JP3388955B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法

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JP3388955B2 JP22640795A JP22640795A JP3388955B2 JP 3388955 B2 JP3388955 B2 JP 3388955B2 JP 22640795 A JP22640795 A JP 22640795A JP 22640795 A JP22640795 A JP 22640795A JP 3388955 B2 JP3388955 B2 JP 3388955B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子計算機の周辺
記憶装置、画像・音声記録装置などに使用される磁気記
録媒体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年のコンピュータの高性能化、画像・
音声情報のディジタル化、高画質化に伴い、とくに計算
機周辺装置(HDD)や画像・音声記憶装置(DVD、
もしくはDVTR)などにおいて使用される磁気記録媒
体に対し、より高密度の記録・再生能力が要求されるよ
うになってきている。磁気記録媒体の高記録密度化の技
術開発が行われるなかで、本質的に高記録密度化の可能
な磁性薄膜を用いた磁気ディスクなどの磁気記録媒体に
ついて、開発が盛んである。
【0003】磁性薄膜において磁気記録は、磁気ヘッド
から印加される磁界によって、磁性薄膜の微小領域に反
転磁区を形成することによってなされる。磁区が形成さ
れたときには、同時に磁性薄膜内の内部磁界によって磁
区を再反転させようとする力が作用するため、それを抑
える保磁力(Hc)が必要となる。保磁力を大きくする
ことにより、反転磁区の境界にあたる磁化転移部の幅を
小さくすることができる。薄膜を構成する磁性体の結晶
粒が磁化反転の最小単位であるため、記録密度向上の観
点からは、磁性薄膜の保磁力を大きくするとともにこの
結晶粒を小さくすることによって、境界が明瞭でかつ小
さな反転磁区を形成することができて、理想的である。
【0004】ところで、通常の磁性薄膜を用いた磁気記
録媒体では、結晶粒の間に交換相互作用とよばれる力が
はたらいて、一つの結晶粒が磁化反転すると隣接する結
晶粒も磁化反転するようになる。その結果、いくつかの
結晶粒が集合して結晶粒群を形成し、この結晶粒群が磁
化反転の単位となるため、反転磁区の境界にあたる磁化
転移部は粗くなる。このため、反転磁区をあまり小さく
することができなかった。また、反転磁区の境界が不明
瞭になることによって、媒体ノイズあるいは記録ノイズ
とよばれるノイズが発生していた。このようなことか
ら、通常の磁気記録媒体では、高密度の記録を低ノイズ
で行うことは困難であった。
【0005】近年、高感度の磁気抵抗効果型再生技術が
投入されたことなどに伴い、この媒体ノイズがあらため
て問題になっており、この媒体ノイズの減少が、今後の
磁気記録を発展させる上での重要な課題となっている。
そのため、高密度記録を目指す磁性薄膜においては、結
晶粒間を分断し磁気的に十分絶縁して交換相互作用を小
さくすることが、一層強く求められるようになってい
る。
【0006】磁性薄膜において結晶粒間を分断し交換相
互作用を小さくする方法の一つとして、磁性薄膜内で磁
性粒子を分散させる方法があげられる。そして、そのよ
うに粒子が分散されて成る薄膜が作製可能な方法の例と
しては、たとえば、スパッタ法などが知られている。
【0007】しかしながら、磁性粒子はその大きさが非
常に小さくなると、磁気モーメントの方向が磁化容易軸
から外れて絶えず揺動し、全体として見かけ上磁化が消
失するという超常磁性を示すことが知られている。通
常、強磁性体は粒径が5nm程度以下になると超常磁性
を示すようになる。
【0008】このような現象を防ぐため、スパッタ法に
より磁性薄膜を形成する場合には、基板上で磁性微粒子
の配向性を向上させる目的で下地層を設けたり、あるい
は磁性微粒子を凝集させる目的で基板加熱を行うなどの
方策がとられている。現在のところ、Crなどの下地層
を設けてその上に薄膜を形成するようにして、ターゲッ
トとしてはCo系結晶異方性材料を使用するのが一般的
である。
【0009】しかしながら、このような方策をとったと
しても、スパッタ法で形成された磁性薄膜において磁性
微粒子間の相互作用の分断は未だ十分とはいえず、さら
に、成膜効率は下地形式や基板加熱条件などに束縛され
るので、高いとはいえないのが現状である。
【0010】ところで、スパッタ法以外にも、数〜数十
nmの大きさの磁性微粒子を形成し得る有用な方法とし
て、ガス中蒸着法があげられる。これは、不活性ガス中
で固体の蒸発源を加熱して、基板上に気体状の原子また
は分子を入射させ、表面に付着した原子または分子が固
体となって薄膜を形成するという方法である。
【0011】これまでにもこのガス中蒸着法に関して
は、たとえば、不活性ガス中でガス圧を制御することに
より金属微粒子の粒径を制御できるとした報告(Jpn.J.
