JP3399240B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

車両用空調装置

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JP3399240B2
JP3399240B2 JP19922096A JP19922096A JP3399240B2 JP 3399240 B2 JP3399240 B2 JP 3399240B2 JP 19922096 A JP19922096 A JP 19922096A JP 19922096 A JP19922096 A JP 19922096A JP 3399240 B2 JP3399240 B2 JP 3399240B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車室内の空調を行
う車両用空調装置に係り、詳細にはコンプレッサの能力
を調整することにより省動力及び空調効率の向上を図る
車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両の室内の空気調和を図る車両用空調
装置では、コンプレッサの能力を制御することにより、
省動力を図るものがある。コンプレッサの能力の調整に
は、可変容量コンプレッサを用いる方法、コンプレッサ
の回転数を変える方法及びコンプレッサをオン/オフす
る温度を変える方法がある。
【0003】例えば、可変容量コンプレッサを用いた空
調装置では、コンプレッサ吸入圧を変化させることによ
り、冷媒のエバポレータ圧力を調整する。このエバポレ
ータ圧力が調整されることで、エバポレータを通過した
空気の温度(エバポレータ後温度)が調整される。
【0004】このような車両用空調装置では、冷房負荷
が小さくてすむ気象条件下では、可変容量コンプレッサ
の能力を低下させて、エバポレータ後温度を高くするこ
とにより、車室内を設定温度とするために、車室内へ吹
出すときにヒータコア等による加熱を抑えることがで
き、これによって省動力が図られる。
【0005】一方、エバポレータ後温度を高くすると、
風量が同じであれば除湿能力が低下する。このために、
車室内を設定温度に維持できても、車室内の湿度が高く
なり、車室内の快適性が損なわれてしまうことがある。
【0006】このような車室内の湿度の上昇により快適
性が損なわれるのを防止するために、エバポレータ後温
度の上限を設定するようにしたものがある。すなわち、
図7に示されるように、冷房負荷の減少に応じてエバポ
レータ後温度を高くするが、冷房負荷が所定値より小さ
くときには、それ以上エバポレータ後温度を上げず、一
定値(上限値)に制御する。
【0007】このようにエバポレータ後温度の上限値を
設定することにより、車室内へ吹出す空気の湿度が高く
なってしまうのを防止し、車室内の湿度が高くなること
によって快適性が損なわれるのを防止している。
【0008】ところで、エバポレータ後温度の上限値を
低く設定すると、コンプレッサの能力が高くなり、コン
プレッサ動力を増大させることになる。空調される車室
内の快適性を考慮した場合、エバポレータ後温度を上げ
ることは好ましくないが、省動力の面からはエバポレー
タ後温度を上げることが望ましい。
【0009】一方、車両用空調装置では、気象条件等に
応じて冷房能力等が制御されている。例えば、車両用空
調装置には、気象条件等に応じて車室内へ吹出す風量を
変化させるように制御しているものがある。除湿能力
は、エバポレータ後温度が同じであれば、風量を多くす
ることにより増加することは知られており、これによっ
て、エバポレータ後温度を上げても、風量が大きければ
車室内の湿度を同じに保つことができ、車室内の湿度の
上昇による不快感を避けて、車室内の快適性を損なうこ
とがないようにしながら、エバポレータ後温度を上げる
ことによる省動力を図ることが可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事実に
鑑みてなされたものであり、種々の気象条件においても
常に車室内の快適性を保ちながら省動力を図ることがで
きる車両用空調装置を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、車室の内気な
