JP2962626B2 - 質量分析装置 - Google Patents

質量分析装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラズマを生成させる
イオン化源を有する質量分析装置に係り、特に、マイク
ロ波により生成させたプラズマを用い有機溶媒中の微量
金属を長時間安定に、かつ、高感度で測定できる質量分
析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、有機溶媒の分析においては、高周
波誘導結合プラズマイオン化源質量分析計(以下、IC
P−MSという)には、アルゴンプラズマのキャリア−
ガスにのみ酸素を混合する手法を用いていた。これは、
アルゴンプラズマをイオン化源としたICP−MSにお
いては、プラズマの維持上、酸素の混合はキャリア−ガ
スのみにしか行えないことによる。また、キャリア−ガ
スに混合する場合にも酸素混合量に制限があり、プラズ
マ自身の安定性に問題が生じ、前記キャリア−ガスを1
00%酸素に置換することは不可能である。
【0003】一例として、酢酸−2−エトキシエチル,
CH3COOCH2CH2OC25(以下、EEAとい
う)を分析する場合を説明する。このEEAを酸素によ
り理想的に分解し、前記EEA中に含まれる炭素を全て
二酸化炭素として気体に変え、インタ−フェイス部への
付着を防止することを検討する。
【0004】
【化1】 2CH3COOCH2CH2OC25+1502→12CO2↑+12H2O ・・・・・・・(化1) この(化1)によると酸素は、EEA2モルに対して1
5モル必要となる。いま、試料の吸い込み量を0.5m
l/minとすると、スプレ−チャンバに導入されるE
EAは0.004モル/minとなる。したがって、
(化1)よりこのEEAを完全に分解するために酸素
は、0.03モル/min必要となる。
【0005】ところで、スプレ−チャンバからプラズマ
イオン化源に導入されるEEAは、スプレ−チャンバ内
で霧化したもののうち、比較的粒経の小さなものとして
分別された2%程度の量となる。したがって、EEAを
理想的に分解するのに必要とされる酸素量を計算する
と、約14ml/minとなる。しかしながら、必要と
される酸素量は、EEAのプラズマ内における拡散およ
びその速度等により理想値とは一致せず、実際には理想
値の4倍から5倍量程度に混合しなければならない。
【0006】したがって、さらに分子中に炭素を多く含
んだ有機溶媒を分析する場合、酸素量を増やす必要が生
じ、ICP−MSでは対応が困難となってくる。なお、
実際の従来例ではキャリア−ガスに5%程度の酸素を混
ぜている。また、プラズマの維持が可能な範囲において
酸素を混合させても、24Mgプラスイオンの分析は従来
法では極めて困難であった。その理由は、酸素が十分に
混合できないため242プラスイオンが生成し、その干
渉が生ずるからである。
【0007】また、前記生成した242プラスイオン
が、多量に質量分析計へ導入されることから、MSの真
空系の汚染を招くという欠点があった。これらについて
は、小林恭子氏らによる、分析化学,Vol.39
P.835(1990)記載の技術がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、キ
ャリア−ガスに酸素を添加することにより、インタ−フ
ェイス部に炭素が付着することを防ぎ、有機溶媒の直接
分析を一部行えるようにはしているが、酸素をキャリア
−ガスにのみ混合していることから、プラズマ自身不安
定となるという問題があった。
【0009】また、キャリア−ガスに酸素を混合する体
積比に制約があるため、242プラスイオンが生成し、
その干渉のため、24Mgプラスイオン等の分析が困難で
あり、その点配慮がなされていないという問題があっ
た。また、プラズマを安定にするためにキャリア−ガス
のみならず、プラズマガスにも酸素を添加する方法が提
案されているが、ICP−MSにおいてはプラズマが不
安定となり維持することが不可能であった。そのため、
限られた条件下で有機溶媒の分析が行われているという
問題があった。
【0010】さらに従来技術では、24Mgプラスイオン
の分析が困難であることが示すように、242プラスイ
オンが生成しており、これが質量分析計の内部に多量に
導入され、その真空系の汚染を招き、装置の寿命の短縮
をもたらし、メンテナンスが煩瑣になるという問題があ
った。
【0011】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
