JP3371714B2 - 耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れたTS780MPa級鋼の製造方法 - Google Patents
耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れたTS780MPa級鋼の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄塔、橋梁、建築
物などの防錆のために、溶接後、溶融亜鉛メッキを施さ
れる低合金高張力鋼に関する。 【0002】 【従来の技術】鉄塔、橋梁、建築物の防錆のため、それ
らに用いられる鋼材を構造部材に溶接した後、溶融亜鉛
メッキするという方法が広く使用されてきた。その際、
溶接熱影響部に割れが発生する場合がある。いわゆる、
液体金属脆化によるものである。 【0003】この割れを防止するために、精力的な研究
がなされてきた。それらの成果が鉄と鋼vol.79
(1993)p.1108−p.1114にまとめられ
ている。この文献はファブリケーターと鉄鋼4社で共同
執筆されたものであり、現在のところ公表された技術の
中で信頼がおける最先端のものと位置づけられている。
この論文では、鋼中の混入ボロンの影響について詳細に
述べており、Bは2ppm以下で、かつCEZmod=
C+Si/17+Mn/7.5+Cu/13+Ni/1
7+Cr/4.5+Mo/3+V/1.5+Nb/2+
Ti/4.5+420B≦0.44%を満たせば引張強
度(TS)590MPa級の鋼では、溶接後の溶融亜鉛
メッキ割れが発生しないということを明らかにしてい
る。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】高張力鋼の成分設計で
は、一般に焼入性を高める元素や析出強化する元素が添
加されている。しかし、CEZmodの式でもわかるよ
うに、添加元素のほとんどすべては耐溶融亜鉛メッキ割
れ性を劣化させてしまうので、TS780MPa以上の
強度を確保し、且つ溶接部で亜鉛メッキ割れが発生しな
い鋼を開発するのは不可能視されてきた。 【0005】本発明の課題は、TS780MPa以上の
強度と溶接部で耐亜鉛メッキ割れ性が発生しない鋼の製
造方法を提供するものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の状況
を鑑み、耐溶融亜鉛メッキ割れ性を上昇させる添加元素
は無いか、また、TS780MPa以上の強度と耐亜鉛
メッキ割れ性を両立する成分設計・製造条件はいかなる
ものかと鋭意研究した。その結果、Ti添加−high
Nにより耐溶融亜鉛メッキ割れ性が著しく改善され、両
者を複合添加し、且つ、Ceqm(=C+Mn/20+
Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+M
o/15+V/10+5B+1.0Nb)を0.23%
以上0.27%以下で成分設計し、適切な条件で直接焼
入すればTS780MPa以上の強度と耐亜鉛メッキ割
れ性を両立できることを発見した。 【0007】本発明は、重量%で、C:0.06%以上
0.12%以下、Si:0.1%以上0.6%以下、M
n:1.0%以上2.0%以下、P:0.02%以下、
S:0.002%以下、Nb:0.01%以上0.06
%以下、Ti:0.01%以上0.05%以下、N:
0.006%以上0.010%以下、Al:0.005
%以上0.1%以下、B:0.0002%以下、O:
0.005%以下、さらに、Cu:0.6%以下、N
i:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:0.6
%以下、V:0.1%以下を1種または2種以上が添加
され、残部が鉄および不純物からなり、かつこれらの元
素の組み合わせた値Ceqm=C+Mn/20+Si/
30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/1
5+V/10+5B+1.0Nbが、0.23%≦Ce
qm≦0.27%の関係にある組成を有する連続鋳造ス
ラブを、1100℃以上に加熱し950℃以下720℃
以上で圧延を終了し、ただちに水冷し250℃以下で水
冷を停止した後、550℃以上650℃以下で焼き戻し
処理することを特徴とする溶接熱影響部の耐溶融亜鉛メ
ッキ割れ性に優れた引張強度780MPa以上の高張力
鋼の製造方法である。 【0008】 【発明の実施の形態】以下に本発明の詳細を示す。ま
ず、成分範囲限定理由について述べる。 【0009】0.01%≦Nb≦0.06% 0.23%≦Ceqm まず、本発明では、TS780MPa級の鋼を得ること
