JP3386999B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents

弾性表面波装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾性表面波装置に
関し、さらに詳しくは、耐電力寿命を向上させた多重モ
ード型弾性表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】弾性表面波装置は、小型軽量化が容易で
あることや、通過帯域の周波数特性が優れていることを
特徴として、携帯電話機を始めとする移動体通信機器な
どに用途が広がっている。例えば、携帯電話機におい
て、アンテナ直後のデュプレクサや送信側のフィルタに
は、従来、誘電体共振器が用いられることが一般的であ
ったが、小型軽量化に有利な点から弾性表面波装置が用
いられようとしている。すなわち、弾性表面波装置は、
移動体通信機器において800MHzから2GHzを超える周
波数を通過帯域中心周波数とするフィルタなどとして使
用される。このような用途における重要な要求特性の一
つとして、弾性表面波装置を通過する電力によって特性
劣化や故障を生じないこと、すなわち、耐電力性に優れ
ていることが挙げられる。具体的には、2GHz前後の周
波数での動作に耐え、かつ、10mW〜3W程度の電力で
の使用に耐えることが要求される。
【0003】弾性表面波フィルタは、圧電基板上に、微
細なすだれ状電極(IDT:インターデジタルトランス
デュ−サ)とよばれる電極指を形成し、これに電気信号
を加えることにより、電極指の形状によって決まる通過
帯域特性および帯域外抑圧特性を実現しようとするもの
である。弾性表面波フィルタの周波数特性は、圧電基板
の種類や、IDTを構成する複数の電極指の本数、線
幅、ピッチなどによって決定される。例えば、800MH
z〜2GHzでの信号を処理する弾性表面波フィルタでは、
使用する圧電基板の音速にもよるが、電極指幅をおおよ
そ0.5〜1.5μmとすればよい。より具体的には、
中心周波数947.5MHzの多重モード型弾性表面波フ
ィルタでは、圧電基板として64度回転Yカットニオブ
酸リチウム単結晶を用い、振動伝搬方向を結晶X軸方向
とする場合、電極指幅を約1.2μmとすればよい。
【0004】しかし、このような細い電極指をもつID
Tを用いて弾性表面波を励振、受信する場合、信号電力
が大きくなると電極指が次第に破壊されて特性が劣化
し、ついには断線や短絡を引き起こして故障に至る現象
が発生することが、よく知られている。この現象はスト
レスマイグレーションと呼ばれ、弾性表面波による機械
的振動が電極指に繰り返しストレスを与えることが主原
因といわれている。
【0005】800MHz〜2GHz程度の高周波信号を用い
る携帯電話システムの場合、送信信号電力が10mW〜3
W程度に及ぶため、この信号電力が通過する弾性表面波
フィルタや弾性表面波デュプレクサでは、IDTを構成
する電極指の破壊が問題となっている。
【0006】この問題を解決する手段として、IDTの
配置や役割を工夫することにより信号電力を分散させる
設計法(“Miniature SAW Antenna Duplexer for 800-M
Hz Portable Telephone Used in Cellular Radio Syste
ms” IEEE TRANSACTIONS ONMICROWAVE THEORY AND TECH
NIQUES,VOL.36,NO.6,PP.1047-1056 JUNE 1988 など)
や、電極指に使用する電極材料の検討によりストレスマ
イグレーション耐性を向上させること(特公昭61−0
47010号公報)などが提案されており、これらの技
術の積み重ねにより、1W程度までの耐電力をもつ弾性
表面波装置が実現されはじめている。
【0007】しかし、これら積み重ねられた技術は、そ
れぞれ独立した技術であるため、よりよい特性を実現す
る設計法と耐電力寿命を向上させる設計法とは、必ずし
も一致しない。
