JP3406039B2 - エンジンの過給装置 - Google Patents

エンジンの過給装置

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JP3406039B2
JP3406039B2 JP34721793A JP34721793A JP3406039B2 JP 3406039 B2 JP3406039 B2 JP 3406039B2 JP 34721793 A JP34721793 A JP 34721793A JP 34721793 A JP34721793 A JP 34721793A JP 3406039 B2 JP3406039 B2 JP 3406039B2
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C7/00Connecting-rods or like links pivoted at both ends; Construction of connecting-rod heads
    • F16C7/02Constructions of connecting-rods with constant length
    • F16C7/023Constructions of connecting-rods with constant length for piston engines, pumps or the like
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
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    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、クランク室内の容積変
化を利用して過給を行うエンジンの過給装置に関するも
のである。 【0002】 【従来の技術】従来、クランク室を圧縮室として過給を
行うクランクケース過給方式の過給装置としては、エン
ジンのピストンを可動子としかつクランク室を圧縮室と
して容積型圧縮機を形成し、この圧縮機によって吸気を
吸気ポート側の吸気通路内に圧送するものがある。この
種の過給装置は、ピストンが上昇するときにクランク室
内に混合気を吸入し、ピストンが下降するときに吸気ポ
ート側の吸気通路に前記混合気を押出す構造になってい
た。 【0003】すなわち、クランク軸が1回転する間にそ
のエンジンの行程容積分だけ過給が行われることにな
り、このクランクケース過給方式の過給装置を4サイク
ルエンジンに適用すると、吸気行程で過給される量は2
倍となる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかるに、上述したよ
うに構成された従来のクランクケース過給方式の過給装
置では、実際には数十パーセント程度しかエンジン出力
を向上させることができなかった。これは、クランク室
内の無駄容積や通路抵抗が大きいことや、過給される混
合気がエンジンの熱によって膨張して充填効率が低下す
ることに起因していた。 【0005】また、過給性能を高めてエンジン出力を高
めるには、クランク室内の無駄容積を小さくして一次圧
縮比を大きくすればよい。なお、この一次圧縮比は、ピ
ストンが下死点に位置しているときのケース容積Vcに
行程容積Vhを加算し、この加算値を前記Vcで除して求
められる。しかし、前記ケース容積Vcとしてはクラン
ク軸のウェブ間の容積が大きく占めているためそれを小
さくするにも限度があった。 【0006】さらに、クランクケース過給方式の過給装
置としては、上述したようにピストンを可動子とする他
に、特開平2−136513号公報に示されたようにク
ランクケース内にキニー型真空ポンプと同等の圧縮機を
形成したものもあった。 【0007】この公報に開示された過給装置は、クラン
クケース内にロータ室を設けると共に、このロータ室
に、クランク軸によって駆動されるロータが摺動自在に
装填されていた。そして、クランク軸が回転することに
よりロータが回動しつつ揺動して振り子運動を行い、ロ
ータとロータ室の内面との間に形成された圧縮室の容積
が変わることによって吸気が蓄圧室に圧送される構造に
なっていた。 【0008】しかしながら、このようにロータを用いて
吸気を圧送する構成を採ると、クランク軸にロータを連
結する構造が複雑になると共に、吸込側通路と吐出側通
路を閉塞するためのバルブをクランクケースに設けなけ
