JP3375691B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、成形加工性、成形品外
観、機械的物性に優れた新規な熱可塑性樹脂組成物に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリプロピレン樹脂は成形加工性、靭
性、耐薬品性などに優れており、かつ低比重、安価であ
ることから従来から各種成形品やフイルム、シートとし
て広く利用されている。しかし、ポリプロピレン樹脂は
耐熱性、剛性、表面硬度、塗装性、接着性、印刷性等に
おいて難点がある。このような点が新規の用途開拓を阻
んできた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、ポリプロピレン樹脂の成形加工性、靭性、耐薬品
性、低比重などを損なわずに、成形品外観、機械的物性
に優れた新規な熱可塑性樹脂組成物を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、ポリプロピレ
ン樹脂(A)50〜99重量%と一般式(1)
【0005】
【化4】 (ここでR,Rは水素原子またはメチル基であ
る。)を5重量%以上含有するイミド化アクリル樹脂
(B)1〜50重量%からなる樹脂組成物100重量部
に対して、プロピレンの繰り返し単位数2〜1000個
あたりに後記の一般式(2)で表されるグリシジル基を
有するα−β不飽和カルボン酸誘導体単位1個を有する
変性ポリプロピレン(C)を0.5〜100重量部配合
することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関するもの
である。
【0006】本発明に用いられるポリプロピレン樹脂
(A)は、プロピレンのホモポリマーの他にプロピレン
と、たとえばエチレン、ブテン−1などのα−オレフィ
ンとを共重合させたブロックまたはランダムコポリマー
等を含む。ポリプロピレン樹脂の分子量は特にこだわら
ないが、3,000〜1,000,000が好ましく、
さらに、10,000〜500,000がより好まし
い。
【0007】本発明に用いられるイミド化アクリル樹脂
(B)の製造方法には特に制限はなく任意の方法を採用
することができる。たとえば、特開平2−153904
号のようにアクリル系アミドとメタクリル酸メチルをメ
タノール溶媒中でラジカル重合触媒の存在下に共重合す
るにあたり、アクリル系アミドに対して0.5〜10倍
モルのメタクリル酸メチルの一部を予めアクリル酸アミ
ドと混合し、その残りを供給しながら80〜150℃の
温度で共重合した後、塩基性触媒の存在下で80〜15
0℃の温度でイミド化反応を行い、共重合体中のアクリ
ル系アミド単位をグルタルイミド単位に実質的に完全に
変換する製造法、メタクリル樹脂とアンモニア、または
炭素原子数1〜20の第1級アミンを不活性ガス雰囲気
下、不活性溶媒中で180〜350℃、好ましくは20
0〜330℃の温度で反応させる製造法、あるいは特公
昭64−2603号記載のメタクリル樹脂とアンモニ
ア、または炭素原子数1〜10の第1級アミンとを溶解
性パラメータδが8.5〜15.0(cal/cm3
1/2 である非重合性溶媒の存在下に、100℃以上35
0℃未満の温度で反応させ、次いでその得られた反応生
成物から揮発性物質を分離する製造法などがあげらる
が、これらに限定されるものではない。
【0008】本発明に用いられる変性ポリプロピレン
(C)は、ポリプロピレン樹脂(A)50〜99重量%
と一般式(1)
【0009】
【化5】 (ここでR1 ,R2 は水素原子またはメチル基であ
る。)を5重量%以上含有するイミド化アクリル樹脂
(B)1〜50重量%からなる樹脂組成物100重量部
に対して、プロピレンの繰り返し単位数2〜1000個
あたりに、下記一般式(2)
【0010】
【化6】 (式中、Arはグリシジル基を少なくとも1個有するC
6 〜C23の芳香族炭化水素を示し、Rは水素原子または
メチル基を示す。)で表されるグリシジル基を持つ構造
単位1個を有する変性ポリプロピレンである。これは、
本発明の重要な構成要素で、分子内にそれぞれ少なくと
も1個のアクリルアミド基とグリシジル基を持つ変性剤
に由来する。アクリルアミド基とは、アクリルアミド基
の他にメタクリルアミド基も含む。このような変性剤
は、アクリルアミド基とグリシジル基を有しておれば特
に構造的に制限されるものではないが、一般式(4)
【0011】
【化7】 (式中、Arはグリシジル基を少なくとも1個有するC
6 〜C23の芳香族炭化水素を示し、Rは水素原子または
メチル基を示す。)で表される化合物が好適である。こ
のような化合物は、特開昭60−130580号に記載
されたような方法で製造することができる。
【0012】一般式(2)で表されるグリシジル基を持
つ構造単位は、下記の式(3)
【0013】
【化8】 で表されるものが例示される。
【0014】本発明で用いられる変性ポリプロピレンに
おいて、一般式(2)で示される構造単位はポリマーの
主鎖中にランダムに存在しても、またブロック等規則的
に存在しても、また分子末端に存在しても良いし、グラ
フトとして存在してもよい。変性ポリピロピレンの分子
量は特にこだわらないが、3,000〜1,000,0
00が好ましく、さらに、10,000〜500,00
0がより好ましい。
【0015】本発明に用いられる変性ポリプロピレンの
製造方法には特に制限はないが、以下に示す2つの方法
が好適に利用できる。
【0016】第1の製造法は、ポリプロピレンのグラフ
ト変性法であり、ポリプロピレンと、上記一般式(4)
で表されるグリシジル基を持つ変性剤との2成分からな
る組成物をラジカル開始剤を用いてラジカル付加するも
のである。この際に、ポリプロピレンを溶解ないし膨潤
させる溶媒、たとえば、テトラリン、デカリン、トルエ
ン、キシレンクロロベンゼン等を使用してもよい。ま
た、溶剤を使用せずに、押出機、ニーダー、加熱ロール
等の溶融混練装置を用いて、ポリプロピレンを溶融させ
た状態で反応させることもできる。
【0017】本発明で用いられる重合開始剤としては特
に制限はなく一般に用いられるラジカル重合開始剤が用
