯留する貯泥槽6と、貯泥槽6に溜めた沈殿を脱水するフィルタープレス等の脱水装置7と、サイクロン4で回収した土壌・岩石の粒子を脱水する砂脱水篩8と、フルイ3、砂脱水篩8、及び脱水装置7で回収した土壌・岩石に由来する残渣、粒子及び沈殿を収集(集約)して、これらを混合するとともにその混合物のpH及び水分を調整し、最終的な浄化土R2とする混合機9と、を備えている。
抽出槽2には、破砕した土壌・岩石の粒子を破砕機1から抽出槽2へ移送する破砕物供給部1aが接続されている。また、抽出槽2には、受け入れた土壌・岩石と、抽出槽2に投入された酸化剤とを混合して撹拌するための撹拌翼や、土壌・岩石同士を擦り合せるスクラビング機が備えられている。
フルイ3には、抽出後の土壌・岩石の残渣を含む抽出液を抽出槽2からフルイ3へ送液する抽出液第一送液部2aが接続されている。
サイクロン4には、フルイ3を通過した土壌・岩石の粒子を含む抽出液をフルイ3からサイクロン4へ送液する抽出液第二送液部3aが接続されている。
濁水処理装置5には、サイクロン4を通過した土壌・岩石の微細な粒子を含む抽出液をサイクロン4から濁水処理装置5へ送液する抽出液第三送液部4aが接続されている。また、濁水処理装置5において得た上澄み液としての抽出液を外部(例えば、後述する水処理システム10の原水槽11)へ送液する抽出液第四送液部5bが濁水処理装置5に接続されている。
貯泥槽6には、濁水処理装置5で回収した沈殿を濁水処理装置5から貯泥槽6へ移送する沈殿第一移送部5aが接続されている。
脱水装置7には、貯泥槽6に一時的に貯留された沈殿を貯泥槽6から脱水装置7へ移送する沈殿第二移送部6aが接続されている。また、脱水装置7で脱水された排水を外部(例えば、後述する水処理システム10の原水槽11)へ送液する排水第一送液部7bが脱水装置7に接続されている。
砂脱水篩8には、サイクロン4で回収された土壌・岩石の粒子をサイクロン4から砂脱水篩8へ移送する粒子第一移送部4bが接続されている。また、図1には図示していないが、砂脱水篩8で脱水された排水を外部(例えば、後述する水処理システム10の原水槽11)へ送液する排水第二送液部が砂脱水篩8に接続されている。
混合機9には、フルイ3で分離した土壌・岩石の残渣をフルイ3から混合機9へ移送する残渣移送部3bと、砂脱水篩8で脱水した土壌・岩石の粒子を砂脱水篩8から混合機9へ移送する粒子第二移送部8aと、脱水装置7で脱水した土壌・岩石の微細な粒子の沈殿を脱水装置7から混合機9へ移送する沈殿第三移送部7aと、が接続されている。
上記の接続を行う各部は、配管、バルブ、ポンプ等の公知の接続部材によって構成されている。
以上で説明した、セレン含有土壌・岩石の処理方法及び処理システムによって得たセレンを含む抽出液を、例えば、以下に説明する、アカガネイトを用いた水処理方法及び水処理システムで処理することにより、当該抽出液のセレン含有量を低減した清浄な処理水(浄化水)を得ることができる。
以下では、セレンを含む前記抽出液を原水(処理対象水)と呼ぶことがある。
前提として、原水は、硫酸イオンと、硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む。この陰イオンの代表例は、セレンのオキソ酸の陰イオン(例えば、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン)である。
《水処理システム》
水処理システムの一例として、水処理システム10を図2に示す。
水処理システム10は、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンが含まれる原水を導入する原水槽11と、バリウムイオンが含まれるバリウム水溶液を保持するバリウム槽12と、前記バリウム水溶液をバリウム槽12から原水槽11へ供給するバリウム供給部12aと、を備える。
また、水処理システム10は、原水槽11に導入された前記原水と、これに混合された前記バリウム水溶液との混合液を導入し、前記混合液に含まれる硫酸バリウムと第一の上澄み液とを分離する第一濁水処理装置13と、前記混合液を原水槽11から第一濁水処理装置13へ送液する第一混合液送液部11aと、前記第一の上澄み液を導入する吸着槽14と、前記第一の上澄み液を第一濁水処理装置13から吸着槽14へ送液する第一の上澄み液送液部13aと、を備える。
さらに、水処理システム10は、アカガネイトが含まれる薬液を保持する薬品調合槽15と、前記薬液を薬品調合槽15から吸着槽14へ供給する薬液供給部15aと、を備える。
バリウム供給部12a、第一混合液送液部11a、第一の上澄み液送液部13a、薬液供給部15aは、それぞれ、配管、バルブ、ポンプ等の公知の接続部材によって構成されている。
また、水処理システム10は、薬品調合槽15に供給する塩化鉄(III)が含まれる第一水溶液を貯留する第一貯留槽16と、薬品調合槽15に供給する、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩、並びに、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩及び水酸化物塩から選ばれる1種以上の塩(S)が含まれる第二水溶液を貯留する第二貯留槽17と、を任意の構成として備えている。
薬品調合槽15には、前記第一水溶液を第一貯留槽16から薬品調合槽15へ供給する第一水溶液供給部16aが接続されている。
薬品調合槽15には、前記第二水溶液を第二貯留槽17から薬品調合槽15へ供給する第二水溶液供給部17aが接続されている。
さらに、水処理システム10は、吸着槽14に導入された前記第一の上澄み液と、これに混合された前記薬液との混合液を導入し、前記混合液に含まれるアカガネイトと第二の上澄み液とを分離する第二濁水処理装置18を任意の構成として備えている。
第二濁水処理装置18には、アカガネイトが含まれた前記混合液を、吸着槽14から第二濁水処理装置18へ送液する第二混合液送液部14aが接続されている。
上記の他、水処理システム10は、第一濁水処理装置13及び第二濁水処理装置18に供給され、硫酸バリウム及びアカガネイトをそれぞれ凝集させる凝集剤を保持する第三貯留槽20と、前記第二の上澄み液を受け入れて、外部に放流するまで前記第二の上澄み液を一時的に貯留する放流槽19と、第一濁水処理装置13及び第二濁水処理装置18から、硫酸バリウムの沈殿物と、アカガネイトを含む沈殿物をそれぞれ受け入れる貯泥槽21と、前記沈殿物を脱水する脱水装置22と、を任意の構成として備えている。