ればならない。このため、構造が複雑になると共に部品
点数が多くなってしまう。 【0009】本発明は上述したような問題点を解消する
ためになされたもので、部品点数が増えたり構造が複雑
になったりするのを抑えつつ一次圧縮比を大きくしてク
ランクケース過給の能力を大幅に増加させることを目的
とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明に係るエンジンの
過給装置は、クランク軸を軸支するクランクケースに、
コンロッドが対向する内周壁を形成し、上死点付近を除
いたクランク角度においてコンロッドによってクランク
ケース内を2つの気室に仕切る構造とし、これらの気室
のうち一方を新気導入部に連通させると共に、他方を吸
気通路を介して燃焼室に連通させ、この燃焼室に連通さ
れた気室を圧縮室としかつコンロッドを可動子とする容
積型圧縮機を形成してなり、前記コンロッドを、ピスト
ンピンとの摺動連結部、クランクピンとの摺動連結部及
び前記両摺動連結部を結ぶコンロッド中心線近傍部を剛
性あるいは及び強度が高い材料によって一体に形成して
なる芯体と、この芯体の外部を覆いかつ前記気室の壁面
に対向するシール部材とによって形成し、このシール部
材を、前記芯体を形成する材料より比重が小さい合成樹
脂によって形成したものである。 【0011】 【作用】本発明によれば、クランク軸が1回転する毎に
ピストンの行程容積とコンロッド収容部の容積分だけ新
気が燃焼室に圧送されることになるので、一次圧縮比を
大きくすることができる。また、本発明に係る過給装置
は、エンジンを構成する部材だけで形成できる。さら
に、合成樹脂は金属に較べて熱膨張率が低いので、コン
ロッドと気室の壁面とのクリアランスを可及的に小さく
設定可能になる。しかも、この合成樹脂は芯体より比重
が小さいので、コンロッドの重量が軽く抑えられる。加
えて、コンロッドを形成する上で最終工程が合成樹脂を
モールド成形する工程になるので、モールド金型によっ
てコンロッド外面が成形される関係から、コンロッドの
外面を仕上げる加工が不要になる。このようにコンロッ
ドの外面を合成樹脂によって形成すると、クランクケー
ス内に異物が混入したときにこれが合成樹脂部に埋め込
まれるようになると共に、合成樹脂のもつ自己潤滑性に
より、コンロッドが焼き付き難くなる。 【0012】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図1ないし図7に
よって詳細に説明する。図1は本発明に係る過給装置が
設けられた2サイクルエンジンの断面図、図2は図1に
おけるII−II線断面図、図3は本発明に係る過給装置に
使用するクランク軸の概略構成を示す斜視図、図4は同
じくコンロッドの正面図、図5は同じくピストンの概略
構成を示す斜視図、図6は同じくエンジンボディの概略
構成を示す斜視図で、同図はエンジンボディを図2中の
VI−VI線で破断した状態を示す。図7は本発明に係る過
給装置の動作を説明するための断面図で、同図(a)は
クランク軸が上死点にあるときの状態を示し、同図
(b)はクランク軸が上死点から約135度回った状態
を示している。 【0013】これらの図において、1は本発明に係る過
給装置が設けられた2サイクルエンジン(以下、単にエ
ンジンという)で、本実施例では理解し易いように構造
が単純な単気筒型のものを示す。このエンジン1は、ク
ランク軸2を回転自在に支持する下部ケース3a及び上
部ケース3bとからなるクランクケース3と、ピストン
4が嵌挿されるシリンダ孔5を有し前記クランクケース
3上に固着されたシリンダブロック6と、前記クランク
軸2に前記ピストン4を連結するコンロッド7と、前記
シリンダブロック6上に固着されたシリンダヘッド8等
とから構成されている。このシリンダヘッド8には燃焼
室9に臨む点火プラグ10が螺着されている。 【0014】また、前記シリンダ孔5は、前記クランク
ケース3の上部ケース3bとシリンダブロック6に形成
された吸気通路11を介してクランクケース内空間12
に連通されると共に、シリンダブロック6に形成された
排気通路13を介して排気管14内に連通されている。
前記吸気通路11はクランクケース内空間12に開口す
る部分が二股状に形成されている。この二股部分を図中
符号11aで示し、以下において吐出通路という。 【0015】前記クランクケース内空間12は、前記吐
出通路11aとはクランク軸2を挟んで反対側となる部
位がエンジン側方へ向けて開口しており、この開口部に
