JP3394342B2 - アリルアルコールの回収方法 - Google Patents
アリルアルコールの回収方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アリルアルコ−ルの回
収方法に関するものである。 【0002】さらに詳しくは、過酸化水素を開始剤とし
てアリルアルコ−ルとスチレンを共重合させアリルアル
コール−スチレン共重合体を製造するプロセスより得ら
れる低沸点留分をエントレーナーの存在下に、エントレ
ーナーを還流循環させながら共沸蒸留を行い、凝縮させ
ると分液する留出液の下層すなわち水層を系外へ抜き取
ることにより、塔底から未反応のアリルアルコールを回
収する方法において、エントレーナーとしてジアリルエ
ーテルを用いることを特徴とするアリルアルコールの回
収方法に関するものである。アリルアルコール−スチレ
ン共重合体は塗料などの中間体の原料となる有用な物質
である。 【0003】 【従来の技術】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ
ール−スチレン共重合体を製造するプロセスより得られ
る低沸点留分中の水分をエントレーナーを用いて共沸蒸
留分離することにより未反応の アリルアルコー
ルを回収する方法は公知である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、公知の
技術(例えば特公昭36−95号公報)では、エントレ
ーナーとしてベンゼンを用いると記載されているのみで
詳細は不明である。 【0005】ところで、ベンゼンを用いた場合、3成分
共沸組成でアリルアルコールの濃度が高く、水の濃度が
低いため、低沸点留分中の水を塔頂より留出させるため
のエネルギーが多く必要となることが予想される。 さ
らに、ベンゼンは毒性(特に血液毒)が強く、最近では
使用が制限される動きがあり、今後、新たに使用するこ
とは差し控えた方が良いことは言うまでもないことであ
る。一方、他のエントレーナーとしてギ酸アリルとトル
エンを合わせて使用する方法も考えることができる。し
かし、この場合だと塔頂から留出した共沸組成ベーパー
を凝縮し分液させると、その下層である水層へのギ酸ア
リルの溶解度は約2重量%と高く、連続して処理する場
合ではたびたび塔頂からギ酸アリルを新たに供給する必
要がある。 【0006】 【発明の目的】本発明の目的は、過酸化水素を開始剤と
してアリルアルコール−スチレン共重合体を製造するプ
ロセスより得られる低沸点留分中の水をエントレーナー
を用いて共沸蒸留分離することにより未反応のアリルア
ルコールを回収する方法において、新たなエントレーナ
ーを用いることにより、特公昭36−95号公報に記載
された技術をさらに改良発展させることにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を重ねた結果、過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ
ール−スチレン共重合体を製造するプロセスより得られ
る低沸点留分中の水をエントレーナーを用いて共沸蒸留
分離することにより未反応のアリルアルコールを回収す
る方法において、新たなエントレーナーとしてギ酸アリ
ルを用いることにより効率良くアリルアルコールを回収
するためのプロセスを見出した。 【0008】すなわち、本発明は、「過酸化水素を開始
剤としてアリルアルコ−ルとスチレンを共重合させアリ
ルアルコール−スチレン共重合体を製造するプロセスよ
り得られる低沸点留分中の水をエントレーナーを用いて
共沸蒸留分離することにより未反応のアリルアルコール
を回収する方法において、エントレーナーとしてジアリ
ルエーテルを用いることを特徴とするアリルアルコール
の回収方法」である。 【0009】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ−
ルとスチレンを共重合させアリルアルコール−スチレン
共重合体を合成する反応においては重合終了後、共重合
体を分離し、未反応のアリルアルコール、スチレンおよ
