JP3373372B2 - Si添加NiW2B2基合金および機械構造部材 - Google Patents

Si添加NiW2B2基合金および機械構造部材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Si添加NiW2
2 基合金および機械構造部材に係り、特に、例えば、
射出成形機や押出成形機のシリンダ、スクリュー、プラ
ンジャのような耐食性、耐摩耗性および強度が同時に要
求される各種機械部品の構成材料として優れた性質を有
するSi添加NiW2 2 基合金および機械構造部材に
関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形機や押出成形機の重要な構成部
品であるシリンダ、スクリュー、プランジャ等といった
部材は、高圧力、高速度で圧送される流動体に常に接触
するために、材料の機械的性質としては、耐食性、耐摩
耗性および高強度が要求される。
【0003】従来、この種の高耐食性、耐摩耗性機械部
品の材料として、(イ)Ni基自溶合金、(ロ)WC粒
子分散Ni基自溶合金、(ハ)Mo−Ni系複硼化物合
金、および(ニ)耐食、耐摩耗Ni基合金が使用されて
いる。
【0004】(イ)Ni基自溶合金は、Ni−Cr−B
−Si合金であり、窒化処理などの表面処理に較べて耐
食性、耐摩耗性に優れているため、鋼材表面の硬化材料
として広く用いられてきた。
【0005】(ロ)WC粒子分散Ni基自溶合金は、N
i−Cr−B−Si合金にWC粒子を微細に分散させた
合金であり、耐食性、耐摩耗性に優れているためプラス
チック成形機のバレル等の機械部品の材料として使われ
ている(特開昭62−197264号公報)。
【0006】また、(ハ)Mo−Ni系複硼化物合金
は、Mo2 NiB2 を主体とした硬質相をNi基の結合
相によって結合した合金であり、耐摩耗性材料として十
分な機械的性質だけでなく耐食性に優れているため、高
腐食環境下で使用される耐摩耗材料に適しているもので
ある(特公平5−5889号公報)。
【0007】さらに、(ニ)耐食、耐摩耗Ni基合金
は、Cr−Mo−W−V−B−Si−Ni合金であり、
耐食性、耐摩耗性を必要とする射出成形機、押出成形機
の各種構成部材として有用な合金材料である(特開平6
−57360号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の合金材料は、耐摩耗性のあるものは耐食性が不十分で
あったり、耐摩耗性と耐食性が十分であっても強度の点
で十分でなかったりというように、耐摩耗性、耐食性、
および強度を併せ持った材料は見当たらないのが現状で
ある。
【0009】すなわち、(イ)Ni基自溶合金は、苛酷
な使用条件下で使用される機械部品の材料としては耐食
性、耐摩耗性が十分でなく、強度は抗折力で約0.8G
Paと小さいため高い応力のかかる機械部品には使用で
きない。
【0010】(ロ)WC粒子分散Ni基合金は、WC粒
子を均一に分散しているため、優れた耐摩耗性、耐食性
を示すが、材料強度が抗折力で約0.9GPaと小さく
高負荷機械部品への応用は難しい。
【0011】また、(ハ)Mo−Ni系複合硼化物合金
は、耐食性、耐摩耗性に優れているが、抗折力は1.5
GPaと充分とは云えない。
【0012】さらに、(ニ)耐食耐摩耗Ni基合金は、
耐食性が十分でなく、しかも硬度も低いため、高負荷機
械部品材料としては耐摩耗性が低い可能性がある。
【0013】そこで、本発明は、耐食性、耐摩耗性に優
れ、かつ高強度を有し射出成形機や押出成形機の部材材
料に適した合金材料を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する
ために、本発明に係るNi基耐食耐摩耗合金は、重量比
で、Wの含有率が66〜80%であり、前記Wの含有量
に対応してB/W原子比で0.7〜1.2の範囲のBを
含有し、Siの含有量が0.1〜3.8%であり、さら
に残部がNiおよび不可避的不純物の組成よりなり、N
iW22 の式で表わされる複硼化物の粒子が、Ni
中にSiを固溶した結合相中および/またはNi中にS
i化合物を分散した結合相中に分散したことを特徴とし
ている。
【0015】以下、本発明に係る合金について更に具体
的に説明する。なお、以下の記載において量比を表す
「%」は、特に断らない限り重量%である。本発明合金
中の各成分の添加目的および組成限定の理由は、次のと
おりである。
【0016】1.Wの含有量 Wの含有量は66〜80%であること。Wは、高温焼結
時にB、Niと反応し微細な複硼化物NiW2 2 を合
金中に形成し、合金の抗折力と硬度を高めるのに寄与す
る。特に、硬度は複硼化物NiW2 2 の形成量が増え
るにともなって増加する。W添加量の増加にともなっ
て、複硼化物NiW2 2 の生成量も増加する。この複
硼化物NiW2 2 の生成量の増加にともなって、合金
の硬度が高まり合金の耐摩耗性の著しい向上がもたらさ
れるとともに、合金の強度の著しい向上がもたらされ
る。
【0017】NiW2 2 の生成量の増加は、耐食性の
向上にも効果を現す。この効果を現すのはW含有量が6
6%以上からである。Wが66%より少ない場合には硬
度が低下するので好ましくない。また、W含有量が80
%を越えると抗折力が急激に低下するので好ましくな
い。これは、残量のNi量が減少することにより、Ni
2 2 粒子を結合する合金中の結合相が不足し、合金
中に微小空孔が形成されるためと考えられる。よってW
含有量は66〜80%とする。
【0018】2.Bの含有量 Bの含有量については、Wの含有量に応じて変化させ、