第一濁水処理装置13には、前記凝集剤を第三貯留槽20から第一濁水処理装置13へ供給する凝集剤第一供給部20aが接続されている。
第二濁水処理装置18には、前記凝集剤を第三貯留槽20から第二濁水処理装置18へ供給する凝集剤第二供給部20bが接続されている。
放流槽19には、前記第二の上澄み液を第二濁水処理装置18から放流槽19へ送液する第二の上澄み液送液部18aが接続されている。
貯泥槽21には、硫酸バリウムの沈殿物を第一濁水処理装置13から貯泥槽21へ移送する第一沈殿物移送部13bが接続されている。
貯泥槽21には、アカガネイトを含む沈殿物を第二濁水処理装置18から貯泥槽21へ移送する第二沈殿物移送部18bが接続されている。
脱水装置22には、硫酸バリウムの沈殿物及びアカガネイトを含む沈殿物のうち少なくとも一方を貯泥槽21から脱水装置22へ移送する第三沈殿物移送部21aが接続されている。
上記の接続を行う各部は、配管、バルブ、ポンプ等の公知の接続部材によって構成されている。
《水処理システムを利用した水処理方法》
ここで例示する水処理方法は、前述した水処理システムを利用して、原水(被処理水)に含まれる硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンのうち、硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンをアカガネイトによって効率良く低減する方法である。この水処理方法によって清浄な処理水が得られる。
また、本方法によれば、硫酸イオンの濃度が低減した一次処理水をアカガネイトに接触させるため、硫酸イオンによる競合を受けずに硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンをアカガネイトに吸着させることができる。この結果、アカガネイトの使用量を低減することができる。
以下に、水処理システム10を利用した方法を説明する。
まず、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンが含まれる原水を原水槽11へ導入する。
次いで、バリウム槽12から原水槽11へ、バリウム供給部12aを介してバリウム水溶液を供給する。原水槽11において原水とバリウム水溶液を混合することにより、混合液中で硫酸バリウムが生成する。この際、必要に応じて水道水を原水槽11へ供給してもよい。続いて、第一混合液送液部11aを介して、原水槽11から第一濁水処理装置13へ、硫酸バリウムが含まれる前記混合液を導入する。
第一濁水処理装置13の水槽に導入した前記混合液を静置し、硫酸バリウムを含む沈殿を沈降させる。第三貯留槽20から第一濁水処理装置13へ、凝集剤第一供給部20aを介して凝集剤(例えば、ポリ塩化アルミニウム、高分子凝集剤等)を供給すると、沈殿の沈降を促進させることができる。沈殿が沈降した後、第一の上澄み液送液部13aを介して、硫酸バリウムから分離した第一の上澄み液を吸着槽14へ送液する。
吸着槽14へ送液された第一の上澄み液には、硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンが依然として含まれている。一方、硫酸バリウムは水に対する溶解性が低いため、殆どの硫酸バリウムが沈殿として分離される。
沈降した硫酸バリウムが含まれる沈殿を汚泥として、第一濁水処理装置13から貯泥槽21へ、第一沈殿物移送部13bを介して移送し、一時的に貯留する。その後、第三沈殿物移送部21aを介して貯泥槽21から、フィルタープレス機等の脱水装置22へ汚泥を移送し、汚泥を脱水して、硫酸バリウムを含む脱水ケーキを得る。脱水ケーキは公知方法によって適切に処分される。
また、第一貯留槽16と第二貯留槽17から薬品調合槽15へ、第一水溶液供給部16a及び第二水溶液供給部17aを介して、塩化鉄(III)を含む第一水溶液と、前記1種以上の塩(S)を含む第二水溶液とをそれぞれ供給する。薬品調合槽15において第一水溶液及び第二水溶液を混合することにより、混合液中でアカガネイトが生成する。この際、必要に応じて水道水を薬品調合槽15へ供給してもよい。
次に、薬液供給部15aを介して薬品調合槽15から吸着槽14へ、アカガネイトが含まれた混合液(薬液)を導入し、第一の上澄み液と前記混合液(薬液)とを混合する。これにより、吸着槽14においてアカガネイトに硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンが接触し、吸着する。その後、第二混合液送液部14aを介して吸着槽14から第二濁水処理装置18へ、アカガネイトを含む混合液を移送する。
第二濁水処理装置18の水槽に導入した前記混合液を静置し、アカガネイトを含む沈殿を沈降させる。第三貯留槽20から第二濁水処理装置18へ、凝集剤第二供給部20bを介して凝集剤(例えば、ポリ塩化アルミニウム、高分子凝集剤等)を供給すると、沈殿の沈降を促進させることができる。アカガネイトを含む前記沈殿が沈降した後、第二の上澄み液送液部18aを介して、硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオン濃度が低減した第二の上澄み液を放流槽19へ移送し、一時的に貯留して、適切なタイミングで河川等の外部へ放流する。また、必要に応じて第二の上澄み液を原水槽11へ戻してもよい。
沈降したアカガネイトが含まれる沈殿を汚泥として、第二濁水処理装置18から貯泥槽21へ、第二沈殿物移送部18bを介して移送し、一時的に貯留する。その後、第三沈殿物移送部21aを介して貯泥槽21から、フィルタープレス機等の脱水装置22へ汚泥を移送し、汚泥を脱水して、アカガネイトを含む脱水ケーキを得る。脱水ケーキは公知方法によって適切に処分される。
以上で説明した水処理方法においては、次に説明する硫酸イオン除去方法、陰イオン吸着方法、アカガネイトの合成方法を適用することができる。
《硫酸イオン除去方法》
原水槽11において、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む原水をバリウムイオンに接触させることにより、硫酸バリウムを生成することができる。
原水槽11において、前記原水とバリウムイオンを接触させる方法として、例えば、バリウム塩を直接添加する方法、バリウム塩を含むバリウム水溶液を添加する方法が挙げられる。