接続された空気吸込管15と、気化器16とを介して大
気に連通されている。なお、この気化器16は、空気に
燃料を混合させた混合気中に2サイクルエンジン用潤滑
油を混入させる従来周知のものが用いられている。 【0016】前記クランク軸2は、図3に示すように、
円板状に形成された一対のクランクウエブ17,17を
クランクピン18を介して連結して形成されている。2
aはクランクケース3に支持されるジャーナル部であ
る。そして、両クランクウエブ17は、互いに対向する
面(コンロッド側の端面)が平坦に形成され、後述する
コンロッド7が両クランクウエブ17どうしの間に介入
できる寸法をもって離間している。 【0017】また、両クランクウエブ17の外周部には
切欠き17aがそれぞれ形成されている。これらの切欠
き17a,17aは、両クランクウエブ17で同じ位置
に形成され、クランクウエブ17におけるコンロッド側
の端面と外周面とに開口している。そして、これらの切
欠き17aの形成位置はクランクピン18よりクランク
軸2の回転方向前側とされている。 【0018】このクランク軸2にピストン4を連結する
コンロッド7は、図1、図2及び図4に示すように全体
が細長い板状に形成されている。詳述すると、このコン
ロッド7は、剛性あるいは及び強度が高い金属材料によ
って形成された芯体19と、この芯体19を覆う合成樹
脂製シール部材20とから形成されている。前記芯体1
9は、例えばクロムモリブデン鋼等の剛性あるいは及び
強度が高い材料を鍛造してなり、前記クランクピン18
が貫通する大端部側摺動連結部19aと、ピストンピン
21が貫通する小端部側摺動連結部19bと、これら両
摺動連結部を結ぶコンロッド中心線近傍部19cを一体
に成形して形成されている。なお、芯体19は、さらに
浸炭等の表面処理により耐摩耗性が高められている。 【0019】前記シール部材20は、例えばPF(強化
繊維入りフェノール樹脂)やPI(強化繊維入りポリイ
ミド樹脂)等の熱膨張率及び比重が前記芯体19の材料
より小さくかつ耐熱変形温度及び耐ガソリン性が高い熱
硬化性樹脂からなり、モールド金型(図示せず)に前記
芯体19を装填してモールド成形することによって形成
されている。 【0020】そして、このコンロッド7は、クランク軸
2の軸方向を指向する端面を平坦に形成することによっ
てその面にシール面7aが設けられており、大端部から
小端部にわたってその厚みが一定になるように形成され
ている。また、このコンロッド7のシール部材20にお
ける前記大端部側連結部19aを覆う部位と、前記小端
部側連結部19bを覆う部位には、各々の外周面を円弧
状に形成することによってシール面7b,7cが設けら
れている。さらに、これらのシール面7b,7cに一連
に形成されたコンロッド側面7dは直線状に形成されて
いる。 【0021】このコンロッド7は、図2に示すように、
その厚みtが前記クランクウエブ17どうしの間隔Tよ
り僅かに小さい寸法に設定されている。すなわち、コン
ロッド7をクランクウエブ17,17間に挿入すると、
大端部のシール面7aは同図中に示すクリアランスCL
1 を介してクランクウエブ17の側面に対向するように
なる。このクリアランスCL1 は、前記両者が摺接可能
かつシール機能を果たす寸法になっている。 【0022】前記ピストン4は、図5に示すように形成
され、スカート部に開口するコンロッド挿入用凹部が設
けられている。この凹部は、コンロッド7の小端部が摺
動自在に嵌入するように構成されており、コンロッド7
のクランク軸方向端面のシール面7aが摺接する平坦面
からなる摺接面4aと、小端部外周面のシール面7cが
摺接する凹曲面からなる周壁面4bと、この周壁面4b
に連なる平坦面からなる側壁4cとが形成されている。
図5中4dはピストンピン21が嵌入されるピストンピ
ン孔である。 【0023】また、このピストン4における2つの摺接
面4aどうしの間隔は、前記クランクウエブ17どうし
の間隔Tと同一寸法に設定されている。すなわち、コン
ロッド7の小端部のシール面7aは、この摺接面4aに
前記クリアランスCL1 を介して摺接可能に対向するこ
とになる。さらに、このピストン4の周壁面4bの曲率
半径r(図1)は、前記コンロッド7のシール面7cで
の曲率半径r1 より僅かに大きくなるように設定されて
いる。そして、周壁面4bとシール面7cの間に生じる
クリアランスCL2 は、両者が互いに摺接可能かつシー
ル機能を果たす寸法になっている。 【0024】上述したように形成されたクランク軸2,
