JP3385053B2 - 希ガスの高収率回収精製方法及び希ガスの高収率回収精製装置 - Google Patents

希ガスの高収率回収精製方法及び希ガスの高収率回収精製装置

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JP3385053B2
JP3385053B2 JP35692592A JP35692592A JP3385053B2 JP 3385053 B2 JP3385053 B2 JP 3385053B2 JP 35692592 A JP35692592 A JP 35692592A JP 35692592 A JP35692592 A JP 35692592A JP 3385053 B2 JP3385053 B2 JP 3385053B2
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全 水野
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  • Separation Of Gases By Adsorption (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は天然に稀有なガス、特に
ヘリウム、ネオンやその他の高価なガスを圧力揺動吸着
分離(PSA)法を用い、高収率で回収し精製して高純
度の希ガスを得る方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ヘリウムは一部の天然ガス中に0.1〜
6%程度存在し、又、ネオンは空気中に0.0018%
程度存在する。これらは天然に非常に稀有なガスであ
り、希ガスは工業的に合成できないため非常に高価であ
る。一方、代表的な希ガスであるヘリウムガスは、例え
ば深海に潜水する作業員の呼吸に使用する空気に酸素と
混合したり、ガスクロマトグラフ等の測定機器のキャリ
アーガスや、溶接用シールガス等の用途に従来から用い
られてきた。また、液体ヘリウムは4Kに冷却可能な極
低温用冷媒として、例えば超電導状態を作るための冷媒
として使用される等、液体ヘリウムは今後その需要の増
大が見込まれると同時に、より安価に液体ヘリウムを提
供することが超電導の一つの実用化の条件でもある。
【0003】また、上記の用途において使用されたヘリ
ウムは、現状ではほとんど回収されず大気中に放出され
ているが、それを回収、精製して再利用することが資源
保護等の点からも望まれている。
【0004】従来、空気を含む低濃度ヘリウム(通常ヘ
リウム以外に窒素、酸素、水分、アルゴン、二酸化炭素
等が含まれる)を精製して、高濃度のヘリウムガスにす
る手段として、低温分離法、膜分離法、圧力揺動
吸着分離(PSA)法等が知られている。
【0005】低温分離法は液体窒素温度や液体ヘリウ
ム温度等に混合ガスを冷却して不純物のガスを分離する
方法であり、例えばヘリウム以外のガスを液化蒸留する
低温蒸留法や、モレキュラーシーブスや活性炭等に不純
ガスを吸着させる低温吸着法やTSA法、熱交換器を用
いて不純物のガスを凝縮させる凝固法等がある。しかし
ながら、低温分離法は液体窒素等の寒冷剤を必用とし、
冷凍機、寒冷剤のタンク及び熱交換器等の大型の付帯設
備を必用とし、操作も複雑であり、非常に大量に且つ連
続的にヘリウムを回収精製する装置以外には不適当な手
段であった。
【0006】膜分離法は、ガスの溶解性や透過速度が
空気成分に比較してヘリウムガスが選択的に大きなフッ
素系、シリコン系、イミド系ポリマー等を中空糸状又は
平膜としてモジュール化し、該モジュールに粗製ヘリウ
ムを導入させると、ヘリウムだけがモジュールを選択透
過してヘリウムと空気成分を分離してヘリウムを回収精
製する方法である。
【0007】この膜分離法は、常温で使用可能であり原
料ガスを加圧してモジュールに送り込むといった簡単な
操作で高純度のヘリウムガスが得られるものの、次のよ
うな欠点を有する。(1) 膜自体が経時変化して寿命( 一
般に5 〜6 年) があり、モジュール自体が高価。(2) モ
ジュールが空気透過性を若干有するためヘリウムの高純