前記バリウム塩としては、例えば、塩化バリウム及び水酸化バリウムから選ばれる1種以上のバリウム塩が挙げられる。
これらのバリウム塩は、アカガネイトによる前記無機化合物の陰イオンの吸着を妨げる恐れが少ない。ここで、前記無機化合物の陰イオンは、前記バリウム塩を構成するカウンターアニオン以外の陰イオンであることが好ましい。
上記のバリウム塩のうち、塩化バリウムが特に好ましい。塩化物イオンは本来的にアカガネイトを構成しており、アカガネイトに対する塩化物イオンの吸着力は、他の陰イオン、例えば無機オキソ酸イオンよりも低い。このため、アカガネイトに対する陰イオンの吸着において、塩化物イオンによる競合は起き難く、バリウムイオンを前記水溶液に添加することができる。
前記バリウム水溶液に含まれる前記バリウム塩の濃度は特に限定されず、例えば、0.1〜3.0M程度とすることができる。
前記バリウム水溶液のpHは、原水と混合したときに硫酸バリウムが生成されるpHであれば特に限定されず、例えば、pH1〜7が挙げられる。このpH範囲であると、原水と混合して得られる混合液及びその第一の上澄み液のpHが1〜7となり易く、後段のアカガネイトによる陰イオンの吸着効率が高まるので好ましい。
原水のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウムを添加する方法が挙げられる。
前記原水に混合する際の前記バリウム水溶液の温度は特に限定されず、例えば、10〜40℃が挙げられる。
前記原水に混合する前記バリウム水溶液の量は特に限定されず、前記原水に含まれる硫酸イオンの濃度に応じて設定すればよく、例えば、当該硫酸イオンのモル濃度以上のバリウムイオンを供給できる量を混合することが好ましい。すなわち、バリウムイオン/硫酸イオンのモル比が1以上となるようにバリウム水溶液を原水に混合することが好ましい。バリウムイオンを上記の量で混合すると、原水に含まれる硫酸イオンの大半を硫酸バリウムとして除去することができる。
上記のようにバリウム水溶液を添加する方法に代えて、バリウム塩を原水槽11に直接添加する方法を採用した場合にも硫酸バリウムを生成するという目的は達成できる。しかし、バリウム塩を固体で添加するよりも、バリウム水溶液として添加する方が、操作が容易である。さらに、原水槽11におけるバリウム塩の溶け残りを防いで、原水槽11におけるバリウム塩の濃度の制御が容易であるため好ましい。
《陰イオン吸着方法》
吸着槽14において、硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンを含む第一の上澄み液をアカガネイトに接触させることにより、前記陰イオンを前記アカガネイトに吸着させることができる。
前記無機化合物としては、例えば、セレン、ヒ素、クロム、フッ素、リン等の無機元素を含む無機化合物が挙げられる。具体的には、例えば、セレン、ヒ素、クロムのオキソ酸、フッ化水素酸(フッ酸)、リン酸等が挙げられる。
前記無機化合物としては、アカガネイトに高い吸着力を示す観点から、オキソ酸が好ましく、前記無機元素を含む、1価又は2価の無機オキソ酸イオンがより好ましい。
ここで、オキソ酸とは、1つの無機原子に水酸基(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、且つその水酸基のプロトンが脱離し得る無機化合物である。オキソ酸は水中では前記プロトンが脱離したオキソ酸イオンとなり得る。
前記オキソ酸としては、アカガネイトに高い吸着力を示す観点から、セレンのオキソ酸が好ましく、セレンのオキソ酸イオンとしては、セレン酸イオン(SeO 2−)、セレン酸水素イオン(HSeO )、亜セレン酸イオン(SeO 2−)、亜セレン酸水素イオン(HSeO )が挙げられる。
前記原水及び第一の上澄み液に含まれる前記無機化合物の陰イオンは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
本方法において陰イオン吸着剤として使用するアカガネイト(赤金鉱)(Akaganeite)は、化学組成β−Fe3+(O(OH,Cl))で表される酸化鉄鉱物である。その結晶系は単斜晶系で、空間群I2/m、単位格子:a=10.600,b=3.0339,c=10.513,β=90.24°という結晶学的データが学術論文“Post J E, Buchwald V F, American Mineralogist, 76 (1991) p.272-277, Crystal structure refinement of akaganeite”に記載されている。この論文で明らかにされたアカガネイトの結晶構造には塩化物イオンを保持するトンネル構造が存在し、そのトンネルの壁から中心に向けて水酸基が差し出されていることも記載されている。
図3は、上記トンネル構造を模式的に表した図である。図中、灰色丸は酸素原子を表し、白色丸は水素原子を表し、八面体の中央の丸は鉄原子を表し、トンネル内の黒色丸は、塩化物イオン及び水素イオンが同じ占有率(50:50)で存在することを示す。
本方法においては、第一の上澄み液をアカガネイトに接触させると、第一の上澄み液に含まれる前記無機化合物の陰イオンがアカガネイトの上記トンネル構造にトラップされて吸着すると考えられる。この吸着によってトンネル構造に予め存在する塩化物イオンが前記陰イオンに置換されて脱離する(試験例2参照)。
精製水にアカガネイトを添加すると、その精製水のpHは酸性に傾く。したがって、第一の上澄み液にアカガネイトを投入した場合にも、第一の上澄み液のpHが低くなる傾向がある。
第一の上澄み液にアカガネイトを添加し、目的の陰イオンをアカガネイトに吸着させる際の処理中の第一の上澄み液(アカガネイト分散液)のpHは、10以下が好ましく、2以上9以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましく、4以上6以下が特に好ましい。
処理中の第一の上澄み液のpHが9以下であると、アカガネイトの分解を防止し、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。
