JP3406012B2 - ホローカソードガンの放電方法 - Google Patents

ホローカソードガンの放電方法

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JP3406012B2
JP3406012B2 JP00898393A JP898393A JP3406012B2 JP 3406012 B2 JP3406012 B2 JP 3406012B2 JP 00898393 A JP00898393 A JP 00898393A JP 898393 A JP898393 A JP 898393A JP 3406012 B2 JP3406012 B2 JP 3406012B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、PVD法(物理蒸着
法)による蒸着装置において、蒸発源を蒸発およびイオ
ン化するためにホローカソード放電現象を利用した、ホ
ローカソードガン(HCDガン)の、効率的な放電方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】PVD装置に設置して、蒸発源を加熱蒸
発およびイオン化するための手段の1つに、低電圧大電
流でもってアーク放電を利用することを特徴とする、通
称ホローカソードガン(HCDガン)と呼ばれるものが
ある。ホローカソード放電とは、中空(ホロー)の陰極
(カソード)より不活性ガスを供給し、この供給ガスを
イオン化して陰極及び陽極間で自励放電を形成すること
である。この自励放電を形成するには、初期段階で別の
エネルギー源を用いて陰極及び陽極間のガスをイオン化
し、導電状態にすることが必要である。従来は、初期段
階のガスイオン化を行うために、熱フィラメントを用い
て熱電子によるガスのイオン化、またはRF(高周波)
によるガスのイオン化を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の熱フィラメント
方式のホローカソードガンでは、次のような問題点があ
った。 (1)熱フィラメント方式では、初期段階に於いて、フ
ィラメントが熱断し易いこと、及び陰極が加熱されて熱
電子が発生するまでに時間を要すること、等の問題があ
った。またRF(高周波)では、RFによって起誘され
る電位分布の乱れ、及び必要外の広範囲に亘ってイオン
化を行うための着火の不安定性が問題となった。 (2)高真空領域(5×10-4Torr以下)では、放電空
間インピーダンスの関係で、HCDの維持が困難であっ
た。 (3)陰極は負電位であるために、放電中に正イオンに
よるスパッタを受け、陰極の消耗を生じ、陰極形状の変
化による放電不安定を生じた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(1)初期段階におけるガスのイオン化は、陰極内部で
アーク放電(パイロットアーク)を発生させ、これをガ
スのイオン化に用いる。 (2)パイロットアークによる支援作用を利用して、高
真空領域でのHCDを可能にする(付加的手段)。 (3)パイロットアーク放電、及びHCDの着火を確実
に行わせるために、少なくともパイロット電源と並列
に、瞬間的にパルストリガーパルスを与える手段を付加
する。 (4)陰極近傍を陽電位にし、陰極近辺に電位勾配を設
けることにより、イオンリフレクト効果により正イオン
の流入を妨げ、電極の消耗を低減する様にしても良い。
【0005】
【実施例】以下の実施例において、陰極(カソード)を
ビーム電極、パイロットアーク発生用の電極をパイロッ
ト電極、と読み替えて説明することにする。
【0006】蒸発源10を収納した坩堝1を備えた真空
槽2内に、ビーム電極3及びパイロット電極4を少なく
とも備えたホローカソードガン5を設置する。ビーム電
極3とパイロット電極4との間に接続したパイロット電
源E1(例えば、直流20〜40V、40A)により、
両電極間に第1次放電を生じさせる。その後、ビーム電
極3と坩堝1との間に跨がって接続したプラズマ電源E
2(例えば、直流20〜80V、300A)により、ビ
ーム電極と、坩堝1に納めた蒸発源10との間に第2次
放電を起こさせる。この第2次放電がホローカソードガ
ンとしての主放電である。
【0007】第1次放電をより確実に発生させるため
に、ビーム電極3とパイロット電極4との間に接続した
