JP3400355B2 - 攪拌連続鋳造装置 - Google Patents

攪拌連続鋳造装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は攪拌連続鋳造装置、
特に、軸線を上下方向に向け、且つ周壁下部に複数の冷
却水用噴出孔を貫通させた筒状水冷鋳型と、その筒状水
冷鋳型の外周側に冷却水溜りを形成すべく、その鋳型を
囲繞する筒状隔壁と、前記筒状水冷鋳型内の溶湯に、そ
れを周方向に流動させる攪拌力を付与する攪拌機とを備
えた攪拌連続鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】前記筒状水冷鋳型には前記攪拌力に起因
した振動が発生する。この振動を十分に抑制しない場合
には、筒状水冷鋳型内の出口近傍において、インゴット
内部の未凝固部分が外周部の凝固部分を突破る現象、つ
まりブレイクアウトが発生して鋳造不能といった事態を
招くおそれがある。このような事態を回避するために
は、一般に筒状水冷鋳型およびその支持構造を強固にす
る、といった手段が採用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記のよ
うな手段を採用すると、水冷鋳型およびその支持構造が
大型になると共に煩雑化し、延いては装置全体の大型化
および生産コスト増を招来する、という新たな問題を生
じた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、簡単な手段に
よって前記攪拌力に起因した筒状水冷鋳型の振動を大い
に抑制し得るようにした前記攪拌連続鋳造装置を提供す
ることを目的とする。
【0005】前記目的を達成するため本発明によれば、
軸線を上下方向に向け、且つ周壁下部に複数の冷却水用
噴出孔を貫通させた筒状水冷鋳型と、その筒状水冷鋳型
の外周側に冷却水溜りを形成すべく、その鋳型を囲繞す
る筒状隔壁と、前記筒状水冷鋳型内の溶湯に、それを周
方向に流動させる攪拌力を付与する攪拌機とを備えた攪
拌連続鋳造装置において、前記筒状水冷鋳型と前記筒状
隔壁との間に、反発弾性Rが10%≦R≦40%である
ゴム状弾性体を介在させた攪拌連続鋳造装置が提供され
る。
【0006】こゝで、ゴム状弾性体にはゴムからなる弾
性体、プラスチックからなる弾性体等が含まれる。また
反発弾性Rは、一定荷重の球体を一定高さh0 からゴム
状弾性体表面に自由落下させたとき、その球体の跳ね上
った高さをh1 として、R=(h1 /h0 )×100
(%)の式より求められる。
【0007】反発弾性Rを前記のように規定されたゴム
状弾性体は、前記攪拌力に起因した筒状水冷鋳型の振動
を大いに抑制する。これによりブレイクアウトの発生を
防止して鋳造作業をスムーズに進行させることができ
る。
【0008】また筒状水冷鋳型内面に凝固物が付着した
場合、その凝固物に、前記攪拌力により流動した溶湯が
衝突すると、ゴム状弾性体は、その反発弾性に基づいて
筒状水冷鋳型の半径方向外方への部分的変形を許容す
る。これにより冷却水溜りが圧縮されて噴出孔から噴出
される冷却水の速度が速められて流量が増すので、イン
ゴットの冷却が急速に行われ、前記凝固物近傍の溶湯も
凝固するか、若しくは半凝固状態となるためその凝固物
が、下降するインゴットに取込まれて筒状水冷鋳型内面
から剥離する。この凝固物が型内面に付着した状態にお
いては、インゴット外周面に凹状痕が形成され、鋳造欠
陥を生じることになる。
【0009】ゴム状弾性体において、その反発弾性Rが
R>40%では、ゴム状弾性体が金属体と略同様の弾性
を示すので、前記振動抑制作用を得てブレイクアウトの
発生は減少するが、その反面、前記変形許容作用が得ら
れないため前記凹状痕が生じ易くなる。一方、R<10
%では筒状水冷鋳型と筒状隔壁との間に、ゴム状弾性体
が介在していない場合と略同じ状態となるので、ブレイ
クアウトの発生が増加し、また前記変形許容作用が過多
となって冷却水の流れが塞止められるので前記凹状痕が
発生し易くなる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1,2に示す攪拌連続鋳造装置
1は、軸線を上下方向に向けた胴状本体2を有する。そ
の胴状本体2は、内周壁31 と、その外周側に所定の間
隔をとって配置された外周壁32 と、両壁31 ,32