るためになされたもので、マイクロ波により生成させた
プラズマを使用し、キャリア−ガスのみならずプラズマ
ガスにも酸素を混合しその混合比を可変とし、インタ−
フェイス部への炭素の付着を防ぎ、プラズマを安定化さ
せることによって、長時間精度の高いデ−タ−が得られ
る質量分析装置を提供することを目的とする。また、酸
素混合量を増加させることにより242プラスイオンを
減少させ、装置の寿命を高めてメンテナンスの頻度を減
少させるようにした質量分析装置を提供することを目的
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係る質量分析装置の構成は、マイクロ波によ
プラズマを生成させるイオン化源と、前記イオン化源
に試料を導入するためのキャリアーガスとプラズマを生
成するためのプラズマガスを供給するガス制御部と、質
量分析計と、前記イオン化源からのイオンを前記質量分
析計に導入するインターフェイス部と、前記各部を制御
する制御部とからなる質量分析装置において前記ガス
制御部は、前記キャリアーガスへ酸素を混合させ、その
酸素混合比を可変にする手段と、前記プラズマガスへ酸
素を混合させ、その混合比を可変にする手段とを備えた
ことを特徴とするものである。キャリアーガスの酸素
混合比は、0〜100%の間で可変であることを特徴と
するものである。インターフェイス部は、そのイオン導
入口の閉塞度を検出する検出手段を備え、前記ガス制御
部は、前記検出手段により検出した閉塞度が所定の値以
上になった場合、前記キャリアーガスの酸素混合比を
素100%の状態にすることを特徴とする請求項1記載
の質量分析装置。インターフェイス部のイオン導入口の
閉塞度の検出手段は、前記イオン導入口の真空度を検出
するように構成したことを特徴とするものである。
【0013】また、インタ−フェイス部はそのイオン導
入口の閉塞度を検出する検出手段を備え、前記ガス制御
部は、前記検出手段により検出した閉塞度が、所定の値
以上になった場合、キャリア−ガスの酸素混合比を所定
の混合比から酸素100%に置換し、所定の値以下にな
った場合、所定の混合比とするようにしたものである。
さらに、インタ−フェイス部のイオン導入口の閉塞度を
検出する検出手段は、前記イオン導入口の真空度を検出
するようにしたものである。
【0014】
【作用】上記各技術的手段の働きは次のとおりである。
前記質量分析装置のイオン化源にマイクロ波によって励
起したプラズマを使用することによって、キャリア−ガ
スのみならずプラズマガスにも酸素を混合できるように
なり、プラズマそのものが安定となり、有機溶媒測定時
の優れたイオン化源となるだけでなく、インタ−フェイ
ス部における炭素の付着も長時間抑制することができる
ため、有機溶媒中の微量金属を再現性良く、しかも高精
度で測定することができる。
【0015】また、キャリア−ガスへの酸素の混合量比
を0から100%まで可変となるようにしたので、24
2プラスイオンを消滅させることができるようになり、
有機溶媒の測定において困難であった24Mgプラスイオ
ンの分析ができる。また、酸素の混合比を増加させるこ
とによって、本分析装置内へ多量の242プラスイオン
が導入しないようになり、装置の寿命を延ばし、かつ、
保守性を向上させることができる。
【0016】さらに、インタ−フェイス部における閉塞
度を真空度をモニタ−することにより検出し、インタ−
フェイス部への炭素の付着した場合、キャリア−ガスを
100%酸素に置換し、炭素を取り除くことができるよ
うにしたものであり、これにより多種多様な有機溶媒の
分析にも対応できる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1ないし図3を
参照して説明する。図1は、マイクロ波励起プラズマ
(以下、MIPという)をイオン化源に持った質量分析
装置の説明図、図2は、図1の質量分析装置のガス制御
部の詳細説明図、図3は、図1の質量分析装置によりエ
チルアルコ−ル中の24Mgプラスイオンを検量したデ−
タ−線図である。
【0018】図1,2において、1はガス制御部、2は
マイクロ波キャビティ、3はプラズマト−チ、4はプラ
ズマ、5はサンプリングコ−ン、6はスキマ−コ−ン、
7は導波管、8はマグネトロン発振部、9はマグネトロ
ン電源、10はスプレ−チャンバ、11はネブライザ
−、12はイオンレンズ、13は排気系、14は質量分
析部、15は検知器、16は偏向電極、17は制御コン
ピュタ−、18は試料、19は質量分析計、20はキャ
リア−ガス、21はプラズマ化されるガス(以下プラズ
マガス)、22はピラニ−ゲ−ジである。
