JP3405469B2 - 野積み堆積物の表面処理方法 - Google Patents

野積み堆積物の表面処理方法

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JP3405469B2
JP3405469B2 JP29758793A JP29758793A JP3405469B2 JP 3405469 B2 JP3405469 B2 JP 3405469B2 JP 29758793 A JP29758793 A JP 29758793A JP 29758793 A JP29758793 A JP 29758793A JP 3405469 B2 JP3405469 B2 JP 3405469B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工場の原料ヤードやそ
の他の場所に野積み状態で貯蔵されている野積み堆積物
の表面保護・強化処理方法およびそれに用いる表面処理
剤に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼所等の工場で使用される原料は、通
常、種類別に分けられてヤードに野積み状態で貯蔵され
ている。そのような野積み堆積物は、風が吹くと微細な
粉塵が飛散して作業環境や周囲環境の悪化を招いたり、
また雨が降ると堆積している原料が流出して堆積量が減
少したり堆積形態が崩れて、経済的な損失を招いたり、
再堆積のための手間や時間を必要とする。また堆積物が
雨水などを吸収すると、例えば石炭の場合には石炭より
コークスを製造する際に含水量が多くなっているために
蒸発熱損を生じたり、堆積物の上部と下部とで水分の含
有量が異なることによりその原料から得られる製品の品
質にばらつきを生ずるという問題がある。
【0003】上記した問題点を解決するために、野積み
堆積物の表面に表面処理剤を塗布してその表面の強化や
防水などを図る方法が従来より提案されており、そのよ
うな従来技術としては、野積み堆積物の表面にセメン
トミルクを塗布する方法;セメントミルクを塗布した
後にさらに耐水性樹脂の水溶液を塗布する方法(特公昭
60−48412号公報);セメントミルクおよび樹
脂を水に分散させた樹脂エマルジョンを堆積物の表面に
散布して硬化させる方法(特公昭60−54349号公
報);水不溶性で高粘度かつ高チクソ性の樹脂エマル
ジョンまたは該樹脂の溶液を堆積物の表面に塗布する方
法(特公昭62−25561号公報)が知られている。
【0004】しかし、上記の方法による場合は、堆積
物の表面硬度は増加するものの、表面に形成されたセメ
ント被膜にひび割れが発生し易く、そのひび割れから粉
塵が飛散したり雨水が浸入するため、野積み堆積物を風
雨から完全に保護することができず実用性に欠けてい
る。また、上記の方法による場合は、セメントミルク
を塗布した後に更にその上に塗布される耐水性樹脂とし
て透明なものが使用されているために、耐水性樹脂水溶
液の塗布量を把握するのが困難であり、しかも塗布量が
部分的に異なって樹脂膜の厚みに斑を生じても発見しに
くく、そのために塗布量が過度になってコスト高になっ
たり、樹脂膜の厚み斑により表面にひび割れが発生し易
くなるという欠点がある。また、上記の方法も上記
の方法とほぼ同様の欠点を有する。また上記の方法に
よる場合も、樹脂液が高粘度であるために塗布むらを生
じ易く、上記の方法と同様の欠点を有している。
【0005】上記した従来技術の欠点を改良するため
に、染料や顔料等の着色剤を含む樹脂液を野積み堆積物
の表面に塗布する方法が知られている。この方法による
場合は、表面処理液が着色剤を含有していることによっ
てその塗布層の厚みに斑が無いか否か、適性量が塗布さ
れているか否かの確認が容易になり、上記のおよび
の方法の欠点を解消することができる。しかしながら、
そのためには樹脂液が多量の着色剤を含有していること
が必要であり、その結果コスト高になったり、堆積物の
表面に形成された樹脂被覆層の強度が低下し易くなると
いう欠点を有する。また、堆積物がコークス用の石炭の
場合には、表面処理液中に含有させた無機顔料がコーク
ス製造時に分解除去されないためにコークス中の灰分含
量が増加して品質低下を招き易い。
【0006】そして、上記した問題を解決するために、
本発明者らは、アクリル繊維などの有機系繊維または該
