JP3390586B2 - 球技用ボール及びその製造方法 - Google Patents

球技用ボール及びその製造方法

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JP3390586B2 JP22731595A JP22731595A JP3390586B2 JP 3390586 B2 JP3390586 B2 JP 3390586B2 JP 22731595 A JP22731595 A JP 22731595A JP 22731595 A JP22731595 A JP 22731595A JP 3390586 B2 JP3390586 B2 JP 3390586B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、サッカーボール等の球
技用ボール特に縫い構造の球技用ボール及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来サッカーボール、ハンドボール、バ
レーボール、ドッジボール等空気封入構造の球技用ボー
ルにおいては、複数枚の皮革パネルの端部を内側に折り
曲げ、この折り曲げ部分を糸にて縫い合わせて全体とし
て球形の皮革表皮層を形成し、この皮革表皮層内に中空
球形のゴム製チューブを収納した縫い構造の球技用ボー
ル(縫いボールと称せられる)が知られている(例えば
実開平2-136660号)。
【0003】図1ないし図3は、縫い構造のサッカーボ
ール1の一例を示し、20枚の6角形皮革パネル2,2
…と12枚の5角形皮革パネル3,3…の端部が糸4に
て縫い合わされて、皮革表皮層5が形成され、その内部
にラテックス、ブチルゴム等空気透過性の小さい中空球
形の弾性ゴムよりなるチューブ6が収納されている。チ
ューブ6には、バルブ(図示せず)を介して圧搾空気が
封入されている。
【0004】皮革パネル2,2…、3,3…として、天
然皮革又は合成皮革が使用される。通常皮革パネル2,
3の裏面には、綿布又はポリエステル・綿混合布を2層
ないし4層ラテックス等接着剤で接着して補強布層7が
形成されており、以下の説明では皮革パネル2,3とは
この補強布層7を含むものをいう。
【0005】皮革パネル2,2…、3,3…は、図3に
示すように、その周縁に多数の縫製穴8,8…があけら
れ、この縫製穴8,8…に糸4が通されて、2枚の皮革
パネル2,2は縫い合わされる。糸4としては、ポリエ
ステル糸、綿糸、麻糸、ナイロン糸等が使用されてい
る。
【0006】一方、加熱処理することにより数10%収縮
する高収縮ポリエステル繊維も知られている(例えば、
特公昭51-40170号公報)。この公報には、ポリエチレン
テレフタレート未延伸繊維を60〜70℃の温水浴中で2.5
〜2.9 倍に延伸し、延伸後40℃以下に冷却してクリンパ
ーに供給して捲縮を付与し、捲縮後45℃以下で乾燥する
高収縮ポリエステル繊維の製造方法が記載されており、
かかる高収縮ポリエステル繊維は、70℃の温水中で30%
以上の収縮率が得られる旨説明されている。このほか、
高収縮ポリエステル収縮糸に関しては、特公昭51-40171
号公報、特公昭52-43931号公報に開示の発明がある。
【0007】他方、吸水処理することにより数10%収縮
する湿潤収縮性ポリビニールアルコール(以下PVAと
いう)繊維も知られている(例えば実公昭63-15353号公
報)。この公報に開示の湿潤収縮製PVA繊維は、重合
度300 〜2400、ケンカ度90〜99.9モル%のPVAを原料
として通常の乾式あるいは湿式紡糸し、水分を含有した
状態で 130℃以下の雰囲気で1.5 倍以上延伸した後乾燥
することによって得られ、乾燥後さらに緊張状態で熱処
理し、湿式法の場合にはその後塩類除去のための精錬処
理を行ってもよいと記載されている。この湿潤収縮性P
VA繊維は、40℃以下の水に浸漬したとき30秒以内に10
〜60%収縮する旨記載されている。
【0008】上記のように加熱または吸水等の処理を施
すことにより10%以上の高い収縮作用を生じる繊維を、
自己収縮糸という。なお一般的に化学繊維は、加熱によ
り収縮するが、その値は極めて小さく通常約2〜3%で