コンロッド7及びピストン4は、従来のエンジンと同様
に、コンロッド7の大端部をクランクピン18を介して
クランク軸2のクランクウエブ17に連結すると共に、
コンロッド7の小端部をピストンピン21を介してピス
トン4に連結することによって組立てられる。このクラ
ンク軸組立体では、コンロッド7のクランク軸方向端面
のシール面7aがクランク軸2のクランクウエブ17と
ピストン4の摺接面4aに摺接し、コンロッド7の小端
部外周面のシール面7cがピストン4の周壁面4bに摺
接することになる。 【0025】前記クランクケース3とシリンダブロック
6との組立体からなるエンジンボディEには、図6に示
すように、クランク軸2のクランクウエブ17が回転自
在に嵌入する円形凹部22と、シリンダ孔5に連通され
かつコンロッド7が移動する空間となるコンロッド収容
部23と、このコンロッド収容部23に一連に設けられ
てコンロッド収容部23とエンジン外とを連通する吸入
通路24とが形成されている。また、前記円形凹部22
aの周壁面には、前記吸気通路11の一部となる吐出通
路11aが開口されている。なお、前記クランクケース
内空間12は、前記円形凹部22、コンロッド収容部2
3、吸入通路24等から構成されている。 【0026】前記円形凹部22の内径及び深さ寸法は、
クランクウエブ17の外径及び厚み寸法より僅かに大き
く設定され、円形凹部22内にクランクウエブ17が微
小間隙をおいて挿入されるように構成されている。さら
に、この円形凹部22の周壁面とコンロッド7の大端部
との間には、クリアランスCL3 (図1)が形成されて
いる。このクリアランスCL3 は、図1に示すようにコ
ンロッド大端部の軸心から前記周壁面までの寸法をRと
すると、このRよりコンロッド7の大端部外周面(シー
ル面7b)の曲率半径r2 (図4)が僅かに小さくなる
ように設定されている。図1中に示す二点鎖線Cは、ク
ランク軸2が回転したときにコンロッド7の大端部中心
が描く回転軌跡である。そして、円形凹部22の周壁面
とシール面7bの間に生じるクリアランスCL3 は、両
者が互いに摺接可能かつシール機能を果たす寸法になっ
ている。なお、図6中25はクランク軸2のジャーナル
部2aが挿通される軸受孔である。 【0027】前記コンロッド収容部23の側壁23a
は、前記円形凹部22に前記クランク軸組立体のクラン
ク軸2を装着させてピストン4を往復動作させたときの
コンロッド7の外縁部分の移動軌跡と略対応するように
形成されている。そして、このコンロッド収容部23を
エンジンボディEに形成することによって、エンジンボ
ディEにはコンロッド7のクランク軸方向端面のシール
面7aが摺接する平坦面からなる摺接面26と、コンロ
ッド7の大端部外周面のシール面7bが摺接する凹曲面
からなる周壁面27とが形成されている。なお、前記摺
接面26はエンジンボディE内に互いに対向するように
2箇所に形成され、これらの摺接面26どうしの間隔
は、前記クランクウエブ17どうし、あるいはピストン
4の摺接面4aどうしの間隔Tと同一に設定されてい
る。このため、コンロッド7のシール面7aは摺接面2
6に前記クリアランスCL1 を介して対向するようにな
る。 【0028】すなわち、エンジンボディEにクランク軸
組立体を装着すると、ピストン4が下死点に位置すると
きにはエンジンボディE内はコンロッド7及びピストン
4によって2室に仕切られ、図1に示すように、吸入通
路24側の気室Aと吐出通路11a側の気室Bとが設け
られることになる。 【0029】二股状に形成された前記吐出通路11a
は、クランク軸2に2つ設けられたクランクウエブ17
の各々の外周面と対向するように、2つの開口がクラン
ク軸2の軸方向に並べられている。その形成位置は、円
形凹部22の周方向に対して同じ位置であって、図6に
示すように、コンロッド収容部23における側壁23a
のクランク軸側端部と隣接する位置とされている。 【0030】このように吐出通路11aが形成されたエ
ンジンボディEにクランク軸組立体を装着させてクラン
ク軸2を回すと、吐出通路11aはクランク軸2のクラ
ンクウエブ17によって開閉されることになる。すなわ
ち、図7(a),(b)に示すように、クランクウエブ
17の外周面が吐出通路11aの開口に対向している状
態では、吐出通路11aはクランクウエブ17によって
閉塞される。そして、クランク軸2が回って図1に示し
たようにクランクウエブ17の切欠き17aが吐出通路
11aの開口に対向するようになると、吐出通路11a
はこの切欠き17aを介して気室B側に連通するように