処理中の第一の上澄み液のpHが低いほど、アカガネイトの前記トンネル構造の中心を向く水酸基に結合するプロトンが増える。これにより前記トンネル構造内が負電荷を帯びることを抑制し、前記トンネル構造内に目的の陰イオンをより容易に吸着させることができる。したがって、目的の陰イオンの吸着力を高める観点から、処理中の第一の上澄み液のpHは、pH2〜5が好ましく、pH2〜4がより好ましく、pH2〜3がさらに好ましい。
処理中の第一の上澄み液のpHが4以上6以下であると、アカガネイト同士が凝集し易くなり、アカガネイトの回収が容易になる観点から好ましい。
第一の上澄み液のpHを調整する方法は特に限定されず、例えば、塩酸、水酸化ナトリウムを添加する方法が挙げられる。
第一の上澄み液とアカガネイトを接触させる際の第一の上澄み液の温度は特に限定されず、例えば、4〜60℃が好ましく、15〜50℃がより好ましく、30〜40℃がさらに好ましい。
上記温度範囲であると、アカガネイトによる目的の陰イオンの吸着力を高めることができる。上記温度範囲の下限値以上であると、第一の上澄み液中における目的の陰イオンの拡散速度が高まり、アカガネイトに接触して吸着する効率がより高められる。上記温度範囲の上限値以下であると、一度吸着した陰イオンがアカガネイトから脱離することをより低減することができる。
第一の上澄み液に含まれる目的の陰イオンの含有量に対して、この第一の上澄み液に接触するアカガネイトの量は特に限定されず、予備実験を行って経験的に目的の陰イオンを充分に吸着できることを確認した量に設定すればよい。
通常、接触させるアカガネイトの量を多くすれば、吸着可能な陰イオンの量も多くなり、例えば、アカガネイトによる無機オキソ酸イオンの吸着量として0.3〜0.5mol/kgが挙げられる。
前記陰イオンを吸着したアカガネイトを第一の上澄み液から回収する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、第一の上澄み液を静置して沈殿させる方法、第一の上澄み液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法、第一の上澄み液のpHを4〜6に調整してアカガネイト同士を凝集させる方法等が挙げられる。
《アカガネイトの合成》
薬品調合槽15において、塩化鉄(III)が含まれる第一水溶液と、前記1種以上の塩(S)が含まれる第二水溶液とを混合することによりアカガネイトを生成する方法は、吸着力が優れた高品質のアカガネイトが得られるので好ましい。
前記1種以上の塩(S)は、アカガネイトを高収率で合成する観点から、水に易溶性であることが好ましく、例えば、下記のカチオンを含む塩が好ましい。
前記アルカリ金属は周期表の第1族元素であり、ナトリウム、カリウムが好ましい。
前記アルカリ土類金属は周期表の第2族元素であり、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。
薬品調合槽15において第一水溶液と第二水溶液を混合することにより、水溶液中で電離したイオン同士が自然に反応してアカガネイトが生成される。より詳しくは、前記1種以上の塩(S)を水中に溶解させると水酸化物イオンが生成される。この水酸化物イオンと鉄イオンが、塩化物イオンが多く溶存する酸性水溶液中で反応することにより、アカガネイトが生成される。
アカガネイトの生成反応を促進するために、上記水溶液(反応液)を40〜100℃程度に加熱してもよい。
アカガネイトを生成させる際の反応液のpHは、7未満が好ましく、4未満がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。
pH7未満であると、塩化物イオン存在下においてアカガネイトが容易に生成される。
pH4未満であると、特にpH3以下であると、塩化物イオン存在下において高収率でアカガネイトを生成することができる。なお、pH4〜6でもアカガネイトは容易に形成されるが、このpH範囲であると、生成しつつあるアカガネイト同士が凝集して未反応の塩化鉄(III)又は塩(S)が取り込まれる場合がある。一方、pHがアルカリ性であると、異なる構造の酸化鉄鉱物(例えば、ゲータイト、スクメタイト等)が生成される可能性が高い。
アカガネイトを生成させる際の反応液のpHの調整は、第一水溶液と第二水溶液を混合する前に、第一水溶液及び第二水溶液のうち少なくとも一方を予め調整しておくことが好ましい。ただし、第一水溶液と第二水溶液を混合した反応液のpHがアルカリ性であると、アカガネイト以外の酸化鉄鉱物が生成される恐れがある。したがって、第一水溶液と第二水溶液を混合した後で速やかに、或いは混合前に第一水溶液及び第二水溶液の少なくとも一方のpHを酸性に調整し、酸性のpHを維持することが好ましい。
第一水溶液、第二水溶液のpHを調整する方法は、塩酸を滴下する方法が好ましい。塩酸を用いればアカガネイトの生成に有用な塩化物イオン以外の余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)を反応液に投入してアカガネイトに吸着することを防止できる。また、水酸化ナトリウムを用いて反応液のpHを調整することも好ましい。
第一水溶液と第二水溶液を混合する割合としては、得られる混合液(反応液)中の塩化鉄(III)の量が、例えば0.01〜3モル/Lとなる割合が好ましい。また、前記混合液中の前記1種以上の塩(S)の合計量が、例えば0.01〜3モル/Lとなる割合で、第一水溶液と第二水溶液を混合することが好ましい。
前記反応液を調製する際に、第一水溶液と第二水溶液を混合する方法は特に限定されないが、反応液のpHを酸性に維持するために、第一水溶液に対して第二水溶液を添加する方法が望ましい。
前記反応液中において、塩化鉄(III)によって生成されるFe3+と、前記1種以上の塩(S)によって生成されるOHとのモル比は、1:1〜1:3であることが好ましく、1:1.5〜1:2.5であることがより好ましく、1:1.8〜1:2.2であることがさらに好ましい。理論的には、1:2のモル比が最も好ましい。
上記モル比が1:2に近い上記範囲であると、前記反応液中のFe3+が有する正電荷量と、OHが有する負電荷量とがアカガネイトの生成に適したバランスとなり、塩化鉄(III)に由来するFe3+のほとんど全てを反応で消費して、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