ある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】縫い構造のボールは、
例えばサッカーボールにあっては蹴球時に足にボールが
食い込み、シュート、ドリブル、パス等において高度の
技術が駆使しやすく、競技性能に優れるという長所があ
る反面、耐久性に劣るという欠点がある。同様にハンド
ボール、バレーボール、ドッジボールにおいても縫いボ
ールはグリップ性(つかみ易さ)に優れ、従ってコント
ロールし易く、投げたとき不規則に振れず軌跡が安定し
ていること、及び体にあたっても痛みが少ないという長
所があるのに対し、前述と同様耐久性に問題がある。即
ち縫いボールは、使用を繰り返すうちに、図4に示すよ
うに縫製部分が拡がり(縫い目開き11と称する)、ボ
ールが肥大、変形していくのである。一例をあげると、
5号サイズのサッカーボール(初期の円周 685mm) を6
ヵ月サッカーの練習、試合等で使用した後では、その円
周は、 705mmないし 710mmに肥大していた。これに対
し、耐久性に優れる貼り構造のボール(同一サイズ)で
は、 700mmであった。
【0010】ここで貼り構造のボールとは、ゴム製チュ
ーブに、数千m 分のナイロン糸を均等に巻きつけ球形が
肥大するのを防ぐ補強層と、この上にゴム薄層を介し
て、複数枚の皮革パネルを貼着したものであり、通常貼
りボールと呼ばれている。この貼りボールは、補強層を
有するために耐久性は極めてよいが蹴球時等の感触が悪
く、また縫いボールに比べて競技性能に劣り、専ら練習
用ボール或いは小、中学生等低い技術レベルの者の試合
球として使用されることが多い。
【0011】本発明は、グリップ性、ボールコントロー
ル性等高い競技性能を損なうことなく、耐久性を向上さ
せた縫いボールを提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る球技用ボー
ルは、複数枚の皮革パネルを糸により球形に縫い合わせ
て形成した皮革表皮層内に中空球形のゴム製チューブを
収納してなり、該チューブに空気注入バルブを介して圧
搾空気が注入されてなる球技用ボールにおいて、上記糸
が、縫製後収縮処理される自己収縮糸よりなるものであ
る。
【0013】また本発明に係る球技用ボールは、上記自
己収縮糸が、加熱により収縮する自己収縮糸よりなるも
のである。
【0014】また本発明に係る球技用ボールは、加熱収
縮する上記自己収縮糸が、高収縮ポリエステル繊維より
なるものである。
【0015】また本発明に係る球技用ボールは、上記自
己収縮糸が、吸水により収縮する自己収縮糸よりなるも
のである。
【0016】また本発明に係る球技用ボールは、吸水収
縮する上記自己収縮糸が、湿潤収縮性PVA繊維よりな
るものである。
【0017】また本発明に係る球技用ボールは、上記皮
革表皮層が、複数枚の6角形皮革パネル及び5角形皮革
パネルよりなり、上記球技用ボールをサッカーボールま
たはハンドボールとすることができるものである。
【0018】また本発明に係る球技用ボールは、上記皮
革表皮層が、複数枚のほぼ4角形の皮革パネルよりな
り、上記球技用ボールをバレーボールまたはドッジボー
ルとすることができるものである。
【0019】本発明に係る球技用ボールの製造方法は、
中空球形のゴム製チューブを成形する工程、複数枚の皮
革パネルを、加熱により収縮する自己収縮糸により球形
に縫い合わせて皮革表皮層を形成するとともに、該皮革
表皮層内に上記チューブを収納する工程、上記皮革表皮
層を加熱処理して、上記自己収縮糸を熱収縮させる工
程、を含むものである。
【0020】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、加熱により収縮する自己収縮糸よりなるものであ
る。また本発明に係る球技用ボールの製造方法は、加熱
収縮する上記収縮糸が、高収縮ポリエステル繊維よりな
るものである。
【0021】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、加熱収縮する上記自己収縮糸により縫い合わされた
上記皮革表皮層が、複数枚の6角形皮革パネル及び5角
形皮革パネルよりなり、上記球技用ボールをサッカーボ