度な製品を得るのは困難であり、高純度品を得るために
は回収率が犠牲となってしまう。(3) モジュールの水分
透過性が高く、得られる製品ガス中の湿度が高い。(4)
モジュール内部での圧力損失が大きく原料側の圧力を高
くする必要がありエネルギーコストが高い。
【0008】常温でヘリウムと空気成分を分離する方
法として吸着分離法が知られ、その代表例として圧力揺
動吸着分離法(Pressure Swing Adsorption:法、以下略
して、PSA法と言う)がある。この方法は図4に示す
ように活性炭またはゼオライト等の吸着剤を充填した吸
着塔41、42のどちらか一方にコンプレッサー43等
を用い原料ガスを導入してヘリウム以外の空気成分を吸
着剤に吸着させ、吸着されないヘリウムを製品として取
り出すものである。そして吸着塔41の吸着容量を越え
て未吸着の空気成分が溶出してしまう直前に他の一方の
吸着塔42へ原料ガスの供給を切り替えて吸着操作を行
う。空気成分が吸着して飽和になった吸着塔41は圧力
を大気圧又は真空ポンプ44等を用いて減圧して空気成
分を脱離して吸着剤を再生する。以後このように2つの
吸着塔を交互に用いて吸着−脱離操作を行うことで連続
的に高純度のヘリウムガスが得られる。
【0009】PSA法は前述した低温分離や膜分離法等
と比較して、(a) 非常に簡単な装置でありメンテナンス
性に優れ、(b) 低温、高圧が不要であるため安全性が高
く、(c) 高純度ヘリウムを得ることが可能であり、(d)
吸着剤を適宜選択して低湿度のヘリウムが容易に得られ
る、(e) 吸着剤の寿命が長く半永久的に使用可能、(f)
ヘリウムの処理量に応じて、小型の装置から大型の装置
まで対応可能である、といった有利さがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
PSA法によるヘリウム回収精製方法は、原料ガスのヘ
リウム濃度が大きく変化すると一定の製品純度のヘリウ
ムが得られないことと、原料ヘリウムの回収率(原料ガ
スの中のヘリウム量に対する製品ガス中のヘリウム量の
割合)が低いという欠点があった。
【0011】また、PSA法を用いたヘリウム回収精製
装置として、原料ガス中のヘリウムの濃度が変化して
も、製品ヘリウムガス純度の変化がなく、かつ回収率が
高く操作の簡単で装置自体のコストが低廉なものは従来
なかった。
【0012】本発明は上記従来技術の欠点を解決するた
めになされたものであり、PSA法を用いてヘリウム等
の希ガスを高収率で回収し精製する方法において、常に
一定の製品純度の希ガスが得られ、希ガスの回収率が高
く、且つ操作が簡単な希ガスの高収率回収精製方法を提
供することを目的とする。
【0013】また、本発明は上記方法による希ガスの回
収精製を簡単な操作で確実に行うことができ、装置自体
のコストの安価な希ガスの高収率回収精製装置を提供す
ることを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)圧力揺動
吸着分離装置を用いて希ガスを含む原料ガスから希ガス
を回収し精製する方法において、圧力揺動吸着分離装置
の排気ガスを原料ガスに混合しリサイクルしながら希ガ
スを回収する方法であって、製品希ガス中の希ガス濃度
を常時測定し、上記希ガス濃度が一定になるように製品
ガス流量を上記希ガス濃度に応じて常時調節し、原料ガ
ス中の希ガス濃度に応じて、製品希ガス流量変化速度を
変えて製品希ガス流量の調節を行うことを特徴とする希
ガスの高収率回収精製方法、(2)少なくとも2つの吸着
塔を有する圧力揺動吸着分離装置の製品希ガスの取り出
し側に希ガスの濃度を測定するための計測器を備え、原
料ガス導入側に原料ガスを貯蔵し供給するための容器を
有し、該容器には吸着塔からの排気ガスを導入可能に配
管し、原料ガス中の希ガスの濃度を測定するための計測
器を備え、且つ前記希ガス濃度を測定するための計測器
からの希ガスの濃度情報を受けて、原料ガス中の希ガス
濃度に応じて製品希ガス流量変化速度を変えて製品希ガ
ス流量の調節を行うことが可能な開閉弁と装置全体を制
御するためのシークエンサーを備えることを特徴とする
希ガスの高収率回収精製装置、を要旨とするものであ
