JP3399704B2 - 全リンの分析方法 - Google Patents

全リンの分析方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高周波誘導結合プ
ラズマ質量分析装置(以下、ICP−MSと称する)を
用いて、試料中の全てのリン元素(全リン)を定量分析
する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プラズマ生成ガスとしてアルゴンガスを
用いたアルゴンICP−MSは、高感度で多くの元素を
同時分析することができ、また、これらの元素の超微量
レベルの迅速な分析が可能であることから、近年、急速
に普及してきている。
【0003】従来、質量分析計として四重極型質量分析
計を用いるICP−MS(以下、ICP−Q−MS)に
おいては、プラズマ生成ガスとしてアルゴンを用い、大
気中でプラズマを生成させており、また、試料溶液とし
て硝酸、硫酸、塩酸等の水溶液を用いることから、アル
ゴンおよび水分子に起因する[38ArH+ ]、[40Ar
+ ]、[40ArO+ ]等のイオンが多量に発生する。そ
して、これらのイオンが干渉イオン(妨害イオン)とし
て幾つかの重要な測定対象とされる元素のピーク、例え
39+ 40Ca+ 56Fe+ イオンのピークに重な
り、その結果、測定値の妨害を引き起こし、結局、分析
需要の多いK、Ca、Fe等の数ppbレベル以下での
分析が不可能となっている。
【0004】このような問題の解決策として、近年、ア
ルゴンおよび水分子に起因する上記のような干渉イオン
の生成を大幅に抑制する改良システムが開発されてい
る。このような改良システムとしては、セイコー電子工
業株式会社のチャンバガスモード(平成7年3月17日
に開催されたプラズマ分光分析研究会第35回講演会の
講演要旨集第47頁および第48頁参照)、横河アナリ
ティカルシステムズ株式会社のシールドトーチシステム
(同講演要旨集第67頁ないし第71頁参照)、パーキ
ンエルマー社のプラズマロック(同講演要旨集第40頁
および第41頁参照)と呼ばれるものがあり、このよう
な改良システムをICP−Q−MSに搭載することによ
り、0.01〜0.05ppbレベルでのK、CaおよびF
eの分析が可能となった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、分析需
要の多い元素の一つであるP(リン)については、上記
の改良システムを搭載したICP−Q−MSによって
も、[NOH+ ]、[COH3 + ]、[N17+ ]、
[SiH3 + ]等の分子イオンによる干渉が避けられ
ず、これらの干渉イオンが31+ と重複検出されるため
に、微量分析が難しく、純水系試料においてさえも、実
質的な定量下限は5〜10ppb程度である。
【0006】尚、質量分析計として二重収束型の高分解
能質量分析計を用い、31+ を上記の分子イオンと分離
検出することにより、一応の解決が図られるものの、こ
のような高分解能ICP−MSは極めて高価であり、測
定の迅速性に欠け、可動の維持管理が必ずしも容易では
なく、また、比較的広い設置面積を要する等の問題点を
有している。
【0007】したがって、このような問題点が少なく、
比較的普及が進んでいるICP−Q−MSを用いた全リ
ンの微量分析の開発が切望されている。
【0008】本発明は、上記に鑑みてなされたものであ
り、その目的は、二重収束型のような高分解能の質量分
析計を用いずとも、正確な全リンの微量分析が可能なア
ルゴンICP−MSを用いた全リンの分析方法を提供す
ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記のような状況下にお
いて、本発明者等は、リン元素の分析において従来は検
出の対象とはされていなかった質量数47の一酸化リン
分子の一価のプラスイオン(PO+ )を検出し、この検
出結果に基づいてリン元素を定量することにより、意外
にも、従来の31+ イオンの検出によるリン元素の分析
に比べ、問題となる干渉分子イオンの影響が極めて少な
く、正確な微量分析を達成することができることを見出
し、本発明に至った。
【0010】すなわち、請求項1の発明に係る全リンの
分析方法は、上記の課題を解決するために、高周波誘導