Appl.Phys.2(1963)702など)、あるいは、同様な方法で
磁性体微粒子の粒径を制御できるとした報告(Jpn.J.Ap
pl.Phys.4(1965)767)などがなされている。後者におい
ては、磁性体としてFe、Ni、Coの単体ないしはそ
れらの合金が用いられ、粒径は微粒子の種類には依存せ
ず不活性ガスの圧力のみに依存することが開示されてい
る。また、磁性体微粒子を鎖状に成長させることにより
磁気異方性が増加するとした報告(Jpn.J.Appl.Phys.8
(1969)599など)もあり、ガス中蒸着法では、磁性体微
粒子の粒径が小さくても、この鎖状構造に帰因する形状
異方性などの要因により超常磁性を示さないことが知ら
れている。
【0012】上記知見から、ガス中蒸着法によれば、磁
性体微粒子を鎖状に成長させて磁気異方性を増加させる
ことにより、スパッタ法と比較して超常磁性を示す粒径
を小さくでき、より微細な磁性体微粒子からなる薄膜を
形成し得ることが理解される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
でのところでは、スパッタ法においては不活性ガス圧力
により薄膜を構成する磁性体微粒子の粒径が制御可能で
あったのに対し、ガス中蒸着法においては、磁性体微粒
子を鎖状に成長させることまでは実現されたものの、鎖
状構造やその鎖の成す3次元構造を制御可能な段階には
未だ至っていない。したがって、現状ではガス中蒸着法
により好ましい3次元構造で所望の磁気特性を有する磁
性薄膜を形成することは難しく、磁性体微粒子の一様な
分散構造が必要とされる磁気記録媒体の磁気記録層形成
方法として、ガス中蒸着法を適用することは非常に困難
であった。
【0014】本発明は、上記したガス中蒸着法により形
成される磁性薄膜の難点を解消するように成されたもの
であり、鎖状の磁性体微粒子が一様に分散した構造を有
する磁性薄膜からなる磁気記録層を備え高密度記録が可
能なすぐれた磁気特性を有する磁気記録媒体の製造方法
を提供することをその目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体の
製造方法は、非磁性基板上に磁性薄膜よりなる磁気記録
層を形成する磁気記録媒体の製造方法において、気相中
で磁性体原料および非磁性母材を加熱して磁性体微粒子
および非磁性母材微粒子を蒸発させ、前記磁性体微粒子
He、Ne、Ar、KrおよびXeの少なくともいず
れか1種のガスを含む気相中で所定の粒径に凝集させた
のち、凝集した前記磁性体微粒子を前記非磁性母材微粒
子中に分散した状態で前記非磁性基板面に供給し、凝集
した前記磁性体微粒子を所定の粒間距離をもって前記非
磁性母材微粒子とともに前記非磁性基板上に堆積させ
て、前記磁性薄膜を形成するようにしたことを特徴とす
る。
【0016】本発明の磁気記録媒体において、磁性体微
粒子の原料としては、Co、Fe、Niから選択される
少なくとも一種の元素を含有する強磁性体材料、たとえ
ば、CoPtCr、CoTaCr、CoTaPt、Co
NiTa、あるいはCoPtなどが使用可能である。非
磁性母材としては、SiやAlやTiやCaなどの化合
物、たとえば、酸化物、窒化物、弗化物、炭化物などが
使用可能であり、具体例としては、SiO2 、Si3
4 、Al2 3 、AlN、TiN、BN、CaF、Ti
C、あるいはC重合膜などがあげられる。
【0017】本発明の磁気記録媒体において、磁性薄膜
中の磁性体微粒子は、粒径約2〜50nmの範囲内、粒
間距離1〜10nmの範囲内で、非磁性母材微粒子中に
均一に分散されている。どのようにしてこのような数値
範囲に制御することが可能になるかについては、以下に
示す本発明の製造方法において、詳しく説明する。
【0018】本発明の磁気記録媒体の製造方法において
上記した磁性体原料および非磁性母材を蒸発させる手段
としては、たとえば抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子線
加熱、あるいはレーザー加熱などが使用可能である。S
i化合物を母材として蒸着させるときには、抵抗加熱の
場合にはSiOを蒸発させ酸化させてSiO2 としても
よいし、あるいはレーザー加熱、電子線加熱もしくは高
周波誘導加熱の場合には、SiO2 そのものを蒸発させ