いし車外の外気をブロワによって導入し、コンプレッサ
とエバポレータを含んで形成された冷凍サイクルによっ
て温調した空気を車室内へ吹出して空調する車両用空調
装置であって、車室内及び車外の環境状態を検出する環
境検出手段と、前記環境検出手段の検出結果に基づいて
冷房負荷を決定する冷房負荷決定手段と、 前記冷房負
荷決定手段によって決定された冷房負荷に加えてブロワ
風量ないしブロワ風量を決定するパラメータに基づいて
エバポレータ後温度を設定するときに、ブロワ風量ない
しブロワ風量を決定するパラメータから定まる上限値に
設定するエバポレータ後温度設定手段と、前記エバポレ
ータ後温度設定手段の設定に基づいてコンプレッサを制
御する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】この発明によれば、 エバポレータ後温度の
設定を車外の温度や車室内の温度等の環境条件と、設定
された運転モードや設定温度(目標とする車室内の温
度)等の空調条件のみならず、ブロワによって導入して
エバポレータへ送る空気の風量に基づいて行う。このと
き、エバポレータ後温度をブロワ風量ないしブロワ風量
を決定するパラメータに基づいて設定している上限値に
設定する。
【0013】エバポレータによる除湿能力は、 導入され
る空気の温度に対してエバポレータ後温度が低いほど高
くなり、また、 導入される空気の風量が多い程高くな
る。
【0014】例えば、外気の導入あるいは内気循環で空
調を行って、 車室内の湿度が平衡状態となったときに
は、車室内の絶対湿度XR 、エバポレータ後空気の絶対
湿度Xi、空気の比重量γ、風量W及び車室内の乗員の
蒸気発生量Yから、(1)式が成立する。
【0015】
【数1】
【0016】(1)式から(2)式が得られ、乗員の蒸
気発生量Yが一定であれば、風量Wを増加させることに
より、 車室内の絶対湿度XR を下げることができる。
【0017】また、(1)式から(3)式が得られ、風
量Wが多い程、車室内湿度XR を同じにするためのエバ
ポレータ後の空気の絶対湿度Xiは高くできる。一方、
エバポレータ後の空気の絶対湿度Xiはエバポレータ後
温度で決まり、エバポレータ後温度が高いほど高くな
る。
【0018】これにより、 エバポレータ後温度を上げた
ときに、 風量Wを増加させれば、 車室内の相対湿度を上
昇させることがない。ここから、風量Wに応じて、 エバ
ポレータ後温度を上昇させれば、車室内の湿度(相対湿
度)を上昇させることがなく、車室内の快適性を保ちな
がら、 効率的でかつ省動力の運転が可能となる。
【0019】このような本発明では、前記エバポレータ
後温度設定手段が、前記ブロワ風量の増加に応じて前記
上限値を高く設定することを特徴とする。 また、本発明
は、前記冷房負荷決定手段が、前記環境検出手段の検出
結果に基づいて車室内へ吹出す吹出し温度を決定する吹
出し温度決定手段を含み、前記冷房負荷を前記吹出し温
度決定手段によって決定された吹出し温度とすることを
特徴とする。
【0020】また、本発明は、前記冷房負荷決定手段
が、前記環境検出手段によって検出する外気温度に基づ
いて冷房負荷を決定することを特徴とする。
【0021】上記構成の本発明では、ブロワ風量の増加
に応じてエバポレータ後温度が高くなるように設定す
る。 また、本発明では、外気温度センサや日照センサ等
の環境条件を検出する環境検出手段の検出結果に基づい
て、冷房負荷決定手段が冷房負荷を決定する。この冷房
負荷に基づいてエバポレータ後温度設定手段が設定した
エバポレータ後温度に基づいて冷房能力を制御する。
【0022】冷房負荷が大きい領域では、エバポレータ
後温度を低くして車室内を設定温度に保ち、冷房負荷が
小さくなるにしたがって車室内を設定温度に保つための
エバポレータ後温度を高くするが、エバポレータ後温度
を所定温度以上に上げると車室内の湿度が高くなって不
快となる。
【0023】このために、冷房負荷が小さいときには、
エバポレータ後温度を冷房負荷にかかわらず所定の上限
値に保つように制御する。このエバポレータ後温度の上
限値をブロワ風量に応じて設定する。
【0024】このブロワ風量に応じて設定されたエバポ
レータ後温度の上限値は、ブロワ風量が小さいときには
低くなっているが、ブロワ風量が大きいとエバポレータ