ールまたはハンドボールとすることができるものであ
る。
【0022】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、加熱収縮する上記自己収縮糸により縫い合わされた
上記皮革表皮層が、複数枚のほぼ4角形の皮革パネルよ
りなり、上記球技用ボールをバレーボールまたはドッジ
ボールとすることができるものである。
【0023】本発明に係る球技用ボールの製造方法は、
中空球形のゴム製チューブを成形する工程、複数枚の皮
革パネルを、吸水により収縮する自己収縮糸により球形
に縫い合わせて皮革表皮層を形成するとともに、該皮革
表皮層内に上記チューブを収納する工程、を含むもので
ある。
【0024】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、上記製造方法に、上記皮革表皮層内に上記チューブ
を収納した後、上記自己収縮糸を水に濡らせて収縮させ
る工程を付加したものである。
【0025】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、吸水収縮する上記自己収縮糸が、湿潤収縮性PVA
繊維よりなるものである。
【0026】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、吸水収縮する上記自己収縮糸により縫い合わされた
上記皮革表皮層が、複数枚の6角形皮革パネル及び5角
形皮革パネルよりなり、上記球技用ボールをサッカーボ
ールまたはハンドボールとすることができるものであ
る。
【0027】また本発明に係る球技用ボールの製造方法
は、吸水収縮する上記自己収縮糸により縫い合わされた
上記皮革表皮層が、複数枚のほぼ4角形の皮革パネルよ
りなり、上記球技用ボールをバレーボールまたはドッジ
ボールとすることができるものである。
【0028】
【作用】自己収縮糸は、皮革パネルを縫い合わせた後、
収縮処理される。収縮した糸は、皮革パネル同士を強く
締め付け、皮革表皮層の縫い目開き、肥大化を抑制す
る。
【0029】自己収縮糸が、加熱により収縮する自己収
縮糸よりなるときは、縫製後加熱処理され、自己収縮糸
は収縮せしめられて、皮革パネル同士を強く締めつけ
る。加熱後、常温に戻されても糸の収縮は維持される。
【0030】加熱収縮する自己収縮糸が、高収縮ポリエ
ステル繊維よりなるときは、高度かつ一定の収縮率が得
られる。
【0031】自己収縮糸が、吸水により収縮する自己収
縮糸よりなるときは、縫製後、使用中に雨水等を吸収す
ることにより、あるいは強制的に吸水処理されることに
より収縮せしめられて、皮革パネル同士を強く締めつけ
る。吸水後、乾燥しても糸の収縮は維持される。
【0032】吸水収縮する自己収縮糸が、湿潤収縮性P
VA繊維よりなるときは、高度かつ一定の収縮率が得ら
れる。
【0033】皮革表皮層が、複数枚の6角形皮革パネル
及び5角形皮革パネルよりなるときは、縫い目開きが抑
えられサッカーボールまたはハンドボールに要求される
グリップ性、ボールコントロール性、蹴球時あるいは投
げたときの軌跡の安定性等競技性能が維持される。
【0034】皮革表皮層が、複数枚のほぼ4角形皮革パ
ネルよりなるときは、上記同様縫い目開きが抑えられバ
レーボールまたはドッジボールに要求されるグリップ
性、ボールコントロール性、打ったときあるいは投げた
ときの軌跡の安定性等競技性能が維持される。
【0035】
【実施例】図1ないし図3に示すように、裏面に補強布
層7を接着した天然皮革又は合成皮革を裁断し、20枚
の6角形パネル2,2…と、12枚の5角形パネル3,
3…を形成し、周縁に縫製穴8,8…を複数あけ、自己
収縮糸9にてパネル2,2…、3,3…を縫い合わせて
球形の皮革表皮層5を形成し、この中にゴム製チューブ
6を収納して、5号サッカーボール1を作成した。なお
合成皮革とは、ポリウレタン樹脂、PVA樹脂等の樹脂
を材料として天然皮革を模して人工的に作製された皮革
様のものをいう。
【0036】自己収縮糸9として、加熱により収縮する
高収縮ポリエステル繊維、例えばソクラテックス(登録
商標、帝人株式会社製)が使用できる。加熱処理は、サ
ッカーボール1を100 ℃沸騰水中に浸漬することによ