るようにしてもよい。抵抗加熱の場合の蒸発源として
は、たとえばW,Ta,Mo,NbあるいはCなどを、
スパイラル、ボート、ボックス、あるいはるつぼなどの
形状にしたものが使用可能である。加熱にあたっては、
磁性体原料もしくは非磁性母材が蒸発しやすいよう蒸発
源の周囲を差動排気するようにしてもよく、とくに電子
線加熱を用いた場合にはアーク放電を発生する上で差動
排気が有効である。
【0019】本発明において気相を構成するために導入
可能なガスとしては、たとえばHe、Ne、Ar、K
r、Xeなどの不活性ガスなどがあげられる。このよう
な気相中で上記加熱法により加熱され蒸発した磁性体微
粒子は、ガス粒子と衝突しながら過冷却され、磁性体微
粒子同士凝集して、数〜数十nmの粒径の凝集した磁性
体微粒子を形成する。ガス圧を増加させたり蒸発源−基
板間の距離を大きくすると気相中の磁性体微粒子の衝突
回数が増加するため、凝集粒子の粒径は大きくなる。し
たがって、磁性粒子の粒径をガス圧や蒸発源−基板間距
離で制御することが可能となる。
【0020】また、不活性ガス中に微量の酸素を添加す
ることにより、磁性体微粒子の表面に酸化被膜を形成さ
せて磁性体微粒子自体を安定化させることができる。ま
た、このような被膜の形成は、強磁性体核の周囲を反強
磁性体膜で覆うことになるので、磁性微粒子間の交換相
互作用を減少させるという効果も得ることができる。
【0021】不活性ガスの代わりに、たとえば酸素や窒
素などの反応性ガスを導入することも可能であり、その
ような場合には、気相中で磁性体微粒子を反応させなが
ら凝集させることができる。あるいは、これらの反応性
ガスを磁性微粒子と反応させるだけではなく、非磁性母
材と反応させるようにすることも可能である。たとえ
ば、非磁性母材としてSiOを用いた場合に、酸素を導
入すればこれを酸化させてSiO2 とすることができ
る。Siを用いた場合には、酸素導入でSiO2 、窒素
導入でSiNを、それぞれ生成させることも可能であ
る。
【0022】本発明において、磁性薄膜をその上に形成
する非磁性基板としては、ガラス、アルミニウム、プラ
スチックあるいはセラミックスなどから成るものが使用
可能である。
【0023】凝集した磁性微粒子は、非磁性基板面に直
接付着させ堆積させることが好ましいが、必要に応じて
Cr、Cr合金などの下地層を介して堆積させるように
してもよい。基板を冷却することにより、基板に付着し
た磁性微粒子を瞬時に固定させることができて好まし
い。付着した磁性微粒子が小さ過ぎる場合には基板加熱
を行い、基板上で粒子をさらに凝集させるようにしても
よい。
【0024】本発明において、磁性体微粒子はその磁化
の方向の影響で、凝集に際しては鎖状構造をとり易く、
全体では超常磁性を示すことのない磁性薄膜が得られ
る。しかしながら、その鎖状構造にはっきりとした規則
性はみられず、ランダムな鎖状構造を示しながら基板上
に堆積して、磁性薄膜が形成される。
【0025】本発明の製造方法においては、形成される
薄膜の磁気異方性を制御するために、蒸着中に基板に磁
場を印加することを、さらなる特徴としている。磁場印
加の手段としては、基板の周囲に磁場発生コイルを設置
する、もしくは基板裏に永久磁石を取り付けるなどの実
施形態があげられる。上記したように、磁場を印加しな
い場合であっても、凝集に際して磁性体微粒子は鎖状構
造をとり易い傾向があるが、磁場を印加することよっ
て、より能動的に鎖状構造を形成させることができるよ
うになる。すなわち、磁場の印加により磁性粒子の磁化
を印加磁場方向に向けることになるため、鎖状に一層な
り易くする効果が得られる。磁場を印加しないとき、す
なわち、零磁場中では磁性体微粒子は凝集に際してラン
ダムな鎖状構造をとるが、磁場を印加するにつれ磁場方
向に柱状構造を形成するようになる。そしてその構造は
磁場の大きさに依存し、磁場があるしきい値を越える
と、柱状構造が崩れ平面的に一様な構造になることが、
本発明において見出だされた。したがって、基板に磁場
を印加し、磁場の方向や大きさを適切に選択することに
より、所望の三次元構造を有する柱状構造を形成し得
る。
【0026】本発明においては、上記したように基板に
磁場を印加するのではなく、気相中にも磁場を印加する
ようにしてもよい。この場合には、基板上で磁性体微粒