パイロット電源E1と並列に、トリガー電源P1を接続
する。このトリガー電源P1が発生させる高電圧放電に
より、第1次放電に先立ってトリガー放電を生じさせる
とよい。トリガー放電は、第1次放電(パイロットアー
ク放電)発生の誘因とするために、高電圧により電極間
空間の絶縁を破壊することを目的とするものである。
【0008】従って、トリガー電源P1は、(ビーム電
極3とパイロット電極4との間の絶縁破壊距離にもよる
が)、例えばギャップが5mm程度の場合には、例えば電
圧5KV、電流10mA以上の直流、交流、高周波、パルス
波、等の高電圧を供給し得るものであれば良い。
【0009】第1次放電を更に確実化するため、補助電
極6を付加しても良い。
【0010】第2次放電を更に確実化するため、プラズ
マ電源E2と並列にトリガー電源P1と同様なトリガー
電源を接続しても良い。
【0011】本発明の課題解決策の特徴を明示するため
に、以下に、従来の熱フィラメント方式(図3参照)
と、本発明のパイロットアーク方式(図1、2参照)と
の比較を行う。
【0012】1)主放電時間について:熱フィラメント
方式では、フィラメントを加熱し、その輻射熱によりア
ルゴンガスのイオン化を行う。そのため、主放電させる
のに十分なイオンを生成するまでに、数分(5〜10
分)を要した。
【0013】これに対して、パイロットアーク方式で
は、ビーム電極とパイロット電極との間で直接的に、パ
イロットアーク放電を行わせるため、効率よく僅か1〜
2秒で、アルゴンガスのイオン化を行うことができる。
このため、パイロットアーク放電(第1次放電)開始
後、瞬時に、主放電(第2次放電)を開始できる。
【0014】2)アルゴンガスのイオン化効率につい
て:上記の所要時間に関して、アルゴンガスをイオン化
するために必要な、エネルギーの観点から、両者の効率
について比較してみる。以下の計算数値は、印加電流
(A)、電圧(V)、及び印加時間(秒)の順序で示
す。
【0015】 熱フィラメント :200×10×600=720 kJ(最大) パイロットアーク: 40×20× 2= 1.6kJ(最大) 両者の比率 :1.6/720≒0.0022
【0016】つまり、パイロットアーク方式では、熱フ
ィラメント方式の、450分の1のエネルギーで、イオ
ン化の目的が達成されることになり、省エネルギーの点
でも好ましい。このような大差がついた理由は、前者が
輻射による間接イオン化であるのに対して、後者は放電
による直接イオン化であるためである。
【0017】3)ガスイオン化手段の寿命: 熱フィラメント :直径2mm、長さ60mmの、Taフィ
ラメントを使用している。このフィラメントは、通電時
間2〜3時間で熱断する。 パイロットアーク:フィラメントを使用していないた
め、熱断の問題は生じない。
【0018】4)高真空放電の維持について:HCDで
は、一旦、主放電が開始されると、熱フィラメントによ
るアルゴンのイオン化、またはパイロットアークによる
イオン化は必要なく、自励放電により維持できる筈であ
る。
【0019】しかし、自励放電は、十分なアルゴン密度
が確保されなければ維持できないので、凡そ5×10-4
Torr以下では、自励放電が停止する。そこで、従来の熱
フィラメント方式では、フィラメントを加熱し続け、輻
射によるアルゴンガスのイオン化を行えばよいが、別の
問題がある。
【0020】すなわち、Taフィラメントは、発熱させ
る必要上、その太さを直径2mmまでに制限しなければな
らず、この太さの場合の許容しうる(熱断しない)最大
印加電流は、約250Aである。
【0021】ところが、ビーム電極を兼ねるフィラメン
トに対して、フィラメント加熱電流と主放電電流とが、
重畳して印加された場合には、フィラメントの一部に2
50A以上の電流が流れることになり、フィラメントの
熱断の原因となってしまう。
【0022】これに対して、パイロットアークの場合に
は、フィラメントの場合のように発熱のための直径の制
限はないので、ビーム電極としては、直径10mm程度の
太さのものを使用してもよい。
【0023】従って、パイロットアーク放電と主放電と
を同時に使用することが可能であり、パイロットアーク
によるアルゴンガスのイオン化の、補充作用を行わせる
ことにより、凡そ5×10-5Torrでも主放電の維持が可
能となる。
【0024】5)補助電極(パイロットアーク補助電