なる。このときには、気室Bと吸気通路11とが切欠き
17a,吐出通路11aを介して連通される。 【0031】このため、クランクウエブ17が実質的に
ロータリバルブとなり、クランクウエブ17によって吐
出通路11aが開閉されることになる。 【0032】上述したように構成されたエンジン1で
は、エンジンボディEにクランク軸組立体を装着させて
クランク軸2を回転させると、ピストン4がシリンダ孔
5内を往復すると共に、コンロッド7がコンロッド収容
部23内で揺動しつつ上下動して振り子運動するように
なる。このときにはコンロッド7の大端部中心は図1C
で示すような回転軌跡を描くことになる。 【0033】そして、ピストン4が下死点近傍に位置す
るときに図1中に矢印で示すようクランク軸2が時計回
りに回転することによって、気室Bは容積が次第に減少
してその内部の空気が圧縮される。このとき、図1に示
すようにクランクウエブ17の切欠き17aが吐出通路
11aの開口と対向するようになると、圧縮されていた
気室Bの空気は吐出通路11aへ押し出されると共に、
気室Aは容積が次第に増加し、その内部には気化器16
によって燃料及び2サイクルエンジン用潤滑油が混合さ
れた混合気が空気吸込管15から導入されるようにな
る。また、吐出通路11aに圧送された空気は、エンジ
ン1の吸気行程で吸気通路11が開くと同時に燃焼室9
内に押し込まれる。 【0034】すなわち、エンジン1内に、コンロッド収
容部23を圧縮室としかつピストン4及びコンロッド7
を可動子とし、クランクウエブ17を実質的に圧縮空気
逆流防止用ロータリバルブとして構成された容積型圧縮
機が形成され、この圧縮機によって過給を行うことがで
きる。 【0035】ここで、上述したように構成された過給装
置の動作を図7(a),(b)によってさらに詳細に説
明する。 【0036】先ず、図7(a)に示すエンジン1の圧縮
行程終期で爆発が起こりピストン4が下降する。ピスト
ン4が下降してクランク軸2が図において時計回りに回
転すると、コンロッド7の大端部外周面のシール面7b
が周壁面27に摺接するようになり、コンロッド収容部
23内がびA,B2気室に画成されるようになる。この
とき、気室Bには、それまでコンロッド収容部23内に
吸入された空気が入ることになる。 【0037】そして、クランク軸2がさらに回転する
と、気室Bの容積が次第に減少すると共に気室Aの容積
が次第に増加するようになり、気室B内の空気が圧縮さ
れかつコンロッド収容室22内に新気が吸い込まれるこ
とになる。このときの状態を図7(b)に示す。 【0038】図7(b)の状態からさらにクランク軸2
が回ると、気室Bがさらに狭められると共に気室Aが拡
張される。このときには、コンロッド7の大端部と小端
部のシール面7b,7cがエンジンボディEの周壁面2
7とピストン4の周壁面4bにそれぞれ摺接しており、
コンロッド7のクランク軸方向端面のシール面7aがク
ランク軸2のクランクウエブ17,エンジンボディEの
摺接面26及びピストン4の摺接面4aに摺接している
ために、気室Aと気室Bとが連通されることはない。 【0039】さらにクランク軸2が回転すると、図1に
示したように、クランクウエブ17に形成された切欠き
17aが吐出通路11aの開口に対向するようになり、
気室Bが切欠き17aを介して吐出通路11aに連通さ
れることになる。このため、気室Bが狭められることに
よって圧縮されたその部分の混合気が切欠き17a及び
吐出通路11aを通って吸気通路11へ圧送される。す
なわち、切欠き17aの形成位置は、コンロッド7が過
給装置の圧縮行程の終期にあるときに前記開口と対応す
る位置に設定されている。 【0040】一方、気室Aはコンロッド移動分とピスト
ン上昇分だけ容積が増えて減圧されるから、気室Aには
減圧分だけ空気吸込管15から混合気が吸い込まれる。 【0041】気室Bの容積は、図1の状態からクランク
軸2が引き続き回転することによって次第に狭められ、
コンロッド7の大端部外周面のシール面7bが吐出通路
11aの開口の下側開口縁に達したときに最も狭くな
る。すなわち、このときまで吸気通路11に混合気が圧
送されることになる。 【0042】そして、さらにクランク軸2が回ると図7
(a)に示す状態になり、クランクウエブ17の切欠き
17aが吐出通路11の開口から離間すると共にこの開
口がクランクウエブ17によって閉塞されるようにな
る。このため、エンジン1の圧縮行程において吸気通路
11内の混合気がコンロッド収容部23内(気室A側)