が第1課題である。Nbは少量添加で著しく強度上昇さ
せるに有効な元素であり、本発明では必須の元素であ
る。0.01%未満の添加では、780MPa以上の強
度を得るのが困難で、0.06%を超える添加は鋼の脆
化を招くので、0.01%以上0.06%以下に限定し
た。また、Nbは強度を上昇させる元素であるにもかか
わらず、C等量として示すのが困難な元素であった。そ
の理由は、圧延や熱処理条件に依存し、強度への寄与が
異なるためである。しかし、固溶Nbが十分に得られる
圧延加熱温度をとり圧延後直接焼入しその後焼き戻す、
いわゆるDQ−T処理する前提では、図1に示すよう
に、Ceqm(=C+Mn/20+Si/30+Cu/
20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10
+5B+1.0Nb)というC等量式で引張強度が整理
できることがわかった。Ceqmを0.23%以上に制
御すれば、板厚40mm以下の範囲においてTS780
MPa以上が得られることが判明した。 【0010】0.01%≦Ti≦0.05% 0.006%≦N≦0.010% Ceqm ≦0.27% 本発明の第2の課題は、溶接熱影響部で耐亜鉛メッキ割
れを防止することである。それは、Ti添加−高NとC
eqmを0.27%以下に制御することで達成される。
溶接部の亜鉛メッキ割れを防止するには、溶接加熱時の
熱影響部のオーステナイト粒径を細くし、溶接後の冷却
時、オーステナイト粒径にフェライトを析出させること
が重要である。Tiを添加しかつ加窒し高N成分とする
ことで、TiNが著しく多くなり、溶接加熱時の溶接熱
影響部のオーステナイト粒の成長抑制し、溶接後の冷却
時には、フェライトの核生成サイトとして作用し、溶接
熱影響部の組織は粒界フェライトが析出した細い組織が
得られることが判明した。その結果、図2に示すごと
く、Ti添加−高Nにすれば、Ceqmが0.23%以
上0.27%以下の範囲で溶接部の亜鉛メッキ割れが防
げることがわかった。Tiが0.01%未満では上記の
ような溶接熱影響部の組織が得るだけの十分な数のTi
Nがえられず、0.05%を超える添加をしてもTiN
の数の増加にはつながらず粗大化を招く。よって、Ti
量は0.01%以上0.05%以下に限定した。0.0
06%未満のN量では上記TiNの数が十分でなく粒界
フェライトが析出した細い組織を有する熱影響部が得ら
れない。また、0.010%を超えるNを含有すると鋼
の靱性劣化を招く。よって、Nは0.006%以上0.
010%以下に限定した。 【0011】0.06%≦C≦0.12% Cは、強度を高めるのに必須の元素である。0.06%
未満では780MPa以上の強度を得るのが困難で、
0.12%を超えると鋼の靱性ならびに溶接性が著しく
劣化するため、0.06%以上0.12%以下に限定し
た。 【0012】0.1%≦Si≦0.6% Siは、メッキ後の外観状況と関係しており、0.1%
未満0.6%超えではメッキ焼けが発生し易くなる。よ
って、0.1%以上0.6%以下に限定した。 【0013】1.0%≦Mn≦2.0% Mnは強度、靱性の面から必須の元素であるが、1.0
%未満では780MPa以上の強度を得るのが困難で、
2.0%を超えると溶接性が著しく劣化するため、M
n:1.0%以上2.0%以下に限定した。 【0014】P≦0.02% Pは溶接高温割れの発生を助長する元素であり、0.0
2%を超えて含有するとその危険性が著しく高まるので
0.02%以下に限定した。 【0015】S≦0.002% SはMnSを生成し、溶接部においてラメラテアを発生
しやすい。0.002%を超えて含有すると十字溶接部
などの拘束条件が厳しい個所では、ラメラテアを発生す
る場合がある。したがって、Sは0.002%以下に限
定した。 【0016】0.005%≦Al≦0.1% Alは脱酸のため必須の元素である。0.005%未満
では脱酸が不十分であり、0.1%を超えると多量のア
ルミナが発生し、鋼の清浄性を著しく劣化させる。した
がって、0.005%以上0.1%以下に限定した。 【0017】B≦0.0002% Bは鋼の焼入性を著しく向上させる。0.0002%を
超えると耐溶融亜鉛メッキ割れ性が著しく劣化させるの
で、Bを0.0002%以下に限定した。 【0018】O≦0.005% Oは鋼の清浄度を劣化させる。0.005%を超えるO
を含有すると鋼の延性・靱性劣化を招くので、0.00
5%以下に限定した。 【0019】Cu≦0.6% Cuは鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.
