JP3377963B2 - 射出成形機用振動付与装置 - Google Patents

射出成形機用振動付与装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は射出成形機に付属す
る振動付与装置に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者らは、先に特願平09−336
013号「スクリュー式射出装置の制御方法」で、溶融
材料に低周波振動を付与する技術を提案した。この技術
のうちニードル弁機構を、次図で説明する。図8は先に
提案したニードル弁機構の拡大断面図(特願平09−3
36013号の願書に添付した図2)であり、ニードル
弁機構30は、加熱筒11と先端ノズル18とを繋ぐブ
ロック19に捩じ込むガイド32と、このガイド32に
ブラケット33を介して連結した親シリンダ34と、こ
の親シリンダ34に挿入した親ピストン35と、この親
ピストン35に一体形成した子シリンダ37と、この子
シリンダ37に挿入した子ピストン38と、この子ピス
トン38から前後に延ばした前・後ピストンロッド4
1,42と、これらのピストンロッド41,42に挿入
し且つブッシュ43,43でピストンロッド41,42
に固定した長ロッド44と、この長ロッド44の先端に
形成したニードル31と、長ロッド44の後端に取付け
た振幅調整ナット46とからなる。
【0003】図8はニードル31が開いている状態を示
すが、この状態から、親シリンダ34に対して親ピスト
ン35を矢印の通りに前進させると、ニードル31で
先端ノズル18を閉じることができる。従って、親シリ
ンダ34と親ピストン35とによって、先端ノズル18
の開閉を実施することができる。
【0004】また、図8のようにニードル31が開いた
ままで、子シリンダ37に対して子ピストン38を矢印
の通りに往復させることができる。ただし、前進限に
おいてもニードル31が流路を塞ぐことはない。従っ
て、ニードル31は中開状態で付近の溶融材料を振動さ
せることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記矢印の通りにニ
ードル31を往復させることで、ニードル31の先端で
溶融材料に低周波の振動を付与することができる。しか
し、子ピストン38を油圧制御にて小刻みに往復させる
構成としたため、油圧回路に高価なサーボ弁を介在させ
なければならず、且つサーボ弁をサーボ制御するため、
制御回路並びに制御装置が高価なものとなる。対象とす
る溶融材料の種類が変われば、振動数を変える必要があ
り、振動数の変更もサーボ制御を難しくする要素とな
る。そこで、本発明の目的はより簡単に振動数を変更す
ることができ、且つ簡単な制御で済ませることができる
振動付与装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1では、加熱筒に蓄えた溶融材料に振動を付与
して成形性の改善を図るために射出成形機に付属する振
動付与装置において、この振動付与装置は、先端が加熱
筒内に且つノズル近傍に臨ませたロッドと、このロッド
を往復移動可能に支えるガイドと、ロッドを往復動させ
る偏心カムを備えた回転軸と、この回転軸を廻すモータ
と、から射出成形機用振動付与装置を構成する。
【0007】モータで偏心カムを廻し、この偏心カムで
ロッドを、偏心カムの偏心量の2倍の距離を往復させ
る。回転数に比例した振動数でロッドを往復させること
ができる。振動数を変更するにはモータの回転数を変更
すればよい。従って、複雑な制御を行うことなしに、単
にモータの回転数を制御するだけで、ロッドの振動数を
制御することができる。さらに振動付与装置は、ロッド
と偏心カムと回転軸とモータとで構成したので、構成が
簡単であり、装置コストを容易に低減することができ
る。
【0008】請求項2では、ロッドはノズルを塞ぐ弁を
兼ね、ロッドと偏心カムとの間に、ロッドをノズル閉位
置からノズル開位置まで移動させる弁開閉シリンダを介
設したことを特徴とする。
【0009】溶融樹脂の成形性を高めるには、弁開閉シ
リンダにて、ロッドをノズル開位置に移動し、次にロッ
ドを振動させる。射出前にノズルを閉じる必要があると
きには、弁開閉シリンダにて、ロッドをノズル閉位置に
移動して、ロッドでノズルを塞ぐ。ロッドを弁と兼用
し、ノズル閉塞機構と樹脂に振動を付与する装置とを一
体化したので、ノズル閉塞機構と振動付与装置とを各々
設けるのに比較して、装置全体のコンパクト化が図れ
る。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基
づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見る
ものとする。さらに、従来の技術の説明で11番〜46
番の符号を使用したので、発明の実施の形態では、50
番以降の符号を使用する。
【0011】図1は本発明に係る振動付与装置を備えた
射出成形機の要部平面断面図であり、射出成形機50
は、加熱筒51にスクリュー52を回転自在に且つ往復
移動可能に取付け、このスクリュー52を急速前進させ