に逆流することはない。すなわち、従来の2サイクルエ
ンジンに用いられるリード弁装置は本発明に係るエンジ
ン1では不要になる。 【0043】上述したように構成された過給装置では、
クランク軸2が1回転する毎にコンロッド収容部23内
の空間の容積と、ピストン4の行程容積とを加算した容
積の空気が吸気通路11に圧送されることになる。そし
て、エンジン1の吸入行程で吸気通路11が開くときに
は、吸気通路11に圧送された混合気が燃焼室9内に供
給される。また、クランク軸2、ピストン4及びコンロ
ッド7の各摺動部の潤滑は、混合気中に含まれる2サイ
クルエンジン用潤滑油によって行われることになる。 【0044】したがって、本実施例で示す過給装置では
コンロッド7の芯体19を合成樹脂製シール部材20で
覆ったため、合成樹脂は金属に較べて熱膨張率が低いの
で、コンロッド7と前記A室,B室の壁面とのクリアラ
ンスCL1〜CL3を可及的に小さく設定することが可能
になる。すなわち、クリアランスCL1〜CL3はエンジ
ン1の暖機が終了した後も変化が小さいから、圧縮漏れ
を起こし難い過給装置を得ることができる。 【0045】しかも、この合成樹脂は芯体19より比重
が小さいので、コンロッド7の重量を軽く抑えることが
できる。このため、クランクウエブ17やジャーナル部
2aの小径化を図ることができる。これと共に、回転物
が軽量になってエンジン振動が小さくなる。加えて、コ
ンロッド7を形成する上で最終工程が合成樹脂をモール
ド成形する工程になるので、モールド金型によってコン
ロッド外面が成形される関係から、コンロッド7の外面
を仕上げる加工が不要になる。 【0046】このようにコンロッド7の外面を合成樹脂
によって形成すると、クランクケース3内に異物が混入
したときにこれが合成樹脂部に埋め込まれるようにな
り、焼き付きが起き難くなる。しかも、合成樹脂のもつ
自己潤滑性により摺動部の抵抗が小さくなり、これによ
ってもコンロッド7の焼き付きを防ぐことができる。 【0047】なお、本実施例ではコンロッド7のクラン
ク軸方向端面の全面にシール面7aを形成したが、同等
の機能を果たすことができればシール面7aの構造は適
宜変更することができる。また、クランク軸2のクラン
クウエブ17,コンロッド7,ピストン4及びエンジン
ボディEの各摺接部分には、摩擦抵抗を減らすと共に気
密を高めるために、ルーツ型過給装置のロータに採用さ
れているようにフッ素樹脂をコーティングすることもで
きる。 【0048】また、本実施例では吐出通路11aをクラ
ンクウエブ17の外周面と対向する位置に開口させた例
について説明したが、この開口位置としては、クランク
ウエブ17の軸方向端面と対向する部位に位置づけるこ
ともできる。このようにしても上記実施例と同等の効果
が得られる。 【0049】さらに、本実施例ではシリンダ軸線が鉛直
方向を指向するエンジン1を使用したが、本発明を適用
するエンジンとしては、シリンダ軸線が水平方向を指向
するものを採用することができる。例えば、図1の紙面
を時計回りに90度回してシリンダ軸線を水平にしたよ
うなエンジンを用いることもできる。このようなエンジ
ンでは、気室Bが気室Aの上方に位置するようになる。
そして、クランクケース3内に漂うミスト状の潤滑油が
気室B内に溜まる場合には、この潤滑油がコンロッド7
の側面7dを伝ってピストンピン21側へ流れることに
なる。すなわち、潤滑し難いピストンピン21が給油さ
れて耐久性を向上させることができる。 【0050】加えて、本実施例では通常の形状のクラン
クによる構成を示したが、片側のみのジャーナル部2
a,同じく片側のみのクランクウエブ17及びクランク
ピン18により形成される片持ちクランクによって構成
することもできる。 【0051】さらにまた、コンロッド7としては、上記
実施例に示したようにその長手方向軸線を中心にして対
称に形成する以外に、図8に示すように形成することも
できる。 【0052】図8はコンロッドの他の実施例を示す図
で、同図(a)は正面図、同図(b)は(a)図におけ
るVIIIB−VIIIB線断面図、同図(c)は(a)図にお
けるVIIIC−VIIIC線断面図である。これらの図におい
て前記図4で説明したものと同一もしくは同等部材につ
いては、同一符号を付し詳細な説明は省略する。 【0053】図8に示すコンロッド7は、エンジンに装
着されたときのシール形状に対応させて外形が形成され
ている。すなわち、コンロッド7における前記気室A側
となる側部は圧縮時のシール面にはならないので、この