6%を超えて添加した場合にはCu割れが発生し易い。
よって、0.6%以下に限定した。 【0020】Ni≦1.0% Niは鋼の強度upならびに靱性向上に有効な元素であ
るが、経済性を考慮し、1.0%以下に限定した。 【0021】Cr≦1.0% Crは鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、1.
0%を超えて添加すると鋼の靱性、溶接性を劣化させる
ため、1.0%以下に限定した。 【0022】Mo≦0.6% Moは鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.
6%を超えて添加すると鋼の靱性、溶接性を著しく劣化
させるため、0.6%以下に限定した。 【0023】V≦0.1% Vは微量の添加で析出強化により鋼の強度を高めるのに
有効な元素であるが、0.1%を超えて添加すると鋼の
靱性、溶接性を著しく劣化させるため、0.1%以下に
限定した。 【0024】次に、製造条件について述べる。 【0025】圧延加熱温度≧1100℃ 圧延加熱温度を1100℃以上に限定した理由は、圧延
時にNbCNを固溶し、強度向上に寄与する固溶Nbを
確保するためである。本発明範囲の0.06〜0.12
%C、0.01〜0.06%Nbの場合、十分な固溶N
bを確保するためには1100℃以上の加熱が必要で、
それ未満の温度で780MPa以上の引張強度を得るの
が困難である。 【0026】720℃≦圧延仕上温度≦950℃ 圧延仕上温度を950℃以下720℃以上に限定した理
由は以下のとおりである。950℃を超える温度で圧延
を仕上げると組織が粗粒となり優れた靱性が得られず、
720℃を下回る温度で圧延を仕上げるとその後DQ−
Tを行っても、十分に焼が入らず780MPa以上の引
張強度を得るのが困難なためである。 【0027】[直ちに水冷]その後、ただちにDQ処理
するのも、十分に焼きを入れ780MPa以上の引張強
度を得るためである。もちろん、圧延仕上がり温度が高
い程、ただちにといっても、多少余裕があるのは、冶金
原理から言うまでもない。DQ処理の冷媒として水に限
定したのは、最も安価で冷却能が大きいためである。ま
た、熱処理を再加熱焼入とせず直接焼入に限定したの
は、再加熱焼入では通常900℃前後の加熱温度を設定
するためNbCNが固溶せず780MPa以上の引張強
度を得るのが困難なためである。 【0028】水冷停止温度≦250℃ DQ処理の水冷停止温度を250℃以下に限定した理由
もマルテンサイト変態を板厚中央まで起こさせ、780
MPa以上の引張強度を得るためである。 【0029】550℃≦焼戻し温度≦650℃ 焼き戻し温度を550℃以上650℃以下に限定した理
由は以下のとおりである。550℃未満では優れた靱性
が得られず、650℃を越えると焼き戻し軟化が著しく
780MPa以上の引張強度を得るのが困難なためであ
る。 【0030】 【実施例】表1に示す化学組成の鋼を溶解し、連続鋳造
にて220〜300mmのスラブとした。表2には熱間
圧延条件、DQ−T条件を示している。表2の鋼板N
o.のアルファベットは表1の鋼No.と対応してい
る。たとえば、鋼板No.EP,EP1とも表1の鋼N
o.EPと同一の化学組成を有する。 【0031】これらの鋼板に対し、引張試験、拘束継手
亜鉛メッキ割れ試験を実施した。 【0032】拘束継手亜鉛メッキ割れ試験は、図3に示
す十字継手を作成後、470℃の亜鉛浴中に浸漬、メッ
キ後、試験ビード1のトウ部における割れの有無を調べ
る試験である。拘束ビード2のパス数は18パスであ
り、この拘束ビードにより、試験ビード1のトウ部に母
材の降伏応力相当の非常に高い残留応力が作用している
ことを確認している。したがって、この試験体で割れの