ることで、加熱筒51の先端のノズル53から溶融樹脂
を射出する装置であり、加熱筒51に振動付与装置60
を備えていることを特徴とする。この振動付与装置60
を以下に詳しく説明する。
【0012】図2は図1の2−2線断面図(ただし加熱
筒は不図示)であり、振動付与装置60は、ロッド61
と、このロッド61を往復移動可能に支える筒型のガイ
ド62と、リング部63及びストレート部64からなる
連結リンク65と、この連結リンク65を前記ロッド6
1に結合するピン66と、連結リンク65のリング部6
3に内蔵するベアリング67と、このベアリング67に
内蔵した偏心カム68と、この偏心カム68を備えた回
転軸69と、この回転軸69をプーリ71、ベルト7
2、プーリ73を介して廻すモータ75と、からなる。
【0013】なお、76はハウジングであり、このハウ
ジング76に連結リンク65、偏心カム68及び回転軸
69を収納する。また、回転軸69は図示せぬ軸受でハ
ウジング76に回転自在に取付けてあるものとする。ま
た、Cは回転軸の中心、Mは偏心カムの中心、δは偏心
量である。
【0014】以上の構成からなる振動付与装置の作用を
次に述べる。図3(a)〜(c)は偏心カムの作用説明
図である。(a)はロッド61が最も後退したときの状
態図である。偏心カム68に付した二重丸は便宜上付し
たマーク77である。ここで、回転軸69を矢印のごと
く時計方向に廻し始めると、偏心カム68とともにマー
ク77も廻り始める。(b)はロッド61が中立(中
間)位置にあるときの図であり、回転軸69、偏心カム
68ともに90°回転し、この結果、ロッド61はδだ
け前進したことになる。そして、引き続き回転軸69を
時計方向に廻す。
【0015】(c)は、ロッド61が最も前進したとき
の状態図であり、マーク77を見れば、前記(a)より
180°、(b)より90°進んだことが分かる。そし
て、偏心カム68が同様に廻った結果、ロッド61は
(b)より更にδ前進したことを示す。この様にして回
転軸69を介して偏心カム68を回転することにより、
片振幅δ、全振幅2δの振幅で、ロッド61は往復移動
(振動)し、ロッド61の往復速度、すなわち振動数は
回転軸69の回転速度、すなわち回転数に正比例するこ
とが分かる。
【0016】図4は本発明に係るロッドの作用説明図で
あり、加熱筒51内の溶融樹脂79にロッド61で振動
を付与する。溶融樹脂79としてPMMA(ポリメチル
メタクリレート)及びPC(ポリカーボネート)を例に
粘度の推移を説明する。PMMAは、240℃に保って
各種の振動をさせると、0ヘルツで126×103ポア
ズであったものが、5ヘルツでは65×103ポアズ、
30ヘルツでは14×103ポアズ、55ヘルツでは9
×103ポアズになった。また、PCは、0ヘルツで6
3×103ポアズ、15ヘルツで26×103ポアズ、4
0ヘルツで15×103ポアズであった。
【0017】従って、少なくとも5ヘルツ(好ましくは
15ヘルツ以上)、大きくとも40ヘルツで溶融樹脂7
9を振動させることで、十分に低い粘度を得ることがで
きる。そして、振動数を変更するには、単にモータの回
転数を変更すればよい。モータが交流電動モータであれ
ば、汎用のVVVF(電圧変更・周波数変更)制御箱で
回転数を自在に変更することができる。
【0018】本発明に係る振動付与装置の第2実施例を
次に説明する。図5は本発明に係る振動付与装置(第2
実施例)の断面図であり、この振動付与装置60Bは、
図2で説明した振動付与装置60に弁開閉シリンダ81
及びサブ連結リンク82を付加したものであり、その他
は図2と同様であるから符号を流用する。すなわち、振
動付与装置60Bは、ロッド61と連結リンク65との
間に、弁開閉シリンダ81及びサブ連結リンク82を介
在させたことを特徴とし、その結果、振動付与装置60
Bは、ロッド61、ガイド62、弁開閉シリンダ81、
サブ連結リンク82、連結リンク65、ベアリング6
7、偏心カム68、回転軸69、モータ75及びハウジ
ング76からなる装置である。この様な振動付与装置6
0Bの作用を次に述べる。
【0019】図6は本発明の振動付与装置(第2実施
例)の第1作用説明図である。射出成形機は、射出工
程、可塑化・計量工程、待機工程を1サイクルとし、こ
のサイクルを繰り返す装置である。可塑化・計量工程は
加熱筒内に樹脂材料を所定量投入し、加熱溶融する工程
であり、待機工程は射出を開始するまで待機するもので
あり、これらの可塑化・計量工程及び待機工程では加熱
筒先端のノズルを塞いでおくことは、溶融樹脂の洩れを
防止する上から望ましいことである。そこで、ノズル5
3を閉じておく必要があるときには、図6において、弁
開閉シリンダ81の第2ポート84から圧油を供給し、
ピストン85を前進させ、ロッド61を前進させ、この
ロッド61の先端でノズル53を塞ぐ。これで、溶融樹
脂79がノズル53から洩れる心配はなくなる。
【0020】図7(a),(b)は本発明の振動付与装
置(第2実施例)の第2作用説明図である。成形性の改
善を目的に溶融樹脂に振動を付与する必要があれば、次
の手順を実施する。 (a):先ず、弁開閉シリンダ81の第1ポート86か
ら圧油を供給し、ピストン85を後退させ、ロッド61
