JP3393672B2 - ポリエチレンフタレート樹脂系の焼付用塗料および焼付塗装方法 - Google Patents

ポリエチレンフタレート樹脂系の焼付用塗料および焼付塗装方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエチレンフタレー
ト樹脂系の焼付用塗料および焼付塗装方法に関する。詳
しくは本発明は、七宝焼またはホウロウ焼付工芸品等の
釉層および陶磁器等の釉層に相当するエナメル状塗膜の
性能を有する、上記の樹脂系焼付用塗料に関する。本発
明の樹脂系塗料は、約250 〜350 ℃程度の低温度焼付処
理、塗膜の耐クラック性、塗膜のピンホールの解消、お
よび多彩色模様の容易性等の主要な特質を有する。
【0002】
【従来の技術および解決しようとする課題】七宝焼等の
工芸品および陶磁器等のエナメル状外観は、高温度焼成
によってガラス質の膜層を形成する無機質の釉薬を使用
して形成されている。このような無機質の施釉層は、少
なくも1000℃以上の高温度焼成が必要であり、クラック
およびピンホールが発生しがちであり、高温度焼成によ
り着色用顔料が変色する場合があり、多彩色模様の形成
が高度の技術を必要とする等の問題があった。本発明
は、従来の無機質の釉薬のかわりに特定の合成樹脂系の
焼付用懸濁塗料を使用して、上記の問題点を解消したエ
ナメル状塗膜を得ることを主な目的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者は、エナメル状
塗膜として実用的に充分な硬度、耐久性、耐熱性、接着
力、光沢性等を有する、ポリエチレンフタレート樹脂系
の焼付用塗料を開発した。これによって、従来の無機質
釉薬の性質に関連する問題点を解消した。
【0004】すなわち本発明によって、重量に基き、ポ
リエチレンテレフタレートから実質的になる(好ましく
は軟化点155 〜175 ℃の)線状ポリエステル共重合体樹
脂粉末(以下に粉末Bということがある)20〜40部、該
樹脂粉末溶解性の有機溶剤(以下に溶剤Cということが
ある)5 〜10部および水50〜75部を含む懸濁液100 部
に;イソフタル酸成分8 〜20モル%および末端カルボキ
シル基15〜100 当量/106 グラムを有するポリエチレン
イソ/テレフタレートから実質的になる結晶性ポリエス
テル共重合体樹脂粉末(以下に粉末Aということがあ
る)30〜100 部を含む粉末材料を混合分散してなること
を特徴とする、焼付用樹脂懸濁塗料が提供される。該有
機溶剤は実質的にブチルセルソルブであることが、上記
の樹脂粉末Bおよび塗料の性能に関連して、特に適当で
ある。該焼付用塗料が耐熱性のフイラー粉末および/ま
たは耐熱性の着色剤を混合含有する場合、塗膜の特有の
外観が達成される。更に上記の焼付け用塗料を耐熱性の
被塗装基材の所要の表面に塗布し、該塗膜中の水分を実
質的に蒸発させ、該塗布基材を該塗膜が充分に溶融する
まで該塗料の樹脂粉末の溶融温度以上(例えば約250 〜
350 ℃程度)に加熱し、次いで冷却することを特徴とす
る、エナメル状塗膜の焼付塗装方法が提供される。本発
明の焼付用塗料は約350 ℃以下の熱処理で容易に焼付塗
装できるので、例えば家庭規模のオーブントースターで
充分に処理可能であり、工業的に有利である上にまた一
般人の趣味用材料および学校の工芸用教材としても非常
に有用である。また産業上広い用途があり、例えば電柱
等屋外施設のボルト、その他各部の塗装の剥離した個所
に塗布し、30分位おいてバーナーで熱することによりき
れいに補修できる。このように、これまでできなかった
現場での加工作業が可能となる。
【0005】以下に上記の各材料について記述する。樹
脂粉末Bは、本質的にポリエチレンテレフタレートのみ
からなることが望ましく、一般に155 〜175 ℃そして好
ましくは160 〜170 ℃の軟化点を有し、そして粒径は数
ミクロン以下の微粉であることが好ましい。樹脂粉末A
は、本質的に上記のポリエチレンイソ/テレフタレート