【0008】例えば、IDT形成面の特定の範囲の中に
弾性表面波エネルギーを閉じ込める共振器型と呼ばれる
構造では、そのエネルギーを漏れなく使用するという特
徴から、Qの高い急峻な特性が実現しやすく、かつ、エ
ネルギー閉じ込めを行わない他の構造に比較して小型に
デバイスを作製できる反面、特定の範囲の電極指に弾性
表面波エネルギーが集中し、ストレスマイグレーション
を起こしやすいという欠点を持っている。多重モード型
弾性表面波フィルタと呼ばれる弾性表面波装置も、複数
のモードを同一のエリア内に閉じ込めて共振させるとい
う原理から共振器型に分類されるので、特定の電極指に
対するダメージが問題となる。
【0009】多重モード型弾性表面波フィルタは、例え
ば特開平5−267990号公報に記載されている。こ
こに示された技術は、3個のIDTの互いに対向する最
内側電極指(1つのIDTに着目した場合は最外側電極
指に相当する)同士の間隔を規定すること、および3個
のIDTの互いに対向する最内側電極指の幅を規定する
こと、また、リーキー弾性表面波を使用できる圧電基板
に対し、各IDTの対数、電極膜厚、IDTのピッチな
どを規定することで、最適な電気特性(通過帯域幅)を
得ようとするものである。しかし、同公報には耐電力寿
命の向上に関しての提案はみられない。
【0010】同公報に記載された多重モード型弾性表面
波フィルタは、リーキー弾性表面波を利用するものであ
るが、リーキー弾性表面波には、電極指が無い部分で急
激に弾性表面波エネルギーが減衰して損失が増大してし
まうという問題がある。同公報では、3個のIDTの互
いに対向する最内側電極指同士の間隔をIDTの複数電
極指の周期(波長)の関数で規定しているが、同公報に
は、前記間隔(電極指が存在しない領域の幅)を決定す
るに際し、前記損失増大に留意する旨の記載はない。
【0011】さらに、重要な知見として、第44回応用
物理学関係連合講演会講演予稿集No.1 28a−NA−8に
は、中心周波数947.5MHzの多重モード型弾性表面
波フィルタの耐電力寿命に関しての報告がある。この報
告には、IDTにAl電極を用いた場合には、Alのマ
イグレーションによりボイドやヒロック(盛り上がり)
といった欠陥が発生すること、電極材料にAl−Taな
どの合金材料を用いた場合には耐電力性が向上するこ
と、ただし、Ta含有量が多い場合にはウイスカ(針状
突起物)が発生すること、が記載されている。ボイドや
ヒロックは一般に特性を徐々に劣化させるが、ウイスカ
の発生は短絡に結びつき急激な特性劣化を生じさせるた
め、より重大である。また、ヒロックの成長によって短
絡が生じることもある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、多重
モード型弾性表面波装置において、特性低下を招くこと
なく耐電力寿命を向上させることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記(1)
〜(5)のいずれかの構成により達成される。 (1) 圧電基板上に、弾性表面波を励振または受信す
るための複数のインターデジタルトランスデュ−サ(I
DT)が、弾性表面波の伝搬方向に並ぶように配置さ
れ、弾性表面波を反射させるための一対の反射器が、前
記複数のIDTを挟んで弾性表面波伝搬方向に並ぶよう
に配置され、前記複数のIDTの一部によって励振され
た弾性表面波のエネルギーが前記複数のIDT内に閉じ
込められると共に、前記複数のIDT間で発生する複数
の振動モードが利用される多重モード型弾性表面波素子
を、少なくとも1個有し、前記多重モード型弾性表面波
素子の少なくとも1個において、前記複数のIDTのそ
れぞれを構成する複数の電極指のうち、他のIDTと隣
り合う最外側の電極指より1本内側に存在する弾性表面
波振動振幅の大きな電極指が間引かれている弾性表面波
装置。 (2) 他のIDTと隣り合う最外側の電極指より1本
内側に存在する弾性表面波振動振幅の大きな電極指が間
引かれている多重モード型弾性表面波素子において、反
