JP3382423B2 - フェノール化合物のエステル化方法 - Google Patents

フェノール化合物のエステル化方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フェノール化合物
のエステル化方法に関する。さらに詳しくは、フェノー
ル化合物とカルボン酸塩化物またはカルボン酸無水物と
の反応によりフェノール化合物をエステル化する方法に
関するものである。本発明の方法で製造されるフェノー
ル化合物のエステル類は、エポキシ樹脂変性剤、エポキ
シ樹脂硬化剤等として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】フェノール類とカルボン酸塩化物また
は、カルボン酸無水物とを反応させ、フェノール化合物
をエステル化する方法としては、塩素系溶媒中で金属ナ
トリウム、ハロゲン化アンモニウム塩類のような触媒を
用い反応させる方法もあるが、生成物であるフェノール
化合物のエステルの収率が非常に低く、工業的に満足で
きる製造方法ではない。さらに、塩素系溶媒を使用する
ために廃液処理も問題となる恐れがある。また、ピリジ
ン、トリエチルアミン等のアミン系化合物を溶媒とする
方法が知られているが、この方法では、臭気や毒性の強
い溶剤を使用するため、安全・環境上特殊な設備を必要
とする等の著しい欠陥がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、取り扱いが
容易な特定の溶媒とアルカリ金属水酸化物の存在下にお
いて、フェノール化合物とカルボン酸塩化物または、カ
ルボン酸無水物との反応により、高い収率および選択率
で目的とするフェノール化合物のエステルを製造するこ
とを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、 「1. フェノール化合物とカルボン酸塩化物または、
カルボン酸無水物との反応によりフェノール化合物をエ
ステル化する方法において、アルコール類とアルカリ金
属水酸化物の存在下に該反応を行うことを特徴とするフ
ェノール化合物のエステル化方法。 2. カルボン酸塩化物または、カルボン酸無水物とし
て塩化ベンゾイル、安息香酸無水物、またはそれらの誘
導体を使用することを特徴とする、1項に記載されたフ
ェノール化合物のエステル化方法。 3. カルボン酸塩化物またはカルボン酸無水物をエス
テル化するフェノール性水酸基1モルに対し0.3〜
2.0モル使用する、1項または2項に記載されたフェ
ノール化合物のエステル化方法。 4. アルコール類としてメタノール、エタノール、1
−プロパノール、および2−プロパノールから選ばれた
少なくとも一種類のアルコール類を使用することを特徴
とする、1項ないし3項のいずれか1項に記載されたフ
ェノール化合物のエステル化方法。 5. アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウム、
または水酸化カリウムを使用することを特徴とする、1
項ないし4項のいずれか1項に記載されたフェノール化
合物のエステル化方法。 6. アルコールの使用量が、フェノール化合物の総重
量に対して30〜300重量%である、1項ないし5項
のいずれか1項に記載されたフェノール化合物のエステ
ル化方法。 7. アルカリ金属水酸化物の使用量が、エステル化す
るフェノールの水酸基1モルに対し0.8モルないし
2.0モルである、1項ないし6項のいずれか1項に記
載されたフェノール化合物のエステル化方法。」に関す
る。
【0005】本発明によれば、フェノール化合物とカル
ボン酸塩化物または、カルボン酸無水物との反応により
フェノール化合物をエステル化する方法において、アル
コール類とアルカリ金属水酸化物存在下に該反応を行う
ことを特徴とするフェノール化合物のエステル化方法が
提供される。本発明の方法における原料物質は、フェノ
ール化合物とカルボン酸塩化物または、カルボン酸無水
物である。本発明で用いられるフェノール類としては、
例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロ
ピルフェノール、ブチルフェノール、臭素化フェノー
ル、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノール
F、レゾルシン、ハイドロキノン、ジヒドロキシナフタ
レン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テト
ラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック樹
脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボ
ラック樹脂、ジシクロペンタンジエンフェノール樹脂、
テルペンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、
ナフトールノボラック樹脂、臭素化フェノールノボラッ
ク樹脂などの種々の多価フェノール類や、種々のフェノ
ール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアル
デヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との
縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等があげられ
る。また、これらのフェノール類は2種類以上を併用す
ることもできる。
【0006】本発明で用いられるカルボン酸塩化物また
は、カルボン酸無水物は塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイ
ル、ニトロ塩化ベンゾイル、塩化塩素化ベンゾイル、塩
化臭素化ベンゾイル、塩化アセチル、臭化アセチル、塩
化プロピオニル、塩化ピバロイル、塩化ブチル、塩化ア
クリロイル、塩化メタクリロイル、無水安息香酸、無水
酢酸等を挙げることができる。それらのカルボン酸塩化
物または、カルボン酸無水物の中では、塩化ベンゾイ
ル、安息香酸無水物、またはそれらの誘導体を用いた場
合には、他のエステル化方法では、エステル化が困難な
ため、本発明のエステル化方法が特に有効である。
【0007】上記のフェノール化合物とカルボン酸塩化
物または、カルボン酸無水物を反応させる際の量比は、
目的のエステル化率に応じて変化させる必要があるが、
通常フェノール化合物中のエステル化したいフェノール
性水酸基1モルに対してカルボン酸塩化物または、カル
ボン酸無水物が0.3〜2.0モル、好ましくは、0.
