JP3395629B2 - 高耐屈曲複合導体 - Google Patents
高耐屈曲複合導体Info
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Description
される高耐屈曲複合導体に関し、特に、高耐屈曲寿命と
高導電率を併せ持った高耐屈曲複合導体及びその製造方
法に関するものである。
機器等の小型化に伴って、これらに使われるケーブルは
細線化や耐屈曲寿命の向上が望まれている。例えば、医
療向けの超音波診断装置用プローブに接続されるケーブ
ルや産業用ロボットに用いられるケーブルである。上記
の要求に応える耐屈曲性ケーブルとして、無酸素銅をベ
ースに微量のFe、P等の元素を添加した析出強化型銅
合金線を適用したものが提案されている(「電線工業の
技術動向」藤尾信博著、1990、P1〜4)。
は、高屈曲疲労特性、高強度および高導電率を備える銅
合金線が要求されるが、この要求に対し、その要因分析
及び開発がすでに行われている。図5は高屈曲疲労特
性、高強度および高導電率を備えた銅合金線の引っ張り
強さと破断までの屈曲寿命の関係を示す。図中の番号
は、表1(冷間伸線により作製した直径が0.1mmの
銅合金線と、その組成の関係を示す)に示したNo.1
〜16の銅合金の特性である。
ベンディングヘッド11は一対のリング12a,12b
を備え、このリング間に所定の長さに切断された被試験
線13(銅合金線)の上部が挟持される。ベンディング
ヘッド11は、リング12a,12bから突出する被試
験線13の先端部を把持するクランプ14を備えてい
る。また、被試験線13の下端には所定の重量のロード
15が重りとして取り付けられている。ベンディングヘ
ッド11は、ニップ点を回動中心として、不図示の駆動
手段により、左右に90度往復回転する。
13をベンディングヘッド11に固定した後、ベンディ
ングヘッド11を(b)のように右に90度回転させ、
被試験線13に曲げを付与する。ついで、(a)の初期
位置に戻し、更に(c)のように左に90度の回転を付
与する。つまり、(a)→(b)→(a)→(c)の回
転を付与することにより左右1回の曲げが付与され、
(a)→(b)→(a)→(c)→(a)→(b)→
(a)・・・の工程を繰り返すことにより被試験線13
が破断する。この破断までの曲げ回数が、図5の縦軸に
示す「破断までの曲げ回数」である。図5の結果から、
引っ張り強さの高い銅合金ほど破断までの曲げ回数が多
く、耐屈曲性に優れていることがわかる。
電率と引張強さの関係を示す。図7から明らかなよう
に、引っ張り強さが高いほど、製品要求特性である導電
率が低下する傾向がある。しかし、上記したように、導
電材料としての導体は、耐屈曲寿命に優れ、且つできる
だけ導電率の高いことが望ましい。また、Cu−Nb
系、Cu−Cr系、Cu−Ta系、Cu−Fe系などの
添加金属をファイバ状繊維にして構成した銅−金属繊維
を用いた複合導体が提案されている(Dierk Raabe eta
l:Z. Metallkd、86(1995) 405-415) 。
は、Cu−Nb系、Cu−Ag系またはCu−Fb系の
合金を中空の芯線にし、その芯線内に同心状に複数の強
化材を配し、芯線の内周面と外周面に外被材を設け、耐
屈曲性と高導電率を向上させた複合線が示されている。
よると、図6に示したように耐屈曲寿命の長い銅合金
は、図7に示したように導電率が低くなる傾向にあり、
高耐屈曲寿命と高導電率を併せ持った銅合金材は存在し
ない。一方、Cu−Nb系、Cu−Cr系、Cu−Ta
系、Cu−Fe系などの添加金属をファイバ状繊維にし
て構成した銅−金属繊維を用いた複合導体は、加工度を
高くすれば1000〜2500MPaの強度が得られる