発生しない場合、実構造溶接部材の溶融亜鉛メッキにお
いても割れは発生しないと判断できる。 【0033】供試鋼の各試験結果を表2に併記する。T
iが添加されていない従来鋼B〜Iは拘束継手亜鉛メッ
キ割れ試験で割れが発生している。従来鋼Aは拘束継手
亜鉛メッキ割れ試験でも割れは発生しなかったものの、
Ceqmが0.23%未満のため、780MPa以上の
TSが得られていない。従来鋼HH〜IIはTi−高N
系ではあるものの、Ceqmが0.27を超えるため、
拘束継手亜鉛メッキ割れ試験で割れが発生している。 【0034】Tiが添加されNを0.006%以上含有
し、Ceqmが0.23%以上0.27%以下の成分組
成を有し、1100℃以上の圧延加熱温度を設定し、9
50℃以下720℃以上で圧延を仕上げただちに直接焼
入、250℃以下まで水冷し、その後550℃以上65
0℃以下で焼き戻し処理を施したCP,DP,EP,F
P,GP,JP,KP,LPの発明鋼は、780MPa
以上のTSを示し、且つ拘束継手亜鉛メッキ割れ試験で
も割れは発生しなかった。また、発明鋼は、優れた靱性
も有している。 【0035】しかし、Tiが添加されNを0.006%
以上含有し、Ceqmが0.23%以上0.27%以下
の成分組成を有しているにもかかわらず、本発明製造条
件を満たしていない鋼は、780MPa以上の強度が得
られなかったり、靱性が著しく低いことがわかる。 【0036】 【表1】【0037】 【表2】【0038】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従い成分設計しDQ−Tを施すと780MPa以上の
引張強度を有する鋼が得られ、鉄塔、橋梁、建築物など
の溶接構造物に使用され溶融亜鉛メッキが施されても、
割れを防止することができる。産業上、極めて大きな効
果を有すると言える。
物などの防錆のために、溶接後、溶融亜鉛メッキを施さ
れる低合金高張力鋼に関する。 【0002】 【従来の技術】鉄塔、橋梁、建築物の防錆のため、それ
らに用いられる鋼材を構造部材に溶接した後、溶融亜鉛
メッキするという方法が広く使用されてきた。その際、
溶接熱影響部に割れが発生する場合がある。いわゆる、
液体金属脆化によるものである。 【0003】この割れを防止するために、精力的な研究
がなされてきた。それらの成果が鉄と鋼vol.79
(1993)p.1108−p.1114にまとめられ
ている。この文献はファブリケーターと鉄鋼4社で共同
執筆されたものであり、現在のところ公表された技術の
中で信頼がおける最先端のものと位置づけられている。
この論文では、鋼中の混入ボロンの影響について詳細に
述べており、Bは2ppm以下で、かつCEZmod=
C+Si/17+Mn/7.5+Cu/13+Ni/1
7+Cr/4.5+Mo/3+V/1.5+Nb/2+
Ti/4.5+420B≦0.44%を満たせば引張強
度(TS)590MPa級の鋼では、溶接後の溶融亜鉛
メッキ割れが発生しないということを明らかにしてい
る。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】高張力鋼の成分設計で
は、一般に焼入性を高める元素や析出強化する元素が添
加されている。しかし、CEZmodの式でもわかるよ
うに、添加元素のほとんどすべては耐溶融亜鉛メッキ割
れ性を劣化させてしまうので、TS780MPa以上の
強度を確保し、且つ溶接部で亜鉛メッキ割れが発生しな
い鋼を開発するのは不可能視されてきた。 【0005】本発明の課題は、TS780MPa以上の
強度と溶接部で耐亜鉛メッキ割れ性が発生しない鋼の製
造方法を提供するものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の状況