射器と隣り合うIDTを構成する複数の電極指のうち、
反射器と隣り合う最外側の電極指より1本内側に存在す
る弾性表面波振動振幅の大きな電極指が間引かれている
上記(1)の弾性表面波装置。 (3) 前記多重モード型弾性表面波素子が、リーキー
弾性表面波を利用するものであり、電極指が間引かれた
位置に、IDTと電気的に分離された浮き電極が存在す
る上記(1)または(2)の弾性表面波装置。 (4) 前記電極指が、アルミニウム合金から構成され
た電極膜、または、少なくともアルミニウム層を含む2
種以上の金属層から構成される電極膜から構成される上
記(1)〜(3)のいずれかの弾性表面波装置。 (5) 複数個の多重モード型弾性表面波素子がカスケ
ード接続されており、これらの多重モード型弾性表面波
素子のうち、少なくとも、信号入力側から見て1段目と
して配置されている多重モード型弾性表面波素子におい
て電極指が間引かれている上記(1)〜(4)のいずれ
かの弾性表面波装置。
【0014】
【作用および効果】本発明の弾性表面波装置は、少なく
とも1個の多重モード型弾性表面波素子を有する。多重
モード型弾性表面波素子は、複数のIDTを音響的に結
合すると共に、弾性表面波伝搬方向の延長線上にIDT
を挟む一対の反射器を配置することにより、IDT間で
形成される複数の共振モードを複数IDTのエリア内に
閉じ込める構成をとっている。このとき、複数のIDT
における振動変位の分布は、図5に示すように、IDT
内でも場所により異なる。
【0015】図5に示すグラフは、図9に示すようなパ
ターンの3個のIDT2、3、4を設けた多重モード型
弾性表面波素子における振動変位分布である。ただし、
IDTを構成する電極指は、中央のIDT3が17.5
対、その両脇のIDT2、4が11対である。このグラ
フは、1993年電子情報通信学会春季大会講演論文集
A−337の方法にしたがって、多重モード型フィルタ
での各電極指を流れる有効電流をフィルタの中心周波数
から算出し、この有効電流からIDT内の振動変位の分
布を算出して作成したものである。図5から、IDT同
士が隣り合う領域において振動変位が特に大きくなるこ
とがわかる。また、IDTと反射器とが隣り合う領域に
おいても、振動変位がやや大きくなることがわかる。振
動変位が大きい領域では、前記ストレスマイグレーショ
ンが特に強く生じることになる。
【0016】耐電力寿命は印加する信号の周波数でも微
妙に変化する。つまり、用いる振動モードがその周波数
で共振している場合と反共振している場合とで振動変位
が異なり、IDT内でも周波数に応じて最大振動変位の
位置は変化する。本発明者らは、中心周波数947.5
MHzのフィルタを用い、中心周波数と同じ周波数の電力
を印加する実験において顕微鏡観察を行った結果、図6
に示す領域23、34において、すなわち、IDT2と
IDT3との境界付近およびIDT3とIDT4との境
界付近において、マイグレーションが特別強く生じ、反
射器5とIDT2との境界付近の領域52およびIDT
4と反射器6との境界付近の領域46においても、マイ
グレーションが生じることを確認した。これらの領域
は、図5に示す振動変位が大きい領域と一致する。そし
て、この実験において特性が急激に劣化したサンプルを
詳細に観察した結果、0.2μm程度の太さのウイスカ
の成長による短絡が特性劣化の原因と特定できた。
【0017】IDT内の特定の位置で発生するウイスカ
やヒロックの影響を軽減するため、本発明者らは、マイ
グレーションが顕著な位置において隣り合う電極指同士
が短絡しにくい、あるいは短絡しても特性に影響の出な
い構造を考え出し、実際に効果を確認した。すなわち、
IDTを構成する電極指のうち、隣り合うIDTに隣接
する最外側電極指から1本内側に存在する電極指を間引
くことにより(実際には、パターニングによりIDTを
形成する際に、当該電極指を形成しないことにより)、
弾性表面波装置の耐電力寿命が向上することを確認し
た。本発明において電極指を間引く位置は、図5に示す
弾性表面波素子内の振動変位の分布において、特に振動