び水などの低沸点留分を蒸発操作により除去する。 【0010】以下に本発明について第1図を用いて説明
する。 【0011】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ−
ルとスチレンを共重合させアリルアルコール−スチレン
共重合体を合成する反応では通常出発原料であるアリル
アルコ−ルとスチレンを重量比50/50〜80/20程度になる
ように反応器に仕込む。アリルアルコ−ルとスチレンの
重量比が80/20以上になると分子量の増大を達成でき
ず、得られる製品が脆弱となり、逆に重量比が50/50未
満だと製品中のスチレン含有量が多くなり、得られる製
品の水酸基価が小さく、性能が出なくなり、好ましくな
いからである。 【0012】上記のような重量比で仕込んで反応させる
と通常アリルアルコ−ルとスチレンがそれぞれ70〜95%
および5〜15%程度未反応のまま反応系に残存する。し
たがって、原料の使用率を向上させるという観点のみな
らず、廃棄物処理という観点からも未反応のアリルアル
コ−ルとスチレンを回収せねばならない。 【0013】また、過酸化水素は仕込みモノマ−に対し
て0.5〜5.0%程度の濃度になるように仕込む。過酸化水
素の仕込み濃度が0.5%未満だと重合速度が遅く、モノ
マ−の転化率が悪く、実用的でない。逆に5.0%以上に
なると分子量の増大を達成できず、得られる製品が脆弱
となるので、いずれも好ましくない。 【0014】過酸化水素は通常、35%の水溶液を使用す
るので、この中の水分が系中に存在することになる。ま
た、過酸化水素を0.5〜5.0%程度仕込んで反応させると
必然的に水分が0.3〜3%程度生成する。さらに、製品
の粘度の調整の目的のため水分濃度を高く保持しながら
反応させることも可能で、仕込みの時点で仕込みモノマ
−全量に対して0〜5%程度水を添加する。 【0015】したがって、重合終了後の系中には仕込み
モノマ−全量に対して0.3〜5%程度の水が存在してい
ることになる。 【0016】本発明においては、まず、蒸発器を使用し
てアリルアルコール、スチレンおよび反応により生成し
た水からなる低沸点留分を蒸発操作により分離する。 【0017】上記のように分離された低沸点留分の組成
はアリルアルコール/スチレン/水が80%〜90%/5%〜1
5%/2%〜10%程度の比率になる。 【0018】得られた上記組成を有する低沸点留分を第
1図に示したアリルアルコール回収塔1−1に仕込む。
塔頂からエントレーナーとしてジアリルエーテルを仕込
み、共沸蒸留を行うことにより仕込み液中の水は、ジア
リルエーテルとアリルアルコールと3成分共沸し、塔頂
部に設置された凝縮器2−2で凝縮され、その下に設置
された分液槽3−3にたまる。 【0019】ここで凝縮液は分液するため、その下層と
なる水層を系外に抜き出し、エントレーナーを含む上層
は再び塔頂部に戻す。そして、塔底部から脱水されたア
リルアルコールを回収し、この液はそのまま反応系へリ
サイクルすることができる。この場合、ジアリルエーテ
ルはアリルアルコールと水の3成分共沸組成において、
アリルアルコールが8.7重量%、水12.4重量%と
ベンゼンのそれに比べてアリルアルコールの濃度は低く
水の濃度は高くなっており、必然的に低沸点留分中の水
を塔頂より留出させるためのエネルギーは少なくて済
む。 【0020】この時、蒸留塔の塔頂温度は77〜80℃程度
にコントロ−ルするのが好ましい。塔頂温度が80℃以上
になるとアリルアルコールが過剰に留出するためエネル
ギ−ロスが大となり、逆に、77℃未満になるとアリルア
ルコールが留出しなくなるので、好ましくない。 【0021】かつ、この塔頂から留出した共沸組成のガ
スを凝縮すると分液し、その下層の水層へのジアリルエ
ーテル溶解度は約0.2重量%とギ酸アリル・トルエン
のそれに比べて極めて小さいため、ジアリルエーテルの
回収に要するエネルギーも少なくて済む。また、連続し
て処理する場合では、系外に抜けるジアリルエーテルの
量が少なくなるため、塔頂から新たに供給する量が少な
くてすむため、工業化する上でも有利となる。 【0022】このようにして分離されたアリルアルコー
ル/スチレン混合物は反応系にリサイクルされて再使用