を鑑み、耐溶融亜鉛メッキ割れ性を上昇させる添加元素
は無いか、また、TS780MPa以上の強度と耐亜鉛
メッキ割れ性を両立する成分設計・製造条件はいかなる
ものかと鋭意研究した。その結果、Ti添加−high
Nにより耐溶融亜鉛メッキ割れ性が著しく改善され、両
者を複合添加し、且つ、Ceqm(=C+Mn/20+
Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+M
o/15+V/10+5B+1.0Nb)を0.23%
以上0.27%以下で成分設計し、適切な条件で直接焼
入すればTS780MPa以上の強度と耐亜鉛メッキ割
れ性を両立できることを発見した。 【0007】本発明は、重量%で、C:0.06%以上
0.12%以下、Si:0.1%以上0.6%以下、M
n:1.0%以上2.0%以下、P:0.02%以下、
S:0.002%以下、Nb:0.01%以上0.06
%以下、Ti:0.01%以上0.05%以下、N:
0.006%以上0.010%以下、Al:0.005
%以上0.1%以下、B:0.0002%以下、O:
0.005%以下、さらに、Cu:0.6%以下、N
i:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:0.6
%以下、V:0.1%以下を1種または2種以上が添加
され、残部が鉄および不純物からなり、かつこれらの元
素の組み合わせた値Ceqm=C+Mn/20+Si/
30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/1
5+V/10+5B+1.0Nbが、0.23%≦Ce
qm≦0.27%の関係にある組成を有する連続鋳造ス
ラブを、1100℃以上に加熱し950℃以下720℃
以上で圧延を終了し、ただちに水冷し250℃以下で水
冷を停止した後、550℃以上650℃以下で焼き戻し
処理することを特徴とする溶接熱影響部の耐溶融亜鉛メ
ッキ割れ性に優れた引張強度780MPa以上の高張力
鋼の製造方法である。 【0008】 【発明の実施の形態】以下に本発明の詳細を示す。ま
ず、成分範囲限定理由について述べる。 【0009】0.01%≦Nb≦0.06% 0.23%≦Ceqm まず、本発明では、TS780MPa級の鋼を得ること
が第1課題である。Nbは少量添加で著しく強度上昇さ
せるに有効な元素であり、本発明では必須の元素であ
る。0.01%未満の添加では、780MPa以上の強
度を得るのが困難で、0.06%を超える添加は鋼の脆
化を招くので、0.01%以上0.06%以下に限定し
た。また、Nbは強度を上昇させる元素であるにもかか
わらず、C等量として示すのが困難な元素であった。そ
の理由は、圧延や熱処理条件に依存し、強度への寄与が
異なるためである。しかし、固溶Nbが十分に得られる
圧延加熱温度をとり圧延後直接焼入しその後焼き戻す、
いわゆるDQ−T処理する前提では、図1に示すよう
に、Ceqm(=C+Mn/20+Si/30+Cu/
20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10
+5B+1.0Nb)というC等量式で引張強度が整理
できることがわかった。Ceqmを0.23%以上に制
御すれば、板厚40mm以下の範囲においてTS780
MPa以上が得られることが判明した。 【0010】0.01%≦Ti≦0.05% 0.006%≦N≦0.010% Ceqm ≦0.27% 本発明の第2の課題は、溶接熱影響部で耐亜鉛メッキ割
れを防止することである。それは、Ti添加−高NとC
eqmを0.27%以下に制御することで達成される。
溶接部の亜鉛メッキ割れを防止するには、溶接加熱時の
熱影響部のオーステナイト粒径を細くし、溶接後の冷却
時、オーステナイト粒径にフェライトを析出させること