部分を削除して形成してある。図8において30は気室
A側となる(前記コンロッド収容部23の側壁23aと
は反対側となる)側面である。 【0054】さらにまた、図1ないし図7に示すコンロ
ッド7を図9に示すように構成することもできる。図9
はクランクピン及びピストンピンとの連結部にニードル
ベアリングをそれぞれ介装したコンロッドの他の実施例
を示す断面図である。同図において前記図1ないし図7
で説明したものと同一もしくは同等部材については、同
一符号を付し詳細な説明は省略する。 【0055】図9に示したコンロッド7は、主に爆発力
を伝達する芯体19の周囲を、圧縮室形成機能あるいは
及び爆発力を副次的に伝達する補強機能を有する補助体
41で覆って形成されており、芯体19の大端部側連結
部、小端部側連結部19a,19bとクランクピン1
8、ピストンピン21との間にアウターケージ付きニー
ドルベアリング42,43が介装されている。前記芯体
19は焼き入れした炭素鋼によって形成されている。前
記補助体41は合成樹脂によって形成されている。 【0056】また、このコンロッド7は、芯体19の連
結部19a,19bの軸方向端面を補助体41の外面に
露出させて形成されている。すなわち、芯体19のコン
ロッド中心線近傍部19cは補助体41より薄く形成さ
れている。 【0057】前記ニードルベアリング42,43は、そ
れぞれアウターケージ42a,43aと、ニードル42
b,43bとから構成されている。アウターケージ42
a,43aは芯体19のボス部19a,19bにそれぞ
れ圧入固定されている。そして、これらのアウターケー
ジ42a,43aとクランクピン18、ピストンピン2
1との間にニードル42b,43bが転動自在に多数本
介装されている。ニードル42b,43bはアウターケ
ージ42a,43aと同等の材料(例えば、SUJ鋼
等)によって形成されている。 【0058】すなわち、図9に示したコンロッド7は、
ニードルベアリング42,43が他の部位より剛性ある
いは及び強度の高い材料によって形成されることにな
る。 【0059】なお、図9に示したようにニードルベアリ
ングを使用する場合には、アウターケージを使用しない
構成を採ることもできる。このように構成するに当たっ
ては、前記連結部19a,19b(例えば、鍛造された
クロムモリブデン鋼等製)のニードル転動面に浸炭焼入
れあるいは窒化処理を施してこの部分の表面硬度を高め
ておく。 【0060】さらに、上述したニードルベアリング4
2,43を図8のコンロッド7に対して使用することも
可能である。この場合では、ニードルベアリングがコン
ロッド7側の連結部19a,19bの内周に圧入され、
コンロッド7はニードルベアリング内周を貫通するピス
トンピン及びクランクピンに揺動可能に連結される。 【0061】 【発明の効果】以上説明したように本発明に係るエンジ
ンの過給装置は、クランク軸を軸支するクランクケース
に、コンロッドが対向する内周壁を形成し、上死点付近
を除いたクランク角度においてコンロッドによってクラ
ンクケース内を2つの気室に仕切る構造とし、これらの
気室のうち一方を新気導入部に連通させると共に、他方
を吸気通路を介して燃焼室に連通させ、この燃焼室に連
通された気室を圧縮室としかつコンロッドを可動子とす
る容積型圧縮機を形成してなり、前記コンロッドを、ピ
ストンピンとの摺動連結部、クランクピンとの摺動連結
部及び前記両摺動連結部を結ぶコンロッド中心線近傍部
を剛性あるいは及び強度が高い材料によって一体に形成
してなる芯体と、この芯体の外部を覆いかつ前記気室の
壁面に対向するシール部材とによって形成し、このシー
ル部材を、前記芯体を形成する材料より比重が小さい合
成樹脂によって形成したため、クランク軸が1回転する
毎にピストンの行程容積とコンロッド収容部の容積分だ
け新気が燃焼室に圧送されることになるので、一次圧縮
比を大きくすることができる。 【0062】このため、クランクケース過給を行うに当
たって一次圧縮比を大きくとれるので、過給性能を高め
ることができる。また、合成樹脂は金属に較べて熱膨張
率が低いので、コンロッドと気室の壁面とのクリアラン
スを可及的に小さく設定することが可能になる。したが
って、エンジンの温度変化によるクリアランス変化が小
さくなってシール性を高めることができ、過給性能を高
く保つことができる。 【0063】しかも、この合成樹脂は芯体より比重が小
さいので、コンロッドの重量が軽く抑えられる。このた
め、クランク軸のクランクウエブやジャーナル部等の小