具体的には、例えば、0.1モルの炭酸水素ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、炭酸のみかけの(二酸化炭素との平衡の影響を受けた)酸解離定数pKa=6.3を考慮して、溶液pHがpKaよりも1以上低い、pH5.3以下である場合、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度(炭酸分子濃度)は0.09〜0.1モル/L程度と考えられる。これに基づき、前記反応液中の塩化鉄(III)の濃度は、0.09〜0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
また、例えば、0.1モルの炭酸ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、炭酸の酸解離定数pKa=10.3及び上記みかけの酸解離定数pKa=6.3を考慮して、溶液pHが5.3以下において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度(炭酸分子濃度)は0.18〜0.2モル/L程度と考えられる。これに基づき、前記反応液中の塩化鉄(III)の濃度は、0.18〜0.2モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
また、例えば、0.1モルの水酸化ナトリウムを溶解させた1Lの水溶液中において、その酸解離定数pKa=13を考慮して、溶液pHが7以下の酸性域において、水溶液中に生成する水酸化物イオン濃度はほぼ0.1モル/Lと考えられる。これに基づき、前記反応液中の塩化鉄(III)の濃度は、0.1モル/Lの1/3〜1倍の濃度が好ましく、1/2〜1倍の濃度がより好ましい。
何れの炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化物塩を用いる場合にも、当該塩のpKaよりも当該水溶液のpHが1以上低ければ、溶解した塩のモル濃度の0.9〜2倍程度の水酸化物イオンが生成する。よって、塩化鉄(III)は、上記のpH域において、溶解した前記1種以上の塩(S)のモル濃度の約0.3〜2倍(生成する水酸化物イオン濃度の1/3〜1倍)の濃度で溶解することが好ましく、0.45〜1倍(生成する水酸化物イオン濃度の1/2倍)の濃度で溶解することがより好ましい。
また、上記を総合的に考慮して、アカガネイトを生成する前記反応液において、塩化鉄(III)と前記1種以上の塩(S)とのモル比は2:1〜1:3であることが好ましい。
上記モル比の範囲であると、前記反応液中のFe3+とOHの電荷バランスが良好となり、アカガネイトを容易に高い収率で生成させることができる。
前記反応液におけるアカガネイトの生成反応の終了は、反応液が暗褐色から赤褐色に変化したことを目安にして経験的に判断することができる。
アカガネイトの生成反応の開始後、その反応が一段落するまでに要する時間は、生成するアカガネイトの濃度にもよるが、10〜25℃において例えば3〜5分程度である。
アカガネイトが生成した後、前記反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整することにより、アカガネイト同士を凝集させることができる。この際、凝集を妨げない温度範囲で、例えば10〜40℃で行うことが好ましい。pHを調整してアカガネイトが凝集するまでに要する時間は10〜25℃において例えば5〜10分程度である。
ここで前記反応液のpHを4以上〜pH6以下に調整する方法としては、前記反応液に前記1種以上の塩(S)を追加して添加する方法が好ましい。前記1種以上の塩(S)を用いることにより、余計な陰イオン(例えば硫酸イオン等)が前記反応液に混入してアカガネイトに吸着することを防止できる。
上記のアカガネイトの合成方法によれば、塩化鉄(III)として投入した鉄原子の全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率90〜99%でアカガネイトを回収して得ることができる。
以上で説明したように、薬品調合槽15において第一水溶液及び第二水溶液を混合した反応液中でアカガネイトが生成する。このアカガネイトを含む薬液は、薬品調合槽15から薬液供給部15aを介して、吸着槽14へ供給される。この構成により、吸着槽14に供給するアカガネイトの量を、第一の上澄み液に含まれる目的の陰イオンの量に応じて、容易に制御することができる。
以上で説明した硫酸イオン除去方法、陰イオン吸着方法、アカガネイトの合成方法は、次に説明する水処理方法にも適用することができる。
《水処理方法》
ここで例示する水処理方法は、硫酸イオン及び硫酸イオン以外の無機化合物の陰イオンが含まれる原水に、バリウムイオンを添加して硫酸バリウムを生成し、遊離の硫酸イオンの濃度が低減した一次処理液を得る第一工程と、前記一次処理液をアカガネイトに接触させることにより、前記無機化合物の陰イオンを前記アカガネイトに吸着させ、前記無機化合物の陰イオンの濃度が低減した二次処理液を得る第二工程と、を有する。
第一工程において遊離の硫酸イオン濃度を低減した一次処理液を得ることにより、第二工程において硫酸イオンによって競合されることなく、前記無機化合物の陰イオンはアカガネイトに吸着する。これにより、第二工程で使用するアカガネイトの量を低減することができる。言い換えると、硫酸イオンはアカガネイトに対する吸着力が比較的高いため、処理対象水に硫酸イオンが含まれていると、硫酸イオンによってアカガネイトが消費されてしまう。しかし、本水処理方法では第一工程によって硫酸イオンを予め除去することによって、第二工程において使用するアカガネイトの量を低減することができる。
[第一工程]
第一工程における原水は、前述した水処理システムを用いた水処理方法における原水と同じである。
原水にバリウムイオンを添加する方法としては、例えば、前述した硫酸イオン除去方法で例示したバリウム塩を直接添加する方法、前述したバリウム塩を含むバリウム水溶液を添加する方法が挙げられる。
原水に添加するバリウムイオンの物質量は、原水に含まれる硫酸イオンの物質量100モル部に対して、50モル部以上が好ましく、70モル部以上がより好ましく、120モル部モル部以上がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、硫酸バリウムを容易に形成し、原水中の遊離の硫酸イオン濃度を充分に低減することができる。上記範囲の上限値は特に限定されず、例えば200モル部程度とすればよい。
