JP3374932B2 - 熱陰極構造体 - Google Patents

熱陰極構造体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、各種イオン源や三極
スパッタリング装置等の熱電子源として用いられる熱陰
極構造体に関する。
【0002】
【従来技術】イオンビーム応用技術は半導体製造工程や
材料の表面改質等に利用されており、熱陰極を有する電
子衝撃型のイオン源が広く用いられている。これらの用
途では、イオンビームの大電流化および熱陰極の長寿命
化が望まれその解決策として端子部を絶縁材料で被覆す
るなどの構造を有する導電性セラミックスを発熱体とす
る熱陰極構造体が開示されている。(特開昭63-216232
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような構造を有する熱陰極構造体においても、熱電子放
射陰極が電極と接合している電極接合部付近で破壊する
という現象がしばしば発生し、熱陰極の寿命を著しく低
下させていた。
【0004】本発明は導電性セラミックスを材料とし、
熱電子放射部である発熱部と電極接合部からなる熱電子
放射陰極を用いた熱陰極構造体において、従来の熱陰極
の加熱特性を損なうことなく、かつ、電極接合部付近で
破壊することなく長時間使用可能である構造を有する熱
陰極構造体を提供することを目的とする。
【0005】
【問題を解決するための手段】すなわち、本発明は導電
性セラミックスからなり、らせん状の溝を持つ円筒形熱
電子放射陰極に於いて、熱陰極加熱時の温度勾配による
熱応力と、異部材間の熱膨張差による応力による接続部
付近での破壊を防ぐ為に以下の手段を用いた。
【0006】そこで、導電性セラミックスからなる、ら
せん状の溝を持つ円筒形の熱電子放射陰極を用い、円筒
形の一部をなす曲面の電極接合部に、該電極接合部の外
に接触する曲面を持つ電極と該電極接合部の内面に接
触する凸部を有する半円柱状ワッシャーとが接するよう
にする。さらに次の様な点を特徴とした熱陰極構造体と
した。 (1)熱電子放射陰極の円筒形の一部をなす電極接合部
の曲面が、電極の電極接合部に接触する曲面より大きく
する。 (2)電極接合部の厚みより発熱部の厚みを厚くする。(3) 円筒形熱電子放射陰極の電極接合部の外側と電極
に接する面の円筒軸と平行方向での延長上で電流導入端
子部と電極を固定する。(4)ワイヤーカット放電加工されたスリットを挟んで
2つの電極を隣り合うように配置する。
【0007】以下、本発明について、さらに詳細に説明
する。従来使用されている熱電子放射陰極を利用した熱
陰極構造体の構造を図2に示す。
【0008】本発明の熱陰極構造体に用いる熱電子放射
陰極の材料である導電性セラミックスとは、アルカリ土
類金属および原子番号57〜71までのランタン系元素
の中から選ばれた少なくとも1種以上の元素の六ホウ化
物の焼結体である。また、その熱電子放射陰極の形状
は、円筒形でらせん状の溝を持ったもので、例えば一端
が閉じられた2本の平行らせん巻き状の円筒からなり、
一端部に電極接合部を持った磁界フリー型構造で特に顕
著な効果を有する。
【0009】本発明でいう電極は、熱電子放射陰極と電
流導入端子部とを電気的に接続する役目があり、熱電子
放射陰極と密接に接合できる曲面と電流導入端子部と密
接に接合できる面を有している。例えば前記の一端が閉
じられた2本の平行らせん巻き状の円筒からなる磁界フ
リー型構造においては、電極の電極接合部との接する面
を、電極接合部の外径と同じ曲率の凹状の曲面にし、内
径と同じ曲率の凸状の曲面を有する半円柱状ワッシャー
を用いることにより、電極接合部を特殊な加工を施すこ
となくそのまま使用できるため、電極接合部の強度の低
下が無く特に顕著な耐熱応力効果を有する。円柱状ワッ
シャーを用いることが望ましいが、強度が許す範囲で電
極接合部の内面のみ平面に加工し、ボルトやナット等で
電極に固定することも可能である。その電極の材質は、
タングステン、モリブデン、タンタルなどの高融点金属
や、カーボンを使用できる。
【0010】また、電極に電極接合部の嵌まり合う溝を
形成し、導電性ペーストを用いて熱電子放射陰極と電極
を接続することでボルトやナット或いはワッシャーとい
った使用部品の点数を減少することで、熱応力の要因を
減少できる。ここで用いる導電性ペーストはカーボンペ
ーストや、溶媒に導電性フィラーを混ぜたもの、あるい
は非導電性ペーストに導電性フィラーを混ぜたものなど
が使用できる。
【0011】
【作用】熱電子放出陰極を発熱体とする熱陰極構造体
は、通電することにより発熱部が1000〜1600℃に加熱さ
れ、その発熱部の表面より熱電子が放射される。この発
熱部の輻射熱、伝導伝熱により、電極接合部、電極、電
流導入端子部、端子台およびボルトやナット等の治具の
温度が上昇する。
【0012】特に、熱電子放射陰極における電極接合部
や電極での温度は、1000℃近くなるのを初め、各部材の
温度はそれぞれ固有の物性と位置に応じて一様でない温
度分布を示し、個々の熱膨張率に応じて膨張する。この
ため、室温下で色々な部品を用いて組み立てられた熱陰
極構造体は、使用条件下で、複雑な応力を受ける。従っ
て、使用条件下で発生するこれらの複雑な応力に耐える
構造とすることは、熱陰極構造体を長寿命化するうえで
重要課題である。
【0013】図2に示すように従来の熱陰極構造体が熱
電子放射陰極21を電極24に接続するために電極24
の接続する面に対応する平面の電極接合部23を削り出
しており、熱電子放射陰極の円筒状の厚みより薄くせざ
るをえなかった。
【0014】本発明の熱陰極構造体では図1に示すよう
に円筒形の熱電子放射陰極11の外面に接触する凹部を
持つ電極14と内面に接触する凸部を持つ半円柱状ワッ
シャー16を用いることで、電極接合部13を従来の用