る。
【0015】
【0016】
【0017】以下、本発明をヘリウムの高収率回収精製
を1例として図面に基き説明する。図1は本発明の希ガ
スの高収率回収精製装置の1例を示す構成図である。
【0018】図1に示すようにヘリウム回収精製装置
は、原料ガス圧縮機4、活性炭等の吸着剤が充填された
2つの吸着塔2、3、吸着塔内の吸着ガスを排気するた
めの真空ポンプ5、製品ヘリウムのバッファタンク6、
製品ヘリウムの流量を制御するためのマスフローコント
ローラー(以下、MFCと略記)7からなるPSA装置
に、粗ヘリウムの原料ガスを貯蔵するための容器である
ガスバッグ1、原料ガス中のヘリウム濃度を測定するた
めの酸素濃度計8、製品ヘリウムの濃度を測定するため
の酸素濃度計9、MFC7を制御するための調節計10
を備え、これらを接続するための導管12と開閉弁2
1、22、23、24、31、32、33、34、3
5、36とからなり、更に酸素濃度計8、9、や調節計
10、圧力計測器等の情報を受けて装置全体の運転と、
各開閉弁、機器類を制御するシークエンサー11から構
成される。
【0019】本発明において原料ガスを貯蔵するための
容器は、上記のガスバッグに特に限定されず原料ガスを
貯蔵可能なものであればどのようなものでもよい。ま
た、原料ガス圧縮機、吸着塔、真空ポンプ、バッファタ
ンク、MFC等は通常のPSA装置において使用されて
いるものが使用可能である。
【0020】また、原料ガス中のヘリウム濃度及び製品
ヘリウム濃度を測定する計測器は、ジルコニア式酸素濃
度計、磁気式酸素濃度計、ガルバニックセル式酸素濃度
計や、熱伝導式ヘリウム濃度計等が使用できる。尚、製
品ヘリウムの濃度を測定する計測器として酸素濃度計が
使用可能な条件は、原料ヘリウムの中に不純物として空
気、又は酸素が混入する場合で、しかも空気が不純物と
して混入している場合はPSAの吸着剤の吸着特性が酸
素、窒素、その他の空気成分とヘリウムとの間でほぼ同
じ場合である。ここで、原料ヘリウム中の不純物が酸素
のみの場合の製品ヘリウムガスの純度は次の第1式で表
される。
【数1】 製品ヘリウムガス純度(%)=100−測定酸素濃度(%)・・・・・〔1〕 また、原料ヘリウム中の不純物が空気である場合は空気
中の酸素は全空気の約20%であるので下記の第2式で
表される。
【数2】 製品ヘリウムガス純度(%)=100−測定酸素濃度(%)×5・・・〔2〕
【0021】MFCをコントロールするための調節計
は、PID調節計、ファジー調節計、その他のコンピュ
ーター等を使用することができる。
【0022】以下、上記の高収率回収精製装置を用いて
回収精製方法について説明する。先ず、ガスバッグ1中
にヘリウムガスを含む原料ガスを導入する。原料ガスの
ヘリウム濃度は特に限定されない。また、ガスバッグ1
に連続的にヘリウムを含む原料ガスを外部から供給して
回収精製操作を行うこともできる。
【0023】次いで、ガスバッグ中の原料ガスを圧縮機
4により圧縮して一方の吸着塔(例えば吸着塔2)に導
入する。製品ガスのヘリウム濃度は酸素濃度計9で連続
的に常時計測し計測値は調節計及びシークエンサーに送
られる。調節計10は製品ヘリウムガスの濃度が予め設
定した濃度になるように製品ガスの最適流量値を選択し
てMFC7を制御する。尚、上記酸素濃度の計測は製品
ヘリウムガスの濃度を一定に保つことが可能であれば、
間欠でもよい。以下、PSA装置の起動から停止までを
順を追って各段階における流量値の設定と制御パラメー
ターについて述べる。
【0024】(A)装置起動時 装置を起動させてから、製品ヘリウム取り出し側の酸素
濃度計9でモニターしているヘリウム濃度が所定の濃度
になるまでは、シークエンサーにより開閉を操作し
て、圧縮機から吸着塔に入りバッファタンクから出た製
品ガスをガスバッグ1に戻してリサイクルするようにす
る。このPSA操作の初期の段階では製品ガス中のヘリ
ウムの濃度が低いため、通常10〜20サイクル程度の
吸着塔2、3の切替を行った後に製品ガスを取り出す。
また、この製品ガスのリサイクル操作は、装置の異常等
で製品ガス純度が低下した場合のように、酸素濃度計9