有機系繊維と着色剤を含有する樹脂液を野積み堆積物の
表面に塗布する方法を先に提案した(特開平4−272
008号公報)。この方法による場合は、有機系繊維の
使用によって表面塗布層の強度が向上してひび割れの発
生をかなり低減することができ、また加えられる有機系
繊維が一般に不透明であることによって、必要に応じて
添加される着色剤の作用と相俟って、塗布層の厚み斑の
発生を防止できるという効果を有している。
【0007】しかしながら、屋外に野積みされた堆積物
は時として激しい雨や風に暴されることがあり、そのよ
うな苛酷な状況下ではアクリル繊維等の有機系繊維を含
有する樹脂液を用いる上記した方法では、堆積物の表面
に形成された樹脂と有機系繊維との複合体被膜にひび割
れが発生し、堆積物の飛散や流失、雨水の浸透、堆積形
態の崩壊などを完全には防止できず、一層の改良が求め
られてきた。また、前記特公昭62−25561号公報
にも、塗膜の強度を向上させるために、セルロース、コ
ットン、麻、カポック、パームなどの植物繊維、羊毛、
羽毛などの動物繊維およびナイロン、ビニロン、テトロ
ンなどの合成繊維を樹脂液中に配合することが記載され
ている。しかし、この方法の場合も、上記方法と同様
に、ひび割れが生じたり、補強強度が不十分であった
り、または樹脂液中での分散性が不十分であるという欠
点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、通常
の環境下では勿論のこと、激しい雨や風などの苛酷な状
況下に暴された場合にも、ひび割れなどの発生による堆
積物の飛散や流失、堆積形態の崩壊、雨水などの浸み込
みなどを生じず、野積み堆積物をそれ本来の品質を保ち
ながら安全に且つ強固に保護することのできる野積み堆
積物の表面処理方法およびそのための表面処理剤を提供
することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らが検討を重ねた結果、特定の膨潤度を有する
ポリビニルアルコール系繊維を有機重合体の水溶液また
は水性分散液中に添加して表面処理剤をつくり、この表
面処理剤を用いて野積み堆積物の表面処理を行うと、耐
ひび割れ性、防水性などの特性に優れた強度の高い被膜
を堆積物の表面に形成させることができ、堆積物が激し
い雨や風などに暴された場合にも、その飛散、流失、堆
積形態の崩壊、雨水などの浸透を効果的に防止できるこ
とを見出して本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、有機重合体の水溶液
または水性分散液に膨潤度が20〜150%のポリビニ
ルアルコール系繊維(以下「PVA系繊維」という)を
分散させた表面処理剤を野積みした堆積物の表面に塗布
することを特徴とする野積み堆積物の表面処理方法であ
る。そして、本発明は、有機重合体の水溶液または水性
分散液に膨潤度が20〜150%のPVA系繊維を分散
させたことを特徴とする野積み堆積物用の表面処理剤で
ある。
【0011】ここで、本発明でいう「野積み堆積物」と
しては、典型的には工場の原料ヤードやその他の屋外の
貯蔵場所に堆積された粉砕状、粒状、粉状などを呈する
石炭、鉱物、石灰、セメント、砂、砂利、土、コークス
などの工業資材を挙げることができる。しかしながら、
本発明の表面処理剤の使用対象はそれらに限定されるも
のではなく、例えば屋内に堆積されたものであっても、
周囲環境の関係で風、水、塵埃などの影響を受け易くそ
のような環境からの保護が必要であり、しかも本発明の
表面処理剤で処理してもその品質やその後の取り扱いに
悪影響を受けないような堆積物はいずれもその対象に含
まれ、また工業資材に限らず、建築用、農業用などの他
の用途に用いられる堆積された資材をも包含する。
【0012】本発明の表面処理剤における有機重合体と
しては、被膜形成性を有し、且つ耐水性、耐ひび割れ性
を有する有機重合体のいずれもが使用できる。そのよう
な有機重合体の例としては、アクリル系重合体[(メ
タ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、アクリ
ロニトリルなどのアクリル系モノマー重合体、またはそ
れらのアクリル系モノマーと他の共重合性モノマー(ス
チレン、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなど)との
