JP3404358B2 - ボールペン用チップ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【発明の属する技術分野】本発明は、ボールペン用のチ
ップに関し、特に剪断減粘性インクを用いたボールペン
に適したボールペン用チップに関するものである。 【０００２】 【従来の技術】従来、この種のボールペン用チップに
は、筆記掠れや不書きの防止、インク漏れ等の回避を目
的として、ホルダー先端のボールハウス内に抱持された
転写ボールを後方から弾発部材によって付勢し、該弾発
部材をホルダー内の後部側に固定されたスリーブで受け
止めることで、転写ボールをボールハウス内の内向き先
端縁に密接させるように構成したものがある。ところ
で、ボールペン用チップを先端部に有するリフィール
は、予めインクが充填されたインク収容管にチップを嵌
着するという工程で製造されるため、製造工程の途中で
は、インク製造中に含まれた気泡や、チップ嵌着時に侵
入した気泡、あるいは、これらの気泡が分裂して生じた
微細な気泡等が残留している。そして、これらの気泡
は、後工程の遠心分離処理で脱気される。即ち、チップ
が嵌着されたインク収容管は、チップ先端の転写ボール
側を遠心方向に向けた状態で遠心分離機にかけられる。
すると、比重の大きいインクがチップ内の先端側に集め
られると共に、比重の小さい気泡はインク収容管の後方
に移動して後端の開口部から脱気される。 【０００３】しかしながら、上記従来のボールペン用チ
ップによれば、リフィール製造時に該チップ内に残留し
た気泡は、上記遠心分離処理の際に、弾発部材を受け止
めているスリーブの円形状前端面に引っかかって後方に
移動しなくなり、ホルダー内に残留したままになってし
まうことがあり、この気泡の残存により筆記掠れや不書
き等の不良を発生してしまうことが懸念された。 【０００４】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来事情
に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、リ
フィール製造時の遠心分離処理において気泡が残存する
ことのない高品質なボールペン用チップを提供すること
にある。 【０００５】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明の技術的手段として、請求項１は、ホルダー内
の先端のボールハウス内に抱持された転写ボールを後方
から弾発部材によって付勢しているボールペン用チップ
において、前記弾発部材は、金属製のホルダー内周面に
一体に周方向へ複数設けられた小突起により、後端部が
受け止められ、前記複数の小突起は、ホルダー後方側か
らのブローチ加工によって形成された切削片であること
を特徴とする。上記技術的手段によれば、弾性部材が周
方向の複数の小突起のみによって受け止められているた
め、リフィール製造工程の遠心分離処理における脱気の
際、複数の小突起及びホルダー内周面が殆ど障害となる
ことなく、ホルダー内の気泡を後方へスムーズに移動さ
せることになる。 【０００６】また、上記複数の小突起を、ホルダー後方
側からのブローチ加工によって形成される切削片とする
ことで、弾性部材を受ける小突起を簡単且つ短時間に形
成できる。尚、この場合、切削片が欠け落ちたり、切粉
を発生したりすることがないように、ホルダーを靱性の
高い材料で形成するのが好ましい。 【０００７】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図１及び２は、本発明に係るボー
ルペン用チップの一例を示す。このチップＡは、先細な
略筒状を呈するホルダー１０内に、転写ボール１と、該
転写ボール１を後方から付勢する弾発部材２０とを備
え、該弾発部材２０の後端部が、ホルダー１０内周面に
一体に周方向へ複数設けられた小突起１３ａにより受け
止められている。そして、このチップＡは、予めインク
が充填されたインク収容管５０に嵌着されてボールペン
のリフィールを構成する。 【０００８】ホルダー１０の内部は、転写ボール１を回
動可能に抱持するボールハウス１１と、このボールハウ
ス１１後方側の括れ状のインク導入孔１２と、該インク
導入孔１２に向かって先端側が漸次縮径されているイン
ク通路１３と、後述するブローチ４０を挿入し易くする
ように前記インク通路１３の後方側を若干拡径したブロ
ーチ導入部１４との各部位を連通させてなる。 【０００９】そして、このホルダー１０内には、弾発部
材２０がボールハウス１１内の内向き先端縁１１ａに転
写ボール１を押し付けた状態で挿入され、該弾発部材２
０の後端部を受け止める複数の小突起１３ａが、前記イ
ンク通路１３の後部側に形成されている。 【００１０】小突起１３ａは、後述するブローチ加工に
より、先端部をホルダー１０前端方向に向けて巻き起し
状に形成した切削片であり、ホルダー１０の材質を靱性
の高い金属材料にすることで、欠け落ちることがない
上、切粉をほとんど発生することなく形成されている。
尚、ホルダー１０の材質には、好ましくはステンレス材
が用いられる。 【００１１】弾発部材２０は、コイル状のスプリング部
２２の先端に直線状のストレート部２１を一体形成する
と共に、前記スプリング部２２の後端に該スプリング部
２２よりも一回り程大きな径で巻回された密着コイル状
の座巻き部２２ａを一体形成してなる。 【００１２】スプリング部２２は、その外径面とホルダ