5〜1.5モルである。カルボン酸塩化物または、カル
ボン酸無水物の使用量がこれ以上になると未反応物が増
大し、生産性が低下するので実用的でない。
【0008】本発明においては、上記フェノール化合物
とカルボン酸塩化物または、カルボン酸無水物との反応
を、アルコール類とアルカリ金属水酸化物の存在下で実
施することが重要である。本発明において用いられるア
ルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、
1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノー
ル、2−ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、およびグリ
コールエーテル類等を挙げることができる。これらのア
ルコール類の中では、メタノール、エタノール、1−プ
ロパノール、2−プロパノールが好ましい。本発明で用
いられるアルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
アルコール類の使用量は、フェノール化合物の総重量に
対して30〜300重量%、好ましくは50〜250重
量%の範囲である。アルカリ金属水酸化物の使用量は、
通常フェノール化合物中のエステル化したいフェノール
性水酸基1モルに対して0.8〜2.0モル、好ましく
は1.0〜1.5モルである。アルカリ金属水酸化物の
使用量が0.8モル未満では反応が十分に進行せず、ま
た2.0モル以上使用してもその効果に変わりはなく、
最終生成物の精製操作が複雑となる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の方法では、フェノール化
合物、アルカリ金属水酸化物、およびアルコール類を一
括して反応器に仕込み、撹拌しながらカルボン酸塩化物
または、カルボン酸無水物を反応器に連続的に供給する
方法で作ってもよい。また、フェノール化合物、カルボ
ン酸塩化物または、カルボン酸無水物、およびアルコー
ルを仕込み、アルカリ金属水酸化物を供給する方法で反
応させてもよい。
【0010】反応温度は、30〜150℃、好ましくは
50〜100℃の範囲である。反応時間は、原料の種類
や反応温度等の反応条件の違いによって異なるが、通常
は1〜24時間である。本反応においては、脂肪族炭化
水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケ
トン類、エーテル類、非プロトン性極性溶媒のような不
活性な溶媒を使用してもよい。また、反応系中に水が存
在してもよい。さらに本反応においては、相間移動触媒
等のような反応触媒を使用してもよい。本発明のフェノ
ール化合物のエステル類をエポキシ樹脂変性剤やエポキ
シ樹脂の硬化剤として用いる場合には、必要に応じて得
られたフェノール化合物のエステルを精製することもで
きる。精製方法としては、減圧蒸留、再結晶、液−液抽
出を挙げることができる。
【0011】このようにして製造されるフェノール化合
物のエステルは、例えば、フェノール化合物としてフェ
ノールノボラック樹脂を、カルボン酸塩化物として塩化
ベンゾイルを用いた場合は、下記の構造式で表される繰
り返し単位を持つ化合物(化合物の混合物)である。
【0012】
【化1】
【0013】(式中mは、1〜10の整数であり、n
は、0または1〜10の整数である。また、m+nは、
2以上である。)
【0014】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を
さらに具体的に説明する。
【0015】実施例1 温度計、ジムロート冷却器を備えた1000ミリリット
ルセパラブルフラスコに、フェノールノボラック樹脂9
2.7g (0.9mol )、2−プロパノール108.2
g (1.8mol )、水酸化ナトリウム36.0g (0.
9mol )、水300g を仕込み、撹拌しながら約70℃
で加熱溶解した。そこへ塩化ベンゾイル140.6g
(1.0mol )を1時間かけて滴下した。その後さらに
80℃、常圧下で4時間撹拌を行った。反応混合物から
溶媒を100℃で蒸留除去した後、残留物にメチルイソ
ブチルケトン(MIBK)621g を加え溶解した。こ
の溶液を約70℃で温水を加えて洗浄し水層を分離し
た。浄液が中性になるまで行った。水およびMBIKを
常圧蒸留によって除去し、黄褐色の樹脂状生成物186
g を得た。ベンゾイル化率を測定するために、生成物を
ピリジン中でアセチル化した後、水酸化ナトリウムで滴
定して、残存する水酸基含量を測定し、ベンゾイル化率
を算出した。この測定結果から生成物のフェノールベン
ゾイル化率が100%であることを確認した。また、生
成物のIRスペクトルおよびHPLC分析により、生成
物がフェノールノボラック安息香酸エステルであること
を確認した。
【0016】実施例2 フェノールノボラック樹脂と2−プロパノールの代わり
にビスフェノールA102.8g (0.9eq)とエタノ
ール83g を使用した以外は、実施例1と同様にして反
応および後処理を行い、黄色のビスフェノールA安息香
酸エステル196g (ベンゾイル化率100%)を得
た。
【0017】実施例3 2−プロパノールと水酸化ナトリウムの代わりに2−ブ
タノール133g と水酸化カリウム50.5g (0.9
mol )を使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応お
よび後処理を行い、黄褐色のフェノールノボラック安息
香酸エステル182g (ベンゾイル化率95%)を得
た。
【0018】実施例4 塩化ベンゾイルの代わりに無水安息香酸137.8g
(0.6mol )を使用した以外は、実施例1と同じ条件
で反応および後処理を行い、黄褐色のフェノールノボラ
ック安息香酸エステル140g (ベンゾイル化率50
%)を得た。
【0019】実施例5 塩化ベンゾイルの代わりに無水酢酸102.9g (1.