上端側に存する環状上端壁41 と、両壁31 ,32 の下
端側に存する環状下端壁42 とより構成される。
【0011】内周壁31 は上部筒体3aと下部筒体3b
とよりなる。上部筒体3aにおいて、その下半部は、内
側に環状段部11が形成されるように、上半部12より
も厚肉に形成されて、軸線を上下方向に向けた筒状水冷
鋳型13を構成する。筒状水冷鋳型13はAl合金(例
えば、A5052)よりなり、その周壁下部を複数の冷
却水用噴出孔8が貫通する。それら噴出孔8は、それら
の軸線が筒状水冷鋳型13の軸線上の一点で収束するよ
うに、斜め下向きに形成されている。
【0012】内周壁31 を囲繞するように筒状隔壁5が
配置され、その上、下開口部は上、下端壁41 ,42
よりそれぞれ閉鎖される。筒状水冷鋳型13と筒状隔壁
5との間に、反発弾性Rが10%≦R≦40%であるゴ
ム状弾性体6が介在される。図3にも示すようにゴム状
弾性体6は、各噴出孔8の入口8aよりも下方において
筒状水冷鋳型13に嵌着された環状体であり、その内周
面下端部の内向き環状部6bは、筒状水冷鋳型13下端
面および下部筒体3b上端面間に挟まれてそれらの間を
シールする。筒状隔壁5およびゴム状弾性体6によっ
て、筒状水冷鋳型13の外周側に冷却水溜り7が形成さ
れる。
【0013】上半部12内に、薄肉の筒体14を介して
スパウト15が、筒状水冷鋳型13と同軸上に位置する
ように嵌合され、その下向きの溶湯出口16を形成する
環状下端面17が環状段部11に当接する。またスパウ
ト15の、上端壁41 から突出する部分に環状抜止め板
18が嵌合され、その抜止め板18は上端壁41 に固定
される。スパウト15は、断熱耐火性を有するケイ酸カ
ルシウムより構成される。スパウト構成材料としてはア
ルミナ、シリカ等も用いられる。スパウト15の上方
に、水平注湯を行うための溶湯供給樋19が配置され、
その下向きの給湯口20がスパウト15の上向きの溶湯
受入れ口21に連通する。溶湯供給樋19において、そ
の給湯口20近傍の底壁19aに堰19bが設けられ、
この堰19bにより溶湯中の不純物が塞止められる。
【0014】筒状隔壁5および外周壁32 間の筒状密閉
空間22に、電磁誘導式攪拌機23が配設され、その攪
拌機23は筒状水冷鋳型13およびスパウト15内の溶
湯mに、それを周方向に流動させる電磁攪拌力を付与す
る。攪拌機23は筒状をなす成層鉄心24と、その成層
鉄心24に巻装された複数のコイル25とよりなる。成
層鉄心24は、図4に明示するように筒状部26と、そ
の内周面に円周上等間隔に配置されて母線方向に延びる
複数の凸条27とよりなる。各コイル25は、1つの凸
条27において2つのコイル25の一部分が重なり合う
ように、相隣る両凸条27に巻装される。成層鉄心24
は筒状隔壁5に嵌合され、各凸条27の先端面が筒状隔
壁5の外周面に密着する。また成層鉄心24は、下端壁
2 の環状支持部材29上に載せられてその部材29に
複数のボルト30およびナット31により固定される。
1つのコイル25に対して2つの割合で複数の接続具3
2が用意され、各接続具32は水密手段を以て下端壁4
2 を貫通してそれに取付けられている。
【0015】外周壁32 に複数の給水口33が形成さ
れ、各給水口33を通じて密閉空間22内に冷却水wが
供給される。筒状隔壁5の上端部近傍に複数の通孔34
が形成され、これらの通孔34を介して冷却水溜り7に
冷却水wが供給される。冷却水wは筒状水冷鋳型13を
冷却すると共に各噴出孔8から噴出してインゴットIを
冷却する。通孔34は筒状隔壁5の下部側にも形成され
ている。
【0016】水冷鋳型13と溶湯mとの間に潤滑油を供
給すべく、スパウト15周りには次のような潤滑油通路
が存在する。内周壁31 において、その上部筒体3aの
上端部には上端壁41 の下部板37が一体に設けられて
いる。上端壁41 の上部板38および下部板37間に、
スパウト15を囲繞する環状路39と、その環状路39
から放射方向に延びる複数の直線路40とが設けられ
る。各直線路40の端部に、上部板38に形成された入
口41が連通し、その入口41は給油ポンプに接続され
る。図2に明示するように、上部筒体3aの上半部12
内周面と筒体14外周面間に筒状路42が形成され、そ
の筒状路42および環状路39間を連通する複数の斜め
下向きの通孔43が上半部12と下部板37との連設部