変位の大きい領域に相当する。
【0018】本発明者らは、多重モード型弾性表面波フ
ィルタを複数段カスケード接続した構造において、マイ
グレーションが信号入力側、つまり初段に集中している
ことを確認した。したがって、カスケード接続型の多重
モード型弾性表面波フィルタの場合には、本発明をその
初段だけに適用してもよいことが判明した。初段のフィ
ルタだけに本発明を適用する構成は、フィルタ特性の設
計の自由度が大きくなる点で好ましい。
【0019】本発明には、電極指を間引いた位置に、I
DTと電気的に接続しない独立した指状導体膜を設ける
構成、すなわち、IDTを構成する電極指のうち、最外
側より1本内側の電極指を浮き電極とした構成も包含さ
れる。この構成は、リーキー弾性表面波を利用する場合
に特に効果がある。リーキー弾性表面波は、前述したよ
うに電極が存在しない圧電基板上で急激に減衰するた
め、電極指を間引くことにより比較的大きな減衰が生じ
る。しかし、電極指を間引いた位置に浮き電極を設けれ
ば、リーキー弾性表面波の減衰は抑えられるため、フィ
ルタとしての挿入損失は劣化しない。しかも、ウイスカ
やヒロックの発生により最外側の電極指と浮き電極とが
接続してしまっても、短絡とはならない。
【0020】なお、電極指を間引くことによりフィルタ
の通過帯域特性は多少変化するが、電極指の交差幅、本
数、膜厚などを調整することにより目的の周波数特性に
調整できるので、問題はない。すなわち、本発明を適用
することによって特性が低下することはない。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を用いて説明する。
【0022】本発明は、以下に説明する構成I、構成II
および構成IIIを含む。
【0023】構成I 図1(a)に、構成Iの弾性表面波装置に用いる多重モ
ード型弾性表面波素子(フィルタ)の構成例の平面図を
示す。また、図1(b)に、図1(a)に示す弾性表面
波素子のA−A断面の部分拡大図を示す。また、図5
は、前述したように多重モード型弾性表面波素子のID
T形成領域における弾性表面波振動による変位の分布を
示すグラフである。図5に示す変位量は、弾性表面波の
波長がフィルタの中心周波数と同じ場合のものであり、
計算に基づいて求めた相対値で表してある。
【0024】図1(a)では、圧電基板10上に、3個
のIDT2、3、4が弾性表面波伝搬方向に並ぶように
配置されている。図示するように中央のIDT3が信号
入力側である場合には、その両脇のIDT2、4が信号
出力側となる。IDTの数は必要に応じて決定される
が、2〜15個程度とするのが一般的である。これら複
数のIDTの両脇には、一対の反射器5、6が弾性表面
波伝搬方向に並ぶように配置されている。多重モード型
弾性表面波素子では、複数のIDTの一部(図示例では
中央のIDT3)によって励振された弾性表面波のエネ
ルギーが複数のIDT内に閉じ込められる。そして、複
数のIDT間で発生する複数の振動モードが利用され
る。このような多重モード型弾性表面波素子では、ID
Tの数によらず、振動モードが相互に結合することでフ
ィルタ特性が実現する。そして、弾性表面波の周波数が
通過帯域内である場合、IDTを構成する電極指の振動
変位は、IDTの数によらず図5に示されるようなパタ
ーンとなる。すなわち、IDTが隣り合う領域付近で特
に大きく、反射器とIDTとが隣り合う領域付近でもや
や大きくなるパターンとなる。
【0025】IDTは、バスバー(共通電極ともいう)
と、このバスバーから延びる複数の電極指とを有する櫛
状の電極を一対組み合わせたものであり、一方のバスバ
ーから延びる電極指と他方のバスバーから延びる電極指
とが、両バスバー間に交互に並ぶ構造となっている。図
1(a)および図1(b)に示す弾性表面波素子は、図
9に示す従来構造における各IDTを構成する電極指の
うち、左右最外側よりも一本内側の電極指、すなわち、
IDT2では電極指21a、21bを、IDT3では電
極指31a、31bを、IDT4では電極指41a、4