子を鎖状に凝集させるだけではなく、気相中に印加した
磁場により気相中で直接鎖状に凝集することも可能にな
り、基板面での鎖状形成が一層容易になる。
【0027】本発明においては、ランダムな鎖状構造に
規則性が加わって形成される柱状構造を、より積極的に
形成するために、磁性体微粒子と非磁性母材微粒子を同
時あるいは交互に蒸発させ、かつ両者の堆積率が等しく
なるようにしてガス中蒸着を行うことができる。すなわ
ち、磁性体微粒子と非磁性母材微粒子との二元同時蒸着
でも、あるいは磁性体微粒子の蒸着と非磁性母材の蒸着
とを交互に数回繰り返して行うようにしてもよい。同時
蒸着では、磁性材料と非磁性母材の成膜ガス圧範囲の重
なった材料しか成膜できないが、交互蒸着では磁性体微
粒子と非磁性母材のガス圧を独立に調節することが可能
なため、それぞれの成膜最適ガス圧を選択できるので、
様々な材料に応用可能である。そして、堆積率を制御す
るためには、必要に応じて装置内を仕切るシャッターな
どを設けて、蒸着装置内の両者の体積含有率を調節する
ようにしてもよい。
【0028】なお、本発明に係わる磁性薄膜は、次のよ
うな機構で形成されると考えられる。すなわち、磁性体
微粒子と非磁性母材微粒子とが基板面に達しその上に沈
着して、まず1層目が形成される。このとき両微粒子を
それぞれの堆積率が等しくなるように供給することによ
って、瞬間的に膜面が平面状になる。膜面が平面状にな
っていると、次に磁性体微粒子が蒸着されるときに、そ
の磁化の影響で選択的に前回堆積の磁性体微粒子上に堆
積しやすくなる。したがって、このような選択的な堆積
が繰り返されることによって、ランダムな鎖状構造から
柱状構造が形成しやすくなる。
【0029】本発明においては、気相中にプラズマを励
起することにより磁性体微粒子を正もしくは負にイオン
化させて、磁性薄膜の配向性・分散性を制御することも
可能である。正イオンあるいは負イオンのいずれになる
かは、粒径および電子温度に依存し、粒径が大きく電子
温度が低い場合には負イオン化し易く、粒径が小さく電
子温度が高い場合には正イオン化し易い。
【0030】プラズマ電位は接地電位よりも一般的に数
V程度高いので、基板面を接地電位とした場合であって
も、磁性体微粒子イオンを基板近傍のシースで加速もし
くは減速することができ、エネルギー制御が可能であ
る。しかしながら、基板面に、接地電位に対して正もし
くは負の電位を与えることにより、イオン化された磁性
微粒子基板に積極的に加速させて入射させることが可能
であり、磁性体微粒子の分散性・配向性が制御できる。
【0031】本発明において、磁性薄膜を構成する磁性
体微粒子の三次元構造は、以下のようにして制御が可能
である。すなわち、磁性体微粒子と非磁性母材微粒子の
堆積率は、蒸着チャンバー内のそれぞれの体積含有率
や、蒸発源と基板との距離の調節などにより制御するこ
とができる。磁性体微粒子の体積含有率と非磁性母材微
粒子の体積含有率とは、それぞれを蒸発させる熱源の出
力の調節により、独立して制御することができる。そし
て磁性体微粒子の粒径は気相のガス圧力の調節により、
磁性体微粒子の粒間距離は非磁性母材の熱源の出力の調
節により制御することができる。さらに、基板と蒸発源
との間に設けたシャッターの開閉時期を調整することに
よって、非磁性母材微粒子の堆積率の制御を容易にする
ことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下に本発明の詳細を実施例にし
たがって説明する。
【0033】実施例の説明に先立ち、まず、実施例にお
いて使用した蒸着装置について説明する。図1は実施例
において使用した蒸着装置の一例の概略構成図である。
【0034】図1に示されるように、ベルジャー1の内
部の下方には、磁性体原料を蒸発させる装置2と非磁性
母材を蒸発させる装置3とが並設され、上方にはホルダ
ー4に取り付けられた非磁性基板5がそれらに対向する
位置に設けられており、2つの蒸発装置2、3から蒸発
され非磁性基板5に到達した微粒子が、板面に沈着・堆
積して薄膜が形成されるように構成されている。磁性体
を蒸発させる装置2と非磁性母材を蒸発させる装置3と
には、それぞれ電源6、7とが接続されている。2つの
蒸発装置2、3と非磁性基板5との間には、蒸発された