が重要である。Tiを添加しかつ加窒し高N成分とする
ことで、TiNが著しく多くなり、溶接加熱時の溶接熱
影響部のオーステナイト粒の成長抑制し、溶接後の冷却
時には、フェライトの核生成サイトとして作用し、溶接
熱影響部の組織は粒界フェライトが析出した細い組織が
得られることが判明した。その結果、図2に示すごと
く、Ti添加−高Nにすれば、Ceqmが0.23%以
上0.27%以下の範囲で溶接部の亜鉛メッキ割れが防
げることがわかった。Tiが0.01%未満では上記の
ような溶接熱影響部の組織が得るだけの十分な数のTi
Nがえられず、0.05%を超える添加をしてもTiN
の数の増加にはつながらず粗大化を招く。よって、Ti
量は0.01%以上0.05%以下に限定した。0.0
06%未満のN量では上記TiNの数が十分でなく粒界
フェライトが析出した細い組織を有する熱影響部が得ら
れない。また、0.010%を超えるNを含有すると鋼
の靱性劣化を招く。よって、Nは0.006%以上0.
010%以下に限定した。 【0011】0.06%≦C≦0.12% Cは、強度を高めるのに必須の元素である。0.06%
未満では780MPa以上の強度を得るのが困難で、
0.12%を超えると鋼の靱性ならびに溶接性が著しく
劣化するため、0.06%以上0.12%以下に限定し
た。 【0012】0.1%≦Si≦0.6% Siは、メッキ後の外観状況と関係しており、0.1%
未満0.6%超えではメッキ焼けが発生し易くなる。よ
って、0.1%以上0.6%以下に限定した。 【0013】1.0%≦Mn≦2.0% Mnは強度、靱性の面から必須の元素であるが、1.0
%未満では780MPa以上の強度を得るのが困難で、
2.0%を超えると溶接性が著しく劣化するため、M
n:1.0%以上2.0%以下に限定した。 【0014】P≦0.02% Pは溶接高温割れの発生を助長する元素であり、0.0
2%を超えて含有するとその危険性が著しく高まるので
0.02%以下に限定した。 【0015】S≦0.002% SはMnSを生成し、溶接部においてラメラテアを発生
しやすい。0.002%を超えて含有すると十字溶接部
などの拘束条件が厳しい個所では、ラメラテアを発生す
る場合がある。したがって、Sは0.002%以下に限
定した。 【0016】0.005%≦Al≦0.1% Alは脱酸のため必須の元素である。0.005%未満
では脱酸が不十分であり、0.1%を超えると多量のア
ルミナが発生し、鋼の清浄性を著しく劣化させる。した
がって、0.005%以上0.1%以下に限定した。 【0017】B≦0.0002% Bは鋼の焼入性を著しく向上させる。0.0002%を
超えると耐溶融亜鉛メッキ割れ性が著しく劣化させるの
で、Bを0.0002%以下に限定した。 【0018】O≦0.005% Oは鋼の清浄度を劣化させる。0.005%を超えるO
を含有すると鋼の延性・靱性劣化を招くので、0.00
5%以下に限定した。 【0019】Cu≦0.6% Cuは鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.
6%を超えて添加した場合にはCu割れが発生し易い。
よって、0.6%以下に限定した。 【0020】Ni≦1.0% Niは鋼の強度upならびに靱性向上に有効な元素であ
るが、経済性を考慮し、1.0%以下に限定した。 【0021】Cr≦1.0% Crは鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、1.
0%を超えて添加すると鋼の靱性、溶接性を劣化させる
ため、1.0%以下に限定した。 【0022】Mo≦0.6% Moは鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.