1bを、それぞれ間引き、左右最外側の電極指が、同じ
バスバーから延びる隣の電極指と隣接するパターンとし
たものである。振動変位が大きくなる領域に存在する上
記各電極指を間引くことにより、大電力での使用におい
てこれらの電極指に発生するウイスカやヒロックの影響
を受けることがなくなるので、弾性表面波素子の耐電力
寿命が著しく向上する。図示例では、反射器側と隣り合
う側に存在する電極指21a、41bも間引いている
が、この領域における振動変位はそれほど大きくはない
ので、この領域では間引かなくてもよい。
【0026】なお、図1(a)において、信号入力側I
DTと信号出力側IDTとを入れ替えた場合でも、本発
明の効果は同様に実現する。
【0027】本発明の効果は圧電基板10の種類によら
ず実現するため、圧電基板10の材質は特に限定されな
いが、通常、各種圧電材料からなる単結晶、多結晶、薄
膜、あるいはこれらの組み合わせなどを用いればよい。
【0028】図1(a)に示す弾性表面波素子は、所定
のパッケージに搭載されて弾性表面波装置とされる。図
1(a)に示す各IDTにおいて、バスバーと、弾性表
面波素子を収容するパッケージ側との電気的接続の方
法、パッケージに対する素子の実装形態、パッケージ形
状などは特に限定されない。これらがいずれのものであ
っても本発明の効果に大きく影響することはないので、
従来公知のものから必要に応じて適宜選択すればよい。
例えば、電気的接続の方法としては、金細線やアルミニ
ウム細線を、バスバーやこれから延伸した電極パッドと
パッケージ側の端子とにボンディングするフェースアッ
プ搭載方法や、バスバーやこれから延伸した電極パッド
に金やハンダなどのボール(直径100μm程度)を接
合しておき、弾性表面波素子ごとパッケージにフェース
ダウン接続する方法などを用いることができる。
【0029】IDTは、10mW〜3W程度の信号電力に
対してマイグレーションを起こしにくい電極膜を、所定
パターンに形成したものが好ましい。このような電極膜
としては、例えば、アルミニウム合金から構成されたも
の、または、少なくともアルミニウム層を含む2種以上
の金属層を積層したものなどが挙げられる。具体的に
は、アルミニウムに銅を0.2〜5重量%程度含有させ
た合金電極膜や、アルミニウムにタンタルを0.5〜2
0重量%程度含有させた合金電極膜、圧電基板上に厚さ
10nm程度のチタン膜を形成した上に、所定の厚さのア
ルミニウム膜を形成した多層構造の電極膜などが好まし
い。このような電極膜を用いたIDTでは特にウイスカ
が発生しやすいので、本発明は極めて有効である。
【0030】IDTの形成方法は特に限定されないが、
例えば蒸着法やスパッタ法を用いて電極膜を形成し、フ
ォトリソグラフィー法などにより所定パターンに形状加
工する方法を利用することができる。
【0031】本発明の弾性表面波装置は、前述したよう
に携帯電話等の移動体通信機器に好適である。本発明の
弾性表面波装置が適用される周波数帯域は、一般に80
0MHz程度以上2GHz程度以下であるが、3GHz程度まで
対応することもできる。送信信号電力は、通常、10mW
〜3W程度とされる。また、上記周波数帯域に適用する
場合、電極指幅は、一般に1.5μm以下であり、2GHz
では0.5μm程度、3GHzでは0.3μm程度である。
また、電極指のピッチは、一般に3μm程度以下であ
り、2GHzでは1μm程度、3GHzでは0.6μm程度であ
る。また、電極指の厚さは、一般に500nm程度以下で
あり、2GHzでは50nm程度、3GHzでは30nm程度であ
る。
【0032】構成II 図2および図3に、構成IIの弾性表面波装置に用いる弾
性表面波素子の構成例を、平面図としてそれぞれ示す。
これらの弾性表面波素子は、多重モード型弾性表面波フ
ィルタを2段カスケード接続したものである。図示例で
は、入力側からみて1段目のフィルタを前記構成Iのも
のとし、2段目のフィルタは電極指を間引いていない従
来の多重モード型フィルタとしてある。2段目のフィル
タには、3個のIDT12、13、14と、これらを挟