結合にてプラズマを生成するイオン化源(プラズマトー
チ)のプラズマ生成ガスとしてアルゴンを使用したアル
ゴンICP−MSを用いて全リンを分析する方法におい
て、イオン化源を低温プラズマとし、質量数47の一酸
化リン分子の一価のプラスイオンを検出して全リンを定
量することを特徴としている。
【0011】上記の構成によれば、イオン化源で低温プ
ラズマを生成することにより、検出対象としての質量数
47の一酸化リン分子の一価のプラスイオン(PO+
の生成が促進される。
【0012】低温プラズマとは、ガス温度よりも電子温
度の方が非常に高く、熱的に非平衡状態にあるが、系全
体の温度は比較的低いプラズマの状態をいう。
【0013】イオン化源で低温プラズマを生成するに
は、様々な方法が考えられる。例えば、前述のアルゴン
および水分子に起因する干渉イオンの生成を抑制するシ
ステム(チャンバガスモード、シールドトーチシステ
ム、プラズマロック等)を用いて、イオン化源の高周波
出力を比較的低出力とすることによって、低温プラズマ
を生成することができる。
【0014】尚、チャンバガスモードは、キャリヤガス
とは別異に、アルゴン等のガス(チャンバガス)をスプ
レーチャンバを経由してイオン化源のプラズマに導入す
る方式である。また、シールドトーチシステムは、高周
波コイルとプラズマトーチとの間に、シールド板を挿入
して、当該シールド板をグランドに接続することによ
り、サンプリングコーンの直後での二次放電を抑える方
式である。また、プラズマロックは、プラズマとサンプ
リングコーンの2つの極性の異なる電界が互いに打ち消
し合い、プラズマ電位を低値に維持する方式である。こ
れらは何れも、アルゴンおよび水分子に起因する干渉イ
オンの生成を大幅に抑制する方式として知られているも
のであるが、比較的低出力の高周波出力を用いることに
よって、低温プラズマ生成条件となり得る。
【0015】低温プラズマを生成するための条件として
は、請求項2の発明のように、スプレーチャンバ内で試
料をキャリヤガスを用いて霧化し、霧状になった試料を
キャリヤガスと共に上記イオン化源に導入するとき、キ
ャリヤガスとして使用するアルゴンガスとは別異に、ス
プレーチャンバ内に0.1〜0.5リットル/分のアルゴン
ガスを導入することが好ましい。特に好ましくは、請求
項3の発明のように、スプレーチャンバ内に導入するア
ルゴンガス量を、0.3〜0.4リットル/分とすることで
ある。
【0016】このように、スプレーチャンバ内にアルゴ
ンガスを導入することにより、イオン化源へ供給するア
ルゴンガス量を、アルゴン高周波誘導結合プラズマが安
定して維持される範囲で増せば、全リン濃度に対する信
号応答量としては充分なPO+ を生成することができ
る。尚、キャリヤガスとしてのアルゴンガスのみを増加
した場合は、試料の導入量も増加してしまうので、上記
のようにキャリヤガスとは別異にスプレーチャンバ内に
アルゴンガスを導入する必要がある。
【0017】また、低温プラズマを生成するための条件
としては、請求項4の発明のように、イオン化源の高周
波出力を0.8〜1.1KWとすることが好ましい。高周波
出力をこの範囲に設定すれば、アルゴン高周波誘導結合
プラズマが安定して維持され(高周波出力を0.8KWよ
りも下げるとプラズマが安定しなくなる)、質量数47
のPO+ に対する干渉イオンの生成量も少ない。
【0018】この質量数47のPO+ をアルゴンICP
−MSのイオン検出部にて検出し、この検出結果に基づ
いて(例えば検量線法等によって)全リンを定量すれ
ば、二重収束型ほどの高分解能を有しない四重極型質量
分析計を用いたICP−Q−MSでも、二重収束型の高
分解能ICP−MS並みの全リンの微量分析が可能とな
る。
【0019】すなわち、質量数47のPO+ を検出する
ときの干渉イオンとしては、[NO2 + ]、[15NO
2 + ]、[N17OO+ ]等の窒素酸化物系の干渉分子イ
オンや[47Ti+ ]のような干渉元素イオンが考えられ
るが、これらの干渉イオンの生成は、従来の質量数31
のP+ を検出する分析方法における干渉イオンの生成に
比べて極めて低く、したがって、質量数47のPO+
正確な分析が可能となる。
【0020】例えば、チャンバガスモードにおいて、ス
プレーチャンバ内に導入するアルゴンガス量を0.3〜0.