径化を図ることができ、エンジン及び過給装置の小型化
を図ることができる。これと共に、エンジンの振動が小
さくなる。 【0064】加えて、コンロッドを形成する上で最終工
程が合成樹脂をモールド成形する工程になるので、モー
ルド金型によってコンロッド外面が成形される関係か
ら、コンロッドの外面を仕上げる加工が不要になる。こ
のようにコンロッドの外面を合成樹脂によって形成する
と、クランクケース内に異物が混入したときにこれが合
成樹脂部に埋め込まれるようになると共に、合成樹脂の
もつ自己潤滑性により、コンロッドが焼き付き難くな
る。 【0065】また、本発明に係る過給装置は、エンジン
を構成する部材だけで形成できるから、従来の過給装置
に較べて構造が簡素化されると共に部品点数が減少す
る。特に、クランクウエブが実質的に圧縮空気逆流防止
用ロータリバルブとなるので、吸気系に逆止弁を別途に
設ける必要がなくなる。このため、従来の基本的なクラ
ンクケース過給装置に較べて吸気抵抗を減らすことがで
き、しかも、構造が簡単になる。 【0066】さらに、本発明に係る過給装置は、コンロ
ッドの幅とエンジンのボア,ストロークによって吐出量
が決まるので、吐出量設計の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る過給装置が設けられた2サイク
ルエンジンの断面図である。 【図2】 図1におけるII−II線断面図である。 【図3】 本発明に係る過給装置に使用するクランク軸
の概略構成を示す斜視図である。 【図4】 本発明に係る過給装置に使用するコンロッド
の正面図である。 【図5】 本発明に係る過給装置に使用するピストンの
概略構成を示す斜視図である。 【図6】 本発明に係る過給装置に使用するエンジンボ
ディの概略構成を示す斜視図で、同図はエンジンボディ
を図2中のVI−VI線で破断した状態を示す。 【図7】 本発明に係る過給装置の動作を説明するため
の断面図で、同図(a)はクランク軸が上死点にあると
きの状態を示し、同図(b)はクランク軸が上死点から
約135度回った状態を示している。 【図8】 コンロッドの他の実施例を示す図で、同図
(a)は正面図、同図(b)は(a)図におけるVIIIB
−VIIIB線断面図、同図(c)は(a)図におけるVIII
C−VIIIC線断面図である。 【図9】 クランクピン及びピストンピンとの連結部に
ニードルベアリングをそれぞれ介装したコンロッドの他
の実施例を示す断面図である。 【符号の説明】 1…エンジン、2…クランク軸、3…クランクケース、
4…ピストン、6…シリンダブロック、7…コンロッ
ド、7a…シール面、7b…シール面、7c…シール
面、9…燃焼室、11…吸気通路、11a…吐出通路、
17…クランクウエブ、17a…切欠き、18…クラン
クピン、19…芯体、21…ピストンピン、24…吸入
通路、26…摺接面、27…周壁面、41…補助体、4
2…ニードルベアリング、43…ニードルベアリング。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02B 33/24 F02B 33/02 F02B 33/44 F16C 7/02 F02B 33/28

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ピストンがコンロッドを介して連結され
    たクランク軸を軸支するクランクケースに、前記コンロ
    ッドが対向する内周壁を形成し、上死点付近を除いたク
    ランク角度においてコンロッドによってクランクケース
    内を2つの気室に仕切る構造とし、これらの気室のうち
    一方の気室を新気導入部に連通させると共に、他方の気
    室を吸気通路を介して燃焼室に連通させ、この燃焼室に
    連通された気室を圧縮室としかつコンロッドを可動子と
    する容積型圧縮機を形成してなり、前記コンロッドを、
    ピストンピンとの摺動連結部、クランクピンとの摺動連
    結部及び前記両摺動連結部を結ぶコンロッド中心線近傍
    部を剛性あるいは及び強度が高い材料によって一体に形
    成してなる芯体と、この芯体の外部を覆いかつ前記気室
    の壁面に対向するシール部材とによって形成し、このシ
    ール部材を、前記芯体を形成する材料より比重が小さい
    合成樹脂によって形成したことを特徴とするエンジンの
    過給装置。
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