のみからなることが望ましく、0.7 〜1程度の固有粘度
を有することが好ましく、そして粒径は特に微細である
必要はなく30〜150 ミクロン程度のものが有利に使用で
きる。一般的に樹脂粉末Aとして、その軟化点が約220
℃前後で溶融点が約240 〜250 ℃のものが使用される。
溶剤Cは、該粉末Bを実質的に溶解可能なものであれば
よくブチルセルソルブが適当であるが、これ以外に例え
ばトルエンとメチルエチルケトンの8対2の混合液、ト
ルエンとエタノールの9対1の混合液、トルエンとメチ
ルエチルケトンと酢酸エチルとの1対1対1の混合液、
トルエンとアセトンの7対3の混合液等が例示される。
【0006】本発明の塗料は、無着色透明のものも有利
に使用できるが、耐熱性着色剤にて着色されたものが通
常に使用される。また耐熱性のフイラー粉末も有利に混
合して使用できる。着色剤としては、耐熱性の顔料粉お
よび染料が使用される。上記の樹脂粉末Aに、例えば白
色系塗料の場合はチタンホワイト約10重量%そして黒色
系塗料の場合は約1重量%を混合して、有利に使用でき
る。フイラー粉末としては、ガラス粉および金属(例え
ばアルミニウム、銅、黄銅等)粉等が例示され、そして
樹脂粉末Aに混合して使用できる。
【0007】本発明の塗料は、従来の釉薬または焼付塗
料と同様にして塗布可能である。例えば、筆およびはけ
による塗布、型紙を使用した塗布、スクリーン印刷、ス
プレー塗布等が代表的に例示される。被塗装基材は、約
250 〜350 ℃の焼付温度に耐熱性であればよい。
【0008】
【発明の作用および効果】本発明の懸濁塗料は、前記の
樹脂粉末B(比重約1.0 前後)、溶剤C、水および樹脂
粉末Aから本質的になり、そして耐熱性の着色剤および
フイラー粉末等を任意に含有し得る。該粉末Bを溶剤C
に溶解しそして更に該溶液を水に分散して、粘度のある
安定な懸濁液が得られる。該液に樹脂粉末A(比重約1.
3 )または着色剤/フイラー粉等を均一混合した樹脂粉
末Aを混合分散させることによって、予想外にも安定な
懸濁性を有する懸濁塗料が得られる。本発明の塗料は粘
性であるので、厚く塗布することもそして重ね塗りする
ことも可能である。焼付用加熱工程において、はじめに
水および溶剤の大部分が蒸発するが残存する溶剤および
樹脂粉末Bが接着剤の役目を達成して塗膜を保持する。
次いで樹脂粉末Bが軟化しそして溶融し、最後に密着力
の大きい樹脂粉末Aが溶融して混合一体化して、濁点お
よびピンボール、クラック等が存在しないエナメル状の
塗膜が得られる。
【0009】
【実施例】
【0010】
【例1】重量に基き、軟化点約165 ℃でありそして粒径
が約1ミクロン以下であるポリエチレンテレフタレート
粉末(粉末B)30部に、7部の量のブチルセルソルブ
(溶剤C)を添加混合して溶解し、これに63部の水を添
加撹拌して、懸濁液を得た。得られた懸濁液100 部に、
イソフタル酸成分約14モル%を有するポリエチレンイソ
/テレフタレート粉末(粉末A)40部(該樹脂粉末に
は、10%量のチタンホワイトまたは1%量のカーボンブ
ラックを前もって添加混合しておく)を混合分散させ
て、白色系および黒色系の焼付用懸濁塗料を得た。
【0011】寸法が20cm×10cm×3mm (厚さ)のアルミ
ニウム板の全上表面に、上記の塗料を使用して筆にて絵
模様を画いた。塗布後約30分間放置して、水分を蒸発さ
せた。次いで、家庭用オーブントースターに入れて8分
間加熱した。加熱した金属板の温度は約260 ℃であっ
た。これを水冷して、エナメル状の塗装板を得た。該塗
膜の密着強度は、100kg /cm2以上であった。
【0012】
【例2】例1と同様にして、黄色、青色および緑色の懸
濁塗料を得た。約1mmの厚さの鉄板をブドウの模様に打
抜加工し、更に銀メッキ処理して、ブローチの素材を作
成した。ブドウ模様の実の部分は青色塗料、葉の部分は
緑色塗料および部分的に黄色塗料を用いて、実体感およ
び重量感を付与するように1 〜2mm 程度の厚さに塗装し
た。約30分間放置した後に、オーブントースター中で8