6%を超えて添加すると鋼の靱性、溶接性を著しく劣化
させるため、0.6%以下に限定した。 【0023】V≦0.1% Vは微量の添加で析出強化により鋼の強度を高めるのに
有効な元素であるが、0.1%を超えて添加すると鋼の
靱性、溶接性を著しく劣化させるため、0.1%以下に
限定した。 【0024】次に、製造条件について述べる。 【0025】圧延加熱温度≧1100℃ 圧延加熱温度を1100℃以上に限定した理由は、圧延
時にNbCNを固溶し、強度向上に寄与する固溶Nbを
確保するためである。本発明範囲の0.06〜0.12
%C、0.01〜0.06%Nbの場合、十分な固溶N
bを確保するためには1100℃以上の加熱が必要で、
それ未満の温度で780MPa以上の引張強度を得るの
が困難である。 【0026】720℃≦圧延仕上温度≦950℃ 圧延仕上温度を950℃以下720℃以上に限定した理
由は以下のとおりである。950℃を超える温度で圧延
を仕上げると組織が粗粒となり優れた靱性が得られず、
720℃を下回る温度で圧延を仕上げるとその後DQ−
Tを行っても、十分に焼が入らず780MPa以上の引
張強度を得るのが困難なためである。 【0027】[直ちに水冷]その後、ただちにDQ処理
するのも、十分に焼きを入れ780MPa以上の引張強
度を得るためである。もちろん、圧延仕上がり温度が高
い程、ただちにといっても、多少余裕があるのは、冶金
原理から言うまでもない。DQ処理の冷媒として水に限
定したのは、最も安価で冷却能が大きいためである。ま
た、熱処理を再加熱焼入とせず直接焼入に限定したの
は、再加熱焼入では通常900℃前後の加熱温度を設定
するためNbCNが固溶せず780MPa以上の引張強
度を得るのが困難なためである。 【0028】水冷停止温度≦250℃ DQ処理の水冷停止温度を250℃以下に限定した理由
もマルテンサイト変態を板厚中央まで起こさせ、780
MPa以上の引張強度を得るためである。 【0029】550℃≦焼戻し温度≦650℃ 焼き戻し温度を550℃以上650℃以下に限定した理
由は以下のとおりである。550℃未満では優れた靱性
が得られず、650℃を越えると焼き戻し軟化が著しく
780MPa以上の引張強度を得るのが困難なためであ
る。 【0030】 【実施例】表1に示す化学組成の鋼を溶解し、連続鋳造
にて220〜300mmのスラブとした。表2には熱間
圧延条件、DQ−T条件を示している。表2の鋼板N
o.のアルファベットは表1の鋼No.と対応してい
る。たとえば、鋼板No.EP,EP1とも表1の鋼N
o.EPと同一の化学組成を有する。 【0031】これらの鋼板に対し、引張試験、拘束継手
亜鉛メッキ割れ試験を実施した。 【0032】拘束継手亜鉛メッキ割れ試験は、図3に示
す十字継手を作成後、470℃の亜鉛浴中に浸漬、メッ
キ後、試験ビード1のトウ部における割れの有無を調べ
る試験である。拘束ビード2のパス数は18パスであ
り、この拘束ビードにより、試験ビード1のトウ部に母
材の降伏応力相当の非常に高い残留応力が作用している
ことを確認している。したがって、この試験体で割れの
発生しない場合、実構造溶接部材の溶融亜鉛メッキにお
いても割れは発生しないと判断できる。 【0033】供試鋼の各試験結果を表2に併記する。T
iが添加されていない従来鋼B〜Iは拘束継手亜鉛メッ
キ割れ試験で割れが発生している。従来鋼Aは拘束継手
亜鉛メッキ割れ試験でも割れは発生しなかったものの、
Ceqmが0.23%未満のため、780MPa以上の
TSが得られていない。従来鋼HH〜IIはTi−高N
系ではあるものの、Ceqmが0.27を超えるため、
拘束継手亜鉛メッキ割れ試験で割れが発生している。 【0034】Tiが添加されNを0.006%以上含有
し、Ceqmが0.23%以上0.27%以下の成分組
成を有し、1100℃以上の圧延加熱温度を設定し、9
50℃以下720℃以上で圧延を仕上げただちに直接焼
入、250℃以下まで水冷し、その後550℃以上65
0℃以下で焼き戻し処理を施したCP,DP,EP,F
P,GP,JP,KP,LPの発明鋼は、780MPa
以上のTSを示し、且つ拘束継手亜鉛メッキ割れ試験で
も割れは発生しなかった。また、発明鋼は、優れた靱性
も有している。 【0035】しかし、Tiが添加されNを0.006%
以上含有し、Ceqmが0.23%以上0.27%以下
の成分組成を有しているにもかかわらず、本発明製造条
件を満たしていない鋼は、780MPa以上の強度が得
られなかったり、靱性が著しく低いことがわかる。 【0036】 【表1】【0037】 【表2】【0038】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従い成分設計しDQ−Tを施すと780MPa以上の
引張強度を有する鋼が得られ、鉄塔、橋梁、建築物など