される。 【0023】さらにジアリルエーテルだけでなくトルエ
ンを併用することも可能である。 【0024】この場合、ジアリルエーテルだけを用いる
場合と比較して上層還流液中の水分濃度を下げる効果が
あり、必然的に還流量が下がりエネルギーも少なくて済
む。本発明において脱水蒸留塔として使用される装置と
しては通常の多孔板塔、泡鐘塔、充填塔等いずれでも良
いが、塔底に水が残らないような十分な理論段数を有す
るものが必要である。 【0025】また、バッチ塔であっても何ら問題はない
が、連続、バッチいずれの場合も留出した共沸混合物を
分液後エントレーナーのみを再び塔に戻すための分液槽
を有するものが用いられる。 【0026】エントレーナーの使用量はリサイクルして
使用するのが通常であり、また、分液槽のサイズによっ
て変わってくるため、設備規模、経済性を勘案して任意
に選択するのがよいが、標準的には、仕込み液中の水の
含有量に対して10〜30倍程度使用する。 【0027】エントレーナーの添加方法について、連続
式の場合は塔頂部あるいは分液槽に添加する。バッチ式
の場合は添加量の一部を仕込み液中に直接添加してもよ
い。また処理時間はバッチ式の場合、分液槽に水が留出
しなくなるまで続けることで脱水を完結させるが、連続
式の場合は、塔内水分分析を行い、塔底液中に水が含ま
れていないことを確かめながら運転するのがよい。 【0028】以下に実施例をあげてさらに詳しく説明す
る。 【0029】[実施例1]第1図に示した装置でエント
レーナーとしてジタリルエーテルを用い、連続共沸蒸留
を行った。用いた蒸留塔は50段×40φのシーブトレ
イ型のものである。 仕込液はアリルアルコール86.
0重量%、水4.6重量%、スチレン9.4wt%からな
る混合液であり、これを300gおよびジアリルエーテ
ルを30g塔底缶に張り込み、次に、塔頂部の分液槽
に、ジアリルエーテルを30g張り込んだ。 次に塔低
のヒーターを加熱し、塔内を全還流状態にし塔内温度が
安定したところで仕込混合液を215ミリリットル/時
で下から28段の位置に連続仕込 みを開始した。(以
後段数は全て下から数える。) その直後、分液槽上層液の還流ポンプを作動させ、約2
00ミリリットル/時で塔頂より仕込むと同時にコンデ
ンサー凝縮液は、全量デカンターに流れ落ちるように弁
を切り替え、塔底缶液面が一定となるように塔底液の抜
き取りを開始した。 【0030】約1時間後、分液槽に下層水がたまったの
で、その後の滞留液量が一定になるように下層水の抜き
取りを開始した。 【0031】その後、6時間程塔底缶液面、分液槽液面
および塔内温度分布が一定になるように安定した状態で
運転を続けた後、留出下層液、上層還流液および塔底缶
出液の流量測定と濃度分析を行った。 【0032】その結果、留出下層液は、11g/時であ
り、水分濃度は76.8重量%、アリルアルコール濃度
は23.1重量%、ジアリルエーテル濃度は0.1重量
%であった。このときの還流上層液中の水分濃度は1
5.1重量%であった。 【0033】一方、塔底缶出液は、175g/時であ
り、水分濃度は0.16重量%、ジアリルエーテル濃度
は0.07重量%であった。 【0034】[比較例1]実施例1と同じ装置でエント
レーナーとしてギ酸アリルとトルエンを用い、連続共沸
蒸留を行った。 【0035】仕込液はアリルアルコール86.0重量
%、水4.6重量%、スチレン9.4重量%からなる混
合液であり、これを300gおよびギ酸アリル15g、
トルエン15gを塔底に張り込み、次に、塔頂部の分液
槽に、ギ酸アリル15g、トルエン15gを張り込ん
だ。 【0036】次に塔低のヒーターを加熱し、塔内を全還
流状態にし塔内温度が安定したところで仕込混合液を2
50ミリリットル/時で28段の位置に連続仕込みを開
始した。その直後、分液槽上層液の還流ポンプを作動さ
せ、約200ミリリットル/時で塔頂より仕込むと同時
にコンデンサー凝縮液は、全量デカンターに流れ落ちる
ように弁を切り替え、塔底缶液面が一定となるように塔
底液の抜き取りを開始した。約1時間後、分液槽に下層
水がたまったので、その後の滞留液量が一定になるよう
に下層水の抜き取りを開始した。 【0037】その後、6時間程塔底缶液面、分液槽液面