分間加熱し、次いで水冷した。優れたエナメル状美感を
有するブローチが得られた。
【0013】
【例3】素焼陶器製の白色の小皿を基材に使用した。上
記の緑色、青色、黄色および黒色の塗料を用いて、絵模
様に彩色塗布した。約30分間放置した後に、オーブント
ースター中で15分間加熱した。オーブンから取出して、
数分間空冷した後に、水冷処理した。エナメル状に彩色
された小皿が得られた。
【0014】
【例4(比較用)】本発明の各成分が本発明に必須であ
ることを、下記に示す。本発明の構成において、上記の
樹脂粉末(B)を使用しない場合は、塗料の懸濁性およ
び付着性が得られなかった。すなわち、樹脂粉末(A)
は該溶剤(C)に溶解しないので、固体と液体の二相に
分離するからである。
【0015】樹脂粉末(A)を使用しない場合は、塗膜
としての密着力に乏しく、溶融焼付しても容易に剥離す
る。塗料として使用不可能である。
【0016】溶剤(C)を使用しない場合は、樹脂粉末
(B)は単に水中に分散した状態となる。これに粉末
(A)を添加混合しても懸濁塗料は得られず、固体と液
の二相に分離する。従って、塗料としての実用性は得ら
れない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−45529(JP,A) 特開 昭54−138055(JP,A) 特開 昭53−2550(JP,A) 特開 昭57−70153(JP,A) 特開 昭49−122537(JP,A) 特開 昭59−75946(JP,A) 特開 昭61−22423(JP,A) 特開 平4−358828(JP,A) 特開 昭56−86634(JP,A) 特開 平5−295239(JP,A) 特開 平5−331362(JP,A) 特開 平6−220361(JP,A) 特開 昭55−99947(JP,A) 特開 昭57−40525(JP,A) 特開 昭60−89334(JP,A) 特開 昭63−156868(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 1/00 - 10/00 C09D 101/00 - 201/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量に基き、ポリエチレンテレフタレー
    トからなる線状ポリエステル共重合体樹脂粉末20〜4
    0部;該共重合体樹脂粉末溶解性の有機溶剤5〜10部
    および水50〜75部(該共重合体樹脂と合計して10
    0部);およびイソフタル酸成分8〜20モル%および
    末端カルボキシル基15〜100当量/106グラムを
    有するポリエチレンイソ/テレフタレートからな上記
    線状ポリエステル共重合体樹脂粉末よりも軟化点が高い
    結晶性ポリエステル共重合体樹脂粉末30〜100部を
    含む粉末材料を混合分散してなることを特徴とする、焼
    付用樹脂懸濁塗料。
  2. 【請求項2】 該線状ポリエステル共重合体樹脂粉末お
    よび該有機溶剤および水を含む懸濁液に、該結晶性ポリ
    エステル共重合体樹脂粉末を含む粉末材料を混合分散し
    てなることを特徴とする、請求項1記載の焼付用樹脂懸
    濁塗料。
  3. 【請求項3】 該焼付用樹脂懸濁塗料が耐熱性のフィラ
    ー粉末および/または耐熱性の着色剤を混合含有する、
    請求項1または2記載の焼付用樹脂懸濁塗料。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3に記載の焼付用樹
    脂懸濁塗料を耐熱性の被塗装基材の所要の表面に塗布
    し、該塗膜中の水分を蒸発させ、該塗布基材を該塗膜が
    充分に熔融するまで該塗料の樹脂粉末の熔融温度以上に
    加熱し、次いで冷却することを特徴とする、エナメル状
    塗膜の焼付塗装方法。_
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