む一対の反射器15、16が設けられている。
【0033】構成IIでは、少なくとも1段目の素子にお
いて電極指を間引けばよいが、必要に応じ、さらに、2
段目以降の多重モード型フィルタの少なくとも1つにお
いて電極を間引く構成としてもよい。
【0034】図2では、1段目のフィルタの中央のID
T3に入力し、左右のIDT2、4からの出力を2段目
のフィルタの左右のIDT12、14に入力し、中央の
IDT13から出力する構成としてある。一方、図3で
は、1段目のフィルタの中央のIDT3に入力する点で
は図2と同様であるが、左右のIDT2、4からの出力
信号線を段間でいったん集結させたのち、2段目のフィ
ルタの中央のIDT13に入力させ、左右のIDT1
2、14から出力する構成としてある。これらの図に示
すように、複数の多重モード型弾性表面波フィルタをカ
スケード接続した構成では、各段のフィルタにおいて信
号入出力に使用するIDTの数は限定されず、また、各
段の信号線の接続形態も、信号が所望の特性で伝達され
る構造となっていれば、特に限定されるものではない。
【0035】構成III 図4(a)は、構成IIIの弾性表面波装置に用いる弾性
表面波素子の構成例の平面図であり、図4(b)は、そ
のB−B断面の拡大図である。この弾性表面波素子は、
構成Iにおいて間引いた電極指21a、21b、31
a、31b、41a、41bの位置に、電気的にどのバ
スバーにも接続されていない浮き電極22a、22b、
32a、32b、42a、42bを、それぞれ設けたも
のである。この構成は、前述したようにリーキー弾性表
面波を利用する場合に特に効果がある。リーキー弾性表
面波を利用する場合の圧電基板およびその弾性表面波伝
搬方向としては、例えばニオブ酸リチウム単結晶の64
度回転Yカット板のX方向伝搬や、タンタル酸リチウム
単結晶の36度回転Yカット板のX方向伝搬や、四ホウ
酸リチウム単結晶の結晶方位(011)カット板のZ’
方向伝搬などが挙げられる。
【0036】
【実施例】実施例1 構成Iの具体例として、図1(a)に示す構成をもつ弾
性表面波フィルタを作製した。圧電基板には、ニオブ酸
リチウム単結晶64度回転Yカット基板をX方向伝搬で
使用した。IDTの形成に際しては、まず、厚さ約17
0nmのアルミニウム−タンタル合金薄膜をスパッタ法に
より形成した。タンタル含有量は約7重量%とした。次
に、図1に示される電極パターンとなるようにフォトリ
ソグラフィにより形状加工した。なお、IDTに連続し
て、図示しない電極パッドも設けた。
【0037】IDTの電極指は、中央のIDT3で1
7.5対、その両脇のIDT2、4で11対とした。ま
た、反射器5、6の電極指は250対とした。次に、こ
の電極パターンを設けた部分の圧電基板を、切削により
1.5mm×1.7mmの寸法に切り出し、これを3.8mm
角のセラミックパッケージに搭載し、電極パッドとパッ
ケージとの間をワイヤボンディングにより電気的に接続
した。
【0038】この弾性表面波フィルタの電気的特性を、
ネットワークアナライザによりパッケージ側から測定し
た。結果を図7に示す。なお、信号電力は、0.2Wと
した。図7から、この弾性表面波フィルタは、中心周波
数が947.5MHz、通過帯域幅が38MHzであり、現在
用いられている携帯電話システム(たとえばGSMシス
テム)に用いるのに十分な特性を有していることがわか
る。
【0039】次に、この弾性表面波フィルタを測定治具
により80℃の恒温槽内に保持し、その状態で弾性表面
波フィルタを通過させる信号電力を1Wとし、かつ信号
周波数を弾性表面波振動の2次モードの共振点付近に設
定して信号を連続的に加え、電気的特性の劣化を測定し
た。そして、この測定においてフィルタの挿入損失が1
dB劣化した時点を寿命とした。なお、この弾性表面波フ
ィルタの初期の挿入損失は、1.6dBであった。
【0040】また、比較のために、電極指を間引かない
従来構造の電極パターン(図9に示す構成)を利用した
フィルタも作製した。なお、この従来構造のフィルタで