に形成されている。また筒状路42の下端は、環状段部
11およびスパウト15の環状下端面17間に放射状に
配列された複数のV字状出口44に連通する。
【0017】図1において、例えば、Al合金組成の溶
湯mを溶湯供給樋19の給湯口20からスパウト15内
に供給すると、その溶湯mはスパウト15および筒状水
冷鋳型13内において攪拌機23による電磁攪拌力を付
与されて周方向に流動し、次いで筒状水冷鋳型13によ
り冷却されてインゴットIが得られる。
【0018】この鋳造作業中において、反発弾性Rを前
記のように規定されたゴム状弾性体6は、前記電磁攪拌
力に起因した筒状水冷鋳型13の振動を大いに抑制す
る。これによりブレイクアウトの発生を防止して鋳造作
業をスムーズに進行させることができる。
【0019】また筒状水冷鋳型13内面に凝固物が付着
した場合、その凝固物に、前記電磁攪拌力により流動し
た溶湯mが衝突すると、ゴム状弾性体6は、その反発弾
性に基づいて筒状水冷鋳型13の半径方向外方への部分
的変形を許容する。これにより冷却水溜り7が圧縮され
て噴出孔8から噴出される冷却水wの速度が速められて
流量が増すので、インゴットIの冷却が急速に行われ、
前記凝固物近傍の溶湯mも凝固するか、若しくは半凝固
状態となるためその凝固物が、下降するインゴットIに
取込まれて筒状水冷鋳型13内面から剥離する。この凝
固物が型13内面に付着した状態においては、インゴッ
ト外周面母線方向に凹状痕が形成され、鋳造欠陥を生じ
ることになる。
【0020】次にゴム状弾性体6の反発弾性Rの範囲を
定めるべく、反発弾性Rがそれぞれ、5%、10%、2
0%、30%、40%、50%、60%である7種のア
クリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)よりなるゴ
ム状弾性体6を製造した。先ず、1種のゴム状弾性体6
を前記同様に攪拌連続鋳造装置1に組込み、また表1に
示すAl合金組成の溶湯を調製した。
【0021】
【表1】
【0022】そして、インゴットIの直径:152mm;
鋳造速度:170mm/min ;潤滑油:PTFE粒子添加
鉱物油;潤滑油供給量:1cc/min ;冷却水供給量:8
0リットル/min ;スパウト15の溶湯受入れ口21に
おける溶湯温度:650℃;電磁攪拌用コイル:水没式
4極12コイルタイプ;攪拌周波数:50Hz;の条件
で鋳造作業を行って、ブレイクアウトおよび凹状痕の発
生率を求めた。また残りのゴム状弾性体を用いて前記同
様の鋳造作業を行い、前記同様にブレイクアウト等の発
生率を求めた。
【0023】図5は鋳造結果を示す。図5より、ゴム状
弾性体6の反発弾性Rを10%≦R≦40%に設定する
と、ブレイクアウトおよび凹状痕の発生を回避し得るこ
とが判る。
【0024】ゴム状弾性体6の構成材料としては、前記
NBRの外に、反発弾性Rが30%≦R≦40%である
アクリルゴム(ACM,ANM)、20%≦R≦40%
であるフッ素ゴム(FKM)等も用いられる。
【0025】比較のため、筒状水冷鋳型13と筒状隔壁
5との間にステンレス鋼(JISSUS304)よりな
る環状体を介在させた装置(比較例1)と、両部材1
3,5間に環状体、つまり固体を介在させなかった装置
(比較例2)を用いて前記同様の鋳造作業を50回宛行
い、ブレイクアウトの発生回数および鋳造された直径1
52mm、長さ2mのインゴットIの全本数当りの凹状痕
の数を調べたところ、表2の結果を得た。なお、インゴ
ットIの全本数=50本−ブレイクアウトの発生回数
【0026】
【表2】
【0027】表2および図5より、比較例1はゴム状弾
性体6の反発弾性RがR>40%の場合に対応し、また
比較例2はゴム状弾性体6の反発弾性RがR<10%の
場合に対応する、と言える。
【0028】図6,7は他のゴム状弾性体6を示し、そ
のゴム状弾性体6は、図8にも示すように各噴出孔8の
入口8aよりも下方において筒状水冷鋳型13に嵌着さ
れる環状本体6aと、その環状本体6aの上端面から筒
状水冷鋳型13の母線方向に延びて冷却水溜り7を複数
に区画する複数の区画体6cと、環状本体6aの内周面
下端部に設けられ、且つ筒状水冷鋳型13下端面および
下部筒体3b上端面間に挟まれてそれらの間をシールす
る内向き環状部3bとを有する。この場合、各区画体6