および塔内温度分布が一定になるように安定した状態で
運転を続けた後、留出下層液、上層還流液および塔底缶
出液の流量測定と濃度分析を行った。 【0038】その結果、留出下層液は、12g/時であ
り、水分濃度は75.1重量%、アリルアルコール濃度
は22.1重量%、ギ酸アリル濃度は1.57重量%、
トルエン濃度は0.03重量%であった。 【0039】一方、塔底缶出液は、204g/時であ
り、水分濃度は0.6重量%、ギ酸アリル濃度は0.0
6重量%、トルエン濃度はトレースであった。 【0040】実施例1と比較すると下層留出液へのエン
トレーナーの溶解度が高いことが分かる。 【0041】[比較例2]実施例1と同じ装置でエント
レーナーとしてジアリルエーテルとトルエンを用い、連
続共沸蒸留を行った。 【0042】仕込液はアリルアルコール86.0重量
%、水4.6重量%、スチレン9.4重量%からなる混
合液であり、これを300gおよびジアリルエーテル1
5g、トルエン15gを塔底に張り込み、次に、塔頂部
の分液槽に、ジアリルエーテル15g、トルエン15g
を張り込んだ。 【0043】次に塔低のヒーターを加熱し、塔内を全還
流状態にし塔内温度が安定したところで仕込混合液を2
25ミリリットル/時で28段の位置に連続仕込みを開
始した。その直後、分液槽上層液の還流ポンプを作動さ
せ、約190ミリリットル/時で塔頂より仕込むと同時
にコンデンサー凝縮液は、全量デカンターに流れ落ちる
ように弁を切り替え、塔底缶液面が一定となるように塔
底液の抜き取りを開始した。 【0044】約1時間後、分液槽に下層水がたまったの
で、その後の滞留液量が一定になるように下層水の抜き
取りを開始した。 【0045】その後、6時間程塔底缶液面、分液槽液面
および塔内温度分布が一定になるように安定した状態で
運転を続けた後、留出下層液、上層還流液および塔底缶
出液の流量測定と濃度分析を行った。 【0046】その結果、留出下層液は、12g/時であ
り、水分濃度は71.2重量%、アリルアルコール濃度
は28.2重量%、ジアリルエーテル濃度は0.27重
量%、トルエン濃度はトレースであった。このときの還
流上層液中の水分濃度は5.7重量%であった。
一方、塔底缶出液は、182g/時であり、水分濃度
は0.3重量%、ジアリルエーテル濃度は0.07重量
%、トルエン濃度はトレースであった。実施例1と比較
して還流上層液中の水分濃度が低いことが分かる。 【0047】 【発明の効果】アリルアルコール−スチレン共重合体を
製造するプロセスより得られる低沸点留分中の水をエン
トレーナーを用いて共沸蒸留分離することによりアリル
アルコールを回収する方法において、エントレーナーと
してジアリルエーテルを用いることにより効率良くアリ
ルアルコールを回収することが可能となった。
収方法に関するものである。 【0002】さらに詳しくは、過酸化水素を開始剤とし
てアリルアルコ−ルとスチレンを共重合させアリルアル
コール−スチレン共重合体を製造するプロセスより得ら
れる低沸点留分をエントレーナーの存在下に、エントレ
ーナーを還流循環させながら共沸蒸留を行い、凝縮させ
ると分液する留出液の下層すなわち水層を系外へ抜き取
ることにより、塔底から未反応のアリルアルコールを回
収する方法において、エントレーナーとしてジアリルエ
ーテルを用いることを特徴とするアリルアルコールの回
収方法に関するものである。アリルアルコール−スチレ
ン共重合体は塗料などの中間体の原料となる有用な物質
である。 【0003】 【従来の技術】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ
ール−スチレン共重合体を製造するプロセスより得られ
る低沸点留分中の水分をエントレーナーを用いて共沸蒸
留分離することにより未反応の アリルアルコー
ルを回収する方法は公知である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、公知の
技術(例えば特公昭36−95号公報)では、エントレ
ーナーとしてベンゼンを用いると記載されているのみで
詳細は不明である。 【0005】ところで、ベンゼンを用いた場合、3成分