いられる。たとえば、クメンヒドロペルオキシド、第3
ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、
ラウロイルペルオキシド、デカノペルオキシド、アセチ
ルペルオキシドのようなペルオキシド系、あるいはアゾ
ビスイソブチルニトリルのようなアゾ化合物が単純また
は2種以上組み合わせて用いられる。
【0018】第2の製造法は、プロピレンと上記一般式
(4)で示されるグリシジル基をもつ変性剤を共重合さ
せる方法である。共重合方法には特に制限はなく、一般
的なラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法
の他、遷移金属を用いた配位重合法などを用いることが
できる。
【0019】本発明の樹脂組成物には、必要に応じてイ
ミド化アクリル樹脂(B)と変性ポリプロピレン(C)
を反応させる触媒(D)を添加させることができる。触
媒(D)としては特に制限はなく、請求項1の一般式
(1)で表現されるNH型グルタルイミド基、カルボン
酸、水酸基、エステル基とグリシジル基との反応を促進
する化合物の中から1種以上の組み合わせで選択される
が、好ましくは第3級アミン、4級アンモニウム塩等の
アミン系化合物、フォスフォニウム塩系化合物、フォス
フィン類等のリン系化合物あるいはイミダゾール系化合
物類等が用いられ、これらは単独または2種以上混合し
て用いられる。触媒(D)の使用量としてはポリプロピ
レン樹脂(A)とイミド化アクリル樹脂(B)の和10
0重量部に対して、0.002〜1重量部が好ましい。
また触媒(D)の添加方法は特に制限はないが、成分
(A),(B)、及び(C)を混合する際に均一に配合
する方法が好適である。
【0020】本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、
上記組成物以外に熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止
剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、難燃剤、有
機、無機の補強剤を添加してもよい。
【0021】本発明の樹脂組成物を製造する方法に特に
制限はなく、通常の公知の方法を用いることができる。
工業的には溶融状態で混練する方法が取られる。溶融混
練には、たとえば、各種押出機、バンバリーミキサー、
ロール、各種ニーダー等の公知の混練装置を用いること
ができる。
【0022】溶融混練する前に、各成分をあらかじめ均
一混合する方法が好ましい。均一混合にはタンブラーや
ヘンシェルミキサー等の公知の混合装置を用いることが
できる。但し必要な場合には混合を省き、混練装置に複
数の供給装置を設置し、それぞれ別々に定量供給するこ
ともできる。混練された樹脂組成物は射出成形、押出成
形その他各種の成形法によって成形されるが、本発明に
おいては、あらかじめ溶融混練過程を経ず、射出成形や
押出成形時にドライブレンドし、溶融加工時に直接混練
して成形加工品を得る方法をとってもよい。
【0023】本発明において混練順序に特に制限はな
く、(A)、(B)および(C)を一括混練してもよ
く、あらかじめ(A)と(B)とを混練し、続いて
(C)を混練してもよい。またその他の混練順序をとっ
てもよい。
【0024】
【実施例】以下に、本発明を実施例により説明するが、
本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0025】なお、以下の記載において、「部」および
「%」は特に断らない限り、それぞれ「重量部」および
「重量%」を意味する。
【0026】また、グラフト量とは変性ポリプロピレン
中に含まれる変性剤の重量%を意味し、さらにグラフト
反応率とはポリプロピレンの変性に利用した変性剤中、
ポリプロピレンに反応した変性剤の割合(重量%)を意
味する。
【0027】参考例1 変性ポリプロピレン(C−1)の合成は、ポリプロピレ
ン樹脂100部に対して、N−(4−(2,3−エポキ
シプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニルメチル)ア
クリルアミド5部、更にα,α′−ビス(t−ブチルパ
ーオキサイド−m−イソプロピル)ベンゼン 0.1部
を常温で加え混合し、2軸押出機を用いて、押出温度2
20℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量10k
g/hrsで押出した。押出反応物を水で冷却しペレッ
ト化した後、80℃で3時間除湿乾燥した。
【0028】得られた乾燥ペレットを120℃に加熱し
たキシレンに溶解した後、そのキシレン溶液をアセトン
中に滴下し変性樹脂を再沈澱させることにより未反応の
変性剤および変性剤の単独重合体を取り除き、再沈澱後
の変性樹脂中に含まれる窒素原子の元素分析値、および
FT−IR法によるエポキシ基の分析値から変性剤のグ
ラフト量を求めると3.7%で、グラフト反応率は78
%であった。
【0029】参考例2 変性ポリプロピレン(C−2)の合成は、ポリプロピレ
ン樹脂100部に対して、N−(4−(2,3−エポキ
シプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニルメチル)ア
クリルアミド10部、更にα,α′−ビス(t−ブチル
パーオキサイド−m−イソプロピル)ベンゼン 0.1
部を常温で加え混合したものを参考例1と同じ条件で押
出しペレット化し、乾燥した。得られた乾燥ペレットに
ついて、参考例1と同じ方法で変性剤のグラフト量を求
めると7.0%で、グラフト反応率は77%であった。
【0030】参考例3 イミド化アクリル樹脂の合成は2lオートクレーブを用
い、メタクリル酸メチル282g、メタクリルアミド1
52g、メタノール565g、ジ−t−ブチルパーオキ
サイド4.3gおよびn−オクチルメルカプタン0.7
gを加え、撹拌下に120℃へ昇温し共重合を開始し
た。重合の進行とともにメタクリル酸メチル400gを
3.0ml/分の速度で30分間、2.5ml/分の速
度で40分間、2.0ml/分の速度で50分間、1.