のヘリウム濃度測定値が一定値以下になった場合に行う
ようにすることもできる。
【0025】(B)連続運転時 酸素濃度計9で計測している製品ヘリウム濃度が所定値
以上になったらシークエンサー及び開閉弁により流路を
製品ガスを取り出すように切り換えて、ヘリウムの製品
ガスを取り出す。装置の運転中(装置起動時及び連続運
転中)は、常時PSAの排気ガスをガスバッグ1に戻し
ている。排気ガスは原料ガスと比較して常にヘリウム濃
度が低いため、運転が続くと連続的に原料ガス中のヘリ
ウム濃度が低下する。しかし、製品ガス流量を調節して
製品ガス中のヘリウム濃度の低下に対して予め設定した
製品ヘリウムガスの濃度になるように制御しているた
め、原料ガスの組成が変動しても、得られる製品ヘリウ
ムの濃度は変化しない。
【0026】図5はヘリウムPSA装置における製品ヘ
リウム流量と製品ヘリウム中の酸素濃度との関係を示す
グラフである。一般にPSA装置では図5に示したよう
に製品ガス流量が同じ場合、原料ガス中のヘリウム濃度
が低下すると製品中のヘリウム濃度も低下するが、本発
明の方法によれば製品ガスのヘリウムの濃度はつねに一
定の値を保つことができる。また、本発明では運転途中
でガスバッグに新たな原料ガスを供給することも可能で
ある。この場合は原料ガス中のヘリウム濃度が変化して
も、前述したように製品ガスのヘリウム濃度が変化する
ことはない。
【0027】また、図5に示すようにヘリウム濃度の低
い原料ガスを用いた場合、製品ヘリウムの流量変化に対
して製品ヘリウム中の酸素濃度の変化が大きくなり(製
品ガス中のヘリウム濃度の変化が大きくなる)、ヘリウ
ム濃度の非常に高い原料ガスの場合(例えば90%の場
合)は、製品ヘリウムの流量の変化による酸素濃度の変
化が小さく、原料ガスのヘリウム濃度によって図5のグ
ラフの直線の傾き(プロセスゲイン)が異なる。
【0028】図2は、製品の流量値を変化させる操作を
行った際の、製品ガス中の酸素濃度の変化の速さ(時定
数)について、原料ガス中のヘリウム濃度が30%の場
合と90%の場合を比較したグラフであり、図2に示す
ように原料ガスのヘリウム濃度が低い場合は明らかに時
定数が大きい。尚、時定数とは制御量の変化が始まった
時間から制御量の全変化の63%になるまでの時間と
し、プロセスゲインは操作量の変化分で制御量の変化分
を除した値である。
【0029】図5に示すように、原料ガスのヘリウム濃
度が高い場合には製品ガスの流量の変化が製品ガスのヘ
リウム純度に与える影響が少ないので、流量変化の速度
を大きくしてレスポンス性能を向上させ、又、原料ガス
のヘリウム濃度が低い場合には製品ヘリウムの僅かな流
量変化が、製品ガスのヘリウム純度に大きな影響を与え
るため、流量変化の速度を小さくすることで、ハンチン
グや調節計が演算範囲を越えて暴走し制御性が低下する
のを防止でき、収束時間、ウォームアップ時間も短縮す
ることができる。
【0030】原料ガスのヘリウム濃度に応じて流量変化
速度を変えるには調節計の制御パラメーターを変化させ
ることで対応できる。上記制御パラメーターは、比例帯
(P)、積分時間(Ti)、微分時間(Td)等であ
り、予めPIDパラメータ(PID調節計を用いた場
合)や、メンバーシップ関数(ファジー調節計を用いた
場合)等をヘリウム濃度の測定値に応じて割り振ってお
く。具体的には例えば原料ガス中の酸素濃度0〜5%未
満、5%以上〜10%未満、10%以上〜15%未満及
び5%以上の4段階のグループに分け、各濃度範囲毎に
原料ガス中のヘリウム濃度に応じて最適なガス流量変化
速度が得られる制御パラメータを予め実測して決定して
おき、原料ガス中のヘリウム濃度に応じてそれぞれのグ
ループごとにパラメータを切り換えるようにする。調節
計にPID調節計を使用した場合の入力値(ここでは酸
素濃度計が測定する酸素濃度出力信号の電圧値又は電流
値)と、PID調節計が出力する値(ここでは製品流量
値)との関係は次の第3式で示される。(但し収束時間
等に制限がない場合や、製品純度の安定性が重要でない
場合、もしくは一定濃度のヘリウム以外は回収精製しな
い場合には複数のパラメータ組、メンバーシップ関数組
は必ずしも必要ではない。)
【0033】