cは冷却水溜り7の上下方向長さと略等しい長さを有
し、また相隣る両区画体6c間の冷却水溜り7の区画部
7aに1または2以上の噴出孔8の入口8aが連通す
る。
【0029】ゴム状弾性体6を前記のように構成する
と、前記変形許容作用に伴う冷却水溜り7の圧縮を、相
隣る両区画体6c間の区画部7aに現出させて噴出孔8
からの冷却水wの流量を一層増加させることができる。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、前記のような簡単な手
段を採用することによって、ブレイクアウトの発生およ
びインゴットにおける凹状痕の発生をそれぞれ防止する
ことが可能な攪拌連続鋳造装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】攪拌連続鋳造装置の一例の縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】ゴム状弾性体の一例の断面図である。
【図4】成層鉄心とコイルの関係を示す要部平面図であ
る。
【図5】ゴム状弾性体の反発弾性と、ブレイクアウトお
よび凹状痕の発生率との関係を示すグラフである。
【図6】ゴム状弾性体の他例の平面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】攪拌連続鋳造装置の他例の要部拡大図で、図2
に対応する。
【符号の説明】
5 筒状隔壁 6 ゴム状弾性体 6a 環状本体 6c 区画体 7 冷却水溜り 8 噴出孔 8a 入口 13 筒状水冷鋳型 23 電磁誘導式攪拌機 m 溶湯
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大谷 輝幸 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (72)発明者 井手籠 隆 埼玉県狭山市新狭山1丁目10番地1 ホ ンダエンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−64142(JP,A) 特開 昭58−13451(JP,A) 特開 昭56−136262(JP,A) 特開 昭55−122653(JP,A) 特開2000−637(JP,A) 特開 平11−285793(JP,A) 特開 平11−320042(JP,A) 特開 平11−245007(JP,A) 特開 昭57−184555(JP,A) 実開 昭60−1550(JP,U) 実開 昭59−34848(JP,U) 特表 平9−501613(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/049 B22D 11/00 B22D 11/04 311 B22D 11/115

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸線を上下方向に向け、且つ周壁下部に
    複数の冷却水用噴出孔(8)を貫通させた筒状水冷鋳型
    (13)と、その筒状水冷鋳型(13)の外周側に冷却
    水溜り(7)を形成すべく、その鋳型(13)を囲繞す
    る筒状隔壁(5)と、前記筒状水冷鋳型(13)内の溶
    湯(m)に、それを周方向に流動させる攪拌力を付与す
    る攪拌機(23)とを備えた攪拌連続鋳造装置におい
    て、前記筒状水冷鋳型(13)と前記筒状隔壁(5)と
    の間に、反発弾性Rが10%≦R≦40%であるゴム状
    弾性体(6)を介在させたことを特徴とする攪拌連続鋳
    造装置。
  2. 【請求項2】 前記ゴム状弾性体(6)は、各噴出孔
    (8)の入口(8a)よりも下方において前記筒状水冷
    鋳型(13)に嵌着された環状体である、請求項1記載
    の攪拌連続鋳造装置。
  3. 【請求項3】 前記ゴム状弾性体(6)は、各噴出孔
    (8)の入口(8a)よりも下方において前記筒状水冷
    鋳型(13)に嵌着された環状本体(6a)と、その環
    状本体(6a)から前記筒状水冷鋳型(13)の母線方
    向に延びて前記冷却水溜り(7)を複数に区画する複数
    の区画体(6c)とを有する、請求項1記載の攪拌連続
    鋳造装置。
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