極)の追加の意義:パイロットアーク方式では、ビーム
電極とパイロット電極間に第1次放電を行うわけである
が、より確実な第1次放電(パイロットアーク放電)を
開始させるためには、下記のような補助電極6を使用す
るとよい。
【0025】図2に示すように、パイロット電極4の更
に外側に、下部の開口部を除く全体を包むように補助電
極6を配置する。そして、補助電極6の電位がパイロッ
ト電極4の電位と同電位に設定する。実施例では、切替
器7を−側に設定する。これにより、+電位にあるパイ
ロット電極4が−電位にあるビーム電極3と−電位にさ
れた補助電極6との間に挟まれて対向面積が拡大するこ
とになる。
【0026】この状態で、パイロット電源E1と並列に
接続したトリガーパルス源P1により、トリガー放電を
起こさせると、電極間空間8の広い範囲に亙って、イオ
ン化したガスが予め存在することになるので、第1次放
電が発生し易くなる。
【0027】また、主放電開始後、例えば、極性切替器
7で極性切替を行い、補助電極6の電位を−から+に切
り替えることにより、Ar+ イオンを反発するように仕
向けると、Ar+ イオンによる、ビーム電極3、及びパ
イロット電極4に対するスパッタを防止し、延いては、
ビーム電極3(カソード)の寿命を伸ばすことができ
る。
【0028】
【発明の効果】熱フィラメント方式の場合に生じるフィ
ラメント11の熱断の問題がなく、長時間に亘って安定
に動作する。又、ビーム電極3とパイロット電極4との
間の近距離で第1次放電を生じさせ、次にビーム電極3
と坩堝1との間で第2次放電を起こさせる2段階方式な
ので、着火が早く、放電の安定も早い。補助電極6を設
けることにより、カソード(ビーム電極3)の消耗が減
じて長寿命化する効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するホローカソードガンの
電極配置及び電圧印加関係を示す図である。
【図2】補助電極を追加した場合の電極配置及び電圧印
加関係を示す図である。
【図3】従来の熱フィラメント方式のホローカソードガ
ンを示す図である。
【符号の説明】
1 坩堝 2 真空槽 3 ビーム電極 4 パイロット電極 5 ホローカソードガン 6 補助電極 7 切替器 8 電極間空間 10 蒸発源 E1 パイロット電源 E2 プラズマ電源 P1 トリガー電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 37/08 C23C 14/32 H01J 37/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビーム電極及びパイロット電極を少なく
    とも備えたホローカソードガンと、蒸発源を収納する坩
    堝と、を真空槽内に設置して、該ホローカソードガンを
    放電させる方法であって、 該ビーム電極と該パイロット電極との間に高電圧を印加
    して両電極間にトリガー放電を生じさせ、該トリガー放
    電を契機として該ビーム電極と該パイロット電極の間に
    1次放電を生じさせた後、該ビーム電極と該坩堝内の蒸
    発源との間で第2次放電を起こさせることを特徴とする
    ホローカソードガンの放電方法。
  2. 【請求項2】 ビーム電極、パイロット電極及び補助電
    極を少なくとも備えたホローカソードガンと、蒸発源を
    収納した坩堝と、を真空槽内に設置して、該ホローカソ
    ードガンを放電させる方法であって、 少なくとも該ビーム電極と該パイロット電極との間に高
    電圧を印加して少なくとも両電極間にトリガー放電を生
    じさせることと、該トリガー放電を契機として該ビーム
    電極と、該パイロット電極及び該補助電極との間に1次
    放電を生じさせた後、該ビーム電極と該坩堝内の蒸発源
    との間で第2次放電を起こさせることと、を特徴とする
    ホローカソードガンの放電方法。
  3. 【請求項3】 該ビーム電極と該坩堝内の蒸発源との間
    で第2次放電を起こさせた後に、該補助電極を該ビーム
    電極の極性とは反対の極性に設定すること、を特徴とす
    る請求項2記載のホローカソードガンの放電方法。
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