り、あるいは加熱した金型内に収容することによりなさ
れる。上記糸9は、糸単体に張力を加えない状態(無負
荷状態)で、沸騰水に浸漬した場合、瞬時に50%収縮す
る。またこの糸9は高い収縮応力を有し、例えば総デニ
ール数が、12,000デニールの収縮糸を用いて沸騰水中に
て10%収縮した場合、締付力は約1kg上昇し、この締付
力は温度を下げ、常温に戻しても保持される。また収縮
後も高い強力保持率を有する。
【0037】図5は、12,000デニールの自己収縮糸9を
使用してサッカーボール1を作製し、異なる加熱温度で
各々10分間処理した場合の円周(ボール球周)を測定し
た結果を示す。曲線Aで示すように、60℃では円周に殆
ど変化は見られず、80℃で円周は60℃に比し約2.6mm 、
約0.4 %小さくなった。なお比較例として、従来の非収
縮糸(11,500デニール) を使用して作製したボールの円
周の値を曲線Bで示す。この従来例ボールは、温度によ
る影響を受けないから、水平に近い曲線となる筈である
が、実際には僅か( 約0.15%) 肥大するという結果が得
られた。これより自己収縮糸9を使用することにより、
縫い目が強く締め付けられ、ボールの円周が僅か小さく
なっていることがわかる。
【0038】自己収縮糸9は、加熱により収縮し、皮革
パネル2,3の縫製部分を強く締めつける。この締めつ
けにより、縫製時における部分的な緩み、縫製作業者の
縫製強度の個人差等が解消され、一定かつ強力な締付力
が得られる。発明者等の実験によると、100 個のサッカ
ーボールにつき、収縮処理前後の円周を測定しその標準
偏差を算出した結果、処理前の値1.733 、処理後の値0.
966 を得た。処理後の標準偏差は、処理前の約55%の数
値となっており、これは円周のばらつきの範囲が約2分
に1に狭められていることを示す。
【0039】図6は、自己収縮糸9を使用してサッカー
ボール1を作製し、恒温槽中で80℃、10分間加熱して収
縮させた場合の耐久性試験結果を示す。耐久性試験は、
ボールをその直径の33%まで繰り返し圧縮する試験であ
り、曲線Aで示すように3万回(約6ヵ月間の使用に相
当)の圧縮試験で、円周は665mm から676mm へ増大し、
その増加率は1.7 %であった。このとき縫い目開きは見
られず、使用に際しても何ら問題はなかった。一方曲線
Bは、従来の非収縮糸を使った縫いボールを示し、同様
の圧縮試験で、円周は665mm から684mm に増えた( 増加
率2.9 %) 。このときボールには縫い目開きが見られ、
競技にも支障を来し、使用に耐えないものであった。曲
線Cは、貼りボールにおける耐久性試験結果を示し、本
発明実施例に係る縫いボール(曲線A)は、貼りボール
に近い耐久性を有することがわかる。なお実施例ボール
との比較を容易にするために、曲線B,Cに対応する従
来例ボールは、試験開始時の円周が、実施例ボールのそ
れに等しいものを使用した。
【0040】次に、上記実施例に係るサッカーボールの
製造方法につき説明する。図3に示すように、まず、皮
革パネルが、裏面に補強布層7を接着した天然皮革又は
合成皮革の裁断により、20枚の6角形パネル2,2…
及び12枚の5角形パネル3,3…の2種類作製され
る。次いで各パネルの周縁に、複数の縫製穴8が形成さ
れる。これらのパネルは、前述の自己収縮糸9を用いて
手作業により縫い合わされ、球形の皮革表皮層5が形成
される。
【0041】ゴム製チューブ6は、ブチルゴムの加熱加
硫により成形される。成形時同時にチューブ6内に空気
を封入するバルブが形成される。このチューブ6は、皮
革表皮層5に一辺のみ残された未縫合部分から皮革表皮
層内に収納される。皮革表皮層5の一枚のパネル2の中
心に小円の開孔10(図1)が形成されており、この開
孔10にチューブ6のバルブが位置せしめられ、バルブ
周囲部分が皮革表皮層5裏面に接着される。皮革表皮層
5とチューブ6の接着は、このバルブ周囲のみであり、
その他の部分では両者は分離状態にある。チューブ6収
納後、皮革表皮層5の未縫合部分は縫い合わされる。
【0042】かくして縫い合わされたボール1は、ボー
ル1の外形に一致した球形キャビティを有する金型内に
収納され、所定圧の圧搾空気が封入された状態で、80℃
