JP3383179B2 - 金属部材の疲労強度向上方法及び疲労強度が向上した金属部材 - Google Patents

金属部材の疲労強度向上方法及び疲労強度が向上した金属部材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属部材の疲労強
度向上方法、及び、疲労強度が向上した金属部材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】金属部材の疲労強度を向上させる方法と
して、従来より、窒化、浸炭焼入、高周波焼入等の表面
硬化法、ショットやグリッド等を投射するピーニング加
工法を実行し、金属部材の表層に残留圧縮応力を付与す
ることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した方法
とは異なる方法により、疲労強度を向上させ得る金属部
材の疲金属部材の疲労強度向上方法及び疲労強度が向上
した金属部材を提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記した課題
のもとに鋭意開発を進め、そして、変態により体積膨張
する金属材料を溶射して金属部材の表面に溶射層を形成
し、溶射層の冷却による収縮よりも、変態による体積膨
張を大きくすれば、溶射層に圧縮残留応力を付与でき、
これにより金属部材の疲労強度が改善できることを知見
し、試験で確認し、本発明を完成した。
【0005】即ち、請求項1に係る金属部材の疲労強度
向上方法。重量比で炭素を0.3〜2.0%を含むと共
に冷却に伴いマルテンサイト変態する組成を有し変態に
より体積膨張するFe−C系の溶射材料を含む金属材料
を用い、金属材料を溶射して、アルミ合金またはマグネ
シウム合金で形成された金属部材の表面に溶射層を積層
し、溶射層の冷却による収縮よりも、変態による体積膨
張を大きくすることにより、溶射層に圧縮残留応力が存
在する部位を形成し、溶射層においてアスペクト比(長
径/短径)が3未満の粒子を、溶射時における未溶融ま
たは半溶融の粒子とみなしたとき、未溶融または半溶融
の粒子とみなされた粒子は、前記溶射層において面積率
で20〜40%に設定されており、金属部材の疲労強度
を向上させることを特徴とするものである。
【0006】
【0007】請求項に係る金属部材の疲労強度向上方
法は、請求項において、溶射後に溶射層に対してサブ
ゼロ処理を実行し、溶射層における残留オーステナイト
のマルテンサイト化を図ることを特徴とするものであ
る。
【0008】
【発明の実施の形態】溶射層では、溶射の際の冷却によ
り凝固収縮が生じたり、凝固後の冷却により冷却収縮が
生じる。この結果、一般的には、溶射層には引張残留応
力が発生する。この点請求項1に係る方法によれば、溶
射層の冷却による収縮よりも、変態による体積膨張を大
きくすることにより、溶射層に圧縮残留応力が存在する
部位を形成する。本方法では、溶射の際に未溶融または
半溶融の粒子の割合を多くすることが好ましい。このよ
うにすれば、溶射の際に溶融粒子の割合が低下するた
め、溶射層における凝固収縮量が小さくなる。よって、
溶射層の冷却による収縮量よりも、変態による体積膨張
量を大きくするのに有利となる。従って溶射層における
変態に基づく体積膨張量が確保され、溶射層に圧縮残留
応力が存在する部位を形成するのに有利となる。
【0009】溶射層に圧縮残留応力が存在する部位が形
成されれば、その溶射層を表面に有する金属部材の疲労
強度が向上する。亀裂の進展抑制効果が高まるためと推
察される。溶射の際における未溶融または半溶融の粒子
の割合としては、金属部材の種類、溶射する金属材料に
もよるが、溶射層において占める面積率で20〜40%
程度とする
【0010】面積率が少ないと、圧縮残留応力の部位が
形成されにくい。面積率が40%を越えると、未溶融ま
たは半溶融の粒子の割合が過剰となり易く、溶射層の形
成が困難となり易い。溶射する金属材料としては、つま
り溶射材としては、鉄系材料を採用できるが、これにア
ルミ合金等の非鉄系材料を混合しても良い。溶射する金
属材料としては、溶射前の状態で、平均粒径は5〜25
0μm程度のものを採用できる。
【0011】溶射する金属材料が粉末である場合には、
平均粒径が相対的に大きい粒子(平均粒径80〜100