0mol )を使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応
および後処理を行い、黄色のフェノールノボラック酢酸
エステル103.5g (アセチル化率100%)を得
た。
【0020】比較例1 温度計、ジムロート冷却器を備えた1000ミリリット
ルセパラブルフラスコに、フェノールノボラック樹脂9
2.7g (0.9mol )、水酸化ナトリウム36.0g
(0.9mol )、水150g 、塩化ベンジルトリエチル
アンモニウム0.046g (フェノールノボラック樹脂
に対して500ppm )を加えて加熱溶解した後50℃に
保った。そこへ塩化ベンゾイル140.6g (1.0mo
l )とクロロホルム225g の混合物を1時間かけて滴
下した。滴下終了後50℃で8時間熟成させた。反応終
了後MIBK435g を加えた後、水を加えて撹拌洗浄
しクロロホルム−水層を除去した。MBIKを常圧蒸留
によって除去し、黄褐色の樹脂状生成物130.2g を
得た。この生成物のベンゾイル化率を測定したところ4
0%であった。
【0021】比較例2 クロロホルムと塩化ベンゾイルの代わりに、四塩化炭素
239g と無水酢酸102.9g (1.0mol )を使用
した以外は、比較例1と同じ条件で反応および後処理を
行い、黄色の樹脂状生成物を106g を得た。この生成
物のアセチル化率を測定したところ35%であった。以
上の実施例および比較例から明らかなように、取り扱い
容易なアルコール類とアルカリ金属水酸化物を用いるこ
とにより、高い収率および選択率で目的とするフェノー
ル化合物のエステル類を製造することができる。
【0022】
【発明の効果】本発明の方法によれば、フェノール化合
物とカルボン酸塩化物、またはカルボン酸無水物からエ
ポキシ樹脂変性剤やエポキシ樹脂硬化剤に適したフェノ
ール化合物のエステル類を工業的に有利な条件で高収率
および高選択率で製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中西 義則 三重県四日市市塩浜町1番地 油化シェ ルエポキシ株式会社 開発研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−14526(JP,A) 特開 平8−217721(JP,A) 特開 昭61−286346(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 67/08 C07C 69/013 C07C 69/78 C08G 59/62

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェノール化合物とカルボン酸塩化物ま
    たは、カルボン酸無水物との反応によりフェノール化合
    物をエステル化する方法において、アルコール類とアル
    カリ金属水酸化物の存在下に該反応を行うことを特徴と
    するフェノール化合物のエステル化方法。
  2. 【請求項2】 カルボン酸塩化物または、カルボン酸無
    水物として塩化ベンゾイル、安息香酸無水物、またはそ
    れらの誘導体を使用することを特徴とする、請求項1に
    記載されたフェノール化合物のエステル化方法。
  3. 【請求項3】 カルボン酸塩化物またはカルボン酸無水
    物をエステル化するフェノール性水酸基1モルに対し
    0.3〜2.0モル使用する、請求項1または2に記載
    されたフェノール化合物のエステル化方法。
  4. 【請求項4】 アルコール類としてメタノール、エタノ
    ール、1−プロパノール、および2−プロパノールから
    選ばれた少なくとも一種類のアルコール類を使用するこ
    とを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記
    載されたフェノール化合物のエステル化方法。
  5. 【請求項5】 アルカリ金属水酸化物として水酸化ナト
    リウム、または水酸化カリウムを使用することを特徴と
    する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載されたフ
    ェノール化合物のエステル化方法。
  6. 【請求項6】 アルコールの使用量が、フェノール化合
    物の総重量に対して30〜300重量%である、請求項
    1ないし5のいずれか1項に記載されたフェノール化合
    物のエステル化方法。
  7. 【請求項7】 アルカリ金属水酸化物の使用量が、エス
    テル化するフェノールの水酸基1モルに対し0.8モル
    ないし2.0モルである、請求項1ないし6のいずれか
    1項に記載されたフェノール化合物のエステル化方法。
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DE102010034244A1 (de) * 2010-08-13 2012-02-16 Clariant International Limited Verfahren zur Herstellung von Acyloxybenzoesäuren

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