バリウムイオンを添加した原水(一次処理水)のpHは、硫酸バリウムが生成されるpHであれば特に限定されず、例えば、pH3〜8の範囲で行うことができる。
前記水溶液のpHを上記の範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、原水又は一次処理水に塩酸、水酸化ナトリウム等を添加する方法が挙げられる。
バリウムイオンを添加した原水(一次処理水)の温度は、硫酸バリウムが生成される温度であれば特に限定されず、例えば、4〜60℃の範囲で行うことができる。
原水にバリウムイオンを添加することにより、硫酸バリウムが生成する。硫酸バリウムの水に対する溶解性は低いため、硫酸バリウムの沈殿が発生する。硫酸バリウムの存在は、後段の第二工程におけるアカガネイトに対する前記無機化合物の陰イオンの吸着を殆ど妨げない。このため、第二工程に供する一次処理液は、硫酸バリウムを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいが、一次処理液に添加したアカガネイトの分散性を高める観点から、予め硫酸バリウムを除去しておくことが好ましい。
一次処理液から硫酸バリウムを除去する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、前記水溶液を静置して沈殿させる方法、前記水溶液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法等が挙げられる。
[第二工程]
一次処理液にアカガネイトを接触させることにより、一次処理液に含まれる前記無機化合物の陰イオンをアカガネイトに吸着させることができる。この吸着方法は、前述した陰イオン吸着方法の場合と同様である。前記無機化合物の陰イオンがアカガネイトに吸着すると、その陰イオン濃度が低減した二次処理液の中に、当該陰イオンを吸着したアカガネイトが分散した状態となる。
一次処理液をアカガネイトに接触させる方法は特に限定されず、例えば、一次処理液にアカガネイトの粉末を投入して撹拌する方法、保持部材に保持されたアカガネイトに一次処理液を掛けて流す方法等が挙げられる。
一次処理液にアカガネイトの粉末を投入して撹拌する吸着方法を採用した場合には、前記無機化合物の陰イオンを吸着したアカガネイトをその分散液(二次処理液)から回収することができる。
二次処理液からアカガネイトの粉末を回収する方法としては、例えば、沈殿法、濾過法等が挙げられる。沈殿法としては、例えば、二次処理液を静置して沈殿させる方法、二次処理液に硫酸バンド、PAC、高分子ポリマー凝集剤等を添加して凝集させて沈殿させる方法、二次処理液のpHを4〜6に調整してアカガネイト同士を凝集させる方法等が挙げられる。その後、二次処理液は、沈殿したアカガネイトの上澄み液、又は沈殿したアカガネイトを濾過した濾液として得られる。
アカガネイトの粉末をカラムに充填し、このカラムに一次処理液を流入させる吸着方法を採用した場合には、アカガネイトが前記無機化合物の陰イオンを吸着し、この陰イオンが除去された二次処理液をカラムから流出させて得ることができる。
以上の水処理方法において、吸着剤の主要な成分としてアカガネイトを有する陰イオン吸着体を使用することができる。ここで「主要な成分」とは、吸着剤の各成分間における目的の陰イオンの吸着量を比較した場合、最も吸着量の多い成分ということを意味する。この陰イオン吸着体は、吸着剤(アカガネイト)を保持する保持部材をさらに有していてもよい。
吸着剤としてのアカガネイトの形状は、例えば、粉末状、礫状、塊状、板状等の取り扱いが容易な形状を採用できる。化学的に合成して得られた粉末状のアカガネイトはそのまま吸着剤として使用してもよいし、この粉末を結着させてより大きな形状に成形してもよい。粉末状のアカガネイトを結着する方法としては、例えば、炭素粒子を高分子ポリマーによって結着して多孔質体(例えば、電極、消臭剤)を形成する場合に使用される公知の方法を採用することができる。また、押し固めたり、焼結したりして得た塊をそのまま使用してもよいし、その塊を適当な大きさに砕いたり切断したりして成形してもよい。
前記保持部材としては、内部にアカガネイトを入れて保持する容器、カラム(筒)、笊、網等が挙げられる。また、表面にアカガネイトを固定することが可能な保持部材も採用でき、例えば、板材の表面にアカガネイトを固定した形態が挙げられる。
以下で用いた試料中のSe全含有量は、JIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
[実施例1]
濃度30%の過酸化水素(H)水溶液を酸化抽出剤として用いた。
工事現場から排出された岩石を破砕し、粒径0.075mm〜0.150mmのセレン含有土粒子を得た。このセレン含有土粒子のSe全含有量は、0.52mg/kgであった。
上記で得たセレン含有土粒子100g(Se全含有量=0.052mg)に対して、酸化抽出剤1000gを加えて、撹拌した。この撹拌により、土粒子に含まれている硫化物と過酸化水素(酸化剤)が反応して硫酸が生成した。また、土粒子に含まれていたセレンは、硫酸によって抽出され、セレンのオキソ酸イオンとして溶出された。
攪拌開始から360分後に、土粒子の分散液を遠心分離機に掛けて、得られた上澄水を孔径0.45μmのメンブランフィルターによりろ過し、セレン酸イオンを含む最終抽出液を得た。
最終抽出液中のSe全含有量は、合計で0.038mgであり、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、73%を最終抽出液に回収することができた。
[実施例2]
セレン含有土粒子に加える過酸化水素水溶液の濃度を10%に変更した以外は、実施例1と同様にSe抽出試験を行った。その結果、最終抽出液中のSe全含有量は、合計で0.037mgであり、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、71%を最終抽出液に回収することができた。
[実施例3]
セレン含有土粒子に加える過酸化水素水溶液の濃度を3%に変更した以外は、実施例1と同様にSe抽出試験を行った。その結果、最終抽出液中のSe全含有量は、合計で0.030mgであり、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、58%を最終抽出液に回収することができた。