μm)と、平均粒径が相対的に小さい粒子(平均粒径2
0〜50μm)との混合粉末を用いることができる。こ
のようにすれば、溶射層において小さな粒子に大きい粒
子が混ざり、大きい粒子が溶射層の亀裂を停留させる停
留効果を期待し易い。
【0012】溶射する金属材料は、鉄系粉末とアルミ合
金等の非鉄系粉末との混合粉末で構成できる。この場合
には、溶射前の状態で、混合粉末を100%としたと
き、鉄系粉末は例えば20〜60%、特に35〜55%
または45〜50%にできるが、これに限定されるもの
ではない。本発明で用いる金属部材の材質としては、ア
ルミ合金、マグネシウム合金を採用る。金属部材とし
ては、ピストン等を採用できる。
【0013】本発明で形成する溶射層の厚みは、金属部
材の用途、溶射層の材質等にもよるが、例えば100〜
5000μm程度、特に200〜1000μm程度、更
に250〜500μm程度にできるが、これに限定され
るものではない。請求項に係る方法によれば、溶射さ
れる金属材料は冷却に伴いマルテンサイト変態する組成
であるため、マルテンサイト変態による体積膨張を期待
できる。
【0014】溶射で金属部材に被着した粒子の熱は、金
属部材に直ちに伝熱されるため、粒子は急冷され、従っ
て溶射層はマルテンサイト相の割合が多くなる。金属部
材がアルミ系合金のように熱伝導率が高い材料である場
合には、一般的には、溶射された粒子は一層に急冷され
易くなり、従ってマルテンサイト相が生成され易い。請
求項に係る方法によれば、溶射される金属材料は、重
量比で炭素を0.3〜2.0%を含むFe−C系の溶射
材料を含み、マルテンサイト変態による体積膨張を期待
するのに有利である。炭素が0.3未満であれば、良
好なる体積膨張量を期待できない。炭素が2.0%を越
えると、溶射する金属材料が粉末の場合には、粉末生成
が困難となる。Fe−C系のマルテンサイト相は硬質で
あるため、溶射層の耐摩耗性の向上も期待できる。上記
したFe−C系では、Cr、Mn、Siを含むことがで
きる。
【0015】文献(日本鉄鋼協会、鉄の熱処理、改訂5
版、63ページ)によれば、マルテンサイト変態による
体積膨張量は1.69×重量%Cで示されると、報告さ
れている。このように溶射される金属材料に含まれる炭
素含有量が増大すれば、体積膨張量の増加を期待でき
る。請求項に係る方法によれば、溶射後に溶射層に対
してサブゼロ処理が実行されるため、溶射層における残
留オーステナイトのマルテンサイト化が促進される。従
って、マルテンサイト変態による体積膨張量が確保され
る。サブゼロ処理は、液体窒素、ドライアイス等の冷媒
と溶射層とを接触させることにより実行できる。
【0016】
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を試験例に従って図面
を参照して説明する。 試験片 本実施例では、ピストンの溝底部を想定し、形状係数α
が1.83の切欠をもつ疲労試験用の試験片(JIS−
2274 1号試験片に準ずる)を金属部材として用い
た。この試験片を図1に示す。試験片の基材は、アルミ
展伸材(基本組成:Al−10wt%Si、添加元素:
Cu、Mg、Mn、Fe、神戸製鋼:KTM−10)と
した。展伸材を用いたのは、鋳造欠陥による影響をなく
すためである。試験片のうち被溶射面はRz=0.5μ
m以下とした。 溶射材料 溶射される金属材料である溶射材料は、鉄系粉末(平均
粒径=46μm、アトマイズ粉末)とアルミ合金系粉末
(平均粒径=55μm、アトマイズ粉末)との混合粉末
とした。混合粉末を100%としたとき、アルミ合金系
粉末は10wt%とした。
【0018】鉄系粉末の基本組成は、Fe−1wt%C
とした。アルミ合金系粉末の基本組成はAl−15wt
%Siとした。アルミ合金系粉末は、被溶射物である試
験片がアルミ合金であるため、溶射層と試験片との間に
おける熱膨張差の緩和を主眼として用いた。なお、鉄系
粉末とアルミ合金系粉末とを含む混合粉末のうち、粒子
径が同程度であれば、融点の差により、鉄系粉末よりも
アルミ合金系粉末は溶融粒子になり易いと考えられる。 溶射処理 HVOF(High Velosity Oxigen Fuel)溶射法を採用し
た。HVOF溶射法は超音速ガスフレーム溶射とも呼ば