で10分間加熱される。これにより自己収縮糸9は収縮
し、皮革パネル2,3は強い締付力をもって結合され
る。この加熱処理は、加熱金型を使用する方法の他、例
えばボール内圧を0 〜0.3kg/cm2 とし、恒温槽内で80〜
90℃の空気中に30分以上置くことにより、同様の収縮作
用が得られる。
【0043】加熱により収縮する自己収縮糸9として
は、上記高収縮ポリエステル繊維のほか、アクリル繊
維、アセテート繊維、ビニリデン繊維、ナイロン繊維、
ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレ
ン繊維を、延伸捲縮加工等特殊処理することにより収縮
作用を付与した糸を使用することができる。
【0044】上記実施例では、自己収縮糸9として加熱
により収縮する糸につき説明したが、これに代えて吸水
により収縮する自己収縮糸9を使用することも可能であ
るため、以下この吸水型自己収縮糸9を使用した場合に
つき説明する。係る自己収縮糸9として、湿潤収縮性P
VA繊維例えば高収縮ビニロン、クレモナ(登録商標、
株式会社クラレ製)が使用できる。
【0045】上記吸水型自己収縮糸9は、常温(20℃)
水中で瞬時に約30%収縮する。またこの収縮糸9は、高
い収縮応力を有し、例えば12,000デニールの吸水収縮糸
に、300gの荷重を加え引っ張った状態で吸水させても10
%以上収縮する。収縮による高い締付力は、乾燥後も維
持される。
【0046】表1は、12,000デニールの自己収縮糸9を
使用してサッカーボールを作製し、水中に浸漬して吸水
処理した後乾燥させた場合の円周を測定した結果を示
す。参考のため従来の非収縮糸(11,500デニール)を使
用したサッカーボールの結果も示す。この表から分かる
ように、実施例サッカーボールの収縮率は、1.0 %であ
り、従来例サッカーボールの収縮率0.3 %に比べて高い
て値を示した。なお、従来例サッカーボールでも僅かに
収縮するのは、皮革パネルの乾燥による収縮であると推
測される。
【0047】
【表1】
【0048】自己収縮糸9は、水分吸収により収縮し、
皮革パネル2,3の縫製部分を強く締めつける。これに
より縫製時における部分的な緩み、縫製作業者の縫製強
度の個人差等が解消され、一定かつ強力な締付力が得ら
れる。すなわち前述の加熱収縮型の自己収縮糸を使用し
た場合と同様の効果が得られる。
【0049】図7は、吸水型の自己収縮糸9を使用して
サッカーボール1を作製し、吸水処理後乾燥して自己収
縮糸9を収縮させた場合の耐久性試験結果を示す。耐久
性試験は、前述の試験と同一条件である。曲線Aで示す
ように3万回の圧縮試験で、円周は670mm から683mm へ
増大し、その増加率は1.9 %であった。このとき縫い目
開きは見られず、使用に際しても何ら問題はなかった。
曲線Bは、従来の非収縮糸を使用した縫いボールの結果
を示し、円周は670mm から688mm に増え( 増加率2.7
%) 、縫い目開きが生じ、競技に支障を来し、使用に耐
えないボールとなった。曲線Cは、貼りボールにおける
試験結果である。本発明実施例に係る縫いボール(曲線
A)は、貼りボールに近い耐久性を有することが分か
る。なお曲線B,Cに対応する従来例ボールは、前述の
例と同様実施例ボールとの比較をし易くするために、試
験開始時の円周が実施例ボールに等しいものを使用し
た。
【0050】サッカーボール1は、その製造の最終工程
において、強制的に水中に浸漬されて自己収縮糸9を収
縮せしめられ、皮革パネル同士の結合力が強化される。
しかしながらサッカーボールを吸水収縮処理されない状
態で顧客に販売し、顧客がこれを使用したとき雨水がか
かる等により自己収縮糸9が濡れて自然に収縮する方法
を採用することもできる。
【0051】上記実施例では、20枚の6角形皮革パネ
ルと12枚の5角形皮革パネルを縫い合わせたサッカー
ボールについて説明したが、このほか30枚の6角形皮
革パネルと12枚の5角形皮革パネルを縫い合わせたサ
ッカーボールについても適用できる。またサッカーボー
ルと同一パターンの皮革表皮層を有するハンドボールに
も適用できる。また12枚または18枚のほぼ4角形の
パネルを縫い合わせて皮革表皮層を形成したバレーボー