4リットル/分とし、高周波出力を0.8〜1.1KWとす
る低温プラズマ条件下では、Tiは殆どイオン化され
ず、かかる条件下においてICP−Q−MSにてTiの
50ppb水溶液の試料を分析しても、質量数47のピ
ークとして[47Ti+ ]イオンは全く検出されない。ま
た、硝酸イオン10ppm水溶液を試料として、標準モ
ード(従来法の標準的な測定条件)による質量数31の
干渉イオン強度と、上記のチャンバガスモードの低温プ
ラズマ条件による質量数47の干渉イオン強度とを比較
すると、 [m/z=31]:[m/z=47]≒200:1 となる。このことから、質量数47のPO+ を検出する
本発明の分析方法においては、[NO2 + ]等の窒素
酸化物系の干渉分子イオンの生成が、従来の質量数31
のP+ を検出する分析方法における[NOH+ ]等の一
酸化窒素系の干渉イオンの生成に比べて著しく低いこと
が明らかである。
【0021】このように、本発明の分析方法は、従来の
ICP−Q−MSを用いて質量数31のP+ を検出する
全リンの分析方法に比べ、干渉イオンとの重複検出を激
減させることができ、したがって、当該従来法に比べ、
定量下限において約100倍もの向上をもたらし、実質
的に0.05〜0.1ppb程度の微量全リン分析を可能と
ならしめることになる。
【0022】かかる定量下限は、現状では、二重収束型
の高分解能ICP−MSを用いることによって、はじめ
て達成し得る全リン(P+ 検出法)の定量下限に匹敵す
るものであり、本発明方法は、比較的普及が進んでいる
ICP−Q−MSを用いて分析需要の多い全リンの微量
分析を行う方法として極めて有用である。
【0023】尚、本発明方法は、質量分析計として四重
極型質量分析計を用いたICP−Q−MSのみに適用さ
れるものではなく、勿論、二重収束型やその他の質量分
析計を用いたICP−MSにも適用可能である。
【0024】以下、本発明方法を、各実施例に基づいて
より具体的に説明するが、これらの実施例はあくまで
も、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そ
のような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきも
のではなく、特許請求の範囲内で、いろいろと変更して
実施することができるものである。
【0025】
【実施例】
〔実施例1〕本発明の一実施例について図1ないし図3
に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0026】本実施例では、アルゴンチャンバガスモー
ドを適用したICP−Q−MSを用いての全リンの分析
について説明する。図1に、本実施例で使用するICP
−Q−MSのイオン化源および当該イオン化源に試料を
導入する試料導入部の概略の構成を示している。
【0027】イオン化源としてのプラズマトーチ7は、
同軸三重管であり、その先端部に高周波コイル12が設
けられている。最外管にはプラズマ用ガス導入部7a、
その内側の管にはプラズマ用補助ガス導入部7bが設け
られ、これらの導入部7a・7bを介してプラズマ用ガ
ス3およびプラズマ用補助ガス4としてアルゴンガスが
導入される。また、試料水溶液14は、スプレーチャン
バ10内でネブライザ8によって噴霧されて霧状にさ
れ、スプレーチャンバ10を通して微細なミストだけ
が、プラズマトーチ7の中心管7cからキャリヤガス5
やチャンバガス6と共にプラズマ中に導入される。尚、
スプレーチャンバ10内で凝縮した水溶液は、ドレン容
器15へ排出される。
【0028】同図中に参照符号11で示されるものは、
インピーダンスマッチングボックスであり、周波数27.