れ、溶射粉末粒子は通常のプラズマ溶射に比較して高速
で飛行(一般的には、通常のプラズマ溶射に比較して数
倍と言われている)すると共に、溶射粉末の溶融温度が
通常のプラズマ溶射に比較して低いという特徴をもつ。
HVOF溶射法で溶射した溶射層は、気孔率が低く緻密
であり、密着力も大きい。図1(a)に示すハッチング
領域SAに溶射層を形成した。図1(b)は溶射層の断
面を模式的に示す。
【0019】溶射条件は次のようとした。 プロピレン:40リットル/分 酸素:45リットル/分 空気:80リットル/分 溶射層の膜厚:0.5mm なお試験片の平行部全体に膜厚2mmで溶射した後、膜
厚1.5mmまで機械加工し、更に中央部にU字形の溝
を加工した。その溝の底の部分の膜厚を溶射層の膜厚と
する。
【0020】なお、冶金の分野では焼入温度が高温すぎ
ると、かえって焼きがはいりにくいと言われている。こ
の点HVOF処理法を採用すれば、溶射粉末の温度が通
常のプラズマ溶射法に比較して低温となるため、マルテ
ンサイト変態の促進に有利と推察される。 疲労試験 溶射層を形成した試験片を用いて疲労試験を行った。こ
の試験はJIS−Z2274に基づいて行った。試験結
果を図2に示す。図2から理解できるように、溶射層を
形成した試験片の疲労限(繰り返し数107 回到達試験
片の最大値で表す)は、250MPa程度であった。こ
の試験片の溶射層の残留応力を測定したら、圧縮応力が
約100〜120MPa存在していた。
【0021】溶射層を形成していない試験片について
も、同様に疲労試験を行った。試験結果を図3に示す。
図3から理解できるように、溶射層を形成していない試
験片の疲労限は85MPaであった。更に、溶射層の厚
みを変化させた試験片について、疲労試験を行った。試
験結果を図4に示す。図4から理解できるように、溶射
層の厚みが0.1mmを越えると、疲労強度の改善効果
が大きくなる。即ち試験結果によれば、溶射層の厚みが
増大するにつれて、試験片の疲労限が増加する。溶射層
の厚みが約1mmのときには、疲労限は250MPa付
近、または、この値を越える。
【0022】試験片に係る溶射層を調べたところ、溶射
層を構成する粒子のうち、偏平化が進行していない粒子
は、溶射層のうち面積率で12%〜28%程度、特に2
0%程度であった。溶射される金属材料のうち溶射の際
に溶融化が大きく進行した粒子は、被溶射面への衝突に
より偏平化が進行し易い。このことから、偏平化が進行
していない粒子は、溶射の際において未溶融または半溶
融の粒子であると推察される。 サブゼロ処理 溶射層を形成した試験片に対して、サブゼロ処理を実行
した。この試験では前記した条件と同様な溶射条件で、
溶射層(厚み:0.5mm)を形成した。溶射粉末は前
記同様に鉄系粉末とアルミ合金系粉末とで構成されてい
る。但し鉄系粉末の組成は、Fe−1.5wt%Cとし
た。試験片に係る溶射層を調べたところ、偏平化が進行
していない粒子は、面積率で10%〜28%程度、特に
20%程度であった。
【0023】このような溶射層を形成した試験片を液体
窒素(77K)に5分間浸漬し、サブゼロ処理を実行し
た。そして、サブゼロ処理前の試験片、サブゼロ処理後
の試験片の双方について、同様に疲労試験を行った。試
験結果を図5に示す。サブゼロ処理前の試験片の疲労限
は210MPa程度であり、サブゼロ処理前の溶射層に
は残留オーステナイトが面積率で25%程度存在してい
た。これに対してサブゼロ処理後の試験片の疲労限は、
280MPa程度に上昇した。この値は鋼材に匹敵する
と考えられる。 面積率と応力との関係 溶射層における未溶融または半溶融の粒子の面積率と溶
射層における残留応力との関係について、試験した。試
験条件は前記したものと同様である。但し、鉄系粉末
は、平均粒径が60μmの第1粉末と、平均粒径が28
μmの第2粉末とを混ぜて用いた。大径の粉末粒子は熱
容量が大きく、溶射の際に未溶融または半溶融になり易
いことから、第1粉末と第2粉末との割合を調整するこ
とにより、未溶融または半溶融の粒子の面積率を変化で
きるからである。
【0024】この試験では、溶射層において未溶融また
は半溶融の粒子が占める面積率は、次のようして規定し
た。即ち、溶射層の顕微鏡写真を利用し、粒子のアスペ
クト比A(長径/短径)が3未満のもの(A<3)を、