磁性体微粒子を気相中で配向させつつ凝集させるための
コイル8とコイル9が設けられている。コイル8により
気相中に磁場が印加され、コイル9により気相中にプラ
ズマが励起される。これら2つのコイル8、9の上方で
非磁性基板5の真下には開閉自在のシャッター10が設
けられており、このシャッター10を閉じることにより
ベルジャー1の内部は仕切られ、蒸発した微粒子が所定
の体積含有率になるまで非磁性基板5の板面に到達しな
いようにすることができる。非磁性基板5の周囲には、
基板に磁場を印加するためのコイル11が設けられてい
る。コイル11により、基板面に到達した磁性体微粒子
の配向性や分散性を制御することができる。なお、本蒸
着装置においては図示されていないが、非磁性基板5の
裏面には、コイル11と同様に基板に磁場を印加するた
めの永久磁石が取り付けられている。さらに非磁性基板
5には、その電位を制御する装置12が接続されてい
る。この装置12により、気相中にプラズマが励起され
たときの磁性体微粒子イオンを、積極的に加速して基板
に入射させることができる。なお、ベルジャー1には、
所望のガスを導入するためのガス排気系13およびガス
導入系14の機器・配管が接続されている。
【0035】次に、上記構成の蒸着装置を用いた本発明
の磁気記録媒体の製造方法の実施例について説明する。
以下に説明する実施例においては共通して、蒸発装置
2、3の加熱方法として抵抗加熱を用い、蒸発源として
スパイラル状のWを用いた。非磁性基板としてはガラス
基板を用い、磁性体原料としてPtCo合金(Pt20a
tom%)、非磁性母材としてSiOを用いた。なお、図
1に示す蒸着装置においては、蒸発源と基板間の距離
(L)を変化させ得るように、基板ホルダー4は上下方
向に10〜30cmの範囲で動かすことができるが、以
下の実施例においては共通してL=20cmとした。
【0036】<実施例1>磁性体原料を蒸発させる装置
2にCoPt合金、非磁性母材を蒸発させる装置3にS
iOをそれぞれ入れ、ガラス基板5を基板ホルダー4に
取り付けた後、ベルジャーを閉め1×10-4Pa程度に排
気した後、ガス導入系を操作してArガスと酸素の混合
ガスを導入した。導入に際しては、酸素の割合を0.1
%とし全圧が400Pa(3torr)になるようにガ
ス圧を調整した。ガス圧の調整終了後、ガス導入系と排
気系を閉じた。ガスを流したままであると、ベルジャー
1内にガスの流れが生じ、蒸発微粒子の分布が一様でな
くなり、不均一な磁性膜が形成されてしまう。
【0037】次に、基板5と蒸発装置2,3との間に設
けたシャッター10を閉じた状態で、CoPt合金の蒸
発装置2とSiOの蒸発装置3にDC電源を投入して、
CoPtとSiOを蒸発させた。このときCoPtとS
iOの蒸発装置の出力を、それぞれ0〜100Wの間で
独立して調節することによって、CoPtとSiOの蒸
発率を制御し、シャッター10を開けて二元同時蒸着を
行った。蒸着終了後、シャッター10を閉め、基板5の
温度が室温程度に下がるまで放置した後、大気中に開放
し、表面に磁気記録層としての磁性薄膜が形成された基
板5を取り出した。<実施例2>磁性体CoPtと非磁
性母材SiOとの蒸着を交互に3回繰り返して行った他
は実施例1と同様にして、基板5表面に磁性薄膜を形成
した。
【0038】<実施例3>磁束が基板面に垂直になるよ
うに基板5の裏面に一様に取り付けたBaフェライト永
久磁石により、基板に磁場を印加して蒸着を行った他
は、実施例1と同様にして、基板5表面に磁性薄膜を形
成した。
【0039】<実施例4>磁束が基板面に垂直になるよ
うに基板5の裏面に一様に取り付けたBaフェライト永
久磁石により、基板に磁場を印加して蒸着を行った他
は、実施例2と同様にして、基板5表面に磁性薄膜を形
成した。
【0040】<実施例5>コイル9により気相中にプラ
ズマを励起しながら蒸着を行った他は、実施例1と同様
にして、基板5表面に磁性薄膜を形成した。高周波プラ
ズマの励起電力は40〜100Wの範囲で調節可能であ
るが、60Wで蒸着を行い、基板5を接地するようにし
た。
【0041】<実施例6>基板に負の電位−100Vを
与えるようにした他は実施例5と同様にして、基板5の
表面に磁性薄膜を形成した。
【0042】次に、このようにして表面に磁性薄膜を形
成した上記実施例1〜6の基板について、磁気記録媒体