共重合体];ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン
−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン
−ジエン共重合体などのオレフィン系重合体;酢酸ビニ
ル系重合体(ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−エチレン共
重合体、酢酸−アクリル共重合体など);ポリエチレン
テレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポ
リエステル類;アルキッド樹脂;エポキシ樹脂;天然ゴ
ム;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロピレ
ン、SBR、NBR、ポリウレタンなどの合成ゴムなど
を挙げることができ、これらの有機重合体は単独で使用
しても又は2種以上を併用してもよい。
【0013】特に、本発明の表面処理剤は、野積み堆積
物に塗布した後にそのまま放置して天日乾燥または風乾
させる場合が多く、加熱を施す場合も比較的低温での温
風乾燥が主に採用されるから、表面処理剤に用いる有機
重合体としては、そのような天日乾燥、風乾、低温加熱
乾燥などによっても丈夫な被膜を形成することのでき
る、上記したアクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、
オレフィン系重合体、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂な
どのなどの有機重合体が特に好ましい。
【0014】表面処理剤における有機重合体の濃度は、
有機重合体の種類、その物性、PVA系繊維の配合量、
PVA系繊維の太さ、他の成分の有無やその配合量など
に応じて調節することができ、一般にPVA系繊維の単
繊維繊度が大きくなるほど(PVA系繊維が太くなるほ
ど)PVA系繊維の沈降防止のために有機重合体の濃度
を高くする必要があるが、水性媒体をも含めた表面処理
剤の全重量に基づいて、有機重合体の濃度(含有量)を
通常約3〜25重量%にするのが被膜形成性および塗布
作業の容易性などの点から好ましく、5〜20重量%が
より好ましく、10〜20重量%が更に好ましい。有機
重合体の濃度が3重量%未満であると被膜形成性が低下
して野積み堆積物の表面に強力な保護被膜を円滑に形成
しにくくなり、一方20重量%を超えると表面処理剤の
粘度が高くなって塗布時の作業性が劣るようになる。
【0015】そして、本発明の表面処理剤には有機重合
体と共に膨潤度が20〜150%であるPVA系繊維を
分散含有させる。膨潤度が20〜150%のPVA系繊
維を用いることによって、野積み堆積物の表面に強度が
高くてひび割れの生じにくく、しかも防水性に優れ水を
通しにくい被膜を形成させることができる。その理由は
明確ではないが、堆積物の表面に形成されたPVA系繊
維による網状構造の網目の間に有機重合体の被膜が形成
され、その際に有機重合体膜の形成されていない間隙が
存在する場合にもPVA系繊維が20〜150%という
高い膨潤度を有していることによって、PVA系繊維が
膨潤してその間隙が消失または狭められて、被膜に防水
性が付与されるものと推定される。
【0016】使用するPVA系繊維の膨潤度が20%未
満であると、堆積物表面に形成された被膜の防水性が劣
るようになり、一方150%を超えると被膜の強度が低
下する。PVA系繊維の膨潤度は30〜100%である
のがより好ましい。ここで、本発明におけるPVA系繊
維の膨潤度とは、次のようにして測定したときの値をい
う。
【0017】膨潤度の測定法:PVA系繊維を所定の重
量だけ採取し、それを繊維長3mmに切断する。これを
常温(30℃)の水に10分間浸漬したのち取り出して
遠心脱水機により3000rpmで10分間遠心脱水
し、その時の重量(W1)を測定し、更に熱風乾燥機
(105℃)で4時間乾燥し、その時の重量(W0)を
測定する。そして下記の数式1によりPVA系繊維の膨
潤度を求める。
【0018】
【数1】PVA系繊維の膨潤度(%)={(W1−W0
/W0}×100
【0019】産業資材用や衣料用としてPVA系繊維
(いわゆるビニロン)が広く用いられているが、従来市