は、中心周波数近傍の特性が上記本発明構造のフィルタ
と同等になるように、電極指交差幅を小さくした。すな
わち、従来構造のフィルタを基準としたとき、本発明構
造のフィルタの電極指交差幅は相対的に大きい。電極指
を間引くことによりインピーダンスが増大するが、電極
指交差幅を大きくすることによりインピーダンスが低下
するので、特性変化を補償することができる。
【0041】この測定では、従来構造のフィルタも本発
明構造のフィルタも、挿入損失が徐々に劣化するという
ことはなく、急激に特性不良となるケースがほとんどで
あったが、特性不良となるまでの時間には明確な差が認
められた。この測定は、環境温度80℃における加速試
験を利用したものなので、常温(20℃)使用に換算し
て寿命の平均値を求めたところ、従来構造のものが3年
程度であったのに対し本発明構造のものは15年であっ
た。なお、加速換算に際しては、別途温度加速試験を行
った結果を用いて、周囲温度が10℃上昇するごとに2
倍の時間加速となるものとした。すなわち、80℃で
は、常温での試験の64倍の時間加速となるものとし
た。
【0042】測定後、従来構造のフィルタと本発明構造
のフィルタとについて、特性不良の原因を調べるために
IDT形成面を顕微鏡観察したところ、図6に示すよう
にIDT同士が隣接する領域23、34を中心として多
数のウイスカが見つかり、これらが短絡の原因となって
いた。また、IDTと反射器とが隣接する領域52、4
6にもウイスカの発生が認められた。ただし、従来構造
のものにおいては、他のIDTと隣り合う最外側の電極
指とそれより1本内側の電極指との間でウイスカによる
短絡が生じていたのに対し、本発明構造のものでは、最
外側から3本目と4本目の電極指の間でウイスカによる
短絡が生じていた。この結果から、最も短絡を起こしや
すい位置の電極指を除くことにより、特性をほぼ維持し
たまま弾性表面波素子の耐電力寿命を大幅に向上できた
ことがわかる。
【0043】実施例2 構成IIの具体例として、図2および図3にそれぞれ示す
構成をもつ弾性表面波フィルタを実施例1記載の方法に
準じて作製し、実施例1と同様な測定を行った。この結
果、実施例1における構成Iの弾性表面波装置とほぼ同
じ寿命が得られた。
【0044】測定後に、特性不良となった弾性表面波装
置のIDT形成面を観察した結果、信号入力側である1
段目のフィルタにおいて、実施例1の本発明の装置と同
じ箇所でウイスカによる短絡が認められた。なお、電極
指を間引かなかった2段目は、全く損傷をうけていなか
った。この結果から、2段目のフィルタでは電極指を間
引かなくてよいことがわかる。したがって、この構成で
は、2段目のフィルタの電極指構成を自由に選択でき、
特性設計の自由度が大きいことがわかる。この弾性表面
波装置の周波数特性を、図8に示す。図8に示す周波数
特性グラフでは、2段目のフィルタの帯域内特性と1段
目のフィルタの帯域内特性とが補いあって、帯域内リッ
プルを抑圧できたことが示されている。
【0045】実施例3 構成IIIの具体例として、図4に示す構成をもつ弾性表
面波フィルタを作製した。この弾性表面波フィルタは、
電極膜をパターニングする際に浮き電極を設けたほかは
実施例1の本発明構造の弾性表面波フィルタと同様にし
て作製した。
【0046】この弾性表面波装置について実施例1と同
一の条件で耐電力寿命を測定した結果、常温(20℃)
使用に換算した寿命の平均値は約18年であり、構成I
のものよりも耐電力寿命が優れていることがわかった。
また、フィルタの挿入損失は1.5dBであり、実施例1
のものよりも低かった。構成IIIでは、挿入損失が低
い、すなわち素子内で消費される電力が少ない分、寿命
の長期化に効果があるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成Iに係わる弾性表面波素子を示
し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図で
ある。
【図2】本発明の構成IIに係わる弾性表面波素子の平面