[比較例1]
セレン含有土粒子に過酸化水素水溶液を、同量の蒸留水に変更した以外は、実施例1と同様にSe抽出試験を行った。その結果、最終抽出液中のSe全含有量は、合計で0.017mgであり、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、33%が最終抽出液に回収された。つまり、実施例1と比べて、最終抽出液に含まれるセレンの量が明らかに少なかった。
[実施例4]
蒸留水100体積部に対して、有効塩素濃度5.7wt%の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液100体積部、塩酸(HCL)0.23体積部をそれぞれ加えて、酸化抽出剤を得た。
工事現場から排出された岩石を破砕し、粒径1mm〜2mmのセレン含有土粒子を得た。このセレン含有土粒子のSe全含有量は、0.51mg/kgであった。
上記で得たセレン含有土粒子100g(Se全含有量=0.051mg)に対して、酸化抽出剤1000gを加えて、撹拌した。この撹拌により、土粒子に含まれている硫化物と塩酸で中和された次亜塩素酸(酸化剤)が反応して硫酸が生成した。また、土粒子に含まれていたセレンは、硫酸によって抽出され、セレンのオキソ酸イオンとして溶出された。
攪拌開始から360分後に、土粒子の分散液を遠心分離機に掛けて得られた上澄水を孔径0.45μmのメンブランフィルターによりろ過し、セレン酸イオンを含む最終抽出液を得た。
最終抽出液中のSe全含有量は、合計で0.039mgであり、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、76%を最終抽出液に回収することができた。
[実施例5]
攪拌時間を360分ではなく、240分、120分、60分、30分、10分の各撹拌時間に変更した以外は、実施例4と同様に、5つのSe抽出試験を行った。その結果、最終抽出液中のSe全含有量は、合計でそれぞれ、0.039mg、0.038mg、0.031mg、0.026mg、0.024mgであった。したがって、各試験において、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、それぞれ76%、75%、61%、51%、47%を最終抽出液に回収することができた。
[実施例6]
蒸留水100体積部に対して、次亜塩素酸(NaClO)3体積部、塩酸(HCL)0.23体積部をそれぞれ加えて、酸化抽出剤を得た。この酸化抽出剤を用いた以外は、実施例4と同様にSe抽出試験を行った。その結果、最終抽出液中のSe全含有量は、合計で0.042mgであり、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、82%を最終抽出液に回収することができた。
[実施例7]
攪拌時間を360分ではなく、240分、120分、60分、30分、10分の各撹拌時間に変更した以外は、実施例6と同様に、5つのSe抽出試験を行った。その結果、最終抽出液中のSe全含有量は、合計でそれぞれ、0.040mg、0.037mg、0.032mg、0.037mg、0.040mgであった。したがって、各試験において、処理したセレン含有土粒子に含まれるSeのうち、それぞれ78%、73%、63%、73%、78%を最終抽出液に回収することができた。
(アカガネイトの合成)
0.2mol/Lの塩化鉄(III)水溶液1Lに、0.4mol/Lの水酸化ナトリウム1Lを添加して、5分間穏やかに撹拌しながら、約pH2の水溶液(Fe3+:OH=約1:2)中でアカガネイトを生成した。次いで、生成したアカガネイトが含まれた懸濁液に、水酸化ナトリウムをさらに添加し、pH4〜5に調整し、5分間穏やかに撹拌しながら、アカガネイト同士を凝集させた。凝集したアカガネイトを濾過で回収し、乾燥した粘土状のアカガネイトの塊を得た。この塊を乳鉢で砕いて粉体としたアカガネイトを以下の実験に用いた。
塩化鉄(III)として投入した鉄イオンの全てがアカガネイトになった場合の収率をモル基準で100%であるとした場合、収率95%でアカガネイトを回収して得た。
合成したアカガネイトをXRDで分析したところ、アカガネイトを示すピークが確認された。
[試験例1]
セレンを10mg/L含むセレン酸ナトリウム水溶液を調製した。上記合成で得たアカガネイトを用いて、以下の実験手順を行った。
(1)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、上記で合成したアカガネイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度をJIS K0102:2013年の「67.セレンの水素化合物発生ICP発光分光分析法」によって測定した。
(2)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、グリーンラストを、0.15w/w%〜1.0w/w%の重量比となるように添加した。pH6となった上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、グリーンラストを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
(3)セレン酸イオンを含む上記水溶液に、シュベルトマナイトを、0.015、0.025、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pH6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、シュベルトマナイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、セレン酸イオン濃度を上記方法で測定した。
上記実験によって、アカガネイト、グリーンラスト、シュベルトマナイトの各酸化鉄鉱物におけるセレン酸イオンに対する吸着等温線を得た(図4)。
図4に示す結果から、溶存セレン酸イオンの平衡濃度が環境基準(0.01 mg/L)以下になる酸化鉄鉱物は、アカガネイトだけであり、その吸着量が最も高いことが明らかである。
[試験例2]