ー１０内面との間に、リフィール製造工程における脱気
処理の際に、気泡を後方にスムーズに移動させるための
クリアランスＨが設けられている。 【００１３】また、座巻き部２２ａは、チップＡの製造
時にパーツフィーダーの送出部に吊るすべく拡径された
部位である。即ち、チップＡの製造時に弾発部材２０
は、その重量バランスによってストレート部２１側が下
方に向けられた状態で、座巻き部２２ａによって吊るさ
れて送出される。 【００１４】次に、上記構成のチップＡの組立て手順を
詳細に説明する。図３（ａ）に示すように、先ず、ボー
ルハウス１１内に転写ボール１を抱持したホルダー１０
内には、その後端側から弾発部材２０が挿入される。こ
の状態において、弾発部材２０の全長Ｌ１は、その後端
部を受け止められていないため、最大長さ（自由長さ）
である。 【００１５】次に、図３（ｂ）に示すように、ホルダー
１０後端のブローチ導入部１４からブローチ４０が挿入
されて、ブローチ加工が行われる。ブローチ４０は、図
４及び５に示すように、先端側が断面放射状に形成され
た棒状治具であり、その先端側において遠心方向に突出
する各片部には、弾発部材２０の座巻き部２２ａ内に遊
嵌される案内部４１と、同スプリング部２２の後端部を
受ける段状受部４２と、インク通路１３後部側に溝を切
削加工する刃部４３とが形成されている。 【００１６】従って、ブローチ４０は、ホルダー１０内
に挿入させて行く過程において、先ず、案内部４１を弾
発部材２０の座巻き部２２ａ内に遊嵌させる。そして、
該座巻き部２２ａの後端部を段状受部４２によって受け
ながら、スプリング部２２を圧縮して行く。 【００１７】そして、刃部４３がインク通路１３の後端
に差し掛かり、更にブローチ４０が前進されて行くと、
刃部４３によりインク通路１３の後部側に溝１３ｂが切
削加工される。それと同時に前記溝１３ｂの前端には切
削片が発生し、ブローチ４０が所定位置まで前進される
ことで、前記切削片が、弾発部材２０の後端部を受け止
められる高さの小突起１３ａとなる。この小突起１３ａ
は、ブローチ４０の先端が複数の放射状片部からなる刃
部であるため、周方向に複数形成される。尚、ブローチ
４０が所定位置まで前進した際、弾発部材２０は、その
後端部をブローチ４０の段状受部４２に押されているた
め、図３（ｂ）に示す全長Ｌ２まで収縮する。 【００１８】次に、図３（ｃ）に示すように、ブローチ
４０が後方に抜かれる。すると、後端部をブローチ４０
の段状受部４２に押されていた弾発部材２０が復元し、
該弾発部材２０の後端部が複数の小突起１３ａによって
受け止められる。即ち、弾発部材２０は、弾性的に復元
することにより、その全長を図３（ｃ）に示すＬ３まで
伸ばし、その全長Ｌ３の状態で転写ボール１を付勢す
る。 【００１９】而して、上記構成のチップＡによれば、弾
発部材２０の後端部が周方向に断続的な複数の小突起１
３ａによって受け止められるため、リフィール製造工程
の遠心分離処理における脱気の際、小突起１３ａ及びホ
ルダー１０内周面が殆ど障害となることなく、ホルダー
１０内の気泡を後方へスムーズに移動させることにな
る。 【００２０】尚、小突起１３ａの数は、図示例のように
５箇所に限定されるものではない。また、ブローチ４０
には、本実施の形態のように段状受部４２を設けるのが
好ましいが、段状受部４２を設けないで、刃部４３によ
って切削片を形成しながら、その形成されて行く切削片
によって弾発部材２０を圧縮して行くようにしても構わ
ない。 【００２１】 【発明の効果】本発明によれば、弾発部材がホルダー内
に形成された複数の小突起により受け止められ、遠心分
離処理で脱気される際、従来技術のスリーブのように気
泡が引っ掛かる円形状前端面を有することがないため、
気泡は、障害とならない複数の小突起間を抜けて後方へ
スムーズに移動することになる。従って、簡素な構造の
小突起により部品コストを削減できる上、内部に気泡が
残存することのない高品質なボールペン用チップを提供
できる。しかも、ブローチ加工により形成される切削片
を弾発部材が受け止められる小突起として利用するよう
にすれば、前記複数の小突起を、簡単且つ短時間に形成
することができる。

【図面の簡単な説明】 【図１】 本発明に係るボールペン用チップの一例を示
す縦断面図。 【図２】 図１における（２）−（２）線断面図。 【図３】 同ボールペン用チップにおける組立て手順を
示す縦断面図であり、（ａ）は、ホルダー内に弾発部材
を挿入した状態、（ｂ）は、ホルダー内にブローチを挿
入して小突起を形成している状態、（ｃ）は、ホルダー
内からブローチを抜いた状態を示す。 【図４】 同ボールペン用チップの加工に用いるブロー
チを示す斜視図。 【図５】 同ブローチの刃を軸線に対し対象に示してい
る断面図。 【符号の説明】 １：転写ボール １０：ホルダー １１：ボールハウス １３ａ：小突起 ２０：弾発部材 ４０：ブローチ Ａ：チップ

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 ホルダー内の先端のボールハウス内に抱
   持された転写ボールを後方から弾発部材によって付勢し
   ているボールペン用チップにおいて、 前記弾発部材は、金属製のホルダー内周面に一体に周方
   向へ複数設けられた小突起により、後端部が受け止めら
   れ、 前記複数の小突起は、ホルダー後方側からのブローチ加
   工によって形成された切削片である ことを特徴とするボ
   ールペン用チップ。