共沸組成でアリルアルコールの濃度が高く、水の濃度が
低いため、低沸点留分中の水を塔頂より留出させるため
のエネルギーが多く必要となることが予想される。 さ
らに、ベンゼンは毒性(特に血液毒)が強く、最近では
使用が制限される動きがあり、今後、新たに使用するこ
とは差し控えた方が良いことは言うまでもないことであ
る。一方、他のエントレーナーとしてギ酸アリルとトル
エンを合わせて使用する方法も考えることができる。し
かし、この場合だと塔頂から留出した共沸組成ベーパー
を凝縮し分液させると、その下層である水層へのギ酸ア
リルの溶解度は約2重量%と高く、連続して処理する場
合ではたびたび塔頂からギ酸アリルを新たに供給する必
要がある。 【0006】 【発明の目的】本発明の目的は、過酸化水素を開始剤と
してアリルアルコール−スチレン共重合体を製造するプ
ロセスより得られる低沸点留分中の水をエントレーナー
を用いて共沸蒸留分離することにより未反応のアリルア
ルコールを回収する方法において、新たなエントレーナ
ーを用いることにより、特公昭36−95号公報に記載
された技術をさらに改良発展させることにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
を重ねた結果、過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ
ール−スチレン共重合体を製造するプロセスより得られ
る低沸点留分中の水をエントレーナーを用いて共沸蒸留
分離することにより未反応のアリルアルコールを回収す
る方法において、新たなエントレーナーとしてギ酸アリ
ルを用いることにより効率良くアリルアルコールを回収
するためのプロセスを見出した。 【0008】すなわち、本発明は、「過酸化水素を開始
剤としてアリルアルコ−ルとスチレンを共重合させアリ
ルアルコール−スチレン共重合体を製造するプロセスよ
り得られる低沸点留分中の水をエントレーナーを用いて
共沸蒸留分離することにより未反応のアリルアルコール
を回収する方法において、エントレーナーとしてジアリ
ルエーテルを用いることを特徴とするアリルアルコール
の回収方法」である。 【0009】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ−
ルとスチレンを共重合させアリルアルコール−スチレン
共重合体を合成する反応においては重合終了後、共重合
体を分離し、未反応のアリルアルコール、スチレンおよ
び水などの低沸点留分を蒸発操作により除去する。 【0010】以下に本発明について第1図を用いて説明
する。 【0011】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ−
ルとスチレンを共重合させアリルアルコール−スチレン
共重合体を合成する反応では通常出発原料であるアリル
アルコ−ルとスチレンを重量比50/50〜80/20程度になる
ように反応器に仕込む。アリルアルコ−ルとスチレンの
重量比が80/20以上になると分子量の増大を達成でき
ず、得られる製品が脆弱となり、逆に重量比が50/50未
満だと製品中のスチレン含有量が多くなり、得られる製
品の水酸基価が小さく、性能が出なくなり、好ましくな
いからである。 【0012】上記のような重量比で仕込んで反応させる
と通常アリルアルコ−ルとスチレンがそれぞれ70〜95%
および5〜15%程度未反応のまま反応系に残存する。し
たがって、原料の使用率を向上させるという観点のみな
らず、廃棄物処理という観点からも未反応のアリルアル
コ−ルとスチレンを回収せねばならない。 【0013】また、過酸化水素は仕込みモノマ−に対し
て0.5〜5.0%程度の濃度になるように仕込む。過酸化水
素の仕込み濃度が0.5%未満だと重合速度が遅く、モノ
マ−の転化率が悪く、実用的でない。逆に5.0%以上に
なると分子量の増大を達成できず、得られる製品が脆弱
となるので、いずれも好ましくない。 【0014】過酸化水素は通常、35%の水溶液を使用す
るので、この中の水分が系中に存在することになる。ま
た、過酸化水素を0.5〜5.0%程度仕込んで反応させると
必然的に水分が0.3〜3%程度生成する。さらに、製品