【0019】図1の質量分析装置は、プラズマガス21
とキャリア−ガス20とを制御するガス制御部1と、導
波管7,マグネトロン発振部8,マグネトロン電源9等
からなるマイクロ波電源部と、マイクロ波キャビティ
2,プラズマト−チ3,スプレ−チャンバ10,ネブラ
イザ−11等からなるイオン化源部と、イオンレンズ1
2、排気系13、質量分析部14、検知器15、偏向電
極16等からなる質量分析計19と、サンプリングコ−
ン5,スキマ−コ−ン6等からなるインタ−フェイス部
と、制御コンピュタ−17等からなる制御部とに大別さ
れる。
【0020】ガス制御部1は、プラズマガス21とキャ
リア−ガス20とを所定の混合比のガスとして送り出す
が、本実施例においては、プラズマガスにN2を使用し
ている場合について説明するが、不活性ガスであれば、
ヘリウムであっても良いしその他のものでも良い。
【0021】イオン化源部は、試料18がキャリア−ガ
ス20により吸引され、ネブライザ−11で霧化され
る。このうち、比較的大きな液滴がスプレ−チャンバ1
0で分別,除去され、細かい液滴がプラズマト−チ3へ
と導かれる。前記プラズマト−チ3は、二重の石英管
(図示せず)であって、中心部の細管には霧化された液
状試料を含むキャリア−ガス20を流し、外側の細管に
はプラズマガス21が流れる構造となっいる。そして、
このプラズマト−チ3はマイクロ波キャビティ2内に配
設されている。
【0022】一方、マイクロ波電源部は、マグネトロン
電源9から供給された電力がマグネトロン発振部8でマ
イクロ波に変換され、導波管7を通りイオン化源部のマ
イクロ波キャビティ2へと進行する。この進行したマイ
クロ波は、マイクロ波キャビティ2によって、ガス制御
部1より供給されるプラズマガス21を強力に励起し、
前記プラズマト−チ3においてプラズマ4を生成し試料
18もイオン化する。
【0023】イオン化した試料18は質量分析計19と
のインタ−フェイスであるサンプリングコ−ン5,スキ
マ−コ−ン6を通り、質量分析計19へと進む。質量分
析計19へと進んだ試料18は、イオンレンズ12,質
量分析部14等が配置されているその真空系に入る。こ
のときインタ−フェイス部のイオン導入口の閉塞度の検
出は、そのイオン導入口の真空度をピラニ−ゲ−ジ22
によりモニタ−することにより実施される。
【0024】イオンレンズ12に進行したイオン化した
試料18は、イオンレンズ12によ収束され、質量分
析部14によりm/z(m:質量,z:電荷)毎に分け
られ、不要なガスは排気系13より排出される。そのの
ちデフレクター16により偏向され、検知器15に入射
し分析される。これら一連の分析動作はコンピューター
17により制御される。
【0025】次に、上記質量分析動作中におけるガス制
御部1の動作を説明する。図2において、ガス制御部1
は、流量調整用のバルブ23,24,25,26,2
7,28と流量計29,30,31,32,33,34
とストップバルブ35とから構成される。
【0026】水溶液試料の場合には、酸素を混合する必
要がないので、バルブ23,バルブ24,バルブ26は
閉状態となる。また、バルブ25,ストップバルブ35
は開状態で使用される。プラズマガスN221はバルブ
28と流量計34によってその流量が制御され、プラズ
マト−チ3の外側細管に流れる。キャリア−ガス20と
なるN2ガスは、ストップバルブ35を通過しバルブ2
7と流量計33によってその流量が制御され、試料18
を吸引しネブライザ−11,スプレ−チャンバ10,プ
ラズマト−チ3の中心部の細管へと流入する。
【0027】有機溶媒分析において、プラズマガスにの
み酸素を混合する場合には、バルブ24とバルブ26を
閉じて、ストップバルブ35は開放にする。N2ガスは
バルブ25と流量計31によりその流量を調整される。
混合されるO2ガスはバルブ23と流量計29によりそ
の流量を調整され、酸素混合比が決定される。そして、
2+O2のプラズマガス21の流量はバルブ28と流量
計34により決定される。一方、この場合のキャリア−
ガス20となるN2は、ストップバルブ35を通過しバ
ルブ27と流量計33によりその流量が制御され、試料
18を吸引しネブライザ−11,スプレ−チャンバ10
へと流入する。
【0028】次に、プラズマガスガス21とキャリア−
ガス20との両方に酸素を混合する場合には、以下のよ
うに制御を行う。ストップバルブ35は閉じた状態と
し、N2ガスはバルブ25と流量計31によりその流量
を調整される。混合されるO2ガスはバルブ23と流量
計29によりその流量を調整され、N2ガスとO2ガスと