未溶融または半溶融の粒子とみなし、これの面積率を画
像処理で求めた。残留応力は前述同様にX線にて測定し
た。
【0025】試験結果を図6に示す。図6から理解でき
るように、未溶融または半溶融の粒子の面積率が大きく
なるにつれて、溶射層における圧縮残留応力が増大する
傾向となる。未溶融または半溶融の粒子が占める面積率
が大きいと、凝固収縮量が小さくなる。そのため、凝固
収縮量よりも体積膨張量が大きくなり易く、圧縮残留応
力が増大するものと推察される。
【0026】なおこの試験では、残留応力が180MP
aの引張であった試験片を除いて、HVOF法により溶
射層を形成した。 面積率と疲労強度との関係 溶射層の厚みを0.5mmに設定した状態で、未溶融ま
たは半溶融の粒子の面積率と試験片の疲労強度との関係
について試験し、試験結果を図7に示す。図7に示すよ
うに、未溶融または半溶融の粒子の面積率が増加するに
つれて、試験片の疲労限が増加する。面積率が20〜4
0%では疲労限は250MPa程度となる。 面積率と溶射付着効率との関係 未溶融または半溶融の粒子の面積率と溶射付着効率との
関係について試験し、試験結果を図8に示す。図8に示
すように、未溶融または半溶融の粒子の面積率が増加す
るにつれて、溶射粉末の付着効率が低下する傾向があ
る。溶射の際に、未溶融または半溶融の粒子の割合が増
加すれば、溶射される粒子の溶融が不充分となり、被溶
射面に付着しにくくなるからである。 適用例 図9〜図10は適用例を示す。この例では、ガソリン用
またはディーゼル用の内燃機関に使用するアルミ合金
(Al−Si系)で形成したピストン1には、溶射処理
前にはリング状の溝11が形成されている。この溝11
は、傾斜角θ1をもつ傾斜面11aと、底面11cとを
もつ。
【0027】そして溶射ガン4により、溶射粉末を矢印
A1方向に噴出し、ピストン1の溝11に溶射層2を積
層し、溶射処理(HVOF処理)した。その後、溶射層
2に切削加工を施し、ピストンリング溝3を形成した。
ピストンリング溝3は、ピストンリングと摺動する摺動
面31、32と底面33とをもつ。この溶射層2に対し
ても前述同様にサブゼロ処理を施すことができる。
【0028】溝11の傾斜面11a及び底面11cは拘
束面として機能し得るため、溝11に積層された溶射層
2は拘束性が高い。そのため、サブゼロ処理により溶射
層2におけるマルテンサイト化が促進されて、溶射層2
における体積膨張量が増加すると、溶射層2における圧
縮残留応力の増加を期待できる。 (他の例)上記した記載から次の技術的思想も把握でき
る。 ○金属部材は拘束面をもち、拘束面付近に溶射層が形成
されていることを特徴とする各請求項に係る疲労強度向
上方法及び部材 ○金属部材本体に溶射層を積層して構成され、溶射層は
圧縮残留応力が存在する部位を有することを特徴とする
疲労強度が向上した金属部材。 ○変態により体積膨張する金属材料と、溝をもつピスト
ンとを用い、前記金属材料を溶射してピストンの溝に溶
射層を積層し、前記溶射層の冷却による収縮よりも、変
態による体積膨張を大きくすることにより、前記溶射層
に圧縮残留応力が存在する部位を形成することを特徴と
するピストンの溝の疲労強度向上方法及びピストン。
【0029】
【発明の効果】請求項1に係る疲労強度向上方法によれ
ば、溶射層の冷却による収縮よりも変態による体積膨張
を大きくすることにより、溶射層に圧縮残留応力が存在
する部位を形成する。そのため金属部材の疲労強度が改
善される。請求項に係る疲労強度向上方法によれば、
溶射される金属材料は冷却に伴いマルテンサイト変態す
る組成であるため、溶射層の冷却による収縮よりも、変
態による体積膨張を大きくするのに有利である。そのた
め金属部材の疲労強度を改善するのに有利である。
【0030】請求項に係る疲労強度向上方法によれ
ば、溶射される金属材料は、重量比で炭素を0.3〜
2.0%を含むFe−C系を含むため、良好なるマルテ
ンサイト変態が得られる。そのため金属部材の疲労強度
を改善するのに有利である。Fe−C系のマルテンサイ
ト相は硬質であるため、溶射層の耐摩耗性の向上も期待
できる。請求項に係る疲労強度残留オーステナイトの
マルテンサイト化を図る。そのため、マルテンサイト化
が促進され、溶射層の冷却による収縮よりも変態による