の溶接構造物に使用され溶融亜鉛メッキが施されても、
割れを防止することができる。産業上、極めて大きな効
果を有すると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】DQ−T処理された鋼板(表1の鋼A〜I)の
引張強度とCeqmの関係を示した図。 【図2】亜鉛メッキ拘束割れ試験結果はCeqmの関係
並びにTi−Ca添加の効果を示した図。供試鋼は表1
の鋼A〜G、鋼CP〜FPおよび鋼HH〜IIである。 【図3】拘束割れ試験体の大きさ、構成について示した
図。 【符号の説明】 1…試験ビード、2…拘束ビード(18パス/1サイ
ド)、3…試験板。
引張強度とCeqmの関係を示した図。 【図2】亜鉛メッキ拘束割れ試験結果はCeqmの関係
並びにTi−Ca添加の効果を示した図。供試鋼は表1
の鋼A〜G、鋼CP〜FPおよび鋼HH〜IIである。 【図3】拘束割れ試験体の大きさ、構成について示した
図。 【符号の説明】 1…試験ビード、2…拘束ビード(18パス/1サイ
ド)、3…試験板。
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C21D 8/00 - 8/10
C22C 38/00 - 38/60
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量%で、C:0.06%以上0.12
%以下、Si:0.1%以上0.6%以下、Mn:1.
0%以上2.0%以下、P:0.02%以下、S:0.
002%以下、Nb:0.01%以上0.06%以下、
Ti:0.01%以上0.05%以下、N:0.006
%以上0.010%以下、Al:0.005%以上0.
1%以下、B:0.0002%以下、O:0.005%
以下、さらに、Cu:0.6%以下、Ni:1.0%以
下、Cr:1.0%以下、Mo:0.6%以下、V:
0.1%以下を1種または2種以上が添加され、残部が
鉄および不純物からなり、かつこれらの元素の組み合わ
せた値 Ceqm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
+1.0Nb が、0.23%≦Ceqm≦0.27%の関係にある組
成を有する連続鋳造スラブを、1100℃以上に加熱し
950℃以下720℃以上で圧延を終了し、ただちに水
冷し250℃以下で水冷を停止した後、550℃以上6
50℃以下で焼き戻し処理することを特徴とする溶接熱
影響部の耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れた引張強度78
0MPa以上の高張力鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25183096A JP3371714B2 (ja) | 1996-09-24 | 1996-09-24 | 耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れたTS780MPa級鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25183096A JP3371714B2 (ja) | 1996-09-24 | 1996-09-24 | 耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れたTS780MPa級鋼の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1096021A JPH1096021A (ja) | 1998-04-14 |
JP3371714B2 true JP3371714B2 (ja) | 2003-01-27 |
Family
ID=17228566
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP25183096A Expired - Fee Related JP3371714B2 (ja) | 1996-09-24 | 1996-09-24 | 耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れたTS780MPa級鋼の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3371714B2 (ja) |
-
1996
- 1996-09-24 JP JP25183096A patent/JP3371714B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1096021A (ja) | 1998-04-14 |
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