ル特にビーチバレーボール、ドッジボールに適用しても
有効である。図8は、18枚の細長い4角形の皮革パネ
ル12,12…を、3枚を並列に配置し、これを1組と
して6組用意し、各組の配列方向が直交するよう球面に
配置して縫い合わせた皮革表皮層13を有するビーチバ
レーボール14を示す。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、縫い構造の球技用ボー
ルの縫い糸として、加熱によりまたは吸水により収縮す
る自己収縮糸を使用し、ボール作製後収縮処理すること
により、皮革パネル同士を一定の強い締付力をもって結
合させることができる。それ故使用を繰り返しても縫い
目開きを生じず、グリップ性、ボールコントロール性、
蹴球時あるいは投打時における軌跡の安定性等競技性能
は高い状態に保たれ、また体に当たったときの感触も柔
らかく痛みも少ないボールが実現できる。また円周の増
大が抑制されて長期間安定した形状を保つことができる
から、縫いボールの欠点であった肥大化を防止し、耐久
性を格段に向上させることが可能となる。
【0053】本発明によれば、収縮前の糸の縫い強度に
縫製作業者の個人差があったとしても、皮革パネル縫製
後、皮革表皮層の加熱または吸水により自己収縮糸が収
縮せしめられるから、その差は解消され一定かつ高い締
付力が得られ、安定した耐久性を得ることができる。
【0054】また本発明によれば、自己収縮糸として高
収縮ポリエステル繊維あるいは湿潤収縮性PVA繊維を
使用することにより、高度かつ一定の収縮率が得られる
とともにその機械的強度も充分であるから、強烈な外力
が加わる等過酷な使用条件下で使用される球技用ボール
に適用して最適である。
【0055】さらに本発明によれば、縫製後縫い目開き
が殆ど生じないから縫い目に形成される溝が長期間保持
される。それ故この縫い目によって得られるグリップ
性、ボールコントロール性が損なわれることはなく、こ
れらが要求されるサッカーボール、ハンドボール、バレ
ーボール及びドッジボールに適用して有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例及び本発明実施例を説明するためのサッ
カーボールの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】縫い作業の一工程を示す斜視図である。
【図4】縫い目開きが生じた状態を示す断面図である。
【図5】円周−加熱温度特性を示す曲線図である。
【図6】加熱収縮型自己収縮糸を用いたサッカーボール
の円周−圧縮試験回数特性を示す曲線図である。
【図7】吸水収縮型自己収縮糸を用いたサッカーボール
の円周−圧縮試験回数特性を示す曲線図である。
【図8】本発明実施例を説明するためのビーチバレーボ
ールの正面図である。
【符号の説明】
1………サッカーボール 2,3,12………皮革パネル 4………糸 5,13………皮革表皮層 6………チューブ 8………縫合孔 9………自己収縮糸 11………縫い目開き 14………ビーチバレーボール
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−272128(JP,A) 実開 平2−136660(JP,U) 実開 昭62−157572(JP,U) 特公 昭52−43931(JP,B1) 特公 昭51−40170(JP,B1) 実公 昭63−15353(JP,Y1) 西独国特許出願公開2738319(DE, A1) 欧州特許出願公開220741(EP,A 2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A63B 41/08 A63B 45/00

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数枚の皮革パネルを糸により球形に縫
    い合わせて形成した皮革表皮層内に中空球形のゴム製チ
    ューブを収納してなり、該チューブに空気注入バルブを
    介して圧搾空気が注入されてなる球技用ボールにおい
    て、上記糸が、縫製後収縮処理される自己収縮糸よりな
    ることを特徴とする球技用ボール