体積膨張を大きくするのに有利である。そのため金属部
材の疲労強度を改善するのに有利である。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【図1】試験片の正面図である。
【図2】溶射層を形成した試験片の疲労試験の結果を示
すグラフである。
【図3】溶射層を形成していない試験片の疲労試験の結
果を示すグラフである。
【図4】溶射層を形成した試験片の疲労限と溶射層の厚
みとの関係を示すグラフである。
【図5】サブゼロ処理を実行する前と実行した後におけ
る試験片の疲労限を示すグラフである。
【図6】未溶融または半溶融の粒子の面積率と残留応力
との関係を示すグラフである。
【図7】未溶融または半溶融の粒子の面積率と試験片の
疲労限との関係を示すグラフである。
【図8】未溶融または半溶融の粒子の面積率と溶射付着
効率との関係を示すグラフである。
【図9】ピストンの溝に溶射層を形成する際の工程図で
ある。
【図10】ピストンの溝に形成した溶射層付近の断面図
である。
【符号の説明】
図中、1はピストン(金属部材)、2は溶射層を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中野 敬章 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイ シン精機株式会社内 (72)発明者 恒川 浩一 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイ シン精機株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−62519(JP,A) 特開 昭56−169766(JP,A) 特開 昭56−102574(JP,A) 特開 平2−107754(JP,A) 特開 昭61−79718(JP,A) 特開 昭62−185826(JP,A) 特開 平1−111856(JP,A) 国際公開96/9421(WO,A1) 溶射便覧,日刊工業新聞社,1964年 5月31日,第912〜914頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 4/00 - 4/18 C21D 7/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で炭素を0.3〜2.0%を含むと
    共に冷却に伴いマルテンサイト変態する組成を有し変態
    により体積膨張するFe−C系の溶射材料を含む金属材
    料を用い、 前記金属材料を溶射して、アルミ合金またはマグネシウ
    ム合金で形成された金属部材の表面に溶射層を積層し、
    前記溶射層の冷却による収縮よりも、変態による体積膨
    張を大きくすることにより、前記溶射層に圧縮残留応力
    が存在する部位を形成し、前記溶射層においてアスペクト比(長径/短径)が3未
    満の粒子を、溶射時における未溶融または半溶融の粒子
    とみなしたとき、未溶融または半溶融の粒子とみなされ
    た粒子は、前記溶射層において面積率で20〜40%に
    設定されており、 前記金属部材の疲労強度を向上させることを特徴とする
    金属部材の疲労強度向上方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、溶射後に前記溶射層に
    対してサブゼロ処理を実行し、前記溶射層における残留
    オーステナイトのマルテンサイト化を図ることを特徴と
    する金属部材の疲労強度向上方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2のいずれかにおい
    て、前記溶射層の厚みは100〜5000μmであり、
    溶射される前記金属材料は、鉄系粉末とアルミ合金とが
    混合した混合粉末で構成されていることを特徴とする金
    属部材の疲労強度向上方法。
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溶射便覧,日刊工業新聞社,1964年 5月31日,第912〜914頁

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