【数3】
【0034】上記第3式において、WはPID出力値
(製品流量、%)、Pは比例帯(%)、eは偏差(設定
酸素濃度と製品ヘリウム中の酸素濃度との差)、Tiは
積分時間(秒)、Tdは微分時間(秒)を表す。通常は
第3式に示すP、Ti及びTdを予め設定しておいて運
転制御する。
【0036】本発明では製品希ガスの濃度を測定する計
測器の出力を調節計に適合させるために充分考慮するの
が好ましい。例えば製品ヘリウム側の酸素濃度計の出力
を調節計に適合させるために、製品ヘリウムの酸素濃度
計出力は対数出力を用いることが望ましい。下記の表1
はあるPSA装置を使用した場合の酸素濃度と製品ヘリ
ウムの流量との関係を示し、Aは酸素濃度計のレンジを
0〜100%とし、Bは酸素濃度計のレンジを1ppm〜10
0 %とし、それぞれ通常の濃度比例の出力(4〜20m
A)に割り振った出力を示す。表1に示すように、酸素
濃度計のレンジを1ppm 〜100 %に割り振って対数出力
させた場合、低濃度側に於ける濃度計の出力を大きくと
ることができる。
【0037】
【表1】
【0038】酸素濃度のレンジ0〜100%を4〜20
mAに割り振ったAの場合、酸素濃度0.1%と1%との
間の酸素計出力の差は0.144mAであるのに比べ、酸
素濃度0.01%と0.1%との間の酸素計の出力差は
0.0144mAしかない。これは製品ヘリウムの濃度に
対応する酸素濃度計出力をそのままPID調節計に接続
した場合、上記第3式において同じ操作量を得ることが
できず、製品ヘリウムの濃度の設定値が数%以上の範囲
でなければ対応できないが、表1のBのように対数出力
させた場合の酸素計出力の差は、酸素濃度0.1%と1
%との間で2.67mA、0.01%と0.1%との間が
2.67mAというように、酸素濃度が低濃度側であって
も濃度計の出力を大きくとれるので、製品ヘリウムの純
度の高いところで濃度設定を細かく行う場合にも充分対
応することができる。
【0041】以上のような理由から製品ヘリウムの濃度
測定に用いる酸素濃度計は、連続的に測定可能でありレ
ンジが極度に広く、各濃度に対して対数出力が得られる
ジルコニア式酸素濃度計が好ましい。尚、ジルコニア式
酸素濃度計以外の磁気式酸素濃度計、ガルバニックセル
式酸素濃度計等でも、出力に信号変換器等を接続して出
力調整して使用すればよい。尚、原料ガス中のヘリウム
濃度を測定するための酸素濃度計は原料ガスに不純物と
して空気が混入している場合、0〜20%程度の酸素濃
度を測定可能なものであればよく、信号変換や出力等に
制限なく使用できる。これは前述したように、原料ガス
中のヘリウム濃度の測定は制御パラメーターを決めるた
めに行うことを主な目的とし、制御パラメーターはヘリ
ウムの濃度によって4〜5段階程度に分けているのにす
ぎず、原料ガス中のヘリウムの濃度がその中のどのグル
ープに入るのかを判別すればよいからである。
【0042】(C)装置停止時 ヘリウムの回収を続けて行き、ガスバッグ内の原料ガス
のヘリウムの濃度が低下してヘリウム濃度がゼロになる
まで運転することが可能であるが、原料ガス中のヘリウ
ム濃度が或る一定値以下になったら運転を停止してガス
バッグ内のヘリウムを放出するのが望ましい。上記の或
る一定値以下ヘリウム濃度とは、回収コストやユーテリ
ティコスト等を計算して適宜決定すればよいが、一般に
数%〜10%程度であってもヘリウムは非常に高価なガ
スであるため回収、精製して充分経済効果が得られる。
【0044】以上はヘリウムを例として本発明を説明し
てきたが、本発明方法及び装置はヘリウム以外にネオン
等の他の希ガスにも適用できるものである。
【0045】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図
1に示すようにPSA装置、ガスバッグ、酸素濃度計、
PID制御計、MFC装置及び切替えバルブを接続した
回収精製装置を構成し、PSA装置の開閉弁は電磁弁を
用い、各電磁弁の開閉はシークエンサーにより行なえる
ようにした。また、酸素濃度計、原料ガス圧縮機、真空
ポンプ、MFC等もシークエンサーにより自動起動が可
能なようにした。PSA装置の吸着塔は1塔当たり1.