を後退させる。
【0021】(b):次に、偏心カム68を廻すこと
で、弁開閉シリンダ81を介してロッド61を矢印の
如く振動させ、溶融樹脂79に振動を付与する。このと
きに、ピストン85は後退限位置にあって移動すること
はないため、弁開閉シリンダ81は一種の剛体、すなわ
ち単なる伝動部材となる。そのために、弁開閉シリンダ
81はロッド61の往復移動(振動)を妨げることはな
い。
【0022】図5に示した振動付与装置(第2実施例)
60Bは、ロッド61を弁と兼用し、ノズル閉塞機構と
樹脂に振動を付与する装置とを一体化したものである。
仮に、ノズル閉塞機構と振動付与装置とを各々設けれ
ば、設置面積が約2倍となり、射出成形機が大型にな
り、高価なものとなる。この点、この実施例の振動付与
装置60Bは、ノズル閉塞機構と振動付与装置とを一体
化したものであるから、射出成形機をコンパクトにする
ことができ、装置コストを下げることも可能となる。
【0023】尚、図2において、モータ75をハウジン
グ76に載せ、モータ75の出力をプーリ71,73及
びベルト72を介して回転軸69に伝えたが、モータ7
5を回転軸69と同軸的に且つ直接結合することで、プ
ーリ71,73及びベルト72を省略することは差支え
ない。
【0024】また、本発明に係る振動付与装置60,6
0Bで溶融樹脂に、低周波振動を付与すると、粘度が低
下して流動性が高まり射出成形が容易になること、及び
配向性(成分の並びが揃うこと)が高まり成形品にソリ
や変形が出にくくなる。これらを、総合して「成形性の
改善」と称した。
【0025】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮
する。請求項1では、溶融材料に振動を付与して成形性
を向上させる振動付与装置を、ロッド、ガイド、偏心カ
ム、回転軸及びモータで構成したので、構成が簡単であ
り、装置コストを容易に低減することができる。またモ
ータで偏心カムを廻し、この偏心カムでロッドを、偏心
カムの偏心量の2倍の距離を往復させる。回転数に比例
した振動数でロッドを往復させることができる。振動数
を変更するにはモータの回転数を変更すればよい。従っ
て、複雑な制御を行うことなしに、単にモータの回転数
を制御するだけで、ロッドの振動数を制御することがで
きる。
【0026】請求項2では、ロッドはノズルを塞ぐ弁を
兼ね、ロッドと偏心カムとの間に、ロッドをノズル閉位
置からノズル開位置まで移動させる弁開閉シリンダを介
設したことを特徴とし、ノズル閉塞機構と樹脂に振動を
付与する装置とを一体化したので、ノズル閉塞機構と振
動付与装置とを各々設けるのに比較して、装置全体のコ
ンパクト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る振動付与装置を備えた射出成形機
の要部平面断面図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】偏心カムの作用説明図
【図4】本発明に係るロッドの作用説明図
【図5】本発明に係る振動付与装置(第2実施例)の断
面図
【図6】本発明の振動付与装置(第2実施例)の第1作
用説明図
【図7】本発明の振動付与装置(第2実施例)の第2作
用説明図
【図8】先に提案したニードル弁機構の拡大断面図(特
願平09−336013号の願書に添付した図2)
【符号の説明】
50…射出成形機、51…加熱筒、52…スクリュー、
53…ノズル、60,60B…振動付与装置、61…ロ
ッド、62…ガイド、68…偏心カム、69…回転軸、
75…モータ、79…溶融樹脂、81…弁開閉シリン
ダ、C…回転軸の中心、M…偏心カムの中心、δ…偏心
量。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−170318(JP,A) 特開 平7−285152(JP,A) 特開 昭59−35928(JP,A) 特開 平11−254494(JP,A) 実開 昭63−197113(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/23 B29C 45/46

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱筒に蓄えた溶融材料に振動を付与し
    て成形性の改善を図るために射出成形機に付属する振動
    付与装置において、この振動付与装置は、先端が加熱筒
    内に且つノズル近傍に臨ませたロッドと、このロッドを
    往復移動可能に支えるガイドと、前記ロッドを往復動さ
    せる偏心カムを備えた回転軸と、この回転軸を廻すモー
    タと、からなることを特徴とした射出成形機用振動付与
    装置。
  2. 【請求項2】 前記ロッドはノズルを塞ぐ弁を兼ね、ロ
    ッドと偏心カムとの間に、ロッドをノズル閉位置からノ
    ズル開位置まで移動させる弁開閉シリンダを介設したこ
    とを特徴とする請求項1記載の射出成形機用振動付与装
    置。
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