の粘度の調整の目的のため水分濃度を高く保持しながら
反応させることも可能で、仕込みの時点で仕込みモノマ
−全量に対して0〜5%程度水を添加する。 【0015】したがって、重合終了後の系中には仕込み
モノマ−全量に対して0.3〜5%程度の水が存在してい
ることになる。 【0016】本発明においては、まず、蒸発器を使用し
てアリルアルコール、スチレンおよび反応により生成し
た水からなる低沸点留分を蒸発操作により分離する。 【0017】上記のように分離された低沸点留分の組成
はアリルアルコール/スチレン/水が80%〜90%/5%〜1
5%/2%〜10%程度の比率になる。 【0018】得られた上記組成を有する低沸点留分を第
1図に示したアリルアルコール回収塔1−1に仕込む。
塔頂からエントレーナーとしてジアリルエーテルを仕込
み、共沸蒸留を行うことにより仕込み液中の水は、ジア
リルエーテルとアリルアルコールと3成分共沸し、塔頂
部に設置された凝縮器2−2で凝縮され、その下に設置
された分液槽3−3にたまる。 【0019】ここで凝縮液は分液するため、その下層と
なる水層を系外に抜き出し、エントレーナーを含む上層
は再び塔頂部に戻す。そして、塔底部から脱水されたア
リルアルコールを回収し、この液はそのまま反応系へリ
サイクルすることができる。この場合、ジアリルエーテ
ルはアリルアルコールと水の3成分共沸組成において、
アリルアルコールが8.7重量%、水12.4重量%と
ベンゼンのそれに比べてアリルアルコールの濃度は低く
水の濃度は高くなっており、必然的に低沸点留分中の水
を塔頂より留出させるためのエネルギーは少なくて済
む。 【0020】この時、蒸留塔の塔頂温度は77〜80℃程度
にコントロ−ルするのが好ましい。塔頂温度が80℃以上
になるとアリルアルコールが過剰に留出するためエネル
ギ−ロスが大となり、逆に、77℃未満になるとアリルア
ルコールが留出しなくなるので、好ましくない。 【0021】かつ、この塔頂から留出した共沸組成のガ
スを凝縮すると分液し、その下層の水層へのジアリルエ
ーテル溶解度は約0.2重量%とギ酸アリル・トルエン
のそれに比べて極めて小さいため、ジアリルエーテルの
回収に要するエネルギーも少なくて済む。また、連続し
て処理する場合では、系外に抜けるジアリルエーテルの
量が少なくなるため、塔頂から新たに供給する量が少な
くてすむため、工業化する上でも有利となる。 【0022】このようにして分離されたアリルアルコー
ル/スチレン混合物は反応系にリサイクルされて再使用
される。 【0023】さらにジアリルエーテルだけでなくトルエ
ンを併用することも可能である。 【0024】この場合、ジアリルエーテルだけを用いる
場合と比較して上層還流液中の水分濃度を下げる効果が
あり、必然的に還流量が下がりエネルギーも少なくて済
む。本発明において脱水蒸留塔として使用される装置と
しては通常の多孔板塔、泡鐘塔、充填塔等いずれでも良
いが、塔底に水が残らないような十分な理論段数を有す
るものが必要である。 【0025】また、バッチ塔であっても何ら問題はない
が、連続、バッチいずれの場合も留出した共沸混合物を
分液後エントレーナーのみを再び塔に戻すための分液槽
を有するものが用いられる。 【0026】エントレーナーの使用量はリサイクルして
使用するのが通常であり、また、分液槽のサイズによっ
て変わってくるため、設備規模、経済性を勘案して任意
に選択するのがよいが、標準的には、仕込み液中の水の
含有量に対して10〜30倍程度使用する。 【0027】エントレーナーの添加方法について、連続
式の場合は塔頂部あるいは分液槽に添加する。バッチ式
の場合は添加量の一部を仕込み液中に直接添加してもよ
い。また処理時間はバッチ式の場合、分液槽に水が留出
しなくなるまで続けることで脱水を完結させるが、連続
式の場合は、塔内水分分析を行い、塔底液中に水が含ま
れていないことを確かめながら運転するのがよい。 【0028】以下に実施例をあげてさらに詳しく説明す
る。 【0029】[実施例1]第1図に示した装置でエント
レーナーとしてジタリルエーテルを用い、連続共沸蒸留
を行った。用いた蒸留塔は50段×40φのシーブトレ
イ型のものである。 仕込液はアリルアルコール86.