5ml/分の速度で60分間、最後に0.5ml/分の
速度で40分間と変化させながら連続的に供給して共重
合を6時間行った。引き続き同一装置、同一温度でナト
リウムメトキシド1.1gを含むメタノール溶液50m
lを定量ポンプを用いて供給し撹拌下で1.5時間反応
を行った。反応終了後、系内の温度が45℃となった時
に沈澱したポリマーを取り出し、メタノールで洗浄後1
30℃で1昼夜減圧乾燥を行い重合体を得た。この重合
体のグルタルイミド組成を200MHz核磁器共鳴スペ
クトルを用いグルタルイミドに特有な吸収3.57pp
mの積分強度をもとに算出したら、この重合体のイミド
環含有量は、35%であった。
【0031】実施例1〜2 ポリプロピレン樹脂、参考例3で示したイミド化アクリ
ル樹脂、変性ポリプロピレン(C−1,C−2)および
触媒(テトラブチルホスフォニウムプロマイド)を表1
の割合で混合し、2軸押出機を用いて、押出温度260
℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量20kg/
hrsで押出した。押出反応物を水で冷却した後ペレッ
ト化し、樹脂組成物を得た。
【0032】得られた樹脂組成物を熱圧縮成形機で金型
温度220℃にて成形板を作成し、この板より物性測定
用試験片を作成した。成形品外観、物性試験の結果を表
2に示す。
【0033】比較例1 ポリプロピレン樹脂100部の樹脂組成物である。
【0034】比較例2 ポリプロピレン樹脂97部とイミド化アクリル樹脂3部
を混合し、実施例1〜2と同条件でペレット状の樹脂組
成物を得た。
【0035】得られた樹脂組成物を熱圧縮成形機で金型
温度220℃にて成形板を作成し、この板より物性測定
用試験片を作成した。成形品外観、物性試験の結果を表
2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】表1,2から明らかなように、ポリプロピ
レン樹脂にイミド化アクリル樹脂と変性ポリプロピレン
を混合した樹脂組成物は、成形品の外観は良く、剛性も
高くなっている。
【0039】それに対して、ポリプロピレン樹脂とイミ
ド化アクリル樹脂を混合した樹脂組成物は、成形品の外
観は良くなっているが、剛性はさほど上昇していない。
【0040】
【発明の効果】以上のように、本発明の熱可塑性組成物
はポリプロピレン樹脂の成形品外観、機械的物性に優れ
たものである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリプロピレン樹脂(A)50〜99重
    量%と一般式(1) 【化1】 (ここでR,Rは水素原子またはメチル基であ
    る。)を5重量%以上含有するイミド化アクリル樹脂
    (B)1〜50重量%からなる樹脂組成物100重量部
    に対して、プロピレンの繰り返し単位数2〜1000個
    あたりに下記一般式(2) 【化2】 (式中、Arはグリシジル基を少なくとも1個有するC
    〜C 23 の芳香族炭化水素を示し、Rは水素原子また
    はメチル基を示す。)で表されるグリシジル基を有する
    α−β不飽和カルボン酸誘導体単位1個を有する変性ポ
    リプロピレン(C)を0.5〜100重量部配合するこ
    とを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 (C)に含まれるグリシジル基を持つ構
    造単位が下記式(3)で表される請求項記載の熱可塑
    性樹脂組成物。 【化3】
  3. 【請求項3】 更に、(B),(C)両成分を反応させ
    る触媒(D)を0.002〜1重量部配合してなる請求
    項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 触媒(D)がアミン系化合物、リン系化
    合物及びイミダゾール系化合物から選択される少なくと
    も1種である請求項記載の熱可塑性樹脂組成物。
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