販されているPVA系繊維は、その膨潤度が通常10%
以下と低く、そのようなPVA系繊維は、ポリビニルア
ルコールを湿式紡糸して得られた繊維を乾燥した後、乾
熱状態で延伸し、更にアセタール化処理を行うことによ
り製造されている。より具体的には、樹脂の補強用また
は衣料用として通常用いられているPVA系繊維の代表
的なものは、アセタール化処理されていて、その強度が
12g/d前後、伸度が5%前後で、膨潤度が9%前後
である。それに対して、本発明で使用するPVA系繊維
はその膨潤度が20〜150%であって、樹脂の補強や
衣料用として用いられているそのようなPVA系繊維に
比べて膨潤度が著しく高くなっており、そのような高い
膨潤度を有するPVA系繊維を使用する点に大きな特徴
を有している。
【0020】本発明で使用する膨潤度が20〜150%
のPVA系繊維は、完全ケン化ポリビニルアルコール
(ケン化度99.5モル%以上)の水溶液を用いて湿式
紡糸し、それにより得られた紡糸原糸を湿潤状態で約
1.5〜8倍に延伸した後乾燥することにより得ること
ができる。しかし、PVA系繊維の製法はそれに限定さ
れるものはなく、膨潤度が20〜150%のPVA系繊
維であればいずれも使用できる。本発明において、使用
するPVA系繊維の膨潤度が大きいことにより、重合体
の水系エマルジョンや水溶液との親和性に優れ、その結
果、樹脂濃度が低く重合体を含む液の粘度が低い場合で
あっても(例えば常温で300センチポイズ以下)、堆
積物中に速やかに浸透してしまうことがなく、十分な膜
厚を有する重合体塗膜が形成できる。また重合体を含む
液の粘度がこのように低い場合には、散布する作業性に
優れており、更に堆積物の凹凸に沿って重合体が均一に
塗布されて塗膜むらが生じにくいと長所も得られる。
【0021】本発明のPVA系繊維はビニルアルコール
の単独重合体からなっていても、また場合により膨潤度
が20〜150%である限りは、ビニルアルコールと少
量(一般に10モル%以下)の他の共重合性モノマー
(例えばエチレン、塩化ビニル、アクリル系モノマー、
ピバリン酸ビニルなど)との共重合体からなっていても
よい。また限定されるものではないが、その際にPVA
系重合体として分子量が約1500〜24000のもの
を用いるのが好ましい。
【0022】一方、野積み堆積物の表面に形成された被
膜の強度や耐ひび割れ性などの特性は、被膜を構成する
有機重合体膜とPVA系繊維との間の接着力に依存する
ことが大きく、PVA系繊維の単繊維繊度を小さくし
(PVA系繊維を細くし)且つPVA系繊維の繊維長を
大きくするほど有機重合体膜との接着力が増大する。し
かし、PVA系繊維を細く且つ長くする程、表面処理液
中におけるPVA系繊維の分散性が低下し、PVA系繊
維が塊状に絡まったファイバーボールが形成され易くな
り、スプレーガンなどによる吹き付け困難になるため
に、野積み堆積物の表面にPVA系繊維を均一に分布さ
せることが困難になるという相反する事象を生ずる。
【0023】そのため、有機重合体膜との間の接着性、
表面処理剤中での均一分散性、塗布作業の容易性、堆積
物表面での均一分布などの点を総合的に勘案すると、P
VA系繊維の単繊維繊度を0.5〜5デニールとし、繊
維長を1〜10mmとするのが好ましく、単繊維繊度が
1〜2デニールで繊維長が3〜6mmであるのがより好
ましい。その場合に、PVA系繊維は単一の単繊維繊度
(例えば1デニール)のもの単独からなっていても、複
数の単繊維繊度(例えば1デニールと2デニール)の繊
維の混合物であってもよい。また、場合によっては単繊
維繊度が0.5未満のものや5デニールを超えるものが
少量(通常30重量%以下)混ざっていてもよい。ま
た、PVA系繊維の繊維長も単一の繊維長(例えば3m
m)のもの単独からなっていても、複数の繊維長(例え
ば2mmと3mm)のものの混合物であってもよい。ま
た、場合によっては繊維長が1mm未満のものや10m
mを超えるものが少量(通常30重量%以下)混ざって
いてもよい。
【0024】表面処理剤中におけるPVA系繊維の含有
量は、有機重合体の種類、濃度、PVA系繊維の単繊維
繊度、繊維長などにより変えることができ、PVA系繊
維の分散性が良好な場合は表面処理剤中におけるPVA
系繊維を多くするほど堆積物表面に形成される被膜の強
度が向上するが、PVA系繊維の添加量が多すぎると被