後温度が同じでも除湿量が多くなるために、ブロワ風量
が大きいときにはブロワ風量の小さいときと比較してエ
バポレータ後温度の上限値を高く設定する。
【0025】これによって、冷房負荷が小さいときで
も、ブロワ風量が大きいときには、エバポレータ後温度
を高くできるので、車室内の快適性を損なうことなく省
動力を図ることができる。
【0026】なお、ブロワ風量の代りにブロワ風量が決
定されるパラメータであるブロワ電圧に基づいてエバポ
レータ後温度を決定してもよい。また、ブロワ電圧(ブ
ロワ風量)が同じでも、外気導入モードか内気導入モー
ドかによって風量が異なるので、さらに内気導入モード
か内気導入モードかに応じてエバポレータ後温度の上限
値を変えてもよい。
【0027】冷房負荷は、冷房負荷そのものを演算ある
いは車室内を設定温度にするための目標吹出し温度や外
気温度等の種々のパラメータによって表したものでもよ
い。
【0028】コンプレッサとしては、可変容量コンプレ
ッサまたは固定容量コンプレッサのいずれの適用も可能
である。可変容量コンプレッサを適用したときは、エバ
ポレータ後温度が所定の温度となるようにコンプレッサ
の吸入圧を制御する制御手段を適用することができる。
【0029】また、固定容量コンプレッサを適用したと
きは、エバポレータ後温度に応じて所定の温度でコンプ
レッサをオン/オフ制御する制御手段を適用することが
できる。すなわち、目標となるエバポレータ後温度Tに
対してT+Δでコンプレッサをオフし、T−Δでコンプ
レッサをオンするようにエバポレータ後温度を測定しな
がらコンプレッサをオン/オフ制御して、目標とするエ
バポレータ後温度Tにに保つ制御手段を適用することが
できる。
【0030】さらに、モータ等の可変回転数の駆動手段
によって駆動される固定容量コンプレッサを用いるとき
には、コンプレッサの回転数を制御する制御手段を適用
することができる。具体的には、エバポレータ後温度を
検出しながら、この検出結果をフィードバックしてコン
プレッサ回転数を調整制御することにより、エバポレー
タ後温度を所定の温度に保つように制御する制御手段を
適用することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】図1には、本実施の形態に適用し
た車両用空調装置(以下「エアコン10」と言う)を示
している。このエアコン10は、可変容量コンプレッサ
(以下「コンプレッサ12」と言う)、コンデンサ1
4、エキスパンションバルブ16及びエバポレータ18
を含む冷媒の循環路によって冷凍サイクルが構成されて
いる。
【0032】エバポレータ18は、圧縮されて液化して
いる冷媒が気化することにより、このエバポレータ18
を通過する空気(以下「エバポレータ後の空気」と言
う)を冷却する。このとき、エバポレータ18では、通
過する空気中の水分を結露させることにより、エバポレ
ータ後の空気の除湿を行う。
【0033】エバポレータ18の上流側に設けられてい
るエキスパンションバルブ16は、液化している冷媒を
急激に減圧することにより、霧状にしてエバポレータ1
8へ供給するようになっており、これによって、エバポ
レータ18での冷媒の気化効率を向上させている。
【0034】コンプレッサ12は、従来公知の一般的構
成の可変容量コンプレッサを用いることができる。可変
容量コンプレッサとしては、例えば車両のエンジンの駆
動力が伝達されて回転するドライブシャフトに傾斜した
状態でワッブルプレートを設け、ドライブシャフトと一
体でワッブルプレートが回転することにより、このワッ
ブルプレートに連結されているピストンがシリンダ内を
往復動して、冷媒を圧縮して吐出する。このワッブルプ
レートを用いた可変容量コンプレッサでは、ドライブシ
ャフトに対するワッブルプレートの傾斜角が変更される
か又はワッブルプレートがドライブシャフトの軸線に沿
って平行移動されるかによってピストンのストロークが
変えられる。 これにより、可変容量コンプレッサでは、
シリンダの容量が変えられて能力(吐出量、吸入圧)が
変えられる。
【0035】このようなピストンのストロークの変更
は、コントロールバルブに設けられているソレノイド2
0の通電電流を調整することにより行われる。すなわ
ち、可変容量コンプレッサでは、コントロールバルブに
設けているソレノイド20の通電電流をコントロールし