12MHzの水晶発振方式等により、高周波コイル12
の出力を制御し、安定したプラズマ13を生成させるこ
とができる。
【0029】また、同図中に参照符号1で示されるもの
は、アルゴンガス供給源であり、例えば超高純度アルゴ
ンガスボンベまたは超高純度液体アルゴンボンベを用い
ることができる。このアルゴンガス供給源1から供給さ
れるアルゴンガスは、流量コントロール部2で流量制御
されて、プラズマ用ガス3およびプラズマ用補助ガス4
としてプラズマトーチ7へ、キャリヤガス5としてネブ
ライザ8へ、チャンバガス6としてキャピラリーチュー
ブ9を介してスプレーチャンバ10へそれぞれ供給され
る。
【0030】プラズマ用ガス3は、マスフローコントロ
ールバルブ等で14〜18リットル/分の範囲内で制御
して使用するのが適当である。また、プラズマ用補助ガ
ス4は、マスフローコントロールバルブ等で1.0〜2.0
リットル/分の範囲内で制御して使用するのが適当であ
る。また、キャリヤガス5は、ネブライザ8の先端ノズ
ルによる抵抗のため、1.8〜2.5Kg/cm2 の範囲内
の圧力制御で供給することが適当である。チャンバガス
6は、マスフローコントロールバルブで供給することも
できるが、キャピラリーチューブ9の抵抗により圧力制
御することが好ましく、0.4〜1.2Kg/cm2 の範囲
内で使用して、スプレーチャンバ10に供給するのが好
ましい。
【0031】このようなイオン化源および試料導入部を
有するICP−Q−MSを用いて、アルゴンチャンバガ
スモードによる下表1の測定条件で、高周波出力を0.8
〜1.4KWの範囲で0.1KW幅毎変化させて、超純水と
リン酸二水素カリウムとによる全リン濃度50ppb水
溶液、硝酸10ppm水溶液、超純水をそれぞれ試料と
して、質量数47におけるイオン強度(cps)の測定
を行い、高周波出力の依存性を調べた。この測定結果
(アルゴンチャンバガスモードでの質量数47における
イオン強度の高周波出力依存性)を図2に示す。同図
中、●は全リン濃度50ppb水溶液のイオン強度、△
は硝酸10ppm水溶液のイオン強度、○は超純水のイ
オン強度である。
【0032】また、比較例として、上記のICP−Q−
MSを用いて、従来法における標準モードによる下表1
の測定条件で、高周波出力を0.8〜1.4KWの範囲で0.
1KW幅毎変化させて、上記と同一の試料を用いて質量
数31におけるイオン強度(cps)の測定を行った。
この測定結果(標準モードでの質量数31におけるイオ
ン強度の高周波出力依存性)を図3に示す。同図中、●
は全リン濃度50ppb水溶液のイオン強度、△は硝酸
10ppm水溶液のイオン強度、○は超純水のイオン強
度である。
【0033】
【表1】
【0034】尚、チャンバガス圧1.0Kg/cm2をチャ
ンバガス流量に換算すると、0.36リットル/minに
相当する。
【0035】図2および図3から明らかなごとく、従来
技術の標準モードによれば、質量数31における干渉イ
オンの生成量(図3の硝酸10ppm水溶液、超純水の
測定値)は、本実施例の質量数47における干渉イオン
の生成量(図2の硝酸10ppm水溶液、超純水の測定
値)に比べてはるかに多く、微量全リンの正確な分析が
困難となる根拠を示している。これに対して、本実施例
の質量数47における干渉イオンの生成量は極僅かであ
り、且つ、全リン濃度50ppb水溶液での測定イオン
強度も充分に高いレベルであることから、微量全リンの
正確な分析が可能である。
【0036】また、図2より明らかなごとく、イオン化
源の高周波出力条件としては、干渉イオンの生成量が少
ない0.8〜1.1KWで使用するのが好ましい。尚、高周
波出力を0.8KWよりも下げるとプラズマが安定しなく
なったり、プラズマの点灯が困難となる。
【0037】〔実施例2〕本発明のその他の実施例につ
いて図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0038】前記実施例1で用いたICP−Q−MSを
用いて、アルゴンチャンバガスモードによる下表2の測
定条件で、アルゴンのチャンバガス圧を0.0〜1.2Kg
/cm2 の範囲で0.2Kg/cm2 幅毎変化させて、超
純水とリン酸二水素カリウムとによる全リン濃度50p
pb水溶液、硝酸10ppm水溶液、超純水をそれぞれ
試料として、質量数47におけるイオン強度(cps)
の測定を行い、アルゴンのチャンバガス量の依存性を検
討した。この測定結果を図4に示す。同図中、●は全リ
ン濃度50ppb水溶液のイオン強度、△は硝酸10p
pm水溶液のイオン強度、○は超純水のイオン強度であ
る。
【0039】
【表2】
【0040】全リン濃度50ppbに対する信号応答量
としては、PO+ イオン強度1×104 CPS以上が好
ましく、このことからアルゴンチャンバガス量の条件と