とされているため、強度の高いCu−25 vol%Nb線
材について、その屈曲寿命を測定した。ところが、予想
したほど屈曲寿命は向上しないことがわかり、製品に適
用することが難しいことがわかった。
合線によると、中空構造で且つ金属繊維構造でないた
め、外径が大きくなることは避けられず、細線化が難し
い。更に、芯線内に何層もの強化材を配設する必要があ
るため、製造工程が複雑化し、生産コストが高くなる。
以上のように、銅合金の線材に高い耐屈曲寿命が要求さ
れている用途においては、従来、高耐屈曲寿命と高導電
率を併せ持ったものはなく、高耐屈曲寿命と高導電率を
併せ持った特性の材料の出現が期待されている。
高導電率を併せ持った特性の得られる高耐屈曲複合導体
及びその製造方法を提供することにある。
達成するため、第1の特徴として、芯材を形成する複数
の銅−金属繊維導体と、前記複数の前記銅−金属繊維を
被覆する黄銅による被覆層を有することを特徴とする高
耐屈曲複合導体を提供する。また、本発明は、上記の目
的を達成するため、第2の特徴として、所定の径に加工
した複数の銅−金属繊維導体としての棒状の銅合金を黄
銅によるパイプ内に挿入し、所定の温度に加熱して液圧
押出法で押し出して所定径の高耐屈曲複合導体を生成す
ることを特徴とする高耐屈曲複合導体の製造方法を提供
する。
づいて説明する。図1は本発明による複合導体を示す。
図中、(a)は横断面図、(b)は縦断面図を示してい
る。複合導体1は、芯材としての銅−金属繊維導体2
と、これを被覆する被覆層3を備えて構成されている。
銅−金属繊維導体2には、3〜35vol%Nbを含むフ
ァイバ状のCu−Nb導体の多数本を撚り合わせ、或い
は平行配置している。Cu−Nb導体は、丸棒状のほ
か、圧延した平角線等を用いることもできる。
属繊維導体2に導電率が高く、引張強度の高いCu−N
b線材を用い、かつ、Cu−Nbの表面欠陥の成長を抑
制するために被覆層3を設けた構成にした。この結果、
高耐屈曲寿命と高導電率を併せ持った特性の銅合金線を
得ることが可能になった。これにより、医療向けの超音
波診断用プローブや産業用ロボット、PCジョイナ、キ
ャブタイヤケーブル、パソコンケーブル等の用途に適し
た線材を提供することができる。
b系のほか、Cu−Nb−Cr系、Cu−Nb−Zr
系、Cu−Cr系、Cu−Ta系、Cu−Fe系、Cu
−Ag系等の導体を用いることができる。また、被覆層
3には、銅合金、具体的には、Cu−Sn系、Cu−S
n−In系、Cu−Zn系、Cu−Zn−Mg系、Cu
−Ag系などのほか、多元系銅合金を用いることができ
る。なお被覆層3は、強度向上が期待できる材料であれ
ば、上記した材料に限定されない。
と、銅または銅合金の丸棒に銅合金管を被覆した後、液
圧押出法により押し出しを行っている。この液圧押出法
の採用により、経済性と品質の安定化を図ることができ
る。
ず、本発明の効果を明確にするため、比較例1及び比較
例2を作製した。 〔比較例1〕CaOるつぼを用い、真空高周波溶解法に
より直径32mmのCu−20mass%Nbを作製した。
このCu−20mass%Nbを面削して直径30mmの鋳
塊にし、直径が8.0mmになるまでスェージャ加工
し、ついで冷間引き抜きと冷間伸線により直径0.1m
mの線材を得た。この線材は、引張強さ1505MP
a、伸び2.1%、導電率55.2%IACSであっ
た。この線材の屈曲寿命を図7で説明した試験方法によ
り実施した。この場合の条件は、曲げ角90度、荷重
0.49N、曲げ歪みε=1.0%、曲げ速度30回/
分とした。その結果、屈曲寿命は7760回であった。
の曲げ回数Nfと引張強さσB の関係を示す。図中、○
印で示すAが比較例1の特性である(□印で示すBはび
比較例2、△印で示すCは本発明の実施例の特性である