て設定圧を制御することにより、吸入圧が調整される。
【0036】なお、コンプレッサ12として用いる可変
容量コンプレッサとしては、ワッブルプレート式に限ら
ず、吸入した冷媒の一部を吸入側へ戻すバイパス式や、
ピストンの往復移動時間を変更する変速方式等の種々の
構成を適用でき、エアコン10としては、可変容量コン
プレッサの冷媒の吸入圧を調整するためのソレノイド等
の種々のアクチュエータの動作をコントロールして、 冷
房能力を制御するものであれば良い。また、固定容量の
コンプレッサでは、オン/オフの温度を変えたり、回転
数を制御してもよい。
【0037】エアコン10の冷凍サイクルでは、コンプ
レッサ12の吸入圧に応じて、冷媒のエバポレータ圧が
定まる。このエバポレータ圧によってエバポレータ18
を通過した空気の温度(以下「エバポレータ後温度」と
言う)が定まる。すなわち、目標とするエバポレータ後
温度に応じて、ソレノイド20の通電電流を決め、ソレ
ノイド20を制御することで、目標のエバポレータ後温
度となるエバポレータ圧にすることができる。
【0038】エアコン10のエバポレータ18は、空調
ダクト22の内部に設けられている。この空調ダクト2
2は、両端が開口しており、一方の開口端には、空気取
入口24、26が形成されている。また他方の開口端に
は、車室内へ向けて開口された複数の空気吹出し口28
(本実施の形態では一例として28A、 28B、28C
を図示)が形成されている。
【0039】空気取入口24は車外と連通しており、空
調ダクト22内に外気を導入可能となっており、また、
空気取入口26は、 車室内と連通しており車室内の空気
(内気を空調ダクト22内に導入可能となっている。
【0040】空調ダクト22内には、エバポレータ18
と空気取入口24、26との間にブロワファン30が設
けられている。 また、空気取入口24、 26の近傍に
は、切替えダンパ32が設けられている。切替えダンパ
32は、 サーボモータ34等のアクチュエータの作動に
よって、空気取入口24、 26の開閉を行うようになっ
ており、ブロワファン30は、ブロワモータ36の駆動
によって回転して、 空気取入口24ないし空気取入口2
6から空調ダクト22内に吸引した空気をエバポレータ
18へ向けて送出する。このとき、切替えダンパ32に
よる空気取入口24、 26の開閉状態に応じて、空調ダ
クト22内に外気ないし内気が導入されるようになって
いる。 すなわち、切替えダンパ32が空気取入口24
を閉止した状態では、内気が空調ダクト22内に導入さ
れ、切替えダンパ32が空気取入口26を閉止した状態
では、外気が空調ダクト22内に導入される。また、切
替えダンパ32の回動位置に応じた比率で外気と内気が
空調ダクト22内へ導入される。
【0041】エバポレータ18の下流側には、エアミッ
クスダンパ38及びヒータコア40が設けられている。
エアミックスダンパ38は、サーボモータ42の駆動に
よって回動して、ヒータコア40を通過する空気とこれ
をバイパスする空気の量を調節する。ヒータコア40
は、エアミックスダンパ38によって案内された空気を
加熱する。
【0042】エバポレータ後の空気は、一部がヒータコ
ア40によって加熱されると、非加熱状態の空気と混合
された後、空気吹出し口28へ向けて送出される。エア
コン10では、エアミックスダンパ38をコントロール
してヒータコア40により加熱される空気の量を調節す
ることにより、空気吹出し口28から車室内へ向けて吹
出す空気の温度を調節している。
【0043】空気吹出し口28の近傍には、複数のモー
ド切替えダンパ44が設けられており、これらのモード
切替えダンパ44によって、空気吹出し口28A、28
B、28Cを開閉することにより、 所望の位置から車室
内へ温調した空気を吹出すことができるようになってい
る。なお、 このモード切替えダンパ44の作動は、エア
コン10が設定された運転モードに応じてサーボモータ
46を駆動して行うものであってもよいが、乗員がマニ
ュアル操作によって機械的に空気吹出し口28の開閉操
作ができるものであっても良い。
【0044】エアコン10は、マイクロコンピュータを
備えた空調制御回路50が設けられている。この空調制
御回路50に、前記したブロワモータ36が、 コントロ
ーラ52を介して接続され、切替えダンパ32、エアミ