膜におけるPVA系繊維の網目の数が多くなり過ぎてそ
の網目間隙への有機重合体の充填量が不足して、被膜全
体ではその防水効果が低減して雨水などが浸透し易くな
り、しかもPVA系繊維の多量使用によってコストが上
昇するという問題がある。そのため、表面処理剤中にお
けるPVA系繊維の含有量を、有機重合体の重量に基づ
いて2〜8重量%とするのが、形成される被膜の防水
性、コストなどの点から好ましく、3〜7重量%がより
好ましい。
【0025】本発明の表面処理剤では、有機重合体の水
溶液または水性分散液中にPVA系繊維が分散した状態
となっており、PVA系繊維の2次凝集を抑制するため
に通常適時撹拌が行われるが、PVA系繊維の比重が水
よりも小さいと水面に浮かんでしまって水中に分散した
状態にならず、一方PVA系繊維の比重が大き過ぎると
沈降してやはり水中に分散しにくくなるので、一般に比
重が約1.1〜1.4程度のPVA系繊維を用いるのが
水中での均一分散性の点から好ましい。
【0026】また、本発明の表面処理剤は、有機重合体
およびPVA系繊維と共に、必要に応じて染料や顔料な
どの着色剤、分散助剤、造膜助剤、増粘剤、凍結安定剤
などの他の成分を含有していてもよい。本発明の表面処
理剤は、水性塗料などの水性の表面被覆剤の製造に際し
て従来から使用されている従来公知の方法で調製するこ
とができ、例えば適当な方法で水に有機重合体を溶解ま
たは分散させて有機重合体の水溶液または水性分散液を
調製した後、それにPVA系繊維を添加し分散させるこ
とにより調製することができる。
【0027】本発明の表面処理剤を野積み堆積物の表面
に施す方法としては、表面処理剤を均一に塗布すること
のできる方法であればいずれも採用できるが、一般に、
散布または噴霧による方法が操作性、均一塗布性など点
から好ましく採用できる。野積み堆積物への塗布量は、
野積み堆積物の種類、形態、表面処理剤の内容などに応
じて調節できるが、一般に野積み堆積物の表面1m2
たり表面処理剤を約500〜3000ml程度塗布する
のがよい。塗布した後は、そのまま放置して天日乾燥や
風乾などによって乾燥させると、堆積物の表面に有機重
合体とPVA系繊維とからなる複合被膜が形成される。
また、必要に応じて、熱風、温風、冷風などを当てて乾
燥を促進してもよい。
【0028】本発明の方法によって表面に有機重合体と
PVA系繊維との複合体からなる被膜が形成された野積
み堆積物は、その使用時にはショベルやその他の適当な
手段によって簡単にその表面の被覆層を破壊して必要量
だけ採取することができる。また採取された原料に本発
明の表面処理剤が付着していても、例えば石炭からコー
クスを製造する場合のように高熱処理を伴う原料にあっ
ては、コークスなどの製造時の高熱によって表面処理剤
が完全に加熱分解されるので、得られるコークスなどの
製品の品質低下を生じない。更に、本発明で使用するP
VA系繊維は、基本的には炭素、水素および酸素原子の
みからなる重合体であり、燃焼した場合に有害なガスが
発生せず、人体に対して安全であり、しかも得られた製
品に対しても何ら悪影響を及ぼさないものである。ま
た、原料中に本発明の表面処理剤が含まれてはならない
場合には、その表面の保護被膜を野積みされた堆積原料
から剥がして使用すればよく、その場合には被膜に付着
している原料の量が極めて少ないので、風や雨などによ
って飛散したり流失する場合に比べれば原料の損失を最
小限に抑えることができる。
【0029】本発明の方法による場合は、例えば鉄鋼所
の原料ヤードに野積み貯蔵された粒状石炭の堆積物、鉱
物、石灰、セメント、砂、砂利、土などの各種の野積み
堆積物の表面、また必要に応じて屋根付きの工場内に堆
積貯蔵されている各種の堆積原料、野積みされた建築用
や農業用の資材の表面に強度が大きくひび割れの生じに
くい、防水性に富む表面保護・強化被膜を極めて簡単な
操作で経済的に形成させることができる。
【0030】
【実施例】以下に実施例などにより本発明を具体的に説
明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の例
において、表面処理剤中におけるPVA系繊維の分散性
の評価、被膜または該被膜を有する石炭板の引張強度お
よび曲げ強度の測定は次のようにして行った。
【0031】表面処理液中におけるPVA系繊維の分散