BとWの原子比B/Wを0.7〜1.2とするように含
有量を決定する。Bは、前述のように、W、Niと複硼
化物NiW2 2 を形成する元素であり、合金の抗折力
と硬さを高める。B添加量の増加、すなわちB/W原子
比が大きくなるに伴い、合金の硬度が増加する。しか
し、B/W原子比が大きくなると抗折力が急激に低下す
る。硬度と抗折力のバランスからB/W原子比の上限は
1.2であり、これを超えると、Ni3 B等のNi−B
化合物が生成され、抗折力を低下させるので好ましくな
い。
【0019】これに対して、B/W原子比が小さく、
0.7より小さい場合にはNiW2 2 の形成量が少く
なるため十分な硬度が得られず、従って耐摩耗性も不十
分なものとなる。また、焼結温度が高くなるとともに抗
折力も低下するので好ましくない。よってB/W原子比
は0.7〜1.2とする。
【0020】3.Siの含有量 Siを添加すると、合金の強度は高まり、また、硬度も
高くなるが、多量のSiの添加は逆に合金の強度を低下
させる。このように適当なSiの添加は、強度の向上に
効果を現す。Siが合金を強化するメカニズムについて
は、完全には解明されていないが、これまでのところ、
Niを主成分とする結合相に固溶して強化する場合と、
同じく結合相にSi化合物が分散してこれを強化する場
合とが考えられる。なお、Si過剰による強度低下は、
Si化合物の増大と、粗大化が原因となると考えられ
る。
【0021】本発明者が強度強化の効果が認められるS
i添加量の範囲を実験的に求めたところ、0.1〜3.
8%であった。
【0022】4.Niの含有量 Ni:残部 Niは、B、Wと反応し、NiW2 2 粒子を形成する
とともに、NiW2 2 の形成に消費された後、残りの
Niが合金の結合相を形成する。Ni量が多い場合に
は、硬度が低下し、Ni量が限度以下になると、NiW
2 2 の形成のみに消費され、結合相が形成されず合金
が形成されない。Niの結合相中には、WおよびSiが
固溶し、合金を固溶強化する。
【0023】以上より、本発明に係るNiW2 2 基合
金の組成は、W 66〜80%、さらに前記Wの含有量
に対応してB/W原子比で0.7〜1.2の範囲のB、
0.1〜3.8%のSi、残部Niおよび不可避的不純
物、とされる。この組成は、本発明特有の効果を奏する
範囲内で、必要とされる耐食性、耐摩耗性および強度の
バランスに応じて任意に選定しうる範囲を示したもので
ある。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的
に説明する。まず、下記表1に示す実施例1〜7の組成
に原料粉を配合し、回転ボールミルによりエチルアルコ
ール中で混合粉砕した。次いで、この混合粉砕粉末を乾
燥、プレス成形し、真空中で焼結した。この実施例1〜
7の焼結温度を表2に示す。焼結時間はいずれも10分
間である。
【0025】この製造方法により得た試料について、硬
さ、比摩耗量、耐食性、抗折力の各種性能試験を行なっ
た。各試験条件は以下の通りである。これらの試験結果
を表2に示す。 (1)摩耗試験(比摩耗量) 試験機:大越式迅速摩耗試験機 試験条件: 摩擦速度 2.0m/sec 摩擦距離 600m 最終荷重 18.6kgf 相手材料 SKD11(HRC58) (2)腐食試験 腐食液 塩酸20%溶液(22℃) 浸漬時間 5Hr (3)抗折試験(抗折力) 試験方法 三点曲げ抗折試験(JIS H5501
による) 試験片の寸法 4×8×24mm、研削加工
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】 本発明合金と、比較例として4種の従来例合金とについ
て、焼結温度、腐食減量、比摩耗量、硬度、抗折力を比
較した。その結果を表3に示す。
【0028】
【表3】 表2及び表3からわかる様に、本発明合金は、従来の合
金に比較して、耐食性、耐摩耗性、強度(抗折力)が満
遍無く上位を占めており、総合的に優れた性能を示して
いる。特に、強度は、従来合金に較べて格段に向上して
おり、耐食性、耐摩耗性に加えて高強度を兼ね備えた合
金材料であることがわかる。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、耐食性、
耐摩耗性に優れるとともに、かつ、高強度を併せ持ち、
高負荷のかかる、例えば、射出成形機や押出成形機のシ
リンダ、スクリュー、プランジャなどの機械部品に適し
た合金材料が得られた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/03 C22C 29/00 C22C 32/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で、Wの含有率が66〜80%であ
    り、 前記Wの含有量に対応してB/W原子比で0.7〜1.
    2の範囲のBを含有し、 Siの含有量が0.1〜3.8%であり、 さらに残部がNiおよび不可避的不純物の組成よりな
    り、 NiW22 の式で表わされる複硼化物の粒子が、Ni
    中にSiを固溶した結合相中および/またはNi中にS
    i化合物を分散した結合相中に分散したことを特徴とす
    るSi添加NiW22 基合金。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のSi添加NiW22
    基合金を材質とする射出成形機または押出成形機に使用
    される機械構造部材。
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