0重量%、水4.6重量%、スチレン9.4wt%からな
る混合液であり、これを300gおよびジアリルエーテ
ルを30g塔底缶に張り込み、次に、塔頂部の分液槽
に、ジアリルエーテルを30g張り込んだ。 次に塔低
のヒーターを加熱し、塔内を全還流状態にし塔内温度が
安定したところで仕込混合液を215ミリリットル/時
で下から28段の位置に連続仕込 みを開始した。(以
後段数は全て下から数える。) その直後、分液槽上層液の還流ポンプを作動させ、約2
00ミリリットル/時で塔頂より仕込むと同時にコンデ
ンサー凝縮液は、全量デカンターに流れ落ちるように弁
を切り替え、塔底缶液面が一定となるように塔底液の抜
き取りを開始した。 【0030】約1時間後、分液槽に下層水がたまったの
で、その後の滞留液量が一定になるように下層水の抜き
取りを開始した。 【0031】その後、6時間程塔底缶液面、分液槽液面
および塔内温度分布が一定になるように安定した状態で
運転を続けた後、留出下層液、上層還流液および塔底缶
出液の流量測定と濃度分析を行った。 【0032】その結果、留出下層液は、11g/時であ
り、水分濃度は76.8重量%、アリルアルコール濃度
は23.1重量%、ジアリルエーテル濃度は0.1重量
%であった。このときの還流上層液中の水分濃度は1
5.1重量%であった。 【0033】一方、塔底缶出液は、175g/時であ
り、水分濃度は0.16重量%、ジアリルエーテル濃度
は0.07重量%であった。 【0034】[比較例1]実施例1と同じ装置でエント
レーナーとしてギ酸アリルとトルエンを用い、連続共沸
蒸留を行った。 【0035】仕込液はアリルアルコール86.0重量
%、水4.6重量%、スチレン9.4重量%からなる混
合液であり、これを300gおよびギ酸アリル15g、
トルエン15gを塔底に張り込み、次に、塔頂部の分液
槽に、ギ酸アリル15g、トルエン15gを張り込ん
だ。 【0036】次に塔低のヒーターを加熱し、塔内を全還
流状態にし塔内温度が安定したところで仕込混合液を2
50ミリリットル/時で28段の位置に連続仕込みを開
始した。その直後、分液槽上層液の還流ポンプを作動さ
せ、約200ミリリットル/時で塔頂より仕込むと同時
にコンデンサー凝縮液は、全量デカンターに流れ落ちる
ように弁を切り替え、塔底缶液面が一定となるように塔
底液の抜き取りを開始した。約1時間後、分液槽に下層
水がたまったので、その後の滞留液量が一定になるよう
に下層水の抜き取りを開始した。 【0037】その後、6時間程塔底缶液面、分液槽液面
および塔内温度分布が一定になるように安定した状態で
運転を続けた後、留出下層液、上層還流液および塔底缶
出液の流量測定と濃度分析を行った。 【0038】その結果、留出下層液は、12g/時であ
り、水分濃度は75.1重量%、アリルアルコール濃度
は22.1重量%、ギ酸アリル濃度は1.57重量%、
トルエン濃度は0.03重量%であった。 【0039】一方、塔底缶出液は、204g/時であ
り、水分濃度は0.6重量%、ギ酸アリル濃度は0.0
6重量%、トルエン濃度はトレースであった。 【0040】実施例1と比較すると下層留出液へのエン
トレーナーの溶解度が高いことが分かる。 【0041】[比較例2]実施例1と同じ装置でエント
レーナーとしてジアリルエーテルとトルエンを用い、連
続共沸蒸留を行った。 【0042】仕込液はアリルアルコール86.0重量
%、水4.6重量%、スチレン9.4重量%からなる混
合液であり、これを300gおよびジアリルエーテル1
5g、トルエン15gを塔底に張り込み、次に、塔頂部
の分液槽に、ジアリルエーテル15g、トルエン15g
を張り込んだ。 【0043】次に塔低のヒーターを加熱し、塔内を全還
流状態にし塔内温度が安定したところで仕込混合液を2
25ミリリットル/時で28段の位置に連続仕込みを開
始した。その直後、分液槽上層液の還流ポンプを作動さ
せ、約190ミリリットル/時で塔頂より仕込むと同時
にコンデンサー凝縮液は、全量デカンターに流れ落ちる
ように弁を切り替え、塔底缶液面が一定となるように塔
底液の抜き取りを開始した。 【0044】約1時間後、分液槽に下層水がたまったの