図である。
【図3】本発明の構成IIに係わる弾性表面波素子の平面
図である。
【図4】本発明の構成IIIに係わる弾性表面波素子を示
し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図で
ある。
【図5】多重モード型弾性表面波フィルタの電極パター
ン内での振動変位の分布を示すグラフである。
【図6】弾性表面波装置に大電力を加えたときにマイグ
レーションを強く起こした領域を示す平面図である。
【図7】本発明の構成Iに係わる弾性表面波フィルタの
周波数特性図である。
【図8】本発明の構成IIに係わる弾性表面波フィルタの
周波数特性図である。
【図9】従来の多重モード型弾性表面波素子の電極パタ
ーンを示す平面図である。
【符号の説明】
2、3、4、12、13、14 IDT 21a、21b、31a、31b、41a、41b 電
極指 22a、22b、32a、32b、42a、42b 浮
き電極 5、6、15、16 反射器 52、23、34、46 マイグレーション発生領域 10 圧電基板
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−79000(JP,A) 特開 平7−46077(JP,A) 特開 平10−190394(JP,A) 特開 平7−131281(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03H 9/145 H03H 9/25

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電基板上に、弾性表面波を励振または
    受信するための複数のインターデジタルトランスデュ−
    サ(IDT)が、弾性表面波の伝搬方向に並ぶように配
    置され、弾性表面波を反射させるための一対の反射器
    が、前記複数のIDTを挟んで弾性表面波伝搬方向に並
    ぶように配置され、前記複数のIDTの一部によって励
    振された弾性表面波のエネルギーが前記複数のIDT内
    に閉じ込められると共に、前記複数のIDT間で発生す
    る複数の振動モードが利用される多重モード型弾性表面
    波素子を、少なくとも1個有し、 前記多重モード型弾性表面波素子の少なくとも1個にお
    いて、前記複数のIDTのそれぞれを構成する複数の電
    極指のうち、他のIDTと隣り合う最外側の電極指より
    1本内側に存在する弾性表面波振動振幅の大きな電極指
    が間引かれている弾性表面波装置。
  2. 【請求項2】 他のIDTと隣り合う最外側の電極指よ
    り1本内側に存在する弾性表面波振動振幅の大きな電極
    指が間引かれている多重モード型弾性表面波素子におい
    て、反射器と隣り合うIDTを構成する複数の電極指の
    うち、反射器と隣り合う最外側の電極指より1本内側に
    存在する弾性表面波振動振幅の大きな電極指が間引かれ
    ている請求項1の弾性表面波装置。
  3. 【請求項3】 前記多重モード型弾性表面波素子が、リ
    ーキー弾性表面波を利用するものであり、電極指が間引
    かれた位置に、IDTと電気的に分離された浮き電極が
    存在する請求項1または2の弾性表面波装置。
  4. 【請求項4】 前記電極指が、アルミニウム合金から構
    成された電極膜、または、少なくともアルミニウム層を
    含む2種以上の金属層から構成される電極膜から構成さ
    れる請求項1〜3のいずれかの弾性表面波装置。
  5. 【請求項5】 複数個の多重モード型弾性表面波素子が
    カスケード接続されており、これらの多重モード型弾性
    表面波素子のうち、少なくとも、信号入力側から見て1
    段目として配置されている多重モード型弾性表面波素子
    において電極指が間引かれている請求項1〜4のいずれ
    かの弾性表面波装置。
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