に削りだすこと無く熱電子放射陰極の円筒形状をそのま
ま使用可能となり、かつ、電極接合部の曲面は接してい
る電極の曲面より大きく取ることができるので従来の熱
陰極構造体に比較して電極接合部の強度低下が少なく歪
みによる破壊が防止できる。
【0015】また、本発明の熱陰極構造体では、図3に
示すように熱電子放射陰極の発熱部32の厚みより電極
接合部33の厚みを厚くすることによって電極接合部3
3の強度を高め、熱電子放射陰極31と電極34との熱
膨張率の差等に起因する応力による破壊を回避すること
ができる。
【0016】更に熱陰極構造体では、図4に示すように
円筒状の電極接合部43に嵌まり合う溝を有する電極4
4を使用し、電極接合部43を電極44の溝に導電性ペ
ーストを介して嵌め込むことで、熱電子放射陰極41と
電極44の接続に使用する部品点数を少なくすることが
可能となり、個々の部品の特性に起因する複雑な応力を
回避できる。
【0017】また本発明の熱陰極構造体では、図5に示
すように、電流導入端子部55の下端が固定されて使用
される場合、電極の熱膨張が熱電子放射陰極に影響を及
ぼす。そのため円筒形の熱電子放射陰極51の電極接合
部53と電極54の接続する面の延長上に電極導入端子
部55と電極54部の固定点57がくることにより、電
極54の形状叉は大きさに起因する熱膨張による応力を
回避できる。
【0018】更に本発明の熱陰極構造体では、図6に示
すように電極接合部63の溝を挟んで2つの電極64が
近くに隣あうように配置することにより、円筒形の熱電
子放射陰極61の横方向への熱膨張に起因する応力を弱
めることができる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面に従って
具体的に説明する。図1は、本発明の熱陰極構造体の1
実施例を示す図である。熱気孔率約10%のLaB6焼結体
を用いてワイヤーカット放電加工法にて、外径10m
m、内径7mm、長さ35mmの発熱部12と長さ5m
mの電極接続部13からなる2本の平行らせん巻き状
で、円筒状の電子放射陰極11を製作した。円筒状の電
子放射陰極11の電極接続部13の外面に接触する外径
10mmの円柱状の凹部を持つカーボン製の電極部14
と、電極接続部13の内面に接触する凸部を持つカーボ
ン製の半円柱状ワッシャー16を用い、モリブデン製の
ネジとナット、タンタル製のワッシャーで熱電子放射陰
極11と電極14を固定し熱陰極構造体とした。
【0020】上記で得られた熱陰極構造体を1×10-5
Torrの真空中において、ヒートサイクル試験を行った。
ヒートサイクル試験は、2分間の通電加熱と、10分間
の冷却を1サイクルとした。また通電加熱温度は155
0℃とした。その結果、試験体は、128回のサイクル
終了後も何等異常は認められなかった。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、熱電子放射陰極の電極
接合部付近の熱応力による割れの発生が無い長寿命の熱
陰極構造体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の熱陰極構造体の構造を示す正
面図と平面図ある。
【図2】従来の熱陰極構造体の構造を示す正面図と平面
図である。
【図3】本発明の他の実施例の熱陰極構造体の構造を示
す部分破断面図である。
【図4】熱陰極構造体の構造を示す斜視図である。 (a)熱陰極構造体を示す斜視図。 (b)電極接合部と電極の接続方法を示す模式図。
【図5】本発明の他の実施例の熱陰極構造体の構造を示
す正面図である。
【図6】本発明の他の実施例の熱陰極構造体の構造を示
す斜視図である。
【符号の説明】
11、21、31、41、51、61 熱電子放射陰
極 12、22、32、42、52、62 発熱部 13、23、33、43、53、63 電極接合部 14、24、34、44、54、64 電極 55 電流端子導入
部 16 半円柱ワッシ
ャー 57 固定点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−19728(JP,A) 特開 昭63−216232(JP,A) 実開 昭63−22057(JP,U) 実開 昭63−127056(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 1/15 H01J 1/22 H01J 1/18

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性セラミックスからなり、らせん状の
    溝を持つ円筒形の熱電子放射陰極を用いた熱陰極構造体
    であって、円筒形の一部をなす曲面の電極接合部に、該
    電極接合部の外面に接触する曲面を持つ電極と該電極接
    合部の内面に接触する凸部を有する半円柱状ワッシャー
    が接していることを特徴とする熱陰極構造体。
  2. 【請求項2】電極接合部の曲面が、接している電極の電
    極接合部に接触する曲面と同じか、より大きいことを特
    徴とする請求項1記載の熱陰極構造体。
  3. 【請求項3】電極接合部の厚さが発熱部の厚さ以上であ
    ることを特徴とする請求項1記載の熱陰極構造体。
  4. 【請求項4】円筒形熱電子放射陰極の電極接合部の外側
    と電極に接する面の円筒軸と平行方向での延長上で電流
    導入端子部と電極を固定したことを特徴とする請求項1
    記載の熱陰極構造体。
  5. 【請求項5】ワイヤーカット放電加工されたスリットを
    挟んで2つの電極を隣り合うように配置することを特徴
    とする請求項1記載の熱陰極構造体。
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