で、その後の滞留液量が一定になるように下層水の抜き
取りを開始した。 【0045】その後、6時間程塔底缶液面、分液槽液面
および塔内温度分布が一定になるように安定した状態で
運転を続けた後、留出下層液、上層還流液および塔底缶
出液の流量測定と濃度分析を行った。 【0046】その結果、留出下層液は、12g/時であ
り、水分濃度は71.2重量%、アリルアルコール濃度
は28.2重量%、ジアリルエーテル濃度は0.27重
量%、トルエン濃度はトレースであった。このときの還
流上層液中の水分濃度は5.7重量%であった。
一方、塔底缶出液は、182g/時であり、水分濃度
は0.3重量%、ジアリルエーテル濃度は0.07重量
%、トルエン濃度はトレースであった。実施例1と比較
して還流上層液中の水分濃度が低いことが分かる。 【0047】 【発明の効果】アリルアルコール−スチレン共重合体を
製造するプロセスより得られる低沸点留分中の水をエン
トレーナーを用いて共沸蒸留分離することによりアリル
アルコールを回収する方法において、エントレーナーと
してジアリルエーテルを用いることにより効率良くアリ
ルアルコールを回収することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアリルアルコールの回収方法を実施す
るための蒸留塔回りのかく機器の配置を示すブロック図
である。 【符号の説明】 1−1:アリルアルコール回収塔 2−2:凝縮器 3−3:分液槽 (以下余白)
るための蒸留塔回りのかく機器の配置を示すブロック図
である。 【符号の説明】 1−1:アリルアルコール回収塔 2−2:凝縮器 3−3:分液槽 (以下余白)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】過酸化水素を開始剤としてアリルアルコ−
ルとスチレンを共重合させアリルアルコール−スチレン
共重合体を製造するプロセス中、共重合後に分離される
低沸点留分中の水をエントレーナーを用いて共沸蒸留分
離することにより未反応のアリルアルコールを回収する
方法において、エントレーナーとしてジアリルエーテル
を用いることを特徴とするアリルアルコールの回収方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26947394A JP3394342B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | アリルアルコールの回収方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26947394A JP3394342B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | アリルアルコールの回収方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08134133A JPH08134133A (ja) | 1996-05-28 |
JP3394342B2 true JP3394342B2 (ja) | 2003-04-07 |
Family
ID=17472936
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26947394A Expired - Fee Related JP3394342B2 (ja) | 1994-11-02 | 1994-11-02 | アリルアルコールの回収方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3394342B2 (ja) |
-
1994
- 1994-11-02 JP JP26947394A patent/JP3394342B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08134133A (ja) | 1996-05-28 |
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