としての磁気特性および微細構造を調べた。成膜した試
料について透過型電子顕微鏡(TEM)により微細構造
を観察し、膜中の微粒子の粒径を測定した。振動試料型
磁化測定装置(VSM)を用いて飽和磁化Msと保磁力
Hcを測定した。また、磁気トルク計を用いてトルクの
測定も行った。その結果を以下にまとめる。
【0043】実施例1において形成された磁性薄膜は、
CoPt微粒子がSiO2 母材中に分散した分散膜状に
なっており、三次元的にランダムな方向に鎖状構造をな
してことがTEM観察により、確認された。CoPt微
粒子の粒径は数10nm、粒間距離は数〜数10nmで
あった。
【0044】交互蒸着を行った実施例2においても、実
施例1と同様に、一様な母材中に凝集した磁性微粒子が
分散した構造の、実施例1と同様な分散膜が形成されて
いることが、TEM観察により確認された。
【0045】実施例3および実施例4においては、鎖状
構造が膜面に垂直に成長し柱状構造を形成していること
が、断面TEMにより観察された。さらにトルク測定よ
り、実施例3においては垂直磁気異方性エネルギーは8
×106 erg/cm3 程度になり、磁場を印加しない実施例
1の場合の約4倍にも増加していることが判明した。
【0046】実施例5、6においては、プラズマを励起
しない場合よりもCoPt粒子がより均一に分散し、分
散性が良好になっていることが、TEM観察により判明
した。これは、磁性体微粒子がプラズマにより正イオン
化され、各々の正イオン間にクーロン斥力が働き、一様
分散性が向上したためと考えられる。
【0047】なお、実施例5において強度テスターで膜
の基板への付着強度を測定したところ、実施例1〜4の
ものに比較して、1.5〜2倍の強度が得られているこ
とが判明した。これは実施例1〜4の磁性薄膜は、熱エ
ネルギーで基板に付着しているのに対して、プラズマを
励起させた実施例5、6では、シースによって加速され
ることにより基板に積極的に微粒子イオンを入射させて
いるため、密着性が改善されるためと考えられる。さら
に、基板に−100Vの電位を与えるようにした実施例
6においては、基板を接地した実施例5の場合のさらに
2倍程度の強度が得られた。基板に電位を与えること
で、さらに積極的にイオンを基板に入射させることがで
きるためと考えられる。
【0048】図2は、実施例1の成膜方法により得られ
る磁性薄膜におけるガス圧と磁性体微粒子の粒径との関
係を示している。図2によれば、ガス圧の増加に伴い、
磁性微粒子の粒径は指数関数的に増加すること、そし
て、酸素量の増加に対しては磁性微粒子の粒径はほとん
ど変化しないことが理解される。実施例1の方法によっ
て、ガス圧を任意の圧力に固定し、CoPtの蒸発装置
の出力をー定にし、SiOの蒸発装置の出力を10〜1
00Wの範囲で変化させて複数の薄膜試料を作製した場
合、SiOの体積含有率が連続的に増加するとともに、
SiO2 がCoPt微粒子間に析出し、粒間が広がって
いくことが確認された。さらに、CoPt微粒子の粒径
はSiOの出力に依存せず、ガス圧力のみに依存するこ
とも判明した。次の表1に、実施例1により成膜された
磁性薄膜試料4例におけるCoPt微粒子の粒径、粒間
距離、Hc、およびMsを示す。
【0049】
【表1】 表1からも明らかなように、SiOの出力が10Wのと
き、粒間距離が1〜3nmであるのに対し、100Wを
投入すると約10nmまで広げることができる。スパッ
タ法では粒間を制御できず、また大きくとも0.1〜数
nm程度であるのに比較し、本発明によれば磁性微粒子
の粒間をこのように数10nm程度にまで拡大し得る。
さらに、磁気記録を行うに十分な大きさのHcおよびM
sを有していることが理解される。
【0050】以上、本発明の実施例を、ディスク状のガ
ラス基板に関して説明したが、本発明の磁気記録媒体お
よびその製造方法は、基板の材質・形状には依存せず、
たとえば、アルミ基板、プラスティク基板、セラミクス
基板などでも適用可能であり、また、テープ状、ドラム
状などの磁気記録媒体に対しても適用が可能である。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ガス中蒸着法により形成される磁性薄膜の三次元構造が
容易に制御されるので、高密度の磁気記録が可能でかつ