  2. 【請求項2】 上記自己収縮糸が、加熱により収縮する
    自己収縮糸よりなることを特徴とする請求項1記載の球
    技用ボール
  3. 【請求項3】 上記自己収縮糸が、高収縮ポリエステル
    繊維よりなることを特徴とする請求項2記載の球技用ボ
    ール
  4. 【請求項4】 上記自己収縮糸が、吸水により収縮する
    自己収縮糸よりなることを特徴とする請求項1記載の球
    技用ボール
  5. 【請求項5】 上記自己収縮糸が、湿潤収縮性ポリビニ
    ールアルコール繊維よりなることを特徴とする請求項4
    記載の球技用ボール
  6. 【請求項6】 上記皮革表皮層が、複数枚の6角形皮革
    パネル及び5角形皮革パネルよりなり、上記球技用ボー
    ルがサッカーボールまたはハンドボールであることを特
    徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の球技用ボ
    ール
  7. 【請求項7】 上記皮革表皮層が、複数枚のほぼ4角形
    の皮革パネルよりなり、上記球技用ボールがバレーボー
    ルまたはドッジボールであることを特徴とする請求項1
    ないし5のいずれかに記載の球技用ボール
  8. 【請求項8】 中空球形のゴム製チューブを成形する工
    程、複数枚の皮革パネルを、加熱により収縮する自己収
    縮糸により球形に縫い合わせて皮革表皮層を形成すると
    ともに、該皮革表皮層内に上記チューブを収納する工
    程、上記皮革表皮層を加熱処理して、上記自己収縮糸を
    熱収縮させる工程、を含むことを特徴とする球技用ボー
    ルの製造方法
  9. 【請求項9】 上記自己収縮糸が、加熱により収縮する
    自己収縮糸よりなることを特徴とする請求項8記載の球
    技用ボールの製造方法
  10. 【請求項10】 上記自己収縮糸が、高収縮ポリエステ
    ル繊維よりなることを特徴とする請求項9記載の球技用
    ボールの製造方法
  11. 【請求項11】 上記皮革表皮層が、複数枚の6角形皮
    革パネル及び5角形皮革パネルよりなり、上記球技用ボ
    ールがサッカーボールまたはハンドボールであることを
    特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の球技
    用ボールの製造方法
  12. 【請求項12】 上記皮革表皮層が、複数枚のほぼ4角
    形の皮革パネルよりなり、上記球技用ボールがバレーボ
    ールまたはドッジボールであることを特徴とする請求項
    8ないし10のいずれかに記載の球技用ボール
  13. 【請求項13】 中空球形のゴム製チューブを成形する
    工程、複数枚の皮革パネルを、吸水により収縮する自己
    収縮糸により球形に縫い合わせて皮革表皮層を形成する
    とともに、該皮革表皮層内に上記チューブを収納する工
    程、を含むことを特徴とする球技用ボールの製造方法
  14. 【請求項14】 上記皮革表皮層内に上記チューブを収
    納した後、上記自己収縮糸を水に濡らせて収縮させる工
    程を付加したことを特徴とする請求項13記載の球技用
    ボールの製造方法
  15. 【請求項15】 上記自己収縮糸が、湿潤収縮性ポリビ
    ニールアルコール繊維よりなることを特徴とする請求項
    13または14記載の球技用ボールの製造方法
  16. 【請求項16】 上記皮革表皮層が、複数枚の6角形皮
    革パネル及び5角形皮革パネルよりなり、上記球技用ボ
    ールがサッカーボールまたはハンドボールであることを
    特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の球
    技用ボールの製造方法
  17. 【請求項17】 上記皮革表皮層が、複数枚のほぼ4角
    形の皮革パネルよりなり、上記球技用ボールがバレーボ
    ールまたはドッジボールであることを特徴とする請求項
    13ないし15のいずれかに記載の球技用ボール
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