43Kgの活性炭を充填し2塔用意した。酸素濃度計はジ
ルコニア式酸素濃度計を使用し、ジルコニアセルの起電
力を信号変換器を用いて酸素濃度の2ppm 〜100%が
信号電流で4〜20mAに対応するように出力信号を調整
し、PID調節計に出力信号(酸素濃度計のデータ)を
電送できるようにした。ガスバッグには原料ガスとなる
粗ヘリウム(ヘリウム濃度65%)を7m3 入れ、原料
ガス供給圧力を常時9kg/cm2 G に保ち、PSAを運転
させた。このとき製品ヘリウムの濃度を99.99%
(設定酸素濃度20ppm で、調節計設定入力値6.8m
A)に設定した。原料ガスバッグには新たに原料となる
ヘリウムガスを追加しなかった。この装置を用いた運転
結果を図3に示す。原料ヘリウム濃度によらず一定に高
純度ヘリウムが回収精製できたことが分かる。この時の
ヘリウム回収率は99%であり、初期の原料ヘリウムガ
ス濃度を変化させて運転を行っても回収率が98%を下
回ることはなかった。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように本発明の希ガスの高
収率回収精製方法は、上記の方法を採用したことによ
り、従来のPSA装置を用いた方法と比較して、希ガス
の回収率が高く、原料組成が変化しても製品ガスの組成
の変化がなく、常に一定の組成の希ガスを得ることがで
きる。
【0047】また本発明方法、原料ガス中の希ガス濃
度に応じて製品希ガス流量変化速度を変えて製品希ガス
流量の調節を行うことで、ハンチングや調節計の暴走を
抑え安定した運転が可能であり、更に収束時間、ウォー
ムアップ時間を短縮できる
【0048】本発明の希ガスの高収率回収精製装置は、
上記構成を採用したことにより原料ガス中の希ガスの組
成が変化しても、得られる製品希ガスの純度が変化する
ことなく、一定純度の希ガスを安価に製造することが可
能である。また精製度の高い高純度の希ガスも一定純度
で容易に得られる。
【0049】更に、本発明回収精製装置は従来のPSA
装置を用いたヘリウムガス回収精製装置等と比較して、
従来は廃棄されていたPSAからの排ガス中の粗希ガス
を再度回収して精製することが可能であり、大気中に放
出される希ガスは原料ガス圧縮機及び真空ポンプ等から
のメカニカルロスのみであり、希ガスの回収率を飛躍的
に向上させることができる。
【0050】また、本発明装置はPSA装置に比較的安
価で簡単な装置を付加するだけで、回収率が高く一定純
度の希ガスを安定的に得ることができ、PSAの利点を
損なわない効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希ガスの高収率回収精製装置の1例を
示す構成図である。
【図2】製品流量の変化と操作量の関係を説明するため
のグラフである。
【図3】実施例における本発明装置を用いた運転結果を
示すグラフである。
【図4】従来のPSAを用いたヘリウム回収精製装置の
例を示す構成図である。
【図5】ヘリウムPSA装置における製品ヘリウム流量
と製品ヘリウム中の酸素濃度との関係を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1:ガスバッグ、2:吸着塔、3:吸着塔、4:原料ガ
ス圧縮機、5:真空ポンプ、6:バッファタンク、7:
マスフローコントローラー(MFC)、8:原料ガス中
のヘリウム濃度を測定するための酸素濃度計、9:製品
ヘリウム濃度を測定するための酸素濃度計、10:調節
計、11:シークエンサー、12:導管、21,22,
23,24,31,32,33,34,35,36:開
閉弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧力揺動吸着分離装置を用いて希ガスを
    含む原料ガスから希ガスを回収し精製する方法におい
    て、圧力揺動吸着分離装置の排気ガスを原料ガスに混合
    しリサイクルしながら希ガスを回収する方法であって、
    製品希ガス中の希ガス濃度を常時測定し、上記希ガス濃
    度が一定になるように製品ガス流量を上記希ガス濃度に
    応じて常時調節し、原料ガス中の希ガス濃度に応じて、
    製品希ガス流量変化速度を変えて製品希ガス流量の調節
    を行うことを特徴とする希ガスの高収率回収精製方法。
  2. 【請求項2】 少なくとも2つの吸着塔を有する圧力揺
    動吸着分離装置の製品希ガスの取り出し側に希ガスの濃
    度を測定するための計測器を備え、原料ガス導入側に原
    料ガスを貯蔵し供給するための容器を有し、該容器には
    吸着塔からの排気ガスを導入可能に配管し、原料ガス中
    の希ガスの濃度を測定するための計測器を備え、且つ前
    記希ガス濃度を測定するための計測器からの希ガスの濃
    度情報を受けて、原料ガス中の希ガス濃度に応じて製品
    希ガス流量変化速度を変えて製品希ガス流量の調節を行
    うことが可能な開閉弁と装置全体を制御するためのシー
    クエンサーを備えることを特徴とする希ガスの高収率回
    収精製装置。
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