ックスダンパ38及びモード切替えダンパ44を操作す
るサーボモータ34、42、46と共に、前記したコン
プレッサ12の吸入圧をコントロールするソレノイド2
0がそれぞれ接続されている。また、この空調制御回路
50には、室内の空調温度の設定と共に、マニュアルモ
ードかオートモードか及び温調した空気を吹出す空気吹
出し口28の設定等の運転条件を設定するための操作パ
ネル54が接続されている。エアコン10では、この操
作パネル54の操作によって乗員が設定した運転条件に
基づいて動作するようになっている。
【0045】また、エアコン10には、 エバポレータ後
温度を検出するエバポレータ後温度センサ56と共に、
環境条件を検出する環境条件検出手段として、車外の外
気温度を検出する外気温度センサ58、車室内の温度を
検出する車室温度センサ60及び日射センサ62が設け
られており、これらが空調制御回路50にそれぞれ接続
されている。
【0046】空調制御回路50は、操作パネル54で設
定された運転条件に基づいて、ブロワファン30、切替
えダンパ32、エアミックスダンパ38及びモード切替
えダンパ44を動作及び操作して車室内の空気調和を図
る。このとき、空調制御回路50は、設定温度、車室内
の温度、車外の温度及び日射状態に応じて空気吹出し口
28から車室内へ吹出す空気の目標吹出し温度及び風量
を設定し、設定した風量が得られるようにブロワモータ
36の駆動電圧を定めて、 ブロワファン30を回転駆動
させる。なお、目標吹出し温度及び風量の設定は、 一般
に用いられている車両用空調装置と同一であり、本実施
の形態では詳細な説明を省略する。
【0047】ところで、エアコン10の空調制御回路5
0では、目標吹出し温度を設定すると、これに基づいて
エバポレータ後温度を設定し、設定したエバポレータ後
温度が得られるようにコンプレッサ12の吸入圧を設定
するためのソレノイド20への通電電流を決定して、コ
ンプレッサ12をコントロールする。
【0048】エバポレータ後温度の設定は、車室内の湿
度が上昇して不快となることがなくかつ、コンプレッサ
12の動力を抑える値に設定される。このとき、空調制
御回路50は、ブロワファン30の風量をパラメータと
して含む演算式又はマップを用いて、エバポレータ後温
度を設定する。
【0049】これによって、図2(A)に示される目標
吹出し温度に対するエバポレータ後温度となるようにし
ている。すなわち、エアコン10の空調制御回路50
は、ブロワファン30からエバポレータ18へ送出する
風量が多いときには、風量が少ないときに比べてエバポ
レータ後温度の上限が高くなるようにしている。
【0050】空調制御回路50では、エバポレータ後温
度を決定すると、このエバポレータ後温度が得られるエ
バポレータ圧とするためのコンプレッサ12の吸入圧を
設定し、コンプレッサ12がこの吸入圧となるためのソ
レノイド20への通電電流を決定して、コンプレッサ1
2の吸入圧制御用のコントロールバルブを制御する。
【0051】なお、日射センサ62は、フォトダイオー
ド等によって車外の明るさを検出するものであり、空調
制御回路50は、日射センサ62によって検出した車外
の明るさから、車室内の温度に影響を及ぼす日射量を判
定して、この判定結果に基づいて、車室内へ吹出す目標
温度、風量の補正等を行う。
【0052】また、図2(B)及び図2(C)に示され
るように、エバポレータ後温度は、目標吹出し温度とブ
ロワ風量のみならず、冷房負荷とブロワ風量または外気
温度とブロワ風量に基づいて設定してもよい。
【0053】図2(B)には、ブロワ風量をパラメータ
とした冷房負荷に対するエバポレータ後温度の特性図を
示しており、冷房負荷が小さいときには、ブロワ風量に
応じて上限値が変化するようにエバポレータ後温度を設
定する方法を用いることができる。
【0054】図2(C)には、ブロワ風量をパラメータ
とした外気温度に対するエバポレータ後温度の特性図を
示しており、外気温度が低いときには、ブロワ風量に応
じてエバポレータ後温度の上限値を変化させて設定する
方法を用いることができる。エバポレータ後温度の設定
は、図2(A)乃至図2(C)のいずれに基づいて行っ
てもよい。
【0055】次に、本実施の形態に適用したエアコン1
0の作用を説明する。エアコン10は、操作パネル54