硫酸を約1200mg/L(約12.5mmol/L)で含む水溶液(pH10)に、上記で合成したアカガネイトを、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0(単位:w/w%)の各濃度で添加した。pHを6に調整した上記水溶液を20℃で1時間撹拌した後に、アカガネイトを沈殿させ、上澄み液を回収し、硫酸イオンと、塩化物イオンの濃度をそれぞれイオンクロマトグラフ法によって測定した。
その結果、図5のグラフに示すように、アカガネイトの添加量に比例して、水溶液中の塩化物イオン濃度が増加し、それに伴って硫酸イオン濃度が低下した。増加した塩化物イオン濃度は、低下した硫酸イオン濃度の約2倍であった。この結果は、アカガネイトから脱離した塩化物イオンの電荷量と、アカガネイトに吸着した硫酸イオンの電荷量とがほぼ同じであることを意味する。
以上の結果から、アカガネイトを構成する塩化物イオンは、別の陰イオンを吸着する際に置換されると考えられる。
[試験例3]
硫酸イオン1200mg/L及びセレンを0.3mg/Lを含む、pH9のセレン酸ナトリウム水溶液(原水)を100ml調製した。
塩化バリウム2水和物の濃度を、1500mg/L、3000mg/L、4500mg/Lとしたバリウム水溶液A〜Cを調製した。これらバリウム水溶液と対照用の精製水のそれぞれに上記原水を混合して、Ba2+/SO 2−のモル比が0、0.5、1.0、1.5となった混合液a1〜d1を得た。混合液a1は透明であり、他の混合液b1〜d1は硫酸バリウムの沈殿が生じ、白濁した。
上記の混合液a1〜d1を25℃で10分間撹拌した後、濾紙に通して硫酸バリウムの沈殿を濾過し、透明な濾液(第一の上澄み液)a2〜d2を得た。
続いて、濾液a2〜d2に上記で合成した褐色のアカガネイト0.5w/w%をそれぞれ添加し、25℃で10分撹拌した後、濾紙に通してアカガネイトの粉体(沈殿)を濾過し、透明な濾液(第二の上澄み液)a3〜d3を得た。
上記で得た硫酸バリウム濾過後の濾液(第一の上澄み液)a2〜d2に含まれる硫酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで測定したところ、a2は約1200mg/L、b2は約600mg/L、c2とd2はほぼ0mg/Lであった。
この結果から、Ba2+/SO 2−のモル比が1となるようにバリウム水溶液を添加すれば、原水中の硫酸イオンをほぼ完全に除去できることが分かった。
上記で得たアカガネイト濾過後の濾液(第二の上澄み液)a3〜d3に含まれるセレン酸イオン濃度を前記ICP発光分光分析法で測定したところ、a3>b3>c3≒d3の大小関係であった。
この結果から、原水から予め硫酸イオンを除去しておくことにより、後段におけるアカガネイトによるセレン酸の吸着効率が高まることが分かった。
また、第二の上澄み液c3、d3におけるセレン酸イオンの残留濃度(溶存セレン濃度)は環境基準の0.01mg/L未満であった。
この結果から、工事現場の排水中に含まれるセレン濃度は0.03〜0.1mg/L程度であることを考慮すると、本発明によってセレンを含む排水を充分に処理できることが理解される。
[試験例4]
試験例3と同様に、混合液a1〜d1を得た後、各混合液中で生成した硫酸バリウムを濾過で除かずに、混合液a1〜d1に上記で合成した褐色のアカガネイト0.5w/w%をそれぞれ添加し、25℃で10分撹拌した後、濾紙に通して、硫酸バリウムの沈殿及びアカガネイトの粉体(沈殿)を濾過し、透明な濾液a4〜d4を得た。
得られた濾液a4〜d4に含まれるセレン酸イオン濃度を前記ICP発光分光分析法で測定したところ、a4>b4>c4≒d4の大小関係であった。
この結果から、硫酸バリウムは、アカガネイトのセレン酸イオンの吸着を妨げないことが明らかである。
試験例1〜4の結果から、前述した水処理システム及び水処理方法によって、原水から硫酸イオンとそれ以外の無機化合物の陰イオンを除去した処理水が得られることは明らかである。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
R1…セレンを含む土壌・岩石、R2…浄化土、1…破砕機、1a…破砕物供給部、2…抽出槽、2a…抽出液第一送液部、3…フルイ、3a…抽出液第二送液部、3b…残渣移送部、4…サイクロン、4a…抽出液第三送液部、4b…粒子第一移送部、5…濁水処理装置、5a…沈殿第一移送部、5b…抽出液第四送液部、6…貯泥槽、6a…沈殿第二移送部、7…脱水装置、7a…沈殿第三移送部、7b…排水第一送液部、8…砂脱水篩、8a…粒子第二移送部、9…混合機、10…水処理システム、11…原水槽、11a…第一混合液送液部、12…バリウム槽、12a…バリウム供給部、13…第一濁水処理装置、13a…第一の上澄み液送液部、13b…第一沈殿物移送部、14…吸着槽、14a…第二混合液送液部、15…薬品調合槽、15a…薬液供給部、16…第一貯留槽、16a…第一水溶液供給部、17…第二貯留槽、17a…第二水溶液供給部、18…第二濁水処理装置、18a…第二の上澄み液送液部、18b…第二沈殿物移送部、19…放流槽、20…第三貯留槽、20a…凝集剤第一供給部、20b…凝集剤第二供給部、21…貯泥槽、21a…第三沈殿物移送部、22…脱水装置

Claims (3)

  1. セレンが含まれる土壌又は岩石の粒子に、酸化剤を接触させ、セレンを含む抽出液を得る抽出工程を有することを特徴とするセレン含有土壌・岩石の処理方法であって、
    前記土壌又は岩石が硫黄成分を含み、その硫黄成分と前記酸化剤との接触により硫酸が生成され、その硫酸によってセレンを抽出し、
    硫酸イオン及びセレン酸イオンを含む前記抽出液を得て、この抽出液に、バリウムイオンを添加して硫酸バリウムを生成し、遊離の硫酸イオンの濃度が低減した一次処理液を得る第一工程と、
    前記一次処理液をアカガネイトに接触させることにより、前記セレン酸イオンを前記アカガネイトに吸着させ、前記セレン酸イオンの濃度が低減した二次処理液を得る第二工程と、を有することを特徴とするセレン含有土壌・岩石の処理方法。
  2. 前記土壌又は岩石においてセレンが固溶していることを特徴とする請求項1に記載のセレン含有土壌・岩石の処理方法。
  3. セレンが含まれる土壌又は岩石を破砕することによって前記粒子を得る破砕工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセレン含有土壌・岩石の処理方法。
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