しては、0.1〜0.5リットル/minのガス流量が好ま
しい。尚、図4では、アルゴンチャンバガス流量が0.5
リットル/min以上の条件の測定結果は省略してい
る。
【0041】また、図4から明らかなごとく、高周波出
力を0.8KWの低出力で使用する低温プラズマ条件にお
いて、PO+ のイオン強度が大きく、且つ、干渉分子イ
オンの生成量を少なくするアルゴンチャンバガス量の条
件としては、アルゴンチャンバガス圧0.8〜1.2Kg/
cm2 (アルゴンチャンバガス流量に換算すると、0.3
〜0.4リットル/minに相当)が特に好ましい。
【0042】〔実施例3〕本発明のその他の実施例につ
いて図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0043】リン酸二水素カリウムによる全リン濃度が
0ppb、2ppb、10ppb、20ppbおよび5
0ppbの水溶液を調整した。そして、前記実施例1で
用いたICP−Q−MSを用いて、アルゴンチャンバガ
スモードによる下表3の測定条件で、上記の各濃度に調
整した試料に対して、質量数47におけるイオン強度
(cps)の測定を順次行い、検量線を作成した。この
結果得られた検量線を図5に●で示す。
【0044】また、比較例として、前記実施例1で用い
たICP−Q−MSを用いて、従来法における標準モー
ドによる下表3の測定条件で、上記の各濃度に調整した
同一の試料に対して、質量数31におけるイオン強度
(cps)の測定を順次行い、検量線を作成した。この
結果得られた検量線も、本実施例の検量線と併せて図5
に○で示した。
【0045】
【表3】
【0046】図5に示されるように、バックグランド強
度が高い従来法を用いた検量線に比べ、本実施例の検量
線はバックグランド強度が非常に低く、略原点を通る検
量線である。したがって、このような検量線を用いて全
リンの定量を行えば、従来法に比べて検出下限が格段に
低くなる。
【0047】〔実施例4〕本発明のその他の実施例につ
いて説明すれば、以下の通りである。
【0048】リン酸二水素カリウムによる全リン濃度5
0ppbの水溶液を基準として、リン酸水素二ナトリウ
ム、亜リン酸水素二ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウ
ムおよびトリフェニールホスフィンのそれぞれ50pp
b、20ppbおよび1.0ppb水溶液を調整した。そ
して、前記実施例1で用いたICP−Q−MSを用い
て、アルゴンチャンバガスモードによる上記の表3の測
定条件(実施例3と同じ条件)で、上記の各濃度に調整
した各試料に対して、PO+ 検出による全リン分析を行
ったところ、下表4の結果が得られた。
【0049】尚、トリフェニールホスフィンは、水に対
して極めて難溶性であるため、任意濃度の水溶液を調整
することができない。そこで、トリフェニールホスフィ
ンを四塩化炭素に溶解したのち、超純水を加えて振り混
ぜることによって、微量のトリフェニールホスフィンを
水溶液層に分配させた。そして、この水溶液を遠心分離
したのち、上澄み液のリン濃度をICP発光分析法で決
定し、さらに、このリン濃度決定液を超純水で希釈し
て、全リン濃度が50ppb、20ppbおよび1.0p
pbの水溶液となるように調整した。
【0050】
【表4】
【0051】表4の分析結果からも、本発明方法が全リ
ンの微量分析方法として極めて有用なことは明らかであ
る。
【0052】
【発明の効果】請求項1の発明の全リンの分析方法は、
以上のように、アルゴン高周波誘導結合プラズマ質量分
析装置のイオン化源で低温プラズマを生成すると共に、
質量数47の一酸化リン分子の一価のプラスイオンを当
該分析装置で検出して全リンを定量する構成である。
【0053】それゆえ、従来の質量数31のP+ の検出
法による全リンの分析法に比べて、干渉イオンとの重複
検出を激減させることができ、当該従来法に比べて定量
下限において格段の向上をもたらす。例えば、ICP−
Q−MSを用いた場合では、従来法に比べて定量下限に
おいて約100もの向上をもたらし、実質的に0.05〜
0.1ppb程度の微量全リン分析が可能となる。したが
って、干渉イオンとの重複検出を避けるために二重収束
型のような高分解能ICP−MSを用いずとも、正確な
全リンの微量分析が可能であるという効果を奏する。
【0054】また、請求項2の発明の全リンの分析方法
は、以上のように、上記請求項1の発明の構成におい
て、スプレーチャンバ内で試料をキャリヤガスを用いて
霧化し、霧状になった試料をキャリヤガスと共に上記イ
オン化源に導入するとき、キャリヤガスとして使用する
アルゴンガスとは別異に、スプレーチャンバ内に0.1〜
0.5リットル/分のアルゴンガスを導入する構成であ
る。これにより、全リン濃度に対する信号応答量として