:スチレン−アクリル共重合体樹脂エマルジョン[タ
イホー工業(株)製「ダスカバーS−250B」(固形
分45重量%)]を希釈して固形分濃度10重量%にし
たスチレン−アクリル共重合体樹脂エマルジョン液を調
製し、これを所定長にカットしたPVA系繊維を、25
℃±5℃の温度で300rpmの回転速度で撹拌しなが
ら3時間タンクに貯蔵した際に、PVA系繊維の絡合凝
集が全く生じないものを○、PVA系繊維の絡合凝集が
多少生じたものを△、PVA系繊維の絡合凝集が激しく
生じて撹拌翼にPVA系繊維が多量に付着したものを×
として評価した。
【0032】引張強度:台紙上に形成させた有機重合体
とPVA系繊維とからなる複合体被膜、または該複合体
被膜を表面に形成した台紙上の石炭板から、幅3cm、
長さ4cmの試験片を採り、温度20℃、湿度60%の
条件下に、島津製作所製の引張強度試験機(AG500
0B型)を用いて引張速度2cm/分で引張ってその引
張強度を測定した。
【0033】曲げ強度:台紙上に形成させた有機重合体
とPVA系繊維とからなる複合体被膜、または該複合体
被膜を表面に形成した台紙上の石炭板から、幅3cm、
長さ10cmの試験片を採り、温度20℃、湿度60%
の条件下に、島津製作所製の試験機(AG5000B
型)を用いて、スパン5cm、中央載荷方式で載荷速度
2cm/分で試験を行ってその曲げ強度を測定した。
【0034】《参考例 1》 (1) 100メッシュの金網上に、目付17g/cm
2、厚さ0.048mm、引張り強度0.335kg/
cm2(3cm幅)の台紙を置いた後、その台紙の上に
膨潤度が30%で下記の表1に示す単繊維繊度および繊
維長を有するPVA繊維[(株)クラレ製「紙添加用V
PB」]の水分散物を、PVA繊維の割合が以下で使用
する樹脂の重量に対して3.5重量%になるようにして
散布した後乾燥させた。 (2) 次いで、スチレン−アクリル共重合体樹脂エマ
ルジョン(固形分45重量%;タイホー工業(株)製
「ダスカバーS−250B」)を希釈して濃度10重量
%の樹脂エマルジョンとし、これを1500ml/m2
の割合で上記の台紙上のPVA繊維上にスプレーガンを
使用して吹き付けた後、温風乾燥機にて30℃で3日間
乾燥させて、台紙上にPVA繊維とスチレン−アクリル
共重合体樹脂の複合体被膜を形成させた。 (3) 上記で(2)得た台紙上の複合体被膜を台紙ご
と幅3cm、長さ4cmの試験片に切断して、その引張
り強度を上記した方法で測定した。その結果を下記の表
1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】《実施例 1》 (1) 参考例1で使用したのと同じスチレン−アクリ
ル共重合体樹脂の濃度10%の水性エマルジョンに、単
繊維繊度1.0デニール、繊維長3mmで下記の表2に
示す膨潤度を有するPVA繊維を表2に示す割合(樹脂
の重量に対する割合)で添加してPVA繊維を含有する
樹脂エマルジョンを調製した。この樹脂エマルジョン中
におけるPVA繊維の分散性は下記の表2に示すとおり
であった。 (2) 実施例1で使用したのと同じ台紙上に、径4m
m以下の石炭を厚さ15mmに敷き並べ、その上に上記
(1)で調製したPVA繊維含有樹脂エマルジョンを1
500ml/m2の割合でスプレーガンで吹き付けて、
温風乾燥機にて30℃で5日間乾燥してスチレン−アク
リル共重合体樹脂とPVA繊維の複合体被膜を表面に有
する石炭板を作製した。 (3) 上記(2)で作製した台紙上の複合体被膜付き
の石炭板を台紙ごと幅3cm、長さ4cmの試験片に切
断して、その引張り強度を上記した方法で測定した。ま
た、台紙上の複合体被膜付きの石炭板を台紙ごと幅3c
m、長さ10cmの試験片に切断してその曲げ強度を上
記の方法で測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】《実施例 2》 (1) 実施例1で使用したのと同じ台紙上に、径が4
mm以下の石炭を厚さ15mmに敷き並べ、その上に実
施例1の(1)で調製したのと同様のPVA繊維含有樹
脂エマルジョン(PVA繊維の単繊維繊度1.0デニー
ル;繊維長3mm;膨潤度は表3のとおり;PVA繊維
添加量3.5重量%)を1500ml/m2の割合でスプ
レーガンで吹き付けて、温風乾燥機にて30℃で5日間
乾燥してスチレン−アクリル共重合体樹脂とPVA繊維