ノイズの低減が可能なすぐれた磁気記録媒体およびその
製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において使用される蒸着装置の
一例の構成を示す概略図である。
【図2】実施例1におけるガス圧と磁性体微粒子の粒径
との関係を示した図である。
【符号の説明】
1………ベルジャー 2………磁性体原料を蒸発させる装置 3………非磁性母材を蒸発させる装置 4………基板ホルダー 5………非磁性基板 6、7…電源 8………気相中に磁場を印加するためのコイル 9………気相中にプラズマを励起するためのコイル 10……シャッター 11……基板に磁場を印加するためのコイル 12……基板5の電位を制御する装置 13……ガス排気系 14……ガス導入系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G11B 5/852 G11B 5/852 Z H01F 41/20 H01F 41/20 (56)参考文献 特開 平3−263608(JP,A) 特開 昭63−251921(JP,A) 特開 昭56−29(JP,A) 特開 昭62−226426(JP,A) 特開 昭54−12708(JP,A) 特開 昭54−21309(JP,A) 特開 昭56−127934(JP,A) 特開 昭51−38285(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/62 - 5/858 C23C 14/24 C23C 14/32 H01F 41/20

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板上に磁性薄膜よりなる磁気記
    録層を形成する磁気記録媒体の製造方法において、 気相中で磁性体原料および非磁性母材を加熱して磁性体
    微粒子および非磁性母材微粒子を蒸発させ、前記磁性体
    微粒子をHe、Ne、Ar、KrおよびXeの少なくと
    もいずれか1種のガスを含む気相中で所定の粒径に凝集
    させたのち、凝集した前記磁性体微粒子を前記非磁性母
    材微粒子中に分散した状態で前記非磁性基板面に供給
    し、凝集した前記磁性体微粒子を所定の粒間距離をもっ
    て前記非磁性母材微粒子とともに前記非磁性基板上に堆
    積させて、前記磁性薄膜を形成するようにしたことを特
    徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記He、Ne、Ar、KrおよびXe
    の少なくともいずれか1種のガスを含む気相のガス圧
    が、100Pa以上であることを特徴とする請求項1記
    載の磁気記録媒体の製造方法
  3. 【請求項3】 凝集した前記磁性体微粒子を所定の粒間
    距離をもって非磁性母材微粒子とともに前記非磁性基板
    上に堆積させるにあたり、前記非磁性基板に磁場を印加
    して、前記磁性微粒子を配向させるようにしたことを特
    徴とする特許請求の範囲請求項1または2記載の磁気記
    録媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記磁性体微粒子を気相中で所定の粒径
    に凝集させるにあたり、気相に磁場を印加して前記磁性
    体微粒子を配向させるようにしたことを特徴とする特許
    請求の範囲請求項1〜3のいずれか1項記載の磁気記録
    媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 凝集した前記磁性体微粒子および前記非
    磁性母材微粒子を前記非磁性基板上に堆積させるにあた
    り、気相中にプラズマを励起して凝集した前記磁性微粒
    子をイオン化させるようにしたことを特徴とする特許請
    求の範囲請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記非磁性基板面に、接地電位に対して
    正もしくは負の電位を与えるようにしたことを特徴とす
    る特許請求の範囲請求項5記載の磁気記録媒体の製造方
    法。
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