は充分なPO+ を生成することができる。さらに、請求
項3の発明のようにスプレーチャンバ内に導入するアル
ゴンガス量を、0.3〜0.4リットル/分とすれば、PO
+ のイオン強度が大きく、且つ、質量数47のPO+
対する干渉イオンの生成量を少なくすることができ、よ
り正確な全リンの微量分析が可能であるという効果を奏
する。
【0055】また、請求項3の発明の全リンの分析方法
は、以上のように、上記請求項1、2、または3の発明
の構成において、イオン化源の高周波出力を0.8〜1.1
KWとする構成である。これにより、アルゴン高周波誘
導結合プラズマを安定に維持しながら、質量数47のP
+ に対する干渉イオンの生成量を少なくすることがで
き、より正確な全リンの微量分析が可能であるという効
果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一実施例で使用するICP−Q−
MSのイオン化源および試料導入部の概略構成図であ
る。
【図2】IPC−Q−MSのアルゴンチャンバガスモー
ドにおいて、高周波出力を0.8〜1.4KWの範囲で変化
させた場合の[m/z=47]検出によるイオン強度の
高周波出力依存性を示すグラフである。
【図3】IPC−Q−MSの従来技術である標準モード
において、高周波出力を0.8〜1.4KWの範囲で変化さ
せた場合の[m/z=31]検出によるイオン強度の高
周波出力依存性を示すグラフである。
【図4】IPC−Q−MSのアルゴンチャンバガスモー
ドにおいて、高周波出力を0.8KWに固定してアルゴン
のチャンバガス量を変化させた場合の[m/z=47]
検出によるイオン強度のチャンバガス量依存性を示すグ
ラフである。
【図5】リン酸二水素カリウムの各種濃度の標準調整水
溶液を用いて、IPC−Q−MSのアルゴンチャンバガ
スモードによる[m/z=47]検出およびIPC−Q
−MSの従来技術である標準モードによる[m/z=3
1]検出を行った場合のイオン強度と全リン濃度との関
係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 アルゴンガス供給源 2 流量コントロール部 3 プラズマ用ガス 4 プラズマ用補助ガス 5 キャリヤガス 6 チャンバガス 7 プラズマトーチ(イオン化源) 8 ネブライザ 9 キャピラリーチューブ 10 スプレーチャンバ 11 インピーダンスマッチングボックス 12 高周波コイル 13 プラズマ 14 試料水溶液 15 ドレン容器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−298861(JP,A) 特開 昭54−151892(JP,A) 特開 昭59−162447(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/62 - 27/70 H01J 49/00 - 49/48 JICSTファイル(JOIS) WPI(DIALOG) IEEE Xplore Web of Science

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高周波誘導結合にてプラズマを生成するイ
    オン化源のプラズマ生成ガスとしてアルゴンガスを使用
    したアルゴン高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用
    いて全リンを分析する方法において、 イオン化源を低温プラズマとし、 質量数47の一酸化リン分子の一価のプラスイオンを検
    出して全リンを定量することを特徴とするリン元素の分
    析方法。
  2. 【請求項2】スプレーチャンバ内で試料をキャリヤガス
    を用いて霧化し、霧状になった試料をキャリヤガスと共
    に上記イオン化源に導入するとき、キャリヤガスとして
    使用するアルゴンガスとは別異に、スプレーチャンバ内
    に0.1〜0.5リットル/分のアルゴンガスを導入するこ
    とを特徴とする請求項1記載の全リン元素の分析方法。
  3. 【請求項3】スプレーチャンバ内で試料をキャリヤガス
    を用いて霧化し、霧状になった試料をキャリヤガスと共
    に上記イオン化源に導入するとき、キャリヤガスとして
    使用するアルゴンガスとは別異に、スプレーチャンバ内
    に0.3〜0.4リットル/分のアルゴンガスを導入するこ
    とを特徴とする請求項1記載の全リンの分析方法。
  4. 【請求項4】上記イオン化源の高周波出力が0.8〜1.1
    KWであることを特徴とする請求項1、2、または3記
    載の全リンの分析方法。
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