の操作によって空調条件が設定されると、車室内が設定
された空調条件(例えば設定温度)となるように目標吹
出し温度を設定し、演算した目標吹出し温度で温調した
空気を空気吹出し口28から車室内へ吹出す。このと
き、エバポレータ後温度は、図2(A)乃至図2(C)
のいずれかに基づいて設定され、その後、エアミックス
ダンパ38を制御して吹出す。これにより、エアコン1
0では、コンプレッサ12の能力を抑え、省動力及び効
率的な空調を図るようにしている。
【0056】以下、図3に示すフローチャートを参照し
ながら説明する。このフローチャートは、操作パネル5
4によって空調条件が設定され、エアコン10の作動が
開始されると実行され、最初のステップ100では、外
気温度センサ58、車室温度センサ60及び日射センサ
62等によって環境条件の測定を行い、測定結果を読み
込む。また、車室内の設定温度を読み取る。
【0057】ステップ102では、測定した環境条件と
設定された設定温度から目標吹出し温度TAOを演算して
設定する。この目標吹出し温度TAOは、設定温度
set 、外気温度T0 、車室内の温度Tr及び日射量S
Tから、一般に(4)式によって求めることができる。
【0058】
【数2】
【0059】次のステップ104では、ブロワファン3
0の動作がオートモードかマニュアルモードかを判定し
ている。ここで運転条件としてオートモードで設定され
ているときには、このステップで肯定判定されて、ステ
ップ106へ移行する。
【0060】ステップ106及びステップ108では、
環境状態に応じたブロワモータ36の駆動電圧の演算を
行う。
【0061】ブロワファン30を駆動するブロワモータ
36に印加される駆動電圧(以下「ブロワ電圧」とい
う)Vは、例えば目標吹出し温度TAOに応じて変化する
関数で表される。図4には、エアコン10で設定されて
いる目標吹出し温度TAOに対するブロワモータ36のブ
ロワ電圧Vの特性曲線を示しており、ブロワモータ36
のブロワ電圧Vが低い領域では、日射量STをパラメー
タとして加えるようになっている。すなわち、ブロワモ
ータ36のブロワ電圧Vは、日射量STをパラメータと
した目標吹出し温度TAOの関数として演算して求めるこ
とができる。
【0062】また、ブロワ風量Wは、ブロワモータ36
のブロワ電圧Vに応じて変化するものであり、ブロワ電
圧Vから演算によって求めることができる。
【0063】
【数3】
【0064】一方、風量がマニュアルモードで選択され
ているときには、ステップ104で否定判定され、ステ
ップ110へ移行する。ステップ110及びこれに続く
ステップ108では、乗員のスイッチ等の操作指令を読
込むことでブロワ電圧Vが求められ、ブロワ電圧Vから
ブロワ風量Wを演算する。
【0065】ブロワ電圧Vが求められると、空調制御回
路50は、このブロワ電圧Vをブロワモータ36に印加
してブロワファン30を駆動する。
【0066】次のステップ112では、エバポレータ後
温度TEOを演算して求める。このエバポレータ後温度T
EOを求める場合、図2(A)乃至図2(C)のいずれを
適用してもよいが、図2(A)を例にとると、エバポレ
ータ後温度TEOは、目標吹出し温度TAOに応じて変化す
るように設定されており、目標吹出し温度TAOの関数と
して求められる。このとき、エアコン10の空調制御回
路50では、エバポレータ後温度TEOの上限値を、ブロ
ワ風量Wをパラメータとして変化させている。すなわ
ち、ブロワ風量Wが少ないときには、エバポレータ後温
度TEOの上限値を下げるが、ブロワ風量Wが増加するの
に応じて、エバポレータ後温度TEOの上限値を上げるよ
うにしている。
【0067】このようにして、エバポレータ後温度TEO
を演算して決定すると、次のステップ114では、決定
したエバポレータ後温度TEOが得られるようにコンプレ
ッサ12を制御して車室内の空気調和を行う。
【0068】車室内の絶対湿度XR は、車室内の乗員の
蒸気発生量Y、空気の比重量γ、ブロワ風量W及びエバ
ポレータ後の空気の絶対湿度Xiから(2)式によって
表される。
【0069】
【数4】
【0070】したがって、ブロワ風量Wを多くすること
により、車室内の絶対湿度XR が下がることになり、ブ
ロワ風量Wの増加に合わせてエバポレータ後の空気の絶
対湿度Xiを上昇させても、車室内の絶対湿度XR を上