の混合比が決定される。N2+O2のプラズマガス21の
流量はバルブ28と流量計34により決定されプラズマ
ト−チ3へ流れる。
【0029】キャリア−ガス20は、プラズマガス21
となるN2+O2ガスをバルブ26と流量計32とよりな
る管路にて分流しその流量を調整し、O2ガスはバルブ
24と流量計30によりその流量を調整し、この両ガス
を混合して作成される。全流量はバルブ27と流量計3
3により決まる。キャリア−ガス20を酸素100%に
するためには、バルブ26を閉じれば良い。したがっ
て、インタ−フェイス部のイオン導入口に炭素が付着
し、その閉塞度を検知するピラニ−ゲ−ジ22が高真空
側に変化した場合には、バルブ26を閉じバルブ27と
流量計33とにより酸素100%のキャリア−ガス20
の流量を制御すれば良い。
【0030】図3は、エチルアルコ−ル中の24Mgプラ
スイオンの検量線デ−タ−を示した線図であり、横軸に
24Mgプラスイオン、縦軸に検知器15による強度(c
ps)を表し、優れた直線性が得られている。
【0031】
【発明の効果】本発明は以上説明したように、本発明に
よれば、マイクロ波により生成させたプラズマを使用
し、キャリア−ガスのみならずプラズマガスにも酸素を
混合しその混合比を可変とし、インタ−フェイス部への
炭素の付着を防ぎ、プラズマを安定化させることによっ
て長時間精度の高いデ−タ−が得られ、さらに、キャリ
ア−ガスへの酸素混合量を増加させることにより242
プラスイオンを減少させ、装置の寿命を高め、かつ、メ
ンテナンスの頻度を減少させるようにした質量分析装置
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MIPをイオン化源に持った質量分析装置の説
明図である。
【図2】図1の質量分析装置のガス制御部の詳細説明図
である。
【図3】図1の質量分析装置によりエチルアルコ−ル中
24Mgプラスイオンを検量したデ−タ−線図である。
【符号の説明】
1 ガス制御部 2 マイクロ波キャビティ 3 プラズマト−チ 4 プラズマ 5 サンプリングコ−ン 6 スキマ−コ−ン 7 導波管 8 マグネトロン発振部 9 マグネトロン電源 10 スプレ−チャンバ 11 ネブライザ− 12 イオンレンズ 13 排気系 14 イオン分離電極 15 検知器 16 偏向電極 17 制御コンピュタ− 18 試料 19 質量分析計 20 キャリア−ガス 21 プラズマガス 22 ピラニ−ゲ−ジ 23,24,25,26,27,28 バルブ 29,30,31,32,33,34 流量計 35 ストップバルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−31759(JP,A) 特開 昭61−292846(JP,A) 実開 平3−64463(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 49/04 H01J 49/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マイクロ波によりプラズマを生成させる
    イオン化源と、前記イオン化源に試料を導入するための
    キャリアーガスとプラズマを生成するためのプラズマガ
    スを供給するガス制御部と、質量分析計と、前記イオン
    化源からのイオンを前記質量分析計に導入するインタ−
    フェイス部と、前記各部を制御する制御部とからなる質
    量分析装置において 前記ガス制御部は、前記キャリアーガスへ酸素を混合さ
    、その酸素混合比を可変にする手段と、前記プラズマ
    ガスへ酸素を混合させ、その混合比を可変にする手段と
    を備えたことを特徴とする質量分析装置。
  2. 【請求項2】 キャリアーガスの酸素混合比は、0〜
    100%の間で可変であることを特徴とする請求項1記
    載の質量分析装置。
  3. 【請求項3】 インターフェイス部は、そのイオン導入
    口の閉塞度を検出する検出手段を備え、前記ガス制御部
    は、前記検出手段により検出した閉塞度が所定の値以上
    になった場合、前記キャリアーガスの酸素混合比を酸素
    100%の状態にすることを特徴とする請求項1記載の
    質量分析装置。
  4. 【請求項4】 インターフェイス部のイオン導入口の閉
    塞度の検出手段は、前記イオン導入口の真空度を検出す
    るように構成したことを特徴とする請求項3記載の質量
    分析装置。
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