が、これについては後述する)。また、図中の1〜16
の数字は、表1に示したNo.1〜16の組成に対応し
ている。
にもかかわらず、屈曲寿命を示す破断までの曲げ回数が
著しく低く、図5で説明した従来の結果と異なることが
わかる。そこで、比較例1の屈曲寿命が劣る原因を詳細
に調べたところ、その原因が表面欠陥の存在にあること
を見出した。そして、この表面欠陥は冷間加工によって
助長されることも解明された。
1で問題になった表面欠陥を防止するため、線材を無酸
素銅で被覆した比較例2を作製し、比較例1と同様な検
討を行った。ここでは、製造の合理性からくる経済性と
品質向上を考慮し、液圧押出法で押し出しを行った。ま
ず、直径が32mmのCu−20mass%Nb鋳塊を面削
して直径を25mmにした。これを内径25mmで外径
28mmの無酸素銅パイプ内に挿入し、先端に銅プラグ
をセット、後端に鉄プラグをセットし、400℃に加熱
して液圧押出法で押し出し、直径が10mmの複合材を
作製した。これをドローベンチによる冷間引き抜き及び
冷間伸線により、直径0.1mmの線材にした。これが
比較例2であり、その形状は図1と変わらない。
引っ張り強さは、図2の□印に示すように1310MP
aとなり、伸びは2.1%であった。一方、比較例1の
引っ張り強さは1505MPaで、伸びは2.1%であ
り、比較例1よりも引っ張り強さは大きな値を示した。
また、比較例2による破断までの曲げ回数(屈曲寿命)
は16146回であり、比較例1の7760回に比べ、
寿命が2倍以上延びていることが確かめられた。屈曲寿
命は、曲げ角90度、荷重0.49N、曲げ歪みε=
1.0%、曲げ速度30回/分の条件で行った。
2では、引っ張り強さに対応して耐屈曲性が改善してい
ることがわかる。屈曲特性は、表面の曲げ歪みに対する
抵抗と考えられる。一方、図5に示したように、引っ張
り強さが高い銅線ほど屈曲寿命が高いのは、表面層も高
い引っ張り強さを有する銅合金であることを示してい
る。
電率ρと引張強さσB の関係を示す。図中、○印が比較
例1の特性であり、□印が比較例2の特性である。比較
例2の導電率が65.4%IACSであるのに対し、比
較例1では55.2%IACSであった。このように、
比較例2では、耐屈曲性、導電率ともに優れていること
がわかる。
に以下のような検討を加え、比較例2の複合材の強度及
び加工性の向上を目的として、被覆層3を黄銅被覆Cu
−20%Nbにしたものである。被覆層3には、液圧押
出し性の観点から、Cu−35mass%Znの黄銅管を用
いた。比較例2と同様に、直径32mmのCu−20ma
ss%Nb鋳塊を面削して直径25mmにし、これを内径
25mmで外形28mmのCu−35%Zn組成の黄銅
パイプ内に挿入し、先端に銅プラグ、後端に鉄プラグを
セットし、400℃に加熱して液圧押出法で押し出し、
直径8mmの複合材を作製した。これをドローベンチに
よる冷間引き抜き及び冷間伸線により、直径0.1mm
の線材にした。これが本発明による実施例であり、図1
に示した形状を有している。
図3における△印のCであり、線材の引っ張り強さが1
372MPa、伸びが2.9%、導電率が51.8%I
ACSであった。比較例1に比べ、寿命が約3.7倍の
延びを示していることが確かめられた。また、屈曲寿命
は28626回にも達し、被覆をしていない比較例2の
約3.7倍の屈曲寿命を示した。このように、本実施例
によれば、比較例2に比べ、導電率はやや低いものの、
破断までの曲げ回数である耐屈曲寿命が大幅に高い値を
示している。すなわち、高耐屈曲性と高導電性を併せ持
った銅導体になっている。
98%における本実施例の縦断面(a)及び横断面
(b)の写真を示す。この写真から、肉厚が0.005