昇させないですむことになる。エバポレータ後の空気の
絶対湿度Xiを上げることは、エバポレータ後温度T EO
を高くすることであり、これによってコンプレッサ12
の能力を抑えることができる。
【0071】すなわち、ブロワ風量Wに合わせてエバポ
レータ後温度TEOを設定することにより、車室内の絶対
湿度XR 、言い換えれば車室内の相対湿度を上昇させず
に、コンプレッサ12の省動力運転が可能となる。 〔第2の実施の形態〕次に、本発明の第2の実施の形態
を図5のフローチャートを参照しながら説明する。な
お、第2の実施の基本的構成は、前記した第1の実施の
形態と同一であり、同一の部品には同一の符号を付与し
てその説明を省略する。
【0072】第2の実施の形態では、外気導入モードと
内気導入モードで同じブロワモータ36の駆動電圧Vに
対して風量が異なるので、ブロワ風量Wを外気と内気で
ブロワ電圧Vに対して異なる演算式で求めて、精度のよ
い制御を行うものである(図6参照)。
【0073】すなわち、(7)式に示すように、ブロワ
電圧vは目標吹出し温度TAOの関数として求めることが
でき、前記した(5)式から外気の場合のブロワ風量W
(W a )と内気の場合のブロワ風量W(Wb )がそれぞ
れ(8)式及び(9)式で示される。外気と内気の両方
を導入する場合には、予めその時のブロワ風量Wとブロ
ワ電圧Vの関係を求めておけばよい。
【0074】
【数5】
【0075】これにより、外気、内気導入かかわらず正
確なブロワ風量Wを求めることができ、精度良く目標吹
出し温度TAOとブロワ風量Wからエバポレータ後温度を
決定できる。
【0076】外気導入モードか内気導入モードかは、気
象条件に応じて予めプログラムされて制御回路50に記
憶されている。また、乗員のスイッチ操作によってマニ
ュアル操作で外気導入モードか内気導入モードかを選択
できる。制御回路50は、スイッチの操作状態または気
象条件から外気導入モードか内気導入モードかを判定し
て、サーボモータ34を制御する。
【0077】図5に示すフローチャートでは、運転条件
が設定されると、最初のステップ100で環境条件を測
定して読み込み、次のステップ102で目標吹出し温度
AOを演算して設定する。この後、ステップ104で、
ブロワファン30による風量設定がオートモードかマニ
ュアルモードかの判定を行い、オートモードに設定され
ているときには、ステップ104で肯定判定されてステ
ップ106へ移行し、ブロワ電圧Vの演算を行う。ま
た、マニュアルモードに設定されているときには、ステ
ップ104で否定判定されて、ステップ110へ移行
し、乗員が操作したスイッチの状態からブロワ電圧Vを
求める。
【0078】このようにしてブロワ電圧Vを求めると、
次のステップ120では、外気導入モードか否かの確認
をおこなう。なお、外気導入モードか否かの判定は、既
に述べているので省略する。
【0079】外気導入モードか否かの判定結果に応じ
て、ステップ122、124では、それぞれブロワ風量
Wをブロワ電圧Vに基づいて演算する(図6参照)。ま
た、ステップ112では、目標吹出し温度TAOとブロワ
風量Wに基づいて、エバポレータ後温度TEOを演算す
る。
【0080】この後、ステップ114では、演算したエ
バポレータ後温度TEOに基づいて、コンプレッサ12の
能力制御を行う。コンプレッサ12の能力制御は、可変
容量コンプレッサでは容量制御を行い、固定容量のコン
プレッサでは、コンプレッサのオン/オフ制御またはモ
ータ等によるコンプレッサの回転数を変えるなどの方法
を用いる。
【0081】また、エバポレータ後温度TEOを決定する
要因として、目標吹出し温度TAOとブロワ風量Wの他
に、冷房負荷を表すものと吹出し風量を決定する種々の
パラメータを用いることができる。例えば、冷房負荷と
ブロワ風量Wを決定するパラメータであるブロワモータ
36のブロワ電圧Vからエバポレータ後温度TEOを決定
しても良く、このとき、外気、内気に分けてブロワ電圧
Vを用いてエバポレータ後温度TEOを決定しても良い。
【0082】なお、第2の実施の形態は、外気導入モー
ドか、内気導入モードかの判定結果に基づいてブロワ風
量を演算したが、外気導入量及び内気導入量の比率に基
づいてブロワ風量を演算してもよい。
【0083】以上説明した第1及び第2の実施の形態