の複合体被膜を有する石炭板を作製した。 (2) 内径が40mm、高さ300mmのアクリル樹
脂製の管を図1に示すように上記(1)で作製した台紙
上の複合体被膜付きの石炭板上に静かに立てて、接合部
をパテにて接着し、この部分より漏水のない構造とし
た。管の内部に高さ50mmとなるように水を注入し、
時間の経過による下面からの漏水状況(水面高さ)を観
察した。その結果を表3に示す。表中、水面高さとは、
管の下から水面までの高さであり、水面高さ50mmは
漏水が全くない状態、水面高さ0mmは注入した水が全
て漏水したことを表す。
【0039】
【表3】
【0040】上記表2および表3の結果から、膨潤度が
20〜150%のPVA繊維を使用した場合には、石炭
の表面に引張強度、曲げ強度および防水性に優れた樹脂
とPVA繊維との複合体被膜が形成されるのに対して、
膨潤度が20%未満のPVA繊維を用いた場合には該複
合体被膜の引張強度および曲げ強度は高いものの防水性
が極めて低いこと、また膨潤度が150%を超えるPV
A繊維を用いた場合には該複合体被膜の防水性が良好で
あるものの引張り強度および曲げ強度に劣ることがわか
る。
【0041】
【発明の効果】本発明による場合は、強度および防水性
に優れた有機重合体とPVA系繊維とからなる保護・強
化被膜を野積み堆積物の表面に極めて簡単な作業で効率
よく形成させることができる。そのため、本発明による
場合は、野積み堆積物の表面に形成された被膜にひび割
れが発生せず、しかも被膜を通して雨水などが浸透しな
いので、堆積物の飛散や流失、堆積形態の崩壊、雨水な
どの浸み込みなどを生じず、堆積物をそれ本来の特性を
維持しながら安全に且つ強固に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において被膜の防水性を評価す
るための試験内容を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 健次 大阪府大阪市北区梅田1丁目12番39号 株式会社クラレ内 (72)発明者 馬屋原 光郎 岡山県岡山市海岸通り1丁目2番1号 株式会社クラレ内 (56)参考文献 特開 昭60−93008(JP,A) 特開 昭54−160492(JP,A) 特開 平4−272008(JP,A) 特公 昭62−25561(JP,B1) 特公 昭60−48412(JP,B1) 特公 昭60−54349(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B65G 3/02 C08L 29/04 C09D 5/00 C09D 7/12 C09K 3/18 101

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機重合体の水溶液または水性分散液に
    膨潤度が20〜150%のポリビニルアルコール系繊維
    を分散させた表面処理剤を野積みした堆積物の表面に塗
    布することを特徴とする野積み堆積物の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系繊維として単繊
    維繊度が0.5〜5デニールで、繊維長が1〜10mm
    のものを用いる請求項1の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 表面処理剤における有機重合体の濃度が
    3〜25重量%で、ポリビニルアルコール系繊維の含有
    量が有機重合体の重量に基づいて2〜8重量%である請
    求項1または2の表面処理方法。
  4. 【請求項4】 有機重合体の水溶液または水性分散液に
    膨潤度が20〜150%のポリビニルアルコール系繊維
    を分散させたことを特徴とする野積み堆積物用の表面処
    理剤。
  5. 【請求項5】 ポリビニルアルコール系繊維の単繊維繊
    度が0.5〜5デニールで、繊維長が1〜10mmであ
    る請求項4の表面処理剤。
  6. 【請求項6】 有機重合体の濃度が3〜25重量%で、
    ポリビニルアルコール系繊維の含有量が有機重合体の重
    量に基づいて2〜8重量%である請求項4または5の表
    面処理剤。
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