mm程度の無酸素銅で被覆されたCu−20mass%Nb
複合材が形成されていることが確かめられた。この状況
から、被覆黄銅が耐屈寿命の向上に寄与していることは
明らかである。
金におけるNb濃度の規定について説明する。 (1)Nb濃度の下限は3mass%とする。3mass%以下
では、Cu−Nb状態図に示される通り、鋳造時に安定
した組成(濃度)の鋳塊を得にくい。また、この濃度以
下では、強度と耐屈曲寿命の向上が少ないためである。 (2)Nb濃度の上限は35mass%とする。Nb濃度が
高いと冷間加工性が悪くなる。また、Nb自体が高価な
材料なので、Nbはできるだけ少なくした方が望まし
い。よって、Nb濃度の上限は、35mass%が望まし
い。
による線材の用途として、医療向けの超音波診断用プロ
ーブや産業用ロボット、PCジョイナ、キャブタイヤケ
ーブル、パソコンケーブル等を具体的に示したが、本発
明はこれらに限定されるものではなく、耐屈曲性が要求
される全てのケーブルに適用可能である。
よれば、芯材を形成する複数の銅一金属繊維導体を黄銅
よる被覆層で被覆したため、高耐屈曲寿命と高導電率を
併せ持った特性の銅合金線を得ることができる。また、
細線化及び量産化を図ることもできる。
ば、棒状の銅合金を黄銅のパイプ内に挿入し、液圧押出
法で押し出して複合導体を形成するようにしたため、経
済性と品質の安定化を図ることができる。
図、(b)は縦断面図である。
げ回数Nfと引張強さσB の関係を示す特性図である。
張強さσB の関係を示す特性図である。
面、(b)は横断面の写真である。
た銅合金線の引っ張り強さと破断までの屈曲寿命の関係
を示す特性図である。
である。
性図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 芯材を形成する複数の銅−金属繊維導体
と、前記複数の 前記銅−金属繊維を被覆する黄銅による被覆
層を有することを特徴とする高耐屈曲複合導体。 - 【請求項2】 前記複数の銅−金属繊維導体は、Cu−
Nb系、Cu−Nb−Cr系、Cu−Nb−Zr系、C
u−Cr系、Cu−Ta系、Cu−Fe系、Cu−Ag
系のいずれかの導体材料を用いていることを特徴とする
請求項1記載の高耐屈曲複合導体。 - 【請求項3】 前記Cu−Nb系の導体材料は、3〜3
5vol%のNbを含むことを特徴とする請求項1記載
の高耐屈曲複合導体。 - 【請求項4】 前記複数の銅−金属繊維導体は、所定数
を撚り合わせた構造または平行にした構造であることを
特徴とする請求項1または2記載の高耐屈曲複合導体。 - 【請求項5】 前記複数の銅−金属繊維導体は、焼きな
まし加工が施されていることを特徴とする請求項1記載
の高耐屈曲複合導体。 - 【請求項6】 所定の径に加工した複数の銅−金属繊維
導体としての棒状の銅合金を黄銅によるパイプ内に挿入
し、 所定の温度に加熱して液圧押出法で押し出して所定径の
高耐屈曲複合導体を生成することを特徴とする高耐屈曲
複合導体の製造方法。 - 【請求項7】 前記押し出した複合導体に冷間加工を施
すことを特徴とする請求項6記載の高耐屈曲複合導体の
製造方法。
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JP2013028839A (ja) * | 2011-07-28 | 2013-02-07 | Yazaki Corp | 電線用導体 |
-
1998
- 1998-01-29 JP JP03216398A patent/JP3395629B2/ja not_active Expired - Fee Related
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