は、本発明の一例を示すものであり、本発明を限定する
ものではない。本発明は、可変容量コンプレッサを用
い、可変コンプレッサの吐出圧等の能力を変更すること
により、可変容量コンプレッサを省動力で作動させて、
空気調和を行う一般的な車両用空調装置に適用すること
がで、エバポレータ後温度の上限値を設定して、設置し
た上限値に応じて可変容量コンプレッサを制御するもの
であれば良い。
【0084】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明は、風量に応
じてエバポレータ後温度の上限値を変更し、エバポレー
タ後温度をこの上限値に設定する。これにより、除湿能
力を低下させることなく、コンプレッサ能力を制御し
て、省動力及び効率的な空気調和が可能となる優れた効
果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に車両用空調装置として適
用したエアコンの概略構成を示す要部ブロック図であ
る。
【図2】(A)は、ブロワ風量をパラメータとしたエア
コンの目標吹出し温度に対するエバポレータ後温度の相
関関係を示す特性曲線、(B)はブロワ風量をパラメー
タとした冷房負荷に対するエバポレータ後温度の相関関
係を示す特性図、(C)はブロワ風量をパラメータとし
た外気温度に対するエバポレータ後温度の相関関係を示
す特性図である。
【図3】第1の実施の形態に係るエアコンの制御の一例
を示すフローチャートである。
【図4】エアコンの目標吹出し温度に対するブロワ風量
を示す特性曲線である。
【図5】第2の実施の形態に係るエアコンの制御の一例
を示すフローチャートである。
【図6】エアコンのブロワ電圧に対するブロワ風量を示
す特性曲線である。
【図7】従来の冷房負荷に対するエバポレータ後温度の
相関関係を示す特性図である。
【符号の説明】
10 エアコン(車両用空調装置) 12 コンプレッサ 18 エバポレータ 24、26 空気取入口 30 ブロワファン 32 切替えダンパ 34 サーボモータ 36 ブロワモータ 50 空調制御回路(冷房負荷決定手段、エバポレー
タ後温度設定手段、制御手段) 56 エバポレータ後温度センサ 58 外気温度センサ(環境検出手段) 60 車室温度センサ(環境検出手段) 62 日射センサ(環境検出手段)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車室の内気ないし車外の外気をブロワに
    よって導入し、コンプレッサとエバポレータを含んで形
    成された冷凍サイクルによって温調した空気を車室内へ
    吹出して空調する車両用空調装置であって、 車室内及び車外の環境状態を検出する環境検出手段と、 前記環境検出手段の検出結果に基づいて冷房負荷を決定
    する冷房負荷決定手段と、 前記冷房負荷決定手段によって決定された冷房負荷に加
    えてブロワ風量ないしブロワ風量を決定するパラメータ
    に基づいてエバポレータ後温度を設定するときに、ブロ
    ワ風量ないしブロワ風量を決定するパラメータから定ま
    る上限値に設定するエバポレータ後温度設定手段と、 前記エバポレータ後温度設定手段の設定に基づいてコン
    プレッサを制御する制御手段と、 を含むことを特徴とする車両用空調装置。
  2. 【請求項2】 前記エバポレータ後温度設定手段が、前
    記ブロワ風量の増加に応じて前記上限値を高く設定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
  3. 【請求項3】 前記冷房負荷決定手段が、前記環境検出
    手段の検出結果に基づいて車室内へ吹出す吹出し温度を
    決定する吹出し温度決定手段を含み、前記冷房負荷を前
    記吹出し温度決定手段によって決定された吹出し温度と
    することを特徴とする前記請求項1又は請求項2に記載
    の車両用空調装置。
  4. 【請求項4】 前記冷房負荷決定手段が、前記環境検出
    手段によって検出する外気温度に基づいて冷房負荷を決
    定することを特徴とする前記請求項1